連結業績概要
力武洋介氏(以下、力武):日本特殊塗料株式会社常務執行役員CFOの力武です。本日は、お忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございます。私より、2025年3月期の業績および2026年3月期の計画等についてご説明します。
まず、連結業績の概要です。2025年3月期は、2025年2月公表の連結業績予想数値を超過し、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のいずれも中期経営計画に掲げた目標を達成できました。
売上高は660億6,000万円で、前期比2.1パーセント増、13億6,600万円の増収となりました。営業利益は44億5,600万円で、前期比14.1パーセント増、5億5,100万円の増益となりました。
経常利益は67億900万円で、前期比12.5パーセント増、7億4,600万円の増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は49億4,200万円で、前期比25.2パーセント増、9億9,400万円の増益となりました。
1株当たり当期純利益は227円24銭、前期比45円67銭の増加となりました。ROEは8.9パーセントと、前期比で1ポイント改善したものの、当初の計画には若干届きませんでした。
セグメント別業績概要 <塗料関連事業>
セグメント別の業績です。塗料関連事業の売上高は237億2,200万円で、前期比15.1パーセント増、31億1,000万円の増収となりました。これは主に集合住宅大規模改修工事等の工事関連売上が好調に推移し、増収増益を牽引したものです。
セグメント利益は9億5,300万円で、前期比108.7パーセント増、4億9,600万円の増益となり、利益率は4パーセント、前期比で1.8ポイント改善しました。
スライド下段に示しているセグメント利益の増減分析をご覧ください。利益への影響額について、売上高は工事関連の増加でプラス6億5,200万円、原材料費は主に工事原価の増加によりマイナス3億2,500万円、変動費はプラス1億4,600万円となりました。
セグメント別業績概要 <自動車製品関連事業>
自動車製品関連事業の売上高は423億2,100万円で、前期比4パーセント減、17億4,400万円の減収となりました。セグメント利益は34億9,300万円で、前期比1.6パーセント増、5,300万円の増益となりました。営業利益は8.3パーセント、前期比で0.5ポイントの改善となりました。
セグメント利益の増減分析については、売上高は市況反映・労務費等の回収で一部補ったものの、生産台数減少によりマイナス6億6,300万円となりました。一方、原材料費は原料の値下げ、生産台数減少等もあり、プラス6億4,300万円となっています。固定費はプラス2億800万円となりました。
売上高構成比(セグメント/主要製品別)
全体の売上高の構成比です。自動車製品事業は売上高全体のうち64.1パーセントとなり、前期比で4ポイント減となっています。この中の吸・遮音材、制振材、その他についても、前期比で若干下がっています。
塗料事業は売上高全体のうち35.9パーセントとなり、前年比で4ポイント増となっています。このうち請負工事が17.3パーセント、前期比で3.7ポイント増となり、防水材が8.9パーセント、前期比で0.6ポイント増となっています。
連結貸借対照表
連結貸借対照表についてご説明します。資産合計は、前期比22億1,200万円減の852億4,300万円となりました。これは有形固定資産が10億2,300万円減少したことによるもので、主な要因は減価償却の低減です。
もう1つが投資その他の資産によるもので、前期比で10億1,700万円減少しています。この内訳は、投資有価証券が前期比で27億4,400万円減少した一方で、関係会社株式が当期の利益等の積み上げや為替換算等によって16億8,500万円増加しています。
負債合計は、前期比67億6,100万円減の211億2,900万円となりました。このうち流動負債が前期比で52億8,200万円減少しており、この主な内容は支払サイト短縮による仕入債務の減少によるものです。
純資産合計は、前期比45億4,800万円増の641億1,400万円となりました。これは株主資本の中の当期純利益の増加によるものです。
純資産の全体構成比は75.2パーセントとなり、このうち株主資本は前期比5.9ポイント増加の54.6パーセント、その他の包括利益累計額は前期比0.5ポイント増加の12.8パーセントとなっています。これは主に有価証券の評価差額および為替換算調整勘定の残高によるものです。
連結キャッシュ・フロー計算書
連結キャッシュ・フロー計算書です。2025年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは、前期比61億円9,800万円減の31億1,900万円となりました。これは主に仕入債務の減少によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前期比17億7,000万円減の12億3,700万円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、前期比30億5,500万円増の20億3,700万円の支出となっています。
現金及び現金同等物の期末残高は、前期比1億4,800万円増の160億2,400万円となりました。
2026年3月期 通期業績予想サマリー
2026年3月期の連結業績予想についてご説明します。全体の売上高は630億円で、前期比30億6,000万円減、4.6パーセントの減収を見込んでいます。営業利益は27億円で、前期比17億5,600万円減、39.4パーセントの減益、構成比は前期比2.4ポイント減の4.3パーセントとなります。
経常利益には、持分法投資利益として約18億3,000万円を含んでおり、51億円を見込んでいます。営業利益からの数字の減少もあり、前期比16億900万円減、24パーセントの減益となっています。
親会社株主に帰属する当期純利益は40億円で、前期比9億4,200万円減、19.1パーセントの減益です。1株当たり当期純利益は183円85銭、前期比43円39銭の減少を見込んでいます。
セグメント別の状況
セグメント別の状況についてご説明します。塗料関連事業の売上高は、前期比11.5パーセント減の210億円を見込んでいます。セグメント利益は、前期比42.3パーセント減の5億5,000万円となっています。利益率は前期比1.4ポイント減の2.6パーセントです。
売上高については、工事関連売上が前期に約114億5,800万円ありましたが、今期は85億円を見込んでおり、また、売上の減収によってセグメント利益も減少しています。また、人件費等のコスト増も利益の減少要因となっています。
自動車製品関連事業の売上高は420億円と、前期とほぼ同等を見込んでいます。中国の子会社については前年と同じく厳しい状況もあり、売上高は前期比で約10億円の減収となっています。
それに伴ってセグメント利益も減少しています。セグメント利益は21億5,000万円を見込んでおり、前期比で38.5パーセント減となります。利益率は5.1パーセントと、前期の8.3パーセントから3.2ポイントの減少となります。
また、自動車関連事業におけるアメリカの関税影響は見通すことが難しいため、期初段階では未反映としています。
設備投資・減価償却費
設備投資・減価償却費についてご説明します。スライドには、2016年3月期から2026年3月期までの約10年分を記載しています。
設備投資については、直近2年程度は約11億円で推移していましたが、2026年3月期は35億9,700万円と、生産設備の増強等を計画しています。これは国内・海外を含めた数字です。減価償却費は、前年実績とほぼ同等の27億8,200万円を見込んでいます。
株主還元計画
株主還元についてご説明します。2025年3月期の年間配当は、2024年3月期から44円増配の90円としています。2026年3月期の年間配当は、これからご説明する中期経営計画における株主還元方針を踏まえ、前期比20円増配の110円を予想しています。
また、スライドのグラフに示しているとおり、1株当たり年間配当金は従前の増配ペースを引き上げています。
市場評価・資本収益性に関する現状認識
市場評価・資本収益性に関する現状認識です。スライドにPBRおよびROEの推移を記載しています。
2016年3月期から2018年3月期は、両事業部において売上・利益ともに伸長し、PBRは高水準を維持していましたが、その後のコロナ禍、半導体不足、また直近では中国自動車市場での変化等もあり、低水準で推移しています。
したがって、ROEは7パーセントから8パーセント台で推移しており、計画の10パーセントに届いていないかたちです。ROE低下の最大の要因である利益率は回復に向かっていますが、引き続き収益力向上への施策等の推進が課題だと認識しています。
PBR改善に向けての課題整理
PBR改善に向けての課題整理です。企業価値の持続的向上を目指して、課題を改善する施策を新中期経営計画の中で実行していきます。
ROEの改善では、収益力向上および資本効率性改善の施策として掲げた項目に取り組んでいきます。PERの向上では、資本コストの最適化および将来成長期待の施策として掲げた項目に取り組んでいきます。
私からのご説明は以上です。ありがとうございました。
新中期経営計画の位置付け
遠田比呂志氏(以下、遠田):代表取締役社長COOの遠田です。私より、当社の新たな中期経営計画の概要についてご説明します。
新中期経営計画では、5年後の2030年3月期に売上高800億円、ROE10パーセント以上を目指します。
新中期経営計画の基本方針
基本方針についてです。「変革と挑戦 つぎの100年をともに創ろう」というテーマの下、事業、財務資本、経営基盤のそれぞれについて戦略を掲げています。今回の新たな中期経営計画の最終年度となる2029年6月に、当社は創立100周年となります。この5年間は100周年の先の100年の基礎を作るという意味にもなります。
「製品ポートフォリオの最適化」「販売機会の最大化」「生産性の抜本的改善」「技術力の革新」の4方針を事業戦略とし、「ROE向上とPBRの改善」「戦略的成長投資の促進」「株主還元の強化」という財務資本戦略も組み込みます。
また、成長戦略を支える経営基盤の強化のために、「ESG経営の推進」「ガバナンス体制の強化」「人的資本」「DX推進」「挑戦する組織風土の醸成」を経営基盤戦略としています。
経営目標
経営目標はスライドに記載のとおりです。2025年3月期と比較して、最終年度の各項目で約20パーセントから30パーセントの成長を目指しています。
【塗料】目標数値・基本戦略
セグメント別の事業戦略についてご説明します。塗料関連事業の目標数値は、売上高266億円、営業利益率6パーセントです。
基本的な戦略は、製品ポートフォリオの最適化として既存事業のシェア拡大、販売機会の最大化として首都圏・東日本エリアの営業力強化、生産性の抜本的改善として垂直統合型バリューチェーンの構築、技術力の革新として高付加価値製品の開発を掲げています。
これらの戦略を個別にご説明します。
【塗料】既存事業のシェア拡大<主力事業の拡充>
1つ目は、既存事業のシェア拡大です。厚膜エポキシ系塗り床材の省力化工法の導入により、シェア拡大を目指していきます。また、水性塗り床材のリニューアル、ラインナップ拡充により、環境対応型商品市場への対応を強化し、販売を伸ばしていきます。
【塗料】首都圏・東日本エリアの営業力強化
2つ目は、首都圏・東日本エリアの営業力強化です。従来の人員配置を改め、国内最大市場の首都圏で専門性と提案力を強化すべく人員を配置し、首都圏の大規模物件や新規顧客開拓に迅速かつ的確に対応できる体制を構築します。
その上で、物流倉庫、精密部品工場、インフラ施設など成長分野の建築主・総合建築企業に対し、直接提案営業を展開していきます。
【塗料】垂直統合型バリューチェーンの構築
3つ目は、収益性向上、供給体制安定化を目指し、垂直統合型バリューチェーンを構築します。その1つに、主要商品に必要な樹脂の内製化があります。近年、化学原料メーカーでは出荷量の減少、採算性の悪化などから、汎用性のない樹脂の生産を停止する傾向が強まってきています。それらを是正するために、自社独自の樹脂の内製化を行っていきます。
【塗料】高付加価値製品の開発
4つ目は、高付加価値製品の開発です。航空機塗料においては新たな認証を取得し、製品を拡充していきます。また、高性能水性塗料の開発・商品化を行い、脱溶剤化を推進し、施工環境を改善していきます。さらに、バイオマス製品の開発・製品化を強化し、原材料の脱石油化を促進していきます。
【自動車】目標数値・基本戦略
自動車製品関連事業の目標値は、売上高534億円、営業利益率8.4パーセントです。
基本戦略としては、製品ポートフォリオの最適化と技術力の革新として環境負荷低減に結びつく技術・素材の開発、販売機会の最大化として海外市場の拡大、生産性の抜本的改善として収益性向上のための構造改革、販売機会の最大化と技術力の革新としてNV技術を生かした新製品開発を行っていきます。
これらの戦略を個別にご説明します。
【自動車】環境負荷低減の技術·素材開発
1つ目の環境負荷低減の技術・素材開発については、独自技術を生かした部品の開発をもって市場拡大を図ります。これは業界初となる100パーセント再生材による製品化で、モノマテリアル技術と独自の機能繊維技術を融合させたものです。従来の機能性製品にとどまらず、内装・意匠製品への展開・拡販を考えています。
【自動車】技術提携先、海外JVとの連携強化
2つ目は、海外市場の拡大です。海外3市場において業績を拡大させます。北米では日系新型バッテリーEV車の内装部品の受注を踏まえ、フロアカーペット、トランクシステムの拡販により、2025年3月期比で持分利益約1.7倍を目指します。
東南アジアでは新規フロアカーペットの受注を踏まえ、フロアカーペットの拡販に注力し、売上・利益を約2倍に拡大させます。インドでは新機種のバッテリーEV車の先行試作受注を踏まえ、カーメーカーへの拡販に注力し、成長市場で収益を拡大させる考えです。
【自動車】収益性向上のための構造改革
3つ目は、収益性向上のための構造改革として、省人化・省スペース・省エネで生産性を2倍に拡大し、CO2の30パーセント削減を実現する汎用ラインを構築します。省人化・省スペース・省エネの各項目にアイテムがありますが、特徴的な点は自社独自技術による2つの点です。
1つはAI・ロボットによる人手の削減、もう1つは高速加熱成型技術による生産性の向上です。併せて、設備のモジュール化、標準化、小型化を行うことで生産性2倍を目指します。また、九州・東北エリアの生産体制の強化を含め、生産拠点の再配置、統廃合にも取り組みます。
【自動車】NV技術力を生かした新製品開発
4つ目のNV技術力を生かした新製品開発としては、NV性能を織り込んだリア周りのモジュール型部品を市場展開する予定です。先期にトランク部品のパネルサプライヤーへの新規参入を果たし、提案の具現化がかなう環境が整いました。
株主還元方針 <株主還元の強化>
ここからは、財務資本戦略の重要な点についてご説明します。株主還元の強化として、総還元性向を70パーセントとしました。また、株式持ち合いの解消を進め、自己株式の取得も早期に進めていきます。
キャッシュ・アロケーション <戦略的成長投資の促進>
戦略的成長投資の促進についてです。当社グループにおける成長投資は主に事業成長、新規顧客獲得、ニーズの拡大、収益性に寄与する投資と位置づけています。
例えば、既存事業の収益機会の拡大では、既存事業の強みを生かした周辺分野・製品の新規開発に関わる投資、データ活用、DX推進や原価低減です。
業務効率化では、既存システムの刷新、経営データの刷新、業務プロセスのデジタル化、経営データのリアルタイム可視化に関わるソフトウェア関連投資です。営業利益率の改善では、既存設備の自動化検討による省人化・効率化を推し進める設備投資などです。
今後は新中期経営計画に関して、設定した各施策の達成状況をモニタリングし、当初設定した成長投資に見合う効果が出ているかを検証していきます。必要に応じて計画の見直し、または追加の施策・投資を機動的に実施していく方針です。
ESG経営の推進
経営基盤戦略として、ESG経営の推進、ガバナンス体制の強化、人的資本、挑戦する組織風土の醸成、DX推進を掲げています。これらについてポイントを絞ってご説明します。
ESG経営の推進については、これまでと大きく変わることはありません。ただし、企業統治に対する取り組みは一層の強化が必要と認識しています。
取締役会構成の充実化、取締役任期の変更については、次のページでご説明します。
ガバナンス体制の強化
ガバナンス体制の強化として、取締役会構成の充実を図っていきます。新たに経営経験を有する女性社外取締役を招聘することにより、社外取締役比率を33パーセントから43パーセントとし、取締役会の独立性を強化して実効性を向上させます。また、取締役の任期を2年から1年に変更します。
人的資本
持続的な成長と「変革」を両立する人的資本の充実を図るために、スライドに掲げた項目へ取り組んでいきます。
すでに導入検討を進めている年功的賃金の見直しと人事制度改定、人財の可視化、制度の着手に向けて検討を開始した教育研修プログラムの充実、シニアの活躍推進など、順次対応しながら充実を図っていきます。
挑戦する組織風土の醸成
人的資本の充実と併せて、挑戦する組織風土の醸成に取り組みます。挑戦を当たり前にする組織を目指し、誰もが一歩を踏み出せる環境作りを実行していきます。働きやすい環境の整備、グループの連携強化・ガバナンス向上、新人事制度の導入、社内カレッジの構築・運営などを優先して取り組む所存です。
DX推進
DX戦略についてです。スライドに掲げた重点分野を確実に推進し、デジタル技術の急速な進歩に伴う社会・経済の変化に対応できる組織への革新を達成させます。
私からのご説明は以上です。ありがとうございました。
質疑応答:純利益およびROE目標の達成に対する自己資本の圧縮について
司会者:「2030年3月期に純利益65億円、ROE10パーセントを目指すとのことですので、自己資本は現状から70億円程度積み増すとお見受けします。また、総還元性向の目標は70パーセントのため、残り30パーセント分が積み上がると理解しています。
スライドには『自己資本の圧縮』と記載がありますが、そちらとの関係について教えてください」というご質問です。
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