特に重要となる環境認識のアップデート
久野貴久氏:本日は、当社グループ新中期経営計画「Value UpX」説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。それではさっそく進めていきたいと思います。
まず、大きな意味での環境変化についてです。安定的な原料調達、製品の製造・供給になんらかの目づまりや不安定さが増幅することを意識せざるを得ない時代であると再認識し、これらをリスクファクターとして捉え、しっかりと対応しなければいけないと考えています。
しかし、ある意味でゲームチェンジの機会とも捉えることができます。したがって、リスクであると同時に、新しい中期経営計画の戦略を形成する上での重要な要素にもなっています。
次なる成長へ向けて ービジョン2030の戦略に沿って成長を遂げるー
今回、中期経営計画を策定する上で、時間的な広がりとして、目線は2030年、さらにはその先も意識し、「次なる成長へ向けて」という方針を掲げています。マーケティング、テクノロジー、グローバリゼーションを結実・進化させ、多様な価値創造ストーリーとして編さんし、実行することで、次なる成長を実現していきます。このあたりは、順を追ってご説明します。
次なる成長へ向けて ー戦略の全体像ー
「次なる成長へ向けてのフレームワーク ー戦略の全体像ー」についてご説明します。先ほどの時間的目線を踏まえ、3階層で成長戦略を構成しています。すなわち、将来の利益成長の柱となる成長戦略、「Value UpX」の成長ドライバーとなる基幹戦略、グループの安定的・持続的な成長を支える基盤戦略です。価値創造やバリューチェーンの拡大・強化の実効性を高めることで、途切れのない、加速度ある成長を目指していきます。
次なる成長へ向けて ー戦略の全体像ー
3階層の戦略展開について、詳細をご説明します。まず1つ目は、将来の利益成長の柱となる成長戦略です。これは時間的には、スコープとしては多少長めですが、栄養や体調・体質などの健康課題に対する脂質の活用を通じた価値創造と領域拡大による利益成長を目指します。
もう1つは、当社グループの持つ油脂の知見・技術、ソリューション提案力などの強みを活かしたバリューチェーン拡大・強化です。内容については後ほどご覧いただきたいと思います。
2つ目は、「Value UpX」の成長ドライバーとなる基幹戦略です。こちらは中期経営計画の中でしっかりとご説明します。
3つ目は、グループの安定的・持続的な成長を支える基盤戦略です。今後50年を見据えた生産体制の再構築として、コストに見合った油脂製品の適正な市場価値の形成も含まれます。
そして、これらの戦略を支える4つの機能を強化し、重点投資をしていきます。1つ目は技術の深化・探索による価値創造を実現する研究開発、2つ目は競争優位性を備えたサプライチェーンの構築・強靭化、3つ目は成長を加速させると同時に、営業・マーケティング・生産・物流変革を推進するデジタルイノベーション、4つ目は、地球環境・資源の保護・人権尊重による社会的品質を高めるサステナビリティです。これらを強固でレジリエントな人材基盤の構築により推進していきます。
また、ROICマネジメントを通じて、利益率の向上と投下資本の効率化による資本収益性向上に取り組み、さらなる成長投資につながる好循環を目指していきます。
次なる成長へ向けて ーグローバルトップレベルの油脂ソリューション企業への飛躍ー
スライドは、成長の目的・実現したい世界観や姿に向けてのビジョンについて表現しています。改めて、当社グループにとっての成長の目的や存在意義は、生きるエネルギーをすべての人にお届けすることにあると強く思います。
それは、社会課題解決に向けて重要と考える6つの重点領域を構造化する中で、成長牽引領域と位置づける「すべての人の健康」「美しく豊かな生活」「食のバリューチェーンへの貢献」につながる価値創造を継続することで実現されると考えています。この道筋が、グローバルトップレベルの油脂ソリューションカンパニーへの飛躍であり、それを目指しています。
この4年間の実績や環境変化、組織能力の向上などを踏まえ、グローバルトップレベルの油脂ソリューションカンパニーへの飛躍の姿について、少し解像度を上げてみたいと思います。
それは、お客さまベネフィットの最大化への貢献を起点とし、油脂ソリューション創出力の最大化、展開エリア・展開領域を拡大することです。その結果、成長市場でのプレゼンスアップと、潜在市場における市場創造につなげていきます。
具体的には、チョコレート用油脂やチョコレート、化粧品油剤等の市場における成長ポテンシャリティへの取り込み、機能性油脂・油剤や脂質栄養の分野での市場創造を実現していきます。
その結果、2028年度に利益率5パーセント以上、さらにはその先の7パーセント以上を目線に利益率の向上を目指すと同時に、積極的な投資拡大も行いながら、利益成長率を高めていきたいと思っています。
Value UpXで目指す姿
新中期経営計画の期間にフォーカスします。数値目標として、営業利益の4年間平均は240億円、2028年度の営業利益は280億円、利益率は5パーセント以上としています。2028年度のROEは8パーセント以上、ROICは6パーセント以上を目標としています。
これまでも当社グループは着実な利益成長を実現し、さらなる成長への足掛かりを築いてきました。次の4年間では、さらに利益の規模を拡大し、資本収益性を高めていきます。詳しい内容については、8ページ以降でご説明します。
成長ドライバーとなる基幹戦略
成長ドライバーとなる基幹戦略についてです。スライドで主にオレンジ色で示した部分は、BtoBの領域を示しています。また、グリーンで示した領域は主にBtoCの領域を示しています。内容によっては相互に行き来することもありますが、おおむねこのようなかたちで分類しています。
まず、BtoB領域の1つ目は、トレーサブルで高機能なチョコレート用油脂のバリューチェーン創出と拡大です。カカオ収量の減少に伴うチョコレート用油脂需要の変化を捉えた販路の開拓・拡大を進めていきます。
CBEなどの拡販に向けた積極的な設備投資・技術開発を進めていきます。CBEに限らず、累計でのCBRやCBSといったチョコレート用油脂全般、そしてカカオ原料の変動に伴い、チョコレートそのものの中身についても改質が迫られています。
そのような意味では、チョコレート用油脂と、子会社である大東のチョコレートの組み合わせによるチョコレート市場の開拓と拡大を目指していきます。
この点については、CBEのグローバルシェア(重量ベース)をKGIとして設定しています。2024年度のグローバルシェアについては、あくまでも当社推計ですが、6パーセントだったと推計しています。これを2028年度までに15パーセント以上に引き上げることをKGIとして掲げています。
2つ目は、ファインケミカル事業のグローバルシェア拡大を通じた利益成長です。
成長市場であるアジアを中心として、市場成長を上回る水準でのスペシャリティオイルの販売拡大(世界シェア拡大)を実現していきます。そして、グローバルでの拡販に向けた拠点整備、テクニカルサポート体制の拡充、展開エリアのパートナーとの関係強化を進めていきます。
すでにテクニカルサポート体制の拡充については、主に中国で大きな実績を上げているため、この横展開というかたちで進めていきたいと思っています。これにより、KGIとして、化粧品油剤グローバルシェアは金額ベースで2028年度に10パーセント以上を目指していきます。
ただし、当社がターゲットとするのは、利益率の高いスペシャリティオイル市場です。10パーセント以上という目標は、汎用品を含む市場全体を分母とした数値であることを前提としています。
3つ目は、BtoB(BtoBtoC)における展開領域の拡大と多様な価値の創出です。ユーザーベネフィットの追求を通じた、国内における機能性油脂の拡販、パーム油のさらなる活用、機能性油剤などへの展開領域の拡大と、対象エリアの拡大(フードサービス向けのグローバル展開等)を目指しています。
そして、BtoBtoCにおけるMCTをはじめとした機能素材マーケティングの継続的な取り組みを拡大していきます。こちらは現在の中期経営計画でも取り組んでおり、実績が上がっています。
こちらの戦略についてはKGIとして2つ掲げています。1つは北米の加工用・業務用油脂の販売額です。加工用とは、先ほどのチョコレート用油脂なども含みます。こちらは、2030年度を目線として、500億円規模を目指しています。ただし、いわゆるP/L上で上げる500億円ではなく、獲得を目指す市場規模として想定している数値です。
もう1つは、機能性油脂・機能性油剤の販売額です。こちらは、2028年度に70億円以上に拡大していきます。ちなみに、2023年度の実績は28億円です。
次に、グリーンで示したBtoCの領域です。「脂質栄養に基づく健康課題へのアプローチ等による価値創造」として、BtoCにおける生活の質の向上に貢献する製品の売上拡大・利益の安定的積み上げを目指します。
具体的には、体調・体質に関連する価値訴求、おいしさ・手軽さ・簡便さの提供、環境負荷低減等、生活者の潜在需要を満たし、生活の質(QOL)の向上に貢献します。そのためのマーケティング型・機能型製品の販売構成比の拡大を考えています。
そして、マーケティング機能の強化による高齢者食品市場、体脂肪燃焼市場でのMCTオイル・MCT加工食品の販売拡大、栄養不良、代謝改善等に対する治療的機能の研究・調査を利用した市場開発につなげていくと掲げています。
こちらのKGIは、家庭用食用油の国内市場規模として掲げています。2028年度に1,900億円以上を目指します。2023年度の実績としては、市場全体で1,816億円です。この市場全体の引き上げに向けて、当社が積極的に関与、牽引していきます。
ちなみに最近の食用油市場ですが、金額ベースではスライドのとおりですが、量的な意味においては若干減少傾向にあります。量的な減少を補い、価値で拡大を目指すという牽引役を当社が果たしていきます。
成長ドライバーとなる基幹戦略 “勝ち筋”の展開例① ー顧客接点の高度化を起点とする多様な価値創出ー
基幹戦略をいかにして実現するかですが、先ほどの戦略を支える機能の強化が非常に重要です。加えて、当社としての「勝ち筋」を構築していくことが重要だと考えます。
ここで言う「勝ち筋」とは、当社としての連続性のあるイノベーションを仕組み化するということです。7ページに戻っていただければと思います。
Value UpXで目指す姿
イノベーションの仕組み化により、お客さまベネフィットの最大化を目指していきます。このイノベーションの要素として、具体的には3点が挙げられます。
1つ目は、顧客が持つ経験や知と、当社グループの知見を掛け算する、つまり顧客接点の高度化です。
2つ目は、当社の中での各種アプローチで生まれる技術的経験や知の融合、すなわち技術変革の実装です。
3つ目は、サプライチェーン上の社会的価値と顧客価値の統合、つまりトレーサーブルなサプライチェーンの確立です。こうした要素を全体的ないしは部分的に掛け合わせ、さらに飛躍的に拡大するために、デジタルイノベーションをしっかりと組み合わせていきます。
こうした取り組みにより、結果として無形資産の積み上げ、つまり知財、ノウハウ、デジタルデータなどの積み上げにつながり、仕組み化していくことを「勝ち筋」と称していきたいと思います。
成長ドライバーとなる基幹戦略 “勝ち筋”の展開例① ー顧客接点の高度化を起点とする多様な価値創出ー
顧客接点の高度化について、具体的にご説明します。技術開発力、ブランド価値、お客さまとの信頼関係などの保有資産の最大活用がベースにあります。
近年、アウトバウンドとしての取り組みをしっかりと強化してきました。具体的には、ユーザーサポート機能の強化です。また、昨年の5月に開設した、お客さまとの具体的な共創の場としてのインキュベーションスクエアの設定です。このような事柄を徹底して進めています。
加えて、インバウンドでの展開も進めています。こちらはデジタルイノベーションがベースになりますが、これまでリーチできていなかったお客さまとの接点をさらに創出していきます。
個別のユーザーだけでなく、実際に当社と関わりのある技術者やマーケティングのみなさまとの接点を見いだし、それらを掛け合わせていくことが、顧客接点のさらなる高度化につながってくると思います。
こうした取り組みが、スライド右側に示している成果につながっていくと考えています。
成長ドライバーとなる基幹戦略 “勝ち筋”の展開例② ー技術変革の実装ー
スライドは、技術変革の実装の展開例について示しています。実は、当社ではCO2排出量の削減に向け、さまざまな脱炭素化に関わる施策を進める中で、新たな技術の開発・獲得を実現してきました。これらの技術は、当社の油脂加工技術との融合により、新たな油脂ソリューションを創出しています。
この油脂ソリューションの創出力を高めることで、最終的には、製品や副産物の付加価値化、プロセスの効率化や生産余力の創出、あるいは新たな投資の機動力の獲得等が実現できると考えています。徐々にこれらのことを実装化していきます。
以上が「勝ち筋」の内容、すなわちイノベーションの具体例です。
資本収益性向上戦略 ー思考の転換・プロセス変革ー
資本収益性向上の戦略です。これまでも課題として捉えていましたが、なかなか本格的な取り組みには至っていませんでした。また、環境変化の中で、調達・供給面で一定の制約が生じていることに加え、国内では長期間続いたデフレが終息しつつあり、それに伴う消費行動の変化も見られます。
こうした状況を踏まえると、特に国内ビジネスのオペレーションにおける思考の転換は必然であると捉えています。
変革の起点として、まず営業スタイルや営業ポートフォリオの変革に取り組みます。もちろん、営業・マーケティングにおける試行錯誤を一定期間重ねながら、市場におけるプレゼンスの発揮と効率性の体質化に向けて変革を進めていきます。
同時に、生産プロセスや物流プロセスの変革も進めていきます。こちらはある種、瞬発力の仕組み化であり、このような点に取り組んでいきます。
これら3つの変革を不可分なものとして進めることにより、従来課題を解決し、成果に変換することが可能となると考えています。これにより、投下資本の効率化、収益性の向上、いわば営業キャッシュフローの拡大を加速させ、同時に生産・物流の持続可能性の向上も実現していきたいと思います。
財務戦略
財務戦略です。スライドは、投資と財務健全性の方針と、株主資本と還元の方針について記載しています。まず、投資と財務健全性の方針として、「成長」と「戦略を支える機能」への投資を積極的に進めていきます。投資収益性の確保を徹底し、ROICマネジメントを通じて、利益率の向上と投下資本の効率化につなげていきます。戦略遂行を加速するM&Aは必須であり、都度、資金調達を行います。
そして、ネットD/Eレシオや自己資本比率などの財務規律を保持し、財務健全性を同時に確保していきたいと思います。
次に、株主配当還元の方針です。ROEについては、8パーセント以上を安定的に獲得することを前提に、2030年度に10パーセントを達成すると考えています。
内部留保については、企業価値向上に向けた投資や必要な利益還元への備えなど、長期的な視野を持って活用していきます。連結配当性向40パーセントを目安に、利益成長を確実に株主に還元していきます。
ただし、資産売却益などの一時的な利益に対しては、内部留保と利益配当のバランスを総合的に判断して考えていきます。
経営目標および全社KPI
最後に、経営目標および全社KPIについてご説明します。今中期経営計画における経営目標は、ROEは2028年度で8パーセント以上、ROICは2028年度で6パーセント以上、営業利益は4年平均で240億円を掲げています。
スライド右側に、今中期経営計画の見込みとして、それぞれの数値を示しています。
そして、全社KPIです。営業利益率については2028年度で5パーセント以上、営業キャッシュフローは4年累計で1,000億円、投資額はそのキャッシュフローを背景として900億円で設定しています。
特に、営業キャッシュフローについては、この4年間、およそ300億円という規模感だったため、大幅なアップとなりました。ただし、今中期経営計画においては、この中計期間中に大幅な原料高騰と期ずれを伴った値上げなどにより運転資本をかなり費やしてきた経緯があるため、このレベル感となっています。
数字の面では大きな開きがありますが、実態としては到達可能レベルであると考えています。以上が、新中期経営計画についての概要です。
最後に、新しい中期経営計画「Value UpX」の「X」に込める思いについてご説明します。
まず、成長を足し算から掛け算へという意味での「X」です。また、先ほどご説明した「勝ち筋」と同様に、さまざまな要素の掛け算によってイノベーションを生むという意味での「X」です。さらに、課題を成果に転換するSomething(サムシング)、いわば方程式における「X」の発見と実践です。
そして、トランスフォーメーションを意味する「X」でもあります。この「X」に込める思いを全社で共有し、一丸となって計画達成を進めていきます。
以上で、新中期経営計画についてのご説明を終了します。ありがとうございました。
質疑応答(要旨)①
Q:新しい中期経営計画の最終年度における利益目標は、挑戦的な数字に見えます。本当に実現可能な水準であるのかと、現行の中期経営計画からセグメント別にどのように変わるのかを教えてください。
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