目次
進顕氏:代表取締役社長の進顕です。ただいまより、2024年9月期決算についてご説明します。
本日お話しする内容です。1点目が業績の状況について、2点目が課題への対策と今後の成長戦略について、3点目がデジタルソリューション開発事例について、4点目が株主還元方針についてです。
業界の動向
はじめに、2024年9月期の業績の状況についてご説明します。まず、当社を取り巻く業界の動向についてです。
昨年に続き国内物価は上昇しており、それに伴い労働者の平均賃金が上昇しています。当社は今年も引き続き例年を上回る賃上げを実施しました。この傾向は今後も続くと見ています。
自動車業界においては、世界の新車需要は伸びているものの、2024年の回復力は落ち着きを見せています。研究開発では、脱炭素化に向けた世界的な流れが持続しており、新技術開発を中心に高水準を維持しています。
人材業界では、人手不足を背景に需要は堅調に推移しています。特にシステムソフトウェア開発分野において、案件が増加しています。しかし、メーカーも含め、各社は採用者数を増加させており、人材獲得競争は激化し、採用難度が高まっています。それに伴い、賃金も上昇傾向にあります。
2024年9月期は増収増益(当期純利益を除く)
2024年9月期における業績数値です。売上高は前年比プラス5.2パーセントの100億200万円、営業利益は前年比プラス23.3パーセントの9億300万円、経常利益は前年比プラス22パーセントの9億500万円、当期純利益は前年比マイナス16.2パーセントの6億1,100万円となりました。
計画(2023年11月公表値)と実績の差異
各項目の計画と実績の差異についてです。売上高は、計画に対し9,800万円の未達となりました。リクルーター増強、採用専門コンサル活用などに取り組み、2025年新卒採用には効果があったものの、2024年新卒採用の成果に間に合わせることができませんでした。そのため、人員計画を下回りました。
新卒以外の人員採用については、求人条件の大幅な見直しにより、ほぼ計画どおりとなりました。
営業利益については、平均8.37パーセントの大幅な賃金改善を実施しましたが、契約単価改善が大きく寄与し、計画を1億9,300万円上回りました。
現時点で、経営戦略上の課題を大きく分けて2点認識しています。1点目は単価改善です。賃金上昇による収益性低下の懸念となるため、対策が必要です。
2点目は人材の確保です。人材獲得競争の激化もあり、人員計画を下回ったことが売上・利益に大きく影響しています。この課題の詳細と対策は後ほどご説明します。
業績予想と実績の差異に関して(補足)
前のスライドでお示ししたとおり、売上未達の原因は技術者の人員数が計画を下回ったことによります。
第19期は、技術者数稼働率に対する主な対策として、「①採用力強化」「②待遇改善・求人条件見直し」「③教育カリキュラムの充実化」を実施しました。各施策に対して期待する効果は、スライドに示しているとおりです。
経営戦略上の課題の整理
次に、課題への対策と今後の成長戦略についてお話しします。はじめに、経営戦略上の課題の整理です。当社は、営業利益に焦点を当てた経営を推進しています。設計開発アウトソーシング事業において、売上高は人員数、稼働率、単価の要素に分解することができます。
当社の課題は、単価改善と人材確保です。そして、売上原価の大部分は人件費となります。単価については、技術力に見合わない低単価案件があることや、物価および全国的な賃金上昇の影響があるにもかかわらず、契約時の単価が据え置かれていることがあります。そのため、単価見直しが1つ目の課題です。
売上高に関わる人員数は計画を下回り、人材の確保が2つ目の課題となっています。その他の費用や販管費については、取引内容などの継続的な見直しや効率化等により、削減を目指していきます。
第20期以降の経営課題
第20期以降の経営課題についてご説明します。現時点での経営課題は、先にお伝えしたとおり、単価改善、人材確保の2点です。
課題①の対策として、第19期に順調に進捗した契約単価改善に向けた取り組みを、第20期も継続します。
第19期においては、国内賃金上昇率に沿った価格改定が後押しした側面がありましたが、より技術力に見合った単価改善を実現するために、営業力強化を図るワーキングチームを組成し、20期以降も持続的な単価改善を目指します。
課題②の対策としては、技術者数の停滞による売上高成長率への課題です。これら2点の課題において、この後のスライドにおいて詳細をご説明します。
課題①単価改善に向けた取り組み
単価改善に向けた取り組みをご説明します。技術力の高い技術者が低単価の案件に従事していることがありますが、営業力を高め高難度案件の受注を増やしていくことで、技術力に見合った単価を獲得できるようにします。
また、引き続き教育を充実させることで、高単価案件に従事できる技術者を増やしていきます。加えて、国内物価上昇率や賃金上昇率を踏まえ、都度単価を見直します。また、研究開発技術を活用し、AR/AI設計のソリューションを外販することにより、収益化を目指します。
さらに、設計効率化ツールなどの活用により、請負業務などの効率化を進めていきます。従来は専門部署にて開発会議を実施していましたが、より詳細かつタイムリーな開発アイテムの選別やリソースの最適化を目的に、2023年11月より、部門横断型の「研究開発会議」を発足させました。今後さらに開発スピードを加速させていきます。
課題①一人月売上高の推移
一人月売上高の推移です。中期経営計画策定の第17期10月以降も、効率的な人員配置等により、右肩上がりに推移しています。
第19期第4四半期においては単価改善の取り組みが進捗し、前年比プラス2万8,000円と、一人月売上高上昇に寄与しています。引き続き、付加価値の高いサービスの提供、国内賃金上昇率を考慮した単価の見直し等を実施し、さらなる売上高向上を目指していきます。
課題① 派遣・請負別売上高、一人月売上高の推移
派遣・請負別売上高と一人月売上高の推移です。派遣においては、企業の生産活動が高水準を維持し、開発投資も拡大が続いています。戦略的な人員配置転換に加え単価改善が寄与し、第19期の売上高は前年比6.7パーセント増となりました。1人あたり売上高は63万7,000円となり、前年比で2万3,000円増となりました。
請負についてです。案件に対する取引先の要求値の難度が年々上昇しています。単価交渉の進捗もあり、売上高は前年比4.8パーセント増となりました。また、単価改善に加え、高単価のプロジェクトを厳選したことや受注量の増加により、1人あたり売上高は81万6,000円と、前年比で6万9,000円増加となりました。また、請負業務の売上高比率は全体の57パーセントと引き続き高水準を維持しています。
課題②人材確保に向けた取組み
人材確保に向けた取り組みをご説明します。採用強化については、リクルーターの増強および採用コンサルの活用を実施しました。効果が出るまでに時間を要したことで、2024年新卒採用には間に合わず、採用計画を下回る結果となりました。
一方で、2025年新卒採用には一定の効果があり、また新卒採用のノウハウの一部においては、中途採用にも転用ができました。
待遇改善については、既存社員の待遇改善として平均8.37パーセントの賃上げおよび求人条件の見直しも寄与し、経験者採用が前年ベースを上回りました。
また、3年前より力を入れて取り組んでいる教育カリキュラムの充実化について、一定程度の成果がありました。これにより新卒技術者の早期配属が一部可能になり、稼働率向上に寄与しました。
さらに、未経験者教育ができるようになったことで未経験者採用が可能となり、採用枠の拡大に寄与しました。
課題②新卒を除く技術者稼働率は高稼働率を維持
技術者数と稼働率の推移です。赤色のグラフの新卒者を除く稼働率は、約95パーセントと引き続き高稼働を維持しています。
オレンジ色のグラフの新卒を含む稼働率について、新卒技術者は第18期より研修内容の抜本的改革を行い、長期間での研修対応を実施しているため、横ばいで推移しています。
その他:営業利益向上への取り組み
その他営業利益向上への取り組みとして、営業利益の達成度に応じた業績連動賞与を導入しました。全社員が営業利益達成に向け、目標を共有していきます。
また、事業ポートフォリオにおいても見直しを行いました。2024年3月末日をもって、3Dプリント事業を廃止しました。一方で、2025年春にはベトナムに子会社の設立を予定しています。
中期経営計画の変更概要
当社の状況と課題の対策を踏まえ、2023年11月に修正開示した中期経営計画について、2025年9月期の売上高、営業利益、経常利益、当期純利益を下方修正します。修正後の売上高は107億円、営業利益8億円、経常利益8億円、当期純利益4億4,000万円となります。
修正の理由として、まず売上高については、現時点で人員数が計画を下回るためです。また営業利益、経常利益、当期純利益については、2024年9月期に引き続き賃上げによる待遇改善を織り込んだこと、および雇用調整助成金の延滞金・違約金の一部を織り込んだことにより、2025年9月期においては当初予定を下回ります。
なお、売上高・利益額の進捗遅れを取り戻すべく、次の3点の対策を講じます。1点目は、2024年9月期開始の採用コンサル活用により、採用力のさらなる強化を目指します。2点目は、営業力強化により、引き続き1段階上の契約単価改善を実施します。
3点目は、2025年9月期中に開始予定のベトナム事業により、売上高・利益額の向上を目指します。以上の3点により、2026年9月期以降の計画に影響はありません。
中期経営計画 2027年9月期目標:売上高125億円・経常利益13億円
2020年9月期以降、経常利益はほぼ横ばいにとどまっていますが、中期経営計画で掲げた取り組みに加えて、今回ご説明した対策を進めることで、第21期である2026年9月期以降、再び成長軌道に乗せていきます。
自社の設計力を活かしたソリューションを積極的に訴求
デジタルソリューション開発事例をご紹介します。
2024年6月に「設計・製造ソリューション展」へ出展し、「設計自動チェックツール」および「Diff AR」の2つの当社独自のソリューションをご紹介しました。自動車メーカーさまをはじめ、広く製造業・建設業などの方々にご興味を寄せていただきました。
設計支援ソリューション開発事例
展示会で展示したアイテムも含め、現在開発中のソリューションの一部をご紹介します。
まず「設計自動チェックツール」です。これは文章に記載されているチェックシートの内容を読み取り、図面がその内容に適合しているかを自動で判定するシステムです。現在、自動車部品メーカーと共同で研究開発を行っており、利用開始を目指し開発を進めています。
DiffAR
「iPad」上で対象物と3D-CADモデルを重ね合わせ、形状の差異をAR技術にてリアルタイムに認識できる表示プログラム「Diff AR」は、2023年8月に特許を出願しました。現在、より精度を上げるよう改良を行うと同時に、既存顧客に向けて売り込みを開始しています。
AR・AIソリューション開発事例
その他、AIを用いたソリューションをご紹介します。スライドに示すとおり、高精度な3Dスキャン技術を用いた人体の3Dモデル設計アプリや、認可証の自動転記システムなどを開発しています。
設計支援ソリューション開発事例
当社の主力事業である業務効率化ツールとして、設計断面の自動作成ツールや干渉チェックツールなどを開発しています。すでに社内で利用しており、現在はさらなる精度向上に取り組んでいます。これらツールを活用することで、自社内の設計業務の品質向上や自動化による原価低減につなげていきます。
継続的・安定的な配当で株主還元
最後に、株主還元方針についてご説明します。当社は、株主さまに対する利益還元を経営の重要課題の1つと位置づけ、継続的かつ安定的な配当を実施することを基本方針としています。
配当政策については、事業拡大のための設備投資などを目的とした内部留保の確保と配当の安定的拡大を念頭に置き、財政状態および利益水準を勘案した上で、当期純利益の35パーセント以上を毎期配当していくことを原則としています。
アビストの株主優待制度
また、株主のみなさまからの日頃のご支援に感謝の気持ちを示すとともに、事業についてより理解を深め、当社株式の魅力を高めることにより、多くの株主さまに株式を安定的に保有していただくことを目的として、株主優待制度を導入しています。
2024年9月末時点の株主さまへは、「アビスト・プレミアム優待倶楽部」のポイントを贈呈しました。2025年3月末時点の株主さまへは「浸みわたる水素水」の贈呈を予定しています。都道府県別の配送時期などの詳細はホームページに記載しています。