2024年3月期決算説明
曾我英俊氏:フジ日本精糖代表取締役社長の曾我英俊です。2024年3月期は、新たに会社のパーパス「食を科学し、世界をパワフルに!(Make the world powerful with food science!)」を制定し、持続可能な生物資源から当社のフードサイエンス技術で、新たな価値を創造し、世界を元気にしていくことを目指すことといたしました。
本日は、当社の事業活動をご紹介すると同時に、2024年3月期の決算実績と次期の見通しについてご説明させていただきます。
会社概要
当社は1949年の創業以来、お砂糖の製造販売を行ってまいりました。さらに最近は水溶性食物繊維「イヌリン」などの機能性食品素材を日本国内だけでなく、タイを中心とした東南アジアで販売を行っております。
従業員数はフジ日本精糖、ユニテックフーズ、Fuji Nihon Thai Inulinなどグループ全体で234名であります。
事業内容
まずは主力の精糖事業の紹介です。お砂糖は古くから私たちが生活する上で欠かせない、とても身近な食品です。料理やお菓子作りで食材をより際立たせて美味しくするのはもちろんのこと、心臓や筋肉を動かす脳への大切なエネルギー源となり、体づくりを促進する効果もあります。
また、お砂糖は添加物などが一切使われていない、自然の恵みから生み出された天然の甘味料です。私たちはお砂糖を通してみなさまの楽しく健康な生活をサポートいたします。
次に非砂糖事業として注力しております機能性素材事業の紹介です。まずは機能性食品素材のイヌリンです。イヌリン(Fuji FF)は、世界で唯一のサトウキビ由来の水溶性食物繊維です。私たちは精糖事業で培った経験を基に、独自の技術によって世界で初めてお砂糖からイヌリンを作り出すことに成功しました。
イヌリンは、腸内環境の改善をはじめ、肌や骨、脳機能など身体のさまざまな健康機能へ効果があることがわかっています。イヌリンを通じて「腸のキレイ」から身体や心を健康に、そしてみなさまの「しあわせ生活」をサポートいたします。
次に、切花活力剤の「キープ・フラワー」です。精糖会社の専門知識を活かし、切り花の栄養分となる糖をもっとも吸収しやすいかたちにして商品化しています。消費者のみなさまへはもっと気軽にお花を楽しめるようになり、お花の香りや色を感じて元気をもらい、四季折々のお花で暮らしに彩りを添えるお手伝いをいたします。
最後にフードサイエンスです。粉末化・乳化及びCD包接技術、抽出エキス加工技術、配合技術などをベースに食添GMP(HACCP対応)に基く品質管理システムで、ビタミン等を中心とした食品添加物製剤や各種機能性素材の受託加工(開発・試作・製造)を行っています。
決算サマリー
当期は原材料費の高騰、エネルギーコストの上昇などコストアップが顕著に表れました。そのような中、そのコスト上昇分を適切に販売価格に反映できるかという1年でありました。また、一部事業においては、海外での販売競争が激化し、厳しい事業環境が続きました。
損益計算書(P/L)
2024年3月期の決算につきましてご説明いたします。売上高は、精糖事業でのコストアップに対する販売単価への反映を進めたこと、機能性素材事業での拡販効果もあり、前期比14.2パーセント増の258億8,900万円となりました。
営業利益は、精糖事業において適正な販売価格と有利な原料調達ができたことにより前期比19.8パーセント増の21億7,300万円となりました。
経常利益は、営業外収益として国内の一般投資先より一過性の受取配当金を受領した結果、前期比50.8パーセント増の32億200万円となりました。
売上高・営業利益の四半期推移
売上高の推移としましては、新型コロナウイルスの5類移行により、人流が回復し、ようやくコロナ前の水準に近づいてきました。
営業利益の推移としましては、出荷数量の回復に伴って、工場の稼働率も改善してきており、原材料を含めたコスト上昇があるものの、適正価格での販売により一定水準を確保することができました。
セグメント別状況
決算サマリーの業績をセグメントごとにご説明いたします。
精糖事業は、飲料・菓子・外食関係やインバウンド需要の回復が見られましたが、食品価格高騰による買い控えもあり、販売数量は前期並みとなりました。
機能性素材事業は、イヌリンは原材料やエネルギーコストが高止まりする中、国内販売においては糖質オフ、機能性表示食品への採用増により、前期に比べ販売数量が増加しました。さらに、海外販売においては東南アジア向けの販売が落ち込んだものの、生産拠点であるタイにおいて新規採用が増加したことで前期に比べ販売数量が増加しました。
切花活力剤の「キープ・フラワー」は、業務用製品の販売は前期並みであったものの、物価高による生花価格の上昇を受け、家庭用製品の販売数量は減少しました。連結子会社のユニテックフーズは、主力商品であるペクチン、ゼラチン、コラーゲンなどの天然添加物素材の販売が伸長しました。
不動産事業は、2023年9月に旧本社跡地にビジネスホテル「東横INN茅場町駅」を建設し、賃貸を開始しました。
地域別状況
地域別の状況をご説明いたします。精糖事業は、ほぼ日本国内の販売となっております。販売価格の上昇に伴い、売上高が増加したことで、日本国内の販売比率アップに寄与いたしました。
機能性素材事業は、イヌリンは日本国内販売においては販売数量が増加しましたが、海外販売においては東南アジア向けの販売が落ち込み、販売価格も下落した結果、販売比率がダウンいたしました。
キャッシュフロー
キャッシュ・フロー計算書についてご説明いたします。当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ3億9,900万円増加し、52億7,400万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローで得られた資金は、9億4,200万円(前年比62.6パーセント増)となりました。これは主として税金等調整前当期純利益の計上などによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローで使用した資金は、5億1,700万円(前年比205.0パーセント増)となりました。これは主として有形固定資産の取得による支出などによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローで使用した資金は、6,900万円(前年同期6億3,300万円収入)となりました。これは主として配当金の支払額の増加などによるものであります。
貸借対照表(B/S)
財政状態の概況をご説明いたします。当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ14.7パーセント増加し324億1,900万円となりました。
資産においては、流動資産で前連結会計年度末に比べ18.6パーセント増加し、169億2,100万円となりました。これは主として受取手形、売掛金及び契約資産、棚卸資産の増加などによるものであります。
また、固定資産は、前連結会計年度末に比べ10.7パーセント増加し、154億9,800万円となりました。これは主として投資有価証券の増加などによるものであります。
負債においては、流動負債で前連結会計年度末に比べ25.5パーセント増加し、64億9,800万円となりました。これは主として短期借入金の増加などによるものであります。
また、固定負債は、前連結会計年度末に比べ32.2パーセント増加し、20億6,900万円となりました。これは主として繰延税金負債の増加などによるものであります。
純資産においては、前連結会計年度末に比べ10.9パーセント増加し、238億5,100万円となりました。これは主として利益剰余金の増加などによるものであります。
業績予想
次期の見通しです。精糖事業につきましては、海外からの観光者も増え、国内の観光やイベントも復活し、消費は回復傾向にあります。一方、加糖調製品や他の甘味料の浸食、少子高齢化などによる砂糖の消費減少傾向は続いております。
当社グループは、引き続き営業体制強化を図り、品質管理を徹底して製品の安定供給に取り組むことで顧客満足度を高め、堅実で安定した原材料仕入れを図りながらさらなるコスト削減に努めてまいります。
機能性素材事業につきましては、機能性食品素材イヌリンの国内販売において、肌機能を含めた新たな機能性による既存顧客の深耕及び新規顧客獲得による販売数量拡大を図ってまいります。
海外販売においては、東南アジアでの商圏回復を目指すとともに、米国、インドなどの新たな販路開拓を図ってまいります。ユニテックフーズでは、ペクチンをはじめとする既存の増粘多糖類の拡販をし、長年蓄積してきた技術力を活かして、海外での販路開拓を目指してまいります。
不動産事業につきましては、引き続き、自社所有賃貸物件の維持管理による安定収益の確保に努めてまいります。
以上の結果、2025年3月期の連結業績予想は、売上高277億円(前年同期比7.0パーセント増)、営業利益20億円(同8.0パーセント減)、経常利益23億円(同28.2パーセント減)、親会社株主に帰属する当期純利益17億円(同28.3パーセント減)の増収減益を見込んでおります。
中期経営計画「CHANGE 2028」の策定について
当社グループを取り巻く状況は、少子高齢化による食品業界全体の市場規模が伸び悩んでいる中、エネルギー価格上昇による光熱費高騰、円安による原材料価格の上昇、物価上昇に伴う賃上げによる人件費の増加など、経営環境は厳しさを増しております。
当社グループは、このような経営環境に対応するため、2025年3月期をスタートとした5ヶ年の中期経営計画を発表いたしました。
詳細は、あらためて「中期経営計画『CHANGE2028』策定のお知らせ」をご案内させていただく予定であります。
配当金政策
株主のみなさまへの還元について、当社の考え方をご説明いたします。
当社は株主さまへの利益還元を重視しており、安定した配当政策を維持・継続しております。2024年3月期の年間配当は、上記の考え方に基づき、1株当たり32円(中間配当15円、期末配当17円)とさせていただきました。
なお、次期の配当予想は、減益という厳しい業績見通しではありますが、当期と同額の1株当たり、32円(中間配当15円、期末配当17円)を見込んでおります。
さらに、配当金とは別に、毎年9月30日を基準日として、当社の取り扱っている製品をより詳しく知っていただくために、株主優待制度を実施しております。
バイオインフォマティクスによる酵素開発を⾏うdigzyme社へ出資参画
当社は、糖質原料からの新規素材の開発及びイヌリンの生産のための酵素に係る共同開発をdigzyme社とスタートさせました。同社への資本参画も行い、戦略的パートナーとして同社の酵素開発技術の実⽤化を促進しつつ、当社の既存素材のさらなるバリューアップ及び新たな製品の開発を推進いたします。
さとうきび由来の再生可能エネルギー「グリーン電力」の導入について
当社の電力は大東糖業が発電したグリーン電力を使用しています。大東糖業の製糖工場がある沖縄県の南大東島では産業の大半をさとうきび農業で占めています。サトウキビは、植え付けから製糖工程中に発生する副産物まで余すことなく使用できるエコな作物です。
砂糖を作る最初の工程でサトウキビを絞る作業に入ります。搾りきった残りを「バガス」と言い、これを燃料としてボイラーを稼働させると蒸気が作られます。この蒸気を用いてタービン発電を行っております。
当社は「グリーン電力証書システム」を通じ、東京本社及び清水工場の電力をこのグリーン電力で賄っております。
ご清聴ありがとうございました。