今回のIRセミナーでお伝えしたいこと
荒川滋郎氏(以下、荒川):代表取締役社長執行役員の荒川です。冒頭で事業の内容も少しご説明しますが、今期は提携などのいろいろな動きがあったため、そのあたりをご説明したいと思います。
ストレージ王について_経営理念とミッション
荒川:私どもはトランクルームを展開している会社です。個人のお客さまの荷物を大切にお預かりすることに加え、開発した不動産を投資家に売ることも手がけています。不動産投資家にとって資産の価値が上がるように、荷物を預けたい方と、不動産として運用したい方の間をつなぐ会社として、物を大切にすることも含めて人々の暮らしや社会の未来を豊かにしたいと考えています。
ストレージ王について_会社概要、沿革
荒川:私どもは2008年の創業で、もともとは親会社であるデベロップというコンテナ建築会社の子会社として設立されました。当初はよくロードサイドにあるコンテナ型のトランクルームの運営・管理を行っている会社でした。
2019年頃からは、「屋内型」と呼んでいるトランクルームの開発を開始しました。普通のビルの中をトランクルームに作り替えると空調が効きます。コンテナ型ではどうしても夏場に暑くなるため、衣類などが若干心配な部分があります。
このような空調の効いた屋内型のトランクルームを開発するには、土地を買って建物を建てるために資金調達が必要です。このようなところから、上場を目指すようになり、2022年4月に上場し、おかげさまで3年目を迎えました。
ストレージ王について_保有・管理する店舗の分布
荒川:今年3月に1万室を突破して、全国で173ヶ所のトランクルームを展開しています。このうち100ヶ所超がコンテナ型で、残りが屋内型のトランクルームです。今は関東を中心とし、あとは岡山エリアにもあります。もともと天満屋という百貨店が行っていた事業を私どもが引き継いだため、岡山もシェアが高いエリアです。
コンテナ型のトランクルームは上に雪が積もると厳しいため、豪雪地帯や寒冷地域への出店は難しく、群馬、栃木までは出ているのですが、そこから北までは出せていません。南のほうは九州、沖縄まで展開しています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):質問を混ぜながら進めていきたいと思いますが、最近出店が増加している地域はどのあたりなのでしょうか?
荒川:屋内型は需要の多い東京を中心に作っています。その他の案件に関しては茨城あるいは静岡あたりにも出店しており、後ほどご説明しますが、建築費が非常に上がっているため、今は逆に従来のコンテナ型の出店を増やしています。
2023年度に5店舗くらいだったのを、今年は23店舗を目指していますが、実際にはおそらく30店舗超のコンテナ型の出店が可能だと思っています。ドミナント戦略もあるため、現在は関東、岡山を中心に出店しつつ、土地を探しています。
事業の内容・当社の強み_トランクルームとは
荒川:今お話しした屋内型とコンテナ型のトランクルームは、実際にはそれぞれどのようなイメージなのか、こちらのスライドに写真を掲載しています。屋内型は新しく建てた建物の中をトランクルームにしているケースもあれば、既存のビルの中を改装してトランクルームにしているケースもあります。
左側の写真が屋内型ですが、中にはカーペットが敷いてあり、空調も管理できているため、どちらかといえば衣類などの大切なものをお預けいただくクローゼットのようなイメージでご利用いただいています。また、入口にセキュリティシステムがあるため、夜に荷物整理などを行っていても非常に安心安全な印象です。
一方、コンテナ型はロードサイドにあって車が乗りつけられるため、普段から大型の荷物なども出し入れしやすいため、季節の家電などを長い間預けておくという使い方があります。加えて、例えば工務店が倉庫代わりに資材を置くといったかたちで、商売で使っている方も多いです。
拠点数の順位では、スライド下段に記載のとおり、私どもはまだ20位や15位くらいです。トランクルームは事業の仕組みとしてはそこまで複雑なものではなく、参入障壁も低いため、この事業にはいろいろな会社が参画していますが、私どもは都心型を含めて一生懸命出店を行っているという意味では、わりと拡大している会社だと思います。
事業の内容・当社の強み_サービス展開例①
荒川:私どものトランクルームには、荷物を預けていただくほかに少しずついろいろな機能を加えています。代表的なものをご案内すると、宅配ロッカーです。これが付いていると、荷物をいったんトランクルームで受け取って、そのまましまうことができます。
あるいは商売をしている方などがトランクルームに在庫を置いておいて、注文が入ると、そこで荷造りをして宅配ロッカーに預けて発送するというように、個人で輸入品を販売している方などにご利用いただくケースもあります。
また、マンションの1階に出店しているものもあります。マンションの中の方が使ってもよいのですが、セキュリティラインを工夫することによってマンションに居住していない方が使うことも可能になり、便利にご利用いただいています。さらに、メゾネット型のガレージオフィスとして、1階がガレージで2階が事務所のようなタイプのトランクルームも展開しています。
事業の内容・当社の強み_サービス展開例②
荒川:ワインセラーは南船橋1ヶ所だけなのですが、長期熟成のためにずっと14度くらいの庫内で保管できます。停電の時にも発電装置が稼働します。もちろん家庭の冷蔵庫でも置いておけますが、長い間預けるにはそのような発電装置があったほうが非常に安全です。
また、コンテナ型のトランクルームを工夫し、サーフボードが入るような縦に長いトランクルームや、バイクガレージも展開しています。新型コロナウイルスの影響で、昔バイクに乗っていた中高年の方が再びバイクに乗ることが増えました。しかし、高級バイクは盗難などの心配もあるため、セキュリティがしっかりしたところに預けたいと選んでいただいています。おかげさまでバイクガレージは稼働率も高く、ほぼ100パーセント埋まっている状況です。
事業の内容・当社の強み_サービス展開例③
荒川:我々のトランクルームを併設しているホテルは、元々の親会社のデベロップが「R9 The Yard」というブランドで展開しています。
坂本:けっこう増えていますよね。
荒川:全国に90ヶ所近くあると思いますが、こちらは1部屋が1つのコンテナでできているホテルです。要は、部屋同士が離れているために隣の部屋から音が響かないため、リピーターも多いと聞いています。例えば、出張で1週間泊まる方も多いそうです。
これはグループ会社だからこそ恊働できているケースだと思います。例えば、700坪がホテル建設に適切な大きさとした時に、土地のオーナーが1,000坪持っていたら、そのうちの700坪だけ貸して300坪余っても仕方がありません。そこで、丸々1,000坪をお借りして、余分に借りた部分に私どもがトランクルームを出店します。
ホテルで人が出入りして目立つこともあり、通常の私どもの単独のトランクルームよりも稼働率が上がるのが非常に早いため、グループのシナジー効果がすごく出る案件です。もしかすると長期で出張している方などが荷物を預けているのかもしれませんが、お客さまからも非常に好評のトランクルームです。
また、既存のビル内にも出店しています。笹塚にある普通のオフィスなどで使っていたビルを私どもが改装して、トランクルームにしました。現在は建築費も非常に上がっているため、既存のビルを有効活用したいと考えています。
これは今後、いろいろな取り組みの可能性があると考えています。例えばオフィスビルで何フロアかが空いてしまったために収入が減ってしまったビルの1フロアないし2フロアをトランクルームにするような使い方をします。トランクルームは個人の方も使っていますが、実は弁護士や会計士などの書類保管で使っていただくこともあるため、オフィスビルとの親和性も非常に高いです。
坂本:住宅地だけではなくても作れますね。
荒川:先般プレスリリースも出しましたが、三菱地所の「新宿フロントタワー」というオフィスビルの2階を借りて、トランクルームを作ります。工事はこれからですが、私どもとしては、今までは住宅の近くで季節の家電や冬物・夏物衣類などを預けるのが普通のトランクルームの使い方だったものの、オフィスの近くでも荷物を預けたいというニーズがあるのではないかと期待しています。
例えば、仕事帰りにフィットネスに寄って帰る方が着替えを入れておいたり、スーツケースなどは家に置いておくよりも、会社の近くに置いておいて、出張に行く時にそこから取り出して、家に持って帰って荷物を詰めて出かけたりといった使い方もあるかと思います。
坂本:トランクルームは、小さい区画から大きい区画まで取り揃えているのでしょうか?
荒川:一番小さいのはロッカータイプと言い、上下2段になっているものです。
坂本:それこそスポーツジムの着替えを入れられるようなものでしょうか?
荒川:それよりは若干大きめですが、そのようなサイズもあります。小さいサイズなら1万円を切る値段で借りられるため、スーツケースなどを置いておくにはオフィスの近くにあっても便利ということで、今後はオフィス向けにも展開していきたいと考えています。
また、トランクルームは電話受付などでけっこう手間もかかるため、既存の施設でトランクルームを運営していた事業者が私どもに運営だけ任せたいということもあります。スライドには行徳の例を記載していますが、私どもが運営だけを預かって実行しているケースも現在は増えてきています。
事業の内容・当社の強み_トランクルームの不動産特性
荒川:お客さまがトランクルームとして使うという要素もありますが、先ほどお話ししたように、投資家が収益不動産として保有する場合にどのような特徴があるのか、こちらのスライドで簡単に整理しました。
アパート・マンションと簡単に比較していますが、一番大きい特徴は、建物が古くなっても賃料が減りにくいことです。アパート・マンションは築10年のものと新築のものが隣り合っていた時に、一般的には新築のほうが値段が高くつきやすい傾向があります。しかし、トランクルームは築年数を気にして借りる方はあまりいないため、5年たっても10年たっても不動産としての価値が下がりにくいところが一番大きな特徴かと思います。
一方、悪いところを先にお伝えすると、埋まるのが遅い点が挙げられます。そのため、アパート・マンションのほうが早くから収益が上がりやすいところはあります。
もう1つの特徴として、トランクルームは基本的に水回りがないため、5年、10年たった時の追加の設備投資がいらない、あるいは改修投資が少なく済みます。これは私どもの有価証券報告書などでも開示している情報ですので、メットライフ生命などの不動産投資家にもお持ちいただいていますが、投資不動産としてのボラティリティが少ないです。購入して5年、10年と運営してもテナントの出入りが少なく、設備投資も少ない点が評価されており、そのような投資案件として不動産投資家には見てもらっています。
事業の内容・当社の強み_事業内容分類
荒川:私どもの事業内容です。スライドのグラフの青い部分が運営管理事業で、全体の22.5パーセントとなっています。こちらはストック収益という言い方をしていますが、私どもが運営・管理しているトランクルームのように、今ある資産で稼げているのはまだ2割強しかありません。
一方、開発分譲事業という、私どもが作ったトランクルームを外部の投資家に売って稼ぐ部分が7割超あります。また、トランクルーム以外の資産も少し扱っているため、その他不動産取引も4.4%あります。
後ほど事業計画の中でご説明しますが、運営管理事業の比率をどんどん高めていき、それにより収益を安定させたいというのが今後2、3年の方針です。
事業の内容・当社の強み_3つの力と当社のお客様
荒川:私どもの競争力の特徴として、スライドに3つの力を挙げています。1つ目が運営力、2つ目が仕入開発力、3つ目が物件売却力です。
運営力とは、私どもはトランクルーム事業を長く手がけているため、運営者としてのノウハウがあるということです。例えば「トランクルームをここに作るなら、このような部屋割りにしたらよい」といったトランクルームを作るためのノウハウがあり、お客さまに快適に使っていただくための能力があると考えています。
仕入開発力とは、トランクルームに適した土地を探す能力のことです。トランクルームに必要な土地はマンション用地よりも小さめで、都心型の案件では延べ床面積で200坪くらい建てられる土地を探します。あまり大きいと埋まるのに時間がかかり過ぎるため、大きすぎないトランクルームをたくさん作る方針です。
私たちは不動産仲介業者や信託銀行などいろいろな土地の情報を持っている方とコネクションができているため、良好な関係から土地の情報が入りやすいことが仕入開発力だと考えています。
また、不動産投資家の中にはトランクルームの不動産特性を気に入って、繰り返し買ってくださるリピーターがいます。そのため、売れるだろうとわかるからこそ土地の仕入れが素早くできるところもあります。土地を仕入れて、安定した出口として私どもがトランクルームを使うという、最終的な不動産ユーザーとしての側面があるがゆえに物件売却力が強いのだと思っています。
事業の内容・当社の強み_強固な開発力「仕入、建築、売却」
荒川:我々がどのような仕事をしているかというと、まずはいろいろな土地の情報を調査します。そして、その土地にどのようなトランクルームを作ればよいかを企画・開発します。
これまでにかなりの軒数を作っていますので、どのくらいのコストがかかるのか、どのくらいの期間で貸し出せるようになるのか、出来上がった時の不動産の利回りがどのくらいになるかはある程度わかります。そのため、投資家に非常に売りやすく、仕入れから最終的な運営まで手がけることができ、自分たち1社でノウハウを積み上げられることが強みだと思っています。
坂本:土地の仕入れはすごく重要だと思いますが、好立地の場所は取り合いになっていると思います。ライバルはどのような会社になりますか? 例えばマンションデベロッパーなのか、ホテルなのか、そのあたりを教えてください。
荒川:ご指摘のとおり、トランクルームを使う人口密度の高い場所に出店したいと考えるため、マンションデベロッパーとは当然ぶつかり合います。
坂本:小さくても建てるということですよね。
荒川:それに加え、駅から離れていてもよいところがマンションデベロッパーとの違いです。
坂本:マンションですと、駅から徒歩10分以内にしたいですよね。
荒川:トランクルームは車で荷物を運び込む方が多いため、駅に近いというよりは道路からのアクセスが良く、車が出入りしやすいところが特徴です。オフィスやマンションはどうしても最寄り駅が欲しいですが、トランクルームはそれがなくてもよいですし、むしろ駅から徒歩15分、20分ほど離れている土地のほうが逆にありがたい場合もあります。そのあたりの考え方が少しずれていると思います。
一方、自分の会社用の物件を探している方などとは競合するため、ぶつかり合った場合は値段がつり上がることがあります。
坂本:経営者が自社物件を探しているケースですね。
荒川:そのような方とは真正面からぶつかることがあります。
坂本:駅から近い土地よりはライバルは少ないイメージですね。
荒川:そうですね。また、ロードサイドにコンテナ型の出店も行っています。例えば、コンビニでも、今は300坪、500坪というサイズで出店します。
坂本:最近のコンビニは大きくないと逆に儲からないようですね。
荒川:私どものトランクルームは100坪くらいから作れるため、そこも大きさの違いで用地を獲得できています。
坂本:逆に大型コンビニの跡地に進出することもあり得るのでしょうか?
荒川:はい、そのような意味では棲み分けていると思います。
事業の内容・当社の強み_フロー収益とストック収益の循環
荒川:解約率が少ないことも強みです。もちろん引っ越しに伴う解約はありますが、一度荷物をトランクルームに入れて、自宅の荷物が減ると快適ですし、それをまた預け直すのも大変です。また、日本には四季があるため、こたつと扇風機の入れ替えや、夏物・冬物衣類の入れ替えなどは毎年繰り返すことになりますが、いったん預けるとやめにくくなります。
先ほど、今後はストック型収益を増やしたいとお伝えしましたが、トランクルームは非常に安定的に収入増加が期待できる不動産だと思っています。
坂本:都心の地価やマンションの価格上昇によって、部屋1室あたりの面積が狭くなっていることも追い風なのではないでしょうか?
荒川:おっしゃるとおりです。感覚的に言うと、例えば3LDKは10年前、20年前には70平米を超えていました。しかし、今では70平米を切ります。
坂本:60平米台前半、下手したら50平米台の3LDKもたまに見ますよ。
荒川:マンションデベロッパーとお話しすると、廊下を少なくしたり、収納を少なくしたりするそうです。
坂本:廊下に収納がありますよね。
荒川:そのような物件の場合、お客さまから「収納が少ない」と言われた時に、「大丈夫です。すぐ近くにトランクルームがありますから」という売り方をしているという話も聞きます。
坂本:なるほど。数年分のトランクルーム契約が付帯したマンションもありますよね。
荒川:加えて、テレワークが増えて家にいる時間が長くなったこともトランクルームにはプラスの方向で働いていると思っています。
事業の内容・当社の強み_収益構造(①ストック収益)
荒川:スライドの図は、私どもの商売の業務フローです。まず利用者に対しては、利用料を頂く契約を結んでいます。そして、私どもが作ったトランクルームを購入した建物所有者から借りるかたちで賃料を支払います。あるいは、土地を借りてコンテナ型で建てているケースでは、土地所有者に地代を支払っています。このように不動産所有者から土地や建物を借りて、それを利用者に貸し出すのが基本的なビジネスストラクチャーです。
一番左に利用料の例を記載していますが、コンテナ型の案件は2帖(1坪)で1万円くらいです。都心型では2万円超くらいですが、1帖なら1万円台でお使いいただけます。畳1枚分あればけっこうな量が入りますので、大きめのクローゼットのように使っていただける値段感で貸し出しています。
事業の内容・当社の強み_運営管理上の優位性
荒川:コンテナ型とビルイン型の特徴として、温度管理ができないことがコンテナの弱みです。また、当社には保証会社が入っていることもあり、不動産投資家から見た時に、家賃の取りっぱぐれが少ないところも強みだと思っています。さらに、クレジットカード決済や銀行振替など、いろいろな決済手段をご利用いただけます。
事業の内容・当社の強み_収益構造(②フロー収益)
荒川:物件を売る時のスキームとしては、私どもが土地を仕入れて建物を建てる、あるいは土地を借りてコンテナを置いた後、不動産投資家に売っています。
事業の内容・当社の強み_土地所有者から見た事業の優位性
荒川:先ほど、トランクルーム用地がライバルとぶつかるかという話が出ましたが、1つの事例をご紹介します。スライド右下に、江戸川橋の案件の建築レイアウトを記載しました。ご覧いただくと、右手側にある道路に向かう間口が狭くなっています。実は白く欠けている部分を地上げできればマンションが建つような土地なのですが、ここが欠けているためにマンション用の窓が取れないのです。しかし、トランクルームは窓が少なくてもよいため、このような変形地型でも作ることができます。
また、コンテナ型の建築ですので基礎はしっかり作ってありますが、上物はボルトを外せば移築することができます。そのため、土地を貸してくださるオーナーに対して「15年定借で借ります」と言った時に、「15年後、本当に出て行ってくれるの?」と聞かれても、「きちんとどけて、また別の所で使いますから」と返せます。このように撤退できることは地球環境にも優しく、再利用ができるサステナブルな建築方式ですので、土地利用の観点でも安心感があると思います。
事業の内容・当社の強み_投資家から見た当社事業の優位性
荒川:過去2年分のトランクルームの実績をスライド左下に記載しています。屋内型の案件については、2023年は江戸川橋、尾山台、そして沖縄にも初進出しました。2024年に入ってからは、下目黒、西大井、東長崎に出店しています。
品川区と目黒区については、今年初めて屋内型のトランクルームを出店しました。このエリアは住宅地が多いことに加え、下目黒辺りはマンションが高価ですし、後ほどタイムズとの連携のお話もしますが、駐車場代も非常に高価です。車を使って荷物を運ぶ時にも、自家用車がない方がいるため、これがカーシェアとの連携を思いついたきっかけなのですが、今後はより住宅街に寄った場所への出店も強化していきたいと考えています。
また、コンテナ型については右下に記載のとおり、岡山や茨城といったエリアに出店しているのがこの2年ほどの動きです。
事業の内容・当社の強み_投資家から見た当社事業の優位性
荒川:トランクルームに関して、我々はいろいろな取り組みができます。まず自分たちで屋内の大型案件を14棟くらい作っています。
また、住居・事務所併設型の出店も行っています。スライドには「南行徳第2」と書きましたが、これはマンションの下に冷蔵倉庫があるという変わった物件です。冷蔵倉庫を使っていたオーナーが売却したという情報が入り、その冷蔵倉庫部分をトランクルームに改装しました。上がマンションで下がトランクルームという構造になったのですが、マンション居住者から見ても、トランクルームはそこまで人の出入りが多いわけでもなく、うるさくもないため、これから住宅併設型をもっと増やしていけないかと思っているところです。
坂本:住んでいる人も、トランクルームがあったら便利ですよね。私が住んでいるマンションでも取り合いになっていて、抽選に当たらないと使えません。
荒川:今あるのはビル型のものですが、もっと小さい物件でもできると思っていまして、今後はアパート併設型のトランクルームも作りたいと考えています。オーナーから見ると、自分が住んでいる下の階を貸し出していると騒音問題があります。
坂本:1階の入居率が低いため、そこがトランクルームになれば特に良いですね。
荒川:トランクルームは音も静かですし、そのような組み合わせは今後ありえるかと思います。
事務所併設型としては、沖縄の初出店の案件は1階が事務所になっています。事務所との相性も良いため、いろいろなかたちの展開が可能です。
さらには先ほどお伝えしたホテル併設型や、既存ビル、商業施設内への出店もあります。千葉県のユーカリが丘では、ショッピングセンターの4階を借りてトランクルームを運営しています。イオンなどもショッピングセンターの中にトランクルームを作っていますが、先ほどのオフィスに近いトランクルームと同様に、買い物ついでに荷物をしまうのはけっこう便利だと思っています。
「食品を入れてください」とはあまり大きな声で言えませんが、例えば子育て中の家庭でしたら、文房具を買って置いておいたり、オムツがバーゲンになっているから買っておいて、買い物ついでにそこから取り出して家で使ったりしていただけます。切れてなくなったら困る物なども含めて使っていただきたいと考えています。
2024年1月期の実績_決算の推移
荒川:今後の数字についてです。2024年1月期は売上高33億2,500万円、当期純利益が1億900万円でした。昨年度に出した3ヶ年計画ですと、今年度は売上高34億円くらいだと思っていたのですが、実は建設費がすごく上がっています。
坂本:それが売上に影響しているのでしょうか?
荒川:売るボリュームを増やさないと利益が確保できないため、売上高を上方修正しています。残念ながら、粗利率自体はそこまで高くはなっていません。
坂本:一応、利益のボリュームはついてくるのですね。
荒川:利益のボリュームを出すために規模を拡大せざるを得ないと考え、今年度の売上高は38億円で計画しています。来年以降はまだ物件が決まってないため予測値になりますが、来年度の売上高は40億円くらいの計画です。
ただし、来年以降は物件をどんどん売っていくよりは、ストック型収益を増やしたいと考えています。そのため、売上高はそこまで伸ばさずに利益を確保していくかたちへと、この1年、2年で企業体質を切り替えていきたいとの方針が、こちらの数字に表れていると思います。
2024年1月期の実績_BS
荒川:バランスシートの状況です。私どもは不動産を仕入れるために現預金もある程度は持っておきたいと考えています。
また、スライドには棚卸資産が約11億円と書きましたが、来期に売る物件のために仕入れた土地代などの部分です。ここが非常に積み重なっており、それに伴って借入金も多くなっています。
2024年1月期の実績_CF
荒川:営業キャッシュ・フローがマイナスなことを心配に思うかもしれません。しかし、売却用の不動産を仕入れているがゆえに赤字になっているだけですので、在庫が積み上がっている結果とご理解いただければと思っています。
2024年1月期の実績 開発分譲・その他不動産の状況
荒川:昨年度に手がけた案件の実績はスライドのとおりです。右側には、先ほどお伝えした下目黒と沖縄のトランクルームの様子を掲載しています。
2024年1月期の実績 運営管理の状況
荒川:トランクルームの部屋数はようやく1万室まで到達しました。また、前期に比べて稼働率も上がっていますし、部屋数も増えつつあることが数字としても表れているところです。
2024年1月期の実績_アーバネットコーポレーションとの業務提携
荒川:アーバネットコーポレーションというマンション開発の会社と業務提携を行いました。これはマンションと土地の特性が少しずれていることを踏まえたものです。マンションの1階への出店などもこれから行っていきたいと思っています。
2024年1月期の実績_タイムズモビリティとの営業連携
荒川:タイムズカーとの連携については、我々としてはカーシェアを使って荷物を運んでいただきたい、タイムズとしては会員を増やしたいという両者のメリットが一致したことから実行しました。
2025年1月期の実績_バリュークリエーションとの業務提携
荒川:バリュークリエーションは、「解体の窓口」という家を解体する業者を探すサイトを運営している会社です。解体を依頼するお客さまのうち2割くらいの方は、解体後に土地を売りたいと考えているそうで、トランクルームに使える土地があれば私どもが買わせていただきたいと思っています。そのような意味でお客さまにとっても非常に役に立つ業務提携です。
2025年1月期重点課題と今後の事業計画_KPIの推移
荒川:店舗数は現在170店舗を超えていますが、今年の年度末にコンテナ型の出店を増やしていくのも踏まえ、200店舗超までいくだろうと考えています。部屋数も今1万室に達し、今年は1万1,700室くらいまで増えると予想しています。
2025年1月期重点課題と今後の事業計画_方針
荒川:実際にどのような政策を打っていくかという中で、注目したいのがリーシング強化です。また、いろいろなマーケティング強化や、コンテナ型の出店も強化し、都心型の出店も変わらず継続していきます。さらに、一級建築士事務所としての取り組みもこれから行っていくために、許認可を取得しました。
2025年1月期重点課題と今後の事業計画_【1リーシング強化】
荒川:マーケティング強化としては、意外と若い女性に使っていただいていなかったこともあり、「このような使い方がありますよ」という提案も含め、これから情報発信していきたいです。
坂本:スライドの事例は、雑誌のPR広告ですか?
荒川:おっしゃるとおりです。いろいろな推し活をしている方に使っていただきたいと思い、部屋の中が片付くようにと宣伝しています。
2025年1月期重点課題と今後の事業計画_【2出店形態の戦略的配分】
荒川:こちらのスライドは、不動産投資家向けのご説明です。建築型はグロース利回りで8パーセントくらいですが、コンテナ型は土地を借りるケースがあるため、10パーセントを超える利回りがあります。
重点課題と今後の事業計画_【3首都圏屋内型物件の出店継続】
荒川:今年は、横浜市や世田谷区、渋谷区といった都心型の出店も計画しています。西新宿、亀戸、南砂などはマンションが非常に増えているエリアで、今の時代に沿った出店をしていきたいと考えています。
重点課題と今後の事業計画_【4アセット拡大と投資家への営業強化】
荒川:不動産投資家はトランクルーム以外も求めているため、そのようなところへの物件売却に向けて、オフィス、ホテルなどにも取り組みます。
重点課題と今後の事業計画_【5一級建築士事務所の事業取組】
荒川:スライドに記載のとおり、一級建築士事務所を取得しました。
重点課題と今後の事業計画_目指す売上損益
荒川:先ほどもお伝えしましたが、今年度の売上高は38億円、前年比約114パーセントの伸びとなる見込みで、利益を確保するために売上規模が大きくなっています。また、販管費も増えていますが、これは仕入れのために人員を増やしたことが要因です。
坂本:御社には作った物件を売却するフロー型収益と、運営管理の報酬と自社の稼ぎによるストック型収益の両方があると思いますが、今期の増益の大部分はどちらが伸びるイメージでしょうか?
荒川:フロー型が牽引しています。収益型不動産を売ったり、店舗数が増えたりしていることからストック型の売上高は伸びているのですが、利益はそこまで伸びていません。一方、フロー型は物件の開発を増やしているため、売上高・利益ともに伸びている状況です。
重点課題と今後の事業計画_3カ年計画
荒川:今年度の売上高38億円から、来年度以降はストック型収益を増やしていくため、売上自体はそこまで伸びませんが、利益を伸ばしていくかたちで推移していきたいと思っています。
重点課題と今後の事業計画_物件の自社保有化
荒川:ストック型収益を増やすために、一部自社物件も増やそうと考えています。今まで物件を売った後に借りることで、投資家に差し上げる分の利益が出て行っていました。自社物件にすればその分も全部こちらに入るため、運営管理事業の売上構成比を、この2年、3年で今の倍くらいにし、企業の体質を強化したいと考えています。
重点課題と今後の事業計画_物件の自社保有化
荒川:現在は運営管理事業の売上構成比が22.5パーセントしかないのですが、2027年1月までに4割くらいになるよう、今、中期的な見通しを立てています。
重点課題と今後の事業計画_中長期的成長戦略
荒川:中長期的成長イメージとして、開発事業や運営事業について具体的な話が出来上がっているわけではありません。しかし、単なる場所貸しの保管事業だけではなく、もっといろいろな保管の方法や保管に伴う付帯的なサービスについて、多様な会社の方と打ち合わせをしたりアイデアを出したりしながら、新規事業に取り組んでいくための準備をしています。
質疑応答:コンテナ型の出店増の背景について
坂本:今期、コンテナ型の出店を増やすとのことでしたが、これには建築費の高騰以外にも何か理由があるのでしょうか? コンテナ自体の価格も上がっていると思いますが、そのあたりも含めて教えてください。
荒川:ご指摘のとおり、コンテナ自体も中国から仕入れているため円安の影響で値上がりしていますが、在来型の建築費の上がり方に比べるとまだマイルドです。
現在は、エレベーターの供給が非常に少ないため、その影響で工期が延びています。また、働き方改革によってゼネコンと運送業者の稼働スタイルが変わってきており、工期が延びるリスクもあるため、今期はコンテナ型に注力します。
加えて、コンテナ型の店舗が非常にありがたいのは、1ヶ所の部屋数が30室前後と少ないことです。
坂本:短期でどんどん借りるということですか?
荒川:すぐに埋まりやすいです。在来建築型は100室から200室くらいあり、埋まるのに2年、3年かかるところがあります。一方、コンテナ型は早めに埋まるため収益化も早いです。私どもは幸いにも、時期によってコンテナ型も作れるし在来建築型も作れるため、今期は工期の短いコンテナ型に注力していくことで上手くいくかと思っています。
質疑応答:都心型木造案件について
坂本:都心型木造案件への取り組みについてお聞かせください。
荒川:池尻の案件を木造で建てようと思っています。土地は、今までよりも小さい40坪程度、延床面積でも80坪くらいです。鉄骨造より木造のほうが建築コストが安いのと、売上の規模も今まで鉄骨造では5億円くらいだったのが、こちらは2億円くらいのサイズ感になります。
最近は投資家のニーズも変容しています。そのため、「相続のために不動産が欲しい」「家の近くで投資物件があれば欲しい」という方向けの案件で、住宅地も近いため、機関投資家ではなく個人投資家にも買っていただけるかと思います。
そして、工期が短く、建築費が安いというメリットもあります。住宅により近い小型物件は、お客さまにとっても荷物を預けやすい場所であるため、今後増やしていきたいと思っています。
質疑応答:一級建築士事務所の登録について
荒井沙織氏:一級建築士事務所の登録によってできるようになることを少し具体的に教えてください。
荒川:これまで私どもは、「土地を持っているのでここにトランクルームを建てたい」「オフィスビルからテナントが抜けてしまったのでトランクルームにできないか」といった要望があると、コンサルティング的なかたちでお手伝いすることはありました。
実際にレイアウトを提案する時に、私どもが建築士事務所を持っていると、内装の提案や、新築する際に「このような建物を建てればトランクルームにできる」という、自社で設計したものを提供することが可能になります。不動産業界では「有活」などと言いますが、土地や空き部屋を有効活用したい方向けのいろいろなサービス機能が増えたということです。
坂本:建築確認を出すのも大変ですし、関西などではコンテナについてもおそらくうるさいですよね。そのようなのも自社でできてしまうということですね。
質疑応答:配当に対する見通しについて
坂本:「設備投資が大変なようですが、配当に対する見通しを教えてください」というご質問です。私は、御社のようなグロース市場の会社は配当は後回しでもよいと考えていますが、ざっくりとしたイメージでよいのでお聞かせください。
荒川:ご指摘のとおり、まだまだ事業を拡大したい、会社の基盤を強くしたいと思っているため、配当については慎重に検討しています。当然、投資家の方への還元は最重要事項だと認識していますので、配当もしくは株主優待をなるべく早いタイミングで実施したいと思って、研究してはいますが、まだ意思決定はできていません。
坂本:確かに御社としては株主優待のほうが相性が良さそうですね。
荒川:個人投資家の方も多いため、そのようなことも考えています。
坂本:自社管理の物件であればよいですが、他の方が管理している部分で優待を出してしまうと、また負担になるということですよね。
荒川:消費財を作っている会社であれば優待も出しやすいですが、そのようなわけにはいかないため、いろいろな方から知恵を拝借しながら検討しています。
質疑応答:利益を伸ばすための改善点について
坂本:「売上は伸びているのに、利益が伸びていないのはなぜですか?」というご質問です。先ほどもご説明いただきましたが、改善策としては建設費が低いコンテナ型や木造のトランクルームも作っていくとのことでした。それ以外にもここを改善すれば利益が伸びるのではないかという部分があれば教えてください。
荒川:具体的には実行できていないのですが、場所を作り、場所を貸すこと以外で荷物を扱うサービスができると利益が上がっていくのではないかと思っています。例えば、荷物の運搬は私どもが自力ではできないため、どのような方と組めるか考えています。そのように、家財の管理全般に広がっていくとよいと思っており、いろいろな研究をしているところです
坂本:なんとなくイメージが湧きました。確かに「トランクルームと区切られていなくてもよい」という話ですね。
質疑応答:クリアルとの業務提携の目的について
坂本:「クリアルとの業務提携の目的について教えてください」というご質問です。クリアルはクラウドファンディングにかなり早めに取り組んでおり、個人投資家との接点も相当ある会社だと思います。個人投資家に小口の区分を販売するようなイメージかと思いますし、機関投資家のブリッジにもおそらく使えるかと思います。まだ決まっていない部分もあるとは思いますが、イメージを教えてください。
荒川:業務提携する以前から、私どもの物件をクリアルが小口化することについて研究していました。しかし、具体的に何件かやり取りしたのですが、最終的に条件がすりあわず、まだできていません。
私どもの物件売却の出口として、今、大口の投資家の方にけっこう買っていただいているのですが、ビジネスが成熟してきた時には、個人の方に小口化したほうが売りやすい時期が来る場合もあります。その時にはクリアルとの提携で、不動産特定共同事業法のいろいろなスキームを使った売り方も行っていきたいと思っています。具体的には、これから何か良い案件ができると思います。
坂本:クラウドファンディングに合う利回りですので、可能かとは思います。あとは仕組み作りということですね。
質疑応答:今後の出店地域について
坂本:「今後の出店地域で、これから力を入れていきたいのはどこですか?」というご質問です。
荒川:相変わらずマンションの値段がこれだけ高い中でも、都心エリアのニーズは高いため、まだ進出できていない港区なども狙いたいと思っています。先日、幸いにも西新宿の土地を仕入れられたのですが、より商業的な場所に近いところにも出店の目があるかと思っています。
例えば、表参道では居住者の家が狭いことが多いですし、アパレル会社などが在庫置き場として使うことも考えています。店頭は1階の路面店だと坪5万円、6万円ほどなので、在庫管理にはトランクルームを利用していただくほうが安価に済みます。
変な話、トランクルームの建築費自体はどこで建てても同じですから、土地が高くてもエンドユーザーの利用料が高いところを狙っていきたいです。そして、コンテナ型は、相変わらず地方でどんどん出していけると思っています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:オフィスをトランクルームにリノベーションしようとすると、荷重が不足しているという場合があると思いますが、どのように対応しているのでしょうか?
回答:これまで事例は無く、対応が不要でした。荷重が不足している案件があれば個別に検討して参ります。
<質問2>
質問:コンテナのメンテナンスに対するコストはどのくらいかかるのでしょうか?
回答:ケースバイケースのため具体的にはお答えができません。水回りなど設備関係のメンテナンスが不要なため一般的なアパート・マンションなどに比べると低いコストになっています。