2024年8月期第2四半期決算説明
山田雄一郎氏(以下、山田):みなさま、こんにちは。トリプルアイズ代表取締役の山田です。2024年8月期第2四半期決算説明会を行います。
決算説明資料はIR資料としてすでに開示しています。本日は四半期概況と成長市場におけるM&Aと成長戦略の2つのパートに分けてご説明します。
前半は実績の結果についてです。売上高が前年同期比2倍弱の伸びとなり、四半期ベースで過去最高利益になりました。後半は将来成長をどのように実現していくのか、しっかりとお話ししたいと思います。
ソフトのAIとGPUマシンというハードの両方を併せ持つ我々の独自性は、AI会社がたくさんある中において、他にはあまりないものだと思っています。後半ではその独自の将来成長戦略についてご説明します。よろしくお願いします。
過去最高の業績を達成(四半期ベース)
業績サマリです。スライドのグラフは、6四半期分の売上高と各段階利益の推移です。
過去最高の業績を達成し、売上高・各段階利益いずれも過去最高になりました。事業そのものの成長に加え、その事業が成長、拡大していく中での経営改善を図り、利益も向上しています。
売上高は前年同期比185.1%
こちらのスライドは上期累計の業績です。赤字で記載しているとおり、売上高が前年同期の約10億円から当期は約20億円と、約2倍に増加しました。
もう1ヶ所、赤字で記載している売上総利益の伸びは、売上高以上の224パーセントとなっています。
稼ぎ頭である成長事業の規模が拡大しており、事業でキャッシュを稼ぐ指標としてのEBITDAは、半期で1億円を超えました。このAIソリューション事業の稼ぐかたちを仕組み化し、販管費も将来成長を見据えつつ適正水準にすることで、利益の黒字化を目指しています。
AIソリューション事業、オーガニックに成長し黒字転換
AIソリューション事業の四半期概況です。AIソリューション事業では、2019年から「AIZE」というプロダクトを始め事業力が少しずつ顕在化してきています。オーガニックな成長とともに黒字転換を達成しました。
内容を分けてご説明します。スライド上段のSI部門についてです。昨年に新卒メンバー24人がジョインし、さらに規模が大きくなっていく中で、営業、BP含むすべてのメンバーの努力の積み上げにより、過去最高売上高および売上総利益を達成しています。
下段のAIZE部門についてです。売上高は前年同期に2.8億円だったところ、当期は4.1億円と約1.5倍になりました。販売パートナーは53社となり、他社サービス連携として、Teamspiritさま、ソニービズネットワークさま、アスピットさま、バディネットさまなどのサービスに「AIZE」プロダクトが連携するかたちが広がっています。
また、生成AIのニーズをはじめとしたAIラボ契約や大型の請負案件のプロジェクトが拡大しています。
画像認識プラットフォーム・AIZE、10万IDを突破!
先日、ニュースリリースさせていただいたとおり、2019年の「AIZE」のサービス立ち上げから、約5年で1つの区切りとなる10万IDを達成しました。販売パートナーも50社超となり、日本全国の大小さまざまなお客さまの声を取り入れてブラッシュアップしたサービスになってきています。これから、さらに安定的に隅々に広がっていくのではないかと思っています。
何より、地道な小さな努力の積み重ねによって自社サービスが広がることは、私自身にとっても本当にうれしいニュースです。
市場投入フェーズから利益創出フェーズへ転換
AIソリューション事業の今後についてまとめました。スライドに記載したとおり、プロダクトを市場投入していくフェーズから利益創出のフェーズへと、フェーズが変わってきたのではないかと考えています。
我々はAI顔認証・画像認証の技術力でプロダクトを立ち上げましたが、「言うは易し」で、本当の意味での社会実装というのはなかなか簡単ではありません。
これまでに投じてきた開発費は累計7億円超と開示しました。AIの社会実装という大きなことにチャレンジしているということですが、ベンチャーならではの効率的な投資により、このプロダクトを磨き上げてきました。
スライド右側の上から2段目と、左下の棒グラフでお示ししたとおり、既存プロダクトの研究開発投資の水準は、プロダクトを安定稼働しつつ、少しずつ抑えていくことが可能になっています。
そのような中で利益が創出され、右側の上から3つ目の段に記載したとおり、「AIZE」の累計ユーザーは10万IDを突破しました。プラットフォームの価値がさらに増加していきます。好循環が生まれるフェーズに入ってきたと思います。
また、一番下の段に記載したとおり、「AIZE」のプラットフォームとしての価値が、今後、M&Aなどによりグループインされる会社にも、その会社がさらに伸びていくプラスアルファの好循環を生み出します。
したがって、左上の図のように、コアな技術力の価値がサイクルのように回って好循環を生むと考えています。
GPUサーバー事業、黒字化を達成
GPUサーバー事業です。今回は連結に取り込んでから2回目の決算になります。スライド下部のグラフからおわかりのとおり、第1四半期に比べても大きく伸びています。
内容としては、大型の案件受注に伴い、仕入れ価格を抑制できました。トリプルアイズとゼロフィールド社との連携の効果や営業体制の強化が寄与しました。外部環境としてエネルギー価格・電気代の安定、暗号資産価格の上昇機運があり、加えて、既存顧客からのリピート購入も増加しました。
別途、四半期報告などでも開示していますが、暗号資産を研究開発目的で保有しているため、その評価益も営業外収益に含まれています。
四半期ベースで見ますとボラティリティのある事業ですが、成長が続いていくことを強く実感しています。
ブロックチェーン、生成AIと、コンピューティングパワー
GPUサーバー事業は、直近の売上高や利益だけでなく、未来を動かしていく事業だと考えています。「生成AI」「暗号資産」という言葉は、現在、最も注目を浴びているキーワードだと思います。
日本ではようやく少しは認知されたといえる暗号資産ですが、アメリカでは1月に米国証券取引委員会(SEC)で上場投資信託としてビットコインの現物ETFが承認されました。そのため世界中の機関投資家が流入しています。
さらに、本年4月には暗号資産発掘者に対する報酬が半分となる「半減期」といわれるイベントがあり、世界中が注目しています。
スライド右上に記載のとおり、NVIDIAに対する株式市場の盛り上がりは言わずもがなですが、マイニング会社のCoreWeaveがクラウドGPU事業にシフトし大きく成長した事例も参考になると思います。
唯一無二のAI企業として第2の成長フェーズへ
業績イメージです。今期の売上高は40億4,500万円を見込んでいます。
東証グロース市場において10億円以上の売上高がある会社として、我々は、テクノロジーズさま、GENDAさまに次いで3位という状況です。既存事業のオーガニックな成長とM&Aにより、さらに伸ばしていきたいと思っています。
AIベンチャーはたくさんありますが、我々はAIのソフトの技術力とGPUマシンのハードを扱う唯一無二の会社だと思っています。次の成長に向けて必ず加速していきたいと考えており、その思いをスライドの赤い炎で表しています。
IT設備投資は継続的な増加傾向
成長市場におけるM&Aと成長戦略についてです。これまでの実績と、今後の成長イメージをどのような戦略で実現するのかについてご説明します。
市場環境について、いくつかご説明します。スライドのグラフをご覧ください。我々のAIソリューション事業において、基盤となる部分の売上高・利益が確実に向上していくという観点で、各企業のIT設備投資の状況は重要です。グラフから、設備投資の活況が見受けられます。
AI市場は加速成長を継続する局面へ
AI市場の動向について、すでに聞き慣れたものかと思いますが、あらためてご説明します。スライド左側が国内、右側が世界のAI市場規模です。
AI市場の盛り上がりはとんでもない上昇幅を見せており、それが継続している状況だと認識しています。
AI Actなど、各種規制およびAI活用に対する企業の不安
しかし、市場が成長していくからと言って、浮かれてばかりはいられません。最近も著名人を騙るなりすまし広告の増加など、深刻なニュースが続いています。
EUのAI Actをはじめ、AI活用が広がっていくほどにリスク対応の強化も同時に進んでいると認識しています。
ユーザーはセキュアな生成AIを求めている
こちらのスライドは、先ほどの国レベルの規制と同様に、ユーザー自身がセキュリティの信頼性の高さをより重視していることを感じられるデータです。「みんなが使っている」「かなりのスピード感で活用が広がっている」という期待値の裏返しとして、このようなデータが出てきています。
AIとGPUを連携、柔軟でセキュアなAIサービス提供
そのような中で、トリプルアイズ・グループとしてはこれまでも、「AIZE」プロダクトを通じて、スライド右側に記載したクラウド環境の柔軟性や左側のセキュアなオンプレミス環境を、お客さまのニーズと向き合いながら提案してきました。加えて、ソフトウェアとハードウェアの両方の知見から、単なる技術力の高さだけではなく実装面を重視して行っていました。
さらに、これまでお話ししたように市場環境の変化が非常に大きい中で、ゼロフィールドのGPUサーバーというハード環境の最適提案、その時代に合わせた当社ならではの提案を行っていきたいと思っています。
業種、業界、顧客ごとのニーズにフィットしたAI
我々はエンジニア集団の会社です。生成AIを活用しエンジニアとしての業務改善活動も日々行っています。
そのようなことも通じて、たくさんある業種、業界、顧客のニーズにフィットしたAIソリューションを提案しています。AIという言葉が当たり前になっていく中で、ニーズがますます細分化していると感じます。
個別なニーズ、シーズを掘り起こすコンサルティング
スライド左側に、我々のAI導入提案の実績を4つ並べています。
各社、この新しい分野において、AIを使って何ができるのかを本気で模索されているため、詳細をお伝えできないのは残念なところではありますが、当社としても、技術屋としてのコンサルティング活動のニーズが高くなっていることを強く感じています。
生成AIとマイニングによる国内市場拡大
データセンターの市場環境についてご説明します。GPUサーバーの需要増加に伴い、国内市場が広がっていることは自明です。
さらに、暗号資産マイニングの活発化についても、電力と計算能力を必要とする事業のため、データセンター市場のさらなる後押しになると思っています。
データセンターの拡張と新開設
我々としても、データセンターの追加の設備投資、設置上限台数の引き上げを行っていきます。今、当社グループは日本とアメリカでデータセンターを展開していますが、さらなる拡大を考えていきたいと思っています。
その中において、どのエリアを選定し、電気代をいかに効率化していくのかは、当社グループの成長戦略としても非常に重要なポイントです。
成長可能性拡大のための3つの取り組み
これまでにご説明してきたGPUサーバー事業の内容でも、十分に成長していけると思っているのですが、さらにその次の成長の可能性を考え、すでに布石を打っています。
スライド左側に記載のとおり、オンプレミス環境でのGPUの活用の研究をさらに深めています。
中央の暗号資産マイニングには電力を使うとお話ししましたが、自然エネルギー等によっていかに環境の負荷を下げるかという取り組みも進めているところです。
また、右側に記載のとおり、マイニング関連のシステム開発に加えてブロックチェーン関連の開発も進めていこうと思っています。
AIソリューションの強さにレバレッジをかける
M&Aに関する戦略についてご説明します。我々にとってM&Aは、これからコアになる戦略だと思っています。
1つ目は「大型M&Aの実施」です。リスクを見極めながらも、当社の規模に照らして大型なM&Aを実施していきたいと考えています。
2つ目は「AIソリューション事業を基板とした拡大」です。当社は、実力のあるエンジニアとこれまで培ってきた自社プラットフォームが基盤としてあるということが強みだと思っています。
この基盤の上にM&A対象事業が乗ることで、対象会社の価値も上がり、グループ全体のシナジー、価値向上が生まれます。それは、その基盤があるからこそだと考えています。AIというソフトとGPUというハードを持ちながら、大規模なM&Aを仕掛けていくのは、グロース市場の中で間違いなく唯一のポジショニングだと思っています。
3つ目と4つ目はファイナンス調達関係です。3つ目は「エクイティ調達の効果的組み合わせによるM&A資金確保」です。エクイティ調達について効率的、戦略的に行っています。
4つ目は「当社グループへの資本参画によるベクトル合わせと資本増強」です。PMIとして、ファウンダーの方々が同じ船に乗る仕組みを大事にしています。そこから事業が成長し続けるという仕組みにこだわって、行っていきたいと思っています。
AI事業を核とした成長・拡大
中長期戦略イメージについてご説明します。スライド左側の内容は以前から記載していたのですが、IPOを行って2年弱が経ったため、振り返りも含めてあらためて記載しています。
振り返りますと、2021年の冬にはFRBの利上げがありました。当時、我々はIPOを延期し、公募価格を半額にしてあらためてIPOを行いました。そこから、AIを中心に成長していく市場において、スライドの4つの戦略の下、それを実行、実現するための活動を愚直に行ってきました。
1つ目は企業戦略です。ビジョンの浸透を掲げながら、IPO以降も社員一丸となって業務にあたってきました。結果としてオーガニック成長を継続し、過去最高利益を実現しています。
2つ目は事業戦略です。先ほども「市場投入フェーズから利益創出フェーズへ」という内容がありましたが、投資と利益創出のバランスを見ながら新たな事業を作り続けていくことに取り組んでいます。
3つ目は機能戦略です。我々はエンジニア集団ですので、リソースの最適な配分や、技術力の量と質の価値をいかに本質的に上げていくかということを非常に重視し、日々取り組んでいます。
さらに、これらの戦略を基盤に、4つ目の経営戦略として、新規事業や事業提携、事業の譲り受けやM&Aの検討を並行して行っています。
成長拡大ビジョン 先端テクノロジーが牽引する事業ドメイン
スライドの図は、成長拡大ビジョンのイメージです。上場時から、AI、IoT、ブロックチェーンの3つのテクノロジーを軸として将来を見据えてきました。この図の中のワードは常に変化しています。
図の中央にある「現事業領域」に関しては、我々が誇る技術者集団とプラットフォームを活かして、進化している先端テクノロジーの中で未来を切り開いていきたいと思います。
もちろん高いハードルはこれからもいろいろと出てくると思いますが、私自身この信念を持ち、必ず大きな成長を遂げていくということをみなさまにもお約束させていただき、日々がんばっていきたいと思います。
質疑応答:「LINE WORKS」との連携について
司会者:「『LINE WORKS』との連携が始まったようですが、サービスの詳細やメリットを教えてください」というご質問です。
山田:本日、2024年4月15日に「LINE WORKS」との連携をリリースさせていただきました。こちらに関しては、取締役の桐原よりご説明します。
桐原永叔氏(以下、桐原):「LINE WORKS」は、ビジネス向けの「LINE」で、導入企業は43万社、利用者数は450万人となっています。
この「LINE WORKS」と我々が提供するアルコール検知システム「AIZE Breath」を連携させることで、チャット上でリアルタイムに確認するより効率的なアルコールチェックシステムを提供できるようになりました。
「LINE WORKS」の導入企業の多くが地方の中小企業であることが、「AIZE Breath」と共通する部分です。そのような面でも親和性の高いサービスになっており、このシステムを拡大、成長していこうという考えを共有させていただいています。
質疑応答:ゼロフィールド社の売上増の理由について
司会者:「業績について、ゼロフィールド社の売上増の理由は何でしょうか? 暗号資産相場の高騰による評価益でしょうか?」というご質問です。
山田:相場そのものによる売上増はありません。暗号資産の相場の影響を受けることで、マイニングマシンの需要が高まり、それにより顧客先への販売が増加するという間接的な影響はあります。しかし、暗号資産が上がったという理由で、売上が上がるようなビジネスではありません。
質疑応答:M&Aの方針について
司会者:「M&Aについてです。貴社と同規模の企業のM&Aを継続して実施する方針ということですが、それを実施できる貴社の強みはどのような部分になるのでしょうか?」というご質問です。
加藤慶氏:調達による強みもありますが、スライド21ページの上から2つ目に記載した「AIソリューション事業を基盤とした拡大」が一番の強みであると考えています。
累計7億円以上をかけてこの研究開発を行い、AIソリューション事業の基盤となるAIの画像認識プラットフォームを構築してきました。先日のリリースでもありましたが、10万IDを超えるアカウントがすでに存在しているという状況です。
このプラットフォーム自体の価値が大きく、さまざまなビジネスの基盤となったり、いろいろなところで活用がされています。したがって、このプラットフォーム自体に価値を感じている企業が多いのではないかと思っています。
このことが今後グループインする企業のみなさまにとっても、メリットになると考えているため、この点が我々の強みであると思っています。
質疑応答:生成AIで注目されるGPUサーバーの詳細について
司会者:「スライド8ページの『生成AIで注目されるGPUサーバー』という部分でNVIDIAに関する記載がありましたが、このあたりを詳しく教えていただけますか?」というご質問です。
桐原:詳しい方はすでにご存じだと思いますが、IT業界はこれまで「ムーアの法則」と言われるハードウェアの進化と歩みを共にしてきました。生成AIが入ってきたことにより、コンピューターパワー、計算力がより必要とされGPUが大きな注目を浴びています。
「ChatGPT」が爆発的にユーザー数を増加させている中で、GPUを提供しているNVIDIAの株価が高騰したことは記憶に新しいと思います。今後も生成AIは社会実装され浸透が進んでいくため、コンピューティングパワーは最重要な要素になってきます。
また、「GAFAM」と言われるグローバルテックや各国においてもAIインフラに力を入れる機運が高まっており、単に生成AIのソフトウェアプログラムの力だけでなく、ハードウェア、つまり物理的な資源力が問われておりNVIDIAが注目を受けています。
我々のグループ会社で一緒に活動している、ゼロフィールド社もNVIDIAからGPUのチップの供給を受けてサーバーを製造しており、データセンターも持っています。このことが、他社にはない我々のAIベンチャーとしての独自の強みであると認識しています。