SUMINOE GROUP概要

永田鉄平氏(以下、永田):住江織物株式会社、代表取締役社長の永田です。よろしくお願いいたします。

我々は、住江織物株式会社と言います。本社は大阪・心斎橋にあり、創業は鹿鳴館ができた年と同じ1883年、明治16年です。日本が近代化へ向けて走り出した、まさにその時に創業したということになります。

資本金は95億5,400万円で、東証プライム市場に上場しています。事業については後ほど詳しくご説明しますが、インテリア事業、自動車内装事業、車両内装事業、機能資材事業の4つを行っています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社は創業がかなり古いですが、これまでの歴史や創業のきっかけ、今に至る経緯などを簡単に教えていただけると、視聴者の方もイメージが湧くと思いますのでよろしくお願いします。

永田:創業は明治16年、日本が近代化に走り出した頃です。我々の創業者はもともと米穀商でしたが、その頃は西洋のものをどんどん取り入れていく流れがありました。そこで「緞通(だんつう)」という非常に高密度のじゅうたんを作り出したのが、創業のきっかけです。

それが1883年のことで、同年に鹿鳴館ができ、西洋のものを取り入れていこうという機運がさらに高まりました。我々は今でも髙島屋が大株主で12パーセントほどの株式を保有していますが、当時、髙島屋の創業家の方々は西洋の内装材・インテリアを日本へ輸入し、宮内庁や政府へ提案する仕事をしていました。

その中で、1891年頃に現在の国会議事堂の前身にあたる「帝国議会議事堂」を日本で初めて作る時に、そこのじゅうたんを用命されたのです。

坂本:今でも、御社を紹介する1つの代名詞みたいなものだと思います。

永田:髙島屋が受注し、我々の創業者が開いた村田工場に発注・納品したところから、じゅうたんを中心に内装材の事業を広げていきました。その後も、鉄道のシート地を日本で初めて作っています。

SUMINOE GROUP概要

永田:SUMINOE GROUPの概要です。スライドに記載のとおり、国内で16社、海外7ヶ国で13社の計29社を展開しており、従業員は2,779名です。

世界では、主に中国とアジアに展開しています。スライド左上の写真が中国・広東省にある住江互太(広州)汽車繊維製品有限公司です。こちらは自動車内装のファブリック事業を中心とした工場で、東レや丸紅との合弁会社です。

スライド左下の写真が、我々初の海外拠点となるT.C.H. Suminoe Co., Ltd.です。こちらはタイの工場で、カーペットやファブリックなどの事業を行っています。

スライド右上の写真は、北米・サウスカロライナ州のSuminoe Textile of America Corporationで、カーペット事業を中心に行う工場です。右下の写真が、メキシコのSuminoe Textile de Mexico, S.A. de C.V.です。こちらはカーペット、マット、ファブリック事業のすべてを行い、最も拡大を目指している拠点です。

ヨーロッパにはまだ展開していないため、今後拡大していきたいと考えています。

SUMINOE GROUPの強み

永田:我々の強みについてです。事業は4つありますが、セグメントとしては3つを展開しており、事業のリスク分散と技術を横展開していける強みを持っています。

また、創業から140年間、世の中がいろいろと変わる中で、時代の流れを読みながら柔軟に対応してきた力と、常に新しいものを作っていくチャレンジ精神があります。

加えて、我々は「日本初」の製品が非常にたくさんある会社で、伝統のブランド力という強みがあります。国会の赤じゅうたんのほか、宮内庁や天皇陛下にかかわるところも含めて、いろいろな場所でご用命いただいています。

SUMINOE GROUPの強み

永田:セグメントのリスク分散についてです。スライドの円グラフは2023年5月期のデータですが、鉄道とバスを含めた自動車・車両内装事業が60パーセント弱を占めています。次にオレンジ色のインテリア事業が38パーセント強、機能資材事業が3.7パーセントとなっています。

このように、大きく3つのセグメントで展開しています。

自動車・車両内装事業(自動車内装)

永田:自動車・車両内装事業のうち、まずは自動車内装についてご紹介します。我々の強みは、トータルサプライヤーとしての提案力です。

シートだけ、フロアカーペットだけを納める会社はいろいろありますが、我々は天井材からシート、フロアカーペット、マット、トランクルーム、車の裏側まで、すべて含めた内装材を供給できる、世界でも稀有なメーカーです。

我々が納めている部位は、スライド左下の図にもあるように多岐に渡ります。めずらしいところでは、吸音のため、タイヤのホイルハウスにも我々の繊維が使われることがあります。

坂本:もともとは繊維事業を核にシート事業を拡大し、そこから樹脂やプラスチックを使用する製品も販売していますが、どのように発展してきたのでしょうか?

先ほどお話しされたように、自動車内装材はおそらくフェルトのような繊維が入っている部分もあると思います。そのあたりは繊維事業から発展してきたと想像できますが、そこに至る過程や、御社がもともと持っていた基礎と強みがあれば教えてください。

永田:初めは繊維事業だけで成り立っていましたが、徐々に拡大していきました。例えば、自動車のフロアカーペットは、繊維の裏にポリエチレンなどの合成樹脂をバッキング材として貼り付けます。それをタイヤハウスや車の形状に合わせ、成型業者により成型されます。

これは熱可塑性の樹脂ですが、そのような繊維以外のものも扱ってきました。後ほどご説明するインテリア事業では、タイルカーペットの裏側に塩化ビニルを使っています。そのように樹脂を扱う技術も長らく培ってきたため、そのあたりの応用は今後出てくると思います。

坂本:自動車の主要製品は、今後さらにパーツが増えていく可能性もあるのでしょうか? 現在のこのセグメントを維持していくイメージですか?

永田:大きくはこのセグメントで考えていますが、これからは合皮を伸ばしていこうと考えています。合皮はドア周りやシフトノブ、インパネなどのさまざまな部位で使われますので、そちらへの展開も拡大できると思います。

坂本:非常によくわかりました。販路については、日系の自動車メーカーとはだいたいお取引があると思いますが、外資系メーカーへの販路拡大イメージを教えてください。

永田:日系については、トヨタ自動車をはじめとした全自動車メーカーとお付き合いがあり、それなりのシェアをいただいています。ただし、日系以外の海外展開については少々遅れており、ようやく北中米を中心に拡大を目指しているところです。

先日発表したとおり、外資系の北米自動車メーカーからフロアカーペットを受注しました。こちらはメキシコ工場に設備投資し、今年の末頃から納めていく計画です。「カーマット」という車内に敷くマットの分野では、すでに日系以外でも欧米系の自動車メーカーとお付き合いがありますので、徐々に拡大していく予定です。

坂本:合皮も意外ときっかけになるかと思います。海外のEVメーカーも好きですし、合皮は高級感が出るため、意外と好まれると思います。そこから他の部材を開拓することはあるのでしょうか?

永田:合皮について、我々は長らくアウトソーシングを行ってきましたが、やはり自社技術を活用しながら自社で作らなくてはいけないと考え、今回メキシコに設備投資し、この6月から稼働させる予定です。そのあたりから、日系以外のメーカーとのお付き合いを作っていけると思います。

また、先ほどお伝えしたとおり、ドア周りやインパネなどのいろいろな部位に展開できる可能性がありますので、ぜひ拡大させたいと思っています。

自動車・車両内装事業(車両内装)

永田:自動車・車両内装事業の業績推移については、スライドのグラフにあるとおりです。2020年から始まったコロナ禍と電子部品供給不足により全体的な生産台数が減り、売上が落ちたところを、2022年頃から少しずつ戻してきたという流れです。

荒井沙織氏:鉄道のシートは多くの方が利用されるので、耐久性が求められると思います。その部分での独自技術があれば教えてください。

永田:シートファブリックは、いろいろな織物やニットのほかに「モケット」という製品を中心に鉄道に納めています。モケットは我々が日本で初めて作り、国鉄に納めました。こちらは毛足が短い高密度なパイル織物で、非常に耐久性があります。鉄道はものすごくたくさんの人が乗って座りますので、普通の織物やニットではなかなか持ちません。

そのためモケットが非常に評価され、日本の鉄道の大半ではモケットが使われています。我々はモケットの生産設備を自社で確保し、アウトソースの多くも我々がある程度ハンドリングできているため、安定的に納めることが可能です。

インテリア事業

永田:インテリア事業についてです。先ほどお話ししたように、創業時に帝国議会議事堂のじゅうたんを作り出したところからスタートし、そこから長い間、家庭用や官公庁向けなどの製品を作ってきました。

現在インテリア事業では「スペース デザイン ビジネス」と呼んでいるビジネスに力を入れています。こちらは、我々の持っているカーテンやカーペットや壁紙単体ではなく、総合的にデザインしながら1つの空間を納めるというビジネスです。

我々が扱う製品はタイルカーペット、カーテン、ラグ・マット、壁紙などが大半になりますが、それ以外にも硬質の床材やブラインドなどを仕入れて扱っています。インテリア事業もコロナ禍の影響を受けて売上高が落ちましたが、前期頃からおおむね戻ってきたという状態です。

坂本:インテリア事業で一番大きな売上比率を持っているのは何ですか?

永田:主力はカーテン、タイルカーペット、家庭用のじゅうたん、ラグ・マットなどですが、あまり大きな差はありません。

坂本:なるほど。また、売上は徐々に伸びるかたちでコロナ禍から回復されていますが、利益はかなり急回復しています。値上げが要因ならば、おそらく前期頃から回復していると思いますが、急回復の要因を教えてください。

永田:以前の利益が悪すぎたということもありますが、スライドにグラフを記載している数年間では、家庭用カーペットなどの回転率を上げるために在庫処分をするなど、いろいろなことを行って利益が落ちていた時期がスタート時期になっています。

坂本:叩き合いとは言いませんが、競合他社の利益率が低いのもこの時期だと記憶しています。

永田:おっしゃるとおり、非常に競争が激しいです。2023年頃から原材料価格も上がり出しましたが、その転嫁も徐々に進めながら、利益率の改善も進めてきたというところです。

坂本:私は自分で中古マンションを買ってリフォームするのが趣味なのですが、内装関連の製品は非常に価格が高騰しています。まだまだ値上げはできるのでしょうか? ある程度一服したのでしょうか?

永田:ある程度一服はしましたが、為替の円安が続いているため、引き続き値上げ圧力もあります。

坂本:インテリア事業において輸出はけっこうされていますか? 高級品を取り扱っているイメージがありますが、いかがでしょうか?

永田:タイルカーペットだけは輸出しています。

坂本:カーペットの輸出はされていないのでしょうか?

永田:一般のカーペットはまだ輸出していません。

機能資材事業

永田:機能資材事業についてです。先ほどお伝えしたように、こちらの事業構成比はわずか5パーセント以下です。しかし、スライドに「無限の事業可能性を追求。」と記載しているとおり、インテリアと自動車・車両以外であれば、どのようなことも行う事業体になっています。

例えば、主要製品のところに記載しているホットカーペットは電気製品ですが、我々は電気部分も含めて製造しています。消臭フィルターは家庭用の消臭剤のほか、家電メーカーの空気清浄機の消臭フィルター部分、あるいは冷蔵庫のダクトの中に入っている消臭フィルターなども提供しています。

このように、我々の持つ技術を活かして新しい技術を売り込んでいく、OEMを中心とした事業になっています。ここのところ暖冬が続いたことで家電事業の売れ行きが悪く、業績が少し低迷していますが、今後は幅広く事業展開しながら伸ばしていこうと思っています。

SUMINOE GROUPの強み

永田:SUMINOE GROUPの強みの技術の横展開について、2つご紹介します。

1つ目は「トリプルフレッシュ」という消臭技術です。こちらは20年以上前となる1998年に開発しています。消臭には、キャパシティや時間的な制約があるものです。しかし、我々の独自技術により人工酵素を使うことで、永続性を持った長く強い消臭力を実現しています。

2つ目はリサイクル技術で、環境に非常に特化した商品を開発しています。「スミトロン」というポリエステルファイバーは、半分以上が使用済みペットボトルでできています。こちらは30年ほど前から展開しており、我々の家庭用カーペットやカーテンに展開してきました。

現在は自動車のシート地にも展開を進めており、トヨタ自動車の「ランドクルーザー250」のシート地を「スミトロン」で作っています。おもしろいのは、トヨタ自動車のみなさまが自社工場や事業所で飲んだペットボトルを用いてシート地を作るという、世界でも初めての試みを実行したことです。

1台当たりおよそ21本のペットボトルで作ることができ、今後はそのような新しい試みも展開していきます。

SUMINOE GROUPの強み

永田:市場ニーズに合わせて変化する力についてご説明します。創業からいろいろなことがありました。終戦を迎えた後は、日本の自動車メーカーの勃興に合わせて参入しています。

そして、非常に高価であったじゅうたんをさらに普及させるため、昭和30年代にハイスピードかつ安価で作れる家庭用カーペットを作り出しました。こちらは爆発的に売れ、家庭用のインテリアに大きな新しいインパクトを与えました。

現在は、環境に非常に特化したものを作っています。タイルカーペットは燃やせないため産業廃棄物になりますが、埋め立てる場所がどんどんなくなり、困った事態になっています。タイルカーペットの「ECOS(エコス)」は、産業廃棄物にせずリサイクルし、我々のバッキングに戻すという水平循環が可能です。

SUMINOE GROUPの強み

永田:伝統のブランド力について、祖業である手織の緞通や劇場の緞帳など、美術工芸的な商品も展開しています。

中長期経営目標

永田:中長期経営目標については、2022年から2027年までの6年間の目標を作っています。

中長期経営目標

永田:最終的には連結売上高が1,000億円以上、営業利益率が5パーセント以上の50億円を目標としています。同時に、ブランディングを含めた、社員の幸せやビジョンの共有なども進めています。

連結業績推移

永田:2024年5月期が、最初の3年間の中長期経営目標が終わるところです。現時点で出している通期見通しとして、売上高1,022億円、営業利益31億円、経常利益34億円、親会社株主に帰属する当期純利益16億円です。コロナ禍前の2019年5月期と比べて利益がほぼ戻っており、一部の数値は超えています。当期純利益は大きく伸び、ようやくコロナ禍の影響を脱したところです。

2027年5月期は売上高1,000億円、営業利益50億円を目標としています。

坂本:売上高はすでに中期経営計画の目標を達成している状況です。不採算事業の撤退によって売上が下がる可能性や、自動車が好調過ぎるために目標を超えたという可能性もあります。この状況は一時的なものでしょうか? 修正をいつするのかを含めて、現状を教えていただけたらと思います。

永田:我々の売上高は約30パーセントが海外からですので、為替の影響を受けます。現在は1ドル153円ととんでもない円安になっているため、為替によって売上が膨らんでいる部分は当然あります。

今後、円高となって140円、130円、120円と戻っていくと売上高の減少が起きますが、メキシコを中心に伸ばす売上高があるため、安定的に1,000億円以上を確保していくということで、目標の売上高1,000億円以上という部分は変更しません。

坂本:2027年度に向けて利益が上がっていくと思いますが、均等に上がるイメージでしょうか? それとも、足元が良すぎるためゆっくり上がって最終年で伸びるのか、利益の伸びのイメージがありましたら教えてください。

永田:これから次の3ヵ年計画を作成していくため、具体的な数字では示せませんが、徐々に上がっていくだろうと思っています。新たなお客さまの獲得も見えてきていますが、そちらが花開き拡大するには少し時間がかかるため、段階的だと見ています。

坂本:拡大施策としては、合皮事業がつながってくると思います。日本的な考えかもしれませんが、モデルチェンジの時に採用が切り替わるため、数年ごとに積み上がっていくイメージになりますか?

永田:モデルチェンジによって変わるものや継続するものがありながら、徐々に拡大していくイメージです。また、我々の合皮が、すべての日系自動車メーカーに入っているわけではありません。

坂本:これからという部分もあるのですね。

永田:おっしゃるとおりです。したがって、メキシコに拡大することで、今我々が入っていない自動車メーカーにも拡大していけると考えています。

同時に、当然ながら日系以外のメーカーとのお付き合いも出てきます。そこを拡大するために、メキシコに新たに工場を作っているわけです。また、今回建てた工場と同じものをもう1つ建てられるだけの土地を多めに確保しており、拡張性もあります。こちらはおそらく合皮事業になると思いますが、次の拡大時にはもう1つ工場を建てて対応できる余地を残しています。

2024年5月期 連結業績見通し

永田:今期の連結業績の見通しです。先ほどお伝えしたように、売上高1,022億円、営業利益31億円、経常利益34億円、当期純利益16億円と、おおむね計画どおりに進んでいます。

坂本:4月11日に発表された第3四半期決算を見ると、今期の目標達成までには、ここからかなり利益部分を積む必要があると思います。挽回生産などを踏まえて帳尻が合うイメージでしょうか?

永田:我々の事業は、同じようなペースで伸びず、第4四半期が大きめに伸びるケースがあります。

坂本:意外と季節性があるのでしょうか?

永田:おっしゃるとおり、季節性があります。

坂本:第4四半期の今の自動車事業における挽回生産を含めた活況さは、私はあと数年は続くだろうと思っていますが、第4四半期がそのまま来期の第1四半期までスライドして続くほどに活況なのでしょうか? コロナ禍によって落ち込んだ部分は、どのくらい回復していますか?

永田:日系自動車メーカーで言えば、2019年の生産台数と比べると、コロナ禍で落ち込んでからの戻りは9割ほどで10割までは戻っていません。したがって、来期以降も戻っていく可能性が高いです。

車両内装事業も、コロナ禍でがくんと落ち込みました。現在は7割強しか戻っていませんので、こちらも段階的に戻っていきます。次の3ヵ年計画期間中は、段階的に戻っていく方向になると思っています。

株式の状況

永田:株式情報についてです。2月29日の終値は2,526円、昨日(2024年4月12日)の終値は2,688円でした。

今期の年間配当金は70円の予定です。我々は中間決算と本決算のある11月と5月に配当をお支払いしており、今のところ中間35円、期末35円の配当としています。

株主還元

永田:配当金については、コロナ禍によって若干下げてしまいご迷惑をおかけしました。しかし、先日発表したとおり今後は70円を最低ラインとし、利益に伴って展開していく考えです。

株主還元

永田:株主優待を2年ほど前から始めました。我々の会社をより知っていただきたいという思いで、100株以上200株未満を保有している方には自社製品の消臭剤をご用意しています。こちらは700円から800円相当の製品で、東急ハンズなどで販売されています。

200株以上の方には4,000円相当のカタログギフト、1,000株以上の方には10,000円相当のカタログギフトをご用意しています。自社製品も含めたいろいろな商品をお楽しみいただけるギフトとなっており、非常にご好評をいただいています。

株主還元

永田:スライドには、今お伝えした優待品の一例を記載しています。

坂本:カタログギフトには、御社の製品も入っているのですか?

永田:「香りでごまかさない 本当の消臭」という消臭剤Tispaや、コインパースは自社製品です。玄関マットや、犬の顔をしたマット「INUKAO」なども自社製品で、そのほかすき焼き用のお肉などのグルメ品もあり、非常に好評です。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について

永田:今後のポイントについてご説明します。スライドには、先日発表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」という資料を記載しています。

7月の決算発表で最終的な発表をするため、現在は内容を詰めているところですが、我々としては株価がまだ割安で推移している認識です。その理由については、コロナ禍で業績が非常に低迷した後の回復を示せていないからだと考えています。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について

永田:具体的な取り組みについてです。メキシコ工場で量産する合成皮革を中心に日本や日系以外へも展開し、事業価値を高めていきます。

また、これから自動運転等が発展していくと、運転だけではなく移動空間を楽しむことも求められます。スライド右下の写真のような、リビングやホテルにあるようなゴージャスなインテリアも必要になると想定しています。現在は、インテリア部門と協業しながらデザインを考えているところです。

坂本:合皮については、技術を含めて、もともと取り組んでいた繊維事業と重複する部分があるのでしょうか? それとも、合皮は昔から取り組んでいて「これから需要があるため一気に増やそう」という感じなのでしょうか?

永田:合皮自体は、もともとアウトソースしている時から、成分や設計部分に関しては自社で対応していました。当然ながらデザインも自社で行っており、完成品の上からプレスして柄を出す「エンボス」という手法があります。

我々はエンボスにおいて、ファブリックのシートを作っている時から、3次元などの非常に複雑で込み入った柄を出せる技術を持っており、特許もいくつも取得しています。これらの技術はそのまま合皮にも使えるため、そのあたりを含めた柄の優位性や深みのあるデザインを展開できると思っています。

坂本:そうすると、メキシコではイチから作られることになりますか? 100パーセント自社で作ることができれば稼働率も上がり、利益率も売上も高くなるというイメージでしょうか?

永田:おっしゃるとおりです。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について

永田:借入れもまだ多く、剰余金を十分に積み立てられていません。そのため、今後は財務体質強化と同時に、内部留保を徐々に厚くしていきます。これらを実施しながら、リーマンショックのような不測の事態が起こらない限りは、年間配当金の下限を70円とします。

また、一番大きな施策としては、現在の配当性向33パーセントを来期から38パーセントに引き上げたいと思っています。

中長期経営目標の最終目標である、売上高1,000億円以上、営業利益5パーセントかつ50億円以上を達成すれば、年間配当金は140円を出せると考えています。つまり、現在の70円から倍増するということです。こちらを目標に掲げ、取り組んでいこうと考えています。

坂本:今の株価を考えると、非常に高い利回りになると思います。

永田:そのとおりです。

坂本:38パーセントに引き上げた上で中計を達成できれば、年間配当金が140円になるということですね。例えば、利益が上振れすぎる可能性もあると思いますが、自社株買いなどはお考えでしょうか?

永田:我々はプライム市場に上場していますので、この水準を維持していくためには流通比率についても考えていかなければいけません。また、流通時価総額の制約もあるため、当面の間は自社株買いを行う可能性はないと思います。

坂本:財務の厚みを増して、選択肢を多くするというかたちですね。加えて、IR活動の充実も図るのでしょうか?

永田:株主・投資家のみなさまとの対話は、今後も積極的に続けていきます。年間を通して、このような機会を多く設けたいと思っています。

質疑応答:カーペット交換による需要上昇について

坂本:「カーペットを古いものと交換すると、需要の割合はどれぐらい上がりますか?」というご質問です。現在日本にどのくらいのカーペットがあり、御社がどのくらいのシェアを持っているかを計算すればよいのかもしれませんが、交換比率も人それぞれですので一概には計算できないと思います。こちらについてはいかがでしょうか?

永田:おっしゃるとおり計算は非常に難しいですが、家庭用のカーペットは、コロナ禍で巣ごもり需要が高まった際にかなり買っていただきました。その反動で、現在は少し需要が落ちている状況です。

今は需要が減っていますが、耐久性の需要や模様替えの需要が出てくるため、おそらく来期か再来期あたりにはまた戻ってくるのではないかと思っています。

質疑応答:PBR1倍割れの現状認識と対策について

坂本:「PBR1倍割れの現状認識と、今後の対策について教えてください」というご質問です。今お話しいただいた中では、利益を伸ばすことによる増配で魅力を高めていくというイメージを持ちました。それ以外の取り組みがありましたら、教えていただければと思います。

永田:まずは中計を実現して、最終の利益を厚くしていくことが第一だと思っています。PERはコロナ前までが15倍程度で推移しており、現在は11倍程度です。したがって、営業利益50億円を達成した時の最終利益から計算すると、十分にPBR1倍以上は達成できると考えています。PERだけは、我々がコントロールできません。

坂本:利益が出て株価が上がらなければ仕方ありませんが、PBRはスライドすれば頻繁に変わりますからね。

永田:純資産は厚くなるものの、PBRは1倍以上に持っていけるのではないかと思っています。

坂本:配当利回りが高くなれば1倍に近づくというのは普通だと思います。利益を伸ばすことでPBR1倍を達成するイメージですね。

質疑応答:海外での鉄道用座席シート採用について

坂本:「鉄道等の座席シートは海外での採用もあるのでしょうか?」というご質問です。日本の電車を海外が採用した場合は、御社のシートが使われているパターンもあると思いますが、この質問はおそらく「海外メーカーからの採用もありますか?」という意味だと思います。

永田:鉄道のシートに限っては、日本国内のみでの採用になります。例えば、日立製作所などのメーカーがイギリスに輸出する時に、我々のシート地が使われるかと言うと、イギリスでは「現地生産・現地供給」が求められます。したがって、採用されることは少ないです。一部、台湾の新幹線などでは採用されていますが、それ以外は使われないケースが多いです。

また、海外では日本のようなシート地を使いません。清掃の観点から、今でも樹脂のシートが使われることが多く、ファブリックの需要は日本ほど多くはないと思っています。

質疑応答:食品事業の詳細について

坂本:「スライド12ページの主要製品の中にサプリメントがありますが、食品事業ではどのようなことをしているのですか?」というご質問です。

永田:「柿ダノミ」というサプリメントを販売しています。機能資材事業の1つとして、このような健康向けのサプリも取り扱っています。まだまだ微々たるものですが、「何でも行う部門」として、このあたりも進めていこうと考えています。

奈良県は、渋柿から高濃度のポリフェノールを抽出する特許を持っています。我々はその特許を利用して近畿大学と一緒に実験をしながら、性能評価を行って発売しているものになります。

質疑応答:大阪万博の特需について

坂本:「大阪万博による特需は見込んでいますか?」というご質問をいただいています。御社の本社所在地は大阪ですが、このあたりはいかがでしょうか?

永田:私はまだ入社していませんでしたが、1970年に開催された大阪万博の時は、昼夜を問わず作らなければいけないくらい納品したと聞いています。今回の万博は、今のところ明らかになっていない部分も非常に多いです。

坂本:今回は、どちらかと言うとコンパクトなイメージがありますね。

永田:我々が扱っているカーペットを敷く部分がどれだけあるのかという問題もあるため、今のところ大きな需要があるとは認識していません。ただし、我々の商品は、使っても回収してリサイクルすれば新しいタイルカーペットに戻せます。1回使って回収する場合にも適しているため、ぜひ使っていただきたいとは思っています。

質疑応答:輸出割合が低い理由について

坂本:「過去の書き起こし記事で『インテリア事業の海外展開は、現在タイルカーペットの輸出のみで大きな海外展開を考えていない』と回答されています。しかし、御社のカーペットは高性能で品質も高いと感じています。緞帳なども含め、現在の輸出割合が低い理由を教えてください」というご質問です。

永田:どちらかと言えば、アメリカやヨーロッパはじゅうたんやカーテンの本家本元のようなところです。また、緞通という手織の工業品は東南アジアなどが主流であるため、我々の製品を簡単に海外に輸出することはできないと思っています。

ただし、タイルカーペットのようにオフィスで使うものは、我々オリジナルの技術も多いです。したがって、我々の日本国内の生産能力が足りなくなり、さらなる増強が必要な場合には、それらを海外展開する可能性はあります。しかし、現在のところはまだ考えていません。

質疑応答:タイルカーペットの再値上げについて

坂本:「タイルカーペットは、この数年で3回値上げされたと思います。この春以降、また運賃やユーティリティなどが上昇基調にあるため、再度値上げを考えられるのではないかと思いますがいかがでしょうか?」というご質問です。

永田:3度ほど値上げを行いましたが、その後もまだ小刻みに原材料が上がっています。物流費も常に上がり続けており、我々の労務費や人件費も、世間さまと同じようにベースアップ等を行って上昇しています。

したがって、それらについてはいずれ価格に反映せざるを得ない時が来ると思っていますが、今は3回値上げした後ですのでよく検討してからと考えています。

坂本:他社の状況を見ながらということになりますね。

永田:おっしゃるとおりです。

質疑応答:自社商品による株主優待について

坂本:こちらは意見のようなものですが「個人投資家としては、株主優待で自社商品をいただけると商品についての知識が深まり親近感がわきます。こちらは今後も続けられる予定ですか?」というご質問です。

永田:みなさまに知っていただくことが、非常に重要だと思っています。当社はサイズの大きな製品が多いため、株主優待にできるものは「INUKAO」などに限られるかもしれませんが、ぜひ今後も続けていきたいと思っています。

質疑応答:為替感応度について

坂本:「為替感応度があれば教えてください。円安で儲かるのですか?」というご質問です。

永田:先ほどお伝えしたとおり、海外比率は30パーセントほどあります。その時の他の通貨との関係にもよるため、一概に「1ドル1円でいくら」とは言いにくいのですが、1ドル1円程度で、売上高が2億円程度、営業利益が10パーセントから15パーセント、つまり1,000万円から1,500万円程度という感覚です。

例えば、2億円で20円違うと40億円になります。したがって、今期の業績見通しで1,022億円とお伝えしていますが、実際には900数十億円の後半くらいになると思っています。そのあたりを上げながら、安定的に利益を積み上げていく予定です。

永田氏からのご挨拶

永田:住江織物は今年で創業141年になります。150年、200年に向け、まだまだ今後も成長戦略を示しながら投資家のみなさまと対話し、大きく成長していきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:株主還元への基本的な考え方を教えてください。

回答:株主さまへの還元につきましては、安定的な配当と業績の動向を勘案しながら、適正な成果の配分を実施することを基本方針としています。

数値につきましては明確に公表していませんでしたが、2月22日付の弊社リリースにて、「年間配当金70円を下限(※)」の決定をしています。

また今後「配当性向33パーセントから38パーセントへの引き上げ」と「連結売上高1,000億円以上、営業利益率5パーセント以上の達成で年間配当金140円」を目指すことを発表しました。

2022年5月期末からは株主優待制度を導入しており、自社製品や弊社とゆかりのある地域の特産品などを掲載したオリジナルカタログを保有株式数に応じて贈呈しています。自社製品としては、これまでコインパースをはじめとする伝統工芸品や家庭用の消臭剤などをご用意していますので、より身近に感じていただくきっかけとしてぜひお試しください。

(※急激な経営環境の悪化により著しく業績が低迷するような場合を除きます)

<質問2>

質問:カーペットはダニと関係ないですか?

回答:※カーペットとダニ問題につきましては説明会では紹介しておりませんが、2024年4月13日現在、弊社社長の永田が理事長を務めております「日本カーペット工業組合」で取り扱っておりますので、回答させていただきます。

カーペットがダニを発生させているわけではありません。掃除は必要ですが、それはどのような床材であっても同様です。

これまで一部メディアで、ダニやアレルギー問題の原因としてじゅうたんやカーペットが挙げられておりましたが、このほど、日本小児アレルギー学会発行の「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」に掲載の「(喘息症状などを引き起こすダニアレルゲンの回避策として)じゅうたん、カーペットは敷かない」という表現が、2023年11月発行の最新版で削除されています。

その代わりに「床の掃除機がけは少なくとも3日に1回は丁寧に実行」となっていますので、ダニ予防には掃除が重要ということが示されています。

また、カーペットにはホコリの舞い上がりを防ぐ効果がありますので、空気中のホコリやダニを吸い込むことを抑えられます。床面だけをこまめに掃除することで室内をキレイに保つことができますので、健康的な空間づくりに大きな力を発揮する床材といえると考えます。

ご参考:日本カーペット工業組合 ニュースリリース
「カーペットは“無実”~喘息治療ガイドラインから「カーペットは敷かない」が削除~カーペットへの正しい理解が進む環境に」