会社概要(2023年3月末現在)
上村正人氏(以下、上村):それでは、会社の概要からお話しします。エブレン株式会社は1973年の設立で、本社は東京都八王子市にあります。
資本金は1億4,301万円です。2023年3月期の連結売上高は42億5,800万円、経常利益は6億5,400万円となっています。
従業員数は114名、事業所は国内4拠点と海外拠点の合計5拠点です。東京都八王子市に本社のメイン工場があり、東京都荒川区、埼玉県入間市、大阪市東淀川区と、中国江蘇省蘇州市に100パーセント子会社の蘇州エブレンがあります。
事業内容は、産業用電子機器・工業用コンピュータの設計製造販売です。
事業内容:産業用コンピュータの設計・製造
上村:現在のメインの仕事内容は、通信・電力・鉄道・医療などの「社会インフラ系設備」および半導体製造装置や生産自動化機械などの「産業インフラ系設備」に、コントローラーとして使用される産業用コンピュータの受託設計と受託生産が中心で、売上の8割を占めています。
鉄道・電力・通信などの、公共性の高い事業会社向け設備の開発や調達は、大手の装置メーカーが主契約者となっており、私どもはその下で仕事をするビジネスポジションとなります。
主契約者の装置メーカーは、設備やシステムの開発構想に基づいて、当社へ委託するコンピュータ機器の「要求仕様書」を作成して提示します。私どもはその「要求仕様」に基づいて製品を設計し、試作品を作って装置メーカーへ送り、評価と設計検証を受けます。
設計段階が終了してから量産に入るまでに半年から1年以上、共同開発でやや特殊なものでは3年から4年かかることもあります。一般的には、半年から1年程度かけて、量産を開始します。量産開始以降は、中長期的に安定した製品供給を求められます。
製品区分(1) ボードコンピュータ
上村:電子機器のイメージについてご説明します。電子機器は、IC(集積回路)やコンデンサ、抵抗といったディスクリート部品を有機的に結合して回路を作ります。半導体集積回路は、シリコンの基板の上に非常に細かいトランジスタや抵抗を焼き付けて作ります。私どもはそのようなICをさらにつなげて回路を作ります。
一般的には半導体ICはシリコン基板上に回路を作りますが、プリント板回路はエポキシガラスを基板として使います。ガラス機材で強化をしたエポキシ系の板の上に部品を実装して、電気的につないで、機能的な入出力が出せるかたちにまとめていきます。これが電子機器です。
その形式にはスライドに記載のとおり、2種類あります。右側のワンボード型は、1つの基板の上に必要な部品をすべて搭載し、動かせるようにしたものです。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):こちらはよく、パソコンなどに入っていますね。
上村:おっしゃるとおり、パソコンが典型的なワンボード型の例です。
パソコンの中には、スライド右下のようなマザーボードが入っており、パソコンとして求められる機能を、この中ですべて実現します。パソコンでは、基本的にワンボードを用います。
坂本:御社はワンボードも作っていますが、メインはスライド左側になるわけですね。
上村:おっしゃるとおりです。A4からB5くらいの大きさにまとまる程度の電子部品実装の規模であればワンボードでまとめられます。しかしながら、規模が大きい場合どうするのかという問題が発生します。例えば、電子部品の実装が、畳1枚分ほどの面積になるケースはいくらでもあることです。
坂本:畳1枚だとコンピュータに入らないですよね?
上村:おっしゃるとおり、入らないし、そのような材料も、設備もありませんから、実際には作れないのです。したがって、回路を分割して、小さくして、まとめて行く必要があります。それがスライド左側のバックプレーンシステム用ボードコンピュータです。
スライドの写真をよく見ると、エッジ(上端や右端)に白い部品がついています。これをコネクタと言いますが、コネクタでバックプレーンに接続して、総合的に連絡を取ることができる構造となっています。
坂本:コネクタは、スライド上の写真では奥側に、右下の写真では右側にある部品ですね。昔の家庭用ゲーム機のカセットの差し込み口を思い出します。
上村:おっしゃるとおり、スロットに差し込む時によく見ると思います。このコネクタがついているのが特徴です。
サイズとしては、小さいものでは官製はがきから名刺サイズのものもありますが、産業用としてはB5からA4くらいの大きさが一般的です。
坂本:それが何枚も入っているわけですね。
上村:そのとおりです。先ほど、畳1畳という例を出しましたが、畳1畳はA4換算で26枚分になります。
坂本:けっこうな量になりますね。
上村:そのため、畳1枚くらいの回路面積があれば、26枚つなげるバックプレーンと箱を作るのです。箱を作ってつなぎ、畳1畳分がそのまま動くのと同じ回路を、分割してもできるようにします。その役目を担っているのが、バックプレーンです。
製品区分(2) バックプレーン
上村:スライドには、バックプレーンの写真を載せています。極めてわかりやすい言い方をすると、分割された基板をつなぎ合わせます。当然ですが、電子回路は電気で動きますので、電源供給ラインがあります。また、人間の脊髄のように、情報の通り道であるバックプレーンにはおびただしい数の信号のやり取りが集まります。
人間に例えると、神経が信号の通り道、血流が電流にあたります。電気が流れていないと、神経も働きません。したがって、分割して作られた回路をつなぎ合わせて、大きな装置としての機能を果たすことがバックプレーンの基本的な役目ですが、さらに1枚1枚の基板に対してコネクタを通じて電気を供給し、すべてが動くようにする役目もあります。
スライド右側の図のように、バックプレーンに、分解されたボードコンピュータが差し込まれ、最終的には金属製の箱型の筐体(コンピューターシャーシ)に収められて完成します。
製品区分(3) コンピューターシャーシ
上村:バックプレーンが裸のままでは色々な問題が起こりますので、ハウジングの観点から、さらに箱に入れる必要があります。
何が問題かと言いますと、電子部品は電気を通じて稼動していると、どんどん温度が上がります。最近の高性能なコンピュータに使われるような半導体、LSI(大規模集積回路)は、火傷をするくらい高温になります。
半導体はある一定の温度以上になると、熱破壊が起こって壊れてしまいます。そこで、回路部品が一定の温度以上に上がらない工夫が必要です。そのために、箱に入れて冷やします。一般的には、ファンを使って冷やします。
坂本:そういえば、パソコンにもファンが付いていますね。
上村:おっしゃるとおりです。パソコンにはサイドに小さなファンが付いていて、一定の温度になると回り出します。その大掛かりなものと考えてください。このように、箱には一定の温度以上にしない役割があります。
2つ目に、電磁波を受けて誤動作しないようにすること、さらに、できれば自分も電磁波を出さないようにすることです。電磁波を遮蔽するために、金属の箱の中に入れる必要があります。
さらに、機械的に振動や衝撃に耐えられるようにするために、最終的には、シャーシやキャビネットと呼ばれる箱型のものに、回路を入れていきます。
坂本:電力の供給もここからできますか?
上村:おっしゃるとおりです。一般的には、パワーユニットやファンが付いていて、あとはボードを前から差し込めば、コンピュータになります。このようなかたちにしたものが、バスラックです。
スライドの写真を見ると、奥のほうに白い縦縞のものがあります。これが先ほど言いましたコネクタが接続される部分で、オス、メスで篏合し非常に大きな回路を構成することになります。
もっと大きいものも小さいものもありますが、半導体製造装置ではこれくらいの大きさが一般的に使われます。
スライド右側のワンボードのコンピュータの場合、1枚ですのでバックプレーンは必要ありません。したがって、このようなかたちで筐体にネジ止めされて使用されるものもあります。
坂本:これも機械などに使われるのですか?
上村:エッジコンピュータなどは1枚でできますので、このようなかたちとなります。
製品区分(4) 制御用コンピュータ
上村:最終的には、ラックの中に必要なボードコンピュータが差し込まれて、それがさらに半導体製造装置や最終製品の中の一部となり、ユニットとして使われます。
バックプレーン方式が産業用に多用される理由
上村:バックプレーン方式は、産業用に非常に多用されるのですが、その理由についてご説明します。バックプレーンの役割は、各種回路、基板を相互に接続して、信号伝送や電力供給を行うことです。ここで非常に重要なのが、本体から切り離すことができる点です。
付いているロックハンドルを手前に引くと、本体から切り離すことができます。これにより、保守性、拡張性、汎用性の3つの利点が生まれます。
1つ目に、着脱可能で本体から分離できることは、保守などにおいて重要な要素です。悪いと思われるものを切り離して実験することができますし、そもそもよく見ることができないと保守が困難になります。
2つ目の利点は拡張性です。あらかじめ、拡張するためのスロットを用意したバスラックを使えば、後で機能の強化やメモリの増加が可能になります。
坂本:つまり、例えば半導体製造装置を作った後、当初と異なる用途が出てきた場合、バックプレーンの中のメモリなどを入れ替えることで、新しい用途に対応することができるわけですね。
上村:入れ替えることも増設することもできます。
3つ目の利点は汎用性です。このようなものは、規格があってプラグコンパチブル(互換機)で作られています。したがって、例えば市場に流通しているよいボードがあれば、それを採用してこの中に接続して使うことができます。この点において、汎用性を保つためにもバックプレーン方式が大変有効となっています。
このような理由から、多くの産業用コンピュータでは、バックプレーン方式が採用されています。
エブレン製品の用途(応用分野)
上村:スライドには、エブレン製品が、どのような分野で使われているのかをまとめています。
スライド右の円グラフは、応用分野別に色分けした売上高で、上が2023年3月期上半期、下が2024年3月期上半期のものです。なお、当上半期の売上高の実績は、20億5,500万円でした。
分野別にどのような比率であったかと言いますと、まず一番大きい緑の箇所は計測・制御で、20億5,500万円の62.5パーセントを占めています。交通関連は15.2パーセント、防衛・その他は3.3パーセント、通信・放送は7.6パーセント、電子応用は11.5パーセントとなっています。
スライド左下の、緑色の丸で囲ったものが半導体製造装置です。半導体製造装置は大変種類が多いため、すべて挙げることはできませんが、例えば成膜装置、レジスト塗布装置、エッチング装置、洗浄機、ボンダーなどがあります。
また、そのようなものを検査することが非常に大事で、ウェーハプローバやフォトマスクの検査装置、寸法を測る際に使用する測長機があります。電子顕微鏡などを使わないと、目で見ることのできない非常に細かいところまで測る測長機です。また、完成したもののメモリテスタも半導体検査装置に含まれます。このような分野に当社の製品が使われています。
FA(ファクトリーオートメーション)と呼ばれる、チップマウンターやロボット、外観試験装置などに関連するもののコントローラーとしても使われています。こちらも含めて計測・制御セグメントとして集計しています。売上高構成比は62.5パーセントとなっており、当社の仕事の大きな部分を占めるとお考えください。
スライド左上の、青い丸で囲った箇所に交通・ITS(Intelligent Transport Systems)と記載しています。こちらは、ETCやEHSなどを中心として、高速道路の自動料金収受システムなどに、当社の製品が採用されています。
新幹線の写真も載せていますが、山手線のようなローカルの電車にも当社の装置が使われています。具体的にはATSやATCなどの、問題があったら列車を停止する装置です。ほかには、安全運行を確保するための信号にも使われています。
安全上とても大事なのは、軌道監視という考え方です。線路に異常がないか、常時監視して走るのが一般的になってきており、そのような装置に使われています。
スライド右上の、赤い丸で囲んだ写真が通信・放送セグメントです。通信は、有線や無線、モバイル、ブロードバンド、衛星通信、海底ケーブルなど多岐にわたります。放送は、放送映像装置やビデオサーバー、スタジオ機器などに使われています。こちらのセグメントには、電力関係も含めており、発電・変電・送電の各システムや、電力テレメーターにも当社の製品が使われています。
スライド右下の、黄色の丸で囲んだ部分に医療と記載しています。代表的なのは医療機器です。当社の製品が採用されているのは、画像処理・解析を行う機器がメインとなっており、MRIやCTスキャナー、超音波診断装置などです。
画像処理・映像解析以外では、血液分析装置や、特殊な分野としてiPS細胞のセルソーターにも使われています。iPS細胞は優れた細胞を選んで培養するそうですが、細胞を選別収集する際に使われています。このように、生化学の分野にも当社の製品が使われています。
最近増えている、ディープラーニングやAIを対象としたHPC(スーパーコンピュータ)、ゲノム解析を行うためのHPCなどにも当社の製品が使われています。
主要納入先 (直接納入,間接納入を含む)
主要納入先です。スライドに記載しているような会社とお付き合いしています。当社の製品は装置の一部分ですが、日本を代表するような企業からご指名いただいています。
生産拠点の分散
生産拠点は、本社が八王子にあり、ほかにも国内に入間事業所、上野事業所、大阪事業所、そして、海を渡った中国の江蘇省蘇州市に100パーセント子会社の蘇州エブレンがあります。
BCPの観点から、基本的には重要な設備は全拠点に配置し、万が一何かあっても別の事業所にデータを送って生産を続行することができるようになっています。社会インフラ系の設備に関連することに携わっているため、BCPについては重要視しています。
坂本:取引先もBCPについては重要視されていますか?
上村:万が一のときに出荷できなくなったら大変なことになるため、厳しく言われています。
坂本:分散したのは強みですね。
上村:おっしゃるとおりです。
2024年3月期 上半期決算実績
上村:上半期決算実績について少しお話ししたいと思います。スライドの太線で囲った数字をご覧ください。売上高は20億5,500万円で、前年同期比0.2パーセント増となりました。
営業利益は2億8,700万円と昨年に比べると低いですが、経常利益は2億9,000万円で、前年同期比0.5パーセント増となっています。当期純利益は昨年の1億8,600万円から、今期は1億9,200万円と、3.4パーセント伸びています。以上のように、業績はおおむね昨年並みです。
坂本:御社のビジネスはインフラ系のお付き合いがあるため、下期偏重で期末にはもう少し上がってきますか?
上村:おっしゃるとおりです。お客さまの予算の関係もあり、毎年下期偏重です。
坂本:進捗率が悪くても、最後にキャッチアップできるのが例年のパターンでしょうか?
上村:そのように考えていますが、半年先のため今年度はまだわかりません。
坂本:例年のとおりであれば、キャッチアップできるということですね。
上村:そのとおりです。
2024年3月期 上半期応用分野別概況-1
2024年3月期の上半期応用分野別概況です。半導体製造装置を中心とする計測・制御分野は、メモリ向け半導体を中心に設備投資の凍結や延期が影響しました。ご承知のとおり、2022年当初から、メモリが急激に悪くなっています。その影響で、設備投資も凍結や延期が一般的になっており、現在もまだ解消していない状態です。
半導体デバイスの在庫調整は、目途が立ってきました。昨年の調達難ではみなさま大変苦労されたと思いますが、当社も例外ではありませんでした。材料さえあれば生産できますが、材料や部品が集まらない状況でした。すべて解消したわけではありませんが、直近の半年間で徐々に改善してきています。
電子部品の入荷状況も同様で、調達難が改善に向かってきています。通期売上計画に対しての進捗率は45パーセントで、先ほどお伝えしたように下期に偏重しています。
売上は14億3,200万円が12億8,400万円となり、前年同期比で10.4パーセント減となっています。
交通関連分野では、半導体デバイスの入手状況が改善し、遅延分の納入が進んでいます。顧客の納入制限も解除されてきており、通期売上計画に対しての進捗率は54.7パーセントとなっています。
売上は前年同期比で43.3パーセント増となっています。こちらは、今まで滞留していたものが納入できたことによる影響が大きいです。また、新規受注もだいぶ回復し好調です。
2024年3月期 上半期応用分野別概況-2
通信・放送分野では、全体的に部品の入手難が改善されてきています。滞留していたものが納入でき、売上は前年同期比で19.5パーセント増となっています。
医療関係を中心とした電子応用分野も同様で、調達難が解消されてきています。また、欧州を中心に医療機器への設備投資が増加傾向にあります。
防衛・その他分野は前年同期比で12.5パーセント減となっています。こちらの理由は不明です。
2024年3月期 上半期応用分野別売上
上半期応用分野別売上の四半期比推移です。スライドに記載している表のグレーの部分が計測・制御分野です。前年の上半期から約1億4,800万円減っており、半導体製造装置は昨年に比べて悪い状況にあります。
黄色い部分が交通関連分野で、若干増えています。ほかはあまり変化がない状況です。
2024年3月期 上半期業績 – 財政状態
財務状況です。流動資産が42億9,300万円、固定資産が12億7,600万円、資産合計が55億7,000万円、流動負債が8億1,200万円、固定負債が3億9,500万円、負債合計が12億700万円、純資産が43億6,200万円、負債純資産合計が55億7,000万円で、自己資本比率が78.3パーセントになりました。
2024年3月期 通期予想
2024年3月期の通期予想です。半導体関係の不調が予想以上に長引いているため懸念はありますが、これまで発表した通期予想から修正していません。売上高は43億1,000万円、経常利益は6億5,900万円、当期純利益は4億3,100万円を予想しています。
増減率は、おおむね昨年と同じくらいの業績となる見込みのため、大きく変化しないと思います。前回、「昨年並みだったら御の字」だとお伝えしたのは、若干下回るかもしれないという意味も含めていたのですが、計画は変えていません。
スライド下部にも掲載していますが、当社は2023年10月22日に創立50周年を迎えました。1株あたり5円の記念配当を実施すると先週発表したばかりです。2020年の6月という、コロナ禍の真っ只中に上場し、今度の配当が4回目となります。おかげさまで、上場以降、前年比22パーセントずつの増配を継続しています。
昨年の1株当たりの配当が27円で、今年は22パーセント増ということで、2024年3月期の見通しは33円です。これに記念配当の5円をプラスして38円にするため、単純に言えば前年比40パーセント増となります。この水準の配当を継続していけるように、とにかく努力していこうと考えています。
坂本:来期については、記念配当が上乗せされた分についてどう見ればいいのでしょうか?
上村:それを下回らないということは決めています。
坂本:そうすると、1年で22パーセント伸ばすということですか?
上村:あまり勝手なことは言えませんが、基本的には「安定して伸ばしたい」という思いなので、下げることは考えていません。
2024年3月期 通期見通し
通期の見通しです。計測・制御分野では、メモリ関係の需要が徐々に回復に向かっていますが、現在、「ChatGPT」等の生成AIの影響が大きな話題になっています。こちらは、「期待できるかな」という程度に考えています。懸念としては、やはり中国向け半導体製造装置・検査装置の影響がどう出るかということです。
交通関連分野はよい方向に向かっています。注残の消化が進み、顧客都合で納入制限を受けていたものも解消に向かっており、好調です。
2024年3月期 通期見通し
通信・放送分野は、全体的に調達状況が良くなっており、電力関連の新規受注が増えていると聞いています。これは期待できるのではないかと考えています。
電子応用分野では、医療機器もかなり良くなってきています。また、生成AI関連でディープラーニングをターゲットにしたHPCやデータセンターなどが、これから増えていくと予想しています。この半年間でそれが具体的になるかどうかは別にして、期待を持っています。
また、防衛・その他分野は、前年並みくらいだろうと思っています。この分野については、なかなか情報を集めにくいです。
2024年3月期 通期応用分野別売上予想
2024年3月期通期応用分野別売上予想をグラフにしています。ほとんど増えていないですが、なんとか前年並みになるよう努力しているところです。
直近10年間の業績推移
エブレンの直近10年の成長トレンドをグラフにしています。青色が売上、ピンクが経常利益です。
当面の目標
青い矢印が売上の成長目標、ピンクの矢印が経常利益の成長目標です。なんとかこの範囲内に入るようにがんばっていきたいと、いろいろ計画しています。
直近10年間の業績推移
スライドを戻します。10年前と比較して、売上は約25億円から約42億円まで、経常利益は約1億4,000万円から約6億5,000万円まで伸びています。
当面の目標
この成長をさらに、矢印のゾーンまで持っていきたいところですが、残念ながら当期については前年並みの伸長となっており、右肩上がりではなく、水平になってしまっています。何とか下回ることがないようにがんばろうと考えています。
成長戦略
成長戦略では、コア事業の強化、受託範囲の拡大、ボードコンピュータ事業の強化、中国子会社の戦略的活用の4つを推進していきたいと考えています。
坂本:この4つの中でどれに一番力を入れるかについて、この後のご説明でお聞きしたいと思います。
(1)コア事業の強化
上村:当社はなんと言っても、半導体関連のウエイトが中長期的に大変高いと思います。ご承知のとおり、現在、世界の半導体そのものの市場は、4,000億ドル市場だと言われています。どのくらいのレートで換算するかによりますが、現在のような極端な円安で換算してはいけませんが、だいたい50兆円くらいですね。
1947年にベル研究所がトランジスタを開発した時から約70年経ちました。70年かけて4,000億ドル、50兆円の市場を作ったと考えると、10年後は倍になると言われています。私どもの業界でよく話題になるのですが、70年かけて作った4,000億ドルの市場が、10年間でもう1個できるということです。
「このチャンスにかけない手はないだろう。これをキャッチアップするのは当社の中長期的な観点からもとても大事なことだ」と思っています。そのために、いろいろな要素開発をする必要があり、製品開発・技術開発にターゲットを当てて進めていきたいと思っています。
(2)受託範囲の拡大
上村:私どもも付加価値を上げるために、アッセンブリのレベルを上げて受託範囲を拡大していきたいと考えています。
また、装置の中に入れるボード等も、お客さまからの要望が増えてきているため、対応できるようにしていきたいと考えています。
坂本:バラバラではなくて、スライドの一番右側の図のように、全部入ったものを提供するということですか?
上村:お客さまとしては、本当はスイッチを入れたらそのまま動くものが一番よいですよね。なるべくそのようにして持ってきてもらいたいのだと思います。
(3)ボードコンピュータ事業強化
ボードコンピュータ事業の強化もその関連です。現在取り組んでいるおもしろいものとしては、スライドにも記載している高電圧・大容量直流遮断器です。こちらは洋上風力発電関連のものです。また、半導体検査装置用カメラモジュールの回路なども開発しています。
開発品には、ワイヤーボンダーコントローラー、フィールドバス対応ロードセルアンプ、省エネ型スーパーコンピュータ関係、ディープラーニング関係、AI画像処理システムなどがあります。また、特殊なものには、ショットピーニング用AEセンサーモジュールのようなFA関連のもの、半導体製造装置除振器という振動しないようにする特殊な装置なども現在開発中です。私どもは、このような装置をコントロールするいろいろな回路を開発しています。
(4)中国子会社の活用強化
中国子会社を戦略的に活用することについては、先ほどお話ししたとおりです。
質疑応答:取引先の増減について
坂本:「取引先は年々増加しているのでしょうか?」というご質問です。
上村:先ほど主要取引先をご覧いただきましたが、年々増加しています。必ずしも大きい会社だけではなく、小さくても技術力の高い会社も非常に重要だと思っています。特に最近はソフト系の会社が目立ちます。
坂本:それはエッジコンピューティングですか?
上村:「自分たちが全体システムを作るため、ハードはエブレンに任せたい」というご依頼です。大変ありがたい話で、そのような点でもなんとか貢献していきたいと考えています。
坂本:ソフトの会社がハードをセットで売るために、「ハードの部分を作ってください」という感じなのですね。
上村:今世界はそうなっています。例えばAppleは自社工場を持っていませんよね。自分たちがすばらしいものを設計し、専門メーカーに作ってもらえばよいという考え方です。半導体も同様です。ファウンドリーは、自分たちで設計しません。ただし、「作ることならば任せてください」という考え方が一般的なのです。
坂本:今のお話はBtoBのソフト会社ですよね。
上村:そのとおりです。
坂本:ソフトを設計して、作ってもらって、そして営業するというイメージですね。
上村:自分たちで対応しなくてもいい部分で、自分たちよりも上手くできるところがあればそこに頼んだほうがよいという考えだと思います。
坂本:ファブレスにして開発に専念したいですからね。
上村:おっしゃるとおりです。これからシステムが高度化してくることを考えると、ますます組む人(パートナー)が大切です。組む人を間違えると大変なことになるからです。
質疑応答:受注について
坂本:「受注の話を聞かせてください」というご質問です。本日は、注残を消化しているというご説明もありました。注残を消化した後に向けての話となりますが、足元の天気図の部分を含めて説明していただけますか? 21ページのセグメント別の部分を、もう少しお聞きしたいと思います。
上村:前期の上半期末の注残は28億円ありました。その後、当期上半期の注残は20億円となり、8億円減っています。これだけ消化が進んだということです。ただし、20億円という金額が当社にとって、多いか少ないかで言うと、依然として多いです。
コロナ禍に入る前の平常時は10億6,700万円でした。10億円レベルなのです。そうすると、まだ異常なくらい、水準としては高いです。
坂本:それでもきちんと目標の成果を出せるレベルであるということですね?
上村:そういうレベルですね。
坂本:それについてもう少しお聞きします。おそらく製品によってリードタイムは変わると思いますが、注残がそのくらいということは、注文を受けてから出荷までのサイクルが短いのですか? あるいは、ずっと出荷しているためにそうなっているのでしょうか?
上村:ものによります。極端な場合、半年から1年近くかかるものもあります。
坂本:そうではない場合にはスムーズに出されるのでしょうか?
上村:早いものでは半年くらい、急ぎで、簡単なものは数ヶ月で出荷することもあります。
坂本:それができれば、量産してどんどん出せそうですね。
上村:おっしゃるとおりです。先ほど2年から3年かかるものもあると言いましたが、共同開発品だと本当に約3年かかります。それまで売上も入りません。開発費の一部として、試作品の製作費くらいは出ますが、量産しないと採算は合わないです。
質疑応答:ファン以外の冷却技術について
増井麻里子氏(以下、増井):「ファン以外の技術で、半導体を一定の温度に保つ技術研究開発はされているのでしょうか?」というご質問です。
上村:とても大事なことですね。ICがどんどん高性能になってくると、問題は熱との闘いになっていきます。一番よいのは無尽蔵にある空気を使う空冷です。空冷が一番経済的で、一般的です。液冷は、配管する必要があり大変です。
坂本:壊れたらもうそこで終わりになってしまいますよね。
上村:そのとおりです。液体を使うことになるという点で、非常に大変なのです。一部には、液浸といってジャブ付けして使うものもありますが、環境への問題が出てきています。フロン問題のようなものと考えればよいと思います。
そのような問題もあり、この問題は深いのです。しかし、電子機器メーカーは当社のように、常に冷却に対して関心を持って、研究開発を進めなければなりません。特殊なものについては、当社も液体を使って循環させるものを作っています。
一般的なアプローチは、もっとも経済的な空気を使い、構造体としてよく熱シミュレーションを実施して、それでも支障のないものを作ることです。