2024年6月期第1四半期決算説明

天沼聰氏(以下、天沼):みなさま、こんばんは。本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。株式会社エアークローゼット代表取締役社長兼CEOの天沼です。これより、2024年6月期第1四半期の決算についてご報告します。

まず私から決算説明を行ったのち、あらためて「airCloset」のサービス、我々の戦略、将来性を含めてお話しした上で、質疑応答に移ります。

決算説明の要旨

2024年6月期第1四半期の決算説明です。まず決算の要旨ですが、airCloset事業の既存会員の継続率が想定以上に改善していることが1つのポイントになろうかと思います。

また、airCloset事業の収益性の向上等において、7月から9月期の純損益が大幅に改善しています。昨対比で見ると、マイナス1億円のところがプラス300万円の利益となり、大幅に改善しています。こちらの内容については、後ほど少し触れたいと思います。

さらに、循環型物流プラットフォームを活用した新たな取り組み、特に「Disney FASHION CLOSET」のスタートに向けた動きなど、中期的な可能性が広がった第1四半期になりました。

重要指標サマリー

重要指標のサマリーについてご説明します。四半期末ごとの会員数と売上、営業損益、EBITDA、四半期純損益、限界利益と、重要指標を掲載しています。四半期末会員数についてもしっかりと成長することができています。特に、既存会員の継続率の改善が寄与して増加しています。

売上高についても、会員数増加によるairCloset事業の増収、airCloset Mall事業の拡大によって、売上高が成長しています。営業損益については、新規投資や償却費増等を吸収して、airCloset事業の損益が改善することで、第1四半期営業損益はプラスに転じています。

四半期の純損益についても営業損益の改善を行った結果、大幅に改善してプラスとなっています。

airCloset事業は、ビジネスモデルとして黒字化に向けた動きに注力してきました。少しずつですがしっかりと花開いてきて、数字に表れてきていると実感しています。

目次

四半期の業績および事業進捗については、後ほどあらためて触れますが、みなさまには、まずは当社のビジネスの狙い、そして事業の戦略、将来に向けた方向性を知っていただいた上で、その戦略に第1四半期がどのように乗ってきているのか、しっかりとレールに乗っているところを見ていただきたいと考えています。

Vision & Mission

まず、エアークローゼットの全体像をご説明します。シェアリング・エコノミーが日本でメジャーになっておらず、サブスクリプション型ビジネスの「サブスクリプション」のキーワードもまだない中、当社は2014年に創業しました。

「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」をビジョンに掲げて、人々のライフスタイルがより豊かになるように、そのためには、人生という価値を考えたときに、一番重要になってくるのが時間の価値だと捉え、ワクワクしているタイミングを時間価値が高い状態と、我々は定義しました。

この時間価値を向上させていく事業を運営し、その事業がしっかりと拡大していけば、人々のライフスタイルがより豊かになるだろうと考えて、ビジョンを「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」と定めて創業しました。

社会の変化① 超情報化社会による時間価値の向上

創業後、どのような事業に取り組もうかと考えた中で、「長く人に愛される事業にしたい」という思いから社会の変化に沿っていること、「業界に貢献していきたい」という思いから業界の変化に沿っていること、我々はこの2点を大きく意識しました。

1点目の社会の変化について、超情報化社会によって現在は時間の価値が相対的に高まっていると感じています。人生の限られた時間に対して、情報・モノが爆発的に増加しています。情報については特に、良い情報に出会うことに対して時間がかかり、モノについても生産効率が高まることに相まって、モノの種類も増えており、時間の価値は相対的に高まっていると実感しています。

このような中で、AIデータ活用やパーソナライゼーション、サブスクリプションといった時間活用の最適化を促すサービスのニーズが非常に高まっていると感じています。

当社では、airCloset事業やairCloset Mall事業を通して、この時間価値を高めていくことを意識して、サービス設計、ビジネスモデルの設計を行っています。

社会の変化② サーキュラーエコノミーへの転換

もう1つの社会の変化は、線形経済から循環経済への転換、サーキュラーエコノミーへの転換だと考えています。

環境省や経済産業省の方とコミュニケーションを取る機会が多くなっているのですが、お話をうかがうと、これまで日本経済が取っていた線形経済からサーキュラーエコノミーへの転換が必要不可欠だという声が上がっています。

これまで日本では、リサイクルがメインで挙げられることが多かったと思いますが、循環経済の中には、製品をメンテナンスして再利用していく、もしくは再販していくことも含まれています。

今後、このような利用・リサイクルの過程で、飛躍的なサービスの拡大・革新が求められると考えています。

ファッション業界の変化① パーソナライズ需要の高まり

このような社会変革に加えて、当社がターゲットとしているファッション・アパレル業界の変化ですが、業界の変化の1つ目は、パーソナライズの需要の高まりだと思っています。

スライド左側の図は、従来の動きを示しています。これまではマーケティングの施策が限られていました。マスマーケティングの施策だったと思いますが、ブランドやメーカーは、単価を下げるために型数を一定制限して大量生産をする必要があり、これに対してマスマーケティングを行い一定のトレンドを作って、お客さまに購入していただくという手段をとってきました。

お客さまにとっては、マスマーケティングという画一的な手段での情報収集を通して、トレンドに乗ったアイテムを多く購入するという消費のかたちが当たり前だったと思います。このかたちが少しずつ変化していると実感しています。理由の1つは、IT・SNSの流行によってトレンドの崩壊が少しずつ生まれてきたことです。

個々人の多様化に対して、ブランドやメーカーは多くのファッションアイテムを作っていく必要があります。

一方で、生産効率も徐々に高まってきているため、ブランドやメーカーの中にはDtoCのブランドも多く出てきていると思いますが、モノのバリエーションが増えていく傾向があると思います。

ただし、マスマーケティングとは違い、直接的なマーケティングが必要になってくる中で、ブランドやメーカーの方から課題をうかがうと、時間がなくてなかなか広告を見てくれない個に対してマスマーケティングの効果が発揮されなくなっている現在、直接、新規顧客を捕まえることは難しいという声を多く聞きます。

また、情報もモノも爆発的に種類が増えている中で、消費者にとってはモノ探しが困難になってきているという声を聞きます。多くのファッションブランドが、新しい洋服を開発する中で、「自分に適したアイテムを探す時間がない」「なかなか自分に合うブランドを見つけることができない、その時間がない」という声を聞きます。

ブランドやメーカーは新しい顧客に出会いたい、消費者は新しいブランドを発見したいというニーズがあるにもかかわらず、時間がない・情報が多すぎるという中で、当社はメーカーと消費者との新しい出会いの機会を作ることで、業界全体への貢献に加えて、消費者の新しい消費行動につなげていきます。

ファッション業界の変化② サステナビリティ意識の上昇

2つ目の業界の大きな変化として、先ほどのサーキュラーエコノミーにつながる部分もありますが、消費者のサステナビリティ意識の上昇も大きな変化の1つだと思います。

SDGsに代表されるように、消費者のサステナビリティへの意識が高まっています。大量生産・大量消費・大量廃棄という業界姿勢の見直しが、現在ファッション・アパレル業界で求められてきています。

私も業界紙を見ると毎日のようにサステナビリティ、SDGsといったキーワードを目にします。

ファッション業界でも循環経済が求められており、消費者の目線からもサステナビリティへの意識が徐々に高まっているのを感じます。

今後、サステナビリティというキーワードはもちろん、それを支えるシェアリング・エコノミーの概念やサーキュラーエコノミーといったキーワードへの関心がより高まっていくことが、大きな方向性として挙げられると思います。

このように、社会の変化や業界の変化に対して、人々に長く大切にされるように、「airCloset」のサービスのビジネスモデルを設計してきました。

airClosetのサービス概要

サービスの概要です。現在、レディース向けサービスを展開していますが、お客さま目線で見ていただくと非常にシンプルだと思います。

ステップは大きく4つに分けています。基本的にはスマートフォンでのご登録が多いのですが、お客さまはeコマースで登録するように、ご自身の好みやサイズ、住所、ファッション、体型に対する悩みを登録します。

基本的にはこれだけで、一人ひとりの登録情報が、当社の専用システムでカルテ情報として整理されます。蓄積されたデータを、プロのスタイリストが参照して、我々の数十万着という在庫から、お客さまのプランによって変わりますが、3着ないしは5着をコーディネートして、ご自宅に郵送しています。

受け取ったお客さまには好きなだけ洋服を楽しんでいただき、レンタルのため直接着て、毎日の生活の中で体感していただきます。また、ご自身のお洋服とたくさん着合わせしていただくこともできます。

その洋服が似合う、もしくは着合わせが多く、バリエーションもできるし長く大切にできそうというアイテムに出会えば、そのままお客さまが買い取りできる仕組みになっています。シェアリングのアイテムのため、買い取りの際もよりリーズナブルに購入ができる仕組みになっています。

ご返却の際も、コンビニ等に持って行き、QRコードをかざすだけでそのまま返却が可能です。当社が返却を確認できたら、次のコーディネートが自動的に送られるシステムになっています。

お客さまは届いたアイテムを直接着用して楽しんで、気に入ったら買う、返却したら次の洋服が届くというように、ファッションとの出会いに集中できるよう、そのほかの時間をなるべく効率的に使えるよう、サービス設計してきました。そのために、スタイリストが洋服を選ぶという、レンタルにパーソナルスタイリングを掛け合わせた仕組みになっています。

当社がサービスを開始した当初、日本には普段着のレンタルはなく、国内で初めての普段着のレンタルサービスとしてスタートしました。特に意識したのは、レンタルというビジネスモデル自体が、レンタルを主目的とするものではないことです。

消費の変化、特に消費者がすべて探して、すべて情報収集して、すべて選びに行かなければいけないという消費行動ではなく、モノを探したりトレンドを知ったりする部分を一部アウトソースして、賢い消費が選択肢として増えていくことを見越して、「パーソナルスタイリング×レンタル」という仕組みにしました。

ファッション業界で進む消費の多様化

ファッション業界で進んでいる変化は、消費が移り変わっていくのではなく、消費が多様化されていると感じています。個々の多様性もそうですが、多様性の尊重が社会で進む中、技術革新も相まって消費の多様化が進んでいると考えています。

1990年代には、従来の店舗に加えてセレクトショップが台頭しました。2000年代にはセレクトショップが徐々に成長する中、技術革新が行われてインターネットでの買い物、eコマースが出てきました。

2000年代初頭もしくは1990年代の最後の頃は、まだeコマースの割合は0.1パーセントから0.2パーセントでした。そこから20年、30年かけて、現在はeコマースが市場の幅を広げて約20パーセントになっています。

一方で20年、30年かけても全体の約20パーセントということは、おそらくどこかの裾野で消費の仕方が100パーセントに変わっていくのではなく、バリエーションが広がり、多様性が進んでいるのだと私は考えています。

このような中で「パーソナルスタイリング×レンタル」という受動的な、選んでもらう要素を持つ消費のスタイルが、将来一般化していくと考えています。商品の100パーセントが変わっていくのではなく、消費全体の10パーセントから20パーセントがキュレーションをはらんだ、もしくはサステナビリティを意識した循環型のビジネスモデルが、消費のかたちとして選ばれていくと確信しています。

airClosetの事業構造の特徴

このような時代背景、業界背景に対する当社の事業構造の特徴です。比較的、セレクトショップのビジネス形態に近い部分に加えて、物流のモデルを掛け合わせているとご理解いただければと思います。

当社は、ブランドやメーカーから毎シーズン、トレンドに合わせて仕入れを行います。必要な数量を、過去のレンタル履歴やお客さまからの評価、販売率といったデータの履歴を中心に、データ分析・人工知能を活用して、必要な仕入れ数量を効率的に算定して仕入れています。

仕入れたアイテムに関しては、当社の物流の機能に対して入庫していきます。業界では「ささげ」と呼ばれる撮影と採寸・アイテムに対する原稿づけも、自社の物流の機能の中で行っています。

私がファッション業界に参入して驚いたことでもありますが、採寸をなぜ自社で行っているかというと、実は多くのブランドのサイズ展開、例えば、S・M・Lや36、38、40といったサイズ展開には決まりがなく、同じサイズ表記でもブランドによっては少し大きめだったり小さめだったりと、サイズのブレがあるのです。

そこをeコマース、オンラインでお届けするにあたり、サイズのズレを最小限に留められるよう、自社ですべて採寸ルールを決めて、採寸し直し、当社内でのデータ活用として、サイズを一律で計れる状態を作っています。

このように当社が入庫処理したものを保管して、お客さまに対してスタイリストが選定したアイテムを配送しています。お客さまはそれを着用して、返却するのですが、返却したアイテムに関しては全点を検品し、クリーニングも行います。中にはメンテナンスの必要な商品もあるため、メンテナンスの機能も物流の中に備えています。

検品やクリーニング・メンテナンスを行って再度保管したアイテムに関しては、次に貸し出し可能になったステータスをシステムが確認して、出荷可能な状況になります。この循環型の物流の業務フローをゼロから構築してきました。

後ほども触れますが、スタイリストはお客さまから、着てみたアイテムに関するフィードバックの情報を受け取ります。このフィードバック情報は非常に貴重で、この情報をすべてデータベースに集めて、次のスタイリングに活用したり、モノの活用のデータですので、次の仕入れに向けたデータのインプットにしたりしています。将来的には、その後の生産のデータインプットにも活用していきたいと考えています。

このようにモノが循環するサービスなのですが、当然、レンタルから外れていくアイテムもあります。検品して品質が一定よりも下回っているものは、レンタル対象アイテムから除外しています。

その外したアイテムに関しては、リセール、いわゆる「エコセール」と自社で呼んでいる再販や、2次流通の事業者との取り組みに回しています。数量は多くありませんが、その中には破けてしまってもう着られないアイテムもあります。このようなものに関してはリサイクル事業者と連携して、リサイクルにかけています。

仕入れたアイテムに関しては、全点をシェアリングで活用した上で、リセール・リサイクルを通して「廃棄ゼロ」を実現しています。これらの物流の仕組みが我々の根幹であり、他社と差別化する重要な要素の1つとしても捉えています。

収益構造

収益構造です。基本的には、安定して発生するairCloset事業の月額会費および販売による売上が、約85パーセントを占めています。販売とは、会員の方へのレンタル後、購入していただくものを指します。

サブスクリプション型事業の中には、広告費のように安定しない売上が一定を占める場合がありますが、当社では月額会員からの売上がほとんどを占めているとご認識ください。これに加えて、オプションやエコセールといったもので売上を上げています。

エアークローゼットの経営戦略

スタートしたばかりの新しいビジネスモデルですので、しっかりと経営戦略を作って、まずは土台を作ることに注力しています。

創業来掲げているビジョンとして、時間価値を高めていく意味を込めた「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」を軸とした企業戦略、また、それぞれの事業領域に対する目的・目標と事業構成を戦略に加えています。その上で、個別戦略として、事業促進のための事業戦略と、全社的な効率性を高めるための具体施策をまとめた機能戦略を置いています。

また、事業の成長に合わせて当該戦略のアップデートを実施していく予定ですが、売上1,000億円に向けた100億円をまずは目標として戦略を進めています。

基本成長方針

基本的な成長方針は、上場前の期から変わりません。現在メインのお客さまであるレディース領域の事業拡大を中心に、今後、メンズやその他のセグメントに広げていきます。

また、循環型の物流基盤をプラットフォームとして、自社の新しいサービスのみならず、他社に活用いただく展開も考えています。

事業領域の拡大による成長の加速

事業領域の拡大に対して成長を加速させていく観点では、このプラットフォームが重要なポイントになると考えています。

スライド下部の茶色の枠内に記載しているとおり、このプラットフォームは、循環型物流という物流機能全体に加えて、当社ではWMS(ウェアハウスマネジメントシステム)と言われる倉庫管理システムを、フルスクラッチで自社化しています。

このシステムに加えて、パーソナライゼーション機能およびそれを実現するデータすべてを合わせて、プラットフォームと呼んでいます。このプラットフォームに、airCloset事業と同じサブスクリプション型の事業として、airCloset Mall事業も乗せています。

今後は、メンズやその他セグメントもこのプラットフォームに乗せていくことで、効率的にサービスの展開ができると考えています。具体的には、都度課金型の新しい形式のサービスになりますが、例えば、ディズニーアイテムのファッションレンタルサービス「Disney FASHION CLOSET」などは、このプラットフォームに乗るからこそスムーズに実現できたと思っています。

都度課金型の仕組みはこのプラットフォームに実現しましたので、今後は、例えばこれまで既存であったような着物等々も含めて、プラットフォームに乗せることができます。このようなtoC向けの事業に加えて、toBを対象とした物流機能の外販も、このプラットフォームの強みになると考えています。

多くのブランドやメーカーから「ファッションレンタルサービスを始めたいと思っているが、物流機能がなかなか作れない」とのお声をいただいています。これらを業界に対して展開していくことで、例えばZOZO社が当初eコマースを広げていったように、我々もこのファッション領域で、ファッションレンタル等の循環型サービスを広げていきたいと考えています。

1,000億に向けた100億事業への戦略

「1,000億に向けた100億事業への戦略」として、まずは100億円の事業を作って、それを土台と捉え、ビジネスモデルを確立していきたいと思っています。そのための戦略「Steady Base(盤石な土台)」を公表しました。この戦略は大きく3つに分かれています。

1つ目は利益を生む仕組みの構築を行っていく施策群、2つ目は既存の対象顧客だけではなく、将来的な成長に向けてしっかりと顧客基盤の拡大を行っていく施策群です。

3つ目は事業拡大に向けた基盤強化として、ノウハウの集約やAI・人工知能のデータ活用等を含めて、成長を支えて加速する基盤を構築する施策群です。

Steady Baseの具体的な施策群と注力時期

Steady Baseの具体的な施策群と注力時期についてご説明します。スライドには、前期まで・当期・来期以降に分けて記載しています。

スライド下部に赤で記載のとおり、前期までは物流基盤確立などを含めた事業整備期です。事業をまず整備して、オペレーションも含めてしっかりと事業が回る状態を作るのが、前期までのアクションです。

7月から9月の第1四半期を過ぎましたが、当期の2024年6月期に関しては、成長基盤を作っていく期だと考えています。

そのためには、利益を生む仕組みをしっかりと構築する必要があります。特に、会員獲得効率の改善や、既存会員が退会せずしっかりと継続がなされる基盤を作っていくことが大切です。アクセルを踏んだ時にしっかりと成長につながるように、当期は成長基盤の確立に注力しています。

また、成長基盤の中には、事業領域の拡大や「airCloset Mall」という新事業の拡大も含まれます。これらがしっかりと動き始めていることも、当期のターゲットにしています。

この成長基盤が確立できた暁には、来期以降、あらためて事業拡大期に対してアクセルを踏んでいくことで、成長角度を高めていくことができると考えています。

まずは、今期は事業がしっかりと成立することをお見せする期だと考えています。

重要領域サマリー

2024年6月期第1四半期業績および事業進捗です。事業背景や我々の事業戦略、将来性に対して、2024年6月期第1四半期はどのような業績だったのか、また、事業の進捗はどのような状況なのかをお話しします。

事業戦略上、当期は成長基盤確立の注力時期であり、会員数が増える仕組みをしっかりと作ることを大切にしている期です。その中で、重要領域を大きく3つに分けて捉えています。

重要領域の1つ目は、会員数がしっかりと増えていくことです。2つ目は、オペレーションの効率的な運営が変わらずなされることです。領域が拡大していっても、事業が拡大しても、オペレーションが効率的な運用ができる組織であるかどうかです。加えて3つ目は、事業利益の拡大の準備が整っていることです。

1つ目の会員数の拡大に関しては、既存会員の継続率の改善と、新規会員獲得効率の改善の大きく2つに分けています。

既存会員の継続率の改善については、第1四半期の状況として、初回継続率、これは初月ということですが、この改善が想定以上に進んでいます。これが会員数の増加に寄与し、ロイヤルユーザーの継続率も安定しています。ロイヤルユーザーとは、利用期間が6ヶ月を超えるユーザーのことです。6ヶ月超使い続けた方はかなり継続率が高い状態になりますので、この継続率が変わっていないかは注目すべきポイントとしています。

新規会員獲得効率については、7月から9月の獲得数は想定どおりに推移しています。これに加えて、コンバージョンレート等の向上により、前年同期比で会員獲得効率もしっかりと改善することができています。この獲得効率については、今後さらなる改善が必要だと認識していますので、今期の注力領域の中で改善を続けたいと思っています。

2つ目のオペレーションの効率的な運営に関しては、順調に推移しており、コストコントロールも含めしっかりと見られる組織になっていると感じています。

3つ目の事業利益の拡大では、「Disney FASHION CLOSET」が10月にサービススタートしました。airCloset Mall事業も順調に拡大することで、来期以降の成長に向けた土台を作っており、この事業領域の拡大もしっかりとスタートできていると感じています。

2024年6月期第1四半期会計期間(2023年7-9月)の実績

具体的な実績についてお話しします。四半期末会員数は、前年同時点比9.6パーセント増と、しっかりと成長することができています。売上高、限界利益に関しても、想定以上に推移しています。

既存会員の継続率の改善による収益性が改善したことに伴って、airCloset事業は計画どおり営業損益が黒字化しています。前年同期はマイナス1億500万円の赤字だった四半期純損益についてもプラス300万円と、プラスに転じることができています。

事業の土台を作る期の中で、このように利益水準を高めることができているのは、非常によい滑り出しだと捉えています。

初回継続率の改善による影響

サブスクリプション事業ということで、初回継続率を重要視している理由をご説明します。継続率の改善は、言わずもがなですが会員数の増加だけではなく、収益性の向上においても重要と捉えています。

スライド左側のグラフで月額会員残存率を見ていただくと、最初の3ヶ月に退会する方が多く出てきていて、その後安定しており、これは一般的なサブスクリプション事業における遷移と言えます。初月の離脱率がもっとも大きいため、改善影響が非常に大きくなります。

初月、特に初回の継続率を高めていくことで、その後のロングテールで続いていく残存率も押し上げられることが、データでわかっています。

だんだんと、よりお客さまに合った洋服が届くようになっていくため、⻑期利用者の継続率は高水準です。したがって、初回継続率の改善を図ることが会員数の中長期的な積み上げに寄与すると把握しています。それだけではなく、広告宣伝費も抑制できますので、収益性の向上も図れます。

継続率、特に初回継続率をしっかりと高めていくことを、注力領域としてこれまで改善に取り組んできました。

初回継続率の改善

初回継続率の推移です。四半期ごとの推移を実数値に基づいてグラフ化していますが、2023年6月期第1四半期から徐々に初回継続率が高まっていることが見て取れます。お客さまの満足度を上昇させるために、絶えずUI/UX、いわゆる顧客体験のチューニングを実施することでこのような改善を続けてきました。

当社は物流の機能・コストに関しても、継続的に改善を行う組織運営を実施しています。PDCAを少しずつ回して、再現性のある改善を行っていくことが得意な領域でもありますので、このチューニングを継続して行っていきたいと思います。

今期の主要施策としては、長期契約の毎月払いコースの導入が挙げられます。これまでは例えば、3ヶ月契約のお客さまには、最初の登録時に3ヶ月分の会費を支払っていただく「まとめ払い」の仕組みを適用していましたが、新たに、毎月払いによって支払いの負担を軽減するという施策を導入しました。これによりコースの選択率も大きく変わり、継続率の上昇に寄与していると分析しています。

ロイヤルユーザー数の堅調な推移

ロイヤルユーザーの月次継続率は、変わらず安定した状態です。ロイヤルユーザーが増えていることは、安定した成長の基盤を構築できている証だと捉えています。

安定したオペレーション運営

スライド左側に1配送当たりのオペレーションコスト、右側に月額会員1人当たりの限界利益のグラフをそれぞれ記載しています。これらの数字に関してもしっかりとコントロールができており、安定した推移が見て取れるかと思います。

業績概要 第1四半期会計期間 対前年同期比

第1四半期の会計期間の前年同期比を示しています。月額会員数の増加に伴って、売上、限界利益は前年同期比で増加しています。収益性の向上によって、営業利益も黒字で着地することができています。

会員数の推移

全体会員数の推移に関しても、一定の季節性が存在しますが、第1四半期末においても前年同期比でしっかりと成長を継続することができています。先行指標である無料会員数に関しても、変わらず成長することができていますので、今後もこの成長路線を保ちたいと思っています。

販売費及び一般管理費の四半期推移

販売費及び一般管理費の四半期推移です。airCloset Mall事業の拡大や、「Disney FASHION CLOSET」のような新しい取り組みの立ち上げにより、全体では前年同期比で微増していますが、一方で広告宣伝費は効率改善によって減少しています。

結果として、対売上比率は約5ポイントの改善となっています。このコストコントロールもしっかりと行っていきたいと考えています。

限界利益及び営業利益の四半期推移

限界利益及び営業利益の四半期推移です。限界利益は会員数の増加、キャンペーンの抑制等に伴い、前年同期比でしっかりと増加することができています。また、営業利益も収益性の改善に伴って、当第1四半期では黒字で着地しています。

業績概要 第1四半期会計期間 事業毎内訳

第1四半期会計期間の事業ごとの内訳です。airCloset事業単体、その他事業の大きく2つに分けていますが、airCloset事業の営業利益は計画どおり黒字で着地しています。

特に見ていただきたいのが、スライドに赤でハイライトした2ヶ所です。まず、airCloset事業の売上総利益率は、前年同期比50パーセントから48.8パーセントに低下していますが、こちらはこれまで減損損失を計上していたことが大きく影響しています。売上総利益率の低下要因に関して、我々がどのように捉えているのかについては後ほどお話しします。

また、営業利益に関してはマイナスからプラスに転じており、この増加要因についても細かく分析していますので、後ほどご説明します。

【売上総利益率】減損損失が損益に与える影響について

売上総利益率に関して、減損損失が損益に与える影響を整理したものをスライドに示しています。基本的に、レンタル用資産として計上している洋服から減損損失が先に発生する場合、次の期の売上総利益率にプラスの影響があるというのが、会計上の仕組みになっています。

グラフを見ていただくと、2021年6月期から2022年6月期、2023年6月期、2024年6月期と徐々に減損損失の発生が減少していることがご覧いただけます。キャッシュフローの改善等により減少傾向となっていますが、ビジネスモデルとしては、減損損失が発生しないかたちで黒字を実現することが本来の姿であり、それに少しずつ近づいて行くことができています。

今期は前期よりも減損損失の影響が小さく、減損額が少なくなっているため、売上総利益率が低下しています。

【営業損益】airCloset事業における営業利益の増減内訳

営業損益についてです。airCloset事業における営業利益増減の内訳ですが、グラフ上の一番左側の赤い棒は、2022年6月期の第1四半期の営業損失となっています。

2023年6月期第1四半期の営業損失は中央、今期に当たる2024年6月期の営業損益については一番右側です。前々期、前期と比較すると営業損益は着実に改善していますが、その内訳が前期から今期にかけて、また前々期から前期にかけてだと少し違いがありますので、それについての比較をご説明します。

営業損益に対してプラスマイナスが大きく出てくるものが、売上とレンタル用資産の償却費です。減損損失が発生すると、そのあと償却費にも影響します。また、広告宣伝等の費用はその他費用に含めています。

前々期から前期に関しては、レンタル用資産の償却費がプラスに働いています。償却期間が12ヶ月から18ヶ月に延びた影響がプラスに作用したかたちです。レンタル用の償却費が拡大すればコストにも反映されますが、前々期から前期にかけてはプラスに働いています。また、売上の成長がその他費用の増加をまかなってプラスに転じています。

前期から今期に関しては、想定どおりレンタル用資産の償却費はマイナス影響でしたが、その他費用については改善傾向にあります。これはコストコントロールにより改善しています。

あらためて、ポイントは2つあります。1つ目は償却費です。当第1四半期は減損損失の減少に伴い、ビジネスの実態、あるべき姿に近づいています。レンタル用資産の償却費が増加していますが、売上の増加、それからコストコントロールでしっかりと補うことができています。2つ目に、その他費用に関して、売上増の中でも収益性の向上により費用が減少するということに成功しています。

プラットフォーム活用 Disney FASHION CLOSET

今後、プラットフォームの活用の幅を広げていこうと思っていますが、その1つに「Disney FASHION CLOSET」のサービススタートが挙げられます。

ウォルト・ディズニー・ジャパン社とのライセンス契約によりキャラクターライセンスを獲得し、ディズニーアイテムのファッションレンタルを10月にスタートしました。

主に若い世代の女性向けにサービスをスタートし、バウンドコーデと呼ばれるキャラクターのエッセンスを取り入れた普段着のレンタルサービスを開始しています。

プラットフォーム活用 Disney FASHION CLOSET

概要としては10月に開始したばかりで、ディズニーアイテムのコーディネートセットのレンタルです。サブスクリプション型ではなく、その都度ご利用いただくかたちです。また、20代の女性をメインターゲットとしています。

これは事業戦略上の狙いとして、将来的な売上利益の増加につながるものですが、レンタルのオケージョン利用によりレンタルの機会を増やし、文化を浸透させていくことも重要としています。

特にairCloset事業は、客層は30代と40代の女性がメインですが、20代女性にレンタルを利用していただくことで、将来のサブスク顧客の拡大、および相互送客の実現につなげたいと考えています。

Steady Baseの具体的な施策群と注力時期

Steady Baseとして挙げた具体的な施策群との注力について、当期は会員が増えていく仕組みを作り、会員獲得の効率と継続率の改善、また事業領域の拡大をしっかりと行っていくことで、成長基盤を確立したいと考えています。

2024年6月期プレスリリース一覧(23/7/1~23/11/12)

トピックスとして、7月からのプレスリリースを一覧化したものを挙げています。

いくつかの施策を実施していますが、月払いコースの導入や、物流業界の2024年問題に対して先手を打ちたいと考え、日本郵便との連携を開始しました。

また、業界内での動きとして、衣服シェアリングの仕組みをJUNグループやトゥモローランドと開始したこと、また「Disney FASHION CLOSET」のスタートについてもプレスリリースを出しています。

約730店舗のサロンを展開するダイアナ社との業務連携においては、コロナ禍でできなかったリアルの取り組みを増やしていくということで取り組みをスタートしました。

当社における人的資本の現状

当社における人的資本の現状について挙げています。特にサブスクリプションサービスでは、作って終わりではなく、継続率や物流のコストも含め、継続的な改善ができる組織であるかが非常に重要だと思っています。

再現性のあるPDCAサイクルを実現するための組織構造を意識して確立するとともに、持続可能な成長に向けて、全社社員のエンゲージメント向上のため、いわゆる組織と紐づきのある状態を作る必要があると思っています。そのためのモニタリングと対策を実施しました。

airClosetの組織構造による強み

当社の組織構造ですが、縦軸に機能を置いており、PSG、SCMG、MKG、CCGと記載しています。PSGはパーソナルスタイリンググループ、いわゆるファッションの領域です。我々の仕入れの計画やスタイリングを統括している機能を持っています。その他は、物流やマーケティング、顧客とのコミュニケーションといった機能を持っています。

Steady Baseの説明でも挙げたように、事業に対して効率的に拡大するための土台を作るノウハウの集約・データ活用に関しては、横串の組織としてデータサイエンス、システム開発・デザイン、また、組織運営のためのガバナンスを統括する経営管理グループがあります。

黒枠内に、機能ごとに女性社員比率を示しています。特徴的なところとして、ファッションの領域では女性社員比率が92パーセントと高く、システム開発を担うプロダクトグループは低くなっており、差があります。サービス内容に直結する部署には多くの女性社員を配置することで、サービスの品質を高めていく狙いです。

エンゲージメントスコアの把握と継続的な組織改善

エンゲージメントについてですが、リンクアンドモチベーション社の運営する「エンゲージメントサーベイ」を、2016年から毎年2回ずつ実施しています。過去5回の平均モチベーション偏差値70以上を実現し、最高レーティングである「AAA」をキープすることができています。

社内でのコミュニケーションをしっかりと行い、エンゲージメントスコアが高い状態を維持することで、社員のモチベーションを高く保つとともに、サービスに対する改善意識をキープできるように組織運営していきたいと思います。

広がるAI・データ活用の具体事例

システムはすべて内製化していることに加えて、人工知能やデータ活用にも積極的に取り組んでいます。今後も研究開発を継続するとともに、人工知能・データ活用にも広げていきたいと考えています。

サステナビリティについて

サステナビリティというキーワードは環境省だけでなく、最近では経済産業省も使うようになり、重要なテーマとして捉えられています。経済産業省からはお声がけをいただき、発表の機会もいただいています。

衣服の廃棄ゼロについて、ファッション・アパレル業界でそれを成している企業はなかなかいらっしゃらないと思います。また、ファッションレンタルは配送が往復になるため、脱炭素につながらないといった意見もいただくのですが、環境省によるCO2削減効果の実証事業では、CO2排出削減、また、廃棄物の排出抑制効果がそれぞれ19パーセント、27パーセントと推計値が出ており、ファッションレンタルサービスは循環型サービスとして効果があると推定されています。

また、サステナブルな販売会であるエコセールの拡大や、JUNグループ、トゥモローランドと発表したようなアパレル販売員向け、要は業界向けの衣服シェアリングを行うことで、業界内での認知度を高める、サステナビリティに対する我々の意識がより伝わることを意識しています。

IRについて

最後にIRについてです。引き続き、投資家さまに対しては公平かつ適切なタイミングで情報を開示していきます。

株価が上場時の公開価格に追いついていない状況は非常にふがいなく、株主のみなさまにご心配をおかけしてしまっている部分があると考えています。

事業の状況としては、我々が想定している改善傾向に向かっており、改善のための動きをしっかりとコントロールできていると考えています。また、当社のことをより知っていただくために、まずは個人投資家向けの会社説明会を積極的に開催して、出来高の向上を注力事項にしたいと考えています。

また、各種説明会や投資家との1on1ミーティングにおいては、私が直接積極的にコミュニケーションさせていただくことで、我々が思い描いている部分や、思い描くだけでなくそれが着実に実現に近づいているところをお伝えしていきたいと思っています。

このあとも質疑応答の時間を確保していますが、双方向のコミュニケーションを大切に、それぞれの方に対して向き合っていきたいと考えています。

第1四半期の説明は以上です。ご清聴、誠にありがとうございました。

質疑応答:第2四半期以降の見通しについて

「第1四半期は全社でも営業損益が黒字となっていますが、第2四半期以降の見通しを教えてください。通期で全社黒字というのもあり得ますか?」というご質問です。

季節性による変動があるため、第2四半期以降の見通しは変わらず、通期でairCloset事業は営業黒字、全社では赤字を見込んでいます。成長に対して全社で引き続き投資していく部分もありますが、airCloset事業に関しては通期での黒字を見込んでいる状況です。

ただ、第1四半期に関しては、しっかりと利益体質の改善を行ってくることができたと実感しています。

質疑応答:「Disney FASHION CLOSET」の初速について

「『Disney FASHION CLOSET』の初速はどのような状況ですか?」というご質問です。

「Disney FASHION CLOSET」に関しては今後、具体的な数字の開示状況は随時決めていきたいと思いますが、まだ10月にスタートしたばかりのタイミングで、ちょうど1ヶ月が経ったというところですので、数字を見ながら今後の拡大に向けて手を打っていきたいと考えています。

質疑応答:費用増で額が大きいものについて

「第2四半期以降の『airCloset』以外で、費用増で額が大きいものは何ですか?」というご質問です。予算については森本から回答します。

森本奈央人氏:第2四半期以降のairCloset事業以外の費用増に関しては、主にairCloset Mall事業等の規模が拡大する中で全体的に増えています。売上を作っていく中で、特に広告宣伝費等が費用として増加していくかたちになっています。