2024年3月期 第2四半期 決算ハイライト
市川玲氏:私、取締役の市川より2024年3月期第2四半期決算業績、並びに2024年3月期の通期業績予想についてご報告します。
まず、2024年3月期第2四半期決算業績についてです。売上高および営業利益に関する決算ハイライトを記載しています。売上高は11億9,000万円強で前年同期比10.4パーセント増となり、通期の業績予想に対する進捗率は45.1パーセントでした。
営業利益は9,900万円強で前年同期比31.4パーセント減、通期の業績予想に対する進捗率は32.2パーセントとなっています。
売上高は、既存顧客に対する継続案件の拡大および新規のお客さまに対する案件の獲得を中心に前年同期比で伸長しました。一方、営業利益に関しては、採用・教育関連費および研究開発の増加により減少しています。
2024年3月期 第2四半期 決算ハイライト
決算ハイライトの四半期別の内訳です。第2四半期は第1四半期と比べ、売上高はほぼ横ばい、営業利益は先ほどご説明したとおり、費用の支出により減少となっています。
2024年3月期 第2四半期 業績
以上を加えた第2四半期までの累積の業績は、売上高、営業利益に加え、営業利益率、経常利益、当期純利益について、スライドに記載したとおりの状況となっています。なお、利益面に関するご報告は後述しています。
提供しているサービスとソフトウェアの売上構成比(2024年3月期第2四半期累計)
売上高および取引に関する内訳の詳細です。まず、当社の現在のビジネスにおけるサービスおよびソフトウェアライセンス販売と、いわゆる主力のサービスの分布についてご説明します。
サービス別の販売割合については、弊社の主力商品であるローコードプラットフォーム「OutSystems」を使用したプロフェッショナルサービスの開発に関する販売が全体の83パーセントを占めており、引き続き高い水準を保っています。
スライド下段に記載した、取引方法による割合においても、前四半期から踏襲し、直販の比率がパートナー販売比率を上回っている状況です。
サービス別四半期売上高推移
プロフェッショナルサービスとソフトウェアライセンス販売のサービス別売上高の、四半期別分布です。第2四半期は、プロフェッショナルサービスが微増、ソフトウェアライセンス販売は微減となっており、トータルの数字はそれぞれ伸長しています。
業界別の取引比率
取引に関しての業界別の取引比率です。こちらについても前四半期からそれほど大きな変更はなく、製造・サービス・建設の業界を中心に、多くのお客さまに取引していただいています。
営業利益の増減分析
営業利益の増減分析です。スライドには先ほどご説明した、営業利益が減少した原因を記載しました。こちらは、技術者を含む人材の採用・育成の前倒しによる採用費・教育関連費の増加、そしてデジタルレイバーを中心とした新サービスの開発等による研究開発費の増加の2つが大きな要因となっています。
当グループの人員数の推移と内訳
当社グループの人員数の推移と内訳についてです。当第2四半期末のグループ従業員数は127名となっています。
また、プロフェッショナルサービスを担う技術者数は、従業員88名にサービスパートナー技術者を加え、現在174名体制となっています。なお、こちらの表示は、11月14日の当資料開示後に、修正すべき要件が発生したため、先ほど訂正開示を行うとともに、そちらに合わせて同じ内容を表現しています。
従業員技術者数に関しては、今後のデジタルレイバーの取り組みを踏まえた人材採用・育成を見通し、引き続き増加に注力していきます。
一方、サービスパートナー技術者数は、グラフを見ると当四半期末時点において減少しています。こちらについては、「OutSystems」を使用したローコード開発の市場普及に伴い、需要の逼迫が顕在化しています。
当社としても、調達先となりうるパートナー独自の対応が活発化する中で、我々のグループとして目指しているデジタルレイバーを用いた開発の進行を踏まえ、新規の調達先の開拓や入れ替え等を積極的に推進しています。
今後もこのような需要の逼迫は市場で続いていくと想定しています。ですので、当社独自の取り組みを引き続き進めていく中で、必要かつ親和性の高いパートナーとの新規の提携や協業を進めていきたいと考えています。
通期業績予想
2024年3月期の通期業績予想についてです。業績の結果をご報告しましたが、現時点では売上高以下の項目について、期初の計画予想に関する変更は考えていません。
この後のトピックスと中期経営計画に関しては、弊社代表取締役社長、松岡から引き続きご説明します。
アジア地域で唯一のOutSystemsプレミアパ―トナーに認定
松岡真功氏(以下、松岡):代表取締役社長の松岡です。主要なトピックスからご説明していきます。
最初のトピックとして、弊社は「OutSystems」のプレミアパートナーに認定されました。このプレミアパートナーは、一方的に認定されるわけではなく、審査プロセスがあります。
その中でいろいろなものを提出しますが、スライドの2行目に記載したように、「OutSystems」を使ってプロダクトを開発する能力について、「本当に使えるものが作れるのか」「内部のアーキテクチャや作り方が正しいのか」等をチェックするプロセスがあります。
これを最終的にクリアしたのは、国内では当社のみです。当然、他のパートナーも審査を受けていますが、当社がアジアで唯一認定されました。今回、当社と同時に他の4社がプロセスを通過し、計5社が増えましたが、全世界で450社強あるパートナーの中で、9社のみの認定となっています。
当社は、事業戦略の中でデジタルレイバーを数多く使っていますが、プレミアパートナーであるからこそ、デジタルレイバーを実現できるのだと考えています。こちらについては後ほど、スライドとともにご説明していきたいと思います。
Creatioと国内独占代理店契約を締結して販売開始
次のトピックとして、新しいノーコードの基盤であるCreatio社と国内独占代理店契約を締結し、販売を開始しています。11月からローカライズを行っており、そちらと教育プログラムを順次開始していきます。
実は「OutSystems」には購入してすぐに使える販売管理の機能や業務アプリケーションがついていません。しかし、「Creatio」はCRMやマーケティング、サービス管理といった機能を有しています。
ですので、そのような面で差別化を図り、新しい顧客を開拓していくため、この「Creatio」の販売を11月から順次開始していきます。
九州大学とネットワークAI統計解析の共同研究部門を設立
もう1つのトピックとして、九州大学とネットワークAI統計解析の共同研究部門を設立しています。九州大学と京都大学とは、量子コンピュータの研究を共同で行っています。それに続くかたちで、最近「グラフAI」や「グラフ機械学習」などといわれる、ネットワークAIのような領域で、通常のディープラーニングが不得意な領域がありますが、そこをカバーするAIです。
これを当社の方法論に実装し、当社の「OutSystems」を使ったローコードサービスを加速するための研究となっています。詳細については、この研究内容が具体的になった段階で開示していきたいと考えています。
中期経営計画の成長シナリオ
中期経営計画のご説明に入ります。まずは、2028年3月期までの成長シナリオについてです。
キーファクターとなるデジタルレイバーを使って事業構造の変革を行い、これによって売上を急速に拡大していく予定です。その結果、2026年3月期で41億円、2028年3月期で100億円の売上を計画しています。また、ここまでの年間成長率は56.2パーセントと、高い成長率を実現したいと考えています。
利益に関しては、2026年3月期まで9.2億円の営業利益を計画しており、こちらは年間成長率が72.3パーセントとなっています。
中期経営計画におけるKPIベースの成長シナリオ
中期経営計画におけるKPIの設定についてです。プロフォーマEBITDAを使い、実際の税引前利益に、特別損益、支払利息、減価償却費、研究開発費、そして人材開発費を足し、当社が実際に生み出す利益、つまり稼ぐ力がどのくらいあるかをKPIとして設定していきたいと考えています。
デジタルレイバーによるITサービスデリバリーにおけるコスト構造の変化
この中心となるデジタルレイバーについて、「そもそも、デジタルレイバーとは何か」「なぜ当社がこれに力を入れているのか」をご説明します。
スライドには図が3段ありますが、1番上が一般的な開発のスタイルおよびフェーズの流れを示しているとお考えください。
一般的には業務を分析し、要件を定義した後、基本設計、詳細設計、製造、試験という流れでシステム開発を行っていきますが、昨今のブームとなっているローコード開発によって、生産性は最大2倍になります。
他社は3割、4割ということですが、当社は独自の方法論を持っているため、差別化を図って、お客さまに提供するサービスにおいて2倍の生産性を実現しました。実際に、短期間かつ少人数で行うことができています。
ただ、ローコード開発は国内での普及が進み、それによりローコードプラットフォームの導入が日本全国で非常に進行しています。
その中で「OutSystems」プレミアパートナーとしての地位を維持しながら、当社の提供できるデリバリーの能力を、どのように顧客へ提供していくかを検討した結果、圧倒的な差別化が必要だと考えています。もちろん技術者数をたくさん増やし、案件を獲得していくという手法もあります。
例えば、広告宣伝費を大量に売ったり、パートナーを少し高い価格で獲得して人数を増やしていったりする手法もあります。しかし、それでは本来的な差別化要因にはならず、エナジードリンクのようなものになります。
ですので、現時点で当社が他のローコードを扱う会社に圧倒的な差をつけるために、デジタルレイバーというものを作っています。すなわち、今の「OutSystems」のビジネスを加速するためにデジタルレイバーを導入するとお考えください。
また、スライドの3段目に記載のとおり、生産性を2倍近くまで上げたものをさらに2倍にし、人数も減らすことで、当社の技術者がもたらすプロフェッショナルサービスのパワーを2倍にします。このように、同じ人数で2倍の案件を取り扱おうという取り組みがデジタルレイバーです。
「アプリ生成量で課金」するシステム開発をデジタルレイバーで実現
デジタルレイバーを具体的にはどのように使っていくのかをご説明します。当社以外の、ローコードを扱う一般的なベンダーやシステムインテグレータでは、スライド上段の図のスタイルでシステム開発が行われています。
外部のコンサルタントが顧客企業からの要件をまとめ、要件定義を行っていることが多く、そこから実際のシステムインテグレータやローコードを扱うベンダーが設計・製造を担います。
ここで重要なのは、上流工程の外部のコンサルタントとテクニカルアーキテクトが入るところです。当社はテクニカルアーキテクトの優れたスキルを持っているものの、それほど大量にはそのような人材がいないため、今は大量の案件を扱えません。
ここのノウハウをソフトウェアロボットにつぎ込み、設計のノウハウを機械化することで高品質な「OutSystems」の実装を高速に行うことが、デジタルレイバーの特徴です。
また、ローコードを扱うベンダーの多くは、この上流工程の業務分析・要件定義を外部のコンサルティング会社にお願いしています。当社では、ここの領域のサービスを展開していくため、ビジネスアーキテクトという人材を育成し、上流から下流まで社内でワンストップで行えるようにサービスをシフトしていきます。これがデジタルレイバーの構想の中心になります。
「もっと人を増やして『OutSystems』の案件を扱っていけばよいのではないか」というお話がありますが、それをさらに加速するために差別化を行いながら、当社のやり方を用いて、少ない人数で高品質なアプリケーションを提供します。
そしてもう1つ、新しい試みがあります。通常は人月単価でエンジニアコンサルタントを雇い、システム開発を行っていきます。しかし、それではどうしても人に依存したビジネスモデルになります。
一方でデジタルレイバーを活用する場合、作るところはソフトウェアロボットが担うため、アプリケーションの生成量に課金するというモデルを一部採用していこうと考えています。当然、上流工程やローコードエンジニアが動くところは、今までどおり人月工数の課金になりますが、ロボットが動くところに関しては、動いた量だけ課金していく予定です。
従来、お客さまは最初のプロジェクトで大量のエンジニアを確保してプロジェクトを進めていかなければなりませんでした。しかし、オンデマンドのシステム開発を実現することによって、コストを大幅に抑えながら、必要に応じてアプリケーションの生成費を払うという新しいシステム開発モデルが実現できるのではないかと考えています。
これが当社が中期経営計画のキーファクターにしている、デジタルレイバーによる事業構造の変革になります。
デジタルレイバーによる新たな収益モデルの実現
これを行うことで、当社の収益モデルに変化が起きます。多くのシステムインテグレータやシステム開発会社を調べたところ、事業規模とほぼ同じ従業員数がいます。一部業界に特化したSIerに関しては、若干これがずれているところがありますが、平均するとほぼ事業規模に合わせて人が増えていきます。
一方で、当社のデジタルレイバーを使えば、「OutSystems」のデリバリーに限りますが、従業員数を抑制しながら事業規模を大きくすることが可能です。このような新たな収益モデルを実現していきたいと考えています。
つまり、エンジニアの数に依存した収益モデルを脱却し、デジタルレイバーの稼働率に基づいた収益を実現していきます。
デジタルレイバーを活用する開発パートナーによる収益拡大
さらに、パートナーにデジタルレイバーを提供することによって収益を拡大していくという計画を立てています。スライドには3段の図を記載していますが、1番上が当社のみでデジタルレイバーを使った場合の図になります。
将来は段階的に、オレンジの枠で囲った部分をパートナーに渡し、パートナーと協力してサービスを提供することによって、新たな収益拡大を狙っていきます。
まずは1番上の当社のみで活用するパターンを実現し、その後、中段に記載のように、パートナーを活用する場合のパターンに進み、ここで比較的順調に売上が上がってきた段階で、1番下の、ローコードエンジニアもパートナーに拡大し、デジタルレイバーを直接触ってもらうことを考えています。これによって飛躍的な売上の拡大を目指しています。
デジタルレイバーによるエンジニア領域でのコスト構造の変化
これに伴い、事業体制の変革が起きます。現在はローコードエンジニアが技術者の大半を占めており、アプリケーションの要件定義や設計、さまざまなUIのデザインを担っています。
スライドのグラフは絶対量ではなく、エンジニア構成の割合変化を示しています。2028年3月期は絶対数の社員数は増える見込みですが、割合としては、ビジネスアーキテクトがローコードエンジニアより増えていきます。さらに、デジタルレイバーを扱うためのプロンプトエンジニアを増やすことでコスト構造を変えていこうと考えています。
このビジネスアーキテクトの役割については、24ページのスライドをご覧ください。従来、外部のコンサルタントが行っていた領域をビジネスアーキテクトが行うため、エンジニアと比較すると少し高い単価のビジネスが実現できます。
ですので、当社が持つ「OutSystems」をはじめとするローコード開発のノウハウをビジネスアーキテクトに集めることによって、ローコードエンジニア主体からビジネスアーキテクト主体にシフトし、高単価なサービスを提供できるようになり、コスト構造が大きく変化します。
デジタルレイバーによる営業領域でのコスト構造の変化
営業領域でのコスト構造の変化です。スライドのグラフは、営業メンバー構成の体制割合変化を示しています。現在はほとんどが直販営業ですが、パートナー営業を加えることで営業領域でのコスト構造を変化させます。
技術者の約半分がパートナーですが、営業に関しても新しいパートナー戦略によって、当社がリーチできないお客さまを持つパートナーとともに、顧客を増やすことを考えています。このことによって、当社の営業人件費を抑制しながら、売上拡大を目指すという戦略になっています。
三井情報株式会社と実施中の共同研究・営業活動を中心とする取組の推進
デジタルレイバーの開発体制と開発スケジュールです。当社は三井情報株式会社と資本業務提携しており、デジタルレイバーの開発に関しては三井情報と共同で行っています。スライドの図には、三井情報と共同で行っているものと、当社が独自に行っているものを分けて表しています。
共同で研究開発している部分に関しては、まずは新規顧客の拡大を、三井情報を含む三井物産グループの顧客層を中心に行っています。デジタルレイバーを使うことで「OutSystems」のサービスがどのくらい速くなるか、また開発がどのくらい速くなるかについて、実案件を検証しながらサービスモデルを組み立てています。
具体的には、当社が実際に獲得した案件、終わった案件をトレースするといった方法で取り組んでいます。これにより、サービスのリリース当初から高い生産性を持ったデジタルレイバーを提供できると考えています。
スライドの図の上から3本目の水色の矢印で示している、開発方法論とデジタルレイバーの開発は、現時点では当社の領域です。つまり、デジタルレイバーのエンジン部分を当社が開発し、それを使って三井情報と営業活動を協働するという役割分担になっています。
デジタルレイバーの共同研究開発計画及びステータス(今期上半期終了時点)
開発スケジュールです。まずは基本機能の部分について、今期のサービス提供開始を目指しています。スライドの図に「テストケース設計支援機能」「テストデータ生成支援機能」などの記載がありますが、実現しやすいものや効果が高いものからリリースし、開発の範囲を広げるためにさまざまな機能を追加していきます。
また、「OutSystems」を使ったお客さまがスクラッチ開発など従来型の開発に戻ることはほぼありません。ローコードを入れたお客さまが次に行くのは違うローコードです。
そのことを考えると、顧客の拡大と案件のロストを防ぐためには複数のローコードに対応するマルチローコード対応が重要となるため、スケジュールの後半では、複数のローコードに対応したデジタルレイバーを出していきます。
しかしながら、現時点では、当社の主力である「OutSystems」を中心にしたデジタルレイバーになります。あくまでも「OutSystems」のサービスを加速するためにデジタルレイバーを作ることが、2026年までの目標です。
デジタルレイバーによるBlueMemeのITサービスデリバリー市場の拡大
成長シナリオにおけるターゲット市場について、どのあたりを狙っていくのかをご説明します。領域は今までとそれほど大きく変わりませんが、狙うポイントを少し変えるという戦略を持っています。
1つ目は、エンタープライズ市場です。日本で盛んに行われているERPの刷新に伴う、Side by Side領域の業務アプリケーション開発の市場は非常に大きいため、まずここを重点的に狙っていきます。
2つ目は、エンタープライズ市場やミッドレンジ市場といった古いアプリケーションのマイグレーション市場です。「COBOL」のシステムなど、大変古いシステムの置き換えを行っていきたいと思います。
3つ目は、SMB市場です。中小企業を対象に、当社がサービスを代わりに作り、SaaS型で提供することによってSMB市場を開拓することを考えています。
エンタープライズ市場におけるERP周辺システム領域の戦略
エンタープライズ市場のERPシステム周辺領域の戦略についてです。スライドのバブルチャートの灰色の点が今までに進出した領域で、円の大きさが案件規模だとお考えください。
当社はさまざまな領域に進出していますが、比較的ローコードが適用しやすく、なおかつ規模も大きい領域は、エンタープライズ領域のERP周辺です。過去にはERPそのものを置き換えるというお話も何件かありましたが、圧倒的に数が多いERP周辺を中心に狙っていきます。デジタルレイバーを使うことによって、少ない人数で大きな案件ができると考えています。
エンタープライズ及びミッドレンジ市場におけるマイグレーション領域の戦略
レガシーマイグレーションは非常に困難な開発になります。なぜかというと、システムは今動いており、ドキュメントは残っているものの、仕様書どおりのシステムがほぼありません。10年、20年と改修を繰り返してきた中で、当初の仕様書がそもそも合わなくなっている状態です。
そのため、昨今はシステムの中身を変えずに、ハードウエアのみを替えて延命させるという対応がけっこう行われています。ハードウエアのみを替えても、お客さまにとっては事業拡大の障害となるため、ローコードですばやく作り直していくという市場に出ていこうと考えています。
非常に時間がかかる業務分析と仕様書作成の部分に当社のビジネスアーキテクトとデジタルレイバーを活用して短期間で終わらせることで、レガシーマイグレーションを実現していく予定です。
SMB市場におけるクラウド型ITサービス領域の戦略
SMB市場についてです。システムを作る、または使う上での選択肢は2つしかありません。1つはSaaSで、すぐに導入でき、開発や管理も不要なことが大きなメリットです。デメリットとしては、カスタマイズできないこと、機能が限られることが挙げられます。
最初は問題ないものの、しばらく使っているうちにカスタマイズしたくなります。しかし、事業拡大に伴ってさまざまな機能を追加したくてもそれができないというのが、今の一般的なSaaSです。
もう1つの選択肢は、フルオーダーのシステムです。カスタマイズが自由にでき、ノウハウを組み込めるものの、高価で時間がかかるというのが一般的な考え方です。すぐに数千万円から数億円という見積もりが出てきます。
当社はこのような部分の「いいとこ取り」を行い、オーダーメイド型のSaaSと呼んでいます。つまり、管理が不要で、すぐに使えるものを、お客さまが望むかたちで提供していきます。
これは以前から、OpenModelsという会社で試験的に運用しており、中小企業のERPを丸ごと作るという検証を行ってきました。クラウドのコスト等を鑑み、実現できるという検証ができたため、本格的に進めていきたいと考えています。
こちらもデジタルレイバーを使うことで工数を削減できます。従来のSaaSでは、横展開して何百社も入れなければ利益が出ませんでしたが、当社の場合は、ある程度の規模では1社のみ、あとは数社ぐらいに横展開ができれば、利益を得ることができます。
このような新しいタイプの「オーダーメイド型のSaaS」を実現していきます。これが、3つ目の市場の戦略です。
中期経営計画の成長シナリオ(KPIベース)
今後の経営モニタリング指標と長期ビジョンについてご説明します。
プロフォーマEBITDAをKPIとし、年間成長率と投資金額を足したものを見ながら成長を見ていく計画です。第3段階のうち、今は投資フェーズにあたり、2025年3月期から2027年3月期までを投資および回収フェーズとしています。
また、最後の2027年3月期から2028年3月期にかけては、これを回収していきます。当初の計画にあったように、大きな利益や売上を出す後半については、投資を回収していくモデルとなっています。
2028年3月期まで:「自動化」への取組 デジタルレイバーを成長ドライバーとする既存ビジネス領域の変革と拡張
成長戦略についてです。1つ目は当然、既存事業の持続的な成長がベースになっています。今までの方法を踏襲し、ローコードのビジネスを成長させていきます。ワールドワイドのローコードの成長が約20パーセントとなっているため、それに合わせて当社も約20パーセントの成長を実現していくことを考えています。
2つ目は、パートナーシップによる事業の拡張です。先ほどお話しした営業パートナーのほか、スライドに記載しているように、業務提携やM&Aによる事業拡張で成長させていきます。それにより、100億円近い売上を目指していきます。
2029年3月期以降:「最適化」への取組 中期経営計画の先を見据えた先行投資の実施に基づく新たな事業領域の創出
最後のステージ3として、新たな事業領域の創出を目指します。今、大学との研究を行っていますが、量子AIやバイオインフォマティクス等の最適化領域の高度なコンサルティングに進出することで、100億円後の飛躍的な成長を目指します。また、そのような取り組みが、今の投資の将来的な回収部分になると考えています。
以上で中期経営計画の説明を終わります。
質疑応答:デジタルレイバーの市場領域について
司会者:「デジタルレイバーは『OutSystems』とどのような関係がありますか? また、『OutSystems』の市場が拡大していると感じていますが、デジタルレイバーはそことは別の市場を狙うのでしょうか?」というご質問です。
松岡:23ページ、24ページでご説明のとおり、「OutSystems」の市場を我々が積極的に、圧倒的な差別化要因をもって取りにいくところがデジタルレイバーの市場領域になります。
ですので、あくまでも既存のビジネスを加速させて顧客の獲得、売上拡大を目指した上での戦略になります。
質疑応答:「Creatio」が支持される理由と独占代理店として選ばれた理由および「OutSystems」の代理店契約との違いについて
質問者:スライド16ページで「Creatio」が急成長中というお話がありました。さまざまな機能を有しているということで、そのようなところを比較すると非常に安価なのだと思いますが、他にはどのようなところが支持されているのでしょうか? また、先方が御社を独占代理店として選んだ理由を教えてください。
さらに、「OutSystems」を御社が扱う時には独占代理店という形態にされませんでしたが、そちらと今回との違いについても教えてください。
松岡:1点目の「Creatio」のどのあたりが支持されているかについてです。「Creatio」は既存のCRMソリューションに非常に近い製品群となっています。既存のCRMソリューションが持つ機能はほぼすべて持っていますが、市場では半額くらいで提供しています。このように、価格が安いという特徴が1つあります。
もう1つは、すべて自社の開発コンポーネントで作られているところです。他社製品はM&Aを繰り返し、パッチワークの製品になっているため、機能があっても画面は違ったり、うまく統合されていないケースがよくあります。その点、「Creatio」は自社で統合されたパッケージのため、使いやすくなっています。
また、「Creatio」は中身がオープンで、実は中のコードも見ることができます。それに対し、ローコードやAIは中身がよくわかりません。特に今の生成AIは、なぜそのような答えが出るのかがわかりません。「Creatio」にはそのようなところがなく、非常にオープンな仕様になっているところが、技術者やお客さまから非常に支持されているポイントになります。
続いて、2点目の当社が国内の独占代理店に選ばれた理由についてです。こちらは、当社が「OutSystems」を日本で広めたというトラックレコードがあり、そこを先方が非常に重要視したことによります。
日本市場は他の市場から見ると特殊な市場です。海外から参入して2年間で撤退するケースが非常に多く、やはり難しい面もあります。そのため、日本で海外の製品、特に新しい概念のもの、ローカライズされていないものを導入し、なおかつ広めた実績がある会社を選ぶと、必然的に当社になると思っています。
他のローコードやノーコード以外の製品であれば別ですが、ローコードに関しては今のところ、上場企業の中では当社がナンバーワンだと考えています。そのようなところが選定理由になります。
3点目の質問の「OutSystems」では独占契約をしなかったのかという点ですが、「OutSystems」も当初は独占契約でした。2013年から2017年まで当社が国内の総代理店でしたが、2017年にOutSystemsジャパンが設立されたタイミングで独占契約を解消し、通常の代理店になっています。
当社がたくさん売り過ぎたせいで、OutSystemsジャパンができたと認識しています。
質疑応答:事業展開のスピードと今後の計画について
質問者:御社が上場して2年半が経過しました。私は上場直後にも同じ質問をした記憶があるのですが、「成長のペースがなかなか上がっていかない」というのが率直な印象です。御社のビジネスには需要があり、ローコードについてはそこまで高度な技術を必要としないため、人に移譲しやすく、上場しているため採用も容易だと理解しています。
しかしながら、なぜドライブしていかないのか、あるいはさせないようにしているのかを教えてください。御社の展開を拝見していますが、売上、利益ともに規模がなかなか大きくならないという印象をどうしても持ってしまいます。
これは私の勘違いなのか、それともあえて慎重に進めているのか、あるいは事業展開上まだ解決されていないボトルネックがあるのでしょうか? 御社がどのくらいのスピードで事業展開される予定なのかを教えてください。
松岡:期待されている成長スピードは、50パーセントや60パーセントのようなスピードでしょうか?
質問者:そのとおりです。
松岡:世界のローコード市場全体の成長率は20パーセント未満で伸びています。そのため、当社はこの市場スピードとほぼ同じ速度で伸びていくというのが、一般的な予測だと思います。
ワールドワイドでは20パーセント程度の成長率で、ローコード市場はこれからさらに伸びていきます。それ以外の市場は、ローコードではない通常の開発市場になります。
このローコードではない開発市場は、まだ膨大に存在しています。現在、その市場はシステムインテグレータが占めていますが、そのようなところがローコードを扱い始め、既存のお客さまの囲い込みを行っています。
当社は、市場の成長と同じか少し上くらいの成長を実現しているため、今のオーガニックな成長率は20パーセント前後かと思います。ここから40パーセントや50パーセントのような圧倒的な成長率を達成するためには、ローコードを使って人をハイアリングしている部分を、大きく変えて差別化していかなければならないと考えています。
先ほどデジタルレイバーのご説明も少ししましたが、人を大量に雇い、広告宣伝費を使ってタクシーでCMを流すなど、いろいろなことを実施していけば、一時的には売上と顧客の拡大は実現できると考えています。しかし、それでは本質的なコアコンピタンスや、会社が稼ぐ力の増加にはならないと思っています。
ローコードを学んで、認定試験に合格するには5日間もあれば十分です。しかし、それによって今、「ローコードを入れたけれども、うまく作れない」「効果があまりない」といったお悩みが生じており、実際当社にも問い合わせが来ています。ここを拾って解決しなければ、そもそもローコード市場自体が低迷すると考えています。
通常のスクラッチ開発は人が作成するため、当然プログラマーがコードの最適化を行います。一方、ローコード開発ではコンサルタントが決めたことを、ローコードエンジニアがストレートに機能として作成します。
そのように作成していくと、設計的行為がなかなか起きず、闇雲に作っても早く完了します。そのため、どんどん作成していくことで、今までエンジニアが行っていた、将来を見越したプログラムコードの最適化や、中身を考えて今の機能を作るということができなくなってしまいました。そこから結局作り直し、最終的に欲しいものに近づくと、スクラッチ開発と変わらないという状況になります。
今、国内ではローコードエンジニアが増加していますが、簡単に学んだレベルのエンジニアが多くを占めています。そのため、結局大規模システムが作れず、当社に「システムを再構成したいが、どのようにすればいいか」という相談が増えている原因になっています。
ローコードの使い方は簡単ですが、中身はソフトウェア開発であるため、そこを踏まえた設計が重要です。当社のポジションは、まずプロジェクトを失敗させないようサポートすることで、そこに差別化要因を生み出したいと考えています。
また、当社では通常のローコード市場の成長に合わせて市場を拡大し、パイを広げるために、今の成長率を維持しています。ただ、現状のままでは売上高100億円という目標を達成できないため、ノウハウをデジタルレイバーにつぎ込み、ご期待されているような成長率を目指していくことが、デジタルレイバーの成長戦略になります。
質問者:ビジネスのスキームは現状のまま、独立して進めていく予定でしょうか? 独立していないほうが、成長スピードは加速するのではないかと思います。上場していることもあり、そのほうが事業モデルや構造は、柔軟に展開しやすくなるように思います。
松岡:おっしゃるとおりです。
質問者:それは、M&Aを実行することも含めてでしょうか? 現状のままで進めていくということでしょうか?
松岡:当社は単独では行わず、さまざまな業務提携やM&Aによる事業拡張を成長戦略に組み込んでいます。41ページのスライドのグラフのとおり、2023年3月期のステージ2からパートナーシップに取り組んでいきます。
質疑応答:デジタルレイバーが実現できる機能と開発状況について
質問者:デジタルレイバーはまだ非常に概念的で、業務に向いてるところ、向いていないところがあると思います。どのような業務向けのアプリケーションで、デジタルレイバーを現実的に使用できるかは明確になっているのでしょうか?
松岡:デジタルレイバーの基本機能は、データベースの設計と、それに伴うデータにアクセスするAPIにおいて実現しています。システムは、画面のデザインや設計、画面から呼び出されるロジック、データベースの3つに分けられます。「OutSystems」なども、同じく3つに分かれます。
デジタルレイバーは、データベースと画面から呼び出されるロジックの2つを自動的に作ることが可能です。データベースの設計と、データにアクセスするロジックの設計は、すべての業務システムに汎用性があるため、まずは全業種への対応に注力し、リリースを行っていきます。
その後、画面を自動的に作成する機能も随時提供していきます。デジタルレイバーの中には、業種や業界ごとのテンプレートのようなものは入っておらず、エンジニアが行う作業を高速で作成するエンジンであるため、業界を問わずに適用できると考えています。
質問者:幅広い業務システムがある中で、デジタルレイバーをお客さまのニーズに合わせて取り込もうとすると、そこに多くのカスタマイズが発生し、多くの人手がかかるかと思います。結局、このような案件を売るにあたって、御社は多くの人を抱える必要があり、成長が加速しないのではないかという懸念があります。
あらゆる業種やお客さまのニーズに関わらず、デジタルレイバーも含めたパッケージ化を行い、ソフトウェアを売るようなかたちで提供できるようになるのでしょうか?
松岡:デジタルレイバーのイメージをもう少しご説明します。24ページのスライドをご覧ください。初期リリースでは、デジタルレイバーの領域はローコードエンジニアの作業の半分を目指しており、その内容は作業の自動化となります。
「OutSystems」を使用した場合、まっさらな状態から作ります。テンプレートなどはまったくなく、ゼロから作っていくため、カスタマイズというより、ゼロからソフトウェアを組み立てるかたちになります。
そのプロセスの中に、データベースを作ったり、ロジックを作ったりというフェーズがありますが、通常のローコードエンジニアの場合は2日ぐらいかかります。しかし、デジタルレイバーであれば数分で出来上がるようなイメージです。お客さまに出来上がったものをカスタマイズして提供するというより、お客さまの要望に合わせて超高速で作成するため、カスタマイズは発生しません。
ビジネスアーキテクトが、お客さまからの顧客管理の機能や要望をまとめ、要件定義書やアプリケーション仕様書をデジタルレイバーを使うチームにクラウド経由で提出します。そうすると、当日中か翌日に出来上がったものがアプリケーションとして出てきて、それをお客様に試してもらうというサイクルで、デジタルレイバーを使用していきます。
通常は、お客さまの要件がそろってから、2週間から3週間でアプリケーションが出てきます。しかし、このサイクルがどんどんと速くなるため、出てくるアプリケーションの量に課金するというイメージになります。
ですので、ソフトウェアのパッケージを売るというより、「OutSystems」で作る超高速な開発サービスを、クラウドサービスとして提供するというイメージが近いかと思います。
質問者:非常に夢のような印象を受けました。デジタルレイバーを導入すると、お客さまが「データベース周りでこのようなものが欲しいな」と思った場合、翌日には実際の業務で使用可能なアプリケーションが、勝手に出来上がってるというイメージかと思います。
三井情報との共同研究の中で出来上がったアプリケーションは、実際に使用できるレベルを満たしているのでしょうか? それとも、今はまだ検証段階で、いろいろなお客さまのニーズに合わせながら、微調整が必要という段階なのでしょうか?
松岡:デジタルレイバーが作るのは、現時点では基本的にAPIまでです。APIには画面がなく、いろいろなデータにアクセスできる機能だけを作り、それに合わせてエンジニアが画面を作ることを想定しています。
システム開発には、画面の開発、APIの開発、データの開発の3つがあります。そのうちのAPI開発とデータ開発をデジタルレイバーにより高速で作成し、実際にお客さまが使う画面は今までどおり、エンジニアが作成します。
つまり、デジタルレイバーが作成したものをカスタマイズして使うのではなく、デジタルレイバーがベースの部分を作り、それに合わせて、エンジニアが新規で画面を作るというイメージです。デジタルレイバーが出したものをそのまま使うのではなく、出てきたものにローコードエンジニアが画面をつけて提供するかたちになります。
質問者:結局、エンジニアが画面を作るところがボトルネックになって、お客さまがすぐに使えるようにならないということではなく、逆に画面を作るところは誰でも可能ということでしょうか?
松岡:おっしゃるとおりです。技術者のスキルが最も求められない、比較的短期間でトレーニング可能なところが、画面を作る部分になります。システム開発の大きな問題は、データベース設計とAPI設計に、高度なエンジニアリングスキルが必要な点です。
おっしゃるとおり、画面の部分がなかなか完成せず、ソフトウェアの開発期間が伸びるという問題は実際に発生しています。画面を変更すると、それに伴うデータベースの変更や、APIの変更が発生します。
1画面のある1個の項目を変更するだけで、内部構造を大きく変更することになりますが、この内部構造の変化を高速に行うことで、画面変更も容易に行えるようになるところがデジタルレイバーの役割です。
実際の画面を見ると、お客さまから要望が次々と出てくるため、修正することを前提に、修正に伴う変更を高速で行うという考えが、デジタルレイバーを使った開発になります。
質疑応答:デジタルレイバーの開発ステータスと案件化の計画について
質問者:開発ステータスについて教えてください。ロードマップの中で、2028年3月期に売上高100億円を計画とあり、途中経過でも急速に売上が伸び始めるタイミングがあります。
実際の受注、あるいはかなり確度が高い引き合いが入り始めるのは、このスケジュールの中では開発着手との関係を考えると、いつ頃になる見込みでしょうか?
松岡:初期のデジタルレイバーでは直接画面を開発しないため、お客さまにとっては、人が作成しているのか、デジタルレイバーが作成しているのかがわからない状態になるかと思います。
まずはお客さまに見えない内部構造の高速化を実現しますが、これは今の開発案件にもすぐに適用できるものになっています。今のサービスの中にデジタルレイバーを組み込み、収益構造の変更を実現できるため、来期の案件からすぐに着手していきます。
2026年3月期までに、基本設計・実装支援機能、テストケース設計支援機能、テストデータ生成支援機能、業務分析・設計支援機能の実装が完了する予定です。この時点で、我々がデジタルレイバーでカバーしたい領域をほぼ満たすため、そこから急速にデジタルレイバーを使用した案件を拡大させる計画です。