第一稀元素化学工業株式会社とは

國部洋氏(以下、國部):第一稀元素化学工業の國部です。本日はお忙しい中、会場・Webからご参加いただき、誠にありがとうございます。本日は、第一稀元素化学工業の会社概要と、今後の方向性についてご説明します。よろしくお願いします。

当社は今年で68期目を迎える、ジルコニウム化合物の世界トップメーカーです。本社は大阪市中央区北浜に位置しており、Osaka Metro御堂筋線の淀屋橋のすぐ近くにあります。

社名及び扱っている素材について堅いイメージがありますので、社員がデザインしたマスコットキャラクターの「ジルコくん」などを用いて、なるべく親しみやすい雰囲気作りを心がけています。

第一稀元素化学工業のエントランス

大阪(本社)のエントランスでは、マスコットキャラクターの「ジルコくん」「セリアちゃん」が季節に応じて模様替えをしてお客さまをお出迎えしたり、最近では「きげんそガチャ」も始めたりしています。

取引先や学生の方々にかわいがっていただいており、社員の口からも「ジルコ」「セリア」が多く出てくるようになりました。このキャラクターたちは、当社の製品や会社への愛着感を持つことに貢献していると考えています。

販売地域とネットワーク

当社は規模は大きくないものの、グローバルに事業展開しており、海外から原料を輸入し、国内で加工して全世界に販売しています。

円グラフにあるとおり、地域別販売数量の比率は約半分が輸出で、地域は分散しています。各地域のお客さまのニーズを捉え、スピーディに対応できるように体制を整えています。販売拠点は中国・上海、タイ・バンコク、北米・ミシガン州にあります。

ジルコニウムとは

ジルコニウムについてご説明します。普段あまり耳にされない元素かと思いますが、ジルコニウムの原子番号は40番で、天然鉱石を分解して精製し、長い工程を経て製品となります。

ジルコニウムは熱や酸・アルカリなどの薬品に強く、しなやかで強いセラミックスの材料にもなります。また、酸素イオンを透過させたり、圧力を加えると電気を発生させるなど、さまざまな機能を持つ類まれな元素です。当社はこの「無限の可能性を秘めた、夢の素材」の開発を長年続け、事業を拡大してきました。

経営理念

経営理念です。「世に価値あるものを供給し続けるには 価値ある人生を送るものの手によらねばならぬ 価値ある人生を送るためには その大半を過ごす職場を価値あるものに創り上げていかねばなるまい」、私も大好きな言葉です。

世の中やその時代に求められるものは変化しますが、的確に掴んで、社会課題の解決に役立てることにより、初めて価値を創出できるのではないかと思います。

ただし、その価値を創出し続けるには、それを担う人が公私ともに充実した人生を送る必要があります。価値ある人生を送るためには、睡眠時間を除くとかなりの時間を過ごすことになる職場を、価値あるものにしていかなければいけないということです。

当社では「価値あるもの」「価値ある人生」「価値ある職場」を「三価値」と呼んでいます。「三価値」の実践が当社の存在意義であることを肝に命じ、事業運営を続けています。

中期経営計画の開始

中期経営計画です。現在、当社では内燃機関搭載車、主にガソリン車向けのビジネスが売上高の6割以上を占めています。昨今カーボンニュートラルの取り組みが世界各国で加速し、特に自動車の電動化が推し進められていることは、みなさまも肌で感じられていると思います。

そのような環境変化に対応するために、前中期経営計画を1年前倒しで終了し、2023年3月期から新中期経営計画「DK-One Next」をスタートさせました。

事業ポートフォリオの変遷

「DK-One Next」で目指す事業ポートフォリオのイメージです。中央にある自動車排ガス浄化触媒分野の売上高は、2026年3月期に増加し、2032年3月期には減少する見込みです。各国の環境規制の強化を受けて、自動車排ガス浄化触媒の市場は拡大するものの、数年後、ピークを打つことはほぼ確実だと思っています。

このような環境下で、当社が永続的に成長していくために、半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアを特に注力する戦略分野と定め、「ヒト・モノ・カネ」に重点投入します。

2032年3月期には、戦略分野を自動車排ガス浄化触媒分野に匹敵する売上規模にすることを中期経営計画の骨子にしています。

戦略分野における取り組みについては、次のスライドからご説明します。

半導体・エレクトロニクス分野の将来性

当社ではこれまでそれほど注力していなかったものの、今後、成長が見込まれる分野として半導体に注目しています。

半導体の製造工程は非常に長く、ジルコニウム化合物の特性を活かした多岐にわたる用途で開発を進めています。拡大する半導体市場をしっかりと取り込み、事業規模拡大につなげていきたいと考えています。

エネルギー分野(二次電池、燃料電池、水素関連)の将来性

エネルギー分野(二次電池、燃料電池、水素関連)のうち、本日は二次電池に的を絞ってお話しします。

世界のEV市場規模は、2021年から2028年の7年間で400万台から1,700万台まで拡大すると推定しています。EVに搭載される電池の正極材にはジルコニウム化合物が添加されているため、それだけでもかなりの需要拡大が見込まれるのですが、その他に当社固有の成長要因があります。

昨年、アメリカがインフレ抑制法(IRA)を定めました。これは、再生可能エネルギーやクリーンテックの企業、EVの購入に税額控除を適用することで気候変動対策を進める法律です。​​このような動きはEUにも広がっています。

アメリカでは、2025年以降に利用を開始する車両で、懸念国の事業体により抽出・加工・リサイクルされた重要鉱物を使用したバッテリーを搭載する車両は、税額控除の対象外となります。

現在、この要件をクリアしたジルコニウム化合物を提供できるのは世界で当社のみで、世界中のエネルギー分野のお客さまから高い評価を得ています。自動車の電動化が進むと、当社の現在の主力である自動車排ガス浄化触媒材料の需要は減少しますが、二次電池材料の需要は拡大します。二次電池材料の需要を確実に取り込むことで、自動車排ガス浄化触媒材料の需要減をカバーすべく、二次電池材料のさらなる特性向上に注力しています。

ヘルスケア分野(生体材料、医療機器、抗菌剤)の将来性

ヘルスケア分野は歯科材料がメインですが、市場規模は拡大することが示されています。ジルコニアは非常に頑丈で、熱にも強く、金属アレルギーも起きません。加えて、本物の歯と同じような色を出せるということもあり、世界ではジルコニアの歯科材料がかなり伸びています。

日本では保険適用外ですので市場規模はそれほど大きくないものの、欧米、インド等での市場拡大が見込まれており、こちらもしっかりと対応していきます。

以上が主な戦略分野についてのご説明になります。このように、高い成長率が見込まれる分野へ、当社はジルコニウム化合物を展開しています。

自動車排ガス浄化触媒分野の将来性

現在の主力である自動車排ガス浄化触媒分野の将来性についてです。自動車の電動化が進むと、ガソリン車の市場規模が急激に縮小すると思われているかもしれませんが、ハイブリッド車、地域としてはグローバルサウスでは依然として伸び続けると見込んでいます。

当社はハイブリッド車向けのシェアが非常に高いです。自動車排ガス浄化触媒の市場規模がそれほど伸びなかったとしても、ハイブリッド車が躍進することで当社のシェアは高まっていくと考えています。

世界で唯一!ジルコニウム原鉱石の産出国(ベトナム)に自前の調達ルートを保有

当社が注力しているベトナム子会社の新工場の写真です。2012年に設立したベトナム子会社は、当初パイロットプラントにて操業を開始し、ベトナムで事業を行う課題を抽出、これら課題の解決に道筋がついたため、2018年に新工場の建設を決定しました。新工場は先月から稼働を開始し、生産量を拡大させているところです。

こちらの工場では当社の主原料であるオキシ塩化ジルコニウムを製造しています。これまで中国一国に依存していたオキシ塩化ジルコニウムの調達を複線化した取り組みは、世界中のお客さまから高く評価をいただいています。

研究開発を加速

研究開発拠点として大阪事業所を刷新しています。写真の左奥にある茶色の建物が40年以上使用してきた旧本社ビルで、現在こちらで研究開発活動を続けています。しかし、建物の老朽化も進んだため、手前に写っている水色の研究開発センターを建設しました。

新設の研究開発センターでは、オープンなスペースで技術者が年齢問わずジルコニウムに関する知見を持ち寄って新しい可能性を見出したり、二次電池にジルコニウム化合物を添加した時の性能や安全性などの効果を、お客さまの使用条件により近い環境で評価する体制を整え、研究開発と実用化を加速させます。

研究開発センターを有効に活用し、2026年には、戦略分野の売上高を90億円に伸長することを目指しています。

ベトナム子会社の新工場と研究開発センターへの大規模な投資が完了し、当社の成長基盤が整いました。しっかりと価値あるものを作り上げていきたいと思います。

株主の皆様と成果を共有できる企業へ

10年間の株価と1株当たり純資産額を表したグラフです。株価の変動幅は大きいものの、純資産の積み上がりに応じて安値が切り上がっています。

現在の株価水準は決して満足できるものではありませんが、今後当社の事業をより深くご理解いただく活動を続けます。戦略分野におけるジルコニウム化合物の開発を推進して、その成果をタイミングよくプレスリリースし、また、他社との協業等も積極的に検討します。その結果は必ず株価に反映されると信じています。

本日私がご説明したかったのは、ジルコニウムは成長可能性のある魅力的な素材ということと、当社はジルコニウムにおいて技術とノウハウだけでなく、供給安定性でも世界でNo.1であるということです。

成長のための基盤は整っていますので、これらをフル活用して事業の拡大を図り、各拠点のある地域に根差した事業運営を進めることにより、地域の発展に貢献し続けていきたいと考えています。

私のご説明は以上です。主力の福井事業所の所長である丸本にバトンタッチします。ありがとうございました。

福井事業所のご紹介

丸本直志氏(以下、丸本):みなさま、こんにちは。福井事業所の丸本です。

私からは、1つ目に國部からご説明した今後の会社の方向性に対して福井事業所がどのような役割を担っていくのか、2つ目に福井事業所についてご説明します。

まず、福井事業所のご紹介です。福井事業所は2006年10月に設立し、おかげさまで今年で17年目を迎えています。県下最大の工業団地であるテクノポート福井に拠点を構えています。

福井事業所の生産体制

福井事業所の特徴は、大きく分けて3つあります。1点目は、生産規模です。当社の国内生産量の約50パーセント以上を生産できる規模を誇っています。

2つ目は、品目数です。当社の製品ラインナップのうち約80パーセントを生産できる機能を有する、国内唯一の総合的な工場となっています。

3つ目は、生産、製品検査、流通に至るまで所内で完結できるワンストップ体制です。

この3つの特徴を活かして役割を果たし、戦略分野へ貢献しようと考えています。

写真は工場のレイアウトです。福井事業所は大きく分けて3つの建物から構成されています。高純度ジルコニウムを作るA棟、複合酸化物を作るB棟、検査、研修などを行う研修・分析センターです。

生産においては2交代のシフト制をとっており、約140名の従業員が勤務しています。従業員の女性比率は約15パーセントで、平均年齢は35歳と比較的若いメンバーで構成されています。設立当初は大阪からの転勤者で構成されていましたが、最近は福井県出身者が8割強と、地元の方々を中心に事業所を運営しています。

福井事業所の製品

福井事業所の製品は約6割を国内へ出荷していますが、世界では欧州をはじめとして、北米、東アジアなど、福井県から世界各国へ「価値あるもの」をお届けしています。

環境への配慮

環境への配慮についてです。当社のもの作りにおいて、環境負荷低減は避けて通れない課題です。これに対し、生産活動におけるさまざまな取り組みを行っています。

左側の写真はアンモニアストリッピング装置です。当社は生産プロセスにおいては、多くの水を使用し、その一部を工場排水として排出していますが、工場排水中には赤潮の原因となるアンモニアが含まれています。アンモニアストリッピング装置は、それらを除去し、きれいな水を排出するための装置です。取り除いて回収したアンモニアは、生産に再利用しています。

右側の写真は燃料電池です。燃料電池で発電した電力は、環境・安全を守る設備をはじめとする重要な設備へ優先的に供給され、災害時、非常時でも電力供給が維持されます。現在、こちらの燃料電池はLNG(液化天然ガス)を使っていますが、将来的にはクリーン水素の導入も検討しています。

環境への配慮

当社の生産活動においては一定数量の産業廃棄物が排出されています。産業廃棄物の処理は、これまで焼却処分や埋立処分が主流でしたが、現在はリサイクルを経て資源として活用する取り組みを行っています。

代表的な事例として、使用済みの梱包資材である「フレコンバッグ」や、物流で長期間使用して破損した「樹脂パレット」を、固形燃料や再生パレットの原料として使用するリサイクルを進めています。

これらの取り組みにより、福井事業所から排出される産業廃棄物のうち約80パーセントのリサイクルに成功しています。この80パーセントに満足することなく、今後は90パーセント以上のリサイクル率を目指し、取り組みを進めていきます。

価値ある職場にする取り組み

続いて職場についてご説明します。福井事業所は「誰もが働きやすい職場環境を創る」をモットーに、さまざまな取り組みを進めてきました。

ハード面では、産業用ロボットの導入によるプロセスの自動化・省人化などに取り組んでいます。自動化・省人化はコストの低減だけでなく、現場で働く作業者の負担軽減にも大きく貢献しています。

その結果、製造現場の業務内容は機械のオペレーションが中心となり、働き方も大きく変化してきています。

一方で、ソフト面では社員のモチベーションの維持、向上を図るため、さまざまな取り組みを行っています。事例として、1on1でのキャリアプランの作成や、社員のニーズ、能力に応じた各種研修、勉強会の実施などです。ハード面・ソフト面の両方から、誰もが働きやすい職場環境となるよう、日々努力しています。

右側の写真は、VRで危険体験を訓練できる装置です。近年、企業における安全への取り組みが重要な課題となっています。従来の社内外の研修だけではなく、体感型設備を導入し、社員の安全意識の向上を目指しています。

価値ある職場にし続ける取り組み

福利厚生についてです。左側の写真は、社員の健康増進を目的に設置した本格的なトレーニングルームです。衛生室には看護師が常駐しており、社員の健康管理をサポートしています。

また、当社は小集団活動や改善活動が非常に活発であり、その成果を表彰する制度を設けています。加えて、優良社員表彰など、業務における成果を表彰する制度も整っています。

福井事業所はクラブ活動も盛んで、6つのクラブが活動しています。その中でも野球部は過去2回全国大会に出場しています。

当社のクラブ活動は、単に好きなことを追求する場ではありません。活動を通して、部署の垣根や上下関係を越えて、コミュニケーションを図る場と考えています。

地域に根ざした活動

地域に根ざした活動についてです。福井事業所は今年で17年目を迎えます。これはひとえに地域のみなさま、協力会社のみなさまの温かいご支援の賜物です。今後もより一層地域の発展に貢献していきたいと考えています。

現在は地域の清掃や祭への参加、花火大会やイベントへの協賛にとどまっていますが、今後は地域の小学生を招いた社会科見学なども検討しています。

地域と共存共栄する事業所へ

左側のグラフは、福井事業所の副原料や消耗品の調達比率です。福井県内の企業より約80パーセントを調達しています。

右側のグラフは、従業員数の推移です。従業員数は、約16年前の2007年3月期の約30名から2022年3月期には140名と、約5倍に増えています。

最後になりましたが、これからも福井事業所は、そこに働く社員が笑顔でいられるような職場環境作りに取り組み、DKKグループの旗艦工場として会社と事業の発展に貢献していきます。

引き続きご指導ご支援のほどよろしくお願いします。

國部:当社の製品は、白い粉がメインです。添加する元素によっては黄色っぽいものもありますが、「希少な」という意味の「稀な元素」というよりも、さまざまな優れた特性を発揮するという意味で、「稀な元素」だと考えています。中期経営計画「DK-One Next」のビジョンにも「稀な元素とともに100年企業へ」と掲げ、事業活動を行っています。

ジルコニウムはさまざまな用途に使える素材で、縁の下の力持ちです。実際に作っている丸本所長、なにかコメントはありますか?

丸本:福井事業所は今ご紹介した白い粉も生産していますし、セリウムと複合させた製品も作っており、あらゆるものを提供していると自負しています。

質疑応答:福井事業所の労働環境改善や新製品・新用途開発における事業所の役割について

質問者:丸本所長からご説明いただいた中で印象に残っているのが、福井事業所の職場環境の改善です。職場環境の改善を進めたきっかけ、背景について教えてください。環境改善による従業員の変化や労災が減ったなど、好事例があればご紹介ください。

加えて、新製品・新用途開発における福井事業所の役割について教えてください。全製品・アイテム数の8割を作っているとのことですが、難しい案件は例えば江津事業所など、他の事業所で対応しているのでしょうか? 

丸本:私は、働き方の多様化に取り組むため、2年ほど前に福井事業所に赴任してきました。140名の社員とさまざまな意見交換をする中で、「何か変えていかないといけない」と強く感じました。職場環境の改善は当然のことながら、社員一人ひとりは多様な意見・ニーズ・会社に対する思いを持っています。しかしながら、会社はそれらに十分応えられていないと感じたことがきっかけです。

1on1でのキャリアプラン作成や、ジョブローテーションの活発化などに重点的にアプローチしています。

当社の工場内は外気の影響が大きく、夏場は暑く、冬は寒いという職場環境を改善するため、さまざまな取り組みを行っています。

目に見える成果はまだ感じ取れていませんが、3年後、5年後には結果が表れると信じて行動しています。

新製品・新用途開発における福井事業所の役割についてです。福井事業所は多種多様な製品の生産機能を有しているため、スムーズな新製品の立ち上げ、市場投入の面で貢献できると考えています。

國部:補足します。当社は経営理念に「価値ある職場を創る」と掲げています。従業員が持っている能力をフルに発揮するために、68年間一貫して価値ある職場環境作りに取り組んできました。

先ほど丸本が生産現場の話をしましたが、例えば先日稼働した研究開発センターは、建物を刷新しただけでなく、スペースを拡張しました。食堂なども非常に広く、明るい雰囲気で、昼食時には会話、特に明るい話題が増えたという話を聞いています。

このような価値ある職場を創る活動は、企業価値の向上につながると考えています。労災の低減など、成果としてすぐに表れているわけではありませんが、長期目線で必ずプラスにはたらくと信じています。

質疑応答:丸本所長の経歴について

質問者:御社における丸本所長のこれまでのキャリア形成について、どのようなルートをたどって現在のポジションについたのか、可能であれば教えてください。

丸本:私は入社から一貫して製造畑を歩んできました。入社は大阪工場(現大阪製造所)で、多種多様な製品の製造に従事しました。そして17年前、福井事業所の設立に伴い、立ち上げメンバーとして福井に赴任しました。

福井事業所の生産活動が軌道に乗った後、いったん大阪に戻りました。大阪では、液体製品を専門に扱うニューテックス事業所(現在は閉所)から福井事業所への生産移管に携わりました。

ニューテックス事業所の閉所を見届けた後、大阪製造所の(製造)課長を務めました。その後、2年ほど前に福井事業所へ再赴任し、現在に至ります。

質疑応答:福井事業所の位置付けについて

質問者:福井事業所では、御社製品の8割のラインナップを持っているとのことで、かなり柔軟にさまざまなものを生産できる体制だと思います。他の事業所と比較した時に、福井事業所の生産性はどのような位置づけにあるのでしょうか?

福井事業所がマザー工場のようになっており、こちらで行われた改善活動や生産性向上の実績が、他の事業所にもコピーされていくような位置づけでしょうか?

丸本:福井事業所は、生産規模・生産機能において旗艦工場となっています。直近で拡張した江津事業所の新棟では、福井事業所をモデルとしつつ、より改良された生産設備・プロセスを導入しています。また、改善活動においても、従来より江津事業所・大阪製造所と連携しています。

國部:従来、福井事業所は当社のほぼ全製品を作っており、多品種を生産してきました。一方で、江津事業所は主力の自動車排ガス触媒材料に特化していました。そのため、生産性の面で江津事業所に及ばなかったかもしれませんが、それでも福井事業所は生産性向上のため、たゆまぬ努力を続けてきました。

江津事業所でも自動車排ガス浄化触媒材料以外の生産を始めるために新棟を建てましたが、そこには福井事業所で培ったノウハウが相当活かされています。人材面についても、江津事業所と福井事業所で交流しており、お互いの良い面を吸収し合いながら、より良いもの作りを心掛け、業務に当たっていると感じています。

写真中央の女性はこの時代には珍しく投資家であり、初代の社長です。一緒に写っている3人の若者がジルコニウムの将来性に夢をかけて、事業を始めました。このように、当社は昔から女性が前線で活躍し、若手が新しいことにチャレンジする風土です。

先ほど、丸本が福井事業所の立ち上げメンバーだったという話がありましたが、当社は若手にも責任ある仕事を任せています。立ち上げの苦労話などはありますか?

丸本:これだけ大規模な工場ですので、最初は設備の取り扱いや品質の合わせ込みに非常に苦労しました。納期に間に合わせるため、寝る間を惜しんで対応したことが記憶に残っています。

國部:おそらく、そのような思いがみんなに伝わり、現在はしっかりと睡眠も取れる体制作りができているのかと思います。一方で、経験したことを140名の従業員にしっかり受け継いでいってほしいと思います。

國部:写真の盾は、経済産業省の取り組みである「2020年版グローバルニッチトップ企業100選」に選ばれた時のものです。

2020年は自動車排ガス浄化触媒分野でグローバルニッチトップ企業に選ばれましたが、今後は戦略分野においてもグローバルニッチトップ企業となれるよう、努力していきます。

丸本:私が入社した当時、こちらの工程では匣鉢に中間品を手作業で詰めて台車に積み、また焼き上がったものを匣鉢から手作業で取り出していました。

現在では、産業用ロボットの導入により、効率化・省人化が進み、作業者の負担が大幅に改善された好事例です。