会社概要

山本達夫氏(以下、山本):みなさま、こんにちは。ディジタルメディアプロフェッショナル代表取締役会長兼社長CEOの山本達夫です。本日はよろしくお願いします。

まず、当社についてご説明します。ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)は、国内唯一のGPUの技術保有企業として、グラフィックスGPUチップの開発・販売や、GPUのハードウエアIPコア、最近では、AI IPコアのライセンス販売を行っています。

画像コンピューティング及びAI分野において、アルゴリズム・ソフトウエアからハードウエア、エッジからクラウドにわたる一貫した製品・サービスを提供しています。

当社は2002年に創業し、本社は東京都中野区にあります。2011年6月には東証マザーズ市場に上場し、2022年4月には東証グロース市場に移行しています。

売上高は、2023年3月期で約23億円です。新型コロナウイルスの影響もあり、一時、赤字の時期もありましたが、先期から黒字に回復しています。社員は65名で、連結子会社として、ベトナムに開発センターを持っています。

Our Purpose

山本:パーパスとして、今年から「Making the Image Intelligent」を掲げています。これは日本語で「画像を知能化する」という意味です。画像インテリジェンスの力で現実世界の問題を解決し、ステークホルダーに価値をもたらす革新的な製品とサービスを創造することを目的としています。

「画像の知能化」について補足します。みなさまご利用になっている方も多いと思いますが、昨今話題の「ChatGPT」は、あくまで人とAIがテキストを介してコミュニケーションするサービスです。

一方で、最近登場した「GPT-4」やGoogleの「Bard」等では、テキストに加え、AIが画像を理解し、その中から情報を抽出して何らか洞察するなど、画像から価値を引き出すことができます。

現在、世界中で監視カメラが動いており、そこから膨大な情報が出てきますが、今のシステムではこの情報をほとんど使えておらず、無駄に捨てています。

しかし、新しいAIやコンピューティングパワーによってこの情報が活用できるようになると、例えば地球温暖化に関わる環境破壊、あるいは山火事や洪水などの災害をAIが事前に検知し、防止につなげることができます。

また、交通機関における安全性の担保、自動運転の技術向上にも貢献しますし、医療の分野でも、病気の予防などに大きな価値を生み出していくと考えています。

当社は創業以来、GPU、画像コンピューティング、AIに注力してきました。「画像を知能化する」領域の中心でビジネスを行い、世の中の課題を解決し、同時に事業を成長させていきたいと考えています。

画像の知能化 - 現実世界の問題解決

山本:「画像の知能化」により多くの問題を解決できます。例えば農業では、必要な箇所だけに農薬を散布することで、資源の節約や環境破壊防止が可能となります。

また、工事現場の安全確保にも貢献できますし、ヘルスケア分野においてもそれぞれにカスタマイズしたフィットネスを提案することで健康の維持に寄与できます。

このように「画像の知能化」にはさまざまな価値があると考えています。

事業内容

山本:事業内容についてご説明します。当社は、ライセンス事業、プロフェッショナルサービス事業、製品事業と、大きく分けて3つの事業を展開しています。

ライセンス事業では、創業以来取り組んでいるGPU技術をIPコアとして、半導体メーカーやOEM企業に供給しています。

こちらのビジネスモデルについては後ほどご説明しますが、任天堂のゲーム機、あるいは国内ほぼすべてのコンシューマーエレクトロニクスメーカーに採用いただいています。当社のGPUを搭載した機器の累計出荷数は、すでにトータルで1億5,000万台を突破している状況です。

スライド左側に記載しているロボティクス事業、セーフティ事業は、AI・画像コンピューティングを最も活用できる注力分野として、統合開発環境・ソフトウエアを提供しています。

ロボットの自律運転では「ZIA MOVE」、自動車の安全運転支援では「ZIA SAFE」という開発プラットフォームを提供しており、それをベースにプロフェッションサービス事業、ライセンスビジネスを展開しています。

スライド右下には製品事業の例を記載していますが、現在、GPUチップの「RS1」を量産出荷しています。

また、2年前には、イギリスのロボットベンチャーであるCambrian社から極めて先進的なシステムである「Cambrian Vision System」の国内独占販売権を取得し、販売するなど、現状、製品事業が当社の事業における中核分野となっています。

ARM, Nvidiaとの比較

山本:当社はGPUを開発し、さらにそれをチップ化、あるいはライセンスとして提供しています。規模は違いますが、同業他社として比較されるのは、GPUのNvidia社、CPU・GPUのライセンス販売を行っているARM社です。

当社のビジネスモデルはこの2社に非常に近く、時にはお客さまの案件で競合することもあります。しかし同時に、ビジネス開発あるいはライセンスの点で、この2社とは非常に良い協力関係を築けていると考えています。

3社とも先端プロセッサー技術を開発する企業ですが、当社とARM社・Nvidia社の違いは、ARM社・Nvidia社が汎用用途に向けたIP、半導体のビジネスを展開しているのに対して、当社は、主に特定ドメイン向けに最適化したIP及び半導体製品のビジネスを展開していることです。

したがって、当社にはARM社・Nvidia社のビジネスのハイブリッドモデル的な側面があります。ARM社はIPコアのライセンスのみを行っており、製品は作っていません。Nvidia社は製品のみ販売しており、基本的にライセンスはしていません。

それに対して、当社は特定分野に向けて最適化したIPライセンス、チップ開発にサービスを組み合わせ、トータルのソリューションを提供していることが特徴です。

汎用と専用という議論は常にされているものの、最近の半導体の目覚ましい進化の中で、性能も上がり、多くの機能が集約されていることで規模も大きくなってきており、コストも高くなっています。さらに、消費電力も非常に高くなっています。

データセンターやPC・スマートフォン向けはよいのですが、それ以外にも、多岐にわたるアプリケーションがあり、汎用の半導体はコスト、電力、入手性などの点で、使用する難易度が高くなっています。

当社は、特に組み込みのアプリケーションに対して、最適なかたちでソリューションを提供するビジネスを行っており、それを強みとしています。

DMP注力分野

山本:当社の注力している分野は、「アミューズメント」「ロボティクス」「セーフティ」の3つの分野です。

この3つの分野は一見バラバラで、異なるもののように見えますが、根底には、当社が注力してきたGPU技術、コンピュータビジョン・画像処理、エッジ&クラウドコンピューティング、AIなどがベースにあります。

それらの基幹技術の上に、アプリケーションが相互に関係しながら成長していくモデルを築いています。

DMPの強み - ドメイン最適化を可能にする技術

山本:当社の強みは、ドメイン最適化を可能にする技術です。お客さまの課題を解決するため、アルゴリズム・ソフトウエア開発を行い、最終的にはハードウエアへ実装する上で、多くのケースでは、すでに市場にある汎用のハードウエアを前提に作ります。その場合、ソフトウエアが最適な動作をせず、ドメインの最適化ができないなどの問題が出てきます。

当社は、GPU開発の中で培ってきたアルゴリズム開発、ソフトウエア最適化、ハードウエアアクセラレーションをend to endで組み合わせることにより、お客さまに最適なソリューションを提供できることが、大きな強みとなっています。

製品事業

山本:製品事業についてご説明します。現在、当社のビジネスは、アミューズメント向けSoC、GPUチップの「RS1」と、Cambrian社の「Cambrian Vision System」の2つが中心です。その他にAI推論モジュールやカメラモジュールも提供していますが、スライド左側に示した2つの製品がメインとなっています。

LSI製品ビジネス

山本:LSI製品ビジネスについてご説明します。このビジネスモデルは、当社が自社IPを使ってチップを開発し、それをお客さまに直接提供するものです。

日本の大手半導体メーカーが作っているシステムチップと当社のチップの違いは、当社が自社IPコア、GPUを中核にチップを作っているのに対し、他社の多くはコアの部分を外部からライセンスしている点です。

実際にはARM社からライセンスすることが多く、非常に高額なものをライセンスし、それをほぼブラックボックスの状態で使っており、付加価値の大部分が外部に流出しています。しかし当社は、社内で高い付加価値を取り込むことができています。

アミューズメント市場について

山本:アミューズメント業界についてご説明します。アミューズメント市場規模は、長期的に縮小すると言われていますが、2020年に底打ちの傾向が出ています。特に「RS1」の主戦場であるパチスロが5年ぶりに70万台まで回復しており、市場を牽引している状況です。

回復の要因として、6.5号機というパチスロの新しい機種や、スマスロ登場による入れ替えが進み、それが市場に受け入れられていること、当社のお客さまでもあるサミー社の『北斗の拳』などの大型ヒットタイトルが市場を牽引していることが挙げられます。

ドメイン最適化の例:アミューズメント業界の課題解決

山本:「RS1」について、ドメイン最適化の例を含めてご説明します。当社はこれまで、アミューズメント業界の課題である、パチンコ・パチスロ向け部品の共通化による開発・部材コストの削減に取り組んできました。

従来、パチンコには高性能な2Dグラフィックス、パチスロにはよりゲーム機に近い3Dグラフィックスと、それぞれ違うグラフィックスチップが必要とされていました。

そのため、これまでお客さまはパチンコ・パチスロ向けでそれぞれ別の部品を調達し、ソフトウエアを開発して、在庫を持って出荷していたのですが、別々に部品を調達するため、コスト的な負担が非常に高くなっていました。

当社は、任天堂で採用いただいた3Dグラフィックスの技術を使い、2D・3Dを業界で初めて統合することで、部品の共通化を可能にしました。

一方、お客さまにおいても、アミューズメント業界の課題であるコスト削減が進んでいます。これまでは各メーカーが「台」と呼ばれるパチンコ・パチスロの機械を作っていましたが、それを共通化する取り組みとして、サミー社とユニバーサル社の合弁会社であるZEEG社が共通の筐体を作り、各台メーカーに供給しています。

当社の「RS1」は、ZEEG社が提供する4台の共通筐体のうち3台に採用されています。このZEEG社の共通筐体と、当社の2D・3Dの共通化チップが組み合わさることで、業界の真の標準モデルとして提供されています。

「RS1」は、今年7月末現在でトータル15機種、26万台のZEEG筐体に搭載されており、今後さらに伸びていく見通しです。

半導体向けIP

山本:半導体向けIPライセンスシステムについてご説明します。当社はGPUを中心にライセンスビジネスを進めており、最近はAI推論プロセッサーIPもポートフォリオに追加しています。お客さまのニーズに応じて柔軟にカスタマイズし、お客さまの半導体システムにお使いいただいています。

先ほどもお伝えしましたが、当社の主にGPUを搭載した機器の累計出荷数は、現在1億5,000万台を超えてきている状況です。

GPU/AI IPライセンスビジネス

山本:IPライセンスビジネスについてご説明します。スライド左側にはお客さまの製品を記載しています。テレビやカメラ、プリンター、ゲーム機などの当社のお客さまの製品には、システムチップという大規模な半導体チップが必ず搭載されています。

システムチップの中では、「Linux」や「Android」などのOSや、アプリケーション、画像処理などが動いています。システムチップの蓋を開けると、内部にはシリコンが入っており、その中に各種の半導体機能が実装されています。

当社はその中でも、GPUやAIの設計データを提供しており、お客さまがそれをチップに実装し、製品に入れて出荷しています。

ライセンスについては、初期ライセンス費用と、お客さまが製品を1台出荷するあたりいくらというロイヤリティの組み合わせのモデルでビジネスを展開しています。

IP採用事例

山本:採用の一例として、OMデジタルソリューションズ(旧オリンパス社映像事業部門)社の「OM SYSTEM OM-1」という最新のデジタルカメラをご紹介します。こちらのミラーレス一眼カメラに当社のGPU IP2種類が搭載されています。

OMデジタルソリューションズ社から、当社のGPU IPを採用したのは、ドメイン最適化による画像性能とシリコンサイズのバランスが非常に優れており、長年にわたって培ってきた当社GPUの豊富なノウハウが活かされているためとうかがっています。

AI推論プロセッサーIP

山本:さらに、最近はコンシューマ製品からファクトリーオートメーションといった幅広いアプリケーションに使えるAI推論プロセッサーIPの「ZIA DV740」のライセンスを始めています。

スライド下部にあるように、「ASIC」、プログラマブルな「FPGA」といった半導体デバイスに実装して使えるようにしています。

AI推論プロセッサーIP A3000

山本:テレビの事例です。「REGZA」と、TVS REGZA社の親会社であるHISENSE社のテレビに当社のAIプロセッサーが採用され、昨年より出荷されています。

テレビに搭載されたAIが放送コンテンツを判断し、その内容によって、例えば背景をぼかしたり、立体的なイメージを出したり、肌の質感を変えたりしています。あるいは、AIを使って画像を高解像度化したりノイズを減らしたりする「Super-Resolution(超解像技術)」など、さまざまな機能を実現しています。

このように、当社のAI IPは、すでにみなさまの生活の中でさまざまな機能を実現しているとご理解いただければと思います。また、「DV740」の性能を6倍に上げた次世代AI推論プロセッサーIP「A3000」の提案を始めているところです。

ZIA MOVE ZIA SAFE/ZIA Cloud SAFE

山本:ロボット及びセーフティ分野への取り組みについてご説明します。当社はロボットの自律運転向け統合ソフトウエア「ZIA MOVE」、安全運転支援向けソフトウエアプラットフォーム「ZIA SAFE」「ZIA Cloud SAFE」を提供しています。

これらは純粋にソフトウエアのプラットフォームで、今まで私がお話ししてきたようなハードウエアとはやや異なります。ただし、このソフトウエアプラットフォームには当社のハードウエアのノウハウが使われており、場合によっては、ハードウエアのIPとソフトウエアを組み合わせたライセンスも行っています。

統合ソフトウエアIP

山本:統合ソフトウエアの特徴は、アプリケーションに必要な機能ビルディングブロックとサービスをパッケージ化していることで、開発費、ライセンス、サブスクリプションの組み合わせによる柔軟なビジネスモデルで提供しています。

「ZIA SAFE」は、ドライバーモニタリングや「ADAS」と呼ばれるヒヤリハット解析等、事故防止、安全運転支援システムをサポートする機能を持っています。「ZIA MOVE」は、ロボットの自律運転のフルパイプラインです。

運転支援システム ZIA SAFE概要

山本:「ZIA SAFE」は、エッジ側で実行する「ZIA SAFE」と、クラウド側で実行する「ZIA Cloud SAFE」の2つから成り立っており、ドライバーや車、道路及び周辺をAIで認識し、さまざまなアクションにつなげることが可能です。

「ZIA SAFE」により、まさに画像を使った車の知能化が実現されています。

ZIA SAFE 採用事例(JVCケンウッド様)

山本:「ZIA SAFE」は、JVCケンウッド社のドライブレコーダーに採用されており、車外の危険事象のリアルタイム検出や、車内のドライバーモニタリングに使われています。

ZIA SAFE 採用事例(デンソーテン様)

山本:また、長年のお客さまであるデンソーテン社では、当社の「ZIA SAFE」「ZIA Cloud SAFE」を使った安全運転支援システムを展開しています。その中で、今年新たに安全運転管理テレマティクスサービス「Offseg」の提供を始めており、そこに当社の「ZIA SAFE」が採用されています。

(動画流れる)

ZIA MOVE 自律運転向け統合ソフトウエアプラットフォーム

山本:「ZIA MOVE」は、ロボット向け自律運転のプラットフォームです。「Visual SLAM」技術を内包しており、カメラを使った自己位置推定のシステムをベースに、障害物を考慮した経路生成まで自律運転に必要な機能をすべてサポートしています。

現在はハードウエアも開発し、評価キットとして提供しています。今年4月に、ロボテックモビリティ事業部という新たな事業部を作り、プロモーションを始めており、すでに何社かのお客さまに評価いただいています。

ZIA MOVEの対象となるロボットカメラ搭載数

山本:スライドは、IDTechExが発表しているロボットのカメラ搭載数の予想です。今後20年間で27倍に増加するといわれており、この中には当社の「ZIA MOVE」の対象となるドローンやその他のロボット向けが含まれています。

ZIA MOVEの対象となるロボット

山本:スライドのチャートは、さまざまなタイプのロボットにどのようなセンサーが使われているかを示しています。ほぼすべての産業用ロボット、AMR、AGV、協働ロボット、ドローン等において、カメラが重要なセンサーとして使われています。カメラによるロボットの知能化が図られており、こちらはすべて「ZIA MOVE」の対象マーケットになります。

Cambrian Vision System

山本:「Cambrian Vision System」についてご説明します。当社は2年前に出資しましたが、Cambrian社は本社がアメリカにあり、実際の開発部隊はイギリスとドイツにあるロボットベンチャーです。

例えば、ファナック社やデンソー社、海外ではUNIVERSAL ROBOTS社などのロボットのアームにこのシステムを装着することで、さまざまな作業をこなすことができるようになります。ピッキングや組み立てにおいて、画像を用いてロボットを知能化しており、日本では当社が独占販売権を持ってこのビジョンシステムを販売しています。

Cambrian Vision System

山本:製造業だけでも約900万人が手作業でさまざまな単純作業を行っているといわれていますが、「Cambrian Vision System」を使うことで、AIが人間を単純作業から解放し、より付加価値の高い仕事に就くことを可能にします。Cambrian社の見積もりでは、こちらのマーケットサイズは90ビリオンドル、日本円で10兆円以上あるとされています。

利用できるアプリケーションは、ピック&プレースやビンピッキング(バラ積みピッキング)、各種検査・組み立てなどで、多様な作業をこなすことができます。

Cambrian Vision System

山本:「Cambrian Vision System」には多くの特長があり、例えば、0.2秒以内に1ミリメートル以下の小さな部品を認識してピックできます。

大きな特長として、透明の物体を認識してピックアップできます。当社や当社のお客さまが認識している限り、透明な部品をピッキングできるロボットは存在せず、非常に大きなアドバンテージとなっています。

さらに、外部の照明に左右されないため、明るいところから暗いところ、あるいは逆光があっても動作します。

(動画流れる)

これはABBというメーカーの双腕ロボット「YuMi」で、アームが2つ付いています。両側のアームには「Cambrian Vision System」が付いており、それを使って細かい部品のピッキングとプレーシングをしています。

外部から光を当ててもエラーなく動作し、暗いところでも正確に部品のピッキングができます。これらはお客さまにとって非常に重要で、「Cambrian Vision System」の大きなメリットになっています。

DMPが目指すMaking the Image Intelligence

山本:当社のパーパスである「Making the Image Intelligent」のもと、画像を使って見えないものをピッキングする、あるいは、ロボット周辺の見える化をして衝突回避などの安全化を図ることを実現しています。

業績

山本:業績についてです。ビジネスモデルの転換が進み、2023年3月期の売上高は前期比39パーセント増と、過去最高を更新しています。

今後は、アミューズメント向けGPUチップの出荷の拡大及び新製品の投入、ロボティクス、セーフティ分野の強化でさらなる成長を見込んでいます。

業績

山本:売上高を四半期ベースで比較すると、今期の第1四半期は前年同期比80パーセント増と、前期の55パーセント増よりさらに成長しており、今後、力強い成長が見込まれます。

今後の取り組み

山本:まとめとして、当社は「Making the Image Intelligent」のパーパスのもとビジネスを加速し、社会の課題を解決していきます。

具体的には、ZIAプラットフォームとCambrianを中心としたAIビジネスの強化、ロボティクスとセーフティの連携、アミューズメント、IP製品のシェア拡大、新製品投入です。また、付加価値増大により力強い成長を継続していきます。

質疑応答:統合ソフトウエアIPのビジネスモデルについて

坂本慎太郎氏(以下、坂本):「開発費、ライセンス、サブスクリプションの組み合わせによる柔軟なビジネスモデル」について、これを組み合わせた取り組みの一例があれば教えてください。

山本:具体的なお客さまの名前は差し控えますが、「ZIA SAFE」「ZIA Cloud SAFE」のお客さまにおける「ZIA SAFE」のライセンス費や、サブスクリプションベースでの課金の例があります。

質疑応答:チップの仕様について

坂本:スライド右側のチップは専用でしょうか? あるいは仕様変更により他社製品にも使えるものでしょうか?

山本:基本的には、TVS REGZA社と親会社のHISENSE社が自社チップとして開発しているため、自社チップを他社に使用できるかどうかはお客さま次第です。ただし、当社では、こちらに使われているIPをカスタマイズすることで他のお客さまにも提供できます。

このように、IPはさまざまなカスタマイズにより、多岐にわたるアプリケーションに対応できます。

質疑応答:「ZIA SAFE」について

坂本:「ZIA SAFE」はデンソーテン社のように、1つの製品としてまず導入されているとのことでした。自動車メーカーの衝突防止システムのような大本の部分に組み込まれるとかなりの売上・利益になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

山本:「ZIA SAFE」はあくまでも安全運転支援システムで、車のベースのオートブレーキングなどには使われていません。例えば、前から走ってくる車と衝突する可能性がある時に、ドライブレコーダーを使って、その判定をもとにリアルタイムでアラームを上げることができます。そのアラームをどのように使うかはお客さま次第です。例えば、ドライバーに注意を促すようなかたちでお使いいただいています。

質疑応答:アミューズメント市場の今後の見通しについて

坂本:足元のアミューズメント市場の状況を教えていただきましたが、今後の見通しについてもお願いします。

山本:直近では明らかに回復傾向ですが、長期的には人口減等によって市場は縮小していくと考えられています。ただし、新しいスマスロやスマパチの導入など、さまざまな新しい試みによって市場は大きく縮小せず、現状を維持していくと考えています。

坂本:パチンコ、パチスロは昔から設備投資が行われ、高額な筐体に高い技術を詰め込んだ、アミューズメント施設の中にある遊戯台です。最近のゲームセンターではクレーンゲームなどがおそらく一番人気だと思いますが、そのあたりも進化してきたら、パチスロのようなグラフィックが必要になる時も来るかもしれません。そのあたりにも参入できる状況になっているのでしょうか?

山本:現在パチスロで使われている技術と、ゲームセンターのゲーム機で使われている技術はまったく同じです。したがって、当社が業界に提供しているモジュールをそのまま他のアミューズメント施設にも使うことができますし、技術的にまったく問題ないと考えています。

質疑応答:業績の伸長について

坂本:業績についておうかがいします。33ページのスライド左側にある、売上・経常利益推移についてご説明いただきましたが、主にどの分野が伸びているのでしょうか?

大澤剛氏(以下、大澤):基本的には、「RS1」を中心とした製品事業、アミューズメント分野が大きく伸長しています。

坂本:売上・利益ともにと考えてよいですか?

大澤:売上は非常に伸びており、それに比例して利益も伸びてきています。

質疑応答:増益予想について

坂本:今期の増益予想についてです。大幅な増益予想ですが、主力絡みのものが伸びるという予想でしょうか?

大澤:現時点では、収益の大きなポーションがアミューズメント向け、もしくは製品事業のため、そちらの伸びにより増益を予想しています。

質疑応答:他社との協業の取り組み事例について

坂本:株主のヤマハ発動機社や、レスター社との協業の取り組み事例で、新しいトピックがあれば教えてください。

山本:ヤマハ発動機社とは、引き続きロボティクス分野等で共同開発を続けていますし、レスター社は、当社の販売代理店として、「RS1」の販売等で非常に強固な協力関係を築いています。

質疑応答:株主還元や、その考え方について

坂本:株主還元についてです。当然のことながら、私は成長に全振りするのが一番正しいと思いますし、そのための成長企業だと考えていますが、還元時期の目処や、株主還元の考え方について、お話しできる範囲で教えてください。

大澤:利益配分という意味では、成長投資、経営体質強化のための内部留保と、株主さまに対する配当を適切に分配するのが基本方針です。しかし、現時点では成長投資のほうに振っているため、剰余金の配当は実施していません。

株主還元の具体的な時期に関しては現在は未定です。しかし、前期黒字化し、今期の利益もさらに伸びるといったトレンドが今後も続けば、成長投資との兼ね合いですが、検討できるタイミングが来るのではないかと思っています。

質疑応答:中期経営計画について

坂本:中期経営計画は作成しているのでしょうか? 将来の目標数値について教えてください。

大澤:毎年6月に事業計画及び成長可能性に関する事項を開示し、中期経営計画をアップデートしています。今年6月の開示では、売上高のCAGR(年平均成長率)を15パーセント、営業利益率も10パーセントから15パーセントを目標としています。

さらにKPIとして、セーフティ、ロボティクス分野において利益率が相対的に高いIPコアライセンス事業の売上高比率を40パーセントと提示しています。

坂本:アミューズメントはそれなりの伸びで、セーフティ、ロボティクス分野が成長領域ということでしょうか?

大澤:そうですね。足元ではアミューズメントが非常に伸びていますが、今後安定成長していく中で、AIに関わるセーフティ、ロボティクス分野を大きく伸ばすのが中期経営計画の方針です。

質疑応答:M&Aについて

坂本:M&Aについて、もしお考えがあればどの分野か教えてください。 あるいはヤマハ発動機社やレスターホールディングス社のような提携にとどめるのかなど、戦略があるのでしょうか?

山本:Cambrian社との提携も1つの例ですが、AIあるいはロボティクス分野での提携を視野に入れています。

質疑応答:製造を行っている地域について

坂本:「製造は国内が多いのでしょうか? 海外はどちらで製造されているのでしょうか?」というご質問です。

増井麻里子氏:御社はファブレスですよね?

山本:ファブレスで、最も重要な半導体は台湾でシリコンチップを作り、それを国内の半導体メーカーで最終的にパッケージングしているかたちです。

質疑応答:新規顧客開拓について

坂本:「新規の顧客開拓はどのようなチャネルが多いのでしょうか?」というご質問です。

山本:販売代理店やパートナーを通すケースも多いですし、展示会等を通して我々がお客さまと直接エンゲージメントすることもあります。あるいは、お客さまからの問い合わせベースで対応することもあり、さまざまなチャネルを使って新規顧客を開拓しています。

質疑応答:DMPのチップの違いについて

坂本:「スライドの6ページでご説明いただいた、御社とAMD社(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)・ ARM社・Nvidia社とのチップの違いについて詳しく教えてください」というご質問です。

山本:基本的にGPUの部分は同じです。AMD社だけではなく、Nvidia社、当社、あるいはARM社も、「OpenGL」という基本的なアーキテクチャに基づいて作っており、ソフトウエア的には互換性を持っています。それを最終的なチップ等に仕上げる時の機能の組み合わせに違いがあり、当社はアミューズメント向けにはアミューズメントに最適なかたちでインテグレーションし、AMD社・Nvidia社は、PCあるいはデータセンターなどに最適化したチップを作っています。

坂本:アミューズメントに適したチューニングをされていると思いますが、アミューズメントではどのようなものが必要になりますか?

山本:アミューズメントに求められる特徴的な点として、超高速の動画再生機能が必要になります。当社の「RS1」は1080p(フルハイビジョン)の画像を64本同時に30fps(フレーム・パー・セカンド)という高速で流すことができます。これを3Dのゲーミング用のグラフィックスに組み合わせて提供しています。

「フルハイビジョンを60本同時に秒間30フレームで流す」という要求は業界特有です。当社ではそのようなものを取り入れ、チップを作っています。

坂本:確かに、アミューズメント機は動画が重なって始まることがあります。そのようなことも意外と難しいのですね。

山本:そうですね。それに、当社の3Dグラフィックスを組み合わせ、2次元の画像で3次元空間を表現することもできます。

坂本:画面の大きさが限られている中で、臨場感を演出するために動画の力が必要なのですね。開発に関しては、グラフィックを作る会社からメーカーを通して要望が来て、御社がチューニングされるのでしょうか?

山本:「RS1」に関してはすでに公表していますが、バンダイナムコ社と協力し、同社の要求を取り入れました。ゲームを作っている現場の要求を取り入れて作ったということです。

質疑応答:「RS1」の売上について

坂本:「RS1」の売上はパチンコ、それともアミューズメントがメインでしょうか? また、国内外問わず他の業界にアプローチできるのでしょうか? 「RS1」の用途は国内のアミューズメント施設が多いと思いますが、海外でも展開しているのか、それとも隣接した業界で技術的に他の用途があるのかを教えてください」というご質問です。

山本:こちらはよくいただくご質問です。「この技術を他に使えないか?」という話はよくあり、例えば、デジタルサイネージなどにも対応できます。しかし実際には、アミューズメントに対してかなり特化した仕様にしているため、それを他に振り向けるにはコストや冗長性が高いなどの課題があります。

「言うは易く行うは難し」で、このような特定チップだけでなく、汎用チップでさえも他で展開するのは困難です。

坂本:「御社のチップが求められるのはアミューズメント以外にもあるのか?」という問いに対しては、テレビなど、さまざまなお話をいただきました。アミューズメントも技術の進化により現状があると思いますが、他の分野についても教えてください。

山本:AIに関連した画像認識等の分野で求められていることは確かです。その判断については、高額なLSIの開発費に見合う需要があるかということです。ROI的に成立するマーケットがあれば、もちろん対応は可能です。

半導体及び全般の課題でもありますが、どこをチップにして、どこをソフトウエアで実現するかなど、そのあたりのトレードオフが非常に難しい側面もあります。

質疑応答:物流業界への導入について

坂本:「物流の『2024年問題』がありますが、先ほどの動画で『ピックする』という動きが出てきました。かなり小さなものだと思いますが、大きなものへの対応など、物流業界への導入はあるのでしょうか?」というご質問です。

山本:物流マーケットも非常に大きなターゲットです。当社は、1ミリ以下の部品などを扱うこともできますし、例えば車の製造過程における非常に大きな部品のピッキングなど、カメラの位置によって、さまざまなものに対応することが可能です。