本日の内容
進顕氏:ただいまより、2023年9月期第3四半期決算についてご報告します。本日は、代表取締役社長の進顕よりご説明させていただきます。
本日お話しする内容です。1点目はトピックスとして、先般発表した2つのリリース内容についてお話しします。2点目は業績の状況について、3点目は今後の成長戦略について、4点目は株主還元方針に関してご説明します。
3Dプリント事業廃止について
トピックスの1点目です。2023年6月14日に「3Dプリント事業廃止に関するお知らせ」を公表しました。
2022年11月9日に開示した「中期経営計画の変更に関するお知らせ」のとおり、当社はデジタル技術を活用し、顧客ニーズに応えるソリューション提案型企業「デジタルソリューション企業」への転換を図っています。
そのため、経営の選択と集中を行い、自社独自のデジタル技術開発へ経営資源を集中させるため、3Dプリント事業を廃止することとしました。
廃止する事業内容は、自社保有の3Dプリンタを活用した受注生産による製造販売事業になります。今年度第2四半期までの売上高は約4,244万円、営業損失が約1,486万円のため、事業の廃止により全社業績に与える影響は軽微です。
従業員9名については他部門へ配置転換を行います。保有資産金額は2億4,800万円になり、工場の製造機械については売却する予定です。土地建物の取り扱いについては未定となっています。廃止時期については、現在、取引先および関係先と調整中のため、決定しましたら速やかにお知らせします。
スタンダード市場上場の選択申請について
トピックスの2点目です。7月12日に「プライム市場上場維持に向けた適合計画の進捗状況及びスタンダード市場上場の選択申請の決定に関するお知らせ」を公表しました。
2022年12月23日には「上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況について(計画期間の変更)」を提出しています。プライム市場の上場維持基準を満たしていなかった流通株式時価総額については、企業価値向上に向けた取り組みを大きく2つ行ってきました。
1つ目は、中期経営計画の業績達成に向けた取り組みです。2022年11月に開示した中期経営計画のとおり、当社は「デジタルソリューション企業」への転換を図るべく、新たな戦略として4つの取り組みを進めています。
先ほどお話ししたとおり、6月には3Dプリント事業の撤退を決定し、今後のコア事業における独自技術の開発および技術者養成に向けて経営資源の選択と集中を実施しています。
また、当社の経営理念である「社員の生活向上と安定の確保」を実現すべく、社員の給与を継続的に上げていく側面からも、付加価値がより高い事業として、2019年よりAIソリューションの技術研究を開始しています。
2022年10月より体制を強化し、本格的にソリューション提供型のビジネスに着手しているところです。ソリューション提案の実例については後ほどご説明します。
2つ目は、市場認知度・評価の向上に向けた取り組みです。IR活動・広報活動の強化として、株主のみなさまとの地域的・時間的な制約に縛られない接点の形成のため、都内会場にて実施していた会社説明会を、2023年より自社サイトでの社長による動画配信に変更し、Webメディアへの情報掲載も開始しました。
以上の取り組みを継続しましたが、3月31日時点における流通株式時価総額は88億1,000万円となり、基準値に若干未達の状況となりました。
スタンダード市場上場の選択申請について
このため、当社は2つの理由からスタンダード市場へ移行することを決定しました。1つ目は、株主のみなさまが不安を持つことなく、安心して当社株式を保有・売買できる環境を確保するためです。
基準を満たしていない流通株式時価総額については、グローバルな経済環境、当社の属する市場環境、投資動向をはじめとする外的な要因も影響します。
仮にプライム市場において経過措置中に基準を満たした場合でも、安定的・継続的に充足する状態が保てなかった場合、将来的に上場維持基準に抵触するリスクがあります。そのため、株主のみなさまが安心して株式を保有・売買できる環境を確保することが重要だと判断しました。
2つ目は、限られた経営資源を独自技術の開発と優秀な技術者の確保・維持・養成に集中して使用することにより、中長期的な企業価値向上を目指すためです。
近年では例のない速度で物価が上昇し、政府や経団連の賃上げの呼びかけもあることから、国内の平均賃金が上昇しています。今後、想定を超えた賃金上昇が起こる懸念もあります。当社では、急激な賃金上昇などの環境変化が起きた場合でも対応できるように、ビジネスモデルの転換を図っている最中です。
ただし、付加価値向上の時期と賃金上昇の時期に一時的なギャップが生じた場合は、当社にとって限られた経営資源を独自技術の開発と優秀な技術者の確保・維持・養成に集中させることが、中長期的な企業価値向上においては最善と考えています。
現時点で国内賃金の動向は不透明であり、想定を超える賃金上昇が起きた場合、一時的な収益性の低下、株価下落の懸念もあることから、スタンダード市場を選択することを決定しました。なお、スタンダード市場への移行日は10月20日となります。
業績の概要
業績の状況についてご説明します。当社は2023年2月1日に、連結子会社だった株式会社アビストH&Fを吸収合併し、連結から単体決算へ移行しています。本資料では2023年第1四半期までは連結、2023年第2四半期以降は単体の数値を記載していますので、前年比較は参考値としてご参照ください。
第3四半期の業績概要です。売上高は、需要が回復傾向にあることと効率的な人員配置が功を奏し、前年同期比1.2パーセントの増収となりました。営業利益は、主に人材採用費用の未消化により、前年同期比4.3パーセントの増益となりました。
課題としては、取引先の技術的な要求値が高まる傾向が続いている中、リーダー層の育成と獲得を行い、若手技術者を育成しながら要求値を満たす成果の出せる組織体制の構築が必要です。
また、近年では例のない速度で物価が上昇し、政府や経団連の賃上げの呼びかけもあることから、国内の平均賃金が上昇しています。加えて、企業の採用意欲が回復し、経験者採用を中心に人材確保が難化傾向にあるため、採用費も上昇傾向にあります。
これらの対策として、2022年4月より教育管理部門による新卒技術者教育の抜本的改革を行い、研修期間も2ヶ月から約1年に変更しました。同時に、既存技術者への研修も増設や見直しを行っています。教育成果を価格へ適正に反映していくべく、派遣先への価格転嫁を進めていきます。
また、経験者採用を含めた即戦力となる技術者の獲得にも力を入れており、リファラル採用などの新たな採用手法の導入や採用担当者の増員、企業広報活動を強化しています。
2023年9月期第3四半期は増収増益
業績数値です。2023年9月期第3四半期は、売上高が前年比プラス1.2パーセントの70億4,800万円、営業利益が前年比プラス4.3パーセントの5億5,500万円、経常利益が前年比マイナス7.2パーセントの5億6,400万円、当期純利益が前年比プラス141.2パーセントの6億300万円となりました。
経常利益は、前年同期に雇用調整助成金による営業外収益が計上されているため、前年比で減益となりました。当期純利益は、第2四半期に引き続き固定資産売却益の計上、連結子会社との税制適格合併にて継承した繰越欠損金による今期および来期以降の税額減額効果を反映した結果、法人税等調整額を計上し、大幅な増益となっています。
新卒を除く技術者稼働率は高稼働率を維持
技術者数と稼働率の推移です。スライドのオレンジ色の折れ線グラフは、新卒を含む稼働率を示しています。第15期以降、新型コロナウイルス流行の影響による稼働率の低下は改善傾向にあります。新卒技術者は第17期より研修内容の抜本的改革を行い、入社後約1年間の少人数チームによる実務研修を開始しました。
また、取引先の要求値の高まり、企業の採用意欲の回復により採用が難化傾向にあり、技術者数が横ばいになっている点は課題として捉えています。
一方、赤色の折れ線グラフは新卒者を除く稼働率を示しており、95パーセント以上と高稼働を維持しています。
派遣・請負別売上高、一人月売上高の推移
派遣・請負別売上高と一人月売上高の推移です。派遣においては、戦略的な人員配置転換により高稼働を維持しました。契約単価改善効果も寄与し、一人あたり売上高は61万8,000円と増加しました。
請負については、案件に対する取引先の要求値が年々上昇する中、若手技術者を育成しながら取引先の要求値に応える組織体制の構築を進めています。
第3四半期も第2四半期に引き続き受注案件を厳選したことや、一部派遣に切り替えたことから、請負の総売上高は減少しました。しかし、一人当たり売上高は74万8,000円と上昇しています。また、請負業務の売上高比率は全体の60パーセント弱と、引き続き高水準を維持しています。
アビストの目指すべき企業像とビジョン
今後の成長戦略についてご説明します。まず、アビストの目指すべき企業像とビジョンです。当社はデジタル技術を活用し、顧客の潜在ニーズに応えるソリューション提案型企業「デジタルソリューション企業」を目指します。今後、社会の情報化はますます進み、デジタル技術の活用機会は広がることが予想されます。
当社を取り巻く環境が変化する中で、「設計を基軸にしたデジタルソリューション」に焦点をしぼり、ものづくりの中でも当社のもっとも得意とする設計開発分野で新たなソリューションを提案していきます。あらゆるシーンで顧客のニーズに応えることで、「デジタルでものづくりに貢献する企業」を目指します。
中期経営計画概要(業績予測の推移)
中期経営計画の概要です。第18期通期計画については、期初に発表した会社計画に対し、大きな乖離はないと見ています。第19期以降も計画数値に変更はありません。修正が必要となる場合には速やかに公表します。
中期経営計画と戦略の整理
中期経営計画と戦略の整理です。これまで、当社は顕在化された顧客ニーズへの対応を強みとして発展してきました。しかし、顧客業界の国際競争の激化による顧客ニーズの高まりに対応すべく、技術者教育の拡充や経験者採用による技術力の底上げを行っています。これらの施策は引き続きブラッシュアップしていきます。
今般の中期経営計画ではこれらの動きをさらに発展させ、顧客の潜在的なニーズへのアプローチとして、ソリューション提案を収益のもう1つの柱にすべく、独自技術の開発を推進しています。また、当社も国際競争力をつけ、グローバルに展開していきます。
それらを推進する戦略として、2022年10月に技術研究機関のイノベーションセンターを設立しました。こちらでは、AIやARなどの先進技術開発を実施しています。また、技術教育の改革を順次進めており、当社の技術者が先進技術を学べる場を作っています。さらに、技術者のアイデアを実現する体制・仕組み作りも進めています。
新たな戦略的取り組み
中期経営計画では、4つの新たな戦略的取り組みを推進しています。1つ目が、既存事業のさらなる発展や付加価値の創造です。こちらは、軽量化技術の発展、ソフトウエアや電子部品開発および組込/制御ソフト開発の分野拡大、環境配慮設計の推進という3つの方向性を主として、事業を進めていきます。
2つ目が、解析事業の拡大です。当社独自の解析技術を開発することで、試作レスに資するソリューションを提供します。また将来的には、解析技術に当社が研究開発しているAR技術を組み合わせることで、より直感的に検証できるような技術を提供していきます。
3つ目が、顧客向けデジタルソリューションの複数展開です。後ほど開発の一例をご紹介しますが、設計に関する新しい支援技術を継続的に開発中です。
4つ目が、オフショア開発を含めたグローバル展開です。国際競争力が高まる中、優秀な技術者の採用や海外取引先への拡大を狙い、海外展開を推進していきます。
DXソリューション開発事例
デジタルソリューションの開発事例をご紹介します。当社は6月14日に、pluszero社と共同開発している設計開発自動化ソリューションについて発表しました。対象となる製造業における工程には、大きく分けて「設計工程」と、その設計内容を検証する「テスト工程」の2つがあります。
スライドの図の色には大きな意味があり、設計工程・テスト工程の下にある紺色の矢印は人間が行っている作業を示しています。オレンジ色の矢印はAEIが行っている作業で、赤色の矢印は生成AIが行っている作業です。現状では、CADデータや図面の設計、そのテストも人間が行っています。
そこで、第1段階としてAEIを導入することにより、テスト工程を自動化します。製造業界の各社はそれぞれ品質に関するテスト項目を持っていますが、誰がテストに臨んでも個人の知識に依存しないよう、テスト項目の記述を標準化していきます。この標準化の技術については、単体でもツールとして製造業向けに広く提供する予定です。
さらには、テスト項目の記述の一つひとつ、例えばCADデータが図面の中のどこに対応するかといったことをAEIが正確に理解し、その上で、それらのデータを用いてAEIが自動的にテストを行います。
その次の段階として、生成AIと組み合わせることにより、テストに適合する初期案の自動生成も実現させます。つまり、テストの自動化が高いレベルであればあるほど、そのテストに適合した設計工程の初期案を生成することが可能になるため、生産性を大きく向上させることができます。
DXソリューション開発事例
その他にも、断面図自動作成ツール、配光自動設計ツール、図面差分検知ツールなど、業務のさらなる自動化・効率化に資するソリューションを開発しています。
DXソリューション開発事例
また、設計分野に限らず、AI技術を活用したソリューションの開発も行っています。一例として、休退職予測ツールをご紹介します。
コロナ禍以後、働き方が大きく変わる中で、メンタル不調に対応する早期の社員フォロー、社員定着率の向上は今後も大きな課題だと考えています。休退職予測ツールは、社員の勤怠情報や労務情報、アンケートを元にAIが分析し、メンタル不調や退職への早期対処を支援するソリューションです。
これらのソリューションを社内で利用するだけでなく、社外への販売も行うことで、製造業に限らず全産業の生産性向上を目指していきます。
継続的・安定的な配当で株主還元
最後に、株主還元方針についてご説明します。当社は株主のみなさまに対する利益還元を経営の重要課題の1つとして位置づけ、継続的かつ安定的な配当を実施することを基本方針としています。
配当政策については、事業拡大のための設備投資などを目的とした内部留保の確保と、配当の安定的拡大を念頭におき、財政状態および利益水準を勘案した上で、当期純利益の35パーセント以上(配当性向35パーセント以上)を毎期配当していくことを原則としています。今期は、1株あたり102円の配当を計画しています。
アビストの株主優待制度
株主優待制度についてご説明します。株主のみなさまからの日頃のご支援に感謝の気持ちを示すとともに、当社の事業についてより理解を深めていただき、より多くの株主のみなさまに安定して株式を保有していただくことを目的として、株主優待制度を導入しています。
3月末日の株主のみなさまへは、6月より順次「浸みわたる水素水」を発送しています。9月末日の株主のみなさまへは、保有株式数に応じて「アビスト・プレミアム優待倶楽部」のポイントをスライドに記載のとおり進呈します。
以上、2023年9月期第3四半期決算についてご説明しました。ご視聴いただきありがとうございました。