IRにおけるSNS活用術

重松英氏(以下、重松):こんばんは。5月のIR向上委員会を始めたいと思います。司会の重松です。よろしくお願いいたします。

本日は「IRにおけるSNS活用術」ということで、ゲストスピーカーとしてnoteのCFOを務める鹿島さんにお越しいただいています。

鹿島幸裕氏(以下、鹿島):noteの鹿島です。よろしくお願いいたします。

重松:おなじみのFiNXの後藤さんにもお話ししていただきます。後藤さんは「Twitter」IRの黎明期から意欲的に取り組まれており、「市況かぶ全力2階建」デビューも果たしたということで、いろいろなお話を聞けるのではないかと思います。

後藤敏仁氏(以下、後藤):この会を主催しているFiNXの後藤です。よろしくお願いいたします。

IR向上委員会の長期ビジョン

重松:まず、IR向上委員会についてご説明します。長期ビジョンは、「IRをアップデートし 世界中の投資家から日本に投資マネーを」です。活動を始めてから、1年ほど経ちました。

活動背景

重松:活動背景です。IR向上委員会は、一般社団法人日本金融経済研究所の活動の一環として開催されています。日本の企業価値向上のために、企業の現場で再現可能なIRの在り方を提案し、普及させていくことが目的です。本日いらっしゃったみなさまと、いろいろな知見や経験を共有し、IRをより広めていこうと取り組んでいます。

後藤:少し補足します。同じような業種・業態・業績だったとしても、IRを積極的に行っており、IR担当者だけではなく、社長を含めた経営層がIRにコミットしている会社のほうが、時価総額は高いという傾向がいくつか見られます。

そのため、あらためてIRは大事だと認識し、しっかり広めていきたいと考えています。現在日本は、海外からも非常に注目されるマーケットになってきていますので、ここでしっかりチャンスを捉え、海外の方にもさらに日本に投資してもらえるようにしたいと思っています。

本題に入る前に...

重松:今回、会場には発行体の方々にお越しいただいており、オンラインでは投資家の方々にもご視聴いただいています。IR向上委員会の目的は発行体のIRの向上になりますので、基本的には発行体の方向けにお話しします。

投資家のみなさまには、「このようなことを考えてIRを行っているのか」と考えていただけたら幸いです。また、発行体の方々にとっては、投資家のみなさまの考え方を知ることは、非常に重要ですので、忌憚なくご意見いただければと思います。ただし、発行体の方々に迷惑をかけるのは忍びないため、炎上させるのは後藤さんか私だけでお願いします。

後藤:最初に言っておきますが、おそらく今回は投資のヒントになるお話は1ミリもないと思います。

重松:「こんなことを考えているのか」くらいのお話になると思います。

最近、SNSでのIR多くなってない?

重松:この回の発端は、「最近、SNSでのIRが多くなってない?」ということです。「Twitter」や「note」での発信が増えてきているかと思います。

SNS発信している発行体の数

重松:SNS発信している発行体の数を手計算で数えてみました。参考までに、本日会場にいらっしゃっている発行体のみなさまの中で、例えば「Twitter」で、会社の公式のアカウントやIR担当のアカウントから発信している方はどれくらいいらっしゃいますか? 

後藤:けっこういらっしゃいますね。

重松:半分くらいですね。やはり、このような場所に参加されている発行体は、SNSで発信している割合も多いのだろうと思います。「Twitter」を見ると50社くらいかと思っていたのですが、数えきれていなかっただけで、もしかしたらさらに多いのかもしれません。

2021年の春頃に「Twitter」でのIRが面白そうだと思っていましたが、当時目についたのは10社から20社くらいでした。昨年は非常に増えたという印象があります。私より後藤さんのほうが詳しいと思いますが、いかがですか?

後藤:昨年末くらいから増加傾向にあるとは思っていました。以前は「Twitter」で発信していること自体が珍しかったため、すぐに投資家への認知が獲得できた側面がありましたが、これくらい乱立してくると、今後は中身が重要視されるようになっていくというのは予想していたとおりです。

どんどん増えていますので、これから上場してくる人たちも先輩を参考にして、さらに増えるのではないかと思っています。そして、これは良いことだと考えています。

重松:「Twitter」はだいぶ盛んになってきましたが、「note」での発信も増えてきています。3月末にnoteとともに31社で「IR note マガジン」を立ち上げ、現在は34社になりました。これはけっこう新しい流れで、個人的には「note」でのIRはリスクも低いためおすすめです。

ツクルバという会社でIRを行っていた時、2021年9月に「note」で「TSUKURUBA IR通信」を始めました。おそらく先駆者はスマレジで、2020年1月頃から始めています。私が「TSUKURUBA IR通信」を開始した頃、「note」で発信しているところは10社もありませんでした。

3月末に「IR note マガジン」を立ち上げる前にも数えましたが、10数社ほどしか発信していませんでした。それが「IR note マガジン」をきっかけに、今少しずつ広がっている段階かと思います。

新しい試みを行うと目につくため、面白いのではないのかと思います。本日はいろいろな試みをご紹介したいと思います。

なぜ、IRでSNSを活用するのか?

重松:「なぜ、IRでSNSを活用するのか?」についてです。ここからお話しするのは、私の考えとなりますので、後藤さんや鹿島さん、会場のみなさまには突っ込みを入れていただきたいと思います。

まず、IRの目的です。IRとは「Investor Relations」の略です。つまり、投資家との関係性を構築していく営みを指しています。

関係性の構築には、双方向でのコミュニケーションが不可欠です。一方的な発信だけではなかなか理解は得られないし、双方向の関係性で自分自身をしっかりわかってもらう必要があります。

相手についての理解を深めつつ、自分の会社のこともわかってもらうというコミュニケーションの中で、やはりSNSは双方向性があり、交流の1つのきっかけになり得るため、かなり有力なツールではないかと思っています。

良い関係性をつくるといいことがあるのか?

重松:「良い関係性を作ると、どのような良いことがあるのか」についてです。SNSをやっていて良かったと思うことが3つあります。1つ目は、相手(顧客)がわかることです。発行体のIRからすると、投資家ですね。みなさまは機関投資家との1on1を行っていると思いますが、SNSでは個人投資家とも交流の機会ができます。

個人投資家というと、イナゴ投資家などの先入観をお持ちの方もいるかもしれませんが、実際に触れ合うと、そうではなく非常に勉強熱心で機関投資家の方々と遜色なく研究されている方が多いと感じます。SNSやリアルでの投資勉強会に行くと、人としての個人投資家と触れ合う機会が増えます。そうすることで、「このようなことを考えて投資しているのか」と、よりリアルに、具体的に知ることができるのです。

それが自社のエクイティストーリーや、「どのような伝え方をするとより伝わるか」など、フィードバックとして返ってくる効用があります。これは私が実感しているところです。

2つ目は、おそらく一番わかりやすいところとして、認知度の向上が挙げられます。「Twitter」は特に拡散力があるため、認知度が向上します。知ってもらわないと買ってもらえないため、流動性の向上につながるのではないかという期待感があると思います。

3つ目は、良いエクイティストーリーをしっかり作って認知度が高まれば、将来の期待やPERの向上につながっていくのではないかということです。良い関係性を作っていけばあり得るのではないかと思っています。

後藤:速攻性があるかと言われると、必ずしもそうではないと思っています。しかし、私も投資家の1人ですので、チャートが動いた時などに「何が起こったのか」と、SNS等を見にいきます。そこで情報が充実していればいるほど、安心感があります。

意味がわからない状態で動いていると、「一部の人だけが知っている情報で動いているのかな」「誰が仕掛けているのかな」と思ってしまうため、発行体側からの情報量が多いと非常に安心できますよね。

重松:そのため、やはり情報発信の交流のチャネルがあったほうがいいのではないかというのが、私だけでなく、おそらく後藤さんも考えていることだと思います。

SNS活用の具体的メリット

重松:SNS活用のより具体的なメリットは2つあります。まず、AISASです。私はマーケティングについては素人ですが、よく言われるフレームワークとして、まず認知・注意してもらい、興味・関心を促し、今のネット社会では「検索する」ことにつながり、その後、購入などの行動があり、「Twitter」や「Instagram」等で共有していただくのだと思います。

このようにマーケティングがどんどん広がっていくモデルのフレームワークがありますが、特に「Twitter」や「note」では認知と共有のところで非常にメリットがあると思っています。

「こんな良い銘柄があるよ」「こんな良いIRがあるよ」「この銘柄、ちょっと面白くない?」という話で認知を促すことや注意を引くことができますし、さらにそこから共有してもらうことにより、株価の売買につながっていくことがあります。

これには実証的な話があります。以前、ツクルバの株を買ってくれる理由についてリサーチしたところ、意外と口コミなどに影響されている方が多いです。「この人に勧められたから」など、リアルな人伝いもあると思いますし、「Twitter」などで広がり、そこで興味を持ってもらうこともあります。

その後、ホームページ等でいろいろな資料を見ていただくことが、売買の1つのきっかけになったら良いと思いますし、そこにつながりやすいと思います。

もう1つは、能動的な発信・通知が可能ということです。もちろん、みなさまは決算説明資料を東証等で開示していると思いますが、これはそこに見に来てもらうのを待っているかたちになります。

ただし、「Twitter」や「note」でフォロワーになっていただければ、こちらから発信するとポップアップで通知がいきます。それにより、見ていただくきっかけが1つできます。

そこに何かしらのタイミングでナーチャリングなどをしっかり行えば、「そういえばこの会社をウォッチしていたな」と思い出してもらえるきっかけになります。上場企業は3,800社以上ありますので、そのようなことを行わないと埋もれてしまいます。

そのような中で、しっかりフォロワーをつけてファンを作っていくと、思い出してもらえるきっかけができると思います。

また、リアルなところで言いますと、拡散力があればIRセミナーを自社で開催できます。50人、60人を集める規模のIRセミナーでも、誰かに集客や開催を頼むと数十万円かかります。しかし、自社でいろいろな投資家を集められれば、1回でも数十万円のコストカットができますので、けっこうリアルなメリットではないかと思います。

後藤:1つ付け加えてもよろしいでしょうか? ことあるごとによく言っているのですが、投資家のみなさまがあまりわからない世界で言いますと、決算説明資料を作るのは実はけっこう大変です。

直前まで数字が固まらなかったり、上がってこなかったり、「もっとこのようなメッセージが的確なのではないか?」など、非常に悩みながら作ります。とても頭が良い人と言うと語弊があるかもしれませんが、わりと高年収の人たちが一生懸命に作っています。

しかし、どれだけ見られているのかを調べると、あまり見られておらず愕然とします。そのため、少しでも多くの人に読んでいただきたいという想いが根っこにあります。SNSもそうですが、みんなで心血を注いで作った資料を1人でも多くの人に見てもらいたいという気持ちです。

重松:非常によくわかります。ギリギリになってハラハラしますよね。30分前をオーバーして、東証に怒られることもあります。東証のみなさま、いつもありがとうございます。

Twitter活用のメリット:情報フローとしての有用性

重松:ここからは「Twitter」活用のメリットとして、具体例を見ていきます。「note」との比較として見ていきたいと思いますが、「Twitter」は情報のフローとしての有用性が非常に高いです。

拡散力が大きく、タイムリーな発信ができ、双方向性があります。つまり、接触効果があるということです。接触効果とは、頻繁に触れ合っていると親近感が出てきて「良いな」と思ってもらえることです。

スライドにツイートを載せています。ツイートの下段をご覧いただくと、フリーアナリストの長谷川翔平さんがROBOT PAYMENTの決算説明資料を「極めて秀逸」と発信しています。

後藤:これは嬉しいですよね。

重松:嬉しいですね。この発言に対し、ROBOT PAYMENTのIR室長の新藤雅之さんが「ありがとうございます」と答えています。このようなコミュニケーションがあるのも良いですし、これにより本ツイートは拡散していきました。

おそらく、このような関係性があるからこのコメントができるし、拡散しやすいのだと思います。実際に決算説明資料や発表内容も良かったからだと思いますが、流動性や株価にも良かったですね。

後藤:長谷川さんから「わかりやすいですよね」というコメントがあったのでしょうか?

重松:長谷川さんからは、「ここまでしっかりと踏み込んで中期経営計画を出したのは非常にすばらしい」というお話でした。

後藤:社長に言ってもらえると嬉しいですよね。社長自体もなかなか何が正解かわからないため、やはり専門家に言っていただくと非常に嬉しいものです。

重松:このような双方向性のやりとりは、決算説明資料のブラッシュアップにもつながると思いますし、このような交流が増えていくと良いと思います。

Twitterの活用例①:無料で1.8万人にIRイベント告知

重松:他にも具体例を挙げていきます。こちらはスパイダープラスです。決算発表後の主なIRイベントの告知ですが、ツイートの下部をご覧いただくと1.8万件のインプレッションがあることがわかります。

後藤:1.8万件は多いですね。

重松:「Twitter」での発信をがんばると、無料で1.8万人にIRイベントを告知できるメリットがあるということです。

もちろんスパイダープラスの注目度が高いこともあるかもしれませんが、スパイダープラスの社長の伊藤謙自さんやCFOの藤原悠さんが常日頃からしっかりSNSで拡散や交流を行っています。その結果、このようなインプレッションにつながったのではないかと思います。

Twitterの活用例②:コラボ決算アフタートークで3000人以上が視聴

重松:Finatextホールディングスです。おもしろい取り組みで、投資家バーの経営者である上原聡さんとコラボ決算アフタートークをスペース上で行いました。上原さんもかなり認知されていますし、Finatextホールディングスの社長の林良太さんも非常に人気があるため、アフタートークは3,000人以上が聞いていました。

後藤:3,000人はすごいですね。

重松:これが無料です。このようなメリットがあり、なおかつ目に触れるだけでも2.8万件のインプレッションがありました。

Twitterの活用例③:IRセミナーQA公開で4.1万インプレッション

重松:こちらは、グッドスピードの松井靖幸さんです。非常に丁寧かつ真摯にSNS対応をされている方です。IRセミナーの質疑応答を「Twitter」上で公開し、4.1万件のインプレッションがありました。

後藤:私が「Twitter」を始めてから、1ヶ月後くらいに松井さんが始められたのですが、おそらく一度も炎上したことがないのではないかと思います。ディフェンス力も最高で、すばらしいです。

重松:私もとても尊敬しています。このような積み重ねがあると、良い拡散効果が得られるということですね。

Twitterの活用例④:Twitter拡散でUU120名超集客のIRセミナー開催

重松:こちらは私の現役時代の手前味噌な話ですが、4社合同でのIRセミナーをオンライン・オフラインで合わせて開催しました。4社合同のほうが人を集められるだろうということで開催しましたが、ユニークユーザーはオンライン・オフラインを合わせて120名以上となりました。

こちらは「Twitter」等で拡散した結果です。120名を集めるセミナーを外注すると数十万円かかるため、無料で実現できたところが非常に良かったと思います。

後藤:120名も集まるのは、すごいですよね。もしかすると、ある種のサービスをディスラプトしかけているのかと思い、業界関係者の方もヒヤヒヤしたかもしれません。

重松:1つお伝えしますと、こちらはログミーのIR Liveと連動して開催したため、同時中継とアーカイブ動画も作っていただきました。アーカイブ動画の再生回数も500回近くあったと思います。

note活用のメリット:情報アセットとしての有用性

重松:「Twitter」はやはり拡散力や訴求力が非常に高いということが、今までの例でおわかりいただけたかと思います。ここからは「note」のお話になります。

「note」については鹿島さんから後ほどご説明いただきますが、まずは私が思う「note」のメリットをお話しします。先ほど、「『Twitter』はフローとしてすごく有用だ」と言ったのですが、「note」は逆に情報をアセットとしてためていくのにとても良いと思っています。

会社のことをしっかり説明するには、適時開示や決算説明資料など、いろいろな媒体や方法がありますが、けっこう先例主義と言いますか、決まりのようなものがあります。例えば、決算説明資料のスライドは「格好良く作らなければ」「文字が多すぎると格好悪いし、読んでもらえない」という感覚があります。また、適時開示は堅い文章になるため、自由には書きづらいです。

そのような中で、「note」は新しい媒体で、UIも良く、自由に書きやすいところがあります。もちろん、いろいろなルールは守った上での話ですが、行間を埋める情報の発信が可能です。また、「『Twitter』のレスがいくつも連なるのは読みにくい」という投資家からの意見もあるため、重みのある発信をするには「note」が良いと思っています。

スライド右側の画像は、とある投資家の方からのコメントです。ランディックスが決算説明資料の解説記事を「note」に書いたことに対して、「これくらいくだけて書いてくれる『note』だと読む価値あり」という内容のツイートをしてくれています。要するに、行間を埋めるようなくだけた発信をするのに非常に向いているという感想をいただいています。

後藤:駄犬さんは本日の配信を見ていないと思いますが、まさかIR界隈で自分が取り上げられているとは思っていないですよね。

重松:このコメントは、すごく嬉しかったです。勝手に取り上げてしまったので、もしまずいことなどがあれば、私に言ってくださると幸いです。

後藤:有名な方ですよね。

重松:おっしゃるとおりです。「note」での発信には、このような効果があります。

noteの活用例①:決算資料解説

重松:どのような活用例があるかを具体的に見ていきます。よくあるのが決算説明資料の解説です。

決算説明資料もそれなりにわかりやすく、みなさまががんばって作っていると思いますし、決算説明会の書き起こしなども公開していると思います。その中で、少しメリハリをつけて「ここを見てほしい」という部分を強調したり、機関投資家と1on1した中で「ここの説明が足りていない」と感じたところを重点的に解説したりといったことが「note」ではできると思います。

noteの活用例②:会社説明資料解説

重松:決算説明資料の多くは決算にフォーカスしがちですよね。そうではなく、もう少し事業にフォーカスした説明を書いたほうが良いと思っています。スライドの画像は現役時代の手前味噌ではありますが、TAMの計算の過程を全部書いたものです。

いろいろな会社で「弊社のターゲット市場はこのような規模です」というのを計算して、見せていると思いますが、他社の資料を見ても、「どのような根拠で、どのような計算式で算出しているのかよくわからない」と思うことがよくありました。そこで、私は計算過程をすべて書き出すことにしました。

「根拠はここから引っ張ってきて、これをこう掛けて、こう割って、この数字を導き出した」と明示することで、機関投資家の方からも「わかりやすかった」と言っていただけましたし、機関投資家の方への追加の説明の手間が省けました。

その結果、1on1の時間も短縮させることができ、効率化を図ることもできます。このような記事がたまっていくことで、機関投資家の方に「もし良ければ、こちらを読んでください」とURLを送ることもできますので、決算説明資料の解説記事を作るのは効果的だと思っています。

noteの活用例③:自社サービスのメリット・ニーズの解説

重松:日本情報クリエイトの「note」では、自社サービスのメリットやニーズ、お客さまのどのようなペインをどう解消しているかなどをナラティブに語る記事を書いており、最近読んで「いいな」と思いました。このような部分は決算説明資料にも少しは書きますが、さらりと触れる程度になりがちで、厚くは書かないですよね。しかし、投資家にとっては知りたい部分で、それにもかかわらず知る機会があまりありません。そのため、このような話を書くのに「note」がすごく良いと個人的に思っています。

ここまで「note」について、私の視点で語ってみたのですが、どうですか? 鹿島さんから何か補足はありますか?

鹿島:重松さんはnoteを長くご活用いただいているので、すごく理解度がありますね。やはり「Twitter」は流れていく、フローのメディアで、「note」はまさにアセットとして使っていただくと良いと思います。

先ほど、駄犬さんの例でも話がありましたが、開示書類は格式張った表現になりがちで、読み手にとっても少し難しかったり、特に投資初心者の方には読みづらかったりします。しかし、「note」なら平易な文章で書けますし、記事として残っていきます。

例えば、「あの時、この企業はどのようなことを言っていたかな?」と振り返りたい時、何ヶ月にもわたって記事がたまっていれば、投資家の方にとっても一覧性が高くなり、見つけやすいと思います。そのため、ご紹介いただいた事例はベストプラクティスだと思っています。

重松:ありがとうございます。ここまでは、私たちから見た「Twitter」や「note」の効果的な活用法をお話ししてきました。一方、投資家のみなさまは「Twitter」や「note」の活用についてどう思っているのでしょうか? アンケート結果を基にご説明していきます。

実際、Twitter活用の投資家側からの評価は?

重松:調査対象が31人と多くはないのですが、78パーセントが「Twitter」活用をプラス評価しています。マイナス評価は13パーセントとなっており、多くの方がプラス評価していることがわかります。

Twitterで発信して欲しい情報は?

重松:どのような情報を「Twitter」で発信してほしいかを聞いたところ、「IRイベント開催情報」がダントツでトップでした。このような告知は拡散力もありますし、「Twitter」で知りやすいですよね。

そして、意外にも「決算説明資料等の解説」が2位でしたが、けっこう長いスレッドになってしまいそうな気はします。「決算発表スケジュール」も人気のようです。このように「Twitter」でいろいろな情報発信をすることに対しては、ポジティブな反応が多い印象です。

実際、note活用の投資家側からの評価は?

重松:「note」についても同様にアンケートを取りました。プラス評価が65パーセントで、マイナス評価については9パーセントと「Twitter」より少ない結果です。ある意味、保守的に運用しやすいのが「note」なのだと感じました。

noteで発信して欲しい情報は?

重松:どのような情報を「note」で発信してほしいかも聞きました。スライドでは、先ほどの「Twitter」のグラフと同じ並びにしているのですが、やはり「note」だと発信してほしい情報が「Twitter」とは違うことがわかります。

「決算説明資料や開示の解説」が一番多くなっており、厚みを持った解説記事を「note」で書いてほしいという要望があるようです。2位は「業界情報(市況データ等)」で、やはりそのあたりのことを書くのが良さそうです。

鹿島:「役員紹介・インタビュー」「従業員紹介・インタビュー」は「Twitter」と比べると、相対的に「note」での需要が高いのですね。

重松:「Twitter」だと字数制限があるため、紹介しづらいのかもしれません。「note」のほうが支持は高いですね。

鹿島:個人投資家の方は、社長や幹部、一般の従業員も含めて、「どのような人が運営している会社なんだろう?」ということを知りたがりますよね。投資家ミーティングで実際にそのような声を聞きますので、このようなところもコンテンツとして出てくるとおもしろいと思います。

後藤:文章そのものにキャラクターが出ますよね。

重松:出ますね。

後藤:「なんかいい人そうだな」「お堅めな人なのかな」といった人柄が文章ににじみ出るため、そこに着目してもおもしろいですよね。

重松:適時開示では、キャラクターは出せないですからね。

後藤:出しにくいと思います。

重松:そのような意味でも、「note」はおもしろいと思います。適時開示でキャラクターを出している方がいると、「おっ、攻めたな」と思いますからね。

noteの更新頻度はどれくらいが望ましいか?

重松:「note」については、より詳しくアンケートを取っています。更新頻度について、一番多かったのは「月に1回」で、52パーセントでした。中には、「四半期に1回」「2ヶ月に1回」でも良いという投資家の方もいます。この結果を見ると、少なくとも月1回更新すれば、7割近い投資家の要望を拾えますので、意外とハードルは高くない気がします。

鹿島:先ほどからお伝えしているとおり「note」はアセットとしてたまっていくのが特徴です。IRに限らず、「note」を一度始めてしまうと「どんどん更新しなくちゃ」と考える方が多いのですが、今回のアンケートでも「四半期に1回」「2ヶ月に1回」と回答している投資家の方もいるように、頻繁に更新しなければいけないわけではありません。自分のペースで思いついた時に更新するのが良いと思っています。

仮に四半期に1回だとしても、1年続ければ4件の記事がたまります。それだけでも十分な発信だと思いますし、ぜひ気軽に取り組んでいただきたいと思います。

重松:おっしゃるとおり、アンケート結果を見て、ハードルはそこまで高く設けなくても良いと思いました。

後藤:1つの使い方として、私からも提案させてください。決算説明資料はだいたいパート分けされていますよね。例えば、ハイライト系、事業ごとのセグメント系、ファイナンスアクションをしているポイントなどのパートがある中で、みなさまが気になっている部分をシングルカットしていくのもおすすめです。

そうすると、記事のPVによって「ハイライトよりもこちらのほうが読まれている」といったことがわかります。私の経験上では、適時開示はPVが取れるのですが、中でもQ&Aコンテンツが人気になることが多いのです。決算説明資料の次くらいに来ることもあります。

それを見ていると、「このようなところをみんな気にしているんだな」となんとなくわかって、次の開示のアップデートにつながります。更新頻度は四半期に1回でも良いのですが、場合によっては少し切り口を変えて、テーマごとに打ち出していくのもおもしろいと思います。

重松:実際、今回のアンケートでも「よくある質問と回答」は32パーセントと、それなりに人気コンテンツのようですね。

noteに書かれている文章の量はどれくらいが望ましいか?

重松:「note」の記事1本あたりの文字数の目安について聞いたところ、2,500文字から3,500文字と答えた方が19パーセントでした。これは7分以内に読めるくらいの分量です。そして、約6割が長くて2,500文字、5分以内と回答していますので、むしろ長くないほうが良いのかもしれません。

鹿島:そうですね。IRに限らず「note」で発信している方は、「超大作を作らなければ」という気持ちになることが多いみたいです。しかし、長文だと読むのに時間がかかりますし、ここで言う3,500文字以下で、さくっと読めるほうが良いですよね。

むしろ、1,500文字くらい、つまりツイート10件くらいの文量でも、読む側としては「すごく少ないな」という印象は持たないと思います。そのため、超大作を目指すのではなくて、コツコツ発信するほうが良いと思っています。

重松:接触効果もあります。私が現役時代に「note」の記事を書いていた時は、1本に2時間もかかっていませんでした。なぜかと言うと、みなさまがIRで話していることを、そのまま書けば良いからです。そんなに肩肘張らずとも「note」で発信することはできると思います。

投資家アンケートでのコメント

重松:投資家の方からコメントもいただいています。やはりネガティブなコメントも来ています。

「Twitterはマイナス面しかないやめた方が良い」「SNSでは事実だけを述べて感情は不要」「公私を分けて発信して欲しい」「実名・顔出しは非常に危険」などの意見が寄せられました。このようなネガティブなコメントも踏まえた上で、必要があればしっかり取り組むことが重要ですね。

もちろんポジティブなコメントもありましたし、要望として「業績にかかわらず、発信頻度を変えずにコンスタントに発信して欲しい」「​​SNSという媒体を用いて情報発信をする意義を明確にして始めて欲しい」という声もありました。

また、かなりポジティブだと思ったのは、「Twitterは株クラしか見ないのでInstagramやTikTokでIRすべき」という意見です。私も「TikTok」でのIRにチャレンジしてみたいと思いつつも、結局現役時代はできなかったのですが、おもしろいと思いました。

“SNSでIR”をどう考えるべきか?

重松:このアンケート結果を踏まえて、SNSでのIRをどのように考えるべきなのでしょうか? 私の個人的な意見としては、「そもそも、なぜSNSをやりたいのか?」という話に帰着すると思っています。例えば、何が課題で、その課題に対してSNSでのIRは効果的なのか、他に取り得る手段はないのかを考え、さらにリスクとリターンも踏まえた上で、やるかやらないか決めれば良いのではないかと思います。

スライドの一番下に書いてあるとおり、「うちの会社、ぜんぜん知られていないから認知拡大が必要だな」「でもIR予算がない」という状況に加え、「適切なSNS運用もなんとか可能だ」と思えるのであれば、SNS発信はありなのではないかと考えています。

みなさま、このあたりについてコメントはありますか?

鹿島:おっしゃるとおりだと思います。

重松:とりあえずやってみたら良いのではないかと思っています。

“SNSでIR”を始めるには?

重松:それでは、SNSでIRを始めるにはどうすれば良いのでしょうか? 2つのパターンをご紹介したいと思います。

1つ目は、ラディカルパターンです。認知拡大させるなら、企業の公式アカウントではなく、CFO・IR担当者個人の「Twitter」が良いと思います。個人のほうが色を出せるし、より拡散しやすいからです。

こちらのパターンの場合、宣伝っぽいのはあまり好まれないため、IR情報のみならず、投資家の役に立つ情報を発信することが大事だと思っています。スライド右側に、グッドスピードの松井さんの例を記載しました。松井さんは、日本自動車販売協会連合会の中古自動車の登録台数などを毎月ツイートしているのですね。

このような業界情報や市況情報、会社として何を見ているかというのは、投資家がIRや株の動向を見る時にとても参考になります。このようにタメになる情報を流すと、「この人を見るといいんだな」と思ってもらえますし、定期的につぶやくネタができるからすごく良いですよね。

2つ目は、リアルでのつながりを活かすパターンです。特にCFO・IR担当者にとっては大事なのですが、いきなり「Twitter」を始めても、最初は絡む人がいなかったり、拡散してくれる人、コメントしてくれる人がいなかったりします。そうするとけっこう寂しいし、モチベーションもなかなか保てません。

私が「Twitter」をやっていて楽しいと思うのは、いろいろな人と交流できることです。「Twitter」でやりとして、実際にリアルで会って交流するのも楽しいですよね。

だから、もし始めるのであれば、IR向上委員会などですでにSNSを活用している人もいますので、そのような人と交流して、いろいろな知見をシェアし合いながら、リアルでの交流とオンラインでの交流をどちらも深めていくと、楽しいし、効果的だと思っています。

後藤:決して内輪で盛り上がりたいわけではないのですが、SNSでIRをしている方はみなさまプロですよね。プロから見て「これはすごい」と感じるものは、言ったら良いと思います。

本日もROBOT PAYMENTが、話題の信託型SOに関して「うちは影響ありません」と素早くツイートしていました。鹿島さんもツイートしていましたが、「早いな、すごいな」と思って、私も感嘆のツイートをしたのですが、これは決して内輪でじゃれているつもりはなくて、プロから見て「すごい」と思ったということです。ただただリスペクトですよ。

お互いにもっと「この角度ですごいよね」と言い合えるようになると、投資家サイドではなく、IR職人としてのプロ目線の意見が聞けておもしろいと思います。そのため、もう少しみなさまと絡みたいと思っています。

重松:確かにそのとおりですね。

鹿島:昨日、信託型SOを導入している企業には追加の税負担が会計上発生するのではないかという話が出ていて、それを受けて、「ロボペイは信託型SOを実施していないので影響はありません」とROBOT PAYMENTの新藤さんが今朝ツイートしていました。それを後藤さんがリツイートしていたのを見て、「私も発信しないとな」と思いました。

当社も信託型SOを導入していなかったので影響はないのですが、外から見て不安な方はいると思うので、「このようなことでも発信したほうがいいんだな」と気づかされました。前場が終わって、時間があったため、「noteも信託型SOを導入していないので影響はありません」とツイートすることができました。

その影響かどうかはわからないのですが、朝に少し下がっていた株価が、後場になったら少し上がっていたのです。やはり発信できることは、「Twitter」や「note」でどんどん発信したほうが良いと感じました。

重松:そのような各社の発信を見ることで、いろいろな気付きが得られますし、切磋琢磨できますよね。

SNSでIRをする際に心がけたいのは、タメになるツイートと自社IR情報とのバランスを考えることです。また、「Twitter」のアルゴリズムでは、コンスタントにつぶやいているほうが拡散しやすく、インプレッションが増えるみたいですので、毎日続けることも大事です。

低リスクで“SNSでIR”を始める方法

重松:個人で「Twitter」を始めるのは「けっこう大変じゃない?」「リスクもあるんじゃない?」と思った方もいらっしゃると思いますし、私もそう思います。

そこで、低リスクでSNSでのIRを始める方法を私なりに考えてみました。個人的なおすすめは「IR note マガジン」と「企業公式Twitter」の併用です。先ほどと真逆の話になるのですが、これには2つの理由があります。

1つ目は、「IR note マガジン」に加入すると、フォロワーを確保した状態から開始できるためです。後ほど具体的な数字を出しますが、「IR note マガジン」というマガジンに対するフォロワーがすでにいて、そこに記事を載せれば、そのフォロワーに通知されます。そのため、ゼロの状態からがんばってフォロワーを集める必要がありません。

2つ目は、「企業公式Twitter」で「『note』の記事を書きました」などとツイートすることで、情報を拡散できるためです。

正直な話をすると、私が発起人だったこともあるのですが、「IR note マガジン」で発信している企業を応援したいと思っています。私は「IR note マガジン」で記事を出した企業については積極的にリツイートしていますので、そのような情報を「企業公式Twitter」などで発信してくれると、拡散しやすいです。

そのため、「note」だけではなく「企業公式Twitter」もあったほうが、拡散してもらえるきっかけになると思います。「企業公式Twitter」ならば個人の意見を書く必要はありませんので、この2つがおそらく一番低リスクで拡散でき、SNSを始めるのに良いのではないか、というのが今の私の個人的な意見です。

「note」の話題に移ったところで、ここからは鹿島さんに「note」についてお話ししていただきたいと思います。

IR活動におけるnoteの活用について

鹿島:あらためまして、noteの鹿島です。今、「Twitter」と「note」の合わせ技のようなお話をしていただきましたが、私からは「note」について、もちろんIR以外でも多く使われていますので、そこの知見も踏まえながら、IRにどのように活かしていけるかをシェアさせていただければと思います。

上場企業のIR記事を配信する「IR note マガジン」

鹿島:今、重松さんからご紹介があった「IR note マガジン」は3月にリリースされました。当時は31社でスタートし、昨日1社増えて、足元では34社が参加しているプラットフォームとなっています。

企業からは「お金が掛かるのですか?」とよく聞かれますが、無料で参加することができます。無料で「note」アカウントを開設していただければ、このマガジンにも入ることができますので、ぜひご検討いただけたらと思っています。昨日時点で、933名のフォロワーがいます。

重松:もうすぐ1,000名ですよ。

後藤:多いですね。すばらしいです。

鹿島:したがって、こちらに加入すると自動的に900名以上のフォロワーにアプローチすることができますので、ゼロから始めるよりも、かなり良いスタートになります。

重松:私がツクルバで「note」を始めたのが2021年9月ですので、もう1年半くらい経ちます。私の「Twitter」のフォロワーは4,800人くらいですが、非常にがんばって拡散していたツクルバの「note」のフォロワーは200名ほどです。

フォロワー数が900名いる状態で始められることがいかにすばらしいか、この数からわかっていただけると思います。

「IR note マガジン」参画企業

鹿島:現在の参画企業数は34社です。プライム、スタンダード、グロースと、市場区分に関係なく参加可能ですので「ぜひ、参加したい」という会社がいらっしゃいましたら、お声掛けいただければ幸いです。

また、本日はオンラインで見ている個人投資家の方もいらっしゃるかもしれません。こちらをフォローしていただきますと、IRに積極的な企業の情報発信が自然に飛び込んできますので、投資にも役立てていただけると思います。

IR note マガジンの効果①:PV数の向上

鹿島:「IR note マガジン」の効果についてです。3月23日にリリースしてまだ2ヶ月くらいしか経っていませんので、サンプルとしては少ないのですが、今のところの効果を先出しでお伝えできればと思っています。

まずはPV数、すなわち、見られた数です。1記事あたりの平均PV数は「IR note マガジン」設立前に比べて2倍以上の、2.35倍になりました。30社以上の会社が共同で配信することで、今まで自社のことを知らなかった投資家の方にもアプローチできているのではないかと思っています。

重松:こちらは「IR note マガジン」を始める前から発信している企業の中での比較です。「IR note マガジン」を始める時に新しく「note」を始めた企業については、省いています。

IR note マガジンの効果②:株価に一定の効果?

鹿島:「IR note マガジン」の株価への影響について、スライドのグラフは定量的なデータでおもしろいと思いましたのでご紹介します。こちらは、まだまだサンプル数としては少ないですが、IRのアクティビティの可視化ツールの提供やIR支援をされているFiguroutにご協力いただいてプロットしたグラフです。

赤線が、2023年2月を1とした時の「IR note マガジン」参画企業の株価の動きです。青線は「IR note マガジン」に参加している企業のベンチマーク企業の動きで、「バフェット・コード」の類似企業から機械的に取ってきたため、恣意的なものではありません。また、緑線でグロース指数をプロットしています。

「IR note マガジン」のリリース日である3月23日以前の赤線と青線を見ると、株価が非常に連動していることがわかります。ベンチマーク企業のため、ある意味当然ではあります。それが、3月23日の「IR note マガジン」のリリース後には3週間ほど赤線の参画企業の株価がアウトパフォームしています。こちらはやはり、「IR note マガジン」に有意な効果が出ているのだと思っています。

その後、青線が追いついてきて同じような動きをしています。こちらはおそらく、ベンチマーク企業のためファンダメンタルがもともと類似していますので、だんだんと株価の動きが収束してきているところだと思います。

「IR note マガジン」のリリースにより注目を浴びたあとはベンチマークを上回っていますが、時間が経つと終息していきました。これの意味するところは、継続的に「IR note マガジン」などで注目を集めるような山を作っていくと、例えば3ヶ月や6ヶ月、1年で見た時の平均PERがどんどん上がっていき、ベンチマークに対してマルチプルがアウトパフォームすることになるため、現在の印象としては株価に対しての効果はあると思っています。

重松:やはり、露出には効果があったということですよね。そして、それをしっかり続けていくことが大事だという示唆があると思いました。

IR note マガジンの効果③:出来高とnote PV数に相関

鹿島:「次に、じゃあ出来高はどうなっているの?」というところです。グラフの赤色が「IR note マガジン」参画企業の出来高、青色が「note」のPVです。下のグラフを見ると、まず3月23日に山があり、その後はおそらく決算発表があった4月15日の前くらいに山ができています。

上のグラフを見ると山がいくつかありますが、「IR note マガジン」を始める前、3月前半あたりの山については個社の話で、この時はおそらくトビラシステムズの出来高が一時的に増えたため大きく上がっていますが、その後に1回下がっています。3月23日のPVが増えている時に出来高も増えており、また4月15日近辺もPVが増え、出来高が増えています。

「note」が見られたから出来高が増えたのか、それとも何か出来高が増えるような事象があって注目を集めたために「なんだなんだ?」と思い「note」に来たのか、どちらの因果関係かはわかりませんが、少なくとも相関はしていると捉えることができます。

仮に出来高が増えたから「note」を見に来るとしても、受け皿があること自体に意味があると思いますので、こちらもすごく良いデータだと思っています。

重松:出来高が増えるタイミングでしっかり見てもらえるということですね。

鹿島:おっしゃるとおりです。

重松:届けたいメッセージを「note」に書いておけば、出来高が増えて注目されているタイミングで、企業からのメッセージを届けられるチャネルになるのではないかという示唆がありそうだと思いました。

noteでより効果的・効率的に発信するために①

鹿島:ここからは、「note」でIR発信する場合のコツをご紹介します。まず、「note」自体は総合的なプラットフォームですので、いろいろな会社に使っていただいています。IR以外でも、採用広報、BtoCおよびBtoBのブランディングなど、いろいろな目的で使われています。

投資家にIR目的でアプローチすることはもちろん重要ですが、その前段階、「今投資をしたい」というモードではない方でも、ブランディング等に関するnoteの発信を通じてその企業の情報発信に触れていることは、先ほど重松さんが言っていたように接触効果として非常に意義があります。

投資初心者の方が株やNISAに興味を持ち始めた時、よくあるアドバイスに「自分のよく知っている企業から買いましょう」というものがあると思います。まず自社やサービスを知ってもらうためにも、「note」を活用し、直接的なIR以外でもいろいろな目的や文脈で発信することは効果が高いと思います。

接触頻度に関する事例

鹿島:接触頻度に関する事例をご紹介します。スライド左側のランディックスでは、代表の方のメッセージを発信しています。また、タイトルに「ランディックス社長、岡田和也ってどんな人?」とありますが、先ほどもお話ししたとおり、経営者がどのような人なのかは個人投資家が重視するところですので、人柄について書くことはIRにも直接意味があると思います。

スライド中央のマクロミルはIR事例ではありませんが、顧客にインタビューをして「顧客からするとマクロミルはこれくらい助かる」「こんなところで支援していただいた」というお話をシェアしています。また、キリングループでは、製品開発のバックグラウンドストーリーや裏話を「note」でシェアしていただいています。

企業にとって意識しなければいけないのは「今は情報が溢れているので、企業からどんどん発信しないと、顧客からは取りに来てもらえない」ということです。

例えば物を売るビジネスの場合、競合製品がたくさんある棚に並ぶと、性能やコスパは良いか、価格は安いかなど、スペックで比較することになります。株についても同様で、市場に4,000社くらいある株を比べる場合、PERやPBRがどうなのかという指標で判断されます。

これらの指標はファンダメンタルとしてもちろん重要ですが、それ以外に「このような想いを持って、このようなミッションを掲げて、事業活動をしているのだ」ということを自分から発信していくと、自社や製品のブランディングにつながり、ファンが増え、投資家にも興味を持っていただけて、株の購入にもつながるんじゃないかと思います。

noteにおける情報発信の効果

鹿島:「note」における情報発信の効果ということで、スライドにはいろいろな企業の声をまとめています。先ほど重松さんがおっしゃっていた「インタラクティブにコミュニケーションできます」というところや、こちらはIRコストが下がったと言い換えてもいいと思いますが「PRコストが下がった」などのお声をいただいています。

また、「SNSで話題になっている」「求職者や社員などの顧客以外にも『note』が届いてエンゲージメントが高まっている」などのお声もあり、これらの要素も重要だと思っています。

こちらはIRの事例ではありませんが、ある企業で「note」を担当していた方が、「note」発信で非常に注目を集めたことで、社内のいろいろな同僚や面識がなかった人からも認知され、その方の人事上の評価が上がったというお声をいただいたこともあります。

さらに、「オウンドメディアより発信数や閲覧数が伸びた」「いろいろなステークホルダーにアプローチできた」「仕事の依頼が来た」「日経新聞に取り上げられた」という大きな効果も上がっています。

重松:私も「note」でのIRを通じて、日経新聞に2回取り上げていただきました。

鹿島:それはすごいですね。

後藤:さすがです。

重松:これは笑い話ですが、2回目は鹿島さんの名前は載っていましたが、私の名前は単にIR担当者となっていましたね。いずれにせよ、新しいことに取り組むのは勇気がいりますが、そのような効果はあると思います。

noteでより効果的・効率的に発信するために②

鹿島:「note」自体は無料で使っていただけますが、「note pro」という有料機能もあります。この機能を使うとどのような効果があるかについて、ご説明します。

スライドにはプレイドの事例を記載しています。プレイドは「IR note マガジン」にも参加していただいていますが、「note pro」を使うと、自社のページにいろいろな任意の「note」をピックして掲載することができます。

プレイドの社員の中には、個人アカウントで仕事やプライベートのことを書いている方がいます。「note pro」を使うと、プレイドの企業アカウントではなく、社員の個人アカウントから、仕事について書いた記事の中で良いものをピックして、企業アカウントのページに載せることができます。

これの良いところは、本当にいろいろな人の「note」を自分たちのコンテンツとして取り込むことができるところです。

「『note』を更新しなくてはいけない」「どのくらいの頻度で更新すればよいのか」という悩みに対し、この機能を使えば、社員が個人で書いている「note」をピックすればいいため、自然とコンテンツが積み上がっていき、IR担当者の負担もかなり軽減できます。このような使い方をされている企業もあるということでご紹介しました。

note proでできること

鹿島:「note pro」でできることについて、こちらは少し宣伝っぽくなってしまうため簡単にご説明します。先ほどお話しした記事のピック機能や、専門のカスタマーサクセスチームからの支援、デザインのカスタマイズなど、さまざまな効果があります。

こちらは有料のサービスのため、もしご興味のある方は私に言っていただければご紹介します。

note AIアシスタント(β)

鹿島:本日のテーマであるSNSとのつながりに関しては、2月に「note AIアシスタント(β)」をリリースしました。

こちらは、今年すごく話題になっている「ChatGPT」を「note」にも組み込むことで、AIが「note」のコンテンツの作成支援をしてくれる機能です。一部有料の機能もありますが、無料で使うこともできるので、まさに「note」で発信する時に使っていただければと思っています。

話が逸れますが、「ChatGPT」はプロンプトがすごく重要だと思っており、指示を出さないと適切な内容が返ってきません。こちらについては、あらかじめ「note」でプロンプトを作っています。

そのため、依頼する側としては、例えばスライド中央の「2.表現をととのえる」では書き換えを提案してくれますが、「エモくしてくれ」という指示を出すと、文章がエモくなって返ってくるという機能があります。このような機能も無料ですので、どんどん使っていただければと思っています。

重松:そうしますと「決算説明会の書き起こしを要約してください」と指示を出すと、できてしまうということですか?

鹿島:そのようなこともできます。要約機能については、「3.文章をまとめる」で可能ですし、SNSという文脈では「SNS投稿用にまとめる」というプロンプトもあります。先ほど重松さんから「『Twitter』も『note』もやるのがおすすめです」というお話をうかがいましたが、私のおすすめとしても、「note」だけではもったいないので、せっかく書いたら「Twitter」でもどんどん発信して相乗効果を出してほしいと思っています。

「note」を書き、このAIアシスタントでSNS投稿用に140文字以内にまとめて、そちらをポンと投稿すれば、とても簡単に発信されていきます。これはまさに、SNSである「Twitter」と「note」の相互作用というところでおすすめです。

重松:PRなどの界隈ではすでに前例がありますが、IRで「この記事はAIが書きました」と言うだけで注目してもらえる感じがあります。「AIで書きました」と表記されているサービスはあるのでしょうか?

まだあまり多くないと思いますが、そちらに取り組むのもおもしろいと思います。

鹿島:IRでというのもおもしろいですね。

後藤:フランクにいけますので、英文などもいいですよね。

重松:確かに、「note」は日本語ばかりで、英語で書いている人はあまりいませんので、その部分も「『ChatGPT』を使ってとりあえずやってみた」というのは、ありかもしれません。

最後に少し、“SNS炎上防止法”

重松:最後に「時間が余ったら言おうかな」と思っていたお話をします。上場企業であれば、各社にSNSの運用ルールがあると思いますが、SNSを炎上させないために必要な理解について、スライドに記載しています。私が意外と大事だと思うのは、飲んだら投稿しないということです。

後藤:反応してしまうことがありますので、「飲んだら見ない」ほうがいいかもしれませんね。

重松:もう1回聞きたいのですが、「note」の有料機能ではAIで炎上をチェックしてくれるのでしょうか?

鹿島:先ほどお話ししたAIアシスタントは無料の使える機能も多いですが、法人のみなさまが気にされている炎上については、「note pro」という有料機能を契約すると炎上をチェックしてくれますので非常に安心です。

重松:それはおもしろいですね。

後藤:もっと早くほしかったです。

重松:まあ、炎上も時間が経てば勲章みたいなものですよね。

投資家のみなさまにお願い

重松:最後に、今見ていただいている投資家のみなさまへお願いがあります。私もそうですが、いろいろなSNSでIRを発信する時は意外とビクビクしながら行っていますので、「あたたかく応援していただけると助かります」とお伝えしたいです。

「Twitter」は暴力増幅装置の側面がありますので、「リアルでは言わないだろうな」ということを言ってしまう方も多いです。しかし、リアルで実名を使って面前で言えないことは言わないでいただけるとありがたいです。

そして、スライド下部に記載の「今度の決算いいんですか?」「最近調子はいいですか?」ということもよく聞かれますが、言えるわけがありませんので、質問してもあまり意味がないと思います。このようなことは、聞かないでいただけるとありがたいです。

本日のIR向上委員会は以上で終了となります。どうもありがとうございました。