目次

小川哲史氏:太平洋工業代表取締役社長の小川でございます。本日はお忙しい中、ご参加いただきありがとうございます。

本日は「2022年度業績」ならびに「2023年度通期予想」についてご説明したのち、中長期経営構想「Beyond the OCEAN」、中期経営計画「NEXUS-26」についてご説明させていただきます。

1-1 2022年度 連結業績

それでは、連結業績をご説明します。第4四半期の業績は、自動車生産の回復に伴う販売物量の増加により、売上高は前期比7パーセント増の478億円、営業利益は21パーセント増の36億円となりました。

通期の売上高は1,912億円、営業利益は92億円、経常利益は132億円、当期純利益は93億円となりました。

1-2 連結売上高 増減要因

通期の売上高増減要因は、第4四半期からプレス鋼材の有償受給化による減収などがありましたが、円安基調の継続による為替のプラス影響、プレス鋼材価格などの上昇に伴う材料建値の影響、第4四半期以降、半導体不足の状況が緩和し、自動車生産が回復してきたことによる販売物量増加により1,912億円となりました。

1-3 連結営業利益 増減要因

営業利益は、販売価格の影響や、材料価格、エネルギー価格の上昇による経費の増加影響、労務費などコスト負担の増加が大きく、92億円となりました。

1-4 連結事業別セグメント

事業別セグメントをご説明します。プレス・樹脂事業の売上高は、円安影響、材料建値、物量増加により1,368億円、営業利益は、販売物量増加の効果はありますが、第3四半期までのアメリカ事業体での経費・労務費等、コスト増加により前期並みの49億円となりました。

バルブ事業の売上高は、円安影響が大きく542億円、営業利益は、材料価格等のコストアップを補うため価格転嫁を推進しましたが、42億円となりました。

1-5 連結地域別セグメント

地域別セグメントでご説明します。日本の売上高は、第3四半期までの材料建値アップによる増収影響、第4四半期からのプレス鋼材有償受給化による減収影響などにより、706億円となりました。営業利益は、材料・エネルギー価格などのコストアップにより、49億円となりました。

欧米の売上高は、円安による為替換算の影響もあり781億円、営業利益は、第2四半期から第3四半期にかけてのアメリカ事業体における収益悪化を第4四半期でカバーし、通期では1億円の赤字にとどめることができました。

アジアの売上高は、販売物量の増加により425億円、営業利益は36億円となりました。

1-6 四半期別 連結業績推移

売上高と営業利益の四半期別推移です。第4四半期は販売物量が増加しましたが、プレス鋼材の有償受給化により、売上は減少しました。利益面では、物量増加と収益改善により、第3四半期を上回りました。

2-1 2023年度 連結業績予想

次に、「2023年度通期予想」について、ご説明します。通期の売上高は1,850億円を見込んでいます。2022年度の第4四半期からプレス鋼材の有償受給化により、200億円程度の売上減少影響がありますが、販売物量は回復すると想定しています。

営業利益は100億円、経常利益は130億円、当期純利益は90億円と予想しています。

2-2 通期 連結売上高 増減要因

通期の売上高は、販売物量は増加するものの、プレス鋼材の有償受給化や為替影響、販売価格の低下により、前期の1,912億円から62億円減収の1,850億円を予想しています。

2-3 通期 連結営業利益 増減要因

通期の営業利益は、前期より7億円増益の100億円を予想しています。生産回復が進むと想定されますので、改善を進め、着実に収益確保に取り組んでいきたいと思います。

2-4 通期 連結事業別セグメント

通期の事業別予想です。プレス・樹脂事業の売上高は、プレス鋼材の有償受給化の影響による減収を含み1,315億円、営業利益は70億円と予想しています。

バルブ事業の売上高は530億円、営業利益は30億円と予想しています。

2-5 通期 連結地域別セグメント

通期の地域別予想です。日本の売上高は685億円、営業利益は40億円、欧米の売上高は747億円、営業利益は19億円、アジアの売上高は418億円、営業利益は33億円と予想しています。

2-6 連結設備投資・減価償却費

2022年度の設備投資は、通常の新製品立上げに伴う生産準備の他、将来の成長のための投資として、大垣地区の新工場建設に加え、日本・アメリカ・中国での増産に向けたプレス・溶接設備導入などを進めました。

2022年度実績は、設備投資は229億円、減価償却費は、前期比17億円増加の182億円となりました。

2023年度は、新工場建設を含め、380億円の投資を予定しています。お客さまからの受注増加に応えて、生産能力増強を行うとともに、より効率的な生産体制の構築に向けた投資も行い、競争力強化を進めていきます。

2-7 連結キャッシュフロー

キャッシュフローについては、グループ内キャッシュマネジメントを強化し、効率的な資金運用を推進しています。

2022年度は工場投資支払い準備のため、一時的にキャッシュが増加しました。2023年度は工場建設などの支払いのため、現預金残高は100億円減少します。また、一部を借り入れでまかなうため、有利子負債は68億円増加する見込みです。

2-8 株主還元

株主還元についてご説明します。2022年度の配当は、期初に示した配当予想どおり、期末配当22円、年間配当42円です。2023年度の配当金については、年間42円を予定しています。

また、4月27日の決算発表と合わせて開示した自己株取得ですが、4月28日に完了しました。取得した株式の総数は109万株、総額は約12億円となりました。株主還元および資本効率の向上、機動的な資本政策遂行を目的として、実施しています。

新たなる価値づくりへ

続いて、4月27日に開示した中長期経営構想と中期経営計画についてお話しします。

私たちは、VUCA(ブーカ)と言われる先行きが見通せない厳しい環境下、これまでのような中期経営計画の更新ではなく、長期的なあるべき姿からバックキャスティングする視点を取り入れ、グローバルを含め全部門の意見を踏まえて検討し、このたび中長期経営構想「Beyond the OCEAN」を策定しました。

「Beyond the OCEAN」は、どのような環境変化が起こっても追求していく「パーパス」、 環境変化を捉えて布石を打つ「長期戦略」、環境が想定と異なっても適応できる「レジリエンス」の3つの観点を踏まえてまとめました。

また、中期的なマイルストーンとしての中期経営計画は、2026年度までの4年間を期間とし、「価値をつなぐ」「絆で結ぶ」「グループ経営」といった思いをこめて「NEXUS-26」としました。

この「Beyond the OCEAN」と「NEXUS-26」によって、「新しい価値」をつくり続けていきたいと思います。

中長期経営構想 Beyond the OCEAN

まず、2030年までの中長期経営構想として、「Beyond the OCEAN」をご説明します。

ブランドスローガンから「パーパス」へ

当社のブランドスローガン「思いをこめて、あしたをつくる」が意味するのは、「多様な従業員が力を発揮し、新たなる価値を創造する」ことであり、これはまさに当社の「存在意義」でもあると考え、このたび、「ブランドスローガン」から「パーパス」へと改めました。

多様な人財が活躍し、サステナブルな「あした」のために、価値をつくっていくということであり、この「パーパス」を経営の軸にしていきたいと思います。

中長期経営構想の考え方

次に、中長期経営構想の考え方をご説明します。長期的なトレンドと、モビリティ価値の変容の中で、当社が生き残っていくためには、「技術×現場力」と「信頼とNo.1シェア」といった当社の強みを徹底的に活かすことです。そのためには、当社で働く仲間たちが活躍して、「新しい価値づくり」にチャレンジしていくための「パーパスを実現する人財戦略」 が極めて重要です。

その上で、長期的な注力テーマとして、「売上と利益が共に成長していくこと」「多様な技術によって価値をつくっていくこと」「サステナビリティと経営を統合すること」を掲げました。

中長期的な成長イメージ

まず、中長期的な成長イメージとして、「基盤」を充実させることが大切です。当社と社会や環境と事業のつながりを認識し、マイナスの影響を防ぎ、プラスの価値を生み出すことが重要です。

その要となるのが、従業員です。「パーパスを実現する人財戦略」により従業員が力を発揮して、「多様な技術で価値を創出する」ことで、「売上と利益の共成長」を実現する「事業」戦略が活きてきます。

「事業」戦略としては、軽量化や電動車領域に高付加価値製品を投入することで、主力のプレス事業の収益力をさらに高め、主要顧客との絆を深めていきます。さらにバルブ事業と樹脂事業では、カーメーカーだけでなくメガサプライヤー向けにも、当社のシール技術や防音防振技術を活かし、電動車市場を果敢に開拓します。

さらにモビリティ分野以外にも積極的に挑戦し、コア技術を活かした社会課題解決商品により、次世代の柱を創造する芽を育てます。

こうした中長期の戦略を通して、財務・非財務両面での価値創造を実現していきます。これらは当社のサステナビリティのマテリアリティとも合致しており、経営目標にも統合させていきます。

レジリエンスを高める

市場環境の変化は激しさを増しており、想定どおりの市場環境、成長シナリオにならない可能性もあります。こうした時代に生き残るために、どのように環境が変化しても、しなやかに乗り越えられる「レジリエンス」が重要だと認識しています。

今回の長期戦略の中では、「多様な人財の活躍」「事業領域の拡大」「ステークホルダーとの信頼醸成」「適正な財務水準」といった要素が組み込まれており、これらはいずれも「レジリエンス」につながるものです。

さらに、いち早くリスクと機会を捉え、弱みを克服し強みを強化して統合的にマネージしていく、新しい時代のリスクマネジメントの在り方を追求していきます。

経営目標

経営目標としては、財務的な価値のみではなく、非財務的な価値も踏まえた目標を策定しました。財務価値目標は、資本効率を高め、持続可能な成長を実現するべく、売上高を2,100億円とし、その後も持続的な成長をめざします。

また、2026年度の営業利益を7パーセント、ROEを8パーセントとしましたが、2030年度にはそれぞれ10パーセントに高めることを目標とします。

非財務価値目標としては、「製品を通して社会・顧客課題を解決する」というマテリアリティも踏まえ、主力事業のモビリティ分野では、2026年度の電動車向け売上比率を50パーセント、2030年度には70パーセントに高めていきます。

新分野では、2026年度までの新規商品・サービス上市件数を15件、2030年度には35件をめざします。

また、サステナビリティ価値目標として、従業員が力を発揮し、持続可能な社会を創る「パーパス」を具現化するための目標として、「従業員エンゲージメント」を指標としたいと考えています。こちらは、今期中に第1回の調査を実施し、その結果に基づいて目標を策定します。

また、自然資本では、すでに長期目標としてCO2排出量の削減を2030年度に2019年度比50パーセントとすることを掲げていますが、そのマイルストーンとして、2026年度には30パーセント削減をめざします。

サステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)

サステナビリティに関するマテリアリティは、今回の中計に盛り込まれており、定められたKPIを踏まえて取り組みを継続的に進めていきますが、その中でも、企業価値に与える影響も大きく、特に重要と考えるテーマは、先ほどご紹介した経営目標として掲げ、優先度を高めて取り組んでいきます。

事業を通じたマテリアリティでも、特に主力事業に影響が大きい「環境配慮製品の開発」は、かねてよりKPIとしていた「電動車向け売上比率」を経営目標に掲げました。

また、新しい価値を創造していく意志として、「持続可能なモビリティ社会と豊かな暮らしへの貢献」に関して、「新規商品・サービス上市件数」を経営目標としました。

ものづくりを営む企業として、最重要課題でもある「環境負荷の極小化」については、最も緊急性の高い「気候変動」に関連して「CO2排出量」の削減を経営目標としました。

そして、何よりパーパスである「思いをこめて、あしたをつくる」会社となるために重要な「人財の尊重と活躍」というマテリアリティの柱全体に関わる経営目標として、「従業員エンゲージメント」の向上を新たに掲げます。

中期経営計画 NEXUS-26

ここからは、「Beyond the OCEAN」実現のための中期経営計画として、「NEXUS-26」をご説明します。

OCEAN-22の振り返り

まず、前中期経営計画である「OCEAN-22」の振り返りですが、このように売上目標は達成したものの、コロナ影響や半導体不足による生産変動、資材高騰等による影響が大きく、営業利益、ROAといった利益および資本効率に関する目標には届きませんでした。

OCEAN-22の振り返りとNEXUS-26の位置づけ

「OCEAN-22」の成果として、事業面では、今申し上げたように厳しい環境ながら、売上高は着実に向上し2022年度は過去最高となり、利益も2021年度には過去最高を記録しました。

また、冷間超ハイテン技術の確立・量産拡大、電動化に向けた技術開発が進化するとともに、コア技術を活かしてモビリティ分野以外への商品開発も積極的に行い、複数の商品を市場投入できました。

さらに、サステナビリティ経営にも積極的に取り組み、2020年にマテリアリティを特定し、「PACIFIC環境チャレンジ2050」を発表して、カーボンニュートラルに積極的に取り組んできました。

人権方針の策定や健康経営の実施など、人的資本についても取り組みを強化しました。情報開示も強化し、CDPやEcoVadisなどの評価機関からも高い評価を得ることができました。

しかしながら、事業面では、利益率および資本効率の向上が課題となっており、これを向上させていくためにも当社の保有するさまざまな技術を融合させ、競争力を高めていくことが重要であると認識しています。

また、サステナビリティの取り組みも戦略に統合していく必要があり、新しい時代を切り拓いていくために、思ったことが発言でき、思ったことに挑戦でき、当社で働くと人が育っていくような企業になることも重要な取り組みテーマです。

中長期構想で描いた4つの注力テーマは、こうした中期的な課題の解決にも密接に結びついています。

「NEXUS-26」では、まずは「パーパス」を実現する多様な人財が活躍できる企業となる「人財戦略」を基盤としています。その人財が、当社の強みである「多様な技術」のポテンシャルを引き出し、既存の顧客基盤の強化に加え、新市場を開拓していく、そこに「サステナビリティも踏まえた価値を一体的に創造」していくことで、「売上と利益の共成長」を図っていくというのが、基本的な考え方となります。

2030年および2026年事業別のめざす姿

事業別のめざす姿は、こちらの4つのテーマで整理しました。

プレスは、生産変動に耐えうる改善に支えられた現場力をベースに、軽量化や生産時のCO2削減など脱炭素への寄与を踏まえ、ボディ構造提案により大物部品の一括受注を増やし、付加価値を高めることで売上・利益を高めていきます。

樹脂は、強みである防音防振・新加飾技術を活かし、新顧客への拡販を強化するとともに、サーキュラーエコノミーを踏まえた材料・製品開発で、持続可能な成長をめざします。

バルブ・TPMSは、無線通信技術や高品質といった強みを活かし、高い付加価値を生み出す開発型事業をめざすとともに、電動車向け製品で事業の新たなる柱を創造します。

新製品については、これまで上市した製品をバージョンアップして「深化」を追求しつつ、新分野への「探索」を強化し、社会課題を解決するデータビジネスが柱となるよう育てていきたいと思います。

セグメント別売上目標

セグメント別の売上高は、スライドに記載しているように、2023年度と2026年度では、売上規模にほぼ比例して各セグメントが伸長するイメージを描いています。コロナ禍から市場が回復する中で、プレス・樹脂は東大垣工場の稼働・海外の設備投資による生産の増強、バルブは新しく立ち上がる電動膨張弁の売上増加が寄与することが主な成長要因となります。

なお、2023年3月期第4四半期より、プレス鋼材が顧客からの有償支給となり、これにより売上水準が低下しており、その基準での売上目標となっています。

仮に有償支給がなく、従来どおりの基準で見た場合、スライド右側の図のように2026年度の売上高は、2,430億円となる見込みであり、2023年3月期からの年平均成長率は5パーセントとなります。新型コロナで落ち込んだ2020年度からでは、8パーセントの年平均成長率となります。

財務戦略

財務戦略は、資本コストを意識しつつ、成長投資を果敢に実施していきます。

財務方針としては、創出した営業キャッシュフローを源泉とし、戦略投資・株主還元を実施して、一時的な不足分を借入で補うこととします。資本効率を意識し、ROEは「2026年度8パーセント以上」「2030年度10パーセント以上」をめざします。

投資方針としては、目的とする売上成長を実現するために、プレス新工場や電動膨張弁ライン新設等、積極的な戦略投資を実施していきます。

株主還元方針は、配当性向30パーセントを目標とするとともに、自社株取得を機動的に実施することで、株主還元の充実を図ります。

これら事業成長投資によるキャッシュフロー創出と、資本効率の向上、株主還元の充実により、企業価値の向上を図ります。

プレス事業戦略

次に、事業別の成長戦略をお伝えします。まず、プレス事業は、2030年のめざす姿として、「脱炭素時代に勝ち残る『提案型技術集団』」となることで、主要顧客との絆を深め、高付加価値プレス製品の拡大を図っていきます。

また、生産技術革新・スマートファクトリー化を推進することで、他社を凌駕するコスト競争力や働きやすさと生産性を高め、強固な事業基盤を確立していきます。

「NEXUS-26」の注力テーマとしては、まず脱炭素に向けた製品づくりが挙げられます。特に、当社の得意とする冷間プレス工法は、生産時のCO2削減でホットスタンプ工法に対し優位性があり、ホットスタンプ採用部品からの置き換えを提案するとともに、電動車部品の拡大も図っていきます。

また、構造解析技術により、ゾーンで最適構造を提案し、ボディ部品の一括受注を増加させるなど、ものづくり力・技術力を向上させます。さらには、AIなどデジタル技術を活用した効率的なものづくりでコスト競争力を高め、強固な事業基盤を確立します。

このように付加価値創造力とコスト競争力の両輪で、資本効率を高めつつ、高収益構造を築いていきます。

プレス事業戦略

プレス事業で、特に大きな戦略的投資となるのが、東大垣工場に建設中の新工場です。こちらは、プレス設備の増強、溶接ラインの自働化に加え、再生可能エネルギーの導入や働きやすさの向上など、時代の要請に応えたものとなっています。

併せて、工機棟を新築し、冷間超ハイテン、大物金型のコスト競争力やリードタイム短縮を図るとともに、技術や技能の手の内化を拡大します。また、樹脂およびIoT関連の新製品開発を強力に推し進めるR&D棟も新設します。

これらの機能を組み合わせることにより、「新たなる価値づくり」を形づくるグローバルマザー工場として、持続的な売上と利益の着実な増加を担います。

樹脂事業戦略

次に特に強化していきたい事業として、樹脂事業の戦略をご説明します。樹脂は、生産設備が比較的コンパクトながら、当社の強みや顧客基盤を活かした競争力が高い事業であると考えており、この強化を図るものです。

2030年のめざす姿としては、「防音防振・新加飾技術を応用し新市場の創出」、そして「サーキュラーエコノミーへの転換」を掲げています。

主な注力テーマは3つあります。まず、「防音防振技術を確立し、新製品・新事業化」を進めることが挙げられ、こちらは電動車向けの新製品開発加速、特にメガサプライヤー向けの新規顧客拡販を図ります。

次に「加飾事業」については、タイの工場から成長著しいASEANやインドといった市場を開拓しつつ、グローバルでの生産力拡大を図っていきます。さらには、サーキュラーエコノミー時代に適合した材料開発力の強化が3つ目の注力テーマとなります。

樹脂事業戦略

樹脂事業は、防音防振技術、フィルム加飾技術、材料配合からの設計力、企画・デザインから設計・生産までの社内一貫体制など、多彩な強みがあります。

特に、電動車市場の拡大に伴い、防音防振技術を用いたコンプレッサーカバーや、空力性能向上を踏まえた設計力を活かした空力ホイールキャップなど、これまでの顧客基盤を活かしつつ、グローバルに新顧客開拓を推し進めています。

バルブ事業戦略

バルブ製品については、2030年のめざす姿として「市場ニーズを先取りした、スピード感ある開発型事業展開の実現」「電動車用熱マネジメントシステム向け製品で、新たなる事業の柱を確立」を掲げています。

「NEXUS-26」の注力テーマとしては、特に電動化時代において、シール技術や無線通信技術といったコア技術を活用した新製品を投入し、ブランドを確立していくことが事業成長にとって重要と考えています。

また、価格競争が激しいTPMSについては、新興電動車メーカー向けの拡販を始め、販売物量の拡大にも取り組んでいます。

また、グローバルな生産・開発拠点の再編や、デジタル革新による生産性の向上等、既存事業の構造改革を進めます。

バルブ事業戦略

バルブ製品事業戦略の要として、熱マネジメントシステム向けの製品開発・拡販を推進します。BEVの進展に伴い、市場拡大が予想されるヒートポンプシステムと、バッテリー周辺の熱利用システム向けの各種バルブは市場規模の拡大が見込まれています。

バルブ事業で培ったシール技術や高い信頼性など、当社の強みを活かした製品開発と量産体制の確立により、グローバルに拡販を進めていきます。

電動車のエネルギーを最大限に活用することで、製品を通じて環境負荷低減に寄与する事業として強力に推進していき、熱マネジメントシステム用バルブで新たな事業の柱を確立することをめざします。

新製品開発

新製品開発は、長期的に当社の事業の柱をつくっていくために、さまざまな挑戦を続けている分野です。

2030年のめざす姿として、無線・アプリ・クラウド・AI・ビッグデータを活用したデータビジネスを、新規事業の柱にしていきたいと考えています。

考え方としては、社会貢献や社会課題解決に結びつくビジネスを軸に事業領域を広げ、すでに上市している物流・畜産・インフラ・生活関連はバージョンアップによる深化を進めていきます。

また、まったく新しい分野の商品・サービスづくりにも取り組み、社会課題を解決していきたいと考えています。そのために、社内公募型の新規事業創出プロジェクトとして「Ωプロジェクト」を立ち上げました。これらの取り組みを進め、2030年度には、売上100億円、営業利益20億円をめざしたいと思います。

技術開発戦略

技術開発戦略としては、「既存事業の多様なコア技術を深化、新価値創造」と「開発環境を整備し、新規事業の創出加速」の2つの軸で取り組みつつ、既存事業と新規事業の開発連携を図っていきます。

2025年7月には、東大垣工場敷地内にR&Dセンターを稼働させ、「共創空間」をテーマに、開発・生産技術の一体的な研究開発と将来の新規事業創出の実現を図ります。

また、知財戦略として、新しい価値創造に資する効果的な知財を生み出すために、知財分析・人材育成・体制整備を進め、グループ全体の知財マネジメント力強化を図っていきます。

これらの取り組みが一体となり、高付加価値で社会に貢献できる事業成長を推し進めていきます。

人財の尊重と活躍(人財戦略)

人財戦略は、パーパスである「思いをこめて、あしたをつくる」にあるように、「全ての働く人が『思い』をもち、活躍できる企業となる」ことをゴールとしています。その実現により、働き方が変わっていく時代においても、人に選ばれ、誰もが力を発揮していく企業になることができるものと考えています。

パーパスとの関わりで、「一人ひとりの考えを尊重し、みんなが思いを言い合える」「基盤を充実」させ、「やりたいことが実現でき、学べる環境をつくる」、その結果、「事業成長」へとつながるという考えのもと、従業員の声と、マテリアリティを踏まえた7つのテーマを挙げました。

これらに取り組むことで、従業員のウェルビーイングの実現と、企業価値の向上を相乗効果で実現していけるものと考えています。

人財の尊重と活躍(人財戦略)

その7つのテーマを整理した具体的な取り組みチャートがこちらのスライドとなります。まず、なによりも「従業員エンゲージメント」を把握し、高めていくことで、「挑戦できる風土を醸成」していくことが中心となります。

これにより、人権の尊重、安全と健康、労働環境改善といった基盤整備と、人財育成・D&I(多様性)といった事業成長に結びつく活力につながり、それがまたエンゲージメントを高めるという好循環が生まれるものと考えています。

そして、この「エンゲージメントの向上」こそが、「思いをこめて、あしたをつくる」に欠かせないものとなります。

デジタル戦略

デジタル戦略は、あらゆる生産工程を見える化し、生産全体の問題をいち早く把握して、改善を素早く行い、効率化・自働化を推進するスマートファクトリーをグローバルで実現する事をめざします。

昨年、デジタル子会社のピーアイシステムを当社に事業統合し、有機的かつ迅速なデジタルを用いた業務革新を進めていますが、その上で「NEXUS-26」の取り組みテーマは3つあります。

まず、基幹システムを再構築し、生産現場のデジタル化を進め、それらの統合・融合・利活用を推し進めます。また、デジタル化を進めるにあたって必要となる、全従業員のデジタルリテラシーを底上げするとともに、専門人材を育て、適材適所に配置していきます。

そうした取り組みの前提として、グローバルでサイバーセキュリティを高める取り組みも加速していきます。

環境負荷の極小化

マテリアリティの柱の1つである「環境負荷の極小化」は、製造業としてサステナビリティを実現するために極めて重要な課題であり、2020年に長期目標として「PACIFIC環境チャレンジ2050」を掲げて取り組んでいます。

特にCO2排出量の低減は、社会的にも企業としても生き残りを賭けたテーマであり、経営目標にCO2排出量の削減を掲げ、「日常改善」「革新技術」「再生可能エネルギーの導入」で、取り組みを加速しています。

なお、廃棄物排出量削減については、国内の排出量に一部データが含まれていなかったため、目標を見直していますが、引き続き、2050年の極小化をめざし、循環型の事業へと転換していきたいと思います。

水資源の保全については、昨今注目されている生物多様性との関わりも深く重要であり、拠点のある地域に応じたリスク低減を図っていきたいと考えています。

ステークホルダーとの信頼醸成

最後に、「ステークホルダーとの信頼醸成」ですが、長期的な企業価値向上のためにも極めて重要であると考えています。まず、企業倫理・コンプライアンスは、変化の激しい事業環境下で、パーパスやサステナビリティを実現していくために、法令順守への誠実さに加え、個人の倫理観はなくてはならないものです。これが毀損すると、社会的な信用が失墜するため、これを継続的に高めていくべく、従業員教育のよりいっそうの充実や、定期的な調査を実施していきます。

顧客満足度の向上は、当然ビジネスの大前提として極めて重要ですが、QCDといった基本的な要件はもちろんのこと、社会・環境価値も含め、お客さまから求められているニーズを先取りして提案し、長期的な信頼関係を深めていきます。

投資家・株主のみなさまとは、経営のよきパートナーとして対話の充実を図り、情報開示もいっそう充実させ、長期的な企業価値向上をめざします。

また、責任ある調達は、資材高騰・地政学的リスクといった調達リスクに加え、サプライチェーンを含めた人権・環境デューディリジェンスや負のインパクトの低減が極めて重要になっているため、取り組みを強化していきます。

そして、グローバル7ヶ国で事業をさせていただいている当社は、地域のみなさまとの信頼関係が、事業運営の実にさまざまな場面で力になります。

このように、ステークホルダーのみなさまとの信頼関係の醸成が、ステークホルダーのみなさまの幸せにつながり、企業の長期的な競争力にもなっていく、これこそが「思いをこめて、あしたをつくる」の実現に欠かせないものであると考えています。

思いをこめて、あしたをつくる

「思いをこめて、あしたをつくる」というパーパスを体現する企業として、持続可能な成長を遂げていくために、「Beyond the OCEAN」と「NEXUS-26」をグループ一体で進めていきたいと思います。

パートナーであるみなさま方から忌憚のないご意見を賜り、よりよい経営を追求していきたいと思いますので、お力添えのほど、何卒宜しくお願いします。

以上で、説明を終わります。