目次

清水竜一氏(以下、清水):日総グループの事業概要ならびに成長戦略についてご説明いたします。スライドの目次に沿って進めていきます。

会社概要

清水:まず、グループ全体の売上構成比率の9割ほどを占めている中核の会社、日総工産についてご説明します。スライドの写真は本社ならびにテクニカルセンターの風景です。

日総工産の歩み

清水:日総工産の歩みです。2018年に東京証券取引所一部市場に上場しています。今年で創業53年目を迎える会社です。

事業概要

清水:事業概要です。主に「製造・技術派遣事業」「製造請負事業」「職業紹介事業」「その他」を行っています。その他には、労務管理支援、研修受託、コンサルティングなどがあります。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):よく聞かれる質問だと思いますが、派遣と請負の違いは何でしょうか? 業務内容を知る意味でも教えていただきたいです。

清水:本当によくお受けするご質問ですが、派遣は、我々で雇った方を工場に派遣し、お客さまのもとで働いていただきます。つまり、お客さまの戦力の一端を担うのが派遣の働き方です。

請負はお客さまの建物やライン、あるいは設備をお借りして、「この仕事をいつまでにいくつ作る」ということを話し合い、我々が責任を持って進めます。ですので、少し大掛かりなのが請負事業です。

坂本:御社が行っている請負事業は技術も人材もある程度必要で、派遣よりも責任が重い仕事ということでしょうか?

清水:おっしゃるとおりです。少しだけ補足しますと、工場の操業を我々がすべて受けますが、お客さまの会社の技術者や工場のマネージメントの方だけが来るケースもあります。

坂本:生産に関わる人をアウトソーシングするということで、新しいファブレスですね。

清水:そのとおりです。

主要KPI(日総工産単体)及び離職率

清水:当社の主要KPIです。スライド左上のグラフは売上高と営業利益の推移です。大幅に減収・減益となっているように見えると思いますが、一番右側の棒グラフは第3四半期までの実績です。期末には、売上高は910億円、利益は22億円を予定しています。

後ほどアカウントについてお伝えしますが、中央上段のグラフは全体の売上高の中でアカウントがどのくらい占めているのかを表しています。「アカウントの比率がやや下がっているのではないか」というお声も出るかもしれませんが、今から5年前の上場した時からアカウントを変えていないため、構造も大きく変わっていません。

坂本:新しい取引先が入っていないということですね。

清水:おっしゃるとおりです。右上のグラフは、エンジニアと全体の1人当たりの月の売上高の推移です。全体もエンジニアも順調に伸びて受注単価は上がっているものの、残念ながら部品不足等で自動車を中心になかなかフル稼働にならない状況がここ3年ばかり続いています。本来はもっと成長しているところですが、成長しきれていません。

左下のグラフは、主要な業種別の売上構成比です。一番下から自動車、半導体などの受動部品の電子デバイス、精密・電気機器、その他となっています。

中央下段のグラフは在籍人数の推移で、折れ線グラフがエンジニアの推移です。我々としては、今後の成長戦略の中でエンジニアを増やしていくことが非常に重要な戦略だと考えています。

右下のグラフは離職率の推移です。製造生産系人材の離職率が昨年の3.9パーセントから3.8パーセントとなり、エンジニアの離職率は昨年の1.9パーセントから2.1パーセントとなりました。エンジニアの離職率がやや高くなっている点が気になりますが、許容範囲内であり、対策を新たに打っているため、今後効果が出ると考えています。

坂本:離職率は普通の会社とあまり変わらないですね。派遣・請負業は離職率が高いイメージがありますが、御社は低く抑えられていると思います。その理由を教えてください。

清水:当社は業界全体の平均の半分以下と言われています。その理由として、1点目は事前にトレーニングをしっかり行っていることです。現場に配属された時の違和感や、スピードについていけないことが非常に少ないです。

2点目はコストがかかる要因でもありますが、働いている方々に寄り添って、仕事から私生活、その他の相談にものっていることです。全体の約半数は当社の寮に入っていますので、さまざまな相談にのっていくことが離職率を低減していると考えています。

坂本:寮によって生活コストも下がりますし、悩みも言いやすいですね。

取引先について

清水:先ほどお伝えしたアカウント企業の考え方についてご説明します。全体の取引先が694社で、主な業種は自動車と、半導体も含めた電子デバイスです。

アカウント企業は大手4グループになります。自動車は大手メーカーのグループで、電子部品は積層セラミックコンデンサなどで世界的なトップシェアを誇っている会社です。精密機械は複合機を製造している会社で、電機は半導体も含めた世界的な電機メーカーです。

実はこの数年、アカウント企業の売上比率が少しずつ下がってきています。これから伸びてくる会社がだんだん成長してきていますので、来年度からはアカウントの顔ぶれを変えていこうと考えています。

坂本:アカウント企業が4グループあるというお話ですが、それに匹敵するグループがすでにあり、組み換えていくということですね。

清水:おっしゃるとおりです。

グループ会社一覧

清水:日総グループの概要についてご説明します。まず、グループ会社の一覧です。日総ブレインは、いわゆるホワイトカラーを中心にした一般派遣を行っています。日総ニフティは、その他事業のセグメントに入っており、介護系の事業を行っています。

日総ぴゅあは特例子会社で、障がい者の雇用促進を行っています。ニコン日総プライムは、当社でプライム人材と呼んでいる、シルバーのセカンドキャリアを応援する合弁会社です。日総ぴゅあとニコン日総プライムは、ダイバーシティ経営を意識したビジネスモデルが中心の会社です。

ベクトル伸和は1年半ほど前に仲間に加わった会社で、半導体を強化するための、半導体に特化した人材サービスを行っています。

上海霓索人力資源服務は、上海での人材紹介やコンサルティングを行っています。リーフネクストは、ツナググループ・ホールディングスという上場会社との合弁会社で、将来のHRテックを推進する事業を行っています。

日総グループの存在意義

清水:日総グループの存在意義です。創業理念は「人を育て 人を活かす」という言い尽くされた言葉ですが、これを徹底していくことを社長として引き継いでいます。

グループミッションは「働く機会と希望を創出する」です。当社は人材サービスのため、働く機会を提供するのは当たり前ですが、「希望」に大きなポイントがあります。仕事をすることに加えて私生活も充実し、夢に向かっていけるようないろいろなことを創出することをミッションとしています。

ビジョンは「高い成長力のある企業グループに変革する」です。後ほどご説明しますが、成長力をさらに上げていくために、持株会社の移行を検討開始しています。それにより、これからM&Aやビジネスのアライアンス先を拡充していきたいと考えています。

中期経営計画について

清水:中期経営計画についてご説明します。スライドのオレンジ色の破線が今期の計画です。売上は来期、再来期と成長し、収益も大幅に成長すると考えています。

ご承知のとおり、2020年2月頃にコロナ禍が始まり、当初は感染リスクを低減するために多くの工場が止まりました。次のステージに移っても海外のロックダウン等で部品不足が自動車の生産に大きな影響を与え、稼働状況が悪くなり、収益が非常に悪化しました。

その後も半導体不足が自動車の生産に影響を与えていたため、今期の上期である去年4月から10月までの間が、おそらく底だったと考えています。なだらかではありますが、そこから回復し始めている状況です。

先ほどお伝えしたとおり、今後はエンジニア領域といった新しい事業を拡充しながら、収益性の高い事業を作っていくことを計画しています。

坂本:中期経営計画は、自動車を含めた生産の回復とエンジニアの成長がのってくるという理解でよいでしょうか?

清水:おっしゃるとおりです。

事業環境・市場機会

清水:事業環境・市場機会についてです。少子高齢化等により労働市場は非常に大きく変化し、働く環境においても現場で技術革新が非常に進んでおり、産業構造が変わってきています。

我々の一番大きな領域でもある製造現場でも、オペレーションがどんどん変化しているという中で、我々はそれぞれの分野で調整していくべきことを整理しながら、事業のプランを作っています。

事業ポートフォリオ戦略

清水:スライドの4象限の図をご覧ください。今の我々の事業領域の大多数は左下の「再構築」にあります。この事業の収益性を拡大するために、右下の「効率化領域」に移行するものや、今の事業に新しいテクノロジーを組み合わせて、新しい事業に挑戦していくために左上の「将来性」に移行するものがあります。

その後、それぞれの象限から右上の「注力領域」に移動するというのが、我々の中期経営計画の大きな考え方です。「注力領域」でエンジニア派遣を太く記載しているとおり、この3年間は収益も売上もエンジニアが大きく引っ張っていくと考えています。

製造派遣・請負市場 エンジニア派遣市場

清水:それぞれの市場の特性を表したグラフです。ご承知のとおり、製造の仕事は生産の動向に大きく影響を受けるため、市場規模は凸凹しています。今後、特に自動化が進んでくると、製造分野の市場はなかなか成長しにくいと考えている一方で、エンジニア市場はこれからますます成長してくると予想しています。

中期経営計画のポイント

清水:中期経営計画のポイントについてご説明します。1つ目に、事業拡大のためにエンジニア系の在籍人員を増やしており、スライド右側にその推移を示したグラフを載せています。

後ほどご説明しますが、エンジニア専用サイト「エンジニアワークス」を作りました。特に我々が力を入れているのは、新卒あるいは中途で採用するだけでなく、実際に今現場で働いているベテランの方々のキャリアチェンジを推進しながらエンジニアを育てていくスキームを推進することと、そのために必要な教育施設を効率的に活用・拡充していくことです。

2つ目の教育の場の拡充については、熊本県に半導体向けの研修センターを4月に開所します。みなさまもご承知のとおり、現在熊本県は大変盛り上がっており、今後、半導体向けの人材が不足することははっきりしています。

お客さまとある程度相談しつつ、即戦力となる人材を育成していくための施設がようやく稼働できる状況になりました。

坂本:半導体の生産に携わる方は、スキルがかなり必要なのでしょうか?

清水:日本の半導体メーカーは、1990年を境に非常に厳しくなっています。そのため、とりわけ開発はなかなか難しいところではありますが、量産技術を確立するために装置エンジニアが非常にたくさん必要です。

しかし、現在日本にいる装置エンジニアの数では、今後の日本の計画にはまったく足りない状況ですので、そのような方々をこのセンターで育成しながら、お客さまにお届けするということが1つの考えではあります。

3つ目の人材育成の基盤作りについてご説明します。インターステラテクノロジズは、堀江貴文さんが出資された会社です。いわゆる将来の宇宙事業に向けた人材を育成するために、人材活用でのパートナーシップ協定を結んでいます。

また、東北経済産業局の「東北半導体・エレクトロニクスデザイン研究会」に参画し、人材育成の基盤作りのお手伝いを行っています。中国地方にはアメリカの半導体メーカーがありますが、ここでもそのようなことが必要だということで、協議会に参加しています。

中期経営計画のポイント

清水:このスライドでは、特に「ホワイトカラーの領域をどのように攻めていくか」を記載しています。1つ目は、AIを開発するクロスコンパスという会社と資本業務提携を行いました。今後、AIが実装されてくるであろう製造装置で、装置のメンテナンスに加えてAIについても教えていくことが目的です。

2つ目は、「TASUKI」プロジェクトとの連携についてです。大手の通信キャリアと一緒に進めているもので、AIを使っていくためのインフラを整備するための仕事をスタートしました。

3つ目は、クロスリンクとの資本業務提携についてです。実は、製造業はDXが非常に遅れている分野と言われています。クロスリンクは製造業系の人材サービスのDXを推進するためのインフラ整備を行う会社ということで、一緒に取り組んでいます。

4つ目は、ツナググループ・ホールディングスとの資本業務提携です。先ほどお伝えしたHRテックを順次進めていきます。

新しい分野での挑戦については、ドクターズという会社と資本業務提携を行い、いわゆるヘルステック分野の新しい事業を一緒に組み上げていくことに着手しました。

人材育成について

清水:人材育成の考え方についてです。後ほどご説明しますが、特に我々が非常にこだわっているのは、研修施設で学んだことを実践に活かせるOFF‐JTを行い、それをもとにしたO‐JTでの実践で成長していただくことです。

また、キャリアを何度も作り直さなければいけない時代になってきましたので、学び直しができる仕組みも作っていこうと取り組んでいます。我々はこの3つの考え方で人材育成を行っています。

研修施設について

清水:研修施設の全容になります。スライドをご覧のとおり、トレーニングセンターやテクニカルセンターなど、北海道から九州まで研修施設を持っています。

テクニカルセンターは非常に規模が大きく、後ほど映像でもご覧いただきますが、半導体や自動車系に向けた教育を行う施設です。トレーニングセンターは、あるお客さまに特化した、配属前のトレーニングを行うためのセンターです。

坂本:現場と同じような機械がセンターの中にあり、実践を積んでから現場に行くということですか?

清水:おっしゃるとおりです。

坂本:簡単な作業は1日で習得できるかもしれませんが、なかなか難しいと思いますので、ある程度の期間が必要なのでしょうか?

清水:最低でも5営業日で、長い方は3ヶ月間研修して現場に配属されます。

坂本:宿泊施設があるところもあるのですか?

清水:そのようなものも借りています。

坂本:すぐに即戦力で働けるようなかたちですね。

清水:おっしゃるとおりです。もちろん、現場に行くとそこからさらにスキルが上がりますが、違和感なく仕事に就けることが最大の特色だと思います。

坂本:そこが強みなのですね。

エンジニアの育成について

清水:スライドに「実機を用いた実習」と記載していますが、半導体工場で実際に量産に使っている装置の中古を購入し、使用しています。クリーン度はそれほど高くありませんが、クリーンルームを疑似的に作ることまで行っている同業他社は見たことがないため、極めて特殊ではないかと思います。

我々はここに非常に自信を持っており、お客さまの新入社員などの教育も我々が実施しています。それだけお客さまからも評価していただいているのではないかと考えています。

増井麻里子氏(以下、増井):エンジニアには技術者だけでなく技能者も含まれており、3DCADは技術者が行うものだと認識しています。技能者の仕事と技術者の仕事の両方が学べて、どちらも研修しているのでしょうか? それぞれどのようなお仕事をしているのかも教えてください。

清水:3DCADを使う設計者は、基本的にはエンジニアで間違いありません。技能者とエンジニアが混在しているのは、特に装置系の方々です。

通常の保全を担当する方々は、どちらかといいますと技能者に近いです。ところが、スキルが上がってくると、例えば機械が壊れたり止まったりした時に、フィールドサービスということでフィールドに行って直したりします。メーカーの中で停止した時にリカバリーするのは基本的にはエンジニアです。

そのため、技能者の先にエンジニアがあるというのが、装置エンジニアの1つの考え方かと思います。

エンジニア系人材サービスの成長に向けて

清水:エンジニア系人材サービスの成長に向けた取り組みについて、これから我々が特に力を入れていきたいところをご説明します。国策にもなっていますが、経済安全保障の観点で半導体の量産技術を日本で確立していくことに積極的に対応していきます。先ほどお伝えした、東北、中国地方、九州に対応できる研修施設を今後さらに拡充していく考えです。

また、先ほど新しい分野として宇宙事業についてお伝えしました。宇宙事業は2040年には100兆円を超える市場になるとも言われています。その時に、日本で自動車などの既存の領域で働く方々がキャリアチェンジするなどして、ここに挑戦できるような環境整備が必要と考えていますので、しっかり挑戦していこうと考えています。

日総テクニカルセンター熊本開所について

清水:先ほどお伝えした九州のテクニカルセンターです。半導体を量産する装置を購入し、いよいよ4月から実習がスタートします。

今後、半導体の製造装置はAIが搭載されたものがたくさん出てきますので、このようなことも併せて教えることが非常に大切です。また、お客さまから相当な期待をいただいていますので、しっかり取り組むことで他のエリアにも水平展開できれば、日本の半導体の発展に非常に役に立つのではないかと考えています。

坂本:熊本県に開設されたということは、TSMCに関連して他の半導体会社もたくさん増えてくるという狙いもあるのでしょうか?

清水:おっしゃるとおりです。過去に「日本のシリコンバレー」と言われてつまずいた経緯がありますが、我々も本気でここに投資していこうと考えています。

採用活動

清水:先ほど「エンジニアワークス」というエンジニア系の新しいサイトを立ち上げたことをお伝えしました。当社は月に800名から900名の間くらいの採用を行っており、自社サイトから来る方が57.4パーセントいることが最大の特色です。

坂本:自社サイトからの流入が高い理由を教えてください。

清水:おそらく、製造系の中で自社サイトをもっとも早く手掛けたのが当社であることが影響していると思います。アクセスする応募者の方々の利便性を高めたり、昨年にNHKの朝ドラのヒロイン役を演じた黒島結菜さんにもテレビCMに登場していただき、プロモーション力を高めたりしています。

もう1つは、全国に66ヶ所ある拠点と特設会場で採用活動を展開しているため、面接会場が100ヶ所以上あります。面接をリアルでもオンラインでも行いやすいことが、自社サイトからの流入が増えている非常に大きな原因ではないかと思います。

坂本:確か、かなり昔から取り組んでいますよね。大都市だけではなく、いろいろな地域にあって、私も昔見たことがあります。

清水:ありがとうございます。

トピックス

清水:トピックスです。1つ目は先ほどお伝えしたとおり、効率化も含め、持続的な成長を実現するため、ビジネスのポートフォリオをもう1段踏み込んで品揃えを増やしていくことを目的として、持株会社体制への移行の検討を本格的に始めました。

2つ目は、日総グループのタグライン策定です。「働きものを、幸せものに。」という言葉に、我々の想いや考え方を込めました。

3つ目は、当社のブランドムービーについてです。働いている方の視点から見た時の、我々の働く方々に寄り添うことへのこだわりが非常によくおわかりいただけるのではないかと思います。

当社ブランドムービーの紹介

清水:我々の現場でよくある風景で、実は製造業に来られる方々は人とのコミュニケーションがあまり得意ではない方が多いです。

ところが、ブランドムービーのようにいろいろなことにぶつかったり触れ合ったりしながら、物作りや人とのコミュニケーションがだんだん楽しくなり、成長していく姿を見られることがこの仕事の醍醐味だと考えています。このムービーを通して、我々のこだわりや思いが伝わったのではないかと思います。

2023年3月期 通期連結業績予想の修正

清水:今後の見通しについてです。先ほど少しお話ししましたが、こちらが期末の業績予想になります。ここでは、うまくいかなかったことと、うまくいったことをご説明します。

まず、うまくいかなかったことです。先ほどお伝えしたとおり、自動車関係の部品調達です。これは我々だけがうまくいかなかったというより、自動車メーカー全体に言えることですが、半導体の調達が思うようにいきませんでした。

2つ目は、電子部品の分野でも半導体を調達できなかったことが、生産に大きな影響を与えています。

3つ目は、ご承知のとおり新型コロナウイルスの影響です。加えて、我々がまったく想定していなかった、2023年1月の気象災害も影響しています。あまり雪が積もらないところにたくさん積もり、特に九州エリアでは自動車の製造が被災で1.5日止まった工場があります。

うまくいったところについては、稼働が正常化していないにもかかわらず、売上が予想を上回ったことです。この採用難の中でも人の採用がうまくいったことと、エンジニアへの転換が非常に順調に進んだことがプラスの要因だったと思います。今後の業績に大きく貢献する新しい事業領域についても、布石がしっかり打てました。

坂本:「生産はボトムから回復している」とお話がありました。前回登壇していただいた時に、「その回復を見越して人を選考しています」というお話がありましたが、それをずっと続けているのでしょうか? また、足元ではそれが回収できる事業環境にもなっているのかを教えてください。

加えて、自動車と半導体の業種で若干のずれはあるかもしれませんが、今後の生産回復の見通しも教えていただければ、投資家もイメージが湧くかと思いますのでお願いします。

清水:実は、アカウント企業の自動車系を中心にシェアをかなり上げさせていただきました。まだ先が不透明の中で、人のニーズは比較的強くありますが、むしろここでは人の投入を少し抑えながら、今いる方々の稼働を上げていくところに力を注いでいきたいと考えています。

おそらく自動車向けのパワー半導体を中心に回復してくると思いますが、なだらかに回復してくると考えていますので、回復の度合いを見ながら、特に来期は採用人数をコントロールしていこうと考えています。

ただし、半導体についてはメモリの在庫がやや積み上がってきておりますが、トレンドとしては間違いなく右肩上がりになると思っています。今後、いわゆるメモリ以外のパワー半導体や最近の画像センサー関係の半導体にも、相当な力を入れて大きな柱にしていこうと考えているところです。

株主還元方針

清水:株主還元方針についてご説明します。残念ながら、期末は利益を下方修正せざるを得ませんでしたが、1株当たり配当予想額の16円は据え置きで進めていきたいと考えています。配当性向30パーセント以上というのは、我々としても決して高い水準ではないと認識しています。

しかし、お伝えしているとおり、今後ますます成長が見込める領域に十分に投資を行いつつ、地力が相当についきましたら配当性向そのものの基準を検討していく考えです。

株主優待について

清水:株主優待についてです。ご覧のとおり、2,000株以上をお持ちいただくと、5万ポイントの優待を受けることができます。この優待を楽しみにしている株主の方もけっこういらっしゃると認識しています。

昨日の終値は705円ですので、2,000株を持とうとすると約141万円になりますが、ぜひ持っていただけるとありがたいと思います。

以上をもって、私からのご説明とします。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:売上が伸びている事業について

坂本:近年の売上高の伸びについてです。今期はかなり回復しているということですが、どの事業が伸びていますか?

清水:基本的に足元のコロナ禍で伸びたのは、やはり自動車系だと思います。

坂本:もともとけっこうな売上のボリュームがありましたよね。

清水:おっしゃるとおりです。それが半分近くまでシェアが上がってきています。稼働が正常の状態であれば、半分を超えていると思います。また、半導体でも同業他社では配属しにくい保全の方々を中心に業績をかなり伸ばしました。

質疑応答:利益が高い事業について

坂本:利益はどの分野が一番多いのでしょうか? おそらくエンジニアが多い事業のほうが利益率が高いかと思いますが、大まかなイメージでけっこうですので教えてください。

清水:ご指摘のとおり、基本的にエンジニアの方々は単価が高く、もちろん本人の処遇も高いのですが、利益額というかたちで残る金額が大きいです。その背景として、最大3ヶ月の教育研修を行って配属しなければいけないということもあります。

坂本:教育の部分も受け入れ先に「お願いします」と言わなければ、それなりに厳しいですよね。

清水:おっしゃるとおりです。また、本来ボデーメーカーは収益性が非常に高いのですが、稼働状況が決して正常化していないということが、収益性をやや悪くしています。ですので、今後正常化していくと、収益は上げられると考えています。

質疑応答:M&Aについて

坂本:M&Aについて、前向きなのかあまり積極的ではないのかを教えてください。もしM&Aの可能性があるとすると、どのような分野に興味がありますか?

清水:M&Aについては、消極的ではないのですが慣れていなかったというのが正しいと思います。いろいろな経験を積めましたので、体制を整えつつ、今後は積極的に向き合えると思っています。

M&Aの考え方について少しご説明します。現在、グループで約1万6,000人の方々が働いていますが、この方々の将来を考えた時に、キャリアアップやキャリアチェンジを行っていく必要があります。おそらく、そのようなキャリアの転換先になると思われる会社とM&Aやビジネスパートナーシップを結んでいくことになると考えています。

立場が安定することで長期に定着してもらうことが会社としての戦略のため、極端なことをいいますと、定年退職後も働けるような環境整備がなければ、会社として雇用の責任を果たせないと考えています。

坂本:同業他社では積極的に海外へ出ており、今のところはうまくいっているのではないかと外から見て思っています。御社の場合は、どちらかといいますと現状は国内で働いている方の処遇を中心に考えており、そちらを成長させていくことを進めているということでしょうか?

清水:おっしゃるとおりです。

質疑応答:高齢者の雇用促進に向けた取り組みについて

坂本:「これから高齢化社会がさらに進んでいきますが、高齢者の雇用促進に向けての人材支援については、どのように考えていますか?」というご質問です。

今働いていらっしゃる方がある程度の年齢になり、工場で「何歳までしか採りません」というかたちになる可能性もありますが、そのような方のセカンドキャリアや次のお仕事の斡旋についても教えてください。

また、定年退職が65歳まで伸びましたが、すでに会社を退職した方でも75歳まで働きたいという方は、統計でも半数ほどいらっしゃると聞きます。そのような方の活用は、おそらくこれからのテーマになってくると思いますが、そのあたりも含めてお願いします。

清水:基本的に、我々は75歳の方を1つのターゲットだと考えています。75歳の方々のうち、どのような経験のある方が、どのような職種で活躍できるかということを、今研究開発している状況です。例えば、造船の分野においては、80歳を超えた技能者が働いていることがあります。

坂本:非常にアナログな部分があると聞きます。

清水:おっしゃるとおりです。私もですが、60歳を過ぎるといきなり「デジタル化しろ」といわれても不可能です。したがって、その人の特性に合ったキャリアチェンジを考えられたらよいのではないかと思っています。

高齢の方をメーカーに派遣するのは、実はけっこう難しいと我々は考えています。しかし、我々の請負現場やこれからビジネスパートナーになる製造現場でキャリアを積んできた方々がキャリアチェンジしやすい分野について、実はすでにいくつか目処をつけています。

そのようなところで働いていただき、元気でしたら80歳くらいまで働いていただいてもよいのではないかと思います。そうすることが、おそらく社会保障の上においても役に立つのではないかと考えています。

坂本:請負は、どちらかといいますと自由が利くとも言えます。御社が「この方なら年齢は関係なく技術もあるし適切な人材だ」ということを保証するということですね。

清水:おっしゃるとおりです。

坂本:このあたりは研修をきちんと受けて働いていただくというのも強みなのですね。

質疑応答:EVへの本格的な転換による影響について

増井:「これから本格的にEV化していく自動車について、御社への影響を教えてください」というご質問です。

清水:EV化していくと、部品メーカーも大変なところがあります。ただし、部品メーカーの再編などの中で、いろいろな業種に転換したり、水素を燃料とした自動車についても展望し始めている部品メーカーがどうやらあるようです。

我々は、国内製造のEVのバッテリーは内製化するだろうと読んでいましたので、実は3年ほど前から布石をしっかり打っています。ふたを開けてわかったことは、EVで使うバッテリーの前工程が、半導体装置メーカーで活躍する装置エンジニアとの親和性が非常に高いことです。そのため、ここは非常に伸びるのではないかと期待しています。