会社概要
後藤伸応氏(以下、後藤):最初に、当社株式会社ニーズウェルの概要についてご説明します。本社は、千代田区にあるホテルニューオータニのガーデンコートに構えています。その他、新宿にもう1つのオフィスと、長崎にも開発センターを持っています。
代表取締役社長は船津浩三で、東証プライム上場企業です。従業員数は現在582名です。
1.1) 決算ハイライト①
後藤:続いて、当社は9月が決算期ですので、2022年9月期第3四半期決算の状況と業績予想を、執行役員の新井からご説明します。
新井千波氏(以下、新井):それでは、私から決算状況などをご説明します。第3四半期決算は売上高、利益ともに前年同期比で大幅な増加となりました。
力強い拡大トレンドが継続しており、その要因として、3点挙げております。特に、積極的なアライアンスにより販路が拡大し、顧客基盤が増強したことが主な要因と考えています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):こちらのスライドには「通信向け案件の拡大や大型のVDI導入案件の新規受注」とありますが、このVDIについて教えてください。
後藤:VDIはバーチャル・デスクトップ・インフラストラクチャーの略で、いわゆる仮想デスクトップと呼ばれるものです。最近はリモートワークが非常に盛んになっていますが、通常のパソコンのデスクトップ環境をサーバー上に置いて、デスクトップ画面だけを自分の手元に映す技術です。
こちらはお客さまからの引き合いも非常に多く、普通はサーバー上に例えば私なら私の画面を置いて、それを自分の手元に映すのですが、今回受注した案件はサーバー上にある1つの仮想デスクトップを複数の人で共有することができます。そのような難易度の高いものを受注できたことが、今回売上が増えた1つの要因になりました。
坂本:仮想デスクトップを複数で共有できることはそれだけメリットがあるのですか?
後藤:やはり1人1台分の仮想デスクトップを用意すると、それだけ費用がかかってしまいます。また、例えば「同時に300人使います」と言っても、常に300人が使い続けるわけではないため、250台ぐらいにしておいて、使わないところは一部共有するという方法が技術的に可能です。それが結果としてお客さまのコスト削減にもつながります。
増井麻里子氏(以下、増井):「顧客基盤が増強」とも記載されていますが、こちらはお付き合いしている会社が増えたのか、それとも既存顧客の深掘りでしょうか?
後藤:主に新規の取引先が増えたと考えています。また、業務提携先の企業が増えており、そちらとの協業による販路拡大で、新しいお客さまとの取引が増えたことが顧客基盤の増強につながりました。
1.1) 決算ハイライト②
新井:第1四半期から第3四半期まで売上、経常利益ともそれぞれ過去最高額を更新し、業績予想を上回る勢いで進捗しています。
坂本:「業績予想を上回る勢いで進捗している」というお話ですが、第4四半期の経常利益予想を含めた今期予想は少し保守的に見受けられます。その背景や年度末までの流れを教えてください。
新井:経常利益は第4四半期で残り1億3,800万円と、多少控え目な予想との印象があるかもしれません。
当社は今期すでに2回の上方修正を行っており、第3四半期の時点ですでに8割の進捗となっています。多少の上積みが可能な状況ではあると考えていますが、優秀な社員の確保という観点から、業績目標を達成した暁には、社員への還元も考えたいという当社代表の意向があるため、現時点では据え置いています。
坂本:確実に目標を達成して、社員にはボーナスなどで還元したいとの意向もあるわけですね。
後藤:おっしゃるとおりです。
1.1) 決算ハイライト③
新井:次は、中期経営計画についてです。当社では2023年9月期で売上高100億円、経常利益10億円という目標を立てています。現在2022年9月期は既存事業で67億円の予想ですが、残念ながらM&Aがまだ成立していないため、残り33億円を来年1年間で追い上げていきたいと考えています。
対策と見直しとして、既存事業のウエイトを少し拡大していきたいと考えています。一方で、M&Aは引き続き探索を継続しており、価値算定中の案件も複数あるため、こちらのほうも何とか成約に結びつけていくことができたらと考えています。
また、過去には新株発行による調達を行いましたが、今後M&Aの成約でさらに資金が必要となった場合は、銀行借入を検討していきます。
坂本:M&Aの規模にもよると思いますが、銀行借入の場合、現在は自己資本率がかなり高い中で、どのぐらいまで低下を許容されますか? イメージがあれば教えてください。
新井:現在の自己資本比率は第3四半期の時点で75.9パーセントです。例えば20億円程度の借入を行うとすると、単純に計算して自己資本比率は5割くらいになるかと思います。このくらいの水準は確保しておきたいと考えています。
1.2) 業績進捗率
新井:業績進捗率です。上方修正に対して売上高74パーセント、経常利益80パーセントと順調に進捗しています。
1.3) 経常利益(累計)増減要因分析
新井:経常利益の増減要因分析として、受注の増加や高付加価値案件を獲得できたことで、売上総利益が大幅に増加し、前年同期比10.3パーセント増となりました。経常利益も前年同期比28.2パーセント増となっています。
1.4) 2022年9月期 業績予想
新井:2022年9月期の業績予想は、2期連続増収、11期連続増益予想とし、売上高67億円、経常利益6億9,800万円を目指しています。
坂本:業績が伸びている理由として、業務系システム開発の好調があると思いますが、中でも特に伸びている分野があれば教えてください。
後藤:業務系システム開発で特に伸びている分野は、この四半期では、通信キャリア向けのシステム開発です。システム開発の工程では最後に試験を行うのですが、そのボリュームが非常に多かったため大きな伸びにつながりました。
その他、官公庁系の案件もさまざまな情報管理システム開発などで、受注増となりました。また、当社が得意とする生命保険会社向けのシステムでも、最近特にDX絡みの開発が活発で、その分野で増えた開発も大きく受注に取り込めたと見ています。
1.5) 配当と株主還元
新井:配当と株主還元です。2022年9月期については、12月の株主総会後に1株当たり20円の配当金をお支払いしたいと考えています。昨年2021年9月期には35周年というイベントがあったため、記念配当5円を乗せましたが普通配当では18円でした。普通配当ベースでは2円の増配となる20円で、4期連続増配と考えています。
坂本:株主還元について、前回は「配当性向30パーセントを目処に」というお話しだったと思いますが、足元では40パーセントくらいになっています。業績は好調とはいえ、それでも配当性向は高いと思いますが、このあたりのイメージがあれば教えてください。
新井:当面は現在の1株当たり20円の配当額を下回らないようにしたいと考えていますが、可能であれば増配ももちろん検討していく方針です。
2.1) 経営理念・経営スローガン
後藤:続いて、事業の成長戦略についてご説明します。当社の経営理念は「広く経済社会に貢献し続ける」で、経営スローガンとして「Try & Innovation」を掲げています。
2.2) 成長の軌跡
後藤:当社の成長の軌跡についてご説明します。当社は1986年に経営コンサルティング会社として始まり、その後1992年頃から現在につながる業務系システム開発を開始しました。そこからはスライドに記載のように右肩上がりで売上高を伸ばしつつ、従業員数も着実に増やしてきました。
リーマンショック後に少し足踏みしましたが、その後持ち直し、上場して現在に至っています。引き続き業容拡大に努めていく所存です。
坂本:リーマンショックから少し足踏みしたとのことですが、足元の成長は著しいと思います。もともとコンサルからスタートしたようですが、創業のきっかけと経営理念について教えてください。
後藤:1986年に創業者の佐藤一男が、現在の経営理念である「広く経済社会に貢献し続ける」という思いのもと、経営のコンサルティングとシステムを含めたサービスを世に提供していきたいと、最初は3名でスタートした会社です。
ニーズウェルの社名も、お客さまの絶え間なく湧き出るニーズと、それをくみ取る井戸のような会社でありたい、井戸は英語でwellですので、お客さまのニーズをくみ取るという意味で「ニーズウェル」と名付けました。
2.3) 中期基本方針
後藤:当社の中期基本方針として、「派遣型ビジネスからの脱却、そして真のシステムインテグレーターへ」を掲げています。
2.4) 3つの強み
後藤:当社の強みとして3つ挙げています。特に、金融系システム開発力が一番の強みで、生命保険会社や損害保険会社の業務系システム開発に実績を持っています。
また、エンドユーザーとの取引も増えており、確実に収益を上げてきています。そのエンドユーザー取引拡大にもつながっている、ソリューションの提供にも非常に力を入れており、最近のニーズであるAIやDXに積極的に対応していくことでエンドユーザーとの取引を増やし、業容拡大していきたいと考えています。
システム開発について、この業界をご存じない方に向けて、簡単にご説明したいと思います。特に1つ目の強みである金融系システム開発では、例えば生命保険だと私たちが保険に加入する時には保険会社の方は当然住所・氏名から保険商品などのいろいろな情報を登録して最終的に私たちに保険証券を渡すという流れですが、その裏では保険会社の職員がシステムに各種情報を入力しており、住所・氏名から保険のプラン、金額など多数のデータをすべて登録しなければいけません。
その保険会社のデータベースに登録するための画面や金額を計算する仕組みなどはすべてプログラミングしてシステムを作っています。また、そのプログラムが動くサーバーと呼ばれるコンピュータが必要ですし、それらをトータルに作り上げるのが当社のような会社の仕事となります。
坂本:比較的保険は事務が大変です。登録や請求もそうですし、代理店のシステムにも接続しなければいけません。それもけっこう大変と聞きます。
後藤:職員向けシステムや顧客管理など、いろいろなものがありますし、保険商品でも今だと新型コロナウイルス感染症に対応したものもありますね。
増井:新しい商品も多く出ていますしね。
坂本:商品ごとにシステムは載せ替えると言いますか、追加していかなければいけないのでしょうか?
後藤:新しい保険商品を出すとなると、やはり何らかのシステム対応は必要で、私たちのような会社がその内容に従い、お客さまとともに開発を進めることになります。
坂本:忙しいでしょう?
後藤:確かに忙しいですが、おかげさまで当社としては売上にもつながります。
2.5) 中期経営計画 1業績目標
後藤:来期、10月から中期経営計画の3ヶ年目に入るのですが、業績目標として、2023年9月期で売上高100億円、経常利益10億円を掲げています。この10月から始まる期が最終年度ですので、計画の大詰めということで取り組んでいます。
2.5) 中期経営計画 2売上拡大
後藤:売上高100億円をどのように達成するかという内訳ですが、まずはスライドの下のほうにM&Aとありますように、先ほどの説明のとおり自社の売上拡大に加え、シナジーを生み出せる会社とのM&Aで売上を増強しようと考えています。
また、スライド中央に物流ビジネス、コネクティッド、ソリューションの各ビジネスが記載されていますとおり、当社が市場のニーズに合わせて力を入れている分野で、それぞれマーケットも大きいため、ここに注力して売上を伸ばしているところです。
坂本:こちらの中計の達成には、早急なM&Aが必要なのではないかと思いつつ、もしくは既存事業の売上で達成する方法もあるかと思います。実際に既存事業の売上について前回、業務提携などがけっこう増えてきてはいるとうかがいました。
業務提携だけで目標の達成を目指すのであれば、人員が足りないため外注も相当入れないといけないと思いますが、調達の問題もあるところだと思います。M&Aを含めて、目標達成までをどのようにイメージしているか、教えていただけたらと思います。
後藤:先ほど、M&Aの進捗が課題とお話ししましたが、その分、既存事業のさらなる拡大に力を入れています。その分業容が広がるため、エンジニアの増員も重要になります。当社はまずは社員数を増やして対応していこうということで、毎年の新卒採用をかなり強化しています。
今年も60名採用し、来期はさらに増やそうと考えています。そうして社員数全体を増やすとともに、お客さま対応として重要である管理職やリーダー層を育てるために、さまざまな外部の研修や、社内での研修プランも拡充しています。
しかしながら、社員だけでは足りないため、ビジネスパートナーとの協業も増やすために、当社はコアパートナー制度を設けており、協力会社とも強いタッグを組んで双方で業容拡大しようと取り組んでいます。
2.6) 重点施策
後藤:中期経営計画を達成するための重点施策として、当社では7つの項目を掲げて進めています。
2.6) 重点施策 1企業価値向上の推進 i
後藤:重点施策の1つ目は企業価値向上の推進です。先ほどお話しした「広く経済社会に貢献し続ける」という経営理念を推進するために大きく4つの施策を進めています。スライド左下の業績については、記載の各指標を目標として業績向上に取り組んでいます。スライド左上のIR・PRについては、投資家の方々やお客さまへの発信を強化しています。
スライド右上に記載した資本政策については、M&Aや自己株式の取得なども進めています。最後にスライド右下のサステナビリティについては、ESG、SDGsやコーポレートガバナンスについて世界中のあらゆる企業が取り組むべきですから、当社もITの切り口から課題を解決できるように取り組んでいます。
2.6) 重点施策 1企業価値向上の推進 ii
後藤:また企業価値向上の施策として、資本業務提携を始めとした協業関係の構築を積極的に推進しています。販路の拡大、受注の増加、取扱製品の拡充にもつながります。また協業他社と相互に技術者の拡充もできます。スライドの表に記載のとおり、多くの企業との提携を推進することで成長路線へつなげています。
2.6) 重点施策 2物流ビジネスの拡大
後藤:重点施策の2つ目が物流ビジネスの拡大です。コロナ禍以降、ネット通販のニーズがさらに高まっており、宅配量も増え物流が大きな課題となっています。当社ではITの知見を活かし、倉庫管理システムを自社開発しました。
「SmartWMS」という名称でお客さまに展開しています。「WMS」というのは倉庫管理システムの略で、このシステム単独で使うものではなく、当社は物流倉庫の業務をコンサルティングする会社や倉庫で必要となる搬送の機械などを扱うメーカーとも協業しています。
すなわち、物流倉庫業務に対しトータルなサービス提供をすることでお客さまの課題を解決する体制を組んでいるところが、他社との差別化・優位性を発揮している部分となっています。
2.6) 重点施策 3AIビジネスの拡大
後藤:重点施策の3つ目として、当社はAIビジネスの拡大を進めています。「Work AI」というブランド名でラインナップを拡充しており、最近ではスライド中央にある「Es Prophetter」を新たに当社のソリューションとして開発しました。
これは部材の概算見積りをAIによって自動化するものです。営業の方が今まで経験に基づく勘で作っていたお客さまに出す見積りを、AIである程度自動化し、「ベテランの勘」をシステム化したものです。これにより、経験が少ない社員でも精度の高い見積りが出せるようになります。
増井:こちらは見積りのAI化がしやすい状態や、難しい状態といったものはあるのでしょうか?
後藤:今回開発のきっかけとなったのは、橋梁を作る時の土台の橋脚のところに使うさまざまな部品を提供している会社からのご要望でした。
部材と一口に言っても、その都度、サイズの違いや振動吸収のための素材や重量などさまざまな要素があります。今回のお客さまは過去の見積り時のデータをお持ちで、見積った金額に対する部材の実際の重さや型番、縦横の寸法といったいろいろなデータが蓄積されていたのですが、その相関性が「ありそうだがわかりづらい」とのことで、当社に相談がありました。そこで当社にてデータの分析を行った結果、「これならAIモデルを作れる」とわかりました。
このように、業種業界は特に問わないのですが、必要なのは数値化されたデータで、数値にできないような、人間の勘だけでなされているようなものは扱いにくいという特性はあります。いろいろな業界から問い合わせもいただいているのですが、基本はその会社が蓄積したなんらかの数値データがあれば、AI化できる可能性があります。
2.6) 重点施策 4ニアショア開発の拡大
後藤:重点施策の4つ目としてニアショア開発の拡大を進めています。冒頭でお伝えした長崎開発センターは、2024年9月期には100名体制を目指しています。地元の会社との協業を組み合わせて開発体制としての100名を目指したいと考えています。
坂本:長崎はエンジニアが多いと思いますが、長崎大学は経済学部のイメージが強く、高専も佐世保にあるとなると、UターンやIターンが多いと想像しています。その割合がどのようになっているか、教えていただけたらと思います。
後藤:中途採用ではUターン、Iターンの採用が多いです。新卒採用は地元の大学からの採用が中心です。やはりUターンは、首都圏でITの仕事をしているが地元に戻りたいという方にマッチしていると思います。
新卒採用については、長崎大学は理系の学部も充実しており、IT系にも力を入れています。AIの教育などで「地元長崎のいろいろな課題解決をITで」という取組みを工学部でも行っています。当社のように長崎市に開発センターを立ち上げたことが伝わりますと、学生本人だけでなく親御さんから見ても就職先として興味を持っていただけているようです。
坂本:上場企業が長崎に開発センターを作ったという点ですね。
後藤:そうですね。よい就職先ができたと受け止めてもらえていることで、最近は採用が順調にできるようになってきています。
増井:新卒採用は必ずしもそのような情報系の方ばかりではないと思うのですが、育成プログラムなどはあるんでしょうか。
後藤:これは長崎採用に限らないのですが、東京の採用でも文系学部出身の比率がまだ多いです。
坂本:昔からエンジニアは意外と文系出身の人が多いですね。
後藤:エンジニアといえども「入社してから覚えます」という文化の業界ですので、文系比率が基本的には多いです。そのため、最初は入社したら外部研修でプログラミング言語を覚えてもらうのですが、その後もOJTだけでなく2年目、3年目、5年目といった節目で社内研修のメニューを作っています。
このように外部研修だけでなく、社内でノウハウ化して当社独自の研修プログラムを構築して社員教育の底上げを図っています。文系卒でも3年くらいでまったく遜色なくエンジニアとして育っていると思っています。理系出身者とは入社直後だけは差がありますが、その後は大差ないです。
2.6) 重点施策 5事業基盤の確立
後藤:重点施策の5つ目は事業基盤の確立です。業務系システム開発が当社の強みですので、当社が上場企業として将来にわたり発展を続けるためにこの分野を強化したいと考えています。強みとする金融系に加えて、物流の分野もさらに拡大します。
またサーバーやネットワークなど、「IT基盤」構築の分野にも非常に力を入れています。業務系システムの開発とともに、サーバーやネットワークなどのIT基盤も含めた受注を拡大します。
最近は世界規模で、ネットワーク障害が起こりシステムが急に使えなくなるということが起きており、ネットワークの重要度は増しています。サーバーやネットワークの構築、特にクラウド化している環境構築を、引き続き拡大していきます。
また、今後は自動車や医療機器分野でのシステム開発だけでなくインターネットを介したさまざまな機器とシステムを接続する分野がさらに盛んになると考えています。当社も、そうしたコネクティッド技術の分野に力を入れています。
2.6) 重点施策 6ソリューション・ビジネスの拡大
後藤:重点施策の6つ目はソリューション・ビジネスの拡大です。
自社ソリューションとして、「ITリエンジニアリング」サービスを展開しています。「DX化をどこから始めればよいのかわからない」と課題を抱えたお客さまも多く、当社の経験や実績を組み合わせたサービスを提供しています。
また、スライド下部にはここ最近に提供開始した自社ソリューションを記載しました。「Concur(コンカー)」という経費精算システムは日本でも導入する企業が非常に増えてきました。当社はお客さまに「Concur」の導入支援を行いながら、課題解決のため、ここに記載している連携ソリューションを組み合わせて提供しています。このように、さまざまなラインナップを拡充しています。
坂本:こちらはお客さまのシステムに組み込むのか、SaaSで提供するのかどちらになりますか? また、営業方法なども教えていただけるとイメージがさらに湧くかと思いますので、よろしくお願いします。
後藤:現在はSaaS型で、サブスクリプション型での提供が非常に多くなっています。お客さまがすでに使用しているシステムも同じ状況ですので、当社が自社開発しているソリューションやサービスも、基本的にはSaaS型で月額制というかたちで提供しています。
営業方法については、既存のお客さまへのご提案に加え、最近特に強化しているのはオンライン営業です。
自社ホームページでのソリューション紹介と、日々コンテンツの改訂による情報の最新化、自社セミナーをオンラインで開催、メルマガの配信を行っています。また展示会については最近はリアルとオンライン両方での開催が多いですが、当社ソリューションに沿って積極的に出展しています。
さらにPR活動の一環で、販促キャンペーンを開催する時にはオンラインを駆使し、各種プレスリリースやPR記事など、さまざまな配信方法を組み合わせて販売促進を行っています。他社も同様かと思いますが、今後はこのような営業活動が主流になると考えています。
坂本:他社でもけっこう広告費をかけて、Webに注力していますね。御社はWeb広告まではまだあまり行っていないという感じですか?
後藤:Web広告は現時点ではあまり行っていませんが、新聞への広告掲載を行うなど、ターゲットを想定しながら行っているところです。以前、品川駅のモニターに広告を配信したこともあります。
坂本:デジタルサイネージのような広告ですか?
後藤:そうです。いろいろなところでお客さまの目に触れるように、広告配信を進めています。
2.6) 重点施策 7エンドユーザー取引の拡大
後藤:重点施策の7つ目は、エンドユーザー取引の拡大です。冒頭にお話ししたとおり、力を入れています。業界の特性として、大型の基幹システム開発では、大手メーカーが請け負うことが多いです。その場合には、当社のような企業は大手メーカーから再委託するかたちで受注します。そうしたお取引は維持しつつ、併せて、現在は独自にエンドユーザーとの取引を増やしているところです。
先ほどご説明したソリューション・ビジネスはエンドユーザー獲得に非常に貢献していますので、引き続き拡大を進めていきます。
坂本:こちらは前回もお話ししていただいた内容ではありますが、やはりこの分野については御社の強みで技術もあるため、継続して受注できるということですね。
後藤:おっしゃるとおりです。現在もエンドユーザー開拓の良い方法になっていると考えています。
坂本:そうですね。ご説明は以上になります。ありがとうございました。
質疑応答:資本業務提携の成果について
増井:「資本業務提携を積極的に進めている中で、成果が出ている例があれば教えてください。」というご質問です。
後藤:資本業務提携については、こちらのスライドに記載しています。このリストには、いろいろな種類の業務提携先を記載していますが、ご質問いただいた資本業務提携を進めている中での成果についてご説明します。
1つ目は、スライドの表の中央に記載されているキヤノンITソリューションズの事例です。最近は、1からプログラムするのではなく、比較的少ない工数でプログラミングできるローコード開発ツールが世界で普及し始めています。
キヤノンITソリューションズも「WebPerformer」というツールを自社開発しており、拡大に力を入れています。当社もキヤノンITソリューションズとの資本業務提携により、「WebPerformer」を双方のビジネスに活用しようと取り組んでいます。
実際に、当社の案件でこのツールを活用したり、キヤノンITソリューションズ側の「WebPerformer」を使った案件を当社が支援したりするなど、相乗効果があり、成果が出てきていると考えています。
2つ目は、スライドの表の一番上に記載しているアイティフォーの事例です。金融系のソリューション提供に非常に強みのある会社です。
アイティフォーのお客さまに対して、当社の開発力やソリューション、IT基盤などの部分で協力できる範囲が多くなってきています。こうした支援をさせていただくことで、売上拡大の成果が出てきていると考えています。
質疑応答:東京と長崎における採用者数の割合について
坂本:先ほど、長崎開発センターの採用のお話をうかがいましたが、東京と長崎ではそれぞれどのくらいの比率で採用が行われているのでしょうか?
後藤:東京のほうが人数が多いです。今期の実績では、今年4月に入社した60名のうち、10名が長崎県採用となります。毎年10名程度は長崎から採用したいと考えていますので、今後も同じくらいの比率になると思っています。
坂本:長崎開発センターの方が人事異動で東京のオフィスに転勤することはありますか?
後藤:最初から全員を長崎開発センターに配属するわけではなく、半数はまず東京のオフィスで1年ほど研修やいろいろな案件を経験した後、長崎に戻るかたちになります。
また、東京側から長崎開発センターに業務を発注しているため、打ち合わせなど東京ではどのように進めているかを理解することや、お客さまと対面で打ち合わせるなど、時々出張してもらうことで、長崎だけでなく東京での感覚も掴んでもらうようにしています。
坂本:ありがとうございます。このモデルが成功したら、他のところにも拠点を作ろうと考えていますか?
後藤:現時点では具体的な計画はありません。まずは長崎開発センターを100名体制にするということに集中したいと思います。
質疑応答:RPAの浸透度について
坂本:それでは、会場からいただいた質問がいくつかありますので、おうかがいしたいと思います。「業界的なお話ですので、なかなかお答えが難しいかと思いますが、RPAの導入はどのくらい浸透していると思いますか?」というご質問です。
後藤:非常にお詳しい方ですね、よい質問だと思います。
坂本:御社は特に、保険会社のところまでRPAを用いていますので、やはりプラスになる場所ですよね。
後藤:そのとおりですね。RPAは、出始めのころにまずは勢いよく広がりました。最初は「まず入れてみよう」というお客さまが多く、第1次フェーズとして盛り上がったのだと思います。とはいえ、使いこなせなかったお客さまも多く、その後いったん導入が停滞した時期もありました。
坂本:なるほど。
後藤:しかしそのようなお客さまも含め、だんだんと使い方がわかってきて、また盛り上がる時期に差し掛かっていると思います。当社のお客さまの中でも「RPAを全社展開したい」と追加のご要望をいただくことも最近増えてきています。
したがって、当社としてもそこは力強く支援しています。当社が取り扱っている「WinActor」だけでなく、世の中にはさまざまなRPA製品がありますが、現在さらにニーズが広がってきているのではないかと思います。
坂本:なるほど。最初は、OCRの進化系のようなかたちで、文字を置き換える程度のものから始まりましたよね。
後藤:おっしゃるとおり、最初はまだ活用範囲が狭かったのですが、現在はRPAを単体で使うだけでなくRPAを制御するサーバー製品を組み合わせるなど、自動化が進んでいます。
坂本:進化していますね。
後藤:そのとおりです。当社も付加価値に力を入れており、RPA単体での使い方だけではなく、例えば、チャットからの入力で経費を精算するような使い方も可能にしています。
坂本:チャットで入力するだけで動くということですか?
後藤:そうです。チャットからの指令が出されるとRPAのシナリオが動いて、そこから自動で別のシステムを動かすといったソリューションを提供しています。
増井:すごいですね。
坂本:そう聞くと、初めの頃からはずいぶん進んでいるように感じますね。
増井:プログラミングで命令を送るというわけではないのでしょうか?
後藤:そうです、わざわざ専用のプログラムを作らないで済みます。そのような意味では、従来のシステム開発も行ってRPAも活用するといった、当社ならではの提供の仕方ができているのではないかと思います。
坂本:なるほど、今後ますます進化していくのでしょうか?
後藤:その可能性が非常にあると思います。
坂本:おもしろいですね。引き合いもやはり増えていますか?
後藤:はい、おかげさまで増えています。
質疑応答:業務工程別の強さと量について
坂本:「御社のお仕事は上流工程と下流工程、どちらが強いですか? 受注量も含めて教えてください」というご質問です。
後藤:引き続き、鋭いご質問ありがとうございます。まず、以前はやはり、下流工程の業務が多かったです。
坂本:そうですよね。そのような業界の成り立ちですよね?
後藤:そのとおりです。
坂本:直接取引が増えてきてからはどのように変化したか教えてください。
後藤:おっしゃるとおり、最近はエンドユーザーとの直取引が増えました。また、ソリューションの導入案件が増えたことにより、上流工程の必要性も増え、非常に力を入れています。そのような部署が立ち上がってきたことで、当社のエンジニアも育ってきており、半々とまではいきませんが、上流工程の受注量はかなり増えてきたと考えています。
坂本:すごいですね。
後藤:一方で、下流工程ももちろん大切です。
坂本:安定はしますからね。
後藤:そのとおりです。システムは、完成してから実際に運用していくところが本番だと思います。下流工程はそこにつながる部分ですので、当社も引き続き力を入れていますが、上流工程の割合は今後も増やしていく方向で考えています。
坂本:そのために、なにか取り組まなくてはいけないことはありますか? 今までどおり進めていれば、エンドユーザーが増えて、勝手に上流工程の割合が増えるということはあるのでしょうか?
後藤:上流工程といえども、お客さまもはっきりとは認識していないような課題の解決を行っていかなければ、本当の上流工程とは言えないと思っています。
坂本:確かにそうですね。
後藤:お客さまの本当の目的は「課題解決」ですので、当社としては現在、お客さまからの直接的な要望だけではない、課題の解決に向けた提案ができるエンジニアを少しでも増やそうとしているところです。
そのためには、そうした提案ができるエンジニアのノウハウを社内に浸透させる必要があると考えており、ノウハウをテンプレート化したり、必要であれば研修も行ったりするなど、育成を強化しています。
そこは他社も同様かと思いますが、企業内での努力がなければ、これ以上上流工程を増やすのは難しいと思っています。やはり大切なのは「人」だと思いますので、引き続き社員の育成に力を入れたいと考えています。
質疑応答:今後の買収対象について
坂本:「M&Aについて、財務の目安を見ながら買収を行っていると思いますが、自社より大きな企業買収も視野に入れていますか?」というご質問です。こちらは案件によるのではないでしょうか?
後藤:おっしゃるとおりです。候補先選定で当社が一番大切にしていることは、どれだけ当社とのシナジーを想定できるか、当社と相手先企業が今後、一方的ではなくお互いに業容拡大していけるかどうかを基準として選んでいますので、個々の案件によると思っています。
坂本:この業界だと、他社でも価値算定ができるので、自社より高いということもわかってしまうのではないですか?
後藤:そうですね。
坂本:これから景気が悪くなり赤字になることがあれば、多少安く買える可能性はあるかもしれませんが、ただ大きい企業を買収しようとすると、財務をひどく毀損してしまうところがあるため、なかなか難しいのではないかと思います。
後藤:そのとおりです。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:新規顧客の今後の見込みはどのくらいでしょうか?
回答:明確な数値でお答えすることは難しいですが、ソリューションビジネスでは特に新規顧客の割合が増えていることや、業務系システム開発等におきましても横展開で新規顧客を取り込んでいきたいと考えていることから、引き続き新規顧客を開拓したいと考えています。
<質問2>
質問:御社のダイバーシティに関する考えを教えてください。
回答:社員の採用や育成、登用においては、性差や国籍の差等によることなく、公平に評価して決定しています。
ダイバーシティやジェンダー平等をいっそう充実したものとする取り組みとして、「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」を策定し、2024年3月までに「女性社員・女性管理職比率 30パーセント以上」「育児休業の取得率 40パーセント以上(男女合計)」等を掲げています。また、当社の開発拠点のある長崎県においては、「ながさき女性活躍推進会議」の趣旨に賛同し、女性の活躍に向けた自主宣言を行っています。
これらの取り組みを進める中、男性の育児休業制度の取得への理解も進み、2022年9月期には、対象の男性社員の42.9パーセントが育児休業を取得する見込みです。
<質問3>
質問:資金が必要になった時に、再度MSワラントをすることを検討しますか?
回答:銀行借入を検討する予定です。