(1)会社概要

酒井宏明氏(以下、酒井):エクシオグループ経営企画部コーポレート・コミュニケーション室IR担当酒井と申します。この度は当社をご紹介する貴重な機会をいただき本当にありがとうございます。本日は当社のことを知っていただいたうえで、より一層理解していただくために会社の概要、事業概況、中長期の戦略、株主還元の方針などをご説明したいと思います。

まず、会社概要を簡単にご紹介します。当社は1954年5月創立で、現在68年目です。詳細はスライドに記載のとおりですが、2021年度の連結売上高は5,948億円、従業員数はグループ全体で15,847名という規模です。本社は渋谷にあり、支店・営業所は北海道から沖縄まで全国に所在しています。

(2)沿革

酒井:創業以来の歩みを表した年表です。1954年に旧社名「協和電設」として創業し、戦後の日本の通信網の整備に貢献してきました。

徐々に事業領域を拡大していくことに合わせて、1991年に「協和エクシオ」に社名を変更しました。エクシオはラテン語で「殻を破る」という意味があり、「通信分野だけでなく、既存の領域を超えてさらに外向きに挑戦していきたい。そして、一層の飛躍を目指していきたい」という気持ちを込めています。

その後、2000年代に入ってからは、大小さまざまなM&Aを経て、グループに入っていただける会社も非常に増えてきました。現在では、連結売上高5,000億円を超える規模まで大きく成長することができています。

(3)社名

酒井:昨年は「協和エクシオ」という名前になって、ちょうど30年目の節目の年でした。「殻を破る」というラテン語に込められた心を大切にしながら、当社はグループの中核会社として100社を超えるグループ会社の経営リソースや技術を結集して、新しい価値を創造し続けていきます。そして、そのような取り組みを通じて、グループ会社全体で一緒に大きく成長していきたいという思いを込めて、昨年10月に「エクシオグループ株式会社」と商号を変更しました。

(4)ビジョンとパーパス

酒井:社名の変更を機に、当社グループのブランドを再定義し、あらためて存在意義(パーパス)を制定しました。パーパスを策定するにあたり、グループの全社員へのアンケートや、お客さま・パートナー企業さまへのインタビューなどを実施しました。関係者全員のエクシオグループに対する思いや期待の声を集約し、約半年くらいの期間にわたって議論を積み重ねて作成しています。

そして、創業以来培ってきた技術力を活かしながら未来を創り、社会に貢献していくことが会社の使命だと考えて、「“つなぐ力”で創れ、未来の“あたりまえ”を。」というパーパスをワーディングしました。これを社員一人ひとりの志として、実践していきます。

(5)事業概要

酒井:ここからは、少し具体的に事業内容をご紹介できればと思います。当社グループの事業は大きく分けるとエンジニアリングソリューションとシステムソリューションに分けられます。事業区分としては、エンジニアリングソリューションをさらに2分割して、通信キャリア向けの通信キャリア事業、都市インフラ事業、そしてシステムソリューション事業となっています。

2021年度末の事業ごとの売上規模は、スライド下段に記載のとおりです。通信キャリア事業が約50パーセント、都市インフラ事業とシステムソリューション事業の合計が約50パーセントと、おおむね半々くらいの比率になっています。

また、スライド上段のイラストをご覧いただくと、社会全体の中のいろいろなところで我々の事業が活躍していることがご理解いただけるかと思います。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):通信キャリア事業が売上の50パーセントくらいとのことですが、この比率は年々落ちているのか、上昇しているのか、最近の動向を教えてください。

酒井:通信キャリア事業の比率自体は次第に落ちてきています。ただし、少し誤解しやすい部分ではあるのですが、通信キャリア向けの仕事がどんどんなくなって、売上が下がっているわけではありません。都市インフラ事業やシステムソリューション事業を伸ばしてきたことで、結果的に比率が下がってきているということです。

例えば昨年来、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が盛り上がっているため、各家庭で光ファイバーを拡充・増強するニーズが強まったり、地方においても光回線を配備するという特需的な動きが非常に多くなったりしています。このように、通信キャリア向けの仕事自体も非常に盛り上がっている中で、その他の事業拡大によって結果的に下がってきたということです。

(5)事業概要-通信キャリア

酒井:通信キャリア事業についてです。創業以来のコア事業で、通信網の接続工事を行うセグメントです。光ファイバーのニーズについてもお伝えしましたが、各家庭と電話局、電話局と電話局、そして通信先の電話局から家庭へと通信を繋ぐことが、このセグメントのミッションです。

固定通信だけでなく、当然ながら無線の分野にもしっかり対応しています。移動通信については、昨今は5Gなど非常に進化を続けている通信技術もありますので、我々も研鑽を続けながら日本の通信を支え続けていきます。

(5)事業概要-都市インフラ

酒井:都市インフラ事業についてです。こちらのセグメントは、創業から通信分野で培った技術力を活かして、電気・土木などの領域に応用して発展を遂げてきました。

各種通信設備の機器の稼働には電気が必要であり、また、通信ケーブルを地下に這わせるための地下トンネルを作る土木の技術も持っていました。このように通信、電気、土木などの技術を組み合わせて、ケーブルテレビ事業者や鉄道会社などの通信設備の構築や、オフィスビル・データセンターなどの電気設備、無電柱化をはじめとした都市土木工事に積極的に取り組んでいます。

昨今では再生可能エネルギーがテーマとしては盛り上がっていますので、そのようなところも積極的に手がけています。少し前には、非常に大きな太陽光発電設備構築の案件もありましたし、廃棄物の処理プラントなどのユニークな案件も手がけています。非常に多岐にわたる領域で活躍できているのが都市インフラ事業です。

坂本:先ほど、「通信キャリアの仕事が減っているわけではなく、その他の部分が増えている」というお話をいただいて、その1つが都市インフラ事業だと思います。さまざまな仕事があるとのことでしたが、都市インフラ事業の中で特にどの分野が伸びているのか教えてください。

酒井:再生可能エネルギーについて少し触れましたが、昨今の社会情勢の中でエネルギー分野が非常に伸びています。過去にメガソーラーの案件を手がけましたし、最近ではデータセンターの需要が非常に盛り上がっているため、その電気・通信工事に取り組んでいます。このように足元でも大型の案件が連続で入っている状況です。

また、近年では土木工事の需要も強く盛り上がっています。後ほどご説明しますが、社会インフラが老朽化していく中で、例えば高速道路の随所にトンネルがありますが、その脇に這わせている通信ケーブルの補修工事やリニューアルなどの案件も非常に増えてきています。

坂本:伝統的な土木の中の通信ということですね。

酒井:はい、いわゆる伝統的な土木の技術と言えますが、通信に絡む部分を手がけることが多いですね。

坂本:たしかに通信工事は多いですよね。

(5)事業概要-システムソリューション

酒井:システムソリューション事業についてです。こちらも基本的には通信キャリア事業で培った技術力を活かした事業ですが、通信キャリア向けの仕事とシステムソフトウエアの関連は薄いのではないかと思う方も多いかと思います。

昔は電話局の中にある大型の電話交換機の内部にソフトウエアが組み込まれており、その対応からSI(システムインテグレーション)の技術を培ってきました。現在は、ソフトウエアの受託開発を中心としたSI事業に加えて、周辺のサーバやLANなどのネットワークソリューションにも取り組んでいます。さらに、最近では新しくグローバル分野にも積極的に取り組み、このようなところも含めて事業展開しています。

(6)グループ体制と拠点

グループの体制についてです。現在、エクシオグループは100社を超える集団となっています。

特に、スライド左上に記載した5社が主要子会社という位置付けです。もともとは我々と同様、戦後の通信網の整備からスタートした通信建設会社です。高い技術力を持つこの5社が中心となって、グループに貢献していただいています。

スライド右側には拠点を示しています。日本全国に営業基盤があり、海外ではシンガポールの統括拠点をはじめ、フィリピン・タイに拠点を持って活動しています。

坂本:海外拠点はシンガポール、フィリピン、タイとありますが、アジアを中心に海外展開を行っているのでしょうか?

酒井:基本的にはアジアパシフィック地域を中心に取り組んでいます。拠点としては記載していませんが、インドネシアでも活動していますし、シンガポール、フィリピン、タイと国を限定するというよりは、この地域を中心に拡大を図っています。

増井麻里子氏(以下、増井):海外売上高比率はどれくらいあるのでしょうか?

酒井:売上高は昨年実績で見ますと、200億円を超える規模感です。少し長い目で見て、ここを成長させていきたいと思っており、中長期的にはグループ全体の連結業績の10パーセント程度はグローバルで出したいと考え、取り組んでいます。

坂本:海外でもいろいろな領域の仕事をしているのでしょうか? 日本国内と同様の部分もあるかもしれませんが、どのような仕事が多いのか教えてください。また、今後どのように広げていきたいとお考えですか?

酒井:海外の通信企業からのお仕事は、日本と同様に発注いただいて対応しています。また、国内の都市インフラ事業やシステムソリューション事業に相当するような取り組みも行っています。

海外でも、M&Aでいろいろな会社にグループに入っていただきましたが、その中にはIoT関係や、新規事業に取り組んでいる企業もあります。海外のグループ会社においても、通信回りの領域から、都市インフラ、システムソリューションに至るまで、各事業のポートフォリオがきちんとできてきており、それらの企業を組み合わせて活動していくことができれば、大きな成果が期待できると思っています。

増井:利益率は日本と海外ではどちらが大きいのでしょうか?

酒井:収益性は、日本国内のほうが高いというのが実情です。特に2019年からグローバル市場を拡大してきているのですが、ちょうどコロナ禍の関係でロックダウンが現地でもあり、工事ができないというような時期がありました。

そのため、苦しい時期が続いてきたのですが、昨年は工事の受注状況もかなり正常化してきており、収支もトントンになるくらいまで持ち直しています。ここから、毎年10億円ぐらいの規模感で、収支改善していければと考えています。

(7)当社の事業領域

酒井:各セグメントの具体的な領域についてですが、先ほども少しスライドでお示ししたとおり、当社は全国規模で施工体制を持っています。さらに、その個々の案件においては、企画段階から実際の開発、施工、運用・保守に至るまで、一貫した対応が可能です。

事業はそれぞれ、通信キャリア事業、都市インフラ事業、システムソリューション事業と独立していますが、一方で親和性のある分野については、きちんと連携を図りながら協力して取り組む方針でおり、トータルなソリューションを提供するようなかたちで進めています。

坂本:全国規模で施工体制を持っていて、都市インフラあるいは社会インフラなどの整備をトータルで行うことができることが、恐らく御社の強みだと思うのですが、強みの一例を、簡単にでもよいので教えていただけますか?

酒井:まず強みの1つ目が、全国に施工体制を持っている点です。特に昨今は、自然災害などが発生した際に、ある特定の地域で、稼働が逼迫するようなことがあります。そのような時に、我々は、全国規模で稼働を調整し、例えば九州の水害に対して、東北のほうから人を送るとか、北海道から人を送るというようなかたちで、サポートに回り、支援するような取り組みができるのです。そのような体制を、すでに作り上げています。

強みの2つ目として、事業間の連携という意味で、例えば、通信事業も、電気事業も、空調の事業もすべてできるという特徴があります。そのため、付帯設備をすべて任せてくださいというような取り組みもできることになっています。

そこにさらにシステムソリューションみたいな事業分野、ソフトウェア回りなども組み合わせることによって、部門をまたいで横通しさせながら営業活動するようなところも、社内では取り組んでいるところです。

(8)近年の業績推移

酒井:近年の業績の推移です。前年度は売上高は5,948億円、営業利益は423億円まで到達し、過去最高の業績でした。

スライドからわかるように、今年度の計画でいくと、売上高は6,000億円ですが、営業利益は385億円と、若干減っている計画になっています。これは事業計画を立てる段階の中で、少し採算性が高めの案件が減少するというような、今年度の特殊要因などもしっかり織り込んだ上での減益計画だということです。

それでも過去2番目に高い水準で利益を想定しています。後ほど中期経営計画のお話をしますが、ここから2025年度目標に向かって、取り組みをしっかりと加速していくというかたちで考えています。

坂本:そちらは先ほど、足元の2022年度計画の減益については、採算性が落ちるためというお話だったのですが、この2023年度以降、中期2025年の目標まで示されている中で、こちらはどのようなカーブで、7.5パーセントの利益率まで伸びていくというイメージなのでしょうか? その取り組みを含めて、イメージを教えていただけたらと思います。

酒井:我々は今年の385億円が、2025年度に向けたカーブの中では、ある意味ボトムになると見ています。

確かに、今年度は昨年度に比べると、やや厳しいという状況ですが、このような環境にあっても、来年度以降につながる人財育成や、技術習得などのような取り組みを、社内では手を抜かずに進めているところです。

一例を挙げると、2024年以降ぐらいになろうかと思いますが、今後洋上風力というお話がでてきた時には、洋上風力の電力線のケーブルの陸揚げや、陸に揚げて既存の電力系統に接続していくといったような部分で、我々は活躍したいと考えています。

そのために、昨年、昭和電線さまと業務提携して、昭和電線さまの教育プログラムを活用した技術者育成を進めているところです。

このように、今年度は、減益となるかたちになりますが、来年度以降の2025年に向けた成長を実現するための弾込めの年というような位置づけで考えています。手を抜かずに今ここでしっかり取り組むことが、次の成長につながり、上昇カーブにつながっていくのだと考えています。

(1)2030ビジョンについて

酒井:長期ビジョン、中期経営計画について少しご説明します。我々の普遍的な使命は、事業を通じて社会課題を解決していくことだと思っていますが、これを継続していくために、今まで培ってきたエンジニアリング力を有効に活用しながら、ソフト開発なども組み合わせて、取り組んでいくことが重要だと見ています。

実際の現場のエンジニアリング力やソフトの開発力というものを、両方兼ね備えている会社はまだ少なく、この強みを生かして社会貢献や課題解決に挑戦し続けたいという考えです。先ほどグローバルのお話もしましたが、そちらもしっかり取り組んでいきながら、国内だけではなく、海外でも必要とされるような会社であり続けたいと考えています。

そのような思いを込めて、「Engineering for Fusion〜社会を繋ぐエンジニアリングをすべての未来へ〜」という「2030ビジョン」を作成しています。10年後のあるべき姿を見据えながら、最初の5年間でその基盤を着実に作り上げていくところを目標にしたのが、今進めている中期経営計画です。

(2)大きな変革の時代へ

酒井:そのような思いの背景としての認識が、こちらのスライドです。みなさまご承知のとおり、新型コロナウイルス感染症が未だに猛威を振るっているような状況で、世の中は非常に先が見通しにくい、かつ大きな変革の中にあるという認識です。

社会課題の面を見ても、環境破壊や、資源の枯渇、自然災害の増加などが問題になっています。既存インフラを見ても、高度成長期に建設した施設の老朽化が進んでいます。また、人口減少や、過疎化、さらに地方の空洞化といった社会課題もあります。

産業・社会面では、技術革新と共にプレーヤーが非常に大きく変わっている状況です。以前のようなレガシーの会社が失速していく中で、いわゆるGAFAのような新しい文化を持った会社というもので世界が作られ始めているところだと思っています。

また、我々や社会の意識面で、LGBTQやダイバーシティのような側面に、きちんと配慮した環境づくりを行う姿勢というのが求められる時代なんだろうと考えています。

(3)2030年に目指すポートフォリオ

酒井:今お話しした目標や認識のもとで、2030年の我々のあるべき姿はどのようになるのか、事業ポートフォリオのかたちに表したスライドです。前回、中期経営計画を策定した2015年度の時点では、通信キャリアからの売上が全体の3分の2を占めている状況でした。

通信キャリアの比率が下がってきていて、ここ5年で、グローバルを含めての新たな事業展開やM&Aによる業容拡大などを経て、全体の半分を下回るところまで来ています。

今後も、社会インフラの再生事業や再生可能エネルギーなどのような新たな領域に積極的に取り組みながら、2030年には3つの事業領域が概ね3分の1ずつ程度の、景気や社会情勢にも左右されにくいようなポートフォリオを実現していきたいと思っています。

そのための最初の5年の中期経営計画ですが、まず2025年の段階では、通信キャリアのシェアを概ね半分のところから40パーセント程度に持っていく見通しです。その分、都市インフラとシステムソリューションを30パーセントずつまで持ち上げていきたい考えです。

坂本:通信キャリアの割合が高い今の事業ポートを、各セグメントを同等程度まで成長させるというご説明ですが、もう少し、その理由を教えていただけますか?

通信キャリアの仕事は、頭打ちになるからでしょうか? 利益率が低いからなのでしょうか? それとも他の事業を伸ばしていくから自動的に実際減ってしまうのでしょうか?

酒井:2015年以来、今までは、通信キャリアの比率が下がってきたところです。ある特定の年度で、少し光ファイバーや5Gの需要が盛り上がったりする状況はあるのですが、少し長い目で見た時には、やはり光ファイバーなども、もう全国に行き渡っているような状況もあります。

仕事はなくなることはないと思うのですが、大きく増えることもないだろうと見ていて、ある意味、伸びしろが小さくなるというような感じだろうと思っています。他のセグメントを拡大させていく中で、結果として比率を下げていくことを続けていきたいと考えています。

収益性の観点のお話もありましたが、通信キャリアの事業は、創業以来当社にとって、技術力も経験値もあるものであり、そのような意味では収益性は非常に高く安定している状況です。

都市インフラやシステムソリューションの事業を、伸ばしていこうといった時に、今のところはまだ、通信キャリア並みの収益性までは到達はしていないわけなのですが、拡大していく中で、収益性も上げていくというところは、考えながら取り組んでいきたいです。

坂本:先ほど、同業他社のお話もしたのですが、御社の事業戦略は他社と異なっているのですか? 御社独自の強みみたいなものがあれば教えていただけたらと思います。

酒井:同業他社に関しては、出自という意味では、同じように通信建設業から始まっているため、通信キャリア向けの受注傾向は、かなり似ている状況だと思います。

したがって、通信キャリア以外のところをしっかり伸ばしていきましょうというような、基本的な方向感は一緒だろうとは思っていますが、どのような分野を伸ばしていきたいかというあたりに、差が出てくるだろうと感じています。

そのような中で我々としては、再生可能エネルギーなど、エネルギー関連事業について比較的強く取り組んでいます。特に足元のデータセンターの関係の電気工事などは、我々のほうがしっかり取り組んでいる領域だろうと思っています。

また、グローバルの分野についても、ここまで力を入れて取り組んでいる体制は、同業の中でも我々の特徴だと認識しているところです。

(4)中期経営計画の目標

酒井:具体的な中期の目標です。2030年度へ向けた2025年度の目標で、売上高は6,300億円、営業利益は470億円で、営業利益率としては7.5パーセントを目標としています。財務指標として、ROEは9.0パーセント以上を目標とし、EPSも280円以上を目指して取り組んでいるところです。

昨年、最高益を更新し、ROEは9.3パーセントにまで到達していました。瞬間風速的に目標をクリアしたのですが、2022年度については減益計画ということもあり、9.0パーセントを少し下回る予定です。

ただし、瞬間的にでもROEが9.0パーセント以上に到達したことで、適切に取り組むことで到達可能な目標であることをあらためて認識でき、非常によかったと思っています。2025年度には、ROE9.0パーセントを継続的に超えていけるような体質を、着実に作り上げていこうと考えています。

(5)セグメント別戦略

酒井:セグメント別の戦略では、「通信キャリア事業」として5G展開に積極的に取り組み、収益性や生産性の向上を目指して適切に展開していくことが大事だと考えています。通信キャリア企業さまからはさまざまな要望があり、こちらはコアな事業であるため、しっかりと応えていきたいと思います。

「都市インフラ事業」については、通信や電気、土木、プラントなどの技術を融合したかたちでの成長を目指して取り組んでいるところです。

「システムソリューション事業」については、高付加価値の事業に積極的に取り組み、拡大していきたいと考えています。また、保守運用やセキュリティなどの安定的に収益が得られるようなビジネスにも、積極的に取り組んでいきたいと思っています。グローバル化の中、引き続きトータルでのソリューションプロバイダとしての成長を求められていると感じています。

(6)取組み状況(都市インフラ:エネルギー)

「都市インフラ事業」におけるエネルギー関連の取り組みの1例をご紹介します。スライド左側は、東急不動産さまと一緒に取り組んでいる営農型太陽光発電施設の写真です。まだ、完成イメージではありますが、太陽光発電に利用している土地の有効活用の実証実験にも積極的に取り組んでいます。

スライド右側は、NTTアノードエナジーさまの案件で、発電した電気を交流に変換せず、直流のまま給電するという設備の構築です。変換ロスを抑えながら効率的に給電することで、CO2削減にもつながる取り組みとなっています。また、蓄電池も同時に設置することで、災害対応力も強化していくかたちになっています。

(6)取組み状況(都市インフラ:土木)

酒井:「都市インフラ事業」の土木系については、今年4月に、当社のグループにイセキ開発工機が加わり、新しい工法であるマリンシャトル工法を共同開発しています。

従来のケーブルの陸揚げに活用する工法は、少し長い距離を斜めに掘っていくアースシャトル工法というものでした。その工法以外に短距離でも可能な工法を考案し、今後は洋上風力の自営線などの施工においても、このような技術をいろいろと組み合わせることで、最善のご提案ができるのではないかと思っています。

スライド右側は、高難度工事への挑戦を紹介しています。今まさに行われているリニアのトンネル工事において、60メートルという非常に深いところを、2キロ近くに渡って掘進していきます。シールドトンネル工事における非常に難易度の高い工事においても、着実に実績を積み上げています。

(6)取組み状況(システムソリューション)

酒井:「システムソリューション事業」においては、子会社を含めた事業再編成を4月に実施しています。首都圏において、SI系の子会社を集約し、「エクシオ・デジタルソリューショ ンズ(EDS)」と「エクシオ・システムマネジメント(ESM)」の2社に再編成しました。

開発系の「エクシオ・デジタルソリューションズ」と保守運用の「エクシオ・システムマネジメント」でそれぞれ役割分担を明確にしています。分散していたリソースも再編成することで、量的な人財不足や開発スキルの偏り、経験不足などをお互い補い合いながら強化し、スケールメリットを活かしていくという取り組みをしています。

このような再編成を通じて、SI事業においてのブランドや認知度を向上させていくことも目指しています。

(7)ESG目標

酒井:2030ビジョンでの挑戦の1つとして掲げているESGについて、環境、社会、ガバナンスのそれぞれに取り組むべき課題が山積しています。中期的な観点でそれぞれ目標を持って取り組んでいるところです。

また、この目標を達成することは非常に重要ですが、これらの取り組みを通じて、グループの社員一人ひとりの働き方や意識などを見直すきっかけにもしていきたいと考えています。

(1)ESG経営の実践(環境)

酒井:昨年12月に、温暖化防止のためのTCFD提言への賛同を表明しました。同時に、コンソーシアムへの加盟も進めていきました。それに合わせて、今年の4月に専任組織の「サステナビリティ推進室」と「サステナビリティ委員会」を設置しました。TCFD提言に沿った取り組みも加速していきたいと思っており、そのための情報開示も積極的に進めていく所存です。

温室効果ガスの排出量算定を行い、削減目標も設定しました。2050年にはScope1、2について、カーボンゼロを目指していく予定になっています。あらためて、「持続可能な社会の実現」というのは非常に重要なことだと感じています。当社グループとしても地に足を着けながら、着実に取り組みを継続していきたいと考えています。

(2)ESG経営の実践(外部評価)

酒井:ESG関連の取り組みを積極的に続けている点において、外部からも評価を得ています。建設セクター特有のイメージが先行するかと思いますが、女性の活躍やダイバーシティなどの観点での取り組みについても、積極的に進めているところをご認識いただけるとありがたいです。

(3)人財育成の取組み 技能五輪全国大会で金メダルを獲得

酒井:人財育成という観点では、従来から非常に重視して取り組んできています。その成果として、12月に行われた技能五輪という、若年層のスキルを競い合う全国大会に、当社の水谷社員が出場し、「情報ネットワーク施工職種」で金メダルを獲得しています。

この大会は、国内だけではなくて国際大会もあります。水谷社員の前年に国内大会で金メダルを獲得した海老原社員が、今年京都で開催される国際大会に出場することが決定しています。

スライド右側に、過去の国際大会の成績を記載していますが、過去5回出場して、全員金メダルを獲得しています。当社の選手の活躍が、ある意味では人財育成の取り組みの成果を証明していると自負しているところです。

(4)株主還元

酒井:株主還元についてです。配当金については、従前よりDOEに基づく、安定的で継続的な配当を掲げています。DOE3.5パーセントの配当を基準としており、過去10期増配を続けてきました。今年度は減益ですが、利益の積み上げがあるため、それに合わせて増配していくことを予定しています。

自己株式の取得についても、5月に40億円の取得を発表しました。2月にも50億円の取得を発表していましたが、そのうちの2022年度取得予定が30億円分ほどあり、今年度は合わせて70億円の取得となっています。

中期経営計画でも、資本効率の向上を目標としており、それに向けて取り組んでいます。また、現在の市場評価がPBR1倍割れとなっており、自己株式の取得についても、適切に取り組んでいきたいと考えています。

事業を通じての企業価値の向上と、その成果の株主さまへの還元というのは、会社として非常に重要なミッションであるため、しっかりと取り組みを継続していきたいと考えています。

質疑応答:配当について

坂本:配当についてお伺いします。DOEで設定をされる会社が少しずつ増えてきていると思っています。配当性向だと振れてしまうので、DOEを掲げている企業を選択する方が多いですが、御社が3.5パーセントに設定している理由と、引き上げの可能性がもしあるのであれば、どのようなタイミングなのかも教えてください。

酒井:安定的に配当をしながら、しかもそれを明示的にお約束するということでDOEを採用したわけですが、DOEを設定したことによって、他社と比較して負けてしまうような配当水準は避けたいという思いで、当時は3.5パーセントとしました。

今のDOE3.5パーセントを昨年度の配当性向に換算すると、おおむね40パーセントの水準です。40パーセントくらいの水準であれば、世間一般の会社と比較しても低くはありませんので、問題ないと思っています。

しかし、今後利益が積み上がり、事業を拡大していく中において、他社より見劣りするようなことは本意ではありません。そのような状況を勘案しながら、感覚的な部分もありますが、引き上げる必要があれば、引き上げていくことになると思います。

質疑応答:資源高や為替の影響について

坂本:「資源高や為替の影響をどのように見ていますか?」というご質問です。

酒井:資源高については、現場で燃料などを使うことは往々にしてあるため、そのようなコストが上がっているのは事実です。社会要因のコスト増でもあるため、請負金額なども含めて、お客さまともしっかり話をさせていただきながら行っています。当然、我々の現場での、その他のコスト削減の努力なども行いながら工事を行っています。

為替変動についても、グローバルに事業を展開していますので、当然円安の影響も出てきています。大きな評価益というかたちで影響は出てきていますが、そのあたりはしっかりとコントロールしながら、展開していきたいと考えています。

質疑応答:M&Aについて

坂本:「M&Aについて、どのくらいの規模の会社を狙っていますか?」というご質問です。

酒井:M&Aについては、始めから規模ありきというような感覚ではありません。しかし、既存の事業と親和性の高い部分や、我々の「少し弱い」「欠けている」という部分について仲間になっていただき、シナジー効果が出せるような会社をM&Aの目標として検討しているところです。

例えば、「500億円だからNO」というようなことではなく、一緒になった時に、シナジー効果を発揮して、その分ペイできるかどうかを、丁寧に1件1件精査しながら検討しています。

坂本:同業については、グループ化や陣営がほぼ決まったという感じですか?

酒井:おっしゃるとおりです。同業同士でのM&Aは今後は想定しづらいと思います。

坂本:そうすると、今後は他職種ということですか?

酒井:そのとおりです。先ほど申し上げたような、隣接的なところで検討していく感じになります。

質疑応答:5Gの敷設について

坂本:5Gの敷設についてのご質問です。「今、踊り場なのではないか」というご指摘で、今後も伸びてくるとは思うのですが、どのようなスピードで進んでいくのかというイメージを教えてください。

酒井:まさに難しいところだと思っています。おっしゃるとおり、確かに踊り場という状況で、上昇スピードはいったんゆっくりになっています。今後、5Gのキラーサービスのようなものが出てきた瞬間に、ニーズが跳ね上がるのではないかと思っています。

そのニーズが跳ね上がる瞬間に、通信キャリアとしては、設備が足りていないと困ると思うので、そのあたりを見越しながら、計画的に進めてくるのではないかと思っています。

坂本:サービスのほうも、もっと敷設されるのを待っているというようなチキンレースになっていると感じるのですが、背景には、実は資材が足りないことなどがありますか?

酒井:いろいろな要素が複合的に絡まっているのだと思います。先ほどのお話にもありましたが、「鶏が先か、卵が先か」というような感じではないかと思います。

坂本:「やりすぎても、使われなかったらちょっと」というのもあり、「やりたいけれども、敷設がすすんでいない」という話もあります。

酒井:そのとおりです。そのような意味では、今は様子見をされながら取り組んでいる状況だと認識しています。

坂本:半導体の影響はそこまではなく、今の計画であれば、足りないからできないわけではなくて、様子を見ているという感じですか?

酒井:おっしゃるとおりです。物品不足に起因しているとは感じていません。