売上⾼ 7期連続 経常利益 3期連続 過去最⾼を達成
鈴木洋一氏(以下、鈴木):今日は2年半ぶりに渋谷に来たのですが、やはり若い方が多くて活気があります。朝起きて電子レンジで温めたものを食べようとしたら、舌をやけどしてしまい調子がいまひとつでしたが、ここに来たらそのようなことも忘れてしまいました。元気に行っていきたいと思います。
今日お話ししたいのは、私どもの業績が非常に好調な点と、それに反して、もう少し評価が上がってもよいだろうと思う点です。スライドに過去10年くらいの業績を載せていますが、矢印がぐっと右上がりになっています。直近の売上は棒グラフのとおり8,570億円、経常利益は折れ線グラフのとおり137億円と、両方とも右肩上がりです。
みなさまも覚えていると思いますが、2015年3月期の経常利益だけ少し下がっているのは消費税増税の時です。消費税が8パーセントになったのが2014年4月のため、2015年3月期は1年間のうちで増収になった月が1ヶ月くらいしかなく、3月の決算をまたいでいることで影響を受けました。それ以外はずっと順調にきており、10年間で売上が約1.4倍、そして経常利益が約3.5倍と、収益性が上がっています。
事業規模と株式状況
鈴木:スライドでは、東証の上場企業3,785社のうち、売上、経常利益、時価総額におけるあらたの順位を掲載しています。売上高は170位で8,340億円ですが、これは上位5パーセントくらいに入っているため、非常に上のほうにいます。また、経常利益は544位で上位15パーセントくらいの位置にいます。
このあたりはまずまずの状況ですが、残念なのは時価総額が988位、上位30パーセントくらいという点です。会社の付加価値を生み出しているわりに時価総額が少し弱いという印象があります。ここは私どもに課題があると思い、もっともっと会社をアピールして、みなさまに評価していただきたいと思っています。
また、直近の株価は3,860円でPERが6.94倍、PBRが0.69倍と少し割安です。今、1を切っている会社は上場企業で半分くらいですが、私どももその半分に含まれているため、もう少し上げていきたいと思います。
さらに、右のグラフは、投資家の構成を2016年と2022年の5年間にまたがって表しています。オレンジと青の部分をご覧ください。5パーセントだった外国法人の構成比が23パーセントまで上がっています。これは非常によいと思うのですが、残念なのは、それに反して個人株主が50パーセントから33パーセントに下がっている点です。この構成がもう少し上がってくるとよいと感じています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):外国法人の持ち株の比率が増えている点は、評価されていると解釈できると思うのですが、この背景は何でしょうか?
鈴木:個人投資家も機関投資家も同じだと思うのですが、業績によるものと考えています。先ほどお見せしたように、ここ数年で業績はぐっと上がったのですが、業績の水準を上げると同時に、ずっと業績予想に対して上振れをしてきました。特に機関投資家はそれを見ており、「水準も高くなってきたし、成長性がある。しかし株価は低い」ということが当時あったと思います。
また、2018年には公募増資を行いました。公募増資とCBを合わせて100億円を少し超えるくらいですが、それを使って自己株取得に取り組んだことで、ある機関投資家が「地味だけど、このような会社もあるんだよね」といって随分投資してくださいました。その後、1on1を繰り返して認知度が上がったことで、機関投資家も増えたと思います。
一方で、個人投資家が減少しているのは私どもに原因があると考えており、もっといろいろなことをお伝えする必要があったと思っています。私どもにとっては機関投資家も大切ですが、個人投資家にもファンとして株を長く持っていただくことも必要であると思っています。
坂本:それはよいことだと思います。単純に株主優待を付けても比率は上がらず、株主優待の基準が100株だったら100株の株主が増えてしまいます。僕の持論ですが、1万株の株主にスペシャルな優待を出し、100人増えれば100万株の株主が増えるほうがよいだろうと思います。
鈴木:私もそのような部分があると思うため、今日のような機会を使い、多くの人にあらたの顔を知っていただきたいと思っています。
あらたIRセミナー ⽬次
鈴木:今日は、あらたという会社について、業績、そして将来の成長戦略の3つのパートについてお話しします。実は、今日は私を含めて4名来ていますので、代表して1人ご紹介します。
塚原:塚原と申します。よろしくお願いいたします。
鈴木:他に土谷と藤田という者がいます。よろしくお願いいたします。
今朝、目覚めてから何をしましたか?
鈴木:今朝、目覚めてから何をしましたか? 朝は顔を洗いますし、歯を磨いたり食事したりといろいろあると思います。
あらたの取り扱い商品が使われています
鈴木:私どもは生活シーンの一つひとつに密着し、商品を提供している卸売業の会社です。みなさまの日常に非常に身近な会社と思ってください。
今の日本は、これから景気がどうなるのかという不透明な部分があります。私どもは長くこの業界で仕事を行っていますが、我々の業界に派手さはないものの、食品と同じように常に必要な商品を提供するため、好不況にあまり影響されず伸びています。その中で高い位置付けにあればいろいろな面で優位に展開できます。また、財務体質をしっかり持つことで、例えば少し資源高になっても耐えられます。それらの面でも、当社はよい環境にある会社だと思っています。
⽇本最⼤級の⽇⽤品・化粧品卸商社
鈴木:我々は日用品・化粧品の最大級の卸商社です。年1回、日経新聞で卸売業のランキングが発表されますが、実はそのランキング内では私どもは9番目くらいです。上位には医薬品の卸がきますが、医薬品は規模がまったく違います。医科向けやOTCもあり、何兆円クラスになります。
その次にくるのが食品卸であり、これも市場自体が大きいです。さらにその後にそれ以外が続くのですが、我々はそこでナンバーワンになっています。そのため、この日用品・化粧品業界ではスケールが一番大きな会社であると理解していただいてよいと思います。
(例)メーカーと⼩売業が直取引した場合… 4×6=24回の配送
鈴木:スライドの図はメーカーと小売業との直接取引を表したもので、例としてわかりやすいようにメーカーが4つで小売業が6つになっています。その間に青や黄色の線があり、24本の直接取引を示しています。ここに卸売の中間の機能が入るとどのようになるかをお見せします。
(例)卸が間に⼊った場合… 4+6=10回の配送
鈴木:シンプルでわかりやすくなりました。
坂本:非常に効率がよいと思います。
鈴木:そのとおりです。スライドでは少ない数で表していますが、私どもはメーカーで約1,200社、アイテム数で約10万アイテムという非常に大きな数を取引しています。また、お得意先の小売業は、企業数で約3,500社、店舗数で約4万5,000店舗のため、これがもし全部一つひとつ動くとしたら、サプライチェーン全体がパンクすると思います。
坂本:環境負荷もかかります。
鈴木:おっしゃるとおりです。物流でモノが動くため、中間にある機能を担う会社が絶対に必要になりますが、これを誰が担うかがキーだと思います。どのようなところが担うべきかというと、「業務精度が高い」「業務を安定して継続している」「ローコストで回すことができる」という3つを持っているところだと私は思います。
これを行うのはメーカーでも小売でもよいと思いますが、その場合、現実問題として不可能に近いと思います。そのため、私どものような卸の会社が担っています。よく「中抜き」という表現もありますが、これだけの数があると絶対に成り立ちません。
■営業
鈴木:私どもにはたくさんの営業担当がおり、小売業やメーカーと商談していろいろな提案をします。また、もう1つの活動として、スライドにある店舗の絵のように、消費者が欲しいと思う商品をどのように並べたらわかりやすいのかを考えて提案するということもしています。
これは感性ではなくデータに基づき、「この商品やカテゴリーは、このお店であれば、このようなお客さまが購入する。そのため、どこの棚にどのような位置で置くとよい」ということを、メーカーも交えて小売業とお話ししながら決めます。これを繰り返すことで、その店舗に合った売り場作りができ、消費者も買いに来るようになります。
商品を説明しているPOPも私どもが作っており、お店のレイアウトに合わせて大きさを変えたり、手書き風にしたりと、幅広く提供しています。そのような意味では、売り場全体をプロデュースする役割があると思います。
■物流
鈴木:物流は、私どもの基幹となる機能です。スライドにあるように、大型の物流センターが11拠点と、それ以外に少し規模が小さい物流センターが31拠点あり、これらが全国に網の目のようにネットワークを張っています。
小売業から注文いただいた商品を毎日のように配送する仕事を行っているため、効率のよい大型の物流センターと、中小規模の物流センターを組み合わせて柔軟に対応しています。小売業は全国チェーンの大型店舗だけでなく、地域密着の店舗もあるため、そのようなところに対応させるためです。それが卸売業の一番の基幹の機能であり、大切な部分だと思います。
■物流
鈴木:物流センター内の設備の効率化にも取り組んでいます。スライドの右上の写真はパートの方が商品をピッキングする様子です。スキャンしたものを画面で確定し、緑のコンテナに入れるのですが、コンテナは4つ乗っています。この際、どのコンテナに入れるかの指示が画面に出るようになっているのですが、コンテナに入れる商品の個数は1個とは限らないため、重量で判定するようになっています。商品を間違えるとJANコードで、数を間違えると重量で、それぞれわかります。このように、誰が作業しても間違いが起こらない作りになっています。
また、スライド右下の写真はピースソーターです。レーンが流れており、商品を左右に落としていますが、こちらは店舗あるいはメーカー別に商品を落とす仕分け作業を自動で行っています。
左上のパレット自動倉庫では、パレットで商品が入荷してくると、空いたところを見つけて自動的に大きな倉庫に積み上げて保管していきます。
左下のオリコン自動倉庫は、バラバラにピッキングしたコンテナを、コース別あるいは店舗別に集めて一時保管し、すべて集まったら自動的に払い出す機能を持っています。
中央の青いアームはAIデパレタイズロボットで、最新のAIで動いています。ロボットが目を持っており、必要な商品を必要な数だけ取り、それを置いてコンベアに流していくことができます。
私どもの商品は日用雑貨品ですので、紙製品のように大きなものから化粧品のような小さなものまで、重さもまったく違います。人に依存すると大変な労働になりますが、これらの機器を導入することで、正確に間違いなく行えるようにしています。
■物流
鈴木:こちらのスライドは先ほどの説明を文字にしたものです。
■商品
鈴木:続いて、商品についてご紹介します。私どもはいろいろな商品をメーカーから仕入れて販売することを基本としていますが、実は独自の商品開発もしています。スライドの写真は両方とも私どものオリジナル商品です。
オーラルケアの歯間清掃具は、ナショナルブランドの中でも大人用と子ども用がありますが、比較的大人用が主体となっていることが多いです。しかし、我々のデンタルフロスには子ども用があり、味がついています。
飯村美樹氏(以下、飯村):「さわやかぶどうフレーバー」とパッケージに書いてあります。これでしたら、お子さまも楽しんで口に入れてくれそうです。
鈴木:どちらかというとニッチなものですが、ナショナルブランドで大量生産、大量販売することだけが、お客さまが求めていることではないと思います。需要があるものを早く見つけ、それにスピーディーに対応していくことを考えて商品を作っています。
もう1つは、「無香料」の柔軟剤です。普通、柔軟剤には香りがついていますが、その香りの好みはみなさまでわかれると思います。「香りが強くて嫌だな」と思われる方も実は多くいらっしゃるため、無香料の商品を作りました。
また、自社開発品ではなく専売品ですが、アイシャドウもあります。
飯村:たいていはパウダータイプですが、こちらはリキッドタイプなのですね。
鈴木:中国のブランドを、私どもの専売品として取り扱っています。最近は、中国や韓国のアジアンコスメが非常に人気があります。
飯村:流行っていますよね。いろいろなお店を見ていますが、店舗の半分がアジアンコスメというお店もあります。本当に人気です。
鈴木:飯村さんも使われていますか?
飯村:そうですね。SNSなどで有名な方がアジアンコスメを紹介していることも多いです。
鈴木:韓国の化粧品はやはり需要が高いです。私どもは2年、3年前から、韓国の商品を私ども専用に輸入して、我々の流通で販売しています。商品戦略として、このような化粧品の構成比を上げていきたいと思っています。
なぜかと言いますと、化粧品は小さくて軽く、単価が高いからです。我々のコストを見ると、50パーセントが物流経費となっています。つまり、トラックの配送費や物流センター内での人件費、設備にかなりの経費がかかっています。100円と1,000円のものを扱うなら、同じ作業をする場合、1,000円のほうが効率がよくなります。
そのため、場所を取らない大きさであり、かつ高単価である化粧品を積極的に扱っています。ただ、原油高騰により、これからガソリン代も上がっていく傾向にあると思います。私どもは自社のトラックで配送することはほとんどなく、運送会社にお願いしていますが、運送会社からも条件の見直しなどのさまざまな要望が届いています。
坂本:「サーチャージをください」といったことですよね。
鈴木:おっしゃるとおりです。私どもは、1台のトラックの中に商品をたくさん積み、まずは満載にすることが自助努力の1つだと思っています。
坂本:効率をよくするということですね。
鈴木:そのとおりです。満載にするか否かで、1つのトラックにおいて300万円と1,000万円の違いが出てきたりしますので、「1車に10万円払っているのなら、どちらがよいか」という話になります。そのため、化粧品のような商品の比率を上げて、売上構成を変える取り組みを続けています。また最近では、マスクなどがずっと売れていますが、こちらはコロナ特需です。
みなさまの豊かな暮らしを支える企業です
鈴木:ここまで営業と商品、物流についてお話ししましたが、これらのどれかが欠けてもだめです。この3つがきちんと回ることが我々の強みですし、毎日商品をお届けできていることの背景だと思います。
■直近の業績:2022年3月期 連結損益計算書
鈴木:続いて、足元の業績とその中身、株主還元についてご説明します。業績はご覧のとおりで、スライド中央の赤く囲ってあるところが直近2022年3月期の実績です。売上は前年比103.2パーセントの8,570億8,700万円です。
営業利益は前年比111.3パーセントの127億4,300万円、経常利益は前年比113.5パーセントの137億4,500万円、当期純利益は前年比109.7パーセントの90億900万円となっています。
前年に対する指標だけで見ると、売上が3.2パーセント伸び、利益が2桁伸びています。過去もこのようなかたちでずっと伸びており、強くなっていくためには収益率を上げていくことが必要だと思っています。現在は売上総利益と販管費のバランスをうまくコントロールできている状況です。
坂本:コロナ禍の反動減という話も取引先であると思いますが、それでも増益になっている背景を教えていただけたらと思います。
鈴木:先ほどの商品の部分でご紹介したマスクが代表的なものになっています。私どもの実績では、マスクはヘルス&ビューティーに含まれており2022年3月期の全体売上は前年比103.2パーセントですが、その中でマスクは92パーセントくらいに落ちています。
ただし、2020年3月期と2021年3月期の比較では、300パーセントとなっています。コロナ禍で300パーセント伸び、直近で前年92パーセントに落ちましたが、この数字からは、コロナ禍以前よりも直近の実績は圧倒的に多いことがわかります。
マスクは生活の中に非常に密着してきましたが、コロナ禍が収まりつつある中、今後は使う機会が減ると思います。一方で、除菌や殺菌などの衛生に関する感覚は、以前よりも上がってきています。日常の中で手をきちんと洗うことが自然になったように、我々もうまく対応できているのだと思います。
■カテゴリー別売上高(5カ年実績)
鈴木:我々の商材をカテゴリー別に見ると、ヘルス&ビューティーからペットまで、食品、医薬品以外のものはほとんど全部あります。
■業態別売上高(5カ年実績)
鈴木:続いて、小売業の業態別売上高ですが、こちらもドラッグストアからEコマースまで、すべての業態があります。つまり、我々は日常生活に必要な商品を網羅的にカバーしており、それを販売するチャネルも非常に幅広く有しています。
そのため、何かが必要になったとき、すべてのチャネルと取引があるため、有事であっても平常時であっても、間違いなく商品をお届けできます。コロナ禍ではスーパーマーケットでの売上が上がりました。食品は必ず買いに行かなければならないため、ワンストップショッピングとしてスーパーでも日用品雑貨を購入する機会が増えたからです。
スライドの構成を見ていただくと、ドラッグストアでの売上高は直近で50.2パーセントとなり、比率が非常に高くなっています。なぜかと言いますと、もともと扱っている商品構成から、ドラッグストアが圧倒的に高いということです。それはディスカウントストアやホームセンターでも同様です。
食品スーパーについては、もちろん食品中心のため、私どもの取り扱う商材の種類は少ないのですが、食品スーパーとのお取引はとても大切だと思っています。競合他社に比べても、私どもの食品スーパーの比率は高いです。
それは、どのようなことが起きても、きちんと商品をお届けできる環境を作ることが我々の使命だと思っているからです。我々はその対応ができているため、コロナ禍においても成長を続けられる環境にいるのだと思います。
また、コロナ禍でみなさまがマスクを使用されると、お化粧をする機会も減少するため、化粧品の売上が落ち込みました。しかし、先ほどもお伝えしたように、我々は化粧品の構成を上げていきたいと思っています。カテゴリーではヘルス&ビューティーに化粧品が入っておりますが、私どもはもともと化粧品の比率はそれほど高くはありませんでした。
そのため、新型コロナウイルス感染症が流行する前から、地道に韓国コスメや私どもの商品開発をどんどん進めてきました。それらの蓄積により「マスクの売上が落ちても逆に化粧品が上がる」といったバランスがとれていたことも、売上が上がったもう1つの要因だと思います。
■株主還元
鈴木:配当についてです。毎年増配しており、1株当たり75円、80円、85円、95円、直近が121円となっています。2022年3月期に発表した業績予想では1株当たり136円とし、直近に比べると1株当たり15円多くなり、それなりにしっかり増額できていると思います。直近の121円の中には、20周年として5円の記念配当を入れており、実態は116円です。それを今期は20円増配の136円としているため、大きな増配になります。
一方で、配当性向は直近実績で22.4パーセントですが、東証平均は30パーセントとなっていますので、私どもは儲けたお金の中の配分を少し弱く見られている部分があると思います。確かに平均から見ると低いため、昨年「配当性向30パーセントを目指す」と発表しました。もちろん前提は増益であり、30パーセントにしないと減配になってしまうため、そのような方針で前進しています。
また、個人株主を中心に優待があります。100株以上を持つ株主に対して1,000円分のQUOカードを年2回、合計2,000円分を進呈しています。
配当利回りは昨日の株価で3.52パーセントとなっています。
坂本:平均よりも高いですね。
■⻑期経営ビジョン2030
鈴木:最後に成長戦略ということで、長期的な話をしたいと思います。2030年に向け、いろいろな環境変化も予想しながら、定量的な目標数値として売上高は1兆円を超えていこうと思っています。
もう1つの重要課題として、社会に認められ、理解されるかたちで業績を上げていくために、ESGにも視点を置きたいと思っています。
■カテゴリー強化
鈴木:先ほど商品のお話をしましたが、強化していきたいカテゴリーは今進めているヘルス&ビューティーとペットです。ペットを飼ったことはありますか?
坂本:はい、実家にいます。
飯村:はい、います。
鈴木:コロナ禍により家で過ごす時間が長くなることで、新たにペットを飼う方も多くいると思いますが、当社にはペット専門の卸売業のジャペルという子会社があります。年間で1千数百億円くらいの売上高がある国内最大の企業なのですが、その売上が順調に伸びています。
ジャペルは卸売業ではありますが、小売の経営も行っています。小売業者と同じ目線でお話ができることが強みになっており、非常に評価を受けています。
ホームセンターなどに行くと犬や猫がたくさん並んでおり、他にも商品があったりトリミングのコーナーがあったりと、ジャベルでは生き物も扱っており、全体にわたって提供できます。このように総合提案できることが強みですので、これをさらに伸ばしていきたいと考えています。
また、ペットも長く生きるようになり高齢化してきています。そのため、高齢化した犬や猫のためのペットフードという新しいマーケットもできており、けっこう価格が高くなっています。したがって、基本的にはヘルス&ビューティーとペットを中心に伸ばしていきたいと思っています。
■海外事業
鈴木:海外事業についてです。2012年に中国、翌年にタイ、直近では2020年にベトナムに進出し、中国、タイ、ベトナムの3ヶ国で事業を行っています。
もちろん日本が中心ですが、モノを開発して製造し物流によって届けるという全体の流れを、アジアで一番効率がよく、一番市場が大きいところで行い、サプライチェーンを作っていこうと考えています。
2021年7月には、衆上集団という中国の製造機能と卸売機能、小売機能を持っているグループに出資および資本提携を行いました。我々は、日本でもEコマースを扱うところといくつか取引していますが、まだまだ比率は低い状況です。中国ではオンラインでのビジネスが進んでおり、衆上集団はEコマースに強いため、提携の中でそのノウハウも得て新しいビジネスにつなげたいと思っています。
■DX推進
鈴木:DX推進としては、AIによる需要予測を行っています。小売業者から毎日のように注文が来るため、メーカーに発注して在庫を用意しておくのですが、その需要を予測するものです。
「この時期はこの商品がこれくらい注文されるから、在庫をこれだけ持っていなければいけない」というのを、天候などのいろいろな情報に基づいてAIで予測し、メーカーに発注します。在庫をたくさん持ちすぎるとキャッシュフローが悪くなりますが、かといって欠品すると売上が落ちます。そのバランスをAIで細かく取っています。
また、どれくらい注文が来るか、どれくらい在庫が必要かがわかると、従業員がどのくらい必要なのかも予測できます。このように、需要予測は在庫と業務の両方を予測できるため、事業に大きく貢献していくと思います。
「肌で感じるDX」という言葉を掲げているように、実際に現場で働いている我々が「本当に効果が出ているよね。すごいよね」と感じるものでなければ長続きしませんし、成果は出ないと思っています。
今、中部地区にある大型の物流センターで実験を始めましたが、それを検証し、広げていく体制を考えています。
■ESGへの取り組み
鈴木:ESGへの取り組みです。環境については、CO2排出量を2013年に比べて50パーセント削減します。
人材については、いろいろな方が働ける環境を作るということで、女性管理職比率を4.5パーセントに上げていきます。
地域社会については、地域密着で動こうと思っており、支社単位で地方自治体への寄付活動などを行っています。
またガバナンスについては、プライム市場に求められるガバナンス水準がどんどん上がっており、指名報酬委員会を持つことや監査等委員会設置会社に移行したことなど、対応を計画的に進めています。
「S.D.G」〜グローバルサプライチェーンの構築を目指す!〜
鈴木:SDGsとは違うのですが、SustainableとDigitalとGlocalで「S.D.G」を掲げています。我々は社会に安定的に貢献し、最新技術を利用してより効率的に、そして機能はグローバル水準でも、それを利用するときは地域密着、顧客単位で活動していきます。そのため、「S.D.G」という言葉を使っています。
日に新た
鈴木:「日に新た」というのは、先ほど紹介した塚原が原案を作ってくれたものなのですが、我々の基本的な考え方がここに現れています。
「街や四季が移り変わるように、人々の暮らしも日々変化しています。その変化に寄り添って、いつ・どんなときも必要な商品をお届けすることはもちろん、暮らしがもっと豊かに快適になる新しい商品との出会いをお届けする。それが私たちの使命です。」
「『社会のお役に立ち続ける』変わらない想いを抱きながら、『日に新た』な気持ちで私たちだからこそできる、新たな価値を提供してまいります。」
これが我々の基本的な考えだと理解していただければと思います。
質疑応答:長期経営ビジョン2030の目標数値について
坂本:「2030年3月期までに売上高1兆円を突破という目標数値が掲げられていますが、経常利益や利益率の目標を定めていたら教えてください」との質問です。
鈴木:ディスクローズしていないため、今日は開示できない部分もあるのですが、やはり経常利益率は2パーセントを超えていきたいと思っています。
売上高も1兆円を超えることを目指していますが、2030年を待たずして早い時期に1兆円を超えたいと思っています。2030年というのは時間があるようでないため、前半の3年から4年は生産性の向上と物流の効率化を、後半の4年から5年は新しい事業を作っていきたいと思っています。
物販事業ではなく、例えばデータによって分析して提案していくような事業を考えています。また、そのような意味では海外事業も新しい事業に入っていくと思いますし、Eコマース関係にももう少し重きを置いていきたいと考えています。
質疑応答:自社配送でない理由について
坂本:「自社配送ではないとのことですが、その理由やどのような配送業務をしているかを教えてください」との質問です。
鈴木:全国に商品を届けているため、自社でトラックを持つとなると、トラックの管理だけでも大変なことになります。やはり大手の運送会社は我々にない配送に対するノウハウを持っているため、外部を活用できるものは活用していきたいと思いますし、そのように取り組むことによって適切なコストで配送できると思っています。
我々が直接配送するとなると、例えばガソリン代が上がったときに価格を直接コントロールしなければいけませんが、運送会社は我々だけでなく多くのところと取引されており、そのような影響を吸収できるという違いもあると思います。
したがって、運送会社と取引するのが一番よい方法だと思います。細かい配送になるため、我々だけで全部を請け負うのはなかなか難しいと思っています。
質疑応答:資源高やインフレの影響について
坂本:「御社のビジネスの中で、資源高やインフレがどこに影響するのか、またその対策があれば教えてください」という質問がきています。
鈴木:金利が上がること自体が我々に大きく影響することはないと理解しています。
またインフレについて、よく「よいインフレ、悪いインフレ」という話がありますが、モノの値段が上がっていくことは我々にとっては悪い話ではありません。ただ、需要が高まり、みんなが買うようになるからモノの値段が上がっていくならよいのですが、今のような資源高で原価が上がるために値段が上がってみんなが買わない、となると非常に大きな問題になります。
ここでよく言われるのは価格転嫁できるかどうかという話です。価格転嫁はすぐ簡単にできるものでもありませんが、世の中の流れを見ていると、ずっと価格転嫁しないでがんばることは絶対にできません。
したがって、どこかでそれが必要な状況が来ます。極端な言い方をすれば、その状況までにどれだけ耐えられるかです。それは財務体質の問題であり、強固な財務体質を持っていればそのような状況になったとしても、競合の状況やお客さまの要望を見ながらタイミングを見て対応できると思います。
我々は今年5月に日本格付研究所の格付Aを取りました。それだけ安全性、安定性が高いことが認められたということであり、有事の際も悪影響を受けずにいられると思っています。
坂本:銀行からの融資も受けやすいですよね。
鈴木氏からのご挨拶
飯村:最後に、視聴者の方にメッセージをお願いします。
鈴木:企業も国も何でもそうだと思うのですが、やはり強くなければいけないというのは確かだと思います。ただ、経済力や資金力だけの強さだけではだめです。企業に特に大切な強さは、大きな目標に向かい、地味でもよいから社会のルールに沿って真摯に業績を達成していく意志の強さではないかと思います。
また、もう1つは優しさです。人の気持ちがわかる優しさも企業にとって必要だと思います。
飯村:たくさん商品を見せていただきましたが、柔軟剤がすごくよさそうだという反応も会場からいただいていました。みなさま、ぜひ店頭で見かけたらお手に取っていただければと思います。