「株主本部会」とは

青野慶久氏(以下、青野):みなさま、こんにちは。サイボウズの青野です。本日は、サイボウズ株主会議改め、サイボウズ株主本部会にご参加いただき誠にありがとうございます。「ご視聴」というよりは「ご参加」なのですよね。

去年までは「株主会議」と呼んでおり、イベント形式で株主の方に見ていただけるようなものを開催していましたが、メンバーから「株主のみなさまにももっと参加してほしい」「いつもの社内の会議のようにみんなで参加してほしい」という声があり、新しい企画を考えました。それが、今日初めて開催する「株主本部会」というものになります。

スライドの絵をご覧いただきたいのですが、サイボウズはいろいろな本部が集まって運営されています。ふだんから会議を行っていますが、重要な会議は全社員に公開されており、全社員が意見や助言をすることができる仕組みになっています。

これを株主にも広げようということで、株主のみなさまの前で社内の会議を公開し、みなさまにも参加していただくという企画です。ですので、今日はサイボウズの社内の会議をそのまま流します。株主という名の社員として参加していただけたらと思います。

助言登録について

青野:今日のタイムテーブルとしては、第1部でサイボウズの6つの本部の振り返りを行い、今年はどのような活動を行うのかについてご説明します。第2部ではコーポレートガバナンスをテーマに、社内取締役や社外取締役、その他として経営のガバナンスについて議論します。それをみなさまにご覧いただくという企画になります。

今日の一番大事なポイントですが、ご覧いただいて「よいことを学んだな」ということだけでなく、スライドに掲載しているQRコードから「助言登録」にアクセスし、ぜひ助言をいただきたいのです。

「サイボウズね、今年はそれをがんばるのはわかるけど、こうやったらもっとうまくいくのでは?」「コーポレートガバナンスも、このような観点で、このようなことを行ったらどう?」など、助言をたくさんいただけるかが今回のイベントの成功のカギになりますので、ぜひQRコードから登録していただければと思います。

本日の参加者

青野:今日の本部会に参加するメンバーです。私と6人の本部長が参加してくれることになりました。また、コーポレートブランディング部長の大槻さんをファシリテーターに、社外取締役候補の2人にも参加していただいて第2部を盛り上げていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

第1部 2021年振り返り

青野:それでは、第1部からスタートします。この1年、各本部でどのような活動を行い、これからどのようなことを行っていくのかを議論していきたいと思いますが、その前に、新入社員扱いしてしまいますが、新入社員の株主社員のみなさまに、サイボウズがどのような会社なのかについて概要をご紹介したいと思います。

企業理念(2020~)

青野:僕たちが一番大事にしてきた企業理念です。サイボウズがおもしろいのは、この企業理念が株主総会決議事項だということです。普通、株主総会では別のお話をすることが多いのですが、サイボウズの企業理念は株主総会で決めており、株主のみなさまが合意した上で、このような方針で、このような理念を持って行うということを決めています。

2020年に作った企業理念を昨年の株主総会で承認していただき、今はスライドに記載のとおりの企業理念となっています。「Purpose」と「Culture」に分かれていますが、「Purpose」は私たちが何のために存在するのかを表したものです。

「サイボウズはメンバーがいっぱい集まっているけど、何のために集まっているのか?」といいますと、「チームワークあふれる社会を創る」ためです。僕たちはチームワークあふれる社会にしたいと考えています。

今、社会を見ていても、いまいちチームワークがあふれていないということで、チームワークがあふれる状態に変えたいということです。それはどのような状態かといいますと、4つの「Culture」になります。

みんながもっと理想に共感し、一人ひとりの多様な個性を重視しながらチームワークを行い、互いに公明正大で、嘘もつかず、隠しごともしない、オープンな信頼関係の基盤を作ります。

その上で、一人ひとりが自立的に「僕はこうしたいんだ」「ああしたいんだ」「こうしたほうがいいと思うんだ」と意見を言えて、議論しながら進められるような社会が、僕らがイメージしている「チームワークあふれる社会」です。そのために僕たちはわざわざ集まっているんだということで、これがサイボウズの存在意義となっています。

残念ながら、売上の最大化でもなければ利益の最大化でもありません。この世界のチームワークの最大化が、僕たちの企業理念になります。まずはここをご理解・共感していただきたいところです。

情報共有とチームワーク①

青野:そのために、今は情報共有基盤を僕たちの事業の柱にしています。そのような意味では、社会ではあまり情報共有が行われていません。みなさまも仕事の中でEメールを使うと思いますが、Eメールは情報分断の最たるものです。

宛先を選んでメールを出しますので、宛先の人は知っていても、宛先が入っていない人は知らないというのがEメールの世界です。メールを送れば送るほど、情報の分断が起きてしまうのです。あっちでもこっちでもひそひそ話をしているようなものです。

情報共有とチームワーク②

青野:そのため、ワンプラットフォームで、いろいろな人がどこでどのような会話をしているのか、誰が今どこでどのような仕事をしているのか、何に困っているのか、何で成功したのかなどをオープンに共有し、組織の境目なく助け合えるような、協力し合えるような情報共有基盤が欲しいということで、僕たちは4つの製品を出しています。

サイボウズが提供する情報共有ツール

青野:4つの製品について軽くご紹介します。一番初心者向けは、スライド右下の「メールワイズ」だと思います。情報共有を分断しているメールをあえて受信し、それをみんなで共有して、みんなでメールを返すというものです。メールというツールを情報共有できるものに変えようというサービスになります。

中級者向けは「サイボウズ Office」「サイボウズ Garoon」ですが、こちらはメールだけでなく、スケジュールや掲示板、ワークフロー、ファイルなど、いわゆる会社で働いていたら一般的に共有するようなアプリを数多く揃えたグループウェアのアプリケーション群です。

今、私たちが力を入れているのは「kintone」です。こちらは社内で共有したいさまざまな情報のためのアプリケーションを自分で作り、自分で発信して、自分で共有できるツールであり、クラウドで提供しています。このあたりの製品を普及させながら、チームワークあふれる社会創りを進めています。

積極投資でさらなるクラウドビジネス拡大へ

青野:ここ10年くらいの業績についてご説明します。スライドの棒グラフは売上高です。10年前は40億円くらいだった売上高が、昨年には4倍強の約184億円まで増えてきました。赤い折れ線グラフは利益になりますが、クラウド事業の立ち上げのところで積極的に投資し、2015年に1回赤字になったあとV字回復しました。

利益はグーっと伸びていましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、世の中でデジタル化が進む中、「利益が出ました、よかった。ではないだろう」「チームワークあふれる社会を創るために僕たちがアピールできるこれほどよいチャンスはない」ということで、広告投資をがんばっています。

加えて、今年はクラウドのインフラを強化するために投資を行うため、利益はいったん落ちるという予想です。

国内拠点および人員採用の拡大

青野:スライド右側をご覧ください。バーっと社員が増えています。離職率も5パーセントくらいを維持しており、国内拠点もどんどん増えています。

グローバル拠点の拡大

青野:海外のメンバーもずいぶん増えてきました。中華圏で約90名、ASIAで約90名、アメリカも約50名です。今度、マレーシアに新しい法人が立ち上がるということで、グローバルのメンバーは200人以上になってきています。

会社の在り方をアップデート

青野:このような活動を行っているサイボウズですが、単にデジタル化を広げようというお話ではありません。ツールももちろん大事ですが、このツールをどのように使うかというCorporate Transformationもあわせて進めていきます。これが僕たちが考えているチームワークあふれる社会に向けての取り組みになります。

社内でもいろいろな実験を行っています。情報共有基盤を使い、社員にさらにオープンに情報を開示したり、誰もが取締役になれる会社にしたらよいのではないかなど、いろいろなチャレンジを行っていますので、このあたりのノウハウも含めてみなさまにフィードバックできればと思います。

参考 2021年の決算・事業詳細

青野:事業の詳細などは動画で公開しています。資料も公開していますので、よろしければご覧ください。

社内体制図・発表部署

青野:ここから本題に入っていきます。スライドのとおり、サイボウズの社内は本部がいくつかに分かれています。ざっくりご説明しますが、スライド下部に記載のビジネスインフラはバックオフィス系の部門になります。

その上には作る部門と売る部門があります。スライドの右側にいくほどお客さまに近い部署になります。今日は赤枠になっている部分の部門長に来ていただいていますので、お話をうかがっていきたいと思います。

繰り返しになりますが、みなさまにはお話を聞いて助言を書いていただきます。「俺がちょっとアドバイスしてやろう」という気持ちで、いろいろな助言をいただければと思います。

開発本部のトピックス

青野:開発本部長の佐藤鉄平さんにお越しいただいていますので、自己紹介と今年の取り組みについてお願いします。

佐藤鉄平氏(以下、佐藤):開発本部の佐藤鉄平といいます。よろしくお願いします。開発本部からは、今年の特に注力している取り組みのうち、ふだん外に出ているようなプロダクトの機能アップデートなどではなく、どちらかといいますと内部の活動や課題を中心に3つのトピックスを持ってきました。

1.インフラ基盤の刷新

佐藤:さらっとご紹介しますが、1つ目はインフラ基盤の刷新を行っています。「cybozu.com」をリリースしてから10年を超えていますが、ありがたいことにユーザーが非常に増え、当初の規模からはかなり大きくなっている状況です。

最初に作った仕組みでは今のスケールまでは想像できていなかったところもあるため、大規模なデータを扱えなかったり、オペレーションの仕組みの自動化が難しいところがあります。それを刷新していくことに3年くらい前から取り組んでいます。

去年までの活動でそのあたりの準備が終わったということで、今年からは本格的にプロダクトの移行を行っていくことが課題であり、大きな取り組みです。内部ではかなりリソースを割いて取り組んでいきます。

2.グローバル市場への挑戦

佐藤:2つ目は、グローバル市場への挑戦です。昨年までもグローバルに向けてプロダクトの展開を行っていましたが、特に2019年にはUS向けに「kintone.com」をデータベース基盤に載せ替え、よりグローバルに提供しやすいかたちになりました。

こちらは今年4月からUS以外のグローバルに向けて展開していくことが決まっています。そこに向けての活動をこれまでも行ってきましたが、今後も進めていく必要があります。販売管理システムなどもそうですが、プロダクトの中身も含めてグローバルにユーザーに使っていただけるものを作っていくことが課題であり、取り組みとなっています。

3.採用市場の激化

佐藤:それ以外にもたくさん取り組みたいことや進めていることがありますが、そのためには取り組んでくれる人が必要ということで、こちらがけっこう大きな課題となっています。

採用市場が非常に激化しているため、しっかり取り組んでいかなければいけません。特にエンジニア採用はこれまでも厳しいと言われてきましたが、去年や今年はさらに一段階厳しくなっている印象です。いろいろな打ち手を考えながら進めていかないといけないと思っています。

去年もエンジニア採用チームを強化しており、中途採用は前年の3倍くらい獲得できたのですが、それでももっと人が来てほしいと思っているため、そのあたりも取り組んでいこうと考えています。

青野:ありがとうございます。開発本部のトピックスについてみんなで議論していきたいと思います。採用はきついよね。

佐藤:そうですね。以前のスタートアップは給与レンジなどが違うこともありましたが、最近は資金調達が国内でも盛んになってきて、そのようなところも採用としてはガチンコで競合し合っていると感じます。

青野:外資系の企業の給与水準はすごく高かったりするからね。

佐藤:そうですね。

青野:採用広告もけっこう出しているの?

佐藤:いろいろなチャンネルで活動しているのですが、今はどちらかというとリファラルやターゲティング、スカウトなどの活動がメインです。採用が効果的だという印象はありますが、どの会社も同じようなことを行っているので、だから取れるかというとそうでもないというイメージです。

青野:リファラルということでは、株主の力を借りたいね。

佐藤:確かにそうですね。

青野:サイボウズは株主が2万人くらいいるから、1株主が1人紹介してくれたら2万人まで社員を増やせるよ。

佐藤:根本的なところとしては、サイボウズならではの魅力をどのように発信して、自分たちでもそこをどのように認識していくのかが大事ですね。

サイボウズは比較的働き方の文脈で外に発信できていたところがあったと思いますが、新型コロナウイルスの影響で、特にエンジニアの市場で競合するところはフルリモートが当たり前になりつつあります。

新型コロナウイルスの感染拡大前は、「サイボウズはリモートワークできますよ」ということが強みでしたが、今はエンジニア採用ではみんな横並びになりつつあるため、その強みもそれほど突出していない状況です。そのあたりで、次の打ち手を考えていかなければいけないというのはあります。

青野:新型コロナウイルスによって僕たちのアドバンテージが失われてしまった、みたいな感覚は人事でも同じですか?

中根弓佳氏(以下、中根):人事の中根です。みなさまもすごく工夫しており、確かにサイボウズだけが突出しているという状況ではなくなってきています。ただし、私はそれはすごくよいことだと思っています。

サイボウズの競争力という点だけを見るとそうかもしれませんが、候補者自体の意識が変わってくることにより、結果的にサイボウズにも流れてきてくれるという効果にもつながるのではないかという気はします。

佐藤:確かに、それはありますね。東京や大阪以外の今まで拠点がなかったところからジョインしてくれた人も増えてきていますし、そのような方がリモートで参加するという敷居は全体的に下がっています。

中根:下がりましたね。

佐藤:そのような意味では、プラスという点はあるとは思います。

青野:「サイボウズは東京・大阪の会社だと思っていたけど、どこからでも働けるじゃん」という意識の人が増えたイメージですね。

佐藤:そうですね。

青野:チームワークあふれる社会を創るためには、他の会社にもそうなってもらわないと困るし、僕らはもう1歩先に行かないといけないね。開発本部のトピックスの1個目に戻ってよいですか?

社外の人に説明するのはなかなか難しいのですが、インフラを置き換えるというのは本当に大変です。1,000台を超える規模を置き換えて刷新していくということなので、どのあたりにリスクがありそうかを事前に知っておきたいですね。

佐藤:そうですね。これはクリティカルなプロジェクトなのですが、何がクリティカルかというと、もしこれがぜんぜん進まなかった場合、今の「cybozu.com」のユーザーの伸びを考えると、数年でこれ以上新しく契約してもらうことが厳しくなる状況が訪れる可能性があります。ですので、それが訪れる前に新基盤でスケールできる状態をしっかり準備しておかないといけません。

青野:どのあたりにボトルネックが発生する可能性がありますか? うまくいかない場合、どのあたりが原因になるか想像できますか?

佐藤:ここから移行が始まるため、ある程度既存の基盤を動かしながらデータを移行するというのは、大規模になってくるとかなり難しいです。単純に「この日を移行日にします」と決めてできるものではなく、古い基盤でみなさまに使ってもらいながら、何ヶ月もかけて新しい基盤にコピーし続けるということを準備するなど、裏側で長期的な移行を行っていきます。

そのような準備にかなり長期間かかるため、例えば途中でうまくいかなくなって仕切り直したりすると、また長期間準備しなければいけません。時間軸としてけっこう長くかかるプロジェクトのため、何度も失敗しているとどんどん後ろにズレてしまいます。

また、新しい基盤がいまいち安定しないということが出てくると、本番の環境をそちら側にスイッチするのが遅れたりするため、そのあたりが難しいところです。

今は「サービスをこの日に一気に切り替えます」というのではなく、サービスごとやパーツごとに段階的に切り替えていきながら新基盤の精度を高めつつ、リスクを抑えて進めるやり方を模索しています。そのような意味では、すでに一部の小さいサービスは新基盤で動いているものもあります。

青野:ユーザーに気づかれないようにね。

佐藤:そうなのですよね。

青野:止めないように裏で進めないといけないから大変ですよね。各本部にリクエストしておきたいことなどはありますか?

佐藤:そのような意味では、現行の基盤の使い方をお手柔らかにというのはあるかもしれないですね。お客さまから現行の基盤で「すごく大規模に使いたい」「大容量のファイルを使いたい」「アクセスをすごくかけたい」という要望をいただくことがありますが、「現行の基盤では少し待ってください」と言っているところもあります。

青野:新しい基盤に移ってからお願いしますってね。

佐藤:「そこは今準備中なので」というような調整は実際にお願いしたりはしていますね。

青野:このあたり、栗山さん、林田さんにも認識していただければと思います。

栗山圭太氏(以下、栗山):パートナーは「kintone」のことをよく知ってくれていますので、現行の基盤を労わりながらインテグレーションのノウハウを身につけたりしています。データの外への逃がし方など、みんなだいぶうまくなってきました。

青野:最近はノウハウ集のようなものも公開されていますので、だいぶ安定して使っていただけるようになってきましたね。

そろそろ時間になりますので、開発本部は以上です。引き続きご参加ください。ぜひ助言をどんどん登録していただけたらと思います。

ビジネスマーケティング本部のトピックス

青野:次に、林田さんです。社内ではビジマと呼ばれています、ビジネスマーケティング本部のトピックスをお願いします。

林田保氏(以下、林田):ビジネスマーケティング本部の林田保といいます。よろしくお願いします。昨年から今年にかけてのビジネスマーケティング本部のトピックスとしては、去年の下半期から製品関連の広告投資、特にテレビCMを中心に加速させています。また、働き方、会社組織、ハイブリッドワーク、多様性など、いろいろな発信をしていこうと考えています。さらに、人材育成について強化中です。

この3つが主なトピックスになります。今日は、どちらかというと社外向けになっている1番目、2番目についてお話しします。

1.2021年下期を中心に製品関連の広告投資を加速

林田:今年もですが、去年の下半期から製品関連の広告に絶賛投資中ということで、特にCMをご覧になった方は多いと思いますが、テレビCM、ネット、屋外の広告など、いろいろと強化しています。

基本的には「kintone」を知ってもらうことで、「『kintone』ってなんだろう?」と思ってもらうための認知広告ですので、すぐに契約に結びつくというわけではありませんが、サイト訪問者が増加しており、第1弾の効果が徐々に表れていると思っています。

サービスを契約していただいたみなさまのアンケートなどを見ると、半数以上のお客さまが「kintone」を知ってから契約までに1年以上の時間を使っているということで、社内のいろいろな稟議などを考えると、やはり時間がかかるのだろうと考えています。

その期間に「kintone」を忘れずにしっかり検討し続けていただくために、いろいろなところで「kintone」を思い出してくれる、「kintone」を知ってくれる場所が必要ではないかということで、ネット広告などいろいろなところを併用しながら「kintone」を思い出してもらうことを進めています。

おそらく一過性で行って成果が出るものでもないため、投稿量は時期によって増やしたり減らしたり調整しながら、数年間は継続したいと考えています。

2.働き方、会社組織、ハイブリッドワーク、多様性など様々な視点での発信

林田:働き方、会社組織等々では、いろいろな視点での発信を考えています。先ほど開発本部からお話がありましたが、働き方改革の先に向けて、何をどのように発信していくかが課題です。

リモートワークが増加し、いろいろな会社でいろいろなかたちの働き方改革が進みつつあります。逆にいうと、働き方改革がいろいろな企業で進んでいくと、働き方改革を調べる人の数が減るかもしれませんし、関心も減少しつつあるのではないかということを、いろいろな情報を見ながら感じています。

一方で、去年の取締役会など、少し違った種類の情報も出し始めると、それはそれで一転して関心をいただいたりすることもあり、地方移住や多様性など、いろいろな切り口で出すとぼちぼち反応があります。

この時点で「どれ」というものはまだ見つかっていませんが、日本の社会が変わっていく中で、私たちのチャレンジがシンクロするところを探しながら発信を続けていきたいと思っています。これが、特に去年から今年にかけてのビジネスマーケティング本部のトピックスです。

青野:ありがとうございました。株主からよく「広告費をかけすぎじゃないか」と突っ込まれると思います。

林田:そうですね。

青野:今日も一応社内ですが、社内的な議論ではもっと出せるのではないかという気持ちです。それこそシリコンバレーでは、僕らと同じ売上200億円くらいの会社の場合、200億円くらいの赤字を出したりします。

僕らはこれだけがんばっても今年はまだ黒字予想ですが、そこからさらに200億円突っ込むくらいのアクセルの踏み方をするわけです。これから「kintone」が社会インフラのように広がっていくことを考えると、今まさに追い風が吹いている時にもっと出せるのではと思うのですが、このあたりはどうですか? 

林田:結論からいいますと、200億円をかけようと思えばもちろんかけられます。200億円でなくてもよいのですが、基本的には先ほどお伝えしたとおり、お客さまに思い出してもらう、想起してもらうためには、お客さま側の日常生活の中のいろいろな場面で「kintone」を目にしたり触れる機会を増やしていかないといけないと思います。

そのようなところでは、テレビCMもまだまだ積み増しできますし、ネット広告ももちろん増やせますし、電車や交通系のタクシーなど屋外広告を出せるところはいっぱいありますし、その他にも雑誌もあれば新聞もあります。日常で触れる場所はいろいろありますので、出す側としては出そうと思えばまだまだ出せるのではないかと思っています。

青野:屋外は今まで広告を出したことはありましたっけ?

林田:屋外はそれほど多くはないです。駅は出していますが、それこそ地下鉄の駅の、特にビジネスマンが通る動線に対して出していくというのはまだまだできていないため、そのあたりは出してもよいと思っています。

青野:助言を求めてみたいのですが、どこに何と出したらおもしろいかな? 「さすがサイボウズ」「そこにそれを出すか」というようなものはないですか?

林田:「このようなのを出せばよい」というものをいただきたいとは思います。

青野:前の働き方改革の時は霞ヶ関駅を狙っていましたよね。

林田:そうですね。

青野:厚生労働省の人たちがターゲットでしたね。そのような意味では「どのようなメッセージを誰に伝えたいか」になるのかな?

林田:そうですね。ユーザーが「kintone」を使うことで「今の業務をこのように効率化できる」「こんなに楽になるんだ」というところを出していきたいと思っています。バリューについていろいろ出せるところを出していきたいです。

栗山:パートナーの話を聞いていると、現場の出張は減っていますが、エグゼクティブはけっこう動いています。ですので、今はあえて空港に出すと、逆にエグゼクティブをピンポイントでターゲットにできるかもしれません。

青野:なるほど。僕たちもちょうど2つ目のトピックスのところで、働き方改革からコーポレートガバナンスにメッセージが移ってきていますしね。働き方改革だと人事部門という感じですが、コーポレートガバナンスまでいくと経営者なので、そのあたりをエグゼクティブターゲットに進めてもよいかもしれないですね。

林田:そうですね。取締役改革もそうですが、働き方改革も一度変わり始めると「会社はこのままでよいのかな」という気持ちも出てくると思いますので、ぜひそのあたりは「このようなやり方ができる」ということをエグゼクティブの方に向けていろいろ出してみたいですね。

どちらかというと、広告を飛行場でじっくり見るというよりは、まずはアイキャッチを取れるようなかたちでキーワードを作って出してもらうなどになりますが、確かにそのようなものはぜひ行ってみたいですね。

青野:時間になりましたので、ビジマは以上です。ありがとうございました。次は栗山さんです。お願いします。

営業本部のトピックス

栗山:営業本部は、2020年から2年間くらいかなり多くのことに取り組んできました。トピックスを少なくまとめるのが逆に難しかったのですが、3つを取り上げてみます。

1.新たな販売チャネルへの挑戦

栗山:1つ目です。サイボウズのIT業界におけるカテゴリですが、一般的にはBtoB SaaSの1社として見られています。BtoB SaaSの企業というのは、今は自社で営業を抱えて自社で全部販売するところが非常に多いですが、その中でサイボウズはいわゆる間接販売、パートナー販売が強いというのが大きな特徴です。

その特徴をより活かしていこうということで、新しい販売チャネルを探し続けていました。2021年は2つがうまくいったと考えています。

1つは、地方銀行をはじめとした金融機関とのアライアンスです。また、こちらも従来はあまり取引がなかったのですが、コンサルティング会社を通じた「kintone」のデリバリーが非常にうまくいったのではないかと思っています。

2つ目は大手SIerとの挑戦です。悩んでいるところですが、具体的な名前を出すと一番大きなところはNTTデータ、SCSK、日本ユニシス、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)などの大手SIerと今はあまりお付き合いがなく、このあたりとできるか否かについて考えたりしているところです。

2.公共市場におけるkintoneの存在感向上

栗山:2つ目のトピックスです。この2年間で公共向けの「kintone」の導入が過去に比べて明らかに目に見えて加速しています。特に市町村レベルでは200近く導入していただいていますし、中央官庁や県庁レベルでも検討が始まっており、すでに導入していただいているところもあります。

要因は2つあります。1つは、コロナ禍で短期間で用意しないといけないシステムが多かったことです。国の方針が伝えられてから1ヶ月で事業がスタートすることがけっこうたくさんあり、「来週から使えるシステムを探しています」という着信がきて、「もう一度聞きます。来週からですか?」と聞き返すこともありました。非常に短期間で稼働させないといけない中で「kintone」がかなりの立ち位置を得ることができたのではないかと思っています。

もう1つは、住民サービスと業務自体もデジタル化しようという世の中の流れです。みなさまも選挙に行くと思いますが、今は7割から8割の市長が公約に住民サービスと庁内業務のデジタル化を掲げています。そのような文脈で、我々に手伝ってほしいという依頼がけっこう来ているのではないかと思っています。

3.製品アライアンスに注力

栗山:3つ目のトピックスです。わかりづらいかもしれませんが、今、企業内でクラウドサービスの導入がどんどん進んでいます。US市場の数年遅れで日本にトレンドがくると言われていますが、USではある程度大企業になると1社あたり約70種のクラウドサービスを利用しているという調査データが出ています。

日本の中でもすでに複数のクラウドサービスを導入している企業が増えてきていますが、連携させないとバラバラに動いてしまうことがあり、BtoB SaaS間の連携はこれからのクラウドサービスの導入にあたって非常に大きなポイントになってくると思います。「導入できるからこれを採用する」「このサービスはいいけど、既存で入れているものと連携できないから採用しない」などのことが選別の過程で起こってくると考えています。

しかし、「kintone」は他サービスと非常につながりやすいです。図がないためわかりづらいですが、「A」「B」「kintone」の3つのサービスがあるとします。「kintone」は「A」と「B」の両方とつながっています。「A」と「B」はダイレクトにつながっていません。このようなケースがすでにたくさんあります。

ですので、「kintone」さえ入れておけば「A」「B」が直接連携していなくても「kintone」を介した連携ができるということで、このような立ち位置をクラウド業界の中で取ることができるようになっており、それが確実に他社との差別化や強みにつながっているという実感があります。

いろいろなサービスと「kintone」がつながることが我々の競争力の強化につながるのではないかということもあり、専門部隊を作って人も増やし、非常に力を入れている分野になっていると思っています。簡単にトピックスを3つお話しさせていただきました。

青野:ありがとうございます。おもしろいですね。営業本部はもっといろいろな取り組みを行っていますが、今日は3つ挙げていただきました。

青野:販売チャネルは地方銀行のチャネルなどができてきておもしろいですが、聞いてみたいのは大手SIerですね。日本は大手SIerが大型の案件を行ってきたということがあるため、彼らとどのように付き合うのかということになります。

今日ご覧になっている方の中にも大手SIerの方、もしくは「知人があそこのSIerの経営をしています」という方もいらっしゃるかもしれませんので、ラブコールを送るとすると「僕が組みたいです」ということでよいのかな?

栗山:社内会議ですので、一応他本部の方にわかりやすくということでお話ししますと、根本的には大手SIerと「kintone」の相性はよくありません。「kintone」は非常にシンプルにいいますと、既存のシステムを安く作れるサービスです。

とても乱暴な言い方ですが、そのようになります。既存でシステムを入れているところは「kintone」を入れられると売上単価が落ちるため、「kintone」を扱うメリットの説明をクリアしない限りは深いお付き合いはなかなか難しいと思っています。

答えはいくつか探しており、少しずつですが、見つかり出してはいます。今、大手の一角である1社とはけっこうディープなお話ができており、「これからこのようにして『kintone』をビジネスの真ん中に据えていこう」というお話が進んでいます。今は1社だけですが、そちらと走りながら答えを見つけていこうと考えています。

青野:儲からないと続けてもらえませんので、お客さまもハッピー、パートナーもハッピーで、僕らもビジネスが成立するというモデルを作りたいですよね。

栗山:向こうの役員と話していて少し渋られていた時に、僕がたまたま思いついた台詞がありました。IT業界の歴史は基本的にずっとダウンサイジングです。

メインフレームからオフィスコンピュータになり、オフィスコンピュータからオープン化し、オープン化からクラウド化と、基本的にはダウンサイジングしてきました。このダウンサイジングの歴史の中でIT業界自体が小さくなったことは1回もありません。

ですので、「根拠はないけど、今回のダウンサイジングでも絶対に小さくならずに大きくなるはずだ」と言ったら「確かに。やろうか」というかたちで話が進みました。

青野:そうなのですよ。新しいイノベーティブなものが出てくると破壊されることに目が行きますが、実はその後にさらに大きな市場が待っているという感覚を持ってもらえるといいですよね。ということで、ぜひ株主のみなさまから「どのようにしたら口説けるか」「どのようにしたら儲かるか」などのアドバイスをいただけたらと思います。

青野:2つ目の公共市場は順調ですよね。傾向としては都会から来ている印象があります。

栗山:そうですね。大都市圏のほうが多いです。

青野:東京都や大阪府、神戸市、北九州市など、けっこう大きな都市という傾向がありますか?

栗山:大都市圏のほうが単純に事務量が多いから、というところだとは思います。

青野:地方の自治体は人手不足が深刻で、「職員は増やせないけど仕事も減らせない」という話も聞くため、早く取り組んでほしいですね。

栗山:自治体とお話しする機会が非常に増えたため、いろいろなお話を聞きました。地方公務員は超人気職種だと勝手に思っていましたが、最近の地方は市役所の募集が定員割れするようで、新卒が埋まらないらしいです。地方に行くと人の採用が大変だという話はすごく聞きます。

青野:早くしないとどんどん職場環境が悪化していく一方だね。このあたりもアイデアがあればと思いますが、そうはいっても日本の自治体は1,600から1,700くらいあるのかな?

栗山:それくらいですね。

青野:そこをうまく横展開していけるとよいですね。1自治体ずつ相手にしていたら10年経ってもなかなか進まないため、ぜひ一気にやる作戦ができればと思います。営業本部もありがとうございました。

組織戦略室のトピックス

青野:理さん、お願いします。理さんは今日はアメリカですか?

山田理氏(以下:山田):今はアメリカのサンフランシスコにいます。

組織戦略室のご紹介です。組織戦略室はデジタル化をどんどん進めていくと、サイボウズのようにいろいろと改善の余地が見えてくるということで、まさにサイボウズ自身のコーポレートトランスフォーメーションを行っています。今日お話しするのは「社長10人計画」「意思決定と助言」「みんなで取締役」についてです。

組織戦略室の理想

山田:「チームワークあふれる社会を創る」ということですが、それほど簡単にはチームワークあふれる社会は創れません。拡大し持続するチームということで、特定の人に依存せず、権限や権威ではなく、「こうしたいんだ」という思いにみんなが共感して動いていくような仕組みのチームがよいと考えています。それを「自律分散キャンプファイヤー型チーム」と呼んでいますが、そのようなチームを作りたいと思っています。

サイボウズの組織図

山田:みなさまの中ではサイボウズ自身はフラットな会社だと思われるかもしれませんが、実は普通にヒエラルキーがあり、このように権限が集中している組織になっています。

サイボウズの情報共有

山田:ただし、デジタル化が圧倒的に進んでおり、サイボウズの情報共有は非常にフラットになっています。

ピラミッドから富士山へ

山田:このようなフラットな情報共有の中でいかにトランスフォーメーションを行っていくかということで、まず取り組んだのが「社長10人計画」です。一昨年までは青野さんがトップで、最終権限は青野さんにある状態でしたが、現在は1段下ろしてピラミッドから富士山みたいなかたちに変えてみました。

全社でみるとヒマラヤ山脈?

山田:ですので、今の組織図は全社で見るとヒマラヤ山脈のようになっています。青野さんもこの中の1人ですが、ここにいる本部長が最終意思決定者になっており、青野さん自身が決められないことが非常に多い状態になっているということです。

実質的には会社の代表ではありますが、権限という意味ではここにいるみんなも含めて、私も含めてかもしれませんが、会社の中の自分の担当の代表になっている状態です。

意思決定と助言

山田:「本当に意思決定を分散して問題ないの?」ということですが、今の仕組みは意思決定者に助言できるシステムを入れています。意思決定をする際に、その知識を持っていたり、それに対して影響を与えられたり別の視点を持っている人たちに、みんなが見えるところで助言をしてもらいます。

その助言に賛成・反対、わからないという質問も含めて、今回株主のみなさまに体験してもらっているようなことを行っています。それを含めて多数決ではなく、意思決定者が意思決定を行い、それに対して説明するという仕組みです。

みんなで取締役(みんとり)

山田:サイボウズは去年に社内取締役を公募制に変え、「コーポレートガバナンスは大丈夫なのか?」とザワザワしたところもありますが、大丈夫だという理由としては、先ほどお伝えしたとおり、意思決定のプロセスを共有したり、最終的には議事録で結果も共有したり、説明責任だけでなく質問責任としてみんなが質問できる仕組みになっていることがあります。

このように情報共有しているため、悪さをしようと思ってもできないということですが、今回は質問することについてさらに一歩踏み込み、みんなが取締役となり、自分の身の回りにある「この意思決定おかしいな」と思うところを出して共有してもらおうということを行ってみました。このような取り組みを行っているのが組織戦略室になります。

青野:ありがとうございます。みんなで取締役(みんとり)のところは、第2部で扱うため置いておきますが、今まさに株主本部会が意思決定と助言のところですよね。各本部で何を考えて何を進めるのかを議論するところをみんなに見てもらって助言を集め、質問があれば説明責任で答えていくかたちです。

これは助言が集まらなかったら意味がありません。「公開しています」と言っても「誰も助言していません」「助言できない空気があります」となるとよくないため、引き出すつもりで行いましょうということです。

青野:「社長10人計画」ですが、これは僕の首が切られたような嫌な感じですね。

山田:スライドの絵が悪いですね。

青野:ですが、社内の重要な会議も僕がいなくても決められますし、本当にこのようなかたちになってきましたよね。1年以上行っていますが、みんなはどうですか? 僕がいないと進めにくくないですか? 栗山さんはいかがですか?

栗山:困ったことはなかったですね。

青野:本当ですか。困っていない? 中根さんはどうですか?

中根:むしろ青野さんが絶対にいないといけない時間でないとできないために遅れることを考えると、あまり困っていないかもしれないですね。

青野:ある意味で、進めたい人が自分が決めて進めるわけだからね。

中根:そうですね。

青野:スピード感が上がったのでしょうね。

中根:スピード感は上がりましたね。ただし、本部を超えて非常に大きな意思決定をする時に全社からどのように助言を集め、どのように効率的に行い、かつ誰がそれに旗を立てていくのかは次に試行していくところだと思います。今までは青野さんが「うん」といったらそれというものだったと思いますが、そうではなくなってきているため、考える必要があると思いました。

青野:「うちの本部はこう進めたいけど、他の本部とは意見が相違するところもある」という時に、どのように進めるのかということですね。上に1人いるとそこで結論を出してもらえばみんなが従うという構図が作れますが、それが作れないのですよね。

中根:そうですね。

青野:どのように乗り越えていきましょうか? そのあたりもオープンに議論したらどこかに落ち着くかなと思いますね。

山田:何か見えてくるところがあるのではないですか? 今のところは「基本的にこの案件についてはここが決める」というのをまず割り振ってから議論していくところがあるので、あとはどこが決めるかという割り振りで揉めた時にどのように進めるかというのは、いろいろ考えていかないといけないと思います。

青野:このあたりも、起きてもいない出来事で不安を感じるのではなく、例えば役割分担でなかなか結論が出せなかった、もしくは進めたいと思っていたものが反対を受けて進められなくなったなど、実際に出来事が起こった時にそこで工夫して考えていくのかもしれませんね。

山田:今はこれであまり問題がないといいますが、僕は非常に問題があります。

青野:そうなのですか?

山田:まさに組織戦略は全社に常に関わってきたり、本部をまたいでいくところがあります。今までは青野さんが「うん」と言ったら、話を聞いたとしても自分自身が意思決定しやすかったと思います。

しかし、今は青野さんが「うん」と言ったところで誰も聞いてくれない状態になったため、僕の話を聞いてもらわないといけなくなります。ですので、本当に共感をもらっていないと物事が進めにくくなり、青野さんが社長にいた時のほうが楽だった、誰かが上にいてくれるほうが楽だったとすごく痛感しています。

栗山:逆もあるのではないですか? 「これはもうすでに青野さんに『うん』といってもらっています」といって持ってくる人もいましたが、それがなくなったため、僕はよかったと思います。

山田:そっちはそっちでね。

栗山:こっちはこっちでありますね。

青野:社長の権威を使って物事を進めることができなくなったということでしょうね。

栗山:このピラミッドはかなり年功序列感がありますが、一応株主の方から突っ込まれる前に言っておきます。

山田:まだ若干年功序列感があるけどね。

青野:ですが、なんとかこの仕組みに変えたかったのですよね。僕がいつ病気になったり事故にあったりするかわかりませんから、その時に社長のようなトレーニングをした10人がいた状態であれば、僕はすごいことだと思います。「社長は1人です」ではなく、「うちは社長が10人います」というほうが明らかに強そうですよね。大変なことはわかりますが、ぜひチャレンジしていきたいと思います。

山田:青野さんが起案したものも、社員から助言や反対があって自分から取り下げたものがありましたものね。

青野:むしろ反対者のほうが多かったというね。忖度してくれない会社になってきました。

林田:どのような助言をどれだけもらったら進めてよいのか、やめたほうがよいのかというところはすごい考えどころだと思います。ある意味ではトレーニングなのですが、トレーニングをしている人がたくさん増えると強いという気はします。

青野:そうですね。時間になりましたので、組織戦略室は以上にしたいと思います。理さん、ありがとうございました。

人事本部のトピックス

青野:次は中根さん、お願いしてもよいですか?

中根:人事本部の中根です。人事本部からはトピックスとして2点ご紹介したいと思います。1点目は「幸せな自律分散型組織を実現するために」、2点目は「これからのチームと個人の働き方、多様性」です。

チームワークあふれる会社=サイボウズ流自律分散型チーム

中根:1点目の「幸せな自律分散型組織」は、まさに今の組織戦略室のお話ですが、どんどん権限が分散していき、それぞれが自律的に物事を考え、意思決定して実行していく組織になってきています。

1.幸せな自律分散型チーム

中根:サイボウズの場合、自律分散型の仕組みになっていくだけではなく、働き方もいろいろです。物理的にも分散している状況になってきた時に、「これで本当にチームワークあふれる会社になれるのか?」ということです。危機感を感じているところもなくはないのですが、1つは自律分散型組織は「分散すればよい」わけではないということです。

分散というのはバラバラとも見れるかもしれませんが、それぞれのチームがバラバラに好きなように進めた時、それぞれ個別最適化はされていても、結果としてサイボウズというチームの大きな理想が効率的に達成できる状態になっているのか、ということです。

人事本部として取り組みたいことは、チームワークあふれる社会にできるだけ早く近づけるようにサイボウズというチームを持っていくことです。そして、チームワークがあふれているチームを量産するプラットフォームを創っていきたいと思っています。

そのために必要なキーワードは2つあると思っています。1つは「コネクト」、もう1つは「プラットフォーム」です。「コネクト」で大事なのは、「人のコネクト」と「情報のコネクト」だと思っています。

特に人事本部の役割は人と人をつなげることだと思います。開発本部は開発本部、営業本部は営業本部と、それぞれの本部長が状況に応じてうまく進めてくれていますが、人事本部の役割としてはこの本部を超え、チームを超えて、いかに人とのつながりを作るかです。

その人とのつながりから安心・安全な状態を作り、共創できるかたちを作りたいと考えています。安心・安全な状況を作らないと、助言や質問責任、説明責任を果たせないと思っています。「あの人は実は怖い人なのではないか」と思われると助言もしにくいです。

そうではないコネクトができる、人と人とのつながりを作る場を作っていくことがけっこう大きなポイントではないかと思っています。

また「プラットフォーム」は、みんながそれぞれ「場」や「しくみ」を作りやすくするために、私たちとして仕組みを作っていくかたちです。これが1点目です。

2.これからのチームと個人の働き方、多様性

中根:2点目は「これからのチームと個人の働き方、多様性」です。2年間のコロナ禍を経て、サイボウズもけっこう働き方が変わりました。以前は出社率が70パーセントくらいだったのですが、「グループウェア」の力なのか、現在は10パーセントから20パーセントくらいを行ったり来たりしています。もちろん、業務の内容や拠点によって出社率にはかなり幅があるのですが、このような状態になっています。

この2年間で、「オフィスをもっと減らすべきなのか?」「そうではなく、今の状態からもっと使いやすくするべきなのか?」ということをずっと考えつつ、定期的にアンケートを取りながら検討していくと、やはりリアルにはリアルのよさがあり、バーチャルにはバーチャルのよさがあることが見えてきました。それぞれのよさを活かしてハイブリッドワークを実現する、各個人や各チームが今の状態に合わせてよりよいチョイスができるような働き方ができる場を作ろうとしています。

先ほどの「コネクト」の話にもつながるのですが、オフィスは、そこで働いてそこでアウトプットを出す場ではなく、人と人、チームとチーム、メンバーとメンバーがつながるための場に変わっていくのではないかと思っています。

結果としてただつながればよいというものではなく、最終的にはチームワークの成果が上がる働き方に変えていく、業務効率が上がる、売上が上がる、あるいはお客さまにたくさん使っていただけるといった効果につなげていける働き方や場を作っていきたいと思っています。非常に難しいですが、がんばっています。

青野:ありがとうございます。サイボウズの人事本部は先進的な取り組みをたくさん行っており、たくさん紹介したいところなのですが、今は自律分散型組織の確立に取り組んでいるということですね。自律分散型を目指しているものの、現在はコロナ禍で「コネクト」しようにもなかなか集まれません。

中根:そうですね。

青野:オフィスを働く場からつながる場に変えていきたいものの、リアルのオフィスがなかなか使いづらいです。

また、このあたりの問題意識に加えて、少し気になるのはメンタル面ですね。コロナ禍で新入社員が同期と会っていなかったり、上司と会うのが「今年2回目です」ということがあったりといったことが起きています。このあたりの短期的な視点での対策はどうですか?

中根:具体的にすごく力を入れているのは、やはり全社的なイベントで、チームの垣根を超える規模のものを飽きのこないかたちで開催しています。まさにつながる場として、バーチャルもうまく活用して、いろいろな技術や新しいサービスを使って場を設定し、そこにいろいろな人を呼び込んでいます。今度はお花見を行う予定で、新入社員にも参加してもらおうと考えているのですが、そのような全社イベントなどに取り組んでいます。

加えて、こちらもメンタルヘルスにつながるところですが、まず大事なのは、いろいろな問題や風土はすべて現場で作られるということです。そして、その現場の人のことをよくわかっているのはマネージャーです。人事としては、このマネージャー間のつながりを作ることをサポートしたいと思っています。

マネージャーとして知識を身につけるだけではなく、マネージャー同士で一緒に問題を解決できたり、相談できたり、ノウハウを共有できたりする場を作りたいと思っています。これは昨年から取り組んでいるのですが、今年も始動して、ちょうど昨日に第1回目を開催しました。マネージャーのつながりの場、「マネジメントBar」というものを始めています。

青野:イベントも増えましたね。オンラインイベントを工夫しながら開催していますよね。

中根:工夫していますが、本当に難しいですね。

青野:マネージャーが各メンバーの状態などを把握して、知っているメンバーを孤立させずにつないでいくために、まずはマネージャーの「コネクト」を行っていくという取り組みですね。

サイボウズの対象者は何人くらいですか? 1,000人くらいの会社で、マネージャーコネクトに参加するメンバーは何人いるのでしょうか?

中根:70人から80人くらいです。

青野:けっこうな数ですね。

中根:マネージャー支援に加えて、先ほど青野さんがおっしゃったように、オンラインに移行する中でメンタルヘルスもケアしていくことが重要です。みんなが幸せに働くためにも、心身の健康はべーシックなところにあって非常に大事だと思っているのですが、マネージャーだけではなくメンバー一人ひとりもメンタルヘルスに対する意識が上がってきていると思います。

例えば、ストレスチェックなどは年に1回義務づけられているもので、サイボウズももちろん実施しているのですが、義務づけられてはいるものの、このチェックに参加するかどうかは一人ひとりに委ねられています。この参加率が、昨年は70パーセント台だったのですが、今年は90パーセント台に上がりました。

コロナ禍の影響もあって、自立的にメンタルヘルスをケアしていく必要があるということを、一人ひとりが強く実感している状況にあるのだと思います。結果としてたくさんの人が参加してくれて、高ストレスと言われている人の実数も少し増えているため、そこはこれからの課題です。

青野:「働き方が先進的」と言われるサイボウズも、このくらい手間暇かけていることを知っていただきたいし、外部の方からぜひアドバイスをいただけたらと思います。

中根:ぜひお願いします。

経営支援本部トピックス

青野:最後に、忠正さんお願いします。

林忠正氏(以下、林):経営支援本部の林です。よろしくお願いします。我々の部門は、基本的に経費処理や経営会議の運営のような定常的な業務をいかに安定して運営するかというところが最も大きなミッションです。その中でも、昨年の大きなトピックスだったものをいくつか挙げています。取締役の運営や次期候補の検討については第2部で詳しくお話しします。ここでは、それ以外に2つほどお話しできればと思います。

1つ目は、今日参加しているみなさまもかなり興味があるところだと思いますが、東証の新市場区分への移行の対応です。2つ目に、この1月に経営企画から切り出して新たに独立した情報共有支援の取り組み開始についてお話ししたいと思います。

1.東証の新市場区分への対応

:東証の新市場区分への対応ですが、結論としては、東証一部に相当するプライム市場への移行を申請しています。

もともと、財務経理の責任者として私が経営会議に出た時には「プライムでよいでしょうか?」と確認を取りに行くような起案の仕方だったのですが、意外にも経営会議のほうでは議論になりました。青野さんや理さんをはじめ、「サイボウズの立ち振る舞いや立ち位置からするとスタンダード市場、場合によってはグロース市場のほうが自由に動けてよいのではないか」という意見が経営会議では主流で、そちら側に行ったほうがよいかのようなトーンになってきました。

しかし、私はそれにそのままゴーを出すことに少し不安もあったため、あらためて社内のみんなに意見をもらおうと、問いかけるようなかたちで「新市場区分はどちらに移行するのがよいと思いますか?」とうかがいました。

すると、社内からかなりの勢いで意見が上がってきました。これまでにない勢いで「プライム市場に行くべきだろう」という意見が集まったのです。現場で、例えばお客さまからの信頼を含め、市場からの反応と向き合っている人からすると、プライム市場に行くという信頼感はビジネス上でもかなり大きな影響があることが感覚値としてわかりました。

経営会議では「スタンダードやグロースでもよいのでは」という意見が出たものの、社内のみんなの意見でひっくり返されるといいますか、最終的にはサイボウズの経営陣も合意してプライム市場の移行を申請するという流れになったことが、大きなトピックスの1つだったと思っています。

2.情報共有支援の取り組みを開始

:情報共有支援の取り組みです。ここまでの話に何度か出ていると思いますが、サイボウズではメンバー全員が対等な議論ができるよう、可能な限り情報を公開しています。

グループウェア上にあらゆる情報やコミュニケーションが集約されるために、組織と事業の拡大に伴って共有される情報量が非常に多くなっています。コロナ禍が始まって以降は直接会って話す機会がかなり減っているため、「kintone」のオープンスペースだけでもだいたい1週間に3万5,000コメントが寄せられており、以前の5倍くらいに膨れ上がっていると聞いています。

このように情報があふれてる中では、必要な情報を必要な人に届けることを実現するのもなかなか難しくなります。単に公開すればよいということではなく、しっかりとデリバリーする、その公開の向こう側にある情報流通という概念を実現することの必要性が、今のサイボウズには出てきているのではないかと思っています。

そのようなこともあって、今年から社内の情報を適切に加工してみんなに届きやすくするような動きをする部を立ち上げて活動しています。

経営支援本部のトピックスは以上の2つです。

青野:メンバーがあんなにプライム市場に行きたかった理由は、具体的には「プライムのほうがやはり営業しやすい」などというかたちでしたっけ?

:そうですね。当社のお客さまからセキュリティ的な要件などを問われる時に、「東証一部に該当するところにいるのであれば、これ以下の細かい質問については答えなくてもよいです」というような、どの市場にいるかで形式的にお客さまから一定の信頼が得られるパターンがあるという話はけっこう出てきました。

青野:そのほうが営業しやすいのであれば、プライム市場でいいと思いますね。サイボウズの場合は、社内にもう1つインターネットがあるようなかたちで、僕もとてもではないけれどすべてカバーする気にはならないのですが、このあたりで具体的にどのような取り組みを行っているのか、新入株主社員に向けてご紹介できるところがあれば情報共有をお願いします。

:直近は、社内の1ヶ月の経営会議の動きをある程度共有できるような仕組みを作っています。動画で「サイボウズダイジェスト」のようなもので、社内の1ヶ月の動きを取りまとめています。

今月でいうと、サイボウズのCMをご覧になった方もいると思うのですが、サウンドロゴやモーションロゴがついに完成したことや、取締役の候補者が決定したことを共有するべく、このような動画を使っています。大きなトピックスをみんなに伝わりやすいように加工して伝えることを行っています。

さらに、社内外の情報格差をなくすこともサイボウズの大きなガバナンスのあり方の1つだと思っています。今も、みなさまからのIRの質問などにお答えすることは適宜行っているのですが、例えば社内の経営会議でどのような議論が行われているか、あるいはその経緯がどうなっているのかなどをサマリーにして社外にも発信していくような活動ができればとも思っています。

青野:おもしろいですね。この情報共有の伝播を、社内だけではなく社外にも行っていけるといいですね。この株主本部会もまさにその1つかもしれませんが、僕たちはこの情報共有をもって「チームワークあふれる社会を創る」ということにチャレンジしてみたいと考えています。動画についても、最近非常にクオリティが上がっていますよね。

:社内の評判もかなりよくて、みんなの努力の結晶が受け入れられているように思います。

青野:お客さまからは「サイボウズみたいに情報を共有していると、情報があふれて大変でしょう」とよく言われますが、本当に大変です。大変だからこそ工夫して、流通するところまでがんばっているという話かもしれないですね。

開発人材の採用強化について

青野:ここからは助言を拾っていきたいと思います。開発人材の採用強化について、「日本国内のIT人材がもともと不足しているので、採用だけではなく育成することを考えたらどうでしょうか?」という助言です。例えば、私たちの発祥の地である愛媛県で全寮制のサイボウズITスクールを設置してエンジニアの育成を行うなどはおもしろそうですね。

佐藤:非常に鋭いご指摘、アドバイスだと思います。ちょうど今週、採用チームのところでも育成をさらに強化することで、活躍してもらえる人の幅を広げることを考えたほうがよいのではと議論していたところです。

今までももちろん、育成には取り組んでいました。例えば、開発系においては開発研修の資料を直近の2年、3年は毎年公開して、ソーシャルでも非常にバズっていたことがあります。そのようなものが注目されることからも分かるように、学ぶことが重視されています。

加えて、エンジニアとしてのバックグラウンドがなかったところから、最近日本でもよく見るプログラミングブートキャンプなどに挑戦する方がけっこう増えてきました。そのようにチャレンジする人が増えてきたことについても、可能性といいますか、今後のポイントだとは考えています。

スクール設置のようなところまでいくと、どのようなかたちなのかわかりかねますが、社長室やサイボウズチームワーク総研などでそのような取り組みに近いところがありそうです。スクール設置のような文脈もあるのでしょうか?

青野:社長室長の​​中村龍太さんは「学校をやりたい」と言っていましたよ。そこにサイボウズチームワーク総研の和田さんなどに入ってもらって、考えてみてもよいかもしれませんね。おもしろそうです。

テレビCMについて

青野:「もっとCMを出してもよいと思います。マネーフォワードや『楽楽精算』はテレビで認知しました。『kintone』の名前を初めて知ったのは、東京駅の通路の柱に出ていた頃です」という助言です。懐かしいですね。東京駅に広告を出していたのは2013年、2014年くらいだったかと思います。

CMについては、ビジネスマーケティング本部ですね。先ほどの繰り返しになりますが、「もっとチャレンジしてはどうですか?」というアドバイスについてはいかがでしょうか?

林田:ぜひチャレンジしたいところです。チャレンジと効率のバランスも重要ですね。今はある程度見ていただけるくらいの出稿量ですが、例えば一時的に「誰もが見た」くらいに大量に出すこともアリだと思います。メリハリをつけながらチャレンジしたいと考えています。時間帯についても、現在は絞って出している状況ですが、深夜でもテレビを見ている方はいますし、そのようなところも含めていろいろとチャレンジしたいと思っています。

大手SIerとの提携について

青野:大手SIerとの提携について、営業本部への助言です。「大手は人月ビジネスから抜け出せないところも多いと思いますので、むしろ中堅ぐらいのシステム会社経由で、中小企業への『kintone』導入に注力していく戦略はいかがでしょうか?」ということです。栗山さん、いかがですか?

栗山:これはけっこう詳しい人が書いてくれているのではないかと思いますが、中堅どころを狙うにあたって1つだけ問題があります。日本のIT業界はもともと階層構造でできあがっているため、中堅としては結局二次請けか三次請けになってしまい、営業がいません。その流れの中で仕事をしているところは、1,000人規模の会社でも営業が2人くらいしかいません。

そのため、私たちがクロージングした案件に対応してもらうパートナーとしてはよいのですが、顧客攻略という意味では難しいところがけっこう多いという見方です。しかし、素直に見ればこのようなアドバイスになると思いますし、私もこれに関してはよくわかります。

青野:僕の感覚だと、いわゆる大手ITゼネコンと言われるレイヤーから、規模的に少し小さいところになると検討してくれることがかなり増えてきましたね。

栗山:増えましたね。かなり狙って攻略してきたこともあって、けっこう増えました。

青野:成功して走っているところも出ていますし、今後もしっかりと中堅のSIerを盛り上げていきたいと思います。

たくさんの助言をありがとうございました。国会議員宿舎に広告を、などのご意見もありましたね。今回はすべて拾えなかったのですが、これを無駄にしないように、何らかのかたちで応えていきたいと思います。

このようなかたちで、サイボウズが社内で話していることをみなさまに見ていただき、みなさまからの助言によってさらに鍛えられ、強くなり賢くなって、理念に向かってさらに進んでいける組織にしていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

以上で第1部は終わります。ありがとうございました。