True Data

米倉裕之氏:みなさま、こんにちは。True Data社長の米倉でございます。よろしくお願いします。私たちは12月16日に東証マザーズに上場いたしました。IPOラッシュの影響で、株式市場の需給関係は大変な状況ですが、私たちは今後、事業成長と戦略を次々と実現させていきますので、どうぞご期待ください。

さて、不動産やヘルスケアデータなど、さまざまなビッグデータのプラットフォームが生まれていますが、True Dataは小売業の購買ビッグデータのプラットフォームです。ID-POSのデータプラットフォームは日本の上場企業としては初めてで、現時点では世界でもほぼオンリーワンの存在だと思います。2年から3年のうちには、ID-POSの活用はグローバルにどんどん進むものと思っています。

まず、True Dataがどのような会社なのかというところからご説明していきます。スライドに映っているのは、ホームページに掲載している事業内容の絵です。ビッグデータの活用には、大量のデータとそれを回すテクノロジーだけでなく、データガバナンスやセキュリティなどの厳格な要件が求められます。

こうしたデータを精製、蓄積、管理、分析して、使いやすいサービスに変えてクライアントに提供するプロセスが大変です。True Dataは、さまざまな企業がデータ活用の恩恵を受けられるように、このプロセスを通じてさまざまな価値を提供していきます。

True Dataの企業理念(パーパス)

True Dataの企業理念(パーパス)、すなわち存在意義を記載しています。「データと知恵で未来をつくる」、これが当社の存在意義です。「知恵」という言葉は「データとテクノロジーだけでなく、それを使う人が重要であり、サービスの提供価値をどんどん引き上げていくのは人間なのだ」ということを意味しています。そのため、教育への支援にはとても力を入れています。

また、当社は収益の成長と社会課題の解決の両方を実現していくことを目指すゼブラ企業です。当社に入社する社員も、利益や収益の最大化というビジネス上の合理に加えて、社会課題の解決にデータを使いたいという社員が増えています。

(当社の取り組み事例)SDGsのインデックス化

今年3月、宮城県のすべての市を対象に、NPO法人「人間の安全保障」フォーラムと連携して、ESGの「S」であるソーシャルの指数、つまり各自治体の生活の状況を暮らしやすさや貧困、教育などの指数で見える化して、首長に提出するという取り組みにチャレンジしたものです。

実際に今年の夏から、気仙沼市がこの取り組みで見える化された社会課題の解決に向けて、いろいろな政策を動かし始めています。とてもすばらしいと思います。「データで真実が見えると、物事は動き出すのだ」と思いました。

成長の軌跡

それでは、会社概要から進めていきたいと思います。成長の軌跡というチャートが出てきました。これは当社の売上の推移です。当社は2000年に三菱商事の新規事業として生まれました。小売業のマーケティングをデータで支えることを目的として設立された会社ですが、2008年に三菱商事からプラネットに株式が譲渡されました。

プラネットという会社は、卸売業と消費財メーカーが業界全体のプロセスを効率化するために共同で作った、受発注データのプラットフォームです。1,000社以上のメーカーや卸売業が受発注に活用しています。

プラネットはメーカーから卸への商品の流れ、True Dataは店頭から消費者への購買データの流れのプラットフォームです。そのため、将来サプライチェーンのデータが一貫して組み合わさるようになると、廃棄やロスの削減などの多大な価値を提供できる可能性があるということで、True Dataの株式をプラネットが取得しています。

一方で、三菱商事の社員はこの時に商社に戻り、残されたプロパー社員の約20名ががんばっていましたが、売上は毎年落ちていって、プロパー社員と一緒にV字回復にチャレンジするために私が入社して、2012年12月に社長に就任しました。

トップラインはご覧のとおり、2016年くらいから横ばいに見えます。ある企業の大型システム開発を担う特別なプロジェクトの売上が、棒グラフの上に乗っている薄いグレーの部分になります。業績への影響が大きいため色を変えていますが、これが2019年で終了したため、全体の売上が2016年からそれほど伸びていないように見えています。

一方、後でご説明しますが、「イーグルアイ」や「ショッピングスキャン」などのTrue Dataのソリューションのストック型の売上がどんどん積み上がっているというのが、棒グラフの緑色の部分です。

True Dataの売上成長、つまりオーガニックグロースとしては、2012年を底とするV字回復から安定成長軌道に乗り、IPOに至りました。このピンクの棒グラフが今年度です。IPO後、私たちはさらなる成長ステージに踏み出していこうと思っています。

会社概要

マネジメントですが、データというのはデータガバナンスや信頼性が重要な領域です。そのため、ご覧のとおり、私が社長に就任したタイミングで、社外取締役中心の取締役会に加えて監査等委員の設置会社にも移行しました。しっかりとした監督機能と執行機能が組み合わさったガバナンス構造を実現しています。

(参考)POSデータとID-POSデータ

主力サービスについてご説明したいと思います。True Dataは小売業の購買ビッグデータのプラットフォームですが、実際はPOSデータとID-POSデータの2つを活用しています。

POSデータは商品の購買データです。「どの商品がどのくらい売れたか」というような、小売業の売上の100パーセントすべてがPOSデータになります。日本の場合、ポイントカードが非常に普及している市場ですので、買い物をする時にレジでポイントカードを提示して、ポイントをためることが行われています。各スーパーやドラッグストアで、みなさまがポイントカードを発行しています。

このようなポイントカードを提示する割合が、全体の買い物の約70パーセントくらいというのが我々のお客さまのデータですが、この場合はそのPOSにIDが紐づきます。つまり、「商品がどれだけ売れたか」ということだけではなく、人の軸で分析できるようになるのがID-POSデータです。

「人の軸とは何だ」という話ですが、例えばリピート率です。IDが付いているため「いろいろな方が繰り返し買っている商品だ」というリピート率などがわかります。加えて、「もともとこの商品はこのようなタイプの人たちが買っていたが、この人たちがいつから別の購入商品にスイッチしていった」という割合、すなわちスイッチング率もわかります。

「商品がどう売れているか」ということに加え、さらに人の軸、つまり「どのような人たちがどのようなものを買っているか」という傾向が見えるというのが、ID-POSデータの特徴になります。

(参考)ウレコン(全国の消費者購買情報を公開)

「ウレコン」です。True Dataがインターネット上で無償で公開している購買データのサイトになります。スーパーやドラッグストアで売られている、いろいろな500カテゴリの商品が掲載されています。ぜひ見てみてください。

POSデータとしては、商品の売上ランキングです。スライド左のほうに小さく醤油のランキングが出ていますが、この「何が一番売れているのか」がわかるのがPOSデータです。この中に、小さくて少しわかりにくいかもしれませんが、リピート率が載っています。これは人を軸に分析できているため、「ファンがどれくらい付いているのか」がわかります。

スライド中央には、「男女でどのような人たちがこの商品を買っているのか」「何歳代の人たちが買っているのか」「何時くらいに買われる傾向が強いのか」「何曜日に買われる傾向が強いのか」というように、どのような人かという軸が入ってきます。「どのような傾向があるのか」に加え、地域ごとに把握できるという特徴も持っています。これがID-POSデータです。

プロから評価を得るID-POSデータ分析ツール(SaaS)

このようなデータはそれだけでは使えないため、一番使いやすい方法ということで、私たちは使いやすい分析ツールを入れて、サブスクリプション型のSaaSというかたちでお客さまに提供しています。

1つは、小売業が自社のすべての店舗のすべてのデータを「自分たちのマーケティングを一番強くするように」「お客さまが一番あふれるように」「ロイヤル度が高まるように」「売上が伸びて収益が増えるように」「ロスが減るように」というようなかたちで小売業が自社のデータを使うためのリテールDXのツールが「ショッピングスキャン」になります。

もう1つ、「小売業ごとのデータは必要ない。むしろ日本の消費者全体が知りたい」という場合に、「どこの小売業か」のデータは入っていない、先ほどの「ウレコン」のような消費者の購買データを分析できるツールが「イーグルアイ」となります。主に消費財メーカーにご活用いただいています。

ショッピングスキャン(小売業向けID-POSデータ分析ツール)

「ショッピングスキャン」について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。小売業が自社の全店舗の購買データを、あらゆるシーンのマーケティングに活用するためのツールが「ショッピングスキャン」です。

機能としては、小売業の自社の購買データを分析できるだけではなく、万全のセキュリティやデータガバナンスのもとで、取引先の消費財メーカーや卸売業に自社のID-POSやPOSデータを共有できます。これは我々の業界ではデータ開示と言うのですが、データに基づく商談や提案を、メーカーや卸売業から受けられるようになるという機能を、このツールで実現しています。

特徴として、もう1個あります。スライド左側、「POS分析」「ID-POS分析」の下に「全国比較」と記載しています。日本は新しい商品がどんどん出てきて、どんどんなくなっていく市場なのですが、多い時には1日1,000商品くらいの新商品が出てきます。

一方で、小売業の売り場の面積はとても限られています。そのため、多くの商品が生まれて、ほとんどの商品が生活者の目に留まらずに消えていくという市場が、日本市場だと感じています。

一般的なデータ活用の場合には、小売業の購買データを分析できるシステムやツールを入れる方法が多いのですが、限られた売り場面積で並べられた商品の購買しか判断できないということが起こるわけです。

しかし、例えば「自社の店舗には並んでいないチョコレートだったら、お醤油だったら」「今30代の女性がすごく買い始めた商品がある」というような情報は、実際にそれを並べるかどうかには総合的な判断があるにしても、その情報を知ること自体に大きな価値があると思っています。

このような日本全体に役立つ情報は、小売業の許諾を得て、日本中の消費者の購買データのパネルを作っています。あくまで消費者の購買統計データですが、みなさまがデータ活用の恩恵を受けられるようにしています。「ショッピングスキャン」の差別化ポイントは、この購買データの全国比較ができるところにあります。

ショッピングスキャンのビジネスモデル(SaaS)

収益モデルです。小売業者が自社のID-POSデータ、POSデータの分析ツールを導入するにあたっては導入コストがかかりますが、「ショッピングスキャン」へのデータ開示の機能の付与を実現することにより、小売業者はツール導入のコストを上回る収益を、取引先であるメーカーや卸売業者から得ることができます。

つまり、この「ショッピングスキャン」を導入することで、小売業者は自分たちの保有するデータを分析してマーケティングに使えることに加え、自社のデータを安全に取引先に共有できるようになります。これにより、取引先からの商談資料がデータに基づいたクオリティの高いものになり、非常によい提案を受けられるようになります。

収益の規模は小売業の規模によっても異なりますし、考え方もさまざまだと思いますが、データの提供に伴う収益が年間数百万円、数千万円という規模を実現しているケースが多いように思います。

データ化およびデータの活用化が進んで、取引先からの商談資料がレベルアップし、収益も増えて、という好循環ができたことにより、1つの完成されたリテールDXのかたちが見つかったと我々は思っています。

このスキームができることで、True Dataは小売業者からツールの利用料をいただく他、メーカーや卸売業者に販売したデータ料のレベニューシェア、さらに、商談資料の作り方などのセミナー開催、サポートデスクなどのデータ活用支援の費用を、年間契約のストック型でいただくことになります。

イーグルアイ(消費財メーカー向けID-POSデータ分析ツール)

次は「イーグルアイ」です。こちらでは消費者の購買行動のビッグデータを扱っており、ログインすれば2日前までの消費者の購買行動が見えるようになります。現在約120社に導入が進んでおり、1社当たり500ID、つまり500名以上が利用しているメーカーもあります。

イーグルアイのビジネスモデル(SaaS)

こちらのビジネスモデルはシンプルで、年間契約することで「イーグルアイ」にログインして使えるようになります。ツール利用料は、1社当たり年間500万円くらいが平均です。

主要ソリューションの既存顧客売上拡大およびストック型売上推移

売上のイメージです。スライドの左側の図は、「イーグルアイ」のお客さまの売上の推移です。各企業に特徴があります。一番左側のA社は、もともと年間2,500万円くらいで導入していただき、今では年間3,000万円近くまで増えております。B社は年間1,500万円で導入いただいて、5年をかけて年間2,500万円くらいまで増えていきました。このように、導入いただいた後にご評価を得て、さらに活用が拡大していくことが「イーグルアイ」の特徴になります。

少ないID数でスタートしても、例えばマーケティング部門でご活用いただいて、その後営業部門、広告宣伝部門などいろいろな部門に活用の場が広がったことで、さらに数百ものIDを追加したというケースもあります。

もしくは、例えば化粧品のカテゴリで導入して使い始めたら、日用品のカテゴリまで利用が広がったなどのお話もいただいています。導入して、それがさらに利用範囲が広がっていくようなご活用の方法もございます。

スライド右側のチャートは、「イーグルアイ」と「ショッピングスキャン」の売上の推移です。毎年新しいお客さまを獲得しながらも、既存のお客さまの間でも活用が広がっており、それらが積み上がって、このV字回復の売上を作っていったかたちです。

当社の顧客・パートナー

当社のお客さまです。小売業のお客さまについては開示していませんが、メーカーはいろいろな会社に導入いただいています。最近は、内閣府が公表する経済統計において、例えば家計調査、商業動態調査などいろいろな調査データがありますが、ほぼ同じようなデータをまったく違うデータ量で、日々当社のプラットフォームで大量に受け止めています。

そのため、このようなデータを、例えば金融オルタナティブデータとしてご活用いただくような事例が出てきたり、先ほどお話ししたように、地域の暮らしの状態をデータで「見える化」して総合政策にご活用いただいたり、課題解決にご活用いただいたりというケースも出てきています。

当社事業の特徴

当社の強み、特徴をご説明していきたいと思います。まず、スライドにドーナツのような図が描いてありますが、これはデータプラットフォームを構成する要素を示したものです。大量のデータ、いわゆるビッグデータがあり、これを回しきるようなテクノロジーが必要で、それをどのように使ったらよいかという活用のノウハウがあります。データとテクノロジーとノウハウの3つがそろって初めてデータが使えるようになります。これをワンストップで提供できるようにしていることが、True Dataの強みの1つです。

戦略的ポジショニング(当社ユニークネス)

DX、ビッグデータなどに関連して、当社の他にもいろいろな会社があると言われています。こちらのスライドでは、ポジショニングということで情報を整理しています。

縦軸に「ビッグデータを持つ」という軸、横軸に「ビッグデータを活用できる」という軸を入れています。活用できるというのは、ノウハウを持っていてデータをどのように使うか、どのようなソリューションがあれば現場が使いやすいかということもありますが、一方で、データはきれいに整えないと使えないため、そのようなデータ精製についても「ビッグデータを活用できる」というところに入れています。

我々の強みは、ビッグデータを持っているということと、ビッグデータを活用できることです。それでは他の会社とどこが違うのかと言いますと、データの量であり、これは他を圧倒する量です。

また、スライドの「ビッグデータを活用できる」の軸の右側に寄ったところに、マーケットリサーチ企業と書いてあります。今はデータを使うこともあると思いますが、商品を買っていただけるお客さまに対する、非常に丁寧かつ細かいアンケートやインタビューを通じて、リサーチを突き詰めていくような会社があります。

我々の会社は、リサーチの目的でも「イーグルアイ」や「ショッピングスキャン」をお客さまに使っていただいてはいますが、リサーチの他に幅広いマーケティングのプロセスも包括したソリューションを提供しています。

マーケティングというのは、どのようなお客さまが買っているのかという確認から、実際にそのお客さまに特定の商品を買ってもらいたいということでターゲティングをして、プロモーションや販促などを行い、実際にそのような方々に買ってもらえたのか、それとも違う方が買っていたのかなどを、データで確認するまでの流れを指します。そのようなPDCAのプロセスがある中で、我々はリサーチのみにとどまらず、PDCAの「CA」が示す改善の部分まで、包含するようなノウハウを持っています。

さらに、サプライチェーンもビッグデータを使って効率化を行うことができる領域であり、幅広いノウハウに対応できることも我々の強みです。

業界内プレイヤーと当社の関係(顧客・提携・競合)

テクノロジーはどんどん進化していますが、今我々のプラットフォームには、巨大なグローバル企業のITテクノロジーを活用しているため、その進化に並走して、我々としてもアルゴリズムの構築、活用の拡大、性能を引き出すことを行いながら、さらに高みに行けるようなかたちを作っています。

テクノロジー大手と提携しながら、一方ではお客さまを小売業、消費財メーカーと捉え価値を出していますし、場合によってはテクノロジー大手企業からお客さまをご紹介いただくような、営業協力のような関係まで作っています。

(データの精製)消費財メーカー社内でのデータ活用の課題

データを精製するというお話に少し触れたいと思います。小売業のPOSデータ、ID-POSデータがありますが、基本的には、それぞれの小売業者が商品をデータ化して自社のシステムに入れていますし、そこを見るための分類においても、それぞれの業者が分析したいかたちに落とし込んでいます。そのため、データがバラバラで一元管理できないということが現実に起こっています。

(データの精製)消費者ビッグデータ活用の差別化要因

いろいろな小売業のお客さまがいて、それぞれの分析はできますが、「国内の市場全体の消費者はいったいどうなっているのか」を確認しようと思った時に、これらのお客さまごとのデータを全体で俯瞰して、その中で消費者全体を見ることはなかなか難しいという状況があります。

我々は、それぞれの小売業者のデータを全体としてつなげて、「日本全体がどうなっているか」ということを統計化して見られるプロセスを持っているため、全体を把握して、そこでわかったことと、各小売業者の方々との認識の間のギャップを知らせるようなものを提供していけるような強みを構築しています。

(テクノロジー)データプラットフォームに求められる要件

テクノロジーについては、スライドに記載のとおりです。処理性能はどんどん上がっており、AIの中でも量子AIなどいろいろなものが出てきていますが、データが大きくなっていく中で、これを回せるパフォーマンスもどんどん向上させていく必要があります。また、セキュリティやプライバシーの保護なども万全である必要もあります。その中にあって当然、テクノロジーはどんどん進化していきます。

経営資源・競争優位性(テクノロジー)

このようなチャレンジを行っているグローバルテック企業のテクノロジーを、我々のプラットフォームの中に包含して、その性能を引き出しながら、さらなるコスト削減と効率化を進めています。このようなテクノロジーについては、いろいろなテクノロジーパートナーがそれぞれよいものを持っているため、それらを我々のプラットフォームに組み込んでいます。

例えばアルゴリズムに関しては、プル型データでの非常に強力な独自アルゴリズムを作っていますが、そのような自前のものだけではなく、グローバルに使われているNielsenIQのユニークなアルゴリズムとも組み合わせて使うなど、いろいろなテックパートナーと連携しながら、より強いサービスをお客さまに出せるようにと考えて動いています。

当社の消費者購買データ

消費者の購買データに関しては、現在4.5兆円分の小売業のレシートデータを保有しており、売上のデータを1年間で受け止めて、価値を提供しています。その他の特徴も含めて、スライドに示しているようなプラットフォームになっています。

年間アクティブ数、つまり1年間で実際に使われていたIDで換算すると、6,000万人という規模です。過去データも15年以上蓄積しています。例えば、リーマンショックや災害が起こった時や、税金が上がったときなど、過去に起こったさまざまなイベントにおいて、購買やモノの価格がどのように変わって、どのような人たちに、売上を含めどのような影響が出たかなどを、確認することができます。

このようなものを振り返って将来を予測した上で、AIを用いてまた新しいサービスを提供するときに、この長期のデータは非常に価値を持つと考えています。過去データはなかなか取りに行けないことから、すでに蓄積している過データは我々の財産だと考えています。

(参考)DXにより推進される消費者ビッグデータのかけ合わせ

また、ID-POSで強い価値をどんどん提供していこうと思っていますが、今いろいろなところから消費者ビッグデータが出てくるようになりました。ID-POSにさまざまな消費者ビッグデータをかけ合わせていくことで、データから消費者をより正確に理解し、消費者にあった最大価値をお届けするという競争の時代に世界中が入っていると考えています。ですので、我々の方向性の1つとして、このようなデータをかけ合わせていく戦略が重要だと思っています。

当社の事業構造

プラットフォームです。冒頭で「みなさまがデータを有効活用できるようなプラットフォームとしてのTrue Data」ということで、街の絵を紹介しました。どのような企業でも、データの精製、蓄積、管理、分析、マーケティングをサービスに変えて提供するプロセスだけは必要になってくると考えています。

これを作るのはかなり大変なことですが、我々はグローバルテックを包含したかたちで、ほとんど完成されたプロセスをすでに持っています。これをクラウド型で切り出し、お客さまごとにセキュアな関係を作って活用していただけるというコンセプトです。

このような完成されたプラットフォームを使い、さまざまな方の手に届く料金体系でビッグデータのサービスを提供していることが私たちの強みになります。

市場環境と規模

市場環境と規模です。スライドにチャートを掲載しています。「イーグルアイ」「ショッピングスキャン」など、私たちがストック型のSaaSで成長をどんどん積み上げている市場が、スライド中央のデータマーケティング市場になります。

250億円と記載していますが、各社が提供している売上を推計して合わせるとこのくらいになります。市場全体の伸びしろが250億円という意味ではなく、まだ250億円までしか売上ができていない市場だと思っています。ですので、ここでストック型の売上をどんどん積み上げていけば、この市場はさらに拡大すると思っています。

データマーケティング市場の右側に広告市場、左側にビジネスアナリティクス市場と記載しています。ビジネスアナリティクス市場では、AIなどがどんどん高性能になっていますが、こちらも消費者ビッグデータを活用するニーズが出てきています。

広告市場は、データマーケティングと非常に親和性が高い市場です。データで見えるようになった消費者などターゲットとなる層に購入されたい場合、そこをセグメントして広告販促を打ちます。その後、実際にどのような人たちかどのように動いたのか、どのブランドからスイッチしたのかなど、しっかりと効果検証していくというニーズが広がっています。

ですので、もともとの主戦場であるデータマーケティング市場を軸としながら、左右に広告市場とビジネスアナリティクス市場があると私たちは考えています。

競合環境

データマーケティング市場です。True Dataはドラッグストアに対して多くの価値を提供してきました。ここからスーパーマーケットやホームセンターなど、業態を広げていこうと考えています。

ビジネスアナリティクス市場と広告市場は、強力な既存のプレーヤーが存在すると考えています。一方で、小売業の販売実績ビッグデータを自社で持っている競合プレーヤーはほとんど存在しません。

私たちはデータで価値を提供しながら地域経済をどんどん活性化し、お客さまが強くなっていくことなどを目指していますので、競争ではなく協業をベースとしたエコシステムを生成していきたいと思います。データを囲い込むのではなく、ガバナンスを効かせてみんなが価値を高められるような方向性で考えています。

成長戦略

成長戦略です。スライドにいろいろ記載していますが、大きく分けて3つあります。1つは、当社が取り扱うデータ自体の水平拡大です。

また、海外でも同じことを進めやすいと思っています。データの事業は距離も言語も関係がなく、場合によっては国境も関係ないところがあります。ですので、非常に距離を乗り越えやすいと思っています。プラットフォーム自体をグローバルクラウド上ですべて実装しているため、海外に出ていくと言っても、それほど大きな投資がかかるわけではありません。日本で開発しているソリューションをそのまま海外でも活用することができます。

言語対応は必要だと思いますが、グローバルな大手IT企業は海外であってもクラウドで対応することが可能なため、それほど大きな問題ではないと思っています。ログインすると日本にいながら現地のデータを使えたり、現地でもそのデータを使えるようになるのではないかと考えています。

2つ目です。ID-POSを水平展開することでどんどん分厚くなっていく購買ビッグデータのプラットフォームにさらに消費者ビッグデータをかけ合わせていきます。

ID-POSとほかの消費者ビッグデータのかけ合わせにより、データから消費者をさらに理解して、最適な商品を提供できるようにするという競争が世界中で進行しています。ID-POSとほかの消費者ビッグデータとのかけ合わせにより、データの付加価値を拡大していくというのが2つ目の戦略です。

3つ目は、ターゲット市場の拡大です。ビジネスアナリティクスや広告の市場領域を広げながら成長していく計画です。

事業の収益構造

事業の収益構造です。スライドに2019年度と2020年度の売上の内訳を記載しています。青色が「ショッピングスキャン」、緑色が「イーグルアイ」です。このようなストック型の売上は、2019年度は71.5パーセント、2020年度は77.9パーセントと、約8割に拡大しました。ストック型の売上の成長が収益成長を牽引している状態です。

このストック型売上ですが、収益性が高く、2019年度から2020年度にかけて25パーセントから30パーセントくらい伸びています。

薄いグレーの部分はその他の売上です。こちらは新型コロナウイルスの影響で縮小しています。具体的にはスポットの売上などです。例えば、ドラッグストアにおけるインバウンド購買の分析レポートをたくさん提供していましたが、今はこれらの売上はほとんどゼロになってしまいました。いつか復活し、戻ってくると思っています。

収益性の高いストック型売上が25パーセントから30パーセント積み上がっていますが、その他のスポット売上が新型コロナウイルスの影響で縮小した結果、売上の伸び率は合計15パーセントにとどまっています。

(参考)5年間の推移

ストック型売上の5ヶ年の推移です。ストック型の成長は底堅いと思っています。

経営指標

経営指標ということで、もう少し細かい数字を見ていきます。私どものベースとなる小売業の分析対象、つまりプラットフォームで受け止めている購買データですが、1,000億円や数千億円の小売業など、いろいろな小売業があります。

2018年度は3兆4,000億円、2019年度は4兆1,700億円、2020年度は4兆5,000億円、今年度は4兆8,000億円と、当社のプラットフォームで5兆円近くの購買データを扱っております。

「ショッピングスキャン」の売上成長率は、2018年度が35パーセント、2019年度が30パーセント、2020年度が42パーセントです。継続率は100パーセントで続いています。

「イーグルアイ」は120社くらいで導入が進み、継続率は2018年度が86パーセント、2019年度が92パーセント、2020年度が95パーセントで伸びてきました。売上はスライドに記載のとおりです。

売上および利益計画

ストック型の売上が25パーセントから30パーセント成長していますが、その他の領域のスポット売上は、新型コロナウイルスの影響で昨年度は15パーセントの成長となっています。今年度は新型コロナウイルスの影響がさらに強まると見ており、売上の伸び率は12パーセントという計画を立てています。

ただし、収益性の高いストック売上がそのまま伸びていますので、12パーセント成長でも黒字転換していく計画です。

利益計画としては、今年度に大型投資を行った当社サービスに関わるシステムの償却がすべて乗っかった状態でも黒字転換を予定しています。今後は大型の減価償却がなくなっていくため、利益がどんどん積み上がりやすいフェーズに入っていくと考えています。

当社サービスのラインナップ

当社のサービスのラインナップを整理しています。小売業の購買データのプラットフォームですので、サービスをどんどん提供しながらデータのカバーを広げていくかたちです。

この統合した消費者の購買データをいろいろなかたちで小売業に使用していただき、各々のデータとの比較の中で、価値をより引き出していただいています。「ウレコン」のように、インターネットで無償で提供しているサイトもあります。

さまざまなビッグデータをさらにかけ合わせていく動きが進んでいますが、データだけあっても使えないということで、当社プラットフォームをSaaS型のソリューションなどで切り出して使うことで、それほどコストをかけなくてもDXができるようになる取り組みも進めています。

このように、私たちは小売業の購買ビッグデータ、ID-POSを活用したプラットフォームを提供しています。「イーグルアイ」「ショッピングスキャン」など、ストック型SaaSの中長期的な成長の収益のうえに、先ほどお話しした広告領域、AIなどのアナリティクス領域の新しい市場へのデータ提供による収益をプラスオンしていくことを考えています。

当社のようなID-POSのプラットフォームが株式市場に出てきたのは今回が初めてだと思いますので、現時点では世界でもオンリーワンのビジネスモデルだと思っています。ここ2年、3年でID-POSの活用は大きく進んでいくと考えています。True Dataはここから大きく進化していきますので、ぜひご期待ください。

投資家のみなさまにビジネスモデルをご理解いただき、事業成長の実績を示しながら投資家のみなさまからの信頼を積み上げていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。