2020年9月期決算説明会

小椋一宏氏(以下、小椋):みなさま、こんにちは。本日は当社の2020年9月期決算説明会にご参加いただきまして、ありがとうございます。HENNGE株式会社代表取締役社長の小椋でございます。

本日の流れですが、まず決算説明の動画を35分放映した後、質疑応答の時間とさせていただきます。本セミナーですが、Zoomウェビナーを使用しています。私どもも不慣れなところがあるためお許しいただきたいところもございますが、視聴者の方はカメラやマイクをオンにできないようになっています。

質疑応答のお時間になりましたら、ご質問のある方は「挙手ボタン」を押していただき、そのままお待ちいただく流れになりますが、同時に「Q&A機能」も積極的に使っていきたいと思っています。

もし、動画の最中で気になるところがございましたら「Q&A機能」でご質問いただければ、質疑応答の時間に拾える限り拾っていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、決算説明動画をご覧ください。

連結売上高(対前年同期比、12か月累計比較)


それでは、2020年9月期第4四半期の決算についてご説明します。まず、第4四半期の業績についてですが、連結売上高はスライドのとおり順調に推移しました。

連結業績サマリー(対前年同期比、12か月累計比較)


連結業績のサマリーはスライドのとおりです。2020年9月期は8月7日開示の通期業績予想と比較して、特にプロフェッショナル・サービス及びその他の事業の売上高が若干予想を上回ったことにより、通期連結売上高も予想を若干上回る結果となりました。

そのため、営業利益以下の各段階利益も通期業績予想を上回る結果となりました。

売上総利益(対前年同期比、12か月累計比較)


売上総利益も、引き続き高い粗利率を確保しています。

当期純利益(対前年同期比、12か月累計比較)

当期純利益は、前年と比較するとスライドのグラフのとおりとなりました。

営業費用の構造(対前年同期比、12か月累計比較)

営業費用の構造を前年と比較すると、スライドのグラフのようになります。こちらは、対前年同期比となっています。

営業費用の構造(対前四半期比)

対前四半期比では、こちらのスライドのようになりますが、少し補足させていただきます。営業職を中心とした人材採用の強化に伴い、採用費が増加しました。

旅費交通費、接待交際費などは依然として低い水準ではあるものの、前四半期からは増加しています。売上原価は、プロフェッショナル・サービス及びその他の事業の売上高に対応する仕掛の原価振替などの影響により、前四半期から増加しています。

売上高と営業費用の推移


売上高と営業費用の四半期での推移はスライドのとおりです。

従業員(アルバイト含まず)の状況


従業員の状況ですが、181名となりました。

従業員数(アルバイト含まず)の推移


従業員数の推移です。2020年9月期は全体で27名増加し、主に営業とカスタマー・サクセスに配置されています。

キャッシュ・フローの状況(対前年同期比、12か月累計比較)


キャッシュ・フローの状況はスライドのとおりです。当社グループの収入の多くは「HENNGE One」の年間契約の前払いによって構成されていますので、キャッシュインが先行しがちなビジネスモデルとなっています。当期の営業キャッシュフローは、COVID-19の影響で広告等の支出が少なかったことなどにより、前年に比べてプラスとなっています。

事業トピックス


2020年9月期第4四半期の事業についてご説明します。事業トピックスはスライドのとおりとなっています。

広告・イベント活動


前四半期に引き続き、各種イベントをオンラインで開催する試みを積極的に行っています。

新サービス


2020年8月には、プロフェッショナル・サービス及びその他の事業で、新サービス「CHROMO」を販売開始しています。2019年4月に販売開始した「Chromo Education」に新たなラインナップを加えて、地域住民との双方向コミュニケーションを実現する包括的なコミュニケーションサービスになりました。

事業投資と新規事業開発について


投資先のrakumo株式会社が、2020年9月に新規上場しました。この機会に、事業投資と新規事業開発について紹介させてください。事業投資については、ここ数年、当社グループの事業とシナジーの高い独自の要素や技術を有しているB2Bスタートアップ企業に投資しています。現在投資している企業は、rakumo株式会社、DIGGLE株式会社、シタテル株式会社、any株式会社の4社です。

新規事業開発については既存事業の研究開発とは別に、自ら変化、挑戦を続けて、テクノロジーで世の中をよいものにしていきたいという理念に基づき、定期的に部門横断的な新規事業アイディアの創造活動「Inspire Matsuri」を行っています。

主に社員が業務で得た知見や、業務で直面した課題を解決するソリューションを、事業化を視野に市場調査からプロトタイプの開発まで行って、コンテスト形式で競い合うというものです。

このように、当社グループでは研究開発活動と並行して、事業投資や新規事業開発の両軸で現行事業に隣接した事業分野についても継続的なアプローチを行っています。

HENNGE One KPI(対前年同期末比)

2020年9月期第4四半期のKPIについてご説明します。「HENNGE One」のKPIの前期比較を示すスライドです。

HENNGE One KPIのハイライト(対前期末比)

各KPIの結果はスライドのとおりとなりました。

HENNGE One平均月次解約率の推移

平均月次解約率の推移ですが、前四半期末と変わらず0.16パーセントとなり、引き続き解約率は低い水準となっています。

HENNGE One契約企業数と契約ユーザ数の推移

契約企業数と契約ユーザ数の四半期ごとの推移はスライドのとおりです。第4四半期の契約企業数の伸びが、過去に比べて若干低い水準となっています。

通期での新規受注目標は順調に達成したものの、新規顧客からの受注がCOVID-19の影響を受け、第4四半期の後半にずれ込んでいるという結果から、当期中にサービスインした契約者数が前年同四半期に比べて低かったことによるものです。

HENNGE One ARRとARPUの推移

「ARPU」は、第4四半期も新規獲得契約の「ARPU」が向上していることによって上昇傾向にあります。一方で「ARR」の伸びについては、前年同四半期から見ると小さくなりました。これについては、4つの要因によるものだと分析しています。

1つ目は、既存顧客からの追加受注です。この偏りについてなのですが、下半期は既存顧客からの追加受注が第3四半期に集中して、第4四半期は前年同四半期並みという結果となりました。

2つ目は、新規顧客からの受注です。COVID-19の影響を受け、新規受注が第4四半期の中でも後半にずれ込んだ結果、当期中にサービスインして、我々が「ARR」としてカウントする量が前年同四半期に比べて低くなりました。

3つ目は、解約金額の絶対額が増えていることです。引き続き、解約率は低水準を維持していますが、母数である契約金額自体が年々大きくなっていることにより、解約金額自体も比例して大きくなっています。この結果、解約金額の絶対額が前年同四半期よりも大きくなる結果となりました。

4つ目として、既存顧客の契約更新時の「ARPU」が、価格プラン改定に伴う請求事務の都合により若干低下したという事象がありました。少しわかりにくいためご説明します。2019年6月にプライステーブルを改定して、新規顧客向けに新しい料金プランを導入していることは、これまでお伝えしてきたとおりです。

この時に、既存顧客に対しても請求事務の都合上、一部端数切り捨ての処理を行っていました。その結果、契約金額の減額が発生しています。この端数切り捨て処理による減額分は、当社が開示している解約率の分子には含まれていませんが、この処理は一過性の事象で、当期限りの事象となっており、2021年9月期以降への影響は限定的であると考えています。

以上のとおり、さまざまな要因が絡まり合い、直近四半期の「ARR」の伸びが減少している状況になっており、成長が鈍化しているのではないかと見えることもあるかもしれないのですが、通期の受注は好調に推移しており、構造的な逓減傾向にはないと捉えています。

2021年9月期の方針

2021年9月期の通期業績見通しについてですが、2021年9月期は積極的なマーケティング投資を行い、ニューノーマル下で拡大する機会を捉えていきたいと考えています。これによって「HENNGE One」の中期的な「ARR」成長を加速していきたいと考えています。

契約企業数や「ARPU」を上昇させていくことで、「ARR」成長率の変曲点を作り出したいと考えており、2021年以降の「HENNGE One」の「ARR」において年間20パーセント以上での持続的な成長を実現したいと考えています。

そのため、主に上半期中に思い切ったデジタルイベント等に対する大規模な広告投資を行っていきたいと考えています。

これまで当社が広告宣伝でアプローチしてこなかったような全国的な広告宣伝効果を狙っていきたいと考えています。全国のディシジョンメーカー及びパートナー企業を含む、より幅広い層に対してHENNGEブランドを認知いただき、契約企業数、及び「ARPU」の両方に作用するような変曲点を作っていきたいと思っています。

人員については、全社で30名以上の純増を目指しており、営業職とカスタマーサクセス職を重点的に増強していきたいと考えています。

連結業績見通し(通期)


この方針に基づき、2021年9月期の連結業績見通しはスライドのとおりとしました。HENNGE One事業については、引き続き20パーセント以上での持続的な成長を目指す一方で、今後の持続的な成長に向けた変曲点を作り出すために、積極的なマーケティング投資を行います。このため、今期に関しては営業利益は減益となっています。

連結売上高の推移(通期)


事業別の売上高の過年度からの推移は、スライドのとおりとなっています。

営業費用(売上原価+販管費)の推移(通期)


広告宣伝費と、広告宣伝費を除いた営業費用の過年度からの推移は、スライドのとおりとなっています。ご覧のとおり、昨年度に投入できなかった分以上の広告宣伝費を思い切って投下する計画となっています。この背景について、説明させてください。

マーケットの変化について


マーケットが大きく変化していると捉えています。私どもはこれまで「LTV」「ARR」の増加を積極的に目指していく方針を持つ一方で、マーケティング費用の投下に関しては比較的保守的に行ってきました。

この背景として、クラウド市場は底堅く拡大しているものの、そこまでスピーディーに拡大しているわけではないという認識があり、私どもも、じっくり底堅くシェアを拡大して、最終的にマーケットで支配的なポジションを確保したいという思いがありました。

しかし、COVID-19によって、この状況が一変したと考えています。日本全国の企業が強制的にリモートワークを導入する状況になったと考えており、ご存知のとおりSaaSの認知、あるいはクラウドサービスの認知、あるいはそれらの利用は急激に拡大したという状況です。

端的に言うと、チャンスが急拡大したという状況にあると考えており、当社にとっては10年に1度の大きなチャンスが生まれたと考えています。

私どもも、少し方法を変えていきたいと考えています。「HENNGE One」は、企業が利用するさまざまなクラウドサービスに対して、横断的にセキュアなアクセスとシングルサインオンを実現するクラウドセキュリティのサービスです。

これからクラウドを使う企業、これからSaaSを導入していく企業がどんどん拡大するという局面で、ぜひそうした企業に利用いただくべく積極的にアピールしていきたいと考えています。このチャンスをつかむため、クラウドサービスの利用拡大を模索する企業に対して、全国的なマーケティング活動を実施して認知を高めていきたいと考えています。

大規模デジタルイベントについてです。日本では2011年の震災をきっかけとして、首都圏を中心にクラウドの導入が拡大したと考えています。しかし、その後の導入ペースについては、例えば米国等と比べると比較的緩やかに進んできたというのが昨年末までの状況だったと考えています。

それが、COVID-19という、全国的にクラウドが導入される大きなきっかけが生まれた状況になったと考えています。

2011年に大震災があり、首都圏で2013年以降のクラウド市場の拡大が生まれ、今まさにそれが全国的に起ころうとしている状況で、当社グループ及びSaaS各社にとっては大きなチャンスが生まれています。

これに対して、どのようなマーケティング活動でアプローチしていくのかについてです。今年を通して、COVID-19によってリアルイベントができなくなった一方で、いろいろな企業がいろいろな試行錯誤を行う中で、人々がデジタルイベントに参加することがかなり一般的になったと考えています。

私どもも、前期はさまざまな試行錯誤を行いました。前期はマーケティング活動が滞ったと言わざるを得ない状況もあったわけですが、今期はむしろデジタルイベント、あるいはデジタルマーケティングによって、全国のお客さまに効率的にアピールできる機会が生まれたと捉え、オンラインでのSaaSの祭典のような大規模デジタルイベントを開催していきたいと考えています。

当社にとっては、これまでのイベントと比較すると最大規模のイベントとなっており、我々の中では10倍規模のイベントということで、1万人規模の集客を目指しています。ニューノーマル下での営業、マーケティング手法を確立して、まさに急拡大しようとしている市場でチャンスをつかみたいと考えています。

大規模デジタルイベントについて(上半期)


こちらのイベントには、クラウドサービス活用中の企業と、クラウドサービス提供会社の両方に参加いただきます。我々のパートナー、あるいは我々の見込み顧客、あるいは我々の現行のお客さまなど、さまざまな企業や他社SaaS企業にもご参加いただき、さまざまな情報を交換できる機会にしたいと思っています。その中で「HENNGE One」を強くアピールしていきたいと考えています。

まだ企画段階ではありますが、現時点でこのイベントへの参加をご快諾くださった企業の一部をスライドに記載しています。本当にすばらしい企業に参加のご賛同をいただいている状況です。

このデジタルイベントに付帯した大規模広告も実施し、「HENNGE One」をはじめとしたHENNGEブランドをアピールするとともに、多くの企業とSaaS市場をより一層盛り上げていきたいと考えています。

LTV最大化

成長戦略についてご説明します。当社の成長戦略は、一言でいうと「LTV」最大化です。先ほどお伝えした解約率のスライドにも記載のとおり、当社のサービスは、比較的長期に渡って、場合によっては何十年も利用される性質のサービスです。

そのため、例えば今年受注した年間100万円の契約は、今期だけ売上をもたらす性質のものではなく、この先何十年、場合によっては50年以上も売上をもたらし続ける契約になるわけです。

こうした契約をどんどん積み上げていくことで、将来の売上を最大化させていきたいと考えており、この契約の持つ価値を最大化させていきたいというのがLTV最大化の意味です。

スライド上段にLTVの考え方を示していますが、年間契約金額「ARR」の総量に平均契約年数、そして粗利率をかけることでLTVが求められると考えています。

よって、これらを上げていくと我々の価値が高まっていくことになるわけですが、すでに解約率が非常に低い水準にあることから、平均契約年数はとても長い状況にあり、また粗利も高い水準を維持している状況のため、これからの成長ドライバーを作っていくのは「ARR」だと考えています。

ARR最大化

「ARR」を3要素に分解すると、契約社数、契約企業あたりの平均契約ユーザ数、つまり何人使っているのか、そして1人あたりの単価である「ARPU」がいくらなのかを掛け算すると「ARR」が求められるわけですが、これを最大化させていくのが私どもの成長戦略となっています。

このため、直近の営業利益の水準にはこだわりすぎることなく、将来の投資を積極的に行って「ARR」を積み増していきたいと考えています。契約社数の「N」、平均ユーザ数の「n」、そしてユーザーあたり単価の「ARPU」を上昇させていくことができれば、「ARR」を上昇させていくことができるということです。

もし、2つ以上のパラメータを同時に上昇させていくことができれば、「ARR」をエクスポネンシャルに増やしていくことができます。

私どもの方針は、契約社数「N」の最大化に主眼を置きつつ、中期的には「ARPU」も向上させていくというものです。「n」はややアンコントローラブルなパラメータであることから、横ばいもしくは微増を見込んでいくということです。

成長戦略の進捗


実際の推移は、この表に示すとおりです。おそらく、注目される部分が前期の「ARR」の「Δ」が減少しているところかと思います。ともすると「成長が限界に達したのではないか」「ここから成長が減速していくのではないか」といった懸念にもつながると思い、念のためお伝えしますが、あくまでも受注は好調に推移しており、市場も拡大していると考えています。

2020年9月期は、先ほど申し上げたような一過性の要因が重なった結果、「ARR」の「Δ」は昨年を下回る結果となりましたが、引き続き増加傾向を目指していきたいですし、増加傾向を実現できると考えています。

むしろ何が課題かというと、やはり「ARR」の成長率の低下です。仮に「ARR」の「Δ」を普通に積み上げていったとしても、分母が大きくなっていく性質の事業のため、成長率がどんどん鈍化してしまう状況にあります。

私どもとしては、なんとしても20パーセント台にとどめおき、持続的な成長を実現したいと考えています。そのため、短期的には「N」を、中期的には「ARPU」の上昇を目指していくとお伝えしてきました。

この方針自体に大きな変更はないのですが、2021年9月期においては大規模なマーケティング広告投資を行い、「ARR」成長率の変曲点を作り出し、逓減傾向にある成長率をここから上向きに変える機会にしていきたいと考えています。

これまでは「N」を中心に注力してきましたが、営業要員の増加、代理店の協業の推進で増加させていきたいと考えており、これは今後も継続していきたいと考えています。

一方の「ARPU」についてですが、2019年6月にライセンス体系を改定し、この1年で新規顧客の「ARPU」は大きく向上しました。今後も新規顧客の流入に伴い、全体の「ARPU」は上昇傾向で推移すると考えています。

しかしながら、さらなる「ARPU」の上昇を目指していきたいと考えており、新機能の提供、及びブランドの強化によってこの変曲点を作り出すような「ARPU」の上昇ももたらしていきたいと考えています。

先般、パスワードからの解放を実現する革新的な新機能「HENNGE Lock」をリリースして、「HENNGE One」の機能を強化しています。こうした機能強化を継続的に進め、またデジタル分野での積極的な露出、マーケティング活動によって、我々の革新性やブランドを広く市場に訴求していくことで、「ARPU」上昇を果たしていくことができると考えています。

右から2列目の「n」は平均ユーザ数ですが、これまでどおり比較的アンコントローラブルなパラメータだと認識しています。

大規模顧客を取れば上がっていくわけですが、例えば中小規模のお客さまにより強くアプローチしていこうということになれば低下することにもなり得るため、引き続き横ばい、もしくは微増を見込んでいきたいと考えています。

2021年以降の成長戦略①


スライドは、2021年以降の成長イメージです。当社グループのビジネスは、基本的にサブスクリプションモデルです。当期中に獲得した契約は解約されない限り積み上がっていき、翌期以降の売上高の基盤となっていきます。

基本的には、図の黒い線のように安定的に成長していくビジネスとなっているわけですが、直線的に成長していくと、成長率で見ると年々下がっていく宿命にある状況です。

変曲点を作るには、点線のようにこれまで逓減傾向だった「ARR」成長率を逓増傾向に変えていくことです。まずは減らない状況にして、あわよくば逓増傾向に変えることを実現したいわけですが、それはなかなか簡単ではないと認識してきました。しかし、もしそれができる強い機会があるとすれば、それは今期をおいて他にはないだろうと考えています。

COVID-19によって企業の行動様式が大きく変化し、SaaS、クラウドの利用が拡大することは間違いない状況が生まれました。この機会を捉えるべく、積極的なマーケティング費用の投下を行い、全国のディシジョンメーカー及びパートナー企業など、より幅広い層に「HENNGE One」の強みやHENNGEブランドを認知していただきたいと思っています。

これによって、「N」及び「ARPU」の両方に作用するような変曲点を作り出すのが、今期行いたいことです。

脱パスワードの実現に向けて


SaaSの利用拡大が進んだことにより、IDとパスワードがどんどん増えていく時代となりました。企業はさまざまなSaaS、クラウドサービスを導入していくことは間違いない傾向にあり、そのため、企業及びユーザーがたくさんのIDとパスワードを管理しなければいけない時代です。

これらを統合して1つのIDとパスワードにするのがシングルサインオンであり、我々が提唱している脱パスワードへの第一歩になっています。SaaSの利用が拡大していけばシングルサインオンが導入され、「HENNGE One」のようなIDaaSが利用されるのは、もはや時代の必然となっています。

このスライドでいうと、一番左の図の部分、IDとパスワードがたくさん記載してある部分が、これまでの認証で、さまざまなSaaSを利用している状況です。これをシングルサインオンによって、1つのIDとパスワードでログインできるようにするのがスライドの中央の図です。より安全に、安心して利用できるよう、6桁の番号を入力するような多要素認証と組み合わせるのが1歩目です。

これまで「HENNGE One」で提供してきた機能は、これを実現する機能に該当すると考えています。まさに、スライドの左側の状況にいるような企業がどんどん増えていくことになれば、スライドの中央の状況に移動するのは必然だと考えており、チャンスは拡大しているということです。

私どもは、IDaaSのリーダーとして、脱パスワードをもたらすさらなるセキュアな環境作りを追求していきたいと考えています。これを実現するサービスの第1弾として、「HENNGE Lock」という「HENNGE One」の新機能をリリースしています。

スライドの右側のような番号やID、パスワードを入力しなければいけない世界ではなく、脱パスワードをもたらすような方法の1つとして「HENNGE Lock」をリリースしています。

これに私どもが従前から提供している「HENNGE Device Certificate」といった証明書を組み合わせたりすれば、お客さまはパスワードをまったく入力せずにログインすることも可能になるような時代となりました。

市場はまだクラウドに足を踏み入れたばかりの状況で、現実的にはスライド左側のような企業がたくさんいる状況のため、私どもは市場のリーダーとして、まずはスライド中央の状況までを実現します。そして最終的には脱パスワードの世界をもたらすことを、今後も強く進めていきたいと考えています。

こうした脱パスワードの流れを牽引し、SaaS業界を活性化するとともに、「HENNGE One」ブランドの浸透を図り、「ARPU」向上の基盤を作っていきたいと考えています。

2021年以降の成長戦略②

現在「HENNGE One」は152のSaaSサービスとの連携を実現しています。例えばこうした連携SaaSサービスは、自ら多要素認証やシングルサインオン、パスワードレス認証といったものを実装することなく、お客さまに脱パスワードを提供できます。そのようなユーザーエクスペリエンスをお客さまに提供し、安全に、そして簡単にサービスを利用いただくことが可能になっています。

当社の「HENNGE One」は特殊な位置付けにあり、SaaSとSaaSをつなぐ位置にいるSaaSプラットフォームです。お客さまがSaaSを活用すればするほど価値が高まる種類のIDaaSのため、今後も日本全国の企業においてクラウドサービスの利用が拡大する流れを自ら後押しするとともに、そうした流れの中で、SaaS各社との連携を深めながらSaaSプラットフォームとしての成長を図っていきたいと考えています。

会社概要

あらためて、当社について説明させてください。当社はHENNGE株式会社という社名で、1996年11月に設立した会社で25期目にあたる、実はけっこう長い歴史を持つ会社です。スライド右側の3名の創業者が学生時代に創業した会社で、現在180名くらいの規模の会社です。

Locations

国内に4拠点、海外に1拠点ありますが、未だ多くの従業員は東京に集中している状況です。東京以外の地域でクラウドの利用が拡大していく流れを捉えたいという思いから、地方及び各都市、そして海外にもリーチを伸ばしていく、そういった動きとして各オフィスを持っている、地方展開中の会社であると認識いただければと思います。

VISION

私どものビジョンは「テクノロジーの解放」であり、私どもはテクノロジーの力を信じています。テクノロジーが大好きで、それがきっと世の中をよくしていくと強く信じています。

この力をできるだけたくさんのお客さまに届けることによって、世の中をよい方向に持っていきたいというのが私どもの思いです。

変わらない志、変わり続ける事業領域

この「テクノロジーの解放」を、創業以来さまざまな分野で実現してきました。その時代、その時代で、我々が解放すべきであると考えたテクノロジーを解放し続け、少しずつ領域を変えながらお客さまにテクノロジーを届けている会社です。

現在、当社グループの成長ドライバーと位置付けている「HENNGE One」が始まったのは2011年からです。

売上高の事業別構成

現在の売上高の87パーセント以上が、HENNGE One事業からもたらされている状況になっており、当社のメイン事業となっています。

HENNGE One①

「HENNGE One」は、2011年の東日本大震災を契機に本格的にスタートしたサービスです。当時は、地震によって急に会社に行けない状況になりました。

そのような中で、東京の企業はどのようにして在宅勤務を実現するのか、どのようにしてみんなが自宅からコラボレーションできる状況にもっていくのかが大きな課題でした。その中で、クラウドに移行していく流れが生まれたということです。

しかし、企業がクラウドを導入してみんなが家から働ける状況を作ろうとした時に、大きな障害がありました。それがセキュリティです。

それまで、会社の情報は会社の中にあるのが主流でした。社員は会社に行けば情報にアクセスできるのですが、会社に行かなければアクセスできない状況だったため、会社としてはきちんと「戸締り」さえしておけばアクセスセキュリティ面での問題はなかった状況でした。

しかしクラウドになると、世界中に広がるインターネットのどこかに会社のデータが分散して保存されている状況になるわけです。このような性質から、社員であれば誰でも、どこからでも、どのような端末からでも情報にアクセスできるようになるため、自宅からでも、あるいは出張先からでも、世界中のどこにいてもコラボレーションが実現できる状況になるわけです。

これがクラウドの最大の強みであり革新性なわけですが、一方でアクセスセキュリティという側面から見ると、まったく知らない人もアクセスし得る状況になってしまうため、企業にとってはやや不安になってしまうわけです。よって震災の後は、クラウドの導入にどうしても二の足を踏んでしまう状況がありました。

私どもは、それまで15年間にわたってセキュリティのソフトウェアを提供してきた企業として、こうした状況をどうにかして変えていきたい、またどうにかしてそのテクノロジーを解放したいという思いがあり、そこから「HENNGE One」が生まれました。

「HENNGE One」には主に2つの機能があります。スライド右側には「アクセスコントロール」、左側には「ID統合」と記載しています。「アクセスコントロール」は、今お話しした問題を直接的に解決する機能です。何ができるかというと、企業が利用するさまざまなクラウドサービスにおいて、「誰が、いつ、どの端末からログインできるのか」を一元管理し、それぞれにセキュリティポリシーを設定できるサービスです。

これによって、企業は、例えば「人事管理システムは、人事の人しかアクセスできないようにしよう」「営業管理システムや営業日報のようなシステムは、どこからでもアクセスできるようにするけれど、会社支給の端末からに限定しよう」といったかたちで、どのクラウドサービスに、いつ、誰が、どうログインできるのかが制御できるようになります。これを導入することで、企業は安心してクラウドを使った働き方に移行できるという性質のものです。

また「ID統合」についてですが、SaaSを活用していくと、徐々にいろいろなSaaSを利用するようになっていくわけですが、そうなるとIDとパスワードの管理に追われる状況になってしまうという問題があります。

例えばSaaSサービスを10個くらい使っている会社では、社員が入社すると1人に対して10個のIDとパスワードを作らなければなりません。そして、その社員が退社する時にはすべてのサービスからそのIDとパスワードが消されている状況を作らなければ、退社後も社員が会社の情報にアクセスできる状況が生まれかねないわけです。

ユーザーはいろいろなIDとパスワードを覚えなければならず、ついパスワードを使いまわして不正アクセスの原因になってしまうといったことも生まれかねない状況です。

これを解決するのが「ID統合」という機能です。これを利用することで、お客さまは「HENNGE One」にさえログインすれば、その他のクラウドサービスにおいて、あらためてIDとパスワードを入力することなくアクセスできるようになるサービスです。これを利用することで、企業、企業の従業員も、IDとパスワードを管理する手間やリスクから解放される機能です。

HENNGE One②

私どもは、企業に対してこうした機能を提供しており、他にも企業がクラウドを使い出した時に障害になりそうなものは全部取り除きたいと考えています。その他の機能としては、例えばスマートフォンのセキュリティといった機能、あるいはEメールのセキュリティ、それからファイルのやりとりを安全にするような機能を、Suite形式で、SaaSでお客さまに提供している会社です。

HENNGE Oneの強固な顧客基盤

これを「1ユーザーで月額いくら」というかたちでお客さまに提供しているのが「HENNGE One」です。これまで1,600社以上のお客さまにご利用いただいています。ユーザー数、つまり従業員の数の合計という意味では、およそ195万人となっており、さまざまな業種や規模のお客さまにご利用いただいています。

割り算して計算すると、1社あたりの平均ユーザー数は1,200名前後になるわけですが、「実際の分布はどうなのか」といったお問い合わせをよくいただいていたため、今回から「ARR」ベースの契約ユーザー規模別分布を示しています。

我々のメインターゲットが「300名から5,000名」と位置付けており、大部分が「300名から5,000名」の企業となっている一方で、300名未満の企業も、5,000名以上の企業も多くいる状況となっています。

以上、駆け足でしたが、当社の会社概要、そして主要サービスの説明をさせていただきました。本日はお忙しい中、ご視聴くださいまして誠にありがとうございました。

質疑応答:今期展開する広告の効果や測定方法について

質問者1:広告によって、どの程度の契約社数の獲得を見込んでいるのでしょうか? また、上期にイベントを実施されるということですが、その効果が出てくる時期はいつごろでしょうか? 

また、広告の計測を行うにあたり、LTVに対する獲得コストなど、会社としてどのような管理指標を意識されているのかなど、広告全般の効果ならびに管理の仕方を教えてください。

小椋:ありがとうございます。広告費に対してどのような効果があり、どのように計測するのかというご質問をいただきました。まず、顧客数がどのくらい増えるかですが、私どもの最終目標としては、やはり「ARR」成長の変曲点を作り出したいと考えています。

「N」及び「ARPU」、つまり契約社数および「ARPU」の両方に作用するような効果を得たいと考えています。現時点で目標とする顧客数をどのくらい増やしたいかなどは開示していない状況にありますが、目標としては逓減傾向にあるARR成長率を逓増傾向に持ち上げたいと考えており、そのきっかけにしたいというのが得たい効果となっています。

その効果がいつ出るのかですが、私どもはもともとB2BのSaaS事業で、リードタイムが比較的長いビジネスを展開しているため、今期に行った広告の効果が今期中にすぐ出るかというと、必ずしもそのようなものではないと考えています。

したがって、2021年9月期を底として、「ARR」成長の変曲点を作り出したいとお話ししている次第で、具体的な効果の大部分は2022年9月期以降に出てくると見込んだ計画になっています。そのため、2021年9月期の見通しにある数字は、これまでの累積的な営業活動、マーケティング活動から達成できる数字だと考えています。

そして、どのようにして計測を行うのか、どういったかたちで広告費の基準を決めているのかというご質問についてです。よく「CAC」についての考え方についてのご質問をいただくのですが、SaaSの世界では必ずしも1年でペイバックしない広告宣伝費のかけ方をするのが一般的であり、例えばLTVの3分の1程度を顧客獲得に使う「CAC」の考え方があります。

私どもの場合、これをSaaSの方程式に当てはめようとすると、LTVがけっこう大き過ぎて、チャーンレートがとても低いため、1契約がもたらす価値が何十倍にもなることが前提になってしまいます。ですので、私どもは、SaaSの世界での「CAC」の考え方というよりは、今使っているマーケティング費用をどのように取り返していくのかといった観点でお金をかけている状況です。

これまでは、費用をかけた分と同じくらいの「ARR」を取り戻すつもりで進めてきました。今後も、費用をかけた分と同じくらいの「ARR」を取り戻すつもりで活動していきたいと思っています。ご質問、ありがとうございました。

質疑応答:今期の契約企業数の増加の見込みについて

質問者1:営業体制についてです。今期は首都圏以外にも展開されていくと認識しており、御社のKPIの「N」、つまり契約企業数は加速が期待できると思っています。現状のペースで、だいたい年間で250社ペースだと思うのですが、今期はどの程度の加速を見込んでいますか? 業績の前提になると思いますが、「N」についての考え方を教えてください。

小椋:今期と来期でどれだけ「N」を増やしていくかについては、開示していない状況です。私どもとしては、とにかくあらゆる方法を使って「ARR」成長を加速させていきたいと考えています。

基本的には、これまでどおり「N」は増やしていき、「N」の「Δ」も毎年増やしていきたいと考えているものの、今期からは「ARPU」を増やしていくことも含めた「ARR」の変曲点を作っていきたいと考えています。

はっきりしない答えになってしまうのですが、引き続き加速させていきたいと思っているものの、今期からは「ARPU」の上昇にも力を入れていきたいと思っています。

質疑応答:首都圏以外の営業網の状況について

質問者1:首都圏以外の営業網の整備状況は順調なのでしょうか?

小椋:今は代理店、あるいは大阪や名古屋、福岡の拠点で営業を拡充している状況です。これについては新型コロナウイルスの影響で加速した面と減速した面があると思っています。

加速している面ですが、営業支援活動は割と場所に関係なくできる状況になってきており、今は必ずしもお客さまに物理的に会いに行かなくても、バーチャルでお会いできる状況になっているところです。

減速している面は、一度も会ったことがない方に、どのようにして会いに行くきっかけを作るのかということです。物理的なイベントがなくなってしまった分、減速したところがあると思っています。

その物理的な接触のきっかけをデジタルイベント等によって作り出すことができれば、十分加速できる余地があるのではないかと考えています。

質疑応答:公共分野での実績の見込みについて

質問者1:公共分野についてお伺いします。デジタル庁を含めたさまざまな動きがあると思っており、その分野でもIT化が進んでいくと思っています。

現状、公共分野における御社の実績はどの程度を取り込んでいるのか、また今後はどのような考えなのかをお聞かせください。

小椋:どの程度を見込んでいるのかですが、私が数字を持っていないため、天野がお答えします。

天野治夫氏:「HENNGE One」の事業に関連する部分と、プロフェッショナル・サービス及びその他の事業に関連する部分で、それぞれ公共関連の金額が含まれているのですが、現時点では分離して開示するほどポーションは大きくありません。

現在取り組んでいるところに関しても、基本的には直近で大きな金額を見込んで活動するものではありませんので、割と小さくスタートしている状況です。

質疑応答:パートナーの認知を広めることについて

質問者2:広告宣伝活動を強化するということで、パートナーやディシジョンメーカーの認知を広げるというお話があったと思います。今まで、パートナーからの認知はどうなっていたのでしょうか?

そもそも、パートナーはどういう存在なのでしょうか? 例えば、SaaSのサービスプロバイダなのか、システムインテグレーターなのか、そしてその認知を広げることによって、どういう効果を期待し、またどういう仕組みに変わっていくのかといったところをご解説いただけますか?

もう1点、パートナー経由での販売が増えると、御社の「ARPU」にどのような影響を与えるかについてもお願いします。

小椋:現状のパートナー販売の状況ですが、現在は直販が3割くらい、パートナーが7割くらいの状況です。私どもはもともと直販オンリーだったのですが、全国に拡大してたくさんの企業にアプローチするため、販売代理店とともに活動するところに力を入れている状況です。

どのようなパートナーが中心なのかですが、私どもの製品は、お客さまが全社でクラウドを導入する時点で必要性がとても高まるソリューションです。具体的には、Microsoftの「Microsoft 365」、あるいはGoogleの「Google Workspace」といったSuite製品を販売している代理店が、そうしたサービスをお客さまに導入してもらう際に、私どものサービスも一緒に導入いただくかたちで販売するスタイルを取っています。

これまでの認知と、今回の広告宣伝活動で狙っていることについては、実際に代理店販売を行っていくと直面する問題として、主管部門の方とは「よし、一緒にがんばっていきましょう」と手を握る状況になるわけですが、お客さまにしっかり販売するには、訪問している代理店の営業の方の認知も高めていかないと、実際に提案される状況にならない場合があるということです。

首都圏であれば、例えば私どもは品川にずっと交通広告を出していますが、これはどちらかというと、そのあたりをよく通るシステムインテグレーターや「Microsoft 365」の代理店をターゲットにした広告でした。そのようなかたちで、実際にお客さまにクラウドを提案する立場にある代理店の方に対しても認知を高めることを行ってきたわけです。

これまでは、そうしたことを全国的に行ってきたかというと、あまり取り組んでいませんでした。例えば、主要な系列に販売したいため、そのようなところと強い代理店と組んでいこうといった活動していましたが、今回は広告宣伝活動を強めていくことで、お客さまにアプローチしていきたいと考えています。ありがとうございました。

質問者2:「ARPU」に対する影響はありますか?

小椋:7割方が代理店経由で販売されている現状に鑑みると、確かに直販するよりも間接販売にしたほうが、若干マージンが下がったりすることももちろんあるわけです。しかし、私どもとしてはそれほど大きな影響はないと考えています。

質疑応答:教育機関向けの成長ポテンシャルについて

小椋:ここからQ&A機能でいただいたご質問にお答えしていきたいと思います。はじめに、「学校向けの成長ポテンシャルはどう考えていますか?」というご質問をいただいています。成長ポテンシャルはあると考えているものの、一般的に、教育機関向けのSaaS販売のライセンス料は、ビジネス向けに比べるとボリュームディスカウント等によって割引かれることもあります。

ですので、一般企業向けに比べると単価は小さくならざるを得ません。それを含めて考えると、ポテンシャルもあり、今後成長していく余地もあるとは考えているものの、例えば今期の業績に対してすごく大きなインパクトを及ぼすような何かが起こるようなものではないと考えています。

質疑応答:同業他社が上場した場合について

小椋:続いて、「国内同業他社が上場するとの観測があるようですが、仮に上場するとして、多額の資金調達をして広告宣伝費を増加させた場合に、HENNGEに影響が出ることは想定されますか?」というご質問です。

こちらについては、私どもでそのような情報をキャッチできていないのですが、仮に同業他社が上場する状況になった場合でも、今の状況を考えると、ID管理という問題があることをお客さまに気付いてほしいと考えており、そのためにも広告を展開しようと考えています。そのような市場があり、そのような製品があり、そのようなジャンルがあって、みんながこれを使うものだと伝わるという意味では、競合が出てくることでむしろ盛り上がってよいかもしれないという感覚です。

今のところはIDaaSの世界では、とにかく実績が最も大事です。チャーンレートを見てもわかるように、すぐに解約できるようなサービスではありません。

普通であれば、SaaSにおいては、例えば「Zoom」「Skype」「Google Meet」「V-CUBE」を全部使ってみて、一番よいものだけを使い続けようといったことができるわけですが、そのようなことができる種類のSaaSではないため、企業が導入するにあたってはけっこう保守的な判断をされます。

このサービスを、本当に10年間使い続けられるのか。50年間使い続けられるのか。50年はさすがに大げさだとしても、少なくとも5年、10年くらいは使うかもしれないという感覚で製品やサービス選びをします。今の時点で、私どもに確かな実績があるというポイントは、引き続き私どもの強みになり続けると考えていますので、仮にそのようなことがあっても、業績に影響があるというよりは、この市場が盛り上がっていって、いいかもしれないと思っています。

質疑応答:海外同業他社の参入について

小椋:続いて、「海外同業他社が日本拠点を設立して本格的に参入すると発表していますが、どの程度の影響が見込まれますか?」とのことですが、これは日経でも報道されたOkta(オクタ)様のことかと思います。

これも視点は同じで、現在、お客さまは実績に一番重きを置いて意思決定されています。それに加えてサポート力です。例えば1,000人規模の企業に導入することになると、Webからクリックしてみんなが勝手に使えるようになるというよりも、強いサポートを受けながら導入していくスタイルのサービスですので、このような側面から見ると、私どもの競争力に大きな影響があるとは捉えていません。

質疑応答:広告の費用対効果について

小椋:最後に「営業チームは、リードジェネレーション、コンバージョン、LTVで専門特化しているのでしょうか?」「今期は特にコンバージョンが肝になると思いますか?」「費用対効果はユニットエコノミクスで管理されていると思いますが、勝算はいかがでしょうか?」というご質問をいただきました。

私どものサービスでSaaSのユニットエコノミクスが適用しにくいのは、とにかくチャーンレートが低いところがその理由の1つです。

さきほどお伝えした「CAC」、つまりコンバージョンから「CAC」を算出するとなると我々の「CAC」が極めて低くなってしまうという問題に直面します。そのため、そこだけは古典的な手法で、どれだけ費用を投じて、どれだけ受注を取っていくかを重視しなければいけない状況になっているということです。

ご質問のとおり「これだけ費用をかけていくのだから、きちんと結果を測定できなければ、ただ費用を使うだけになってしまう」というところは、私どももすごく強く危惧しているところです。その意味では、一気に6億円を投下して様子を見るということではなく、段階的に費用を投下しながら効果測定を行い、効果的な費用の使い方をしていきたいと思っています。

これまでも、私どもは広告宣伝費はなるべく必要最小限で、費用をかけたらかけただけ絶対に取り戻すスタイルで進めてきたため、同様の方法で拡大していけると思っています。

それでは、時間となりましたので、ここで終わりたいと思います。本日は本当にお忙しい中、また、他にも説明会が数多くある中、当社の説明会にご来場くださいまして、誠にありがとうございます。今後も頑張ってまいりますので、引き続きご指導ご鞭撻をよろしくお願いします。