連結損益概要
仁藤雅夫氏(以下、仁藤):仁藤です。本日はお忙しい中、スカパーJSATホールディングスの決算説明会にご参加いただきありがとうございます。2020年度第1四半期の決算についてですが、まず本日発表した第1四半期の連結決算の概要からご説明します。
スライドの右下に小さくページ番号を振っていますので、4ページ目をご覧ください。営業収益は前年同期比で約1億5,500万円増の346億7,400万円、四半期純利益は前年同期比で約15億5,800万円増の40億2,200万円で、増収増益となりました。
増収の要因ですが、メディア事業の視聴料収入等が減少する一方で、宇宙事業において新規衛星である「JCSAT-17」および「Horizons 3e」の収益が拡大したことが挙げられます。利益面ではメディア事業の営業費用が前年同期比で減少したことが増益の要因となっています。
メディア事業の業績概況:前年同期比
5ページ目はメディア事業の業績概況ですが、前年同期比で減収増益となっています。営業収益は19億1,900万円減の230億6,600万円で、累積加入件数の減少に伴い視聴料収入が12億円、業務手数料収入が2億円減少しています。
一方で、営業費用は約34億円減少し209億円となっています。視聴料収入の減少に伴う番組供給量の6億円の減少に加え、シーズンスポーツの開催延期等によりコンテンツ費用が10億円減少したこと、また前年に東京メディアセンターの設備更新に伴う一時的な減価償却費の増加が発生したことから、減価償却費の8億円減少などが費用の減少につながりました。
こちらの2つを合わせても18億円の営業費用の減少となります。結果として、セグメント利益は11億2,900万円増の16億300万円となりました。
宇宙事業の業績概況:前年同期比
宇宙事業の業績概況については、前年比で増収増益となりました。営業収益は前年同期比18億1,100万円増加の143億8,100万円となりました。航空機内インターネット接続用の衛星回線収益が3億円減少した一方で、新たにサービスを開始した「JCSAT-17」「Horizons 3e」の収益が19億円増加したこと等によるものです。
営業費用は減価償却費や衛星事業原価等の増加で約15億円増加しています。結果として、セグメント利益は前年同期比で3億8,300万円増の25億2,900万円となっています。
今後の見通し
7ページをご覧ください。今後の見通しについて若干ご説明を加えます。メディア事業においては、累計加入件数あるいは契約者支払単価等は新型コロナウイルスを考慮した計画に対して概ね堅調に推移しています。
プロ野球は、6月の開幕以降はプロ野球セットを中心に加入者が戻ってきていますが、交流戦がないことや観客数の制限などによって例年より盛り上がりが弱いことなどから、前年ピーク時には達していない水準で推移しています。
また、第2四半期以降はスポーツの開始や再開等によって営業費用の増加を見込んでいます。スポーツの開始が後ろになったことにより、後半にコンテンツ絡みの営業費用が出てくる状況となっています。
宇宙事業においては、新型コロナウイルスの感染拡大によって航空機内のインターネット市場は、通期にわたって引き続き厳しい状況が続くと想定しています。第2四半期以降は、当初から計画していた新規事業等への取り組みは抑制せずに実施すると考えているため、宇宙事業の営業費用は増える計画となっています。
ウィズコロナの対応
ウィズコロナの対応についてご説明します。ウィズコロナの新しい生活様式が広がりつつある今、当社も恒常的なテレワーク体制を導入して、時間や場所にとらわれない多様な働き方と生産性の向上を目指す取り組みを推進しています。
働く環境の整備としては、自宅等からリモートでアクセスする際のネットワーク環境を改善することから始まり、サテライトオフィスの利用拡充、さらには時間にとらわれない働き方という面でフレックス制度のコアタイムを撤廃させました。
7月の出社率は20パーセントを下回るなどテレワーク勤務が定着しつつありますが、そちらに合わせて通勤手当の見直しや臨時手当の支給、テレワーク勤務や感染予防対策に必要な費用の一部を補助する手当の支給も行っています。
事業における取り組みもご紹介します。スカパー!カスタマーセンターでは、オペレーターが在宅勤務でもお客さまからの問い合わせに対応可能かについて6月からトライアルを実施していましたが、10月以降に正式に導入したあと段階的に拡大し、今後は全国のカスタマーセンターで展開する予定です。
また、エンタメ業界を支援する新しいサービスとして「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」をステージイベントの主催者を対象に期間限定で提供しています。プランを利用することで、主催者は配信に関わる費用を負担せずにイベントを開催することができ、同時にファンの視聴機会を保つことも可能となります。
さまざまなコンテンツを通じてお客さまにエンタメの楽しさを提供してきたスカパーJSATは、ステージイベント主催者、ファンの方々の双方に喜んでいただけるサービスのかたちを引き続き検討していきます。
メディア事業トピックス
それぞれの事業のトピックスを簡単にご説明します。まずメディア事業のトピックスですが、メディア事業で推進しているファン・マーケティングの取り組みについて、直近で展開している具体的な施策をいくつかご紹介します。
まず「ソロフェス」というハロープロジェクト所属のメンバー総勢52名が、1曲ずつソロ歌唱するコンサート企画を実施しました。「ソロフェス」でMVPに選ばれると冠番組を持てるという企画性に加え、ハロプロメンバーおよび事務所からの告知を含めたプロモーションがファンに届き、好調な加入件数を獲得しました。
ほかにもF1を放送中の「フジテレビNEXT」をご契約のお客さまを対象に、追加料金なしで4Kでもご視聴いただけるキャンペーンを9月より実施しており、これからもそれぞれのファンの嗜好に合わせた施策を展開していきます。
また、昨年11月の決算説明会で『KIBO宇宙放送局』の放送をお伝えしましたが、8月12日に国際宇宙ステーションに「KIBO宇宙スタジオ」を開設し、宇宙と地球をつなぐ世界初の双方向ライブ配信番組の無料生放送や配信を行っています。引き続き、宇宙とメディアを掛け合わせた取り組みを推進していきます。
宇宙事業トピックス
10ページをご覧ください。宇宙事業のトピックスについてご紹介します。今年6月に超小型平面アンテナを用いたIP映像伝送サービス「Sat-Q」の提供を開始しました。
最大6Mbpsの映像伝送用の衛星インターネット回線を提供でき、報道機関を中心としたご利用を想定しています。近年、報道中継現場で利用されているモバイル中継システムとも連動可能で、現場の地上携帯網が輻輳してる時でも安定した伝送路を提供できます。
また、独自の衛星捕捉機能により設置から最短1分以内での通信が可能となるなど、高い機動力で柔軟かつ手軽にご利用いただけるシステムとして、お客さまの中継業務をサポートしています。画像のとおり極めてコンパクトなA3サイズほどのアンテナで、自動捕捉ができるというものです。
衛星フリート図
最後に衛星フリート図ですが、現在19機体制でサービスを提供しており、前回のご説明から変更はありません。私からの説明は以上です。ご清聴いただきありがとうございました。
質疑応答:新衛星の使用用途および宇宙事業の状況について
質問者1:大変基本的な質問で恐縮ですが、2つお願いします。1つ目は、新しい衛星で収益が伸びたということですが、新しい衛星の使用用途を教えてください。テレワークで携帯や通信がより使われるようになっていることが背景にあるのでしょうか? もしくは巣ごもりで海外の放送事業者でもテレビがよく見られるようになっていることが背景にあるのでしょうか? 新しい衛星がどのように使われているのか、またどのように貢献しているのかを教えてください。2つ目は宇宙事業の今後の展開ですが、今後も通信などが引っ張っていき、宇宙事業が全体の収益を牽引するかたちになるのか、それとも航空の低迷が引っ張っていき、しばらくは厳しいかたちになるのか、そのあたりについて教えてください。
仁藤:「新衛星は何に使っていますか?」というご質問からですが、先ほどのご説明の中で2つの衛星の収益貢献のお話をしました。1つは「JCSAT-17」ですが、こちらの衛星は専らドコモに使っていただく衛星で、お客さまとしてはドコモとなります。サービス開始直後から安定的な収益をいただいているものです。もう1つ新しい衛星として最近上げたのがIntelsatと共同のソリューションで行っている「Horizons 3e」という衛星で、こちらは日本国内というよりもモバイルあるいはグローバルのサービスを対象としたものです。使い方としては船や飛行機などのモバイル、携帯のバックホールなどに利用してほしいビジネスです。実際に収益貢献も始まっています。今後の宇宙事業の状況については宇宙部門の経営企画部、森合からお答えします。
森合裕氏:それではお答えします。現在、新型コロナウイルスの影響で航空機向けのWi-Fiサービスでの衛星利用が当初の期待どおりに進んでいません。前年度と比べても収益が落ち込んでいる状況です。こちらについては新型コロナウイルスの影響が今後緩和されて、航空機への乗客数ならびに便数が回復すれば、それに応じて収益もまた回復していくと見込んでいます。ただし、その時期については新型コロナウイルスの影響がいつ頃緩和されてくるのか定かではないため見通しがはっきりと出せない状況ではありますが、あくまでこちらは一時的なものであり、状況が回復すれば収益も回復すると見込んでいます。
仁藤:最初のご質問とも関係しますが、「Horizons 3e」という衛星はサービスを開始して間もないためどんどんお客さまを取っていける衛星ですので、お客さまの拡大が望めます。あるいはもう1つ、最近上げた最新の高機能衛星があります。これらがお客さまに開始いただいて稼働率が上がってくると、宇宙事業の収入利益が拡大すると期待できます。
質問者1:ありがとうございます。まとめると、新型コロナウイルスの影響という点で宇宙事業に関連してメディア事業では当然マイナスだと思いますが、航空という面ではマイナス、通信が伸びているという点ではプラスかもしれないということで、新型コロナウイルスは宇宙事業で見た時にプラスとマイナスのどちらなのでしょうか?
仁藤:足元ではマイナスです。森合から説明がありましたように、新型コロナウイルスの影響で特に航空機のWi-Fiの需要が落ち込んでいるという点でマイナスになります。回復してくる時期は明確には言えませんが、3年から4年、2年から3年はかかるかもしれません。そのような意味で一部の期間ではあると思いますが、新型コロナウイルスの影響は航空機需要の減少でマイナスになっています。
質疑応答:メディア事業の収益と費用および宇宙事業について
質問者2:少し細かいのですが、メディア事業の実績についてお願いします。営業収益と営業費用に記載されているもの以外で、営業収益は5億円、営業費用は10億円減少していますが、こちらについて教えてください。また、コンテンツ費用とは具体的にはどのような費用なのでしょうか? まず実績について確認させてください。
仁藤:コンテンツ費用について個別の詳細は控えますが、どのようなものがあるかといいますと、まず一番大きなものがプロ野球です。プロ野球の開始が遅くなったことによって、そちらのコストがこの期間に落ちていないということです。そのほかにF1、ルヴァンカップ、いろいろな音楽のコンサートがあります。加えて、「BSスカパー!」などで無料コンテンツもいくつか計画していましたが、新型コロナウイルスの影響等で制作できなかったということも含め、合わせて10億円程度の減少となりました。また、営業収益の減少は視聴料と事務手数料についてお伝えしましたが、そのほかに視聴者数の減少によって基本料が減少しているのが一番大きいその他の要素です。
質問者2:基本料というのは費用のお話ですか?
仁藤:収入です。
質問者2:収入ですよね。費用に記載されていないもので10億円ほど減っていることについても教えてください。
仁藤:けっこう細かいものの積み上げになっています。例えば、スカパー・ブロードキャスティングの費用の減少、衛星回線料の減少、あるいはWAKUWAKU JAPANの事業の費用減少等、そのようなものの足し合わせです。
質問者2:わかりました。次に今後の第2四半期のメディア事業ですが、コンテンツ費用が10億円増えるということで、相応の売上も増えてくると思います。第1四半期にすでに営業利益で21億7,000万円出ていますが、仮に費用が10億円増えて売上寄与がなかったとしても10億円から12億円の営業利益になり、上期で30億円を超えるような営業利益水準になります。今後第2四半期にかけて利益のプラスマイナス要因で見ると費用が10億円増えるというのはわかりますが、契約数が減っている、ベースの売上が減る以外に大きなプラスマイナス要因はありますでしょうか?
仁藤:もともとメディア事業においては四半期ベースで見ると、第3四半期、第4四半期が普通の年でもかなり営業利益が少ない、あるいは第4四半期はマイナスになるという性質があります。14ページにセグメント別の連結の業績推移を昨年度の実績を踏まえて四半期ベースで記載していますが、昨年度もメディア事業の第4四半期の営業利益は8億円程度の赤字になっています。今年は第1四半期、第2四半期辺りで出る営業利益のプラスと、第3四半期、第4四半期の営業利益のプラスあるいはマイナスが、例年の差よりさらに激しくなってきています。そのような観点で見ると、普通でも持っているこのような性質が強調されて出ているかたちになっています。
質問者2:そのように差が激しくなる背景には何があるのでしょうか? また、会社の計画は通期でもメディアの営業利益が23億円とかなりの減益を見ていますが、例えば下期にすごく赤字が増える、ほとんど利益が出ないなど、原因を教えてください。
仁藤:1つはコンテンツの費用ですが、例えば野球の場合は開始が遅れているため、総額は同じですが落とす期間が後ろにズレていることや、いろいろな販促、広告宣伝等も後ろにズレてくることがあります。そのほかの要素について追加の説明があれば、経営企画部長の美谷からお願いします。
美谷衛氏:経営企画部の美谷と申します。一番大きい要素は、仁藤からお伝えしたスポーツの収入が例年より小さくなってしまうことが挙げられます。また解約については楽観視していないということで厳しめに見ていますので、そのあたりで合わせて23億円の営業利益としています。
質問者2:ありがとうございます。次に宇宙事業ですが、第1四半期だけで売上が約18億円増えており、通期の売上の増収計画が38億円ということだと思いますので前年が535億円のため573億円で、1年間の半分弱を達成しています。
おそらくその差は、本決算の時に会社の計画では航空機向けのWi-Fi向けのグローバルサービスの収入は約40億円の減少で、おそらく7割、8割減少する前提だったと思いますが、実績を見るとWi-Fi関係は3億円の減少となったため生じているのではないかと思います。
また「JCSAT-19」はすでに利益貢献しているということで、19億円の売上のうちかなりの部分が「Horizons 3e」ではなく「JCSAT」だと思います。そちらの利益もしっかり出ているのではないかと思っており、第1四半期は特に特殊な要因はないのではないかと思うのです。
宇宙事業計画は営業増益の実績を出していますので、そのままなら通期で会社がこれだけの営業減益になるとは思えないペースで走っていると思うのですが、いかがでしょうか?
仁藤:インターネット需要については、ご指摘のとおり引き続き厳しい状態という想定で見ています。実は第1四半期は最低の数字にはなっていない状況でした。4月が航空機需要が一番厳しい状況ということではないので、当然航空機や航空会社、サービスしている中間のサービスプロバイダもそうなのですが、継続してくると会社としてはかなり資金繰りが苦しくなっている部分もあります。
おそらくそのような意味では、第1四半期は必ずしも一番まずい状態にはなっていなかったことが1つあります。ただしご指摘のとおり、今後回復してくればこの厳しい見方よりは良くなってくることもありますので、そちらは今後のことを見ていかなければいけないと思います。
そして「JCSAT-17」はこのような状況下にあっても増収増益となっている事業ですが、大きな要因は「JCSAT-17」がずっと稼働して、当社の収益、利益を上げてることが大きいです。
また今後の見通しで触れていますが、新型コロナウイルス感染症がこれほど拡大すると思っていなかった時期に予算を組み始めており、当初は新型コロナウイルス感染症もなく、航空機需要も伸びていく前提でいろいろな新規事業の取り組みを計画していました。
スペースインテリジェンス関連や、一度ご報告したデブリ除去の衛星など、いろいろな新しい取り組みを計画しており、そちらは大概第3四半期や第4四半期に出てくる費用になっています。コロナ禍ではありますがこれからにつながる話ですので、このような新しい試みを抑制せずに進めるということで、費用の増加が特に下期に出てくることも要因の1つになっています。
質問者2:わかりますが、そこは計画の中で通期で費用として入っていると思いますので、例えば航空機の減収が計画ほど減らないということであれば、そちらを追加で新規事業に費用として投下するということでもないと思いますが。
仁藤:当初計画していたとおりで、航空機需要が回復したからその分さらに費用が増加して、ということではないです。当初計画したとおりに進めようと思っています。
質問者2:最後ですが、JAL、ANAの今後の便数計画は公表されているため、一旦たくさん増えて、また微修正で下げているということはあるのですが、便数では正直70パーセント、80パーセント減る状況にはまったくないと思います。
そのような状況にあって売上の交渉はJAL、ANAに公表されている便数とは違う動きになるのかを確認させてください。
仁藤:基本的には我々が直接JAL、ANAに提供しているのではなく、間にサービスを提供しているプロバイダがいますので、そちらの経営状況と関係してきます。便数が回復してきたとはいえ基本的に苦しい状態が続くと、資金繰り的にはだんだんボディーブローのように効いてきますので、そのようなことを考えると中間でサービスしている方々の状況が我々にとっては直接的に関係するものです。ただし、便数が回復してくれば当然状況が良くなってくる性質ですので、我々としてもそのような状況が出てくれば、サービスプロバイダとの交渉上もプライムを指摘していきたいと思います。