2019年の総決算 秋のIR祭り
平野洋一郎氏(以下、平野):みなさま、こんにちは。アステリアについて、私から説明させていただきます。
当社は1998年に創業しました。企業向けのソフトウェア開発会社で、しかも受託は一切行わず、パッケージのみを行っている会社です。
パッケージしか行わない理由は「日本だけではなく、世界中にこのソフトウェアを届けていきたい」という思いからです。そして、現在ではクラウドサービスを加えて事業を行っています。
2018 東証1部
おかげさまで、2018年に東証1部に上場しましたが、まだまだそれでも小さい会社です。これからさらに世界に向けて、この事業を伸ばしていきたいと考えています。
2018年10月1日 社名変更 アステリア株式会社
ちなみに、(スライドを見て)気がつかれた方がいらっしゃるかと思いますが、一部上場のときは社名が違うのです。インフォテリアです。創業のときもインフォテリアです。20年間、インフォテリアという社名で続けてきましたが、2018年10月からアステリアという(新しい)社名にして、現在新たな20年に向かっているところです。
社名変更
なぜ、社名を変えたのか?社名を変えた理由は、当社の事業の領域が大きく広がってきたことにあります。
インフォテリアは「インフォ」(インフォメーション)と「テリア」(カフェテリア)です。実はこれは「Informationシステムをつないでいく」という事業領域を表現したものとしてつけた名前でした。
そして、この「情報システムをつなぐ」ということを創業以来続けてきましたが、つなぐ先が企業の情報システムから大きく外に出て、さまざまなものをつなぐようになってきている状況です。
それは例えば、動くものなどです。今では車の3割はソフトウェアだと言われています。それからビルディングについても、スマートビルディングといわれ(ソフトウェアで制御し)、今や農業でもIoTなどによってソフトウェアでつながって動いている状況になってきます。
実際に当社の「Handbook」という商品は、モバイルをつなぐことで、人をつないでいます。さらに最近の製品ではIoTとしてさまざまなコンピュータ以外のデバイスをつなぐようになってきているのです。
そのような(事業領域が広がった)ことを踏まえて「あらゆるものをつなぐ」という意味でアステリアと社名を変更しました。アステリアは、ギリシャ語で「星座」という意味です。「人間がつなぎうる最も大きなものはなんだろう」と考えたときに、「星と星を繋ぐ」星座に行き着き、「世の中の輝く星を繋ぐ」という理念をこめて、アステリアという社名にしました。
会社概要
当社は現在5ヶ国に展開しています。イギリス・中国・シンガポール・日本・米国に複数の拠点があり、活動しています。
沿革と通期売上推移
創業以来ずっと、このようなかたちで事業を伸ばしてきています。スライド左上で示したように、企業内、企業外、そして動くもの、人までをつないでいくということを愚直にずっと進めてきて、現在に至っています。
2年半前にはイギリスのThis Placeという会社を買収して、また事業が大きく広がっています。
2019年3月期通期業績
通期業績の最新の情報です。会計の業績はスライドで示したとおりです。通期は上場来最高売上を更新し、利益も上場来最高益を更新している状況です。
2019年3月期 通期:全ての事業で増収
当社のビジネスのユニットです。3つありまして、企業向けのエンタープライズ、企業内個人向けのネットサービス、そしてデザインサービスです。これは、ソフトウェアをより良く、(ユーザーの)みなさまが使いやすくするという事業です。
今第2四半期:デザインサービス大幅減収
それぞれこのようなかたちで着実に伸びてきているというのが通期の結果ですが、直近の状況でいいますと、実は中間期の状況は芳しくありません。
3つのビジネスユニットのうち、従来から当社が進めてきている企業向けソフトウェア2事業は順調に伸びていますが、2年前に買収したデザインサービスで……こちらはロンドン・シアトル・香港で展開をしていますが、その中の米国での主要な顧客が2社同時にクラッシュし、結果的に通期業績を下方修正する状況になっています。
しかし、第1四半期にこの状況が起こりましたが、第2四半期営業利益はV字回復で、すばやく対処しています。
ちなみにこの2社はおそらく皆さまもご存じの会社です。
1社は日本でも話題になっている米国の通信会社です。合併が取り沙汰され、ソフトバンクなども関与してるT-Mobile社のSprint社との合併が予定より長引いていることが全社的な予算執行に関わる状況になってしまったということです。
もう1社の社名は申し上げられないのですが、昨年から今年にかけて墜落事故が2件起きた世界的な航空機製造会社です。
こちらも、予期しなかった経営レベルの問題となりまして、さまざまなマーケティング関連の予算執行が止まってしまったということがあり、当社のプロジェクトも大きな影響を受けてしまったということです。
第2四半期で営業利益はV字回復
実際にどのような状況かというと、突然この2社でほぼ同時に問題が起こったということで、デザインサービスは大幅に落ち込みはしたのですが、営業利益レベルでは対処しまして、(第2四半期では)大きく回復しているということです。
今後はどうなるかというところですが、今後については、主要顧客は徐々に回復しています。それに加え、当社は新規顧客からの受注を行います。
これは中間決算後の情報になりますが、アラスカ航空という、米国国内では非常に大きな航空会社です。売上が9,000億円程度あります。日本航空で1兆3,000億円程度ですから、非常に大きな会社です。
それからもう1つ、McKinstry社は建設業です。ワシントン州の大手です。このような顧客獲得についてもすでに発表しています。(業績は)底を打ったので、今後は上っていくだけという状況です。
業績についてお話しさせていただきましたが、ここから先、当社が実際に、具体的になにに取り組んでいるのかといったところについてお話をします。
どうでしょうか。アステリア・インフォテリアについてお話ししましたが、初めて社名や(事業)内容を聞いたという方は挙手をお願いできますか。
(会場挙手)
ありがとうございます。大勢いらっしゃいますね。今日ここでお話をしている甲斐があるものというところです。今まで私がソフトウェアと言っていたとおり、当社は広くIT業界に属しています。
IT業界は4つに分かれます。ソフトウェア、ハードウェア、インターネット、そして通信です。みなさまは投資にご興味のあられる方ばかりですので、だいたい聞いたような名前がたくさんあることと思いますが……当社はこの中でソフトウェアに属しています。
ソフトウェア開発は2つのモデル①
ソフトウェアについて、ここからが大切なことです。ソフトウェアには、実は2つの事業モデルがあります。だいたい市場ではソフトウェア開発としか言われないのですが、(ソフトウェア開発には)まったく違う2つのビジネスモデルがあるということです。
1つが「製品開発」です。自社製品を開発して、多くの企業、もしくは多くの人に提供するというモデルです。
それから、もう1つが「受託開発」です。受託開発は個別の注文に対して、その注文どおりに開発して1社に納めるという形態です。
以上の2つは大きく違うモデルです。まず、納品先がぜんぜん違います。不特定多数か1社か。あと、売上高総利益率がぜんぜん違います。
おもしろいことに、日本の状況と世界の状況はだいぶ違います。世界のソフトウェア開発企業で、みなさまが知っている企業はどのようなところでしょうか。
Google、Microsoft、Oracle……いろいろあります。コンシューマー向けであれば、Facebookなども当てはまりますが、世界でみなさまが知っているような会社は、ほとんどが製品開発企業です。
ところが、日本で上場している企業のうち大きな企業から見ていくと、ほとんどが受託開発です。一番大きなソフトウェア開発企業がどこか、ご存じでしょうか。日本で一番大きなソフトウェア開発企業は、1兆円以上の売上規模があるNTTデータです。
そのようなところも含めて、だいたいこのような状況なのです。世界でソフトウェア開発といえば、だいたい製品開発です。アステリアも一切受託開発していませんので、こちらにあてはまります。
ソフトウェア開発は2つのモデル②
日本の大きな企業のうち、なんとかデータ、なんとかシステムズ、なんとかソリューションズという会社は基本的には受託開発です。何十件、何百件と受託して、その注文どおりに作って納品します。
製品開発は、注文書が来ないのに開発を始めるのです。自分たちで考えて、自分たちで設計して、開発して、でき上がったものを売っていく。これが製品開発です。
製品開発の特徴は、スケーラビリティが高いことです。作った1つのソフトウェアが、何千社、何万社と売れる可能性があります。逆にいうと、1社も売れない危険性もあります。ですが、事業モデルとしてはこれほど違います。
受託開発は、一つひとつのコストに適正利潤を乗せて売上となるわけです。売れば売るほど、人もコストもかかります。製品開発は、赤い部分で示したように、注文もないのに開発するので(最初は)大赤字ですが、売れば売るほど売上が増え、コストが上がらないというモデルなのです。
当社の場合、先ほど紹介した2つの製品はもうすでに損益分岐点を超えています。そして、新しい2つの製品はまだ赤い部分にいるという状況です。製品開発の大きなポイントは、この損益分岐点を超えると利益額だけでなく利益率も上がっていくということです。
アステリアの製品ラインアップ
さて、(アステリアが開発販売している)この4つの製品について説明します。現在この4つ製品がどのようなことに使われているかというと、「つなぐ」ところに使われています。これは創業の理念でもあります。先ほど説明したように、社内をつなぐ、社外をつなぐ、クラウドもつなぐ、そして動くヒト・モノもつなぐ。これを実現するためのソフトウェアが、この4つの製品となります。
2つの中核製品は市場シェアNo.1
システム・クラウドをつなぐ「ASTERIA Warp」、ヒトをつなぐ「Handbook」、モノ(IoT)をつなぐ「Gravio」、そして、ヒトとモノをつなぐ「Platio」といった製品があります。
これらの製品のうち、とくに主力の2つは市場シェアNo.1です。「ASTERIA Warp」に至っては、データ連携市場でなんと13年連続No.1です。
「Handbook」も、ここに4つだけバッジがありますが、6つの市場調査でNo.1です。このようなソフトウェアを中心にでずっと事業展開をしてきていましたが、2年半前からこれにデザインサービスを加えました。
英デザイン戦略コンサル企業を買収
英国のデザイン戦略コンサルティング会社を買収することによって、デザインサービス事業を加えています。見ていただくとわかるとおり、欧米でもかなりメジャーな企業をクライアントとして持っています。
デザイン戦略コンサル買収の狙い
日本では、デザイン会社というとイラストの下請けというところが多いのですが、デザイン戦略コンサルは、イメージとして近いのはマッキンゼーやB.C.G(ボストン コンサルティング グループ)のような経営戦略コンサルです。その中のデジタル部分に特化し、そしてデリバリー(成果物)として、プレゼンテーションだけではなく、そこに必要なファイルやソフトなども提供するというものです。
例えば、アプリのプロトタイプ、ECサイトのプロトタイプ、さらにはそこに必要なデザインファイルといったものを提供します。
(デザイン戦略コンサル企業を買収することで)アステリアがなにを目指しているか説明します。企業向けソフトウェアも、今後はデザインが大切な時代(になります)。大切どころか、「デザインファースト」の時代になると当社は考えて、This Placeを買収しています。
企業向けのソフトウェアは、現在でもまだまだ「機能ファースト」です。企業のIT部門が100個も200個も機能チェックリストにマルバツをつけて、そしてどのソフトウェアを使うか選ぶのです。ところが、コンシューマーのみなさまがアプリを選ぶとき、サービスを選ぶとき、そのようなことをしますか? 100個も200個もすべての機能を調べ上げて選んだりはしないはずです。
企業がそのようなことを行うのは、IT部門にとってそのようなことが役割だからです。しかも、実際に使う人はすぐに使えなかった。これが企業のソフトウェアです。
ところが今、企業のソフトウェアもクラウド化・アプリ化が進んでいるため、現場の人がコンシューマーと同じように、すぐに使ってみることができるわけです
そうすると、現場の人は、100個や200個もの機能を網羅的に調べるわけがありません。自分の仕事に使えるかどうか、フィーリングが合うかどうか、使いやすいかどうか……このような、みなさまコンシューマーと同じ選び方をします。これが「デザインファースト」です。
企業のソフトウェアも、クラウド化やアプリ化の流れを避けられません。選び方も「デザインファースト」になってくるということなのです。
この状況はおそらく3年から5年で始まると思いますが、そこを見据えて、当社はデザインファーストのソフトウェアを作っていきます。世界をリードしていくために、This Placeを買収しています。
アステリアの先見性
ちなみに、当社は創業時から先見性といいますか、先を据えての開発が得意です。実は、創業時はXMLの専業会社としてスタートしました。
このXMLという技術は、今では当たり前の技術なのですが、MicrosoftやIBMがコミットする1年前に、その専業で、その1点に賭けてスタートしました。モバイルについても「iモード」が華やかだったころに、僕らはPC、AppleのMacbookのようなものがポケットに入る時代にどのようなソフトウェアが必要かを考えて「Handbook」の開発をスタートしています。
2015年には、日本の上場企業で一番最初にブロックチェーンに対してコミットしています。このときは株価も反応しました。このようなかたちで、2年後や3年後、そしてその後に出したものが、5年も10年も使えるようなソフトウェアを開発してきています。
実際に「ASTERIA Warp」は16年間売り続けていて、13年連続No.1です。「Handbook」は今年で10周年です。先見性があるからこそ、このようなプロダクトができます。受注開発ではこのようなことができません。
重点投資領域「4D」
当社が現在注力しているポイントが「4D」です。Data・Device・Decentralized・Designです。これが今後の世界をドライブすると考えています。
10年以上連続する進化のベース
ITの世界では、新しい流行ワードがどんどん出てきます。「今年はこれだ」「来年はこれだ」、そして「○○はもう古い」という話がどんどん出てきます。この20年間の知見を踏まえて、当社はこの「4D」が世の中をドライブする基本的なものだと考えています。
世の中の流行りが「4D」の上に乗っているという例を示します。Dataでいえば、大量のデータを使うAI。Deviceでいえば、IoTコネクテッド。Decentralized(非中央集権)でいうとブロックチェーン。Designはデジタルトランスフォーメーション(DX)、そしてカスタマーエクスペリエンス(CX)。
このように(現在)流行っていますが、そのライン上には以前流行ったキーワードもありますし、これから流行りそうなものもあります。この「4D」を、当社は重点的な戦略ポイントにしていますし、そして投資のポイントにもしているということです。
今回、これまでは当社自身で、数多くの開発をしてきていましたが、さらにスピードを高めるために、2019年には、この「4D」に対して投資を行う会社Asteria Vision Fundを立ち上げています。テキサス州プレイノ市に立ち上げています。
台湾No.1 AI会社の筆頭株主に
第1号ファンドがすでに立ち上がっていまして、すでに開示をしているとおり台湾のNo.1 AIの会社です。約13億円を出資して筆頭株主となっています。
このように新しい領域を、もちろん人任せではなく、買ってくるだけではないというところが、別のビジョンファンドとの違いです。当社自身でもしっかり開発します。
AI研究開発会社「Asteria ART」始動
こちらは、2019年に立ち上げたAsteria ART、ARTはArtificial Recognition Technologyの略です。当社自身でもAIの会社を作りました。こちらは新宿にありますが、早稲田大学で20年間AIを研究してきた園田智也博士を筆頭に、自らもAIの研究開発を進めていくということです。
この「4D」をもって、当社は今後とも大きな成長を遂げていきたいと考えています。一つひとつの市場は、あまり大きな成長がないことが多いです。でも、そのような堅実な成長をいくつも積み重ねていくということです。先ほどのデザインサービスもその1つです。
そして今後、Asteria Vision Fund、それに新しい会社を加えて「4D」投資をどんどん積み重ねていき、アステリアグループとして大きな成長を実現していきます。
これが当社の基本的な説明です。次は、製品の紹介を簡単に行いたいと思います。
ASTERIA Warpとは
「ASTERIA Warp」は主力の製品です。どのような商品かというと、世の中にある企業の中にあるさまざまなコンピュータを「ノン・コーディング」でつなぐというものです。
ノン・コーディングとは
普通、コンピュータ同士はエンジニアが何千行、何万行というコードを書いてつなぐのですが、「ASTERIA Warp」を使うと「ノン・コーディング」で、プラグを差してパラメーターをいじるだけでつなげるのです。
どのようなことが起こっているかというと、普通はこのようにプログラムをたくさん書くわけですが、それを1つのアイコンに閉じ込めて、フローチャートを書くだけでつながるようにするというものです。
8,000社を超える導入企業
この商品の販売は100パーセント間接販売で、エンドユーザー(企業)が現在8,000社を超えたところです。第1号ユーザーはソニー、第2号は京セラというように、大企業から始まりましたが、現在では中堅・中小まで広がっています。
成長領域:RPA(Robotics Process Automation)
(ASTERIA Warpの)現在の成長領域はRPA (Robotics Prodcess Automation) です。RPAはフロント(人が操作する業務)を自動化しますが、実際のクラウドや基幹システムとつなぐ部分を合わせて自動化するときに、当社の「ASTERIA Warp」が効いてくるわけです。
新時代に貢献するASTERIA Warp
今後はAPI (Application Programming Interface) の時代になります。APIは「プログラミングをするからつながる」という時代で、「ASTERIA Warp」が提供するのは、「プログラミングをしなくてもつながる」という時代です。
Handbookとは
次に「Handbook」です。「Handbook」は、ヒトとシステムをつなぐ製品です。
会社内にあるさまざまな情報を、このように「Handbook」を介して送ります。電子メールなどとは違ってすべての情報が紐づいていて、情報セキュリティが万全です。いつ、だれが、どこで見たか。さらに、見たあとに消すことができる、ある時間だけ見せることができるなどというようなことを管理できる製品です。例えば野村證券ではもう約8,000名に使っていただいていますし、いろいろな金融機関、(その他の業種でも)営業利用もされています。
成長領域:SalesTech(営業×技術)
最近の成長領域としては「SalesTech」と呼ばれる分野があります。営業に技術を持ってこようということです。これまでは、営業は「足で稼ぐ」「気合いで稼ぐ」というような話があったわけですが、そこにテクノロジーを持ち込もうということで、この営業技術「SalesTech」が流行ってきています。
野村証券
一例として、野村證券を見てみます。全法人営業8,000名が、本社の指示だけによってすべての画面が切り替わり、新しい資料になります。利率が変更になったのに古い資料を使って事故が起こるということもなくなっています。
「エッジ」(現場)で動く簡単IoT
さて、次は「Gravio」です。「Gravio」は新製品です。
これはIoTを、デバイスをつなぐ新製品です。さまざまなセンサーをつなぐのですが、さらにそこにAIを搭載して、(アステリア独自の)「ソフトウェアセンサーを」実現しています。さらにブロックチェーンを搭載して、安全確実な稼働を実現しています。
最新版「Gravio 3」を出荷
最新バージョンはバージョン3で「Gravio Hub」というスライド左の写真で示したようなハードウェアを提供しています。当社はハードウェア屋になるつもりはありませんが、このような新しい領域は「このようなものだ」と世の中に見せてあげることが大切です。
そして「Gravio AI Edition」、これは人の顔認識までできるAIです。そして、自社開発のブロックチェーンを搭載しています。ソフトウェア組み込み型の、専用のブロックチェーンです。仮想通貨などをこれで作ることはできませんが、例えば稼働履歴、監査対応、ライセンス管理などができるといったものです。もう実績も400件を超えているという状況です。
「3日でアプリ作成」
そして「Platio」。これが4つ目で、これも新製品です。これは現場のアプリを簡単に作ることができるというものです。
アプリを作りたいが、そのような予算もないし、時間もないという会社が多いのです。「Platio」を使えば3日でアプリが開発できます。事例をいくつも公開していますが、1日間、3日間といった作成期間がどんどん出てきています。
Platioアプリ事例増加中
病院のアプリについてです。例えば病院では、来年にはPHSが使えなくなります。「どうやって連絡手段を取るのですか」「どうやって記録を残すのですか」といったときに、今後はスマートフォンが活躍します。そこで使うアプリをいちいち何百万円もかけて開発せずとも、(たった)3日で作ることができるというものです。
ブロックチェーン連携
先ほどブロックチェーンのお話をしましたが、当社ではブロックチェーンにも力を入れています。(まずは)ブロックチェーンをさまざまな企業がすぐに使えるというものです。既存のシステムや既存の技術からこれを使うというところで「ASTERIA Warp」ではいくつものブロックチェーンアダプタを提供しています。
当社ブロックチェーンの進展
さらに当社は、このブロックチェーンは非常に重要な、10年から20年かけて世の中を変えていくインターネットの技術のようなものだと考えています。
そのため、ここにさまざまな実証実験なども行っています。株主総会では、世界で初めてブロックチェーンを株主投票の本番で使ったり、先ほどお話ししたGravioに組み込むブロックチェーンを開発したりしています。
改ざんが許されないデータはあらゆる業界に存在する
ブロックチェーンは仮想通貨として注目されていますが、フィンテックだけでなく、さまざまな領域で使うことができます。
ブロックチェーンでのポジション確立
実はアステリアは、ブロックチェーン推進のコンソーシアムを立ち上げました。2016年に、日本ですでに最大の組織になっています。私自身がこの代表理事として、日本のブロックチェーンの推進のために動いています。現在ではあまり業績に寄与していませんが、年が経つにつれて少しずつ当社の業績にも影響してくると考えています。
ここまでは事業の話をしてきましたが、最後にいくつか全社的な話をしていきたいと思います。
一歩先を行くコーポレート・ガバナンス
まず、当社の体制です。最近では、上場企業、とくに東証1部ではコーポレート・ガバナンスの強化が叫ばれています。いろいろな議論がありましたが、当社は実は20年以上前、つまり創業時からずっと、2名以上の社外取締役を入れるという体制を取っています。
現在では過半数が社外取締役で、しかもそこには多様性があります。外国籍の方、女性の方が入って、非常に広い知見を持って、ガバナンスを効かせた経営ができるということです。
グローバルな経営体制
実際の執行役員も、このように日本だけではなくグローバルに、知見のあるメンバーで構成しています。
社会貢献活動の例①
会社的な活動としては、昨今注目が高まっているESG関係のものがあります。社会貢献も地方自治体と組んで進めています。この例は、熊本県阿蘇郡小国町です。
社会貢献活動の例②
秋田の仙北市角館などとも進めていて、当社の製品を広く提供していくだけではなく、社会の公器として、社会貢献というところにも力を入れている次第です。
未来へ「つなぐ」アステリア
というわけで、当社の事業の概要をご紹介しました。当社の根本は、創業のときから「つなぐ」ということです。システムをつなぐ、ヒトをつなぐ、モノをつなぐ。それらをスムーズにつなぐということで、未来へつなぐアステリア。
では、未来をどのように作るのか。私の座右の銘として、アラン・ケイの“The best way to predict the future is to invent it.”という言葉があります。つまりこれは「未来は予想するものではなく創るもの」ということです。
当社には夢があります。そして技術があります。新しくデザインも手に入れました。これらを掛け合わせて、投資家のみなさまとともに新しい未来を作っていきたいと考えています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
坂本慎太郎氏より質問
叶内文子氏(以下、叶内):ありがとうございました。アステリア株式会社、平野洋一郎さんに事業内容についてうかがいました。
それでは、ここからは質疑応答に移らせていただきます。まず、坂本さん。機関投資家的にはどのあたりが気になりますでしょうか。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):ご説明ありがとうございました。アステリアからは夢の話や今後の成長の話に時間を割いていただいたのですが、これが実現できるという根拠は、お話にもあったとおり「ASTERIA Warp」です。
シェアが非常に高くて、キャッシュを生んでくれるビジネスがすでにあるということです。そこを土台に次のステップへ行くということが、緻密に計算されているなというところです。
この計算がないと、ただ夢を追っているだけなので、実際、東証一部(へ上場)するのは難しいのですが、戦略を考え、次の一歩というかたちでいろいろ手がけているというのは、僕は非常に好きだし、成長株に投資するとすれば、そのような会社でないと嫌なのです。
なぜかというと、(成長株には)過去の成功例も当然ないので、ある程度勝算があるということも1つだし、コアとなる仕事に加えて、次のステップが見えてくるところもあると思います。コアな部分があって、そこでキャッシュを生みだして成長投資するというのは、僕は基本だと思っています。
個人投資家でも、やはりある程度のキャッシュフローがあるほうが投資に振り向けるということは基本だと思いますので、そこは変わらないと思っています。
その中でも一番僕が期待したいのは、やはりデザインの部分です。
いきなりグローバルの仕事ができるパーツを手に入れたのは、非常に大きいと思っています。ここの成長にはかなり力を入れていると思いますし、見ていきたいと思います。
反対にいえば、「キャッシュが生まれる、儲かる事業があるのなら、それだけやっておけばいいじゃないか」という投資家もけっこういらっしゃるのですが、将来を考えたときに、高配当の企業にはなれるでしょうが、そこから業績を伸ばしていくのはなかなか厳しいというところがあります。ここはやはり挑戦する姿勢を前面に出して、平野社長をはじめとしたアステリアのみなさまの今後の成長を見たいと思います、というところです。
それでは、会場のみなさまからいただいた質問を紹介していきたいと思います。
質疑応答:This Placeの買収は成功か、失敗か
叶内:みなさまからもご質問をたくさんいただいていますね。
坂本:そうですね。こちら、直近の業績は過去に買収したThis Place社が足を引っ張っているようですが、この買収は成功なのですか、失敗なのですか。今後の起爆剤になると思っていますがいかがでしょうか、という質問にお答えいただきたいと思います。よろしくお願いします。
平野:This Place社に関するご質問は多いのですが、成功ですか、失敗ですかというご質問に対しては、私からすれば「成功」です。
当第2四半期は確かに大きな影響を受けていますが、すでにリカバリーに入っていますし、今後の成長値は大きく見込めます。
当四半期は当社が何かに失敗して大きくへこんだわけではなく、大きな2社のお客さまが経営レベルの、みなさまがニュースで知るほどの(大変な)状況に、たまたま同時に陥ってしまったため影響を受けてしまったということです。これは、当社自身の価値が棄損したり、将来についてなにか変更しなければならないということではありません。
(This Placeの事業は)これまでも、ソフトウェア事業に比べても成長率が高かったところで、すでに多くの稼ぎをもたらしている点でも「成功」ですし、今はへこんでいますが、これから将来に向けて大きく伸びるので、この買収そのものは「成功」だったと今でも確信しています。
質疑応答:今期業績が中期経営計画へ及ぼす影響
叶内:それでは、次の質問です。今回はへこみましたが、中期経営計画ではどうでしょうか。変更なさるということはありませんか、というご質問をいただいています。
平野:当社は中期経営計画を立てていて、今年度は第2年度なのですが、今期は通期の計画予想を変更したので、現実としては第2年度が大きく乖離するという状況になっています。
そのため、中計に関しては今後精査するという状況になっていて、現時点ではなんともいえませんが、精査し、検討して、中期経営計画をどのように見直していくかという点について今後は取り組んでいきます。
質疑応答:ソフトウェア開発の展望
坂本:同じ方の質問がそのあとに続いていました。ソフトウェアの開発の「ASTERIA Warp」を中心としたものだと思いますが、中長期的な見通しを教えてくださいという質問です。多岐にわたってしまいますが、よろしくお願いします。
「ASTERIA Warp」の導入企業は、この前見たときは7,500社だったと思いますが、8,000社ほどになっていたので増えているというイメージがあります。
平野:ソフトウェア事業は、2つのモデルに分かれるのですが……16ページの図がわかりやすいかなと思います。この図でいうと、当社の2つの主力製品を含め、(製品開発で)上手くいった製品はグラフの右側にいきます。
実は今「ASTERIA Warp」がキャッシュ・カウで、得た資金をほかの新しいものにつぎ込んでいます。
「ASTERIA Warp」は、できるだけこれを長くこのポジションを保って、キャッシュ・カウであり続けるようにします。「Handbook」はようやくキャッシュ・カウの入り口に来たので、これももっと成長させていきます。
今後の一番のポテンシャルは、(損益分岐点の)左側にある「Gravio」と「Platio」です。こちらはThis Place等の知見も入れ、グローバルに本当に売れる製品にしていこうとしています。
「Gravio」に関するマーケティングもすでにグローバルに行っています。(「ASTERIA Warp」と「Handbook」の)2つが国内でのキャッシュ・カウになりつつあるのですが、新しい2つの商品は、グローバルなプラットフォームを得たので、世界で展開することによってより大きな成長を目指していきます。これが、ソフトウェアの中長期的な計画となります。
以上です。
質疑応答:新製品によって新規顧客は獲得されるか
叶内:以上の新製品については、やはり新規顧客を獲得していくことになるのでしょうか。その政策についてはどのような工夫がありますか、ということですが。
平野:ご説明した4つの製品は、もちろん新規顧客も獲得していきますが、初期については、現在のお客さまが非常に大切になります。
「ASTERIA Warp」を作ったときは、まったくお客さまがない状態だったため大変でした。「ASTERIA Warp」の次の製品が「Handbook」ですが、「Handbook」のときはやはり、すでにお客さまになっていただいているところにご提案しました。そのためにパートナーにもご説明するといったところからつかみを得て、少しずつ新規が取れるようになり、事例ができます。それで、新規が取れるようになるということです。
「Platio」もそうですが、やはり「Handbook」のお客様です。「Handbook」のみなさまは、基本的にはすでにモバイル機器をお持ちです。そうすると、なんらかのアプリを使うための環境があります。そこに、社内アプリ・業務アプリのニーズの有無についてお話ししていきます。特に(販売の)初期にはこのようなつながりが非常に大切であるため、初期は既存のお客さま、既存のパートナーのお力も得ながら事例を作って、新しい顧客の方々にアプローチしていくというのが基本パターンです。
叶内:どんどん拡大していくイメージですね。ほかにご質問はいかがですか。
質疑応答:デザインコンサルタントの概説
坂本:This Place社への質問です。おそらく、デザインコンサルタントについてイメージがわかない方がいらっしゃると思うのですが、デザインの手足まで動かすのか、それともその外側を作るのかという部分がわかりにくい方がいらっしゃると思います。もう少しそのあたりを詳しく教えていただくとビジネスのイメージが膨らむと思うのですが。よろしくお願いします。
平野:まさに今回話題になったT-Mobile社についてです。T-Mobile社はアメリカの非常に大きなお客さまでした。T-Mobile社は大企業なので、事業部門がたくさんあります。
T-Mobile社は、いくつもある事業部門の中で、これまではそれぞれの事業部門がECサイトを作ったり、Webサイトを作ったり、アプリを作ったり、いろいろされていました。
これに対して、全社をデジタルトランスフォーメーションしようという作戦をT-Mobile社が立てたのです。(This Placeでは)統一する場合に、どのような素材が必要なのか、どのような動きをすればいいのかといったことを当社が全社横断で考えて提供するということをしました。
もう少し具体的にいうと、Webのストラテジーや、デザインそのものです。アプリのデザインや、UI/UX、ECサイトのデザインなども提供しました。
あと、もう1つ、部門横断する場合、部門内にはいろいろなしがらみがあるので、統一的にデジタルを運営する部門をどのように作るべきか、外部から人を採用するときには、このようなプロファイルの人がいいのではないかなど、ストラテジーやデザインのコンサルタントを行っています。わかっていただけたでしょうか。
叶内:(これまでは)順々に構築されてきて、社内が継ぎ接ぎでばらばらだったりしたということですか?
平野:そのようなことが多いです。とくに大企業は事業部門ごとに売上ミッションもあれば、事業ミッションもあります。
全社で統一するというのはなかなか難しく、ロゴが統一されているのは当然としても、Webの動き1つや、ECのサイトでも遷移の順番が違ったりといった、統一されていない部分を当社がトータルで見てご提供するということです。
そのため、基本はコンサルティングです。マッキンゼーやB.C.Gとは違い、ファイルも提供するということです。プレゼンだけではなくて、デザインや、JavaScriptなども提供し、アプリのプロトタイプも提供するというようなものです。
坂本:ありがとうございます。いや、勉強になりました。イメージできましたね。
叶内:少し、イメージがわきました。
質疑応答:This Placeの営業手法
坂本:もう少し続くのですが、This Placeの営業手法としてはどのようなかたちで顧客にアプローチされていますか、という質問が来ています。
平野:19ページには主要顧客と書いていますが、実はThis Placeには営業マンがいません。1人もいません。もともと創業者のDusan Hamlinという方が、ロンドンで非常に有名なデジタルデザインのリーダーだったのです。
彼が起業したときに、まずは彼にお願いする人たちが出てきて、そのあとはプロジェクトが上手くいったのを見て「うちもやってくれ」というように言ってくるということです。どちらかというと、お客さまを選べる立場にあったので、営業はこれまでいりませんでした。
ただ、今回はクラッシュがありましたので、単にお客さまを待って選ぶだけではなく、プレスリリースしたとおり、いろいろなお客さまにマッチングしていくため、営業マンを雇うのではなく、「ワークショップ」を開始して、新しいお客さまも取っていこうというかたちになっています。
坂本:あと5分なので、あと1問くらいでしょうか。なにかありますか?
叶内:5年後の目標、といただいていますよ。
質疑応答:中期経営期間の先を見据えて
坂本:5年後の目標、中計のイメージもありますが、中計のもう少し先についてです。これはなかなかお話しづらい部分があるとは思いますが、数字というよりは「こうしていたい」という会社の展望などを教えていただけたらなと思います。
平野:もともと、この現アステリア・旧インフォテリアは、世界的にソフトウェアを提供していく会社として設立しています。そのときのマイルストーンが2つあります。
1つは、5割以上の売上が海外から入ってきているということです。5年というスパンなら、それは達成していて当たり前だと私は考えています。現在は3割強です。これは世界的な展開で達成したいです。
あともう1つは、売上100億円の達成です。過去にはいろいろなソフトウェアベンダー、例えばOracleやMicrosoftなどを見ていて、世界規模になったの売上がおよそ100ミリオンドルなのです。ですので、やはり100億円は1つの区切りだと思っていて、5年以内には達成したい目標です。
叶内:では、最後に少し。社長の緑のネクタイが印象的です。このカラーにはなにかこだわりがあるのでしょうか。ネクタイだけではなくて、全て緑のようですね。
平野:まず、私が緑のネクタイを付けているのは、コーポレートカラーがグリーンだからです。私はもともと10年ほどマーケティングに携わっていたのですが、色は非常に印象に残る良いツールです。いろいろなメッセージをマーケティングで考えたりしますが、色は非常に重要です。
これがなぜコーポレートカラーかというと、21世紀のカラーだと私自身が勝手に意味付けたからです。世の中はだいたいそのような方向に来ていると思います。
多くの人は「20世紀は赤だった」といいます。20世紀は(当社が)起業した時代です。
20世紀は赤だった。戦争が起こり、共産党が台頭し、トップ企業はみんな赤だという話があります。
そこで、21世紀はその対極だと定義付けました。色の知識がある人だと、赤の補色は緑だとお分かりかと思います。(20世紀から21世紀にかけて)世の中は正反対の方向に行きます。規律・統制・階級の世界から、自立・分散・協調の世界に行きます。だからこそ、「つなぐ」ことが必要だと考えて、つなぐ事業をしているのです。それを象徴する色はグリーンです。
私は社長なので、とにかく象徴という意味で、常にグリーンです。実は、今日はおとなしいほうです。(会場笑)