決算概況(2017年11月期)
岩城慶太郎氏(以下、岩城):それでは2017年11月期のイワキ株式会社の決算について、ご説明をしてまいります。
本日の内容はこれまでと同様に、決算の概況・セグメント別の概況・今後の見通しです。
最初に、既に開示している昨年度と今年度の決算について、ご説明いたします。
こちらが今年度の結果です。売上高・営業利益・経常利益・当期純利益、すべて前期と比べて、増収増益で着地することができました。
中でも営業利益に関しては、15億7,000万円ということで、前期と比べ、約6億円の成長となりました。
当期純利益は、前期にマイナスを計上していることもあり、プラス999.9パーセントという突飛な数字になってしまっていますが、こちらに関しても、かなり高い水準で着地することができています。
なお、当社において重要な経営指標として定めているROICですが、当期においては、5.4パーセント。前期から比べて2.2ポイントの改善となりました。
詳細は後ほどご説明してまいりますが、簡単に申し上げますと、2つの事業において非常に営業利益を押し上げる効果がありました。
1つには、主力であります医薬・FC事業です。こちらの営業利益が前期と比べて1億3,000万円ほど増加しています。
もう1つが化学品事業です。こちらは長く赤字が続いていた事業セグメントではありますが、この化学品事業において営業利益が増加いたしまして、前期と比べて4.6億円の(増収増益)効果がありました。
さらに特別利益のところでは、好ましいタイミングで、有価証券の売却等がありまして、前期と比べて2億6,000万円の増加となっています。
創業来最高益
結果として、今期の営業利益は15億7,000万円と申し上げましたが、これは大変喜ばしいことに、1914年に創業してから104年来の最高額となりました。いわゆる創業来最高益で、なおかつ、非常に飛び抜けた最高益となっています。
過去20年ほどの利益水準を見ていきますと、一番高かったとき(1988年)が13.3億円でした。それから、リーマン・ショックの後(2011年)に、12億1,000万円という営業利益を記録していますが、今回の15.7億円は、その中でも群を抜いて高い水準となりました。
セグメント別業績
それでは各セグメントについて、ご説明をしてまいります。
まず、セグメントの概況です。私どものセグメントとして、大きく4つの事業があります。
まず、主力と申し上げました医薬・FC事業は、医療用医薬品の製造・OTC(一般用医薬品)の原料および製品の製造・原料の流通……一部、医療機器等の事業も行っていますが、これら3つの事業を中心としています。
医薬・FC事業の売上の増加はそこまで大きくありませんでしたが、営業利益に関しては、前期と比べて1.3億円の成長となりました。
続きまして、HBC事業です。このHBCというのは、「ヘルス・アンド・ビューティケア」の略で、主に化粧品、健康食品等の原料と製品の流通をしている事業セグメントです。こちらの事業については、売上の増加が非常に顕著で、前期と比べ13億1,000万円増加の235億円となりました。営業利益に関して、これは少し利益率が低いのですが、1億円の営業利益を上げることができています。
3つ目に、化学品事業です。この事業では主に、プリント配線板や電子部品向けのメッキ薬品と、メッキの加工および電子部品の加工に使用する装置の販売をしています。こちらの売上高は、9億5,000万円の増加の62億円でした。長く赤字が続いていたのですが、(営業利益)2,000万円という大変小さな額ではありますが、今期にようやく黒字化することができました。
最後に食品事業です。こちらは、いわゆるお菓子やレトルト食品などの原料……ポテトパウダーや酵母エキスなど、そのような商品の流通をしている事業セグメントです。こちらは、売上を増加させるに至りましたが、営業利益に関しては小額の赤字が出ています。
その他の事業として、4つのセグメントに該当しない、動物薬の流通をしている子会社が2社あります。
昨年度(2016年11月期)の決算までは、調剤薬局の子会社がありましたが、昨年(2017年)1月にグループ外に譲渡したため、売上高が減少しています。しかし、それ以外の影響はないという状況です。
セグメント別営業利益増減
繰り返しになりますが、前期の営業利益9.7億円に対して当期が15.7億円となりました。その差額を見ますと、医薬・FC事業、化学品事業、この2つの事業セグメントにおける利益の伸長が非常に効果を持ち、結果的にこのような業績を上げることができています。
主なセグメント概況
続いて、それぞれの事業の中におけるトピックです。
概況ベースで少しずつお話してまいりますが、医薬・FC事業に関しては、やはり何と言ってもジェネリック医薬品(が好調)です。
ご承知のとおり、ジェネリック医薬品は国の後発品促進策に乗っ取って、量ベース・市場シェアベースでも、非常に大きく成長している領域です。
私どもは、このジェネリック医薬品の業界において、原料の納入と、当社自身でジェネリック医薬品を作るという2つの事業を行っています。
その中でも、医薬品の製造……私どもは製剤の事業と申し上げていますが、こちらが非常に大きく業績を牽引しているところです。
ただ売上が伸びるだけではなく、当然、原価軽減や製剤の生産性向上にも取り組んでいまして、そちらも功を奏して高い利益率を維持できています。
ただ、「ジェネリック一辺倒なんですか?」という話にならないように、その準備も少しずつ進めているところです。
(厚生労働省の)ジェネリック医薬品の推進策は、2020年目標で組まれている政策ですので、2020年以降のジェネリック医薬品のマーケットについては、さまざまなところで語られています。
正直に申し上げて、ともすると、これまでのような高い成長率を維持することが難しくなる業界だと思っていますので、その成長が一段落する2020年に向けて、新しい事業、新しい収益頭を作っていかなければならないと考えています。
具体的な内容をスライドに書いてあります。1つは新薬向けの医薬中間体の製造、そして米国向けの医薬原料……これは血管収縮剤や風邪薬に使われる原料ですが、それらの輸出です。
それから受託合成です。この受託合成も医薬品・医薬中間体だけに関わらず、例えば、電子部品、電子機器などに使われるような(材料の)受託合成も、取り扱いはじめています。
それから医療機器の販売です。今までも行っていたのですが、ジェネリック医薬品の業界に比べ、そこまでスポットライトが当たっていなかった領域に対して投資をして、実際に活動をして、実績を上げられるようになってきています。
とくに受託合成においては、非常におもしろいテーマが入ってきています。医薬・FC事業のセグメントの中ではあるのですが、医薬とはまったく違った業界からの受託合成のご依頼が、集まりはじめているところです。
続いて、HBCの事業です。先ほど申し上げたとおり、ヘルス&ビューティケアの事業ですが、こちらはやはりインバウンド需要が非常に大きい業界です。
ただ、こちらも同様に2020年が1つのターニングポイントになる可能性が、十分にあると思っています。その理由としては、2020年の東京オリンピックです。そこに向けて、訪日の外国人旅行客のみなさまが非常に多くなってくると思われます。
しかし最近は、徐々にモノの消費からコトの消費へ、訪日外国人観光客のみなさまの消費動向が変わってきていることを考えると、モノをインバウンドだけで売っていくことは相当難しくなってくると感じています。
そのような状況になったとき、次にやらなければならないこととして、やはり外国の方々がいるところに売りにいく、つまり海外の本国にモノを売りにいくということが必要だと思っています。そのための取り組みを少しずつではありますが、実際にはじめているところです。
そして、HBCの事業の中に位置づけています化粧品通販事業ですが、これは何度も決算説明会でご説明して、「もういい加減、他に新製品は出てこないの?」と言われそうなところですが、大ヒット商品の「シルキーカバーオイルブロック」が本当に、相変わらず絶好調です。
この化粧品通販のビジネスユニット(BU)に関しては、アプロス株式会社という子会社が行っていますが、アプロスの設立以来、最高となる25億円の売上を上げることができました。
多くの商品通販の会社は、注文していただいたお客さんが一定の量いて、お客さんの名簿を持っていて、そのお客さんに対してリピートの注文を取っていくことが、非常に重要なキーサクセスファクター(成功のカギ)になります。
その中で、このアプロスは非常に特長のある名簿を持っています。どのような特長があるかと言うと、化粧品通販のお客さまは、平均年齢が20代〜30代、高くても40代ぐらいということが多いのですが、このアプロスのお客さまの平均年齢は、およそ60代後半ぐらいです。
たまたまというと変ですが、シルキーカバーオイルブロックを売りはじめて、この製品への反響が一番大きかったお客さまが高齢の方だったということで、そのような方々を軸に非常にリピート率が高く、そして(サイトからの)退出率が低い、非常にいいお客さまの層を得ることができています。
このような女性のシニアマーケットをしっかりと捕まえることができたということが、このアプロスの成長の1つの秘であり、今後の成長の1つの要になっていくだろうと思っています。
続いて、化学品事業です。化学品事業における一番のコア競争力は何かと言うと、微細回路の形成技術です。いわゆるプリント配線板にある非常に細かい回路を作る技術を、当社の子会社であるメルテックス株式会社は豊富に持っています。
これから先、電子部品のマーケットがますます微細化して、マーケット自体のポテンシャルも大きくなっていく中で、この微細回路形成技術が、マーケットニーズにしっかりと応えられる、非常にコア競争力のある技術だと思っています。
とくに、この微細回路形成技術に関しては、2、3年ほど前から、新製品を大量に投入しています。メッキ薬品では、「ルーセントカパー」という硫酸銅メッキの(製品)シリーズ。他にも設備では、2つの流体をうまく使い分けることができるハイブリットエッチングシステムという設備を投入し、こちらの納入が随分と進んでまいりました。
結果として化学品事業は、大幅な増益と5期ぶりの黒字転換を遂げることができています。
我々のビジネスの1つの特長としましては、受注が入ったら一度きりにならない。積み重ねて受注を取っていくかたちのビジネスが非常に多くあります。
例えば、機械設備などでは「一度大型の受注をもらったら、あと何年間は(受注は)ありません」ということがあるのですが、私どもは、医薬品の原料・化粧品の通信販売・メッキ薬品も、一度受注が入ったら、何度もリピートしていただいて、その後、数年間ずっと使い続けていただけるようなビジネスを展開しています。
化学品事業も、プリント配線板と電子部品の事業において、このような流れがうまく作られ、「これから先は成長するだけ」というかたちになることができました。
最後に食品の事業です。これは冒頭に申し上げましたとおり、あまり調子がよくありません。収益がなかなか確保できないという状況が続いています。
その中でも一番頭が痛いのが、品質の問題です。これは随分前から言われていることですが、「食の安心・安全」が、国内の食品業界の非常に重要なテーマになってくる中で、正直に申し上げまして、どうしても(食品安産管理の)規格から外れてしまう食品原料が最近、また増えてくるようになりました。
例えば、これはお恥ずかしい話なのですが、私どもが輸入してきた野菜のパウダーの中に、少し土が入ってしまっていたり、鉱物が入ってしまっていたり、あるいは虫……これは(パウダーから)液戻しされているものですが、ローストされた虫が入ってしまうといったことがありました。
生産地側の製造能力の向上が追いつかないために、そのような品質問題がここしばらく非常に多くあります。
私どもイワキ株式会社としては、もともと医薬品という高品質な商材を扱う会社として、 「ちょっとぐらいなら、本当は大丈夫なのかもしれない」と思う人もいるかもしれませんが、このような品質の悪いものを販売するわけにはいかないということで、いわゆる輸入食品や、野菜パウダーの粗雑なものに関しては今、少しずつ(輸入を)減らしている最中です。
供給責任もありますので、(輸入自体を)やめはしないのですが、少しずつそのようなリスクを減らすポートフォリオに変えているところです。その中でも、食の安心・安全に関わるものは消費者のみなさんの生活に直結するところですので、細心の注意を払っています。
例えば、出荷前の選別です。これは地味な作業で、10トンや20トンある胡椒のパウダーの中から、胡椒ではないものを取り除くという、非常に大変なものです。このような作業を行って、それをお客さまにお渡しするということに取り組んでいます。
ポートフォリオの変更には少し時間はがかかるのですが、その間に営業体制の見直しも行っています。
同時に、いわゆる機能性表示食品等の健康志向食品のニーズは非常に高まっていますので、こちらの領域を伸ばして、リスクが高く品質の悪いものをなくしていくという作業を今、進めているところです。
<参考>セグメント別概況詳細
(セグメント別の概況を)詳しく書くとこのとおりです。こちらは何かの折に読んでいただければと思います。細かい説明は省略いたします。
セグメント別売上構成(2017年11月期)
結果としまして、各セグメント、各ビジネスユニットの売上の構成比は、このようになりました。
上から医薬・FC事業、HBC事業、化学品事業、食品事業、その他と並んでいまして、横軸はサプライチェーン……原材料製造から小売までを分類して、記載しています。
「私どもは医薬品、医薬ファインケミカルの専門商社です」と何年か前に申し上げていましたが、今現在は、製造業比率が3割くらいになってきたところです。
化粧品通販まで含めて、売上比率は31パーセントになっています。これは残念ながら、前年並です。
もう少し製造業にウエイトを高めていきたいと思っていますが、今のところ商社業の伸び率がなかなか高く、(製造業の)売上は上がっているのですが、(業種)比率はあまり変わらないという状態です。
事業別の構成比で言いますと、およそ医薬・FC事業が38パーセント、HBC事業が41パーセントというところで、この構成比は今後そこまで大きく変わってくることはないと思っています。
今後、横軸で見たときの製造業(製品製造)の売上比率を高めていくことを、我々の今の目標にしています。
以上、各セグメントの概況について、ご報告申し上げました。
通期連結業績の見通し
続いて、こちらが「保守的」と言われる原因であり、我々もよく承知の上なのですが、今期2018年11月期の連結業績の見通しとなります。
売上高は590億円の見通し。営業利益は14億円で、史上最高益となった前期を比較しますと1.7億円の減益、それから経常利益は前期比18.5パーセント、3.2億円の減益を予想しています。
(減益予想の理由を)説明しますと、前期(2017年11月期)にさまざまな要因がタイミングよく合わさって、本当に調子よく、非常に大きな利益が出たというところがあります。
前々期と比べますと、この2018年11月期の計画値は、必ずしも低いものではないと思っています。前々期比では売上は7パーセントの増加、営業利益も43パーセント増加、経常利益も(営業利益と)同じぐらいの増加ということになっています。
特筆すべき点はROICです。何度も申し上げますが、私どもイワキ株式会社は、ROICを重要な経営指標に置いています。
このROICに関しては、前々期に3.2パーセントだったものが、この終わった決算期においては5.4パーセントまで高まり、2018年11月期は、予想ベースですが、4.8パーセントまで上がるだろうと見ています。
この(見通しの)中身についてですが、590億円の売上を予想している理由は、今年の薬価改定です。やはり、この薬価改定の影響は少なくありません。
もっとも、当社が薬価に影響するビジネスをどのくらいの比率で行っているかと言うと、売上のうち薬価が直接影響する割合は、実は10パーセントに満たない程度です。
ですので、「今年の薬価改定(の影響)は非常に大きいのではないか」など、さまざまな話をされることが多くありますが、例えば、薬価改定が非常に大きなものであったとしても、売上利益に響いてくる割合は、(売上)全体の10パーセント未満ですから、そこまでフェイタル(重大)な問題にはならないと考えています。
とは言いましても、今期の薬価改定に関しては、まだ公示がされていませんので、何とも具体的には申し上げ辛いところではありますが、例年よりも少し大きめの水準で(改定が)出てくるのではないかとは見ています。
加えてもう1点、「590億円という売上の見込み自体が問題ではないか」と私は思っています。
ROICに関しては、非常に満足しているのですが、この590億円の売上という見通しは、実を言うと、2015年に発表しました「Vision “i-111”(ビジョンアイトリプルワン)」という中長期ビジョンに乗っ取って見ると、10億円ビハインドしています。
つまり、売上のトップラインを当初の目論見どおり十分に伸ばせていないということです。ここに対しては、もう一度しっかりと投資をしていかなければならないと思っています。
この投資の内訳については、後ほどご説明しますが、その投資をある程度見込んでいる結果、利益を少し控えめに計画せざるを得ないという構造になっています。
減益の理由をまとめると、1つには薬価改定、もう1つには投資ということです。
中長期計画定量目標のローリング
とは言え、ROICを4.8パーセントという水準に上げることができるようになりました。実は2015年に作成した中長期ビジョンで見ますと、2018年11月期の目標は、売上高600億円、ROICが4パーセントでした。
ところが、この前期の着地の時点で、既に5.4パーセントと大きく上回り、今期の見込みで4.8パーセントまでいくだろうという予測を立てられました。
中期経営計画定量目標のローリング
実はまだ、3年間の中期経営計画のうち2年しか経過していないのですが、その2年の目標はある程度目処が立ったということで、ここでもう一度、3ヵ年計画をローリングして、立て直しています。
それがこちらのグラフです。既に開示済みですが、中期目標としては2020年の11月期です。3ヶ年の目標として、売上高650億円、そしてROICが7パーセント以上という水準を目指していくということを、発表しています。
ですから、今現在、2018年11月期に関しては一時的に減益となりますが、2020年の11月期には再び、最高益を更新できる水準まで戻していくことを計画しています。
中長期ビジョン Vision “i-111”
こちら2015年に策定した「Vision “i-111”」という、10年計画です。この10年計画のうち2年がちょうど終わったところで、この2年間が終わって、もう一度、3ヶ年計画を作り直しているわけです。その3ヶ年の着地が、先ほど申し上げたとおり、売上高650億円、ROIC7パーセントということです。
その後のマイルストーンとしては、2022年に(売上高)750億円の(ROIC)7パーセント。最終的なゴールとして、2025年に売上高1,000億円、ROIC10パーセントという目標に関しては、このまま変えずに継続していきたいと思っています。
当然、(各指標において)上下動は生じると思いますが、2015年に策定した「Vision “i-111”」の中では、ほぼオンラインで、順調に成長ができている最中だと感じています。
主な投資計画(3ヶ年)
今後の3ヶ年のうちに、トップラインを引き受けるための投資をするという話をしていますが、どの分野に対して投資を進めていくかについて、最後に少しトピック的にお話いたします。
大きなの投資対象としては、この3つ(医薬・FC事業、HBC事業、化学品事業)です。1つ目の医薬・FCの事業に関しては、これも昨年、既に開示していますが、新分析棟・倉庫の建設に着手している最中です。こちらは2019年に稼働を予定しています。
2つ目のHBC事業に関しては、バリューチェーン拡張のための投資をしていこうとしています。これについては、後ほど詳しくご説明します。
最後の化学品事業に関しては、半導体デバイスにおけるデファクトスタンダード(業界標準)獲得に向けたクリーンルームの増設です。これは設備投資に当たりますが、クリーンルームを増設して、治験能力を向上させることで、半導体の領域、いわゆる微細回路形成技術のところで、デファクトを取りにいくという取り組みをしていきます。
新分析棟・倉庫の建設について
1つ目にご説明した、新分析棟・倉庫の建設についてです。さまざまなことが書かれていますが、これによって何をしたいのか一言で申しますと、高薬理活性の医薬品原料の取扱です。抗がん剤や(高活性)ステロイド剤など、外側に曝露すると問題となるような、取り扱いが少し難しい医薬品原料の領域に新しく参入するため、投資をいたします。
これまでの私どもの医薬品原料ビジネスは、どちらかというと医薬品原料そのものより、添加剤が主体でした。例えば、医薬品原料のその有効成分そのものではなく、それを固めるための乳糖であったり、いわゆる賦形剤と呼ばれるようなもの、あるいは界面活性剤であったり、そのような添加剤の流通が多かったのですが、6年ほど前から方針転換をしまして、API(Active Pharmaceutical Ingredient)、医薬有効成分の領域に本腰を入れて参入するようになりました。
そして今回、そのAPIの中でも、薬理活性の高い抗がん剤やステロイド剤、一部特色のあるステロイド剤などの領域に参入するために、この分析棟へ投資をするというところです。
投資回収見込み期間は長いのですが、2019年にこちらが稼働できるようになりまして、2022年中には投資回収が終了する予定です。
バリューチェーン拡張について
2つ目に、HBC事業におけるバリューチェーンの拡張です。これも実は過去の決算説明会の中でご質問をいただくことが多く、その中でお話ししているのですが、これは3ヶ年の中で明確に行っていく1つの施策として、バリューチェーンの拡張をしていきたいと思っています。
何をするかと言うと、私どもがまだ参入できていない領域に少しずつ進出していくということです。ご覧いただいてわかるように、私どものHBC事業は、製造業がなく、工場を有していません。「ものづくり」をしていないわけです。
唯一、化粧品通販の子会社だけは、製品の企画開発をしていますので、ある意味では、ものづくりの一部を担っているとも言えるのですが、大部分は流通業で、ものづくりのところができていません。
ですから、ものづくりのところに投資をしていくことによって……ただ、いきなり「工場をオペレートします」と言っても、なかなかノウハウもありませんので、少しずつ製造業の領域に踏み込んでいくということを考えています。
具体的には、既に取り扱っているプライベートブランド製品をドラッグストアでも売っていくということに力を入れて、我々が主体的にものづくりができるような、そして、お客さまに価値を提供できるような事業に進出していくようなかたちを取りたいと思っています。
クリーンルームの増設について
ご承知かどうかわかりませんが、半導体の領域というのは、パワー半導体であるか否かに限らず、スマートフォンや車などに搭載されるものの需要が非常に増えていまして、今後も成長する市場であると見込まれています。
我々は、UBM(Under Bump Metal)という工法を持っていまして、「UBMを世界の半導体のマーケットにおける、デファクトスタンダードにしていこう」という取り組みを随分前からしています。
非常に大きな需要増が見込まれるこのUBMなのですが、(受注)案件が出てまいりましたので、これに対応するために、2019年までにクリーンルームを増設いたします。こちらは欧州向けなのですが、欧州に輸出していける体制をしっかりと整えていこうと考えています。
こちらも(新分析棟・倉庫と)同様に、2019年に稼働、2022年までには投資回収が済む予定でいます。半導体の領域は、実は、付加価値を認めていただきやすく、非常に利益率が高い業界です。売上への影響はそこまで大きくはないのですが、利益率が非常に高い商品が売れてきいますので、利益を牽引する役割になってくれるだろうと期待しています。
というわけで、(決算説明は)以上です。ご清聴ありがとうございました。