2017年3月期決算の概要
日覺昭廣氏:本日は大変お忙しいなか、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。みなさまには日頃から、当社の経営ならびに事業活動につきまして、ご理解をいただいておりますこと、改めてお礼を申し上げます。これより2017年3月期決算の概要と、2018年3月期業績見通しについてご説明を申し上げます。
初めに2017年3月期決算の概要です。2017年3月期の太枠の通期実績および、その右の通期増減の数字を中心に、ポイントのみご説明をします。
売上高が2兆265億円。前期比3.7パーセントの減収となりました。営業利益は4.9パーセントの減益の1,469億円。経常利益は4.3パーセント減益の1,437億円。当期純利益は10.3パーセント増益の994億円となり、過去最高益を更新しました。
年間配当金は前期実績から、1株当たり1円増額し、1株当たり14円を予定しています。
売上高・営業利益の推移
こちらは、過去5年の業績の内訳、売上高と営業利益そして、売上高・営業売上率の推移を示しました。
総資産・D/Eレシオ、ROA・ROE
こちらでは、左には総資産とD/Eレシオ、右にROA・ROEの推移を示しました。2017年3月末の有利子負債残高は、7,164億円と前期末比121億円増加しました。またD/Eレシオは0.7とありました。ROAは6.3パーセント。ROEは10.1パーセントとなりました。
営業外収支
営業外収支についてです。当期の営業外収支はマイナス32億円と、前期比で12億円改善しました。
営業外収益では持分法適用会社の業績が、総じて堅調に推移した結果、持分法による投資利益が増加しました。営業外費用では休止設備関連費用や、新規設備操業開始費用が増加しました。
特別損益
こちらは特別損益です。当期の特別利益は60億円で前期並みでした。特別損失は107億円と減損損失と、投資有価証券評価損の減少を主因に、前期比77億円減少しました。以上の結果、ネットの特別損益はマイナス47億円となりました。
資産・負債・純資産、フリー・キャッシュ・フロー
資産・負債・純資産等についてです。2017年3月末の資産合計は、2兆3,968億円と現金および預金、受取手形及び売掛金、有形固定資産や投資有価証券が、増加したことを主因に、前期末比1,184億円増加しました。
負債合計は支払手形および買掛金や、有利子負債が増加したことを主因に、1兆2,966億円と前期末比431億円増加しました。純資産合計は純利益の計上による、利益剰余金の増加を主因に前期末比753億円増加して、1兆1,002億円となりました。
このうち自己資本は1兆213億円で、自己資本比率は前期末比1.1ポイント上昇し、42.6パーセントとなりました。なおフリー・キャッシュ・フローはプラス387億円となりました。
セグメント別売上高・営業利益
セグメント別売上高と、営業利益の実績を示しました。通期では情報通信材料・機器、環境・エンジニアリング、その他は増収増益。プラスチック・ケミカルは減収増益。炭素繊維複合材料、ライフサイエンスは減収減益となりました。
セグメント別業績(繊維)
ここからは、セグメント別の状況をご説明します。最初は繊維です。繊維セグメントは売上高8,561億円。前期4パーセントの減収。営業利益は668億円。3.1パーセントの減益となりました。
国内では衣料用途・産業用途とも、需要が引き続き低調に推移するなかで、全般的に拡販に努めるとともに、糸綿テキスタイル/製品一貫型ビジネスの推進をはじめとする、事業の高度化や原価改善を進めることで、採算の改善に注力しました。
海外では衣料用途を中心に、東南アジアなど一部子会社の業績が、欧州や中国などにおける最終需要低迷の影響を受けました。一方、自動車関連用途向けや衛生材料向けは、総じて堅調に推移しました。
セグメント別業績(プラスチック・ケミカル)
プラスチック・ケミカルセグメントは売上高4,991億円。前期比4.2パーセントの減収。 営業利益は338億円。15パーセントの増益となりました。樹脂事業は自動車関連用途向けの出荷が、国内外とも概ね堅調に推移しました。
自動車以外の用途でも、ABS樹脂やPPS樹脂などの拡販を進めました。フィルム事業は海外では、欧米の一部用途の需要が低調でしたが、アジアなどで高付加価値品の拡販を進め、国内では包装用途向けが堅調でした。
また、多くの製品が国内外で、価格競争の影響を受けましたが、高付加価値品の拡販や原価改善に注力することで、採算の改善に努めました。
セグメント別業績(情報通信材料・機器)
情報通信材料・機器セグメントは売上高2,544億円。前期比1.3パーセントの増収。営業利益は305億円。16.7パーセントの増益となりました。
フラットパネルディスプレイ向けでは、スマートフォンやタブレット端末の関連材料は、有機EL用途向けの出荷が拡大するなど、堅調に推移しました。リチウムイオン二次電池向けバッテリーセパレーターフィルムは、需要の伸長を背景に、出荷が拡大しました。
多くの用途で価格競争の影響を受けましたが、高付加価値品の拡販や原価改善に注力することで、採算の改善に努めました。
情報通信材料・機器セグメントの売上高の詳細
情報通信材料・機器セグメントの、サブセグメントごとの売上高ならびにその構成比と、前期比の増減率を示しました。ディスプレイ材料はスマートフォンやタブレット端末の関連材料は、主要顧客の稼働好調に伴い、有機EL用途向けなどが堅調に推移しました。
電子部品・半導体・回路材料は、リチウムイオン二次電池向けのバッテリーセパレーターフィルムや、韓国子会社の高機能回路材料が堅調に推移しました。
記録材料はデータバックアップ用磁気テープ向けフィルムは堅調でしたが、熱転写向けリボン向けフィルムは低調に推移しました。機器他はIT関連機器が低調に推移しました。
セグメント別業績(炭素繊維複合材料)
炭素繊維複合材料セグメントは売上高1,616億円。前期比13.2パーセントの減収。営業利益240億円。33.6パーセントの減益となりました。航空機の最終需要は堅調に推移しましたが、サプライチェーンにおける在庫調整などを反映して、炭素繊維中間加工品(プリプレグ)の需要は弱含みで推移しました。
圧縮天然ガスタンク向けでは、原油価格下落の影響を受けて、需要が低調に推移しました。一方、風力発電翼用途は、需要の拡大を背景に出荷を拡大しました。
炭素繊維複合材料セグメントの売上高の詳細
炭素繊維複合材料セグメントの、サブセグメントごとの売上高、ならびにその構成比と、対前期比の増減率を示しています。
航空宇宙用途はサプライチェーンにおける、在庫調整などを反映して、炭素繊維中間加工品(プリプレグ)の需要は弱含みで推移しました。スポーツ用途は、海外で釣り竿や、自転車用途向けの需要が低調に推移しました。
一般産業用途は風力発電翼用途向けの出荷が拡大したものの、圧縮天然ガスタンク用途の需要は低調に推移しました。
セグメント別業績(環境・エンジニアリング)
環境・エンジニアリングセグメントは売上高1,861億円。前期比1.5パーセントの増収。営業利益は99億円。3.3パーセントの増益となりました。水処理事業は逆浸透膜などの拡販を進めましたが、日本からの輸出は円高進行の影響を受けました。
国内子会社ではエンジニアリング子会社の医薬関連プラント工事や、リチウムイオン二次電池関連機器などが堅調に推移しました。
セグメント別業績(ライフサイエンス)
ライフサイエンスセグメントは、売上高542億円。前期比3パーセントの減収。営業利益は21億円。30パーセントの減益となりました。
医薬事業は経口そう痒症改善剤「レミッチ」が、2015年に取得した効能追加承認を背景に、販売数量は堅調に推移しましたが、2016年4月の薬価改定の影響を受けました。
既存薬の「フエロン」や「ドルナー」の出荷は、代替治療薬や後発医薬品の影響を受けて、低調に推移しました。医療機器事業はダイアライザーの出荷が、国内外で堅調に推移しました。
営業利益増減要因分析
このグラフは、2017年3月期の連結営業利益が、前期に比べて76億円減益となった要因を分析したものです。増益要因としては、数量増がプラス207億円。その他費用差がプラス31億円。石化原料由来製品等の原燃料価格の下落が、プラス157億円となり、合計でプラスが396億円となりました。
一方減益要因としては、石化原料由来製品等の販売価格下落がマイナス215億円。石化原料価格の影響を受けにくい製品の価格変動(ネット)がマイナス103億円。営業費差はマイナス48億円。海外子会社の邦貨換算差はマイナス106億円となり、合計でマイナスが472億円となりました。
主要子会社収益状況
こちらは主要子会社の収益状況を示しております。東レインターナショナルは繊維事業と、炭繊維複合材料事業が低調に推移しました。東レエンジニアリングは医薬関連プラント工事および、リチウム電池二次関連機器などが堅調に推移しました。
東南アジアの子会社では為替変動の影響に加え、繊維事業は衣料用途が欧州や中国における、最終需要低迷の影響を受けました。
プラスチック・ケミカル事業は、ABS樹脂、樹脂コンパウンド、フィルムとも堅調に推移しました。中国の子会社は為替変動の影響を受けましたが、繊維事業とプラスチック・ケミカル事業とも、堅調に推移しました。
海外・フィルム事業は為替変動の影響を受けましたが、プラスチック・ケミカル事業、情報通信材料・機器事業とも、総じて堅調に推移しました。
従業員数、関係会社の異動
当期末の従業員数、および連結対象会社数ならびに、各々の増減についてはご覧のとおりです。
2018年3月期連結業績見通し
次に2018年3月期連結業績見通しについてご説明致します。2018年3月期の業績見通しについては、連結売上高2兆2,200億円。営業利益1,650億円。経常利益1,620億円。当期純利益1,000億円と致しました。
2018年3月期は中期経営課題プロジェクトAP-G2019で、設定した3つの基本戦略と5つの重点施策に乗っ取り、成長拡大投資を進めている、リチウムイオン二次電池向けバッテリーセパレーターフィルム、自動車用エアバッグ電子基布、炭繊維複合材料、アルカンターラなどの、新設増設設備によるグローバルな増販効果を発現させるとともに、高付加価値品へのシフトおよび、新用途・新顧客の開拓を推進してまいります。
また引き続きトータルコストダウン、事業脱出強化を進め、競争力強化に努めてまいります。なお、2018年3月期の年間配当金につきましては、1株当たり14円を予定しております。
セグメント別業績見通し(売上高/営業利益)
2018年3月期の、連結業績見通しをセグメント別に示しております。2018年3月期より従来のプラスチック・ケミカルセグメントと、情報通信材料・機器セグメントを廃止し、機能化成品セグメントを新設しました。
近年社会的に注目される成長分野が、多様化しているのに応じて当社グループの製品も用途がますます多様化、複雑化しているため、今後は新しいセグメント区分を設けることによって、経営戦略やリソース配分の考え方を適切に示してまいります。
なお、ここでは新セグメントに組み替えた、2017年3月期実績と2018年3月期の見通しをお示ししています。
設備投資額・減価償却費・研究開発費の推移
設備投資額・減価償却費・研究開発費の推移を示しています。それぞれ、真ん中の棒グラフが2017年3月期の実績。一番右側が2018年3月期の見通しです。2018年3月期の設備投資額は1,800億円。減価償却費は920億円。研究開発費は660億円の見通しです。
決算と業績見通しのご説明は以上です。なお10ページ以降に中期経営課題プロジェクトAP-G2016における、4つのプロジェクトの主な成果についてまとめましたので、後ほどご覧ください。私からの説明は以上です。どうもありがとうございました。