データ・通話の定額制が浸透していくだろう
質問者:毎日新聞のヨコヤマと申します。2点あります。1つは国内の話なんですけれども、「スマ放題」を発表されましたが、その後どんなお客さんがついたかですとか、状況を教えていただきたいなというのと、現在3社とも同じような料金体系になってますけども、このデータを分けあったり、通話を定額にしたりっていうものが主流になっていくと考えられているのか、この先どうなりそうかってのを教えていただきたいのが1点。
あとちょっとしつこくて恐縮なんですけれども、アメリカ市場の話で、孫さんがさっきも仰っていたように、中長期的には三つ巴がいいとしながらも、現時点ではスプリントに注力するっていうのをなぜ今のこのタイミングで判断されたのか。多分それはスプリント内部の要因もあるし、FCC(米連邦通信委員会)などの外的要因もあると思うのですが、なぜ今そう判断されたのかを、もう少し教えてください。
孫:スマ放題の進展ですけれども、スマ放題を発表して以来、今日現在は従来型の料金体系のものとスマホーダイと、両方併売をしております。併売をしておりますが、お客さんの受け入れ、契約状況で見ますと、すでに8割くらいのお客さまにスマホーダイを選択いただいている。つまり通話がし放題であるということに魅力を感じていただいて、そこをお客さんに選んでいただいているという状況があります。ですから順調に推移しているというふうに我々としては認識しております。
次に米国市場についてですけれども、我々は一度も、どこかの会社を買収するとかしないとかいうことについてはコメントをしておりません。その時点も今もコメントをしないということで、一貫して通していきたいと。まあいろいろな噂が出ておりますが、それらについては皆さまのご評価というか、想像にお任せするということになろうかと思います。
スプリントのこれからの強みは「やる気」
質問者:ウォール・ストリート・ジャーナルのネギシと申します。現状の米国市場で、全ての分野でベライゾン、AT&Tと真っ向から勝負して戦って勝つというのは難しいと思うんですけれども、そうするとピンポイントで戦っていく、もしくはゲリラ戦術を使うとか、ということが必要になってくると想像するんですが、スプリントの強みっていうのはどういうところにあって、こういう分野だったら絶対負けないとか、可能な範囲でお話いただけたらと思います。
孫:ソフトバンクがボーダフォン・ジャパンを買収したときに、皆さんがどう思われたかということです。世の中のほとんどの方が、無謀な戦いだと。なんの経験も無い、ネットワークも悪い、ブランドも、当時のソフトバンクというのは非常に弱いというか、むしろネガティブなもののほうが多かったと思いますし、特段誇るものはなにも無かった。苦戦を強いられるだろうと思われていた、というのが事実だと思います。
後から振り返ってみると、そりゃiphoneを独占販売できたからうまくいったんだよ、というふうに思われる方が多いと思いますが、実はiPhoneを手にする前から純増でNo.1になっていたということも、これまた事実ですね。つまりネットワークが悪くてもブランドが悪くても経験が無くても、やる気いっぱいということで、素早く意思決定をし、やる気いっぱいで様々な工夫をし努力をするというのが我々の好業績の結果を生んだと。利益も8倍になったというのは先ほどのチャートにもあった通りです。
ですから、スプリントでこれからどのようにソフトバンク流のカルチャーといいますか、やる気いっぱいの、ストリートファイターのようなそういう部分を持ち、やっていけるかということになるわけですが。(新CEOの)マルセロはストリートファイターそのものだと。顔を見てもそんな顔をしてますよね、なんか山賊のような(笑)。僕は最初、彼に「山賊じゃないか」と言ったんですけれども。
(会場笑)
なんかそんな顔してますでしょ? なんか街でケンカしたら強そうな。
まああの、ストリートファイターのマルセロは、0からブライトスターを世界100カ国を超えるところに卸売りをするというところへ拡大していったんですね。実際に彼がアメリカに来た当初は、ポケットに100ドルくらいしか無かった。そんな状態から、売上高1兆円くらいの会社まで作ったわけですね。そういう意味では、まさにストリートファイター。ソフトバンクとカルチャーが非常に似ているという人物であります。
ですから、彼が率いるスプリントというのは、これから非常におもしろい会社になると信じています。
SIMフリーの端末は売れない、というのが実績として出ている
質問者:フリーランスのイシカワです。先ほど孫さんはクーリングオフについて理解を示されていましたけれども、今後クーリングオフが導入されることによって、フォトフレームですとかWi-Fiルーターが売れなくなる恐れもあるのかなと思うんですけど、そのへんどうお考えなのか、というのが1点。
あとSIMロックフリーの義務化なんですけれども、孫さんはかなりSIMロック解除については否定的というか、そんな需要ないと言い切っていたと思うんですけれども、そのへんどうして考えが変わられたのか、というところを教えて下さい。
孫:クーリングオフについては、今回どのような形のルールになるのか、僕は詳細なところまでは把握しておりませんけれども、基本的な物事の考え方として消費者保護をするというのは良いことだと思うんですね。
ただ、問題は詳細に宿ることが往々にしてありますから、クーリングオフのルールが常識を離れたようなガチガチのものだったら、事実上物を販売できないということになりますので、ルールを決める方には、世の中の実態をよく見て決めていただきたいなというふうに思いますけれども。基本的な考え方からすれば、消費者保護というのは必要なものだと考えております。
SIMロック解除については、今も以前も、SIMロックを解除された高い端末をあえて欲しいというユーザがそんなに多くいるとは思えない、という考えは変わっておりません。
現にiPhoneはappleからSIMロックが解除されたものが今現在も販売されているわけです。で、ほとんどそれは売れていないわけです。つまり、わざわざ6万円も7万円も8万円も出してiPhoneを買いたいというユーザは、日本にほとんどいないというのがもう実績で出ているわけです。
何故ならば我々はiPhoneを事実上無料で、2年契約とともに提供しているわけですから、無料で手に入るiPhoneと、SIMロック解除されてSIMカードをあっちこっち出し入れしていちいちやりたい、というユーザが日本にどれだけいるのか、というと、実態としてほとんどいなかったというのが数でもう証明されているわけです。
ですからそれについては、今も昔も変わりません、と申し上げているわけです。それはiPhoneだけに限らずに、他のAndroid端末についても恐らく同じだと思います。今もすでにSIMロック解除されたAndroid端末は何機種も出ておりますが、ほとんど数は出ていない。
ただし、SIMロック解除という制度については、別に反対するものではありません、ということを申し上げているわけです。
PHS市場はこれからも一定の規模で存在し続ける
質問者:日本経済新聞のカネコと申します。2つお願いします。1つはグループの携帯事業の成長戦略ですね。まあ4-6月で見ると、PHSが再びマイナスになってきていると。旧イーモバイルのところもエリック・ガン(現イー・アクセス社長)と一緒に4Gの電波をお願いしにいったわけですけれども、旧グループで1つの申請枠、という話になっておりまして。
そうするとなかなか、電波がもらえなくて今後先行きが立ちいかなくなってくるのではないか、と思うんですが、そのあたりどのように打開されていくのか、というのを教えてください。
もう1つは行政との付き合い方の話ですけれども、孫さんも霞ヶ関ではストリートファイターとして名が知れているのかなと思うんですけれども、昨今、総務省がまたソフトバンクに対して厳しい判断をされる場面が増えてきているのかな、と思うんですよね。
去年の2.5GHzもそうですし、先ほどのSIMロック解除ですとかクーリングオフもそうですけれども、そういうところも含めて、またそろそろ孫さんが霞ヶ関で吠える番なのかなという気がしなくもないんですけれども、そのへんどうお考えになられているか、教えてください。
孫:まずPHSの件について、我々はスマホの推進者ですし、スマホを日本で一番最初に日本で一番たくさん売ってきたという自負がありますけれども、併せてですね、もう単純に喋りたいだけだ、という層があるのも事実ですね。ですから単純に喋りたいという層については、一番安く売れるという意味で、PHSの市場は今も存在しているということが言えると思います。
それから省電力ですから、電池をあまりくわないという部分がありますので、そういう意味でのMtoMの市場、これもあると思うんですよね。ですから、そんなに爆発的に成長が期待できるようなものではないけれども、もうすでに持っているネットワークですから、追加の費用がかからずに持っているネットワークが有効活用できるのであれば、その需要がある範囲においては提供していこう、ということです。
どこの国も行政は行政なりの考えをもっている
孫:次にY! mobileについてですけれども、先ほど申しましたように、ヤフーとの連携をより深めたものを先行してやっていく、という意味では……事の経緯からヤフーもしっかり応援しなくてはいけない、という気持ちでいるようですから(笑)。
より先進的に我々がテストしてみたい、いろんな機能、ヤフーとの連携でいえば、例えばヤフーのサイトを使えば使うほど、ボーナスポイントのパケットが使えるようになるとか、こういうのはY! mobileだからこそ連携をより深めてやっていく、ということが、お互いにテスト的にやりやすいと。
そこで非常にうまくいったら、ソフトバンクモバイルの本体のほうにも拡張するとかいうことも出来ますし、一方、格安スマホとの競争の位置づけとしても、Y! mobileの役割もあるしということで、それなりの存在意義はあると感じております。
次に行政についてですけれども、私の基本方針は天下りを受け入れない、というものですから、そういうなかで嬉しいと思われるのか憎らしいと思われるのか、っていう部分はありますけれども、あくまでも我々としては公明正大に言うべきことは言うし、正しいことであればもちろん受け入れるし、ということで、テーマ毎に是々非々でやっていきたいと。
私は、直接所管している行政の天下りが、直接所管している業界に下りていく、というのはいかがなものかな、というふうにかねてから思っておりますので、それについては今後もその方針でいきたい。
一方で、なんでもかんでもソフトバンクが口を尖らせて怒ってばっかりいる、というわけではなくて、内容次第で是々非々、言うべきことは言う、従うことは従う、という姿勢は今後も変わらないと思います。
質問者:ちなみに、アメリカのFCC(連邦通信委員会)やアメリカ司法省もなかなか、いけずな判断をされているかと思うんですけれども、そこはいかがでしょうか?
孫:まあどこの国も行政っていうのは行政なりの考えを持っているんだな、とは思いますけれども、あんまり余計なことをいうとまたややこしくなりますので、コメントは控えたいと思います。
質問者:ありがとうございます。
純増数、というのはもはや実態を反映していない
質問者:ブルームバーグのアマノと言います。弊社で計算したところ、4-6月の純増数が、昨年同期と比較してだいぶ減っているかなと。ソフトバンクとY! mobileを合わせた純増数は、昨年同期は94万7,000件だったのが50万8,000件と。4-6月のグループ全体ではKDDIさんのほうがソフトバンクさんより高かったかと思います。
それで、純増数に対する考え方を伺いたいんですけれども、つい3ヶ月か6ヶ月前のプレゼンでは、ソフトバンクは何年連続純増数No.1です、と いうのを孫社長も仰ってたかと思いますけれども、これは、純増数はもう追わない、という方針に変えられたんでしょうか? これまでのようにシェアを追うという方針ではなく変えられたのか、というのが1つ目。
あとは純増数に関連してですね、スプリントが純増に転換するのはだいたいいつ頃になると今時点で思われているのか、それについて教えてください。
孫:純増数でKDDIさんのほうが大きかったかどうかというのは、ちょっとそこは認識が違いますけれども、もう一度よく確認……。ん? 我が社が55万でKDDIさんが49万? ……なんて話がありますが、あとでよく確認してみていただきたいと思います。
どちらにせよですね、純増数というもののカウントのなかに、世の中の実態とあまり合わないな、というふうに感じていたのはあるわけです。例えば、Machine-to-Machineも1つの純増と数えられると。あるいは、MVNO(仮想移動体通信事業者)でほとんど利益が出ないかたちで卸しても1つの純増というふうに数えられます。
我々も例えば、「みまもりケータイ」とか「フォトビジョン」みたいなやつがありますけれども、それも1本と数えられますし。まあ各社ともに、純増の1本ってどういう意味があるのか、というのが形骸化してるな、と感じていたのは事実です。
ですから形骸化している、純増、という数に形式的にこだわるのはどうかなと思っておりましたが、各社さんともにそういう思いがあったので、結果、各社ともにそれはもう公表する意味がないな、ということで落ち着いたんだろうと思います。
一方、我々としては、そういう形式のことよりは、着実にネットワークを改善し、着実にお客様に満足してもらえるようなサービスを競争激しくやっていく、ということだと思います。
次にスプリントの純増に関してですけれども、先ほどから申してますように、今まではまず、ネットワークを改善しないとと、4月20日まではネットワークが悪くなるいっぽうといいう状況で、これはさすがにマズいぞと我々も強く思っていました。
しかし4月20日を境に急激に改善してきて、今ようやく追い付いてきたということですので、これから我々としては純増のほうに転じていきたい。何月何日くらいに純増に転じられるかというのは、やってみないとわからない。出来るだけ早くやりたいと、こういうふうに思っております。