孫さん自身は携帯料金を高いと感じるか
司会:それでは、ただいまより質疑応答の時間に入りたいと思います。ご質問のある方は挙手をお願いします。
記者:テレビ朝日のシバタと申します。国内の携帯電話料金についてお伺いしたいんですけど、先ほどプレゼンテーションの中で、アメリカと比べても世界的に優れたネットワークがかなり安く提供されているという話、あと国内の顧客のニーズに合わせて提供していくというお話があったんですけれども。
孫さんご自身は国内の携帯電話料金は高いと感じますか? 安いと感じますか?
孫正義氏(以下、孫):高いと感じるか安いと感じるかどうかは、相対的なものだと思うんですね。少なくとも、アメリカよりもはるかに優れた通信がアメリカよりもはるかに安いと。
少なくともヨーロッパの先進主要国と比べて、ネットワークは何倍もいいんではないかと思いますが、ヨーロッパの先進主要国と比べてもあまり変わらない料金で、しかしネットワークの質ははるかにいいと。しかも、iPhoneは世界一安く売られている。
そういうことを考えると、本当に高いと言い切れるのかなと疑問に感じます。
もう1つ言いますと、1人あたりの携帯に使っている費用は、数年前、特にソフトバンクがこの業界に参入する前に比べて、事実として安くなっています。
家の中で使う人が増えたということで、家計の中の比率はもしかしたら別の見方があるのかもしれませんけれども。
一方、みなさん自分のスマホを思い起こしてください。もはや、別にカメラをカバンに入れて持ち歩く必要がなくなったんではないかと。テープレコーダーもカバンに持ち歩かなくてはいいんではないかと。
目覚まし時計もいつもポケットに入っている。カレンダーも入っている。手帳も入っている。ウォークマンも入っていると。ありとあらゆる機能がスマホ1台に置き換えられたわけですね。
動画まで観れると。新聞まで読めると。雑誌まで読めると。そういう状況になった複合的なサービスをスマホ1台で全部こなしていると。そういうことを考えると他に使っていた費用がこちらに代替されるようになってきていると。
そういうメリット、サービスの内容が増えてきていると言えるのではないかと思います。
ただ一方で、もっと安いほうがいいという声があるのも十分認識しておりますので、安いほうがいいというお客様には安いメニューを用意していきたいと思いますし、より高度なサービスを求めたいというお客様には、より高度で複合的なサービスを提供できるように。
多様なお客様のニーズにそれぞれお応えできるように、しっかり品揃えしていくというのが我々の役割であると思います。
記者:国が国内の携帯電話料金に関して議論を進めているということに関しては、どう感じてらっしゃいますでしょうか?
孫:まあ、真摯に受け止めるという……大人の発言を(笑)。以前の私であれば、カーッと なっていろんなことを言い返すという状況ですが、最近大人になりました孫正義としては、真摯に受け止めてしっかりとお聞きしますということでいきたいと思います。
記者:ありがとうございました。
ニケシュ・アローラ氏を迎えたことによる変化
記者:朝日新聞のオオシマです。孫さん最後のほうで、盆栽のように水をあたえて投資してきたものが、ニケシュさんが来て変わったというお話だったんですけど、具体的にどのように変わったんでしょうか?
孫:以前であれば、投資すると言っても、私が海外に飛び歩いて、そこで見つけて交渉して投資をするという時間的な余裕もないし、心の余裕もなかったと。
特に通信を開始してからはそういう状況でしたので、私のところに情報が飛んでくるもの、私が見つけて呼んで来てもらうもの、それで話ができたところに投資をするという部分がありました。まあ、幸運な事例がいくつかありました。
しかしニケシュが来てからは、彼が世界中に飛び歩いてくれると。そして、相手の会社に行って交渉できると。そしてそこにいる既存の株主を説得して、我々の投資を受けてもらうことができると。
また、彼が世界的にも優れた有能な経営陣を彼の配下に急激に揃えています。ですからプロフェッショナルなチームとして、それぞれの専門分野を分析して、意思決定が行えるようになったと。
重要な意思決定は私も継続して加わって、ニケシュのほうからも投資の案件ごとに、一緒に検討に加わってほしいということで、毎日のように電話やメールでやりとりしたり、直接会ったりしてやっておりますので、継続性は保っておりますけど、より深く、広く、早く、専門的にやれるようになったという状況ではないかと思います。
記者:チームというのはどのくらいの人員でやっているんでしょうか? ちょうどニケシュさんが来た時に矢継ぎ早にsnapdealとかに投資されたと思うんですが、ちょっと最近そのようなアナウンスを受けることがないような印象を受けるんですけれども。今はどういうふうにやっているんでしょうか?
孫:今現在、約10名ぐらい。非常に優れた経営陣が加わってきてるということであります。
純増数から利益率の重視へ
記者:東洋経済のヤマダです。国内の携帯の契約数が39,000件ということで。一方でスプリントのほうが550,000万件と桁ひとつ多いポストペイドですけど、国内もマルセロに任せちゃったほうがいいんじゃないかと。
孫:(笑)。
記者:まあそれは冗談ですけど、国内の39,000件はYモバイルを含んでますよね。Yモバイルを覗くと第1四半期の20,000件より厳しいんじゃないかと想像するんですけど、その点はいかがでしょうか?
孫:まあ国内は3社ともにたいした数じゃないんですよね。以前は我々は純増No.1という数にこだわってましたので、とにかく数ありきということで、見守り携帯とか、デジタルフォトフレームとか、細々としたものをいっぱいつくって、いっぱい売って、それも全部1個に数えるということをやっておりましたので、数はそれなりにたくさんありましたけれども、利益としての貢献は小さいわけですね。
ですから、今はそういう数ありきということではなくて、中身にこだわってやっていっているということが1つ。もう1つはイーモバイルとか、我々のグループでWILLCOMとかありますけれども、そちらに携帯以前のPHSのお客さんだとか、あるいはデータ端末とか、そういうようなお客さんも数に含まれています。
これは解約という形で減っていくわけですね。これは子供もお年寄りもスマホということになってきていますので、過去に細々売ったものがそちらに切り替わっていますので、多い数のところがベースとして解約になってきますよね。
それが1つのマイナス作用として、数の上では効いてくると。利益では先ほど言いましたように、増益が続いておりますので、収益としてはより濃い内容になってきてますけど、数合わせのようなことは最近はしていないというような状況です。
記者:2点目はスプリントのことなんですけど、スプリントのほうにご自宅を建てられたという報道がありましたけれども、これどんな意味があるのかというのはプライベートなことなんでお答えいただかなくてもいいんですけど。
プリペイドとポストペイドで、プリペイドの減りが30万件レベルで結構大きくて、中期を見ますと、プリペイドを一定に契約してた人はポストのほうに含めて開示していると。これって結構大きかったのか、そんなに大きくないのか。
孫:プリペイドのお客さんの中にも、ずっと払い続けていて非常にいいお客さんというのがいますから、そういう人たちはポストペイドに誘導することによって、さらに利益率が上がる、解約率が減るということがありますので、一部そういうふうに促してきているというのはありますね。
他社もそういう努力をしているわけですけれども、スプリントはあんまりやってこなかったと。それを最近やるようになったというのは好転しているという。
もう1つは、プリペイドはかなり価格競争が激しくなっておりますので、これも数合わせばかりするんではなくて、収益のほうを重視しているという点が若干異なっているということですね。
スプリントの好転の兆し
記者:スプリントのほうでお聞きしたいんですけど、解約される方が多いとか、端末代金の回収ができないというお話をされたと思うんですけど、あまり日本で馴染みのないことだと思うので、もう少しくわしくお聞かせいただきたいのと。
あとはスプリントの状況で先が見えてきたというお話をされた中で、Yahoo! BBのときに光が見えなくて大変だったというお話をされたと思うんですけど、ボーダフォンの買収の時には似たようなことがあったんでしょうか?
孫:まずスプリントのほうはサブプライムのお客さんと、プライムのお客さんと、大きく分けて2つに分かれていると。
アメリカで住宅ローンのサブプライム問題ということで、払ってくれない客層に過剰に住宅ローンの貸付をしたと。結果、アメリカの債券市場が非常に悪化したと。これが経済悪化の引き金になったという問題がありましたよね。
同じように携帯の中にも、お金を払ってくれないような、サブプライムの客層というのがあるわけですね。
そこにスプリントの顧客獲得がかなりいきつつあったので、これは目先の数合わせにはいいんですけど、あとでものすごくマイナスに効いてくるわけですね。それをバンと切り替えたと。
これは非常に重要な部分で勇気のいることなんですね。目先の数が落ちますから。でも、マルセロは勇気を持って真っ先にそれをやったと。それが今好転してきているきっかけになってきているというところがあります。
Yahoo! BBを開始したときの最初は我々ネットワークのインフラ事業というのは、創業以来初めての経験だったんですね。
しかも2000年、2001年というのはネットバブルが崩壊して、世界中が大変な時期。その時期に我々も株価が100分の1まで下がって、経営的に相当苦しいときに、当時日本で一番大きな会社NTTさんに競争を仕掛けると。まあ無謀な戦いを挑んだわけですね。
本当に倒産するかもしれないという危機を味わって、トンネルの先が見えない。私も相当毛が抜けたんじゃないかと思うんですけど(笑)。本当に苦しんだと。でも3年目くらいで、トンネルの先の光が見えたと。
そこから5年目くらいで急激に黒字になってきたわけですけど。でもまだ赤字は終わっていないというのが、今のスプリントですね。赤字はまだ終わっていないけど、解決の方法・設計が全部見えて、光がはっきりと見えたと。
あそこに歩いて行けば明るい世界が待っているという、希望に満ちあふれた心がハイな時期が今の私であります。
PHSのサービスいつまで続けるのか
記者:もう一点、前段でWILLCOM、PHSのお話をされていたので教えていただきたいんですけれども。この前、新製品発表会の時に宮内さんが「PHSは今後シュリンクしていく」というお話をされていたと思うんですれども、そういう理解でズレはないでしょうか?
孫:時代がPHSから徐々にスマホに移っていっているというのは事実だと思います。
一方でですね、今でもPHSが大好きだと、安いから、簡単だから、ポケットに軽く入るからというのでそれを好んでいるお客さんもまだたくさんいますし。
特にMtoM、エレベーターの中にPHSが入っているとか、ガスのメーターのところにPHSのチップが入っていて、それで通信でメーターの測定を行っておりますので、そういうようなサービスがまだ継続しているので、これはこれでお客様の要望、需要があるというところで、しっかりとサービスを続けなければいけないなというのはありますね。
記者:すぐ停波の話が出てくるということではないということですか?
孫:何事にもサービスには終わりがありますから、検討は常に行っているということではあります。
記者:BSジャパン日経モーニングプラスのエノキドと申します。よろしくお願いいたします。まず先に確認したいんですけれど、決算発表説明会にアローラさんがいらっしゃるのは初めてでありますか?
孫:2回目。
記者:2回目ですか、わかりました。ありがとうございます。アローラさんがソフトバンクに参画して、1年ほどが経ちましたけれども、今年6月の株主総会で孫社長は「後継者の筆頭候補だ」ともおっしゃっておりました。今日、ニケシュ・アローラさんいらっしゃってますけど、その思いというのはさらに強くなっているんでしょうか? いかがでしょう?
孫:はい。やっぱりニケシュが来る前と来てからでは、私の心の持ちようが全く違いますね。
創業以来、後継者問題どうするんだというのは常に頭の中の重しになってましたし、一番重要な課題だと思ってました。
そういう意味では、バトンタッチのパスが見えてるというのは、私にとってのものすごい安心感になっていると思います。
記者:もう一点お願いします。第一四半期の決算のときに、株価の水準についてご質問させていただきました。
おそらくその時、7,000円前後の株価だったときに「割安だ」と孫さんおっしゃっていたんですけれども、9月下旬にそこから更に株価下落する場面がありました。今また戻してはおりますけども、今の株価水準について、教えてください。
孫:「割安だ」というふうに思いますね。
記者:さらに買い増していく、そんなご予定も?
孫:本当に割安だと思っているということです。
記者:割安だと思われるその理由を教えて下さい。
孫:我々の実力、潜在能力、そして今現在持っている企業のグループの価値、それの足し算をすると、それに対するディスカウントのギャップが相当あると思います。
記者:ありがとうございました。