2027年3月期第1四半期決算説明
出光興産、1Qは燃料油のプラスタイムラグや海外トレーディング好調により増益 5月公表通期業績予想に対して堅調に進捗
事業戦略

坂田貴志氏(以下、坂田):取締役常務執行役員CFOの坂田です。本日はご多忙の中、当社の第1四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。また、日頃より当社の事業活動にご理解とご支援を賜り、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
さっそくスライドに沿ってご説明します。決算に先立ち、5月に公表した中期計画について、その戦略のさらなる詳細と進捗状況をご説明します。
中期経営計画では、3つのテーマ「GRIT」「GROWTH」「CNX」を掲げています。「GRIT」は既存事業の深化、「GROWTH」は成長事業の創出、「CNX」は低炭素・脱炭素事業への挑戦を意味しています。
GRIT “既存事業の深化”

「GRIT」ではスライドに記載のとおり、既存事業のバリューチェーン全般に関わるさまざまな課題に取り組み、2030年までに1,100億円を積み上げる計画です。
本日は、この中から赤枠で囲っている製油所・事業所の安全安定操業にフォーカスしてご説明します。
製油所・事業所・精製会社の安全安定操業の取り組み進捗 1/2

製油所の稼働率向上は、燃料油セグメントの収支構造の中で最も重要な要素です。稼働率は生産数量に直結しており、生産数量が十分に確保できない場合、主にガソリンの輸出量が減少すると同時に、ジェット燃料などの輸入量が増加し、収益機会を大きく損なう結果となります。
実際に前中計期間では、出光グループの稼働が不安定だったため、輸出ができなかったことによる機会損失も含めて、相当規模の不稼働由来の損失があったと認識しています。稼働率を改善することで、2030年度には2025年度比で200億円から300億円の利益改善を実現したいと考えています。
製油所・事業所・精製会社の安全安定操業の取り組み進捗 2/2

安定操業を加速・高度化する施策として、部品検査におけるAI画像診断などのデジタル技術の活用、設備更新サイクルの短期化、重要設備の冗長性向上投資といった取り組みに加え、さまざまな施策を通じて現場力を強化していきます。
これにより、前中計期間では86パーセントであった平均稼働率を、90パーセントまで引き上げることを目指します。2026年度第1四半期の定期修繕を除く稼働率は、依然として84パーセントにとどまっています。引き続き、活動を徹底していきたいと考えています。
GROWTH “成長事業の創出”

「GROWTH」では、スライドのとおり、4つの重点施策を展開し、2030年度までに600億円の利益を積み上げていく計画です。本日は赤枠で囲っている「更なるグローバル展開」について説明します。
燃料油トレーディング事業の更なる強化

出光の海外燃料油事業は、1977年にスタートし、IIAグループのもと、シンガポール、豪州、北米に拠点を構え、環太平洋地域で約50年にわたりトレーディング事業を展開してきました。
この事業の特徴は、国内製油所からの輸出や輸入の取り次ぎという需給調整にとどまらず、海外市場の歪みを捉えたオフショア間でのトレーディングを積極的に展開している点にあります。
現在の取扱数量は年間約4,000万キロリットル、売上高は約3兆5,000億円、利益はコンスタントに300億円から400億円を上げています。
今後は供給および販売オプションをさらに強化するための戦略投資を行い、このトレーディング事業をさらに拡大させていきたいと考えています。
インド・中東・アフリカ(IMEA)事業戦略

現在の中期経営計画では、環太平洋地域に加え、インド・中東・アフリカでの事業拡大を目指しています。これらの地域は人口増加、都市化、所得水準の向上を背景に、エネルギーや素材需要の拡大が見込まれ、当社にとって新たな成長ドライバーになり得ると考えています。
これらの地域には、すでに潤滑油や燃料油で一定の基盤を築いていますが、さらに高機能アスファルト、農薬、機能性飼料といった新規ビジネスの進出を検討しています。
また、事業横断的なビジネス展開を推進するため、今年7月にインド・中東・アフリカ事業推進室という組織を新たに立ち上げました。収益規模としては、2030年に100億円の収益を目指しています。
LNG事業戦略

LNGについてです。LNGはAIやデータセンター関連産業の成長に伴う電力需要の増大が見込まれるとともに、低・脱炭素に向けた現実解としての評価が高まっています。
当社は石油から石炭まで比較的幅広いエネルギー事業ポートフォリオを有していますが、LNGはこれまでいわゆるミッシングピースでした。このたび新たにLNG事業推進室を設立し、当該分野への本格的な参入を図っています。
そのプロセスとして、まずは豊富な投資実績を有するMidOcean Energy社への参画を通じ知見を獲得し、次に当社の強みを活かせる個別事業領域で事業参画を推進したいと考えています。2030年度の目標利益規模は100億円以上を目指し、具体的には2026年度6月に予定している出資額5億ドルのうち、すでに2億5,000万ドルを実行済みです。
その他 GROWTH & CNXの進捗 1/2

固体電解質についてはすでに公表しているように、中間原料である硫化リチウム製造装置および全固体リチウムイオン二次電池の材料となる固体電解質の大型パイロット装置の建設に着手しています。
硫化リチウムの製造装置は2027年6月、固体電解質の大型パイロット装置も2027年度中に完工予定です。車載用途での実用化は2027年度から2028年度で変更はありません。
これらに加えて、ドローンやヒューマノイドなど非車載領域での取り組みも並行して検討しています。
その他 GROWTH & CNXの進捗 2/2

その他の「GROWTH」および「CNX」の案件については、第1四半期に2件公表しましたので、ここで報告します。
まず、宇宙PVについてです。こちらはJAXAが運営する「宇宙戦略基金」において、当社が提案した「宇宙用CIGS太陽電池の高効率化および量産技術開発」が採択され、本事業へ最大30億円の補助金が交付されることが決定しています。また、現在ベンチプラントを建設中です。
ケミカルリサイクル事業については、本年4月に使用済みプラスチックを原料とする油化ケミカルリサイクル設備の1号機が商業運転に入っています。さらに、今後の需要拡大を見据え、2号機の建設に向けた基本設計の検討をすでに開始しています。
課題事業の進捗 1/2

課題事業の進捗についてお話しします。ニソン製油所に関しては、ホルムズ海峡封鎖後も高稼働を維持しており、好調なシンガポール市況やプラスのタイムラグ影響を背景に、今四半期では最終黒字を計上しました。
また、中東情勢の悪化により一時中断していた劣後ローンの単利化に向けたパートナー間での協議も再開し、2026年度中には完了する見込みです。
IFRS移行に関しては、出資金や劣後ローンに加え、簿外での完工保証もすでに引当が完了しています。したがって、今後NSRPが完工保証に依存せず自力で返済を行った場合には、当社の持分法投資益として計上されることになります。
課題事業の進捗 2/2

その他課題事業の改善進捗についてです。基礎化学品事業の再編については、これまでもご報告のとおり、千葉地区エチレン装置の三井化学との集約をすでに合意しています。
また、プライムポリマー社のポリオレフィン事業と、住友化学の国内ポリプロピレン事業およびLLDPE事業の統合については、2027年4月1日の完了に向けて順調です。
次に、電力・再生可能エネルギー事業に関して、北米の電力事業ではリストラクチャリングを推進中です。
その他のダイベストメント案件としては、リハビリ型デイサービス事業を新規事業として運営していたQLCプロデュース社を、株式会社トーカイに売却しています。
以上が、中期計画の詳細および進捗についてのご説明です。
中東情勢への対応状況と収支影響

第1四半期の決算についてご説明します。まず、中東情勢への対応状況です。原油の調達においては、ホルムズ海峡を経由しない中東地域、具体的にはUAEのフジャイラ港や紅海側のヤンブー港、さらには北米を中心に調達を行っています。
また、石油化学原料であるナフサについても、アジア、北米、南米、ヨーロッパなどさまざまな地域から代替調達を進めています。
製油所は前年同期と同水準の稼働を継続しており、石油化学工場でも国内コンビナートの需要に応じた生産を維持しています。
販売面では、先ほどご説明した代替調達を含め、安定供給に必要な追加コストについて価格への転嫁を進めています。第1四半期は国内供給を優先し、燃料油の輸出は限定的でしたが、原油の代替調達と安定稼働が継続できているため、第2四半期以降は輸出を順次再開していきます。
続いて、第1四半期の中東情勢による収支影響についてご説明します。中東情勢の悪化により、滞船の発生や輸送日数の増加が生じ、通常よりもタイムラグが長期化しています。その結果、情勢悪化前の2月までに購入した安価な原油の処理比率が高まっています。
この影響で、大きなプラスのタイムラグが発生し、前年同期比で大きな増益となりました。ただし、この一時的なタイムラグを除くと、実質的には前年同期並みの水準であり、業績への影響は概ねニュートラルだったと考えています。
2026年度第1四半期 決算ハイライト

決算数値のハイライトです。スライドは在庫評価損益の影響を除いた実態ベースの利益を示しています。
上段には前年同期の第1四半期との比較が記載されています。先ほど触れた燃料油事業におけるプラスのタイムラグや好調な海外トレーディングにより、金融費用を除いた税引前利益は前年同期比で940億円の増益、当期純利益は約412億円の増益となっています。
税引前利益ベースでのタイムラグの影響は、前年同期比で987億円のプラスとなっています。この影響を除けば、実質的には前年同期並みであったと考えられます。
また、下段に記載のとおり、第1四半期の実績は5月に公表した通期業績予想をすでに上回っています。ただし、先ほどご説明したように、第1四半期の増益要因はほぼプラスのタイムラグの影響によるものです。
一方、5月に公表したガイドラインで想定したとおり、年度末にかけて原油価格が中東情勢の悪化前の水準である65ドル程度まで下落した場合、第2四半期以降は大きなマイナスのタイムラグが発生することになります。
中東情勢の先行きは依然として不透明であり、それに伴う原油価格も大きく変動する可能性があるため、現時点では業績予想を修正しない方針です。
主要指標

事業環境およびセグメント別の状況についてご説明します。スライドは当社の事業環境を示す主要指標である、原油価格、石炭価格、為替の推移をまとめたものです。グレーの線が2025年の実績であり、赤の線が2026年の実績となります。
まず、原油価格についてです。3月には平均129ドルまで急騰した原油価格が、7月に入るとOPECプラスによる増産発表、米国とイランの停戦合意、ホルムズ海峡の全面開放の表明などを受け、105ドルまで下落しています。
その後、米国とイランの緊張が高まる局面では原油価格が何度か上昇しましたが、5月半ばには米国による対イラン攻撃の一時停止や和平に関する暫定合意を受け、6月にかけて急速に下落しました。
この結果、4月から6月までの平均価格は96.1ドルとなり、前年同期比で29.2ドルの上昇となっています。
次にスライドの右側の為替についてです。4月、5月は日米金利差の拡大や中東情勢の悪化などを背景に円安ドル高が進行しました。6月に入ると、米国の雇用統計をはじめとする堅調な経済指標を受け、円安ドル高がさらに進みました。
この結果、4月から6月までの平均為替レートは1ドル159.5円となり、前年同期比では14.9円の円安となっています。
最後に、中央に記載した豪州一般炭の価格についてです。石炭事業は暦年決算のため、1月から3月までが第1四半期となります。110ドル前後で推移していた石炭価格は、インドネシアにおける生産規制に伴う供給の引き下がり、さらに米国とイランの衝突によるLNG価格の高騰を背景に、代替燃料としての石炭需要が高まったことで急騰しています。
この結果、1月から3月までの平均価格は119.6ドルとなり、前年同期比で15ドルほど高い水準となっています。
決算概要

決算概要です。原油や石炭、為替の状況については先ほどご説明しましたので、ここでは割愛します。
第1四半期の売上収益は2兆2,718億円で、前年同期比では4,360億円の増収となりました。主な要因は、原油価格の上昇と円安ドル高です。
在庫影響を含む金融費用を除いた税引前利益は3,226億円で、前年同期比では3,111億円の増益となりました。在庫影響を除くベースでは1,561億円で、前年同期比では940億円の増益となっています。
増益の主な要因としては、原油価格の上昇に伴う在庫評価損益の改善2,171億円と、プラスのタイムラグ影響987億円です。いずれも市況の変動による一時的な要因と考えています。
当期利益についても同様に、在庫影響を含むベースでは2,175億円で、前年同期比では1,902億円の増益、在庫影響を除くベースでは1,035億円で、前年同期比では412億円の増益となりました。
セグメント別情報

スライドは金融費用を除いた税引前利益について、セグメント別に前年同期と比較したものです。前年同期比で940億円の増益となっていますが、その要因はこのチャートにあるとおり、燃料油セグメントによるものです。次のスライドで詳細をご説明します。
セグメント別情報

スライドの表は、各セグメントにおける前年同期比の増益要因を項目別に分解したものです。まず、燃料油セグメントでは987億円のプラスで、増益要因の大部分はタイムラグの影響によるものです。
前年同期は原油価格が下落した局面であったため、280億円のマイナスのタイムラグ影響が発生していましたが、当第1四半期では原油価格が上昇したことで、707億円のプラスのタイムラグ影響が生じています。その結果、前年同期比では987億円の増益要因となっています。
海外トレーディングについては、原油および製品価格が大きく変動する市場環境を背景に、158億円の増益となっています。また、製品輸出入とは、海外市況と連動した国内向けの販売で、主にジェット燃料を含んだものです。海外市況の上昇により、132億円の増益となりました。
一方、減益要因としては、需要の減少に伴う販売数量の減少による57億円、さらに原油価格の上昇に伴う自家燃料コストの増加などにより、210億円のマイナス影響がありました。ただし、燃料油事業全体では前年同期比955億円の増益となっています。
次に、基礎化学品セグメントについてです。全体で前年同期比21億円の増益となりました。国内コンビナートユーザーの需要減はあったものの、アロマ市況の改善やプラスの在庫影響などにより、全体では増益となっています。
高機能材セグメントについて、機能化学はナフサ価格の上昇を背景に、保有在庫価格と販売価格のスプレッドが拡大したことで増益となりました。一方、潤滑油は、前年同期にタイの子会社再編に伴う段階取得利益63億円を計上していた反動がマイナス要因となっています。
この結果、高機能材セグメント全体では前年同期比で27億円の減益となりました。
電力・再生可能エネルギーセグメントは前年同期比で23億円の減益となりました。主な要因は、主たる電源である東亜石油において定期修繕および設備トラブルの影響があったためです。事業全体で減益となりました。
資源セグメントは前年同期比で60億円の増益となっています。主な要因は、生産中のベトナムの石油およびガス田における生産量の増加です。
財務状況

バランスシートの状況についてご説明します。総資産は中東情勢への対応に伴う原油在庫の増加などにより、前年同期比で7,877億円増加し、6兆570億円となりました。
ネット有利子負債についても、同様の理由による運転資本需要の増加により、前期末比で4,132億円増加し、1兆9,188億円となっています。
主な財務指標については、スライドの右下に記載のとおり、ネットDEレシオは1.17倍、自己資本比率は27.2パーセントとなっています。
感応度

中東情勢の先行きがいまだ不透明である中、原油価格や為替が大きく変動する可能性があるため、第2四半期以降の主要前提が変動した場合の税引前利益への感応度をスライドに示しています。
7月以降、仮に原油価格が1バレルあたり10ドル上昇し、さらに為替が1ドルあたり5円円安となった場合、在庫影響を除く税引前利益は200億円、在庫影響を含むベースでは1,050億円の増益影響となります。
私からの説明は以上です。
新着ログ
「石油・石炭製品」のログ





