エスイー、工事進捗の影響でやや苦戦も公表予想値は変更無し 「未来に向けた種まき」継続で中長期成長を狙う
目次

宮原一郎氏(以下、宮原):株式会社エスイー代表取締役社長の宮原です。11月7日に公表した2026年3月期中間期決算についてご説明します。よろしくお願いします。
本日はスライドの目次のとおり、2026年3月期中間期の連結決算実績、セグメント別の状況、中期経営計画の進捗状況についてご説明します。
1-1.当中間連結決算実績サマリー(前年同期比)

当中間連結決算の実績サマリーです。2025年度中間期の連結損益実績は、2024年度との比較で減収減益となりました。
売上高は108億1百万円となり、前年同期比で10億51百万円の減収となりました。この上半期において、建設用資機材の製造・販売事業は、大型案件が前年度後半からの端境期にあたりました。また、建築用資材製造・販売事業では、工事の遅延や出荷減少が主な要因となっています。
売上総利益は、前年同期比で2億45百万円減の29億87百万円となりました。上半期における営業利益以下の各利益項目は、販管費の圧縮に努めたものの、研究開発部門の人件費や経費が大幅に増加したため、前年同期比で大きく減益となりました。
1-2.当中間連結決算実績サマリー(営業利益増減)

スライドのグラフは、営業利益における前年同期との増減要因を示しています。グラフの左側には、前年度中間期の営業利益2億88百万円が示されています。
要因①として、大型案件の剥落や災害対応案件の減少などにより、建設用資機材の製造・販売事業の粗利益が2億25百万円の減少となりました。要因②は建築用資材の製造・販売事業で工事遅延の影響が大きく、こちらでも32百万円の減少がありました。
要因③は、建設コンサルタント事業および補修・補強工事業における粗利益の向上による増益です。要因④として販管費の削減も増益要因となり、③と④を合わせて1億35百万円程度の増益要因となりました。
その結果、研究開発部門を除いた営業利益は、グラフに緑色で示したとおり1億50百万円となります。今年度中間期の営業利益は、右側の要因⑥として、同部門の人件費・経費が1億94百万円増加したことにより、マイナス43百万円となりました。
1-3.当中間連結決算実績サマリー(公表予想比)

中間期時点の連結決算実績を通期の公表予想値に対する進捗状況としてグラフ化し、前年度との対比を示したものです。青色のグラフのとおり、通期売上高の公表予想値は265億円と、前年度比で増収を目指していますが、中間期時点での進捗はやや苦戦しています。一方で、利益水準については販管費のズレ等が影響し、予想を上回る進捗を見せています。
売上高の達成については、下期の工事の進捗状況やESCON事業関連の実施工案件の遅れ、さらに能登震災復興関連の進捗により多少流動的ではありますが、引き続き通期予想値を目指して取り組んでいます。
営業利益以下については、研究開発部門の人件費や経費による変動はあるものの、現時点では公表予想値の達成が十分に見込まれると考えています。
1-4.連結貸借対照表サマリー

連結貸借対照表です。今中間期末の資産合計は231億63百万円で、前年度末に比べて23億7百万円減少しました。減少要因は、現預金、受取手形、売掛金などの減少によるものです。
負債合計は123億62百万円で、前年度末に比べ18億86百万円減少しました。
純資産合計は108億円で、前年度末に比べ4億20百万円減少しています。純資産は配当の支払いなどにより減少しましたが、借入金の返済を進めて有利子負債が減少したことで自己資本比率が上昇し、D/Eレシオも改善しました。
1-5.キャッシュフローの状況

キャッシュ・フローの状況です。営業キャッシュ・フローは5億24百万円で、前年同期比で2億48百万円の増加となりました。主な要因は売上債権などの減少です。
投資キャッシュ・フローは、研究開発関連施設や工場の設備などへの固定資産投資を進めた結果マイナス5億43百万円となりました。これにより、フリーキャッシュ・フローは若干のマイナスとなっています。
財務キャッシュ・フローは、長期借入金の返済や配当金の支払いを含めてマイナス11億50百万円となりました。この投資の加速と借入金の返済により、当中間期末の現金及び現金同等物の残高は37億9百万円となり、前年同期比で2億40百万円減少しました。
1-6.株主還元(配当予想)

株主還元および配当についてです。配当予想は1株当たり13円から変更していません。現行の中期経営計画における株主還元方針は、直接的な利益還元である配当金と中長期的な株価上昇によるトータルリターンを目指すものです。
配当金については、長期安定配当を目指し、株主資本配当率(DOE)3.5パーセント以上を目安としています。スライドの表のとおり、昨年度実績でDOEは3.55パーセントとなりました。今期通期の公表予想値で試算した場合、1株13円とすると、DOEは3.67パーセントとなります。
配当性向については、大きな変動が生じていることがご覧いただけるかと思います。
2-1.セグメント別増減(前年同期比)

セグメント別の状況についてご説明します。スライド上段が売上高、下段が営業利益のグラフで、それぞれをセグメント別に前年同期比の増減で表しています。
売上高と営業利益ともに、建設用資機材の製造・販売事業と建築用資材の製造・販売事業の両セグメントが前年同期比で減少しました。また、各セグメントに帰属しない研究開発部門の人件費・経費が前年同期比で1億94百万円増加したことで、営業利益が押し下げられています。
2-2.建設用資機材の製造・販売事業

建設用資機材の製造・販売事業は、前年同期比で減収減益となりました。
ケーブル製品分野については、前年下期から大型案件の端境期に入っているとお伝えしました。また、災害復興案件が一段落し、一時的に需要が減少しています。コンクリート製品分野では、工事量の減少や酷暑による工事遅延、出荷遅れが顕著に表れています。営業利益においては減収が影響し、中間期では前期比で大きく減益となりました。
公表予想値では、需要面での良好な環境を見込んだ増収、経費増加を見込んだ減益、すなわち増収減益を予想としていました。現時点では予想値の変更は行わないものの、売上高は下期に若干の苦戦が予想されています。
能登震災復興の進捗に注視しながら、通期予想値の達成に向けて注力していきます。営業利益は、販管費などの圧縮余地が相当程度あるため、予想値の達成は可能と考えています。
2-3.建築用資材の製造・販売事業

建築用資材の製造・販売事業は、前年同期比で減収減益となりました。
建築金物分野では、天井の吊りボルトを代表とする内装関連の需要が縮小したままで、回復には至っていません。仮設部材の型枠のセパレーターなどの仮設関連建材は、酷暑や労働時間規制による施工量の減少に影響を受けました。鉄骨工事分野でも工事遅れが顕著で、減収減益を余儀なくされています。
下期も、首都圏や大都市圏の再開発を中心とした案件が継続する見込みですが、競争環境は依然として厳しい状況です。その中で、価格転嫁を含めた選別受注に取り組み、予想値達成に向けた進捗を図りたいと考えています。
2-4.建設コンサルタント事業

建設コンサルタント事業です。第1四半期は前期からの繰越案件もあり、非常に好調に推移しました。一方、第2四半期に入って複数案件で工期の延長が発生し、案件の消化が減速しました。これにより、売上高は前期比で若干の減収となりましたが、利益面では利益率の高い案件が貢献した結果、昨年同期の営業損失に対して今期は若干の増益となる見込みです。
JICA関連以外の案件受注の強化や海外のコンサルとの協業を目指していますが、まだ道半ばと言わざるを得ません。今期の収益にどこまで貢献できるかは未知数です。受注残の確実な消化を進め、今期の黒字基調を必達目標としています。
2-5.補修・補強工事業

補修・補強工事業は、国土強靱化の追い風を受けて受注環境が引き続き良好に推移しており、増収増益となっています。ただし、案件の規模縮小および競争激化により、利益率は若干低下傾向にあります。
公表予想値については、九州を中心とした西日本地区のNEXCOや各自治体が発注する案件の減少や小型化を予想しており、当初は減収減益を見込んでいました。その意味では達成は十分に可能だと考えています。
3-1.中期経営計画(2023-2025) の位置付け

中期経営計画の進捗状況についてご報告します。現行の中期経営計画(2023-2025)は、今年度が3年目で最終年度にあたり、現在その前半が終了したところです。当グループは、創業当初から技術とエンジニアリングを核に、社会インフラへ貢献するメーカーとして成長してきた歴史があります。
当グループが目指す中長期「2030ビジョン」のあるべき姿を実現するために、今回の中期経営計画の3年間は、既存事業の基盤を盤石化すると同時に、未来に向けた種まきをする期間として位置づけていました。
その前の中期経営計画(2020-2022)においては、成長投資を目指していましたが、ちょうどコロナ禍の中で十分に実行することができませんでした。これを踏まえ、現行の中期経営計画では、この3年間に戦略的な資源投入を加速することに注力してきました。
来年度以降の中期経営計画の3年間を経て、2030年における強化された既存事業基盤の成長、および既存とは異なる収益基盤の成長を実現することで、当グループが目指す「ありたい姿」を実現したいと考えています。
3-2.成長のイメージ

スライドの図は成長のイメージを示しています。
「2030ビジョン」における私たちのありたい姿とは、気候変動や自然災害、インフラの老朽化、少子高齢化、地域間の格差といった深刻な社会課題に対し、当社の技術・エンジニアリングをさらに発展させ、課題解決と新たな価値創造で幅広く貢献する企業となることです。
強靱な国土・インフラの構築を通じてサステナブルな社会基盤を作ることに、引き続き貢献していきたいと考えています。そして、スライドの図に青色で示した既存事業分野の安定成長を目指します。
その上で、未来への種まきとして資源投入を強化している発電事業等の分野では、次期中期計画期間である2026年度から2028年度にかけて、大きな成長を目指していく方針です。
3-3.中期経営計画(2023-2025)の概観(計数・施策)

現行の中期経営計画の計数および施策面の概要です。今年度は3年間の中期経営計画の最終年度にあたりますが、計数面や施策面の基本的な構造は変更していません。
計数面を牽引する建設用資機材については、国土強靱化やインフラの老朽化といった背景があるため、引き続き良好な環境が続くと考えています。ただし、今年度のように施工現場の工事キャパシティや進捗状況に大きく左右される面も避けられません。
売上の急拡大は事業の性格上難しいため、当分野では事業の土台を盤石にし、安定的な成長を目指しています。このために内部の質的改革を進めており、こちらはスライドの下部に記載した「既存事業の土台固め」に該当します。
一方、上部に記載した「未来にむけた種まき」については、スライドに示した施策を進めており、一部で今年度中の収益化を見込んでいます。また、ESCON事業などで進捗の遅れが若干出始めています。
人材面では、教育・研修、評価制度に関する抜本的な改革を実施しており、採用・定着などの改革を推進しています。
3-4.中期経営計画(2023-2025)の目標

現行中期経営計画における数値目標についてです。5月に公表した内容から変更していません。3年目である今期は計画数値を修正し、それによって売上高・利益ともに従来の計画より減少しました。連結売上高を265億円、経常利益を4億30百万円としています。
スライドの棒グラフは2019年度からの経常利益の推移を示しています。研究開発部門の人件費や経費が大きく増加する計画としており、それにより利益を大きく押し下げる予測となっています。
また、ROEは0.5パーセント以上、研究開発部門の投資を除いた場合の経常利益は15億30百万円となります。棒グラフの一番右端の棒に点線部分を含めると、合計で15億30百万円で、ROEは6.5パーセントとなる想定です。実は中期経営計画作成時、昨年までの計画では、中期経営計画以前並みで経常利益17億円から18億円、ROEで9パーセント以上を目指していました。
したがって、中期経営計画最終年度として胸を張れる数字ではありませんが、「2030ビジョン」を目指した成長投資を継続し、この目標の達成を通じて次期中期経営計画につなげていきたいと考えています。
3-5.利益の構造

中期経営計画の数値計画が当初どおりに進捗しなかった要因の1つとして、建設用資機材の製造・販売事業におけるセグメント利益の変動が挙げられます。スライドのグラフの濃い青色の部分が該当セグメントですが、この変動の大きさをご確認いただけると思います。
大型案件の有無や大規模災害の復興工事の有無、納入先工事の進捗状況などにより、年度ごとにどうしてもぶれが生じてしまい、他のセグメントと比べても大きなぶれが出てしまう傾向があります。
今年度についても、大型案件の端境期にあります。また、各現場における労働時間規制や人手不足による工期遅延などの影響で、売上高や利益における上期の出遅れを下期で取り戻せるかについては、まだ若干の懸念が残っています。
一方、棒グラフのマイナスの部分については、セグメントに属さない研究開発部門の人件費や経費を示しています。一番右側の今期は、研究開発の一定の進捗を前提として、人件費や経費が大きく増加することを見込んでいます。
3-6.主な経営指標

ここまでご説明した今期通期予想に対する中間期の実績、進捗率、営業利益率、ROEなどの数字をまとめています。配当率は変更しておらず、DOEは3.5パーセント以上となる見込みです。
2025年度予想に記載している売上高265億円、経常利益4億38百万円という通期予想は変更していません。研究開発部門の人件費などを除いた場合、経常利益は15億37百万円に相当します。10億99百万円が、研究開発部門の人件費・経費に相当する予測となっています。
3-7.中期経営計画(2023-2025)の主な施策

現行中期経営計画に掲げる主な施策の進捗状況をご説明します。スライドには主な施策全般を示しています。これまでにも繰り返しご説明してきましたが、「既存事業基盤の土台固め」と「未来に向けた種まき」という方針のもと、グループの中長期ビジョンを目指します。
サステナブルな社会実現に貢献する企業として、新たな種をまき、事業機会として取り組むべき分野を「サステナビリティ施策A」として進めてきました。
一方で、当グループ自身もサステナブルでなければならないとの考えから、自社のサステナビリティ課題を「サステナビリティ施策B」として進めてきました。施策ごとに組織、人材、予算を整備し、毎月PDCAを回しながら取り組んでいます。
施策によって多少の遅れはありますが、概ね進捗は順調に図れていると考えています。
3-8.発電事業(サステナビリティ施策A)~事業内容・ロードマップ

各事業の進捗状況についてご説明します。まずは発電事業です。これまでもご案内しているとおり、国内で調達可能な金属を燃料とするCO2フリーの発電を目指しています。
専門技術コンサルや事業コンサルといったパートナーを起用し、原燃料の調達・生産過程、燃焼・発電過程、事業化の推進過程に取り組んでいます。現在は、神奈川県の自社用地において、ベンチプラントの設営と稼働が開始され、実証実験データの収集・分析を進めているところです。
実際にプラントが稼働を開始すると、さまざまな事象が発生し、全体のスケジュールはやや遅れ気味となっています。しかしその一方で、実証レベルでの経験や、多様なデータの蓄積が進んでいることも事実です。
また、この夏には事業会社の設立を完了しました。IPP事業参画に向けた調査や準備作業も推進しています。国や自治体による指定事業化、パートナー企業との連携などを、次期中期経営計画の期間内に進めていく考えです。
3-9. ESCON事業(サステナビリティ施策A)

ESCON事業についてです。先ほど少し遅れが生じているとお伝えしましたが、このESCON(超高強度合成繊維補強コンクリート)は、軽量化、長寿命化、複雑な形状の実現、防腐食性などの特徴を有しています。
これらの特徴を活かし、すでに二次製品については普及が進んでいます。加えて、材料そのものの現場出荷における用途開発にも取り組んできました。具体的には、道路橋床版や継手、床板上面の増厚といった技術を開発し、今年度は実施工を目指してきました。
現段階で採用見込みの現場は、残念ながら2026年度以降の計上案件となるため、今期の売上規模は当初予定していた4億円から40百万円前後となる見込みです。次年度以降の拡大に向けて、設計折込の成果は着実に進行しています。
3-10. BIM設計支援・BIM化業務受託(サステナビリティ施策A)

建設業界の喫緊の課題である建設DX・デジタル化の基本となるBIM化に関連し、特に地方や中小のコンサルタント企業やメーカーに対するソリューションビジネスを手がけていきたいと考えています。特に、ベトナムの当社グループVJECを活用して、事業化を進めていく方針です。
2025年度、当社は国内の高速道路や災害前後の地滑りモデルといった、複雑かつ大規模なBIM/CIMの作成を手がけました。これらの取り組みは非常に高い評価を得ています。
日本国内の建設業就業者の減少傾向は今後も続く見込みであり、デジタル化および海外戦略の活用が不可欠です。この点を、我が国のサステナブルな課題の1つと捉え、引き続き取り組んでいきます。
3-11.新規事業(サステナビリティ施策A)

長期ビジョンに掲げる「社会課題に幅広く貢献する企業」を目指し、外部へのさまざまなヒアリングを重ねて、まったく新しい事業モデルの創出を目指すプロジェクトを進めています。
現時点では、未来構想から選ばれた180件の事業案について選定を進めており、そのうち5件の事業案に対して仮説の検討、試作品のテスト、想定顧客へのヒアリングなどを実施しました。今は見極めを行っている最中です。
その結果、事業案の入れ替えや廃案になった案件もあります。また、見直しも実施しています。想定よりも、事業化案の確立までに若干の時間を要する見込みです。
おそらく事業化は次年度以降に持ち越される状況ですが、この事業は当社のエンジニアリングスキルをさらに発展させ、社会課題に幅広く貢献する狙いがあります。そのため、多少時間をかけても着実に進めていきたいと考えています。
3-12.自社のサステナビリティ課題の解決(サステナビリティ施策B)

ここまで述べてきたような将来の種まきに向けた各施策として、生産業務の効率化・技術伝承対策、人材定着・確保に向けた教育・評価改革などを進めており、これらはほぼ順調に進捗しています。
生産業務の効率化・技術伝承対策については、工場での受け入れ検査や公的検査のシステム化を進めているほか、営業と生産間の連携改善に関する見積もり業務やデリバリー業務などのシステム化も進捗を見せています。建設業界のDX化に対応しなければ生き残れないという危機感を抱きつつ、若手にとって働きがいがあり、魅力的なメーカーや工場へ変革しなければならないと考えています。
人材定着・確保に向けた教育・評価制度の改革についても、同様の危機感を持って取り組んでいます。新人事制度や新たな給与制度を導入し、1on1ミーティングを活用した評価制度の改革を進めるほか、採用方式も大きく変えています。
このような土台の盤石化に向けた取り組みは、生産部門や人材分野など、自社が抱えるサステナビリティ課題として終わりのないものだと考えています。今後も引き続き、現中計の残りの期間、そして次期中期経営計画でも注力して進めていきます。
3-13. 「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」~実績①

2023年3月に東京証券取引所から資本コストや株価を意識した経営の実現について要請を受けたことに関して、現時点での当社の対応について簡単にご説明します。
2024年度初めの中期計画ローリングにおいて、利益予想を大きく下方修正しました。その結果、PBRが1倍を下回る状態が常態化し、おおむね0.8前後で推移していました。今年度も5月に発表した中期計画ローリング以降、利益予想を修正したため、その後のPBRは0.7前後と低位で推移しています。
スライドのグラフ下部に示した売買高を見てもわかるとおり、日々の売買高には若干の改善が見られるものの、依然として低水準が続いています。これは、マーケットからの信頼や評価を得られていない証拠であると考えています。
3-14. 「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」~実績②

中期経営計画の構造について十分にご理解いただけておらず、信頼を得られていないため、引き続きIR施策を改善・強化していく必要があると考えています。
この上半期も、9月には「日経・東証IRフェア 2025」で初めてブースに出展したほか、会社説明会なども実施しました。スライド右側の棒グラフにあるとおり、個人投資家の投資熱なども影響したかもしれませんが、徐々に株主数が増加傾向にあります。
3-15. 「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」~方針

資本収益性についてです。今年度のROEおよびROICは資本コストを大きく上回る水準には至っておらず、日々の売買高も低水準にとどまっています。
この結果、事業性や財務上のリスク、株式の流動性リスクに対する投資家のみなさまの不安が反映され、PBRが1倍を下回る状況となっています。こうした現状を踏まえ、さらなるIR活動の必要性を強く感じています。
現在は次期中期計画の策定に入っていますが、引き続き当グループの企業価値向上に対する信頼をIR活動を通じて獲得していきたいと考えています。
次期中期計画は、「2030ビジョン」の実現に向けた最終段階の計画となります。今後とも丁寧な説明を通じて市場に発信していきたいと考えていますので、本日お集まりのみなさまのご理解とご協力をお願い申し上げます。
簡単ですが、これをもちまして本日のご説明を終わります。ありがとうございました。
質疑応答:次期中期経営計画における研究開発投資の見通しについて

質問者:本中期経営計画において、未来に向けた種まきをテーマに研究開発にかなりの投資をされているとうかがいました。現在の進捗状況から考えると、次期中期経営計画においても引き続き相当な投資が必要になるのではないかと思います。
次期中期経営計画における研究開発費用について、同水準で推移するのか、それともさらに増額が必要となるのか、その規模感を教えてください。
宮原:スライド22ページに、今年度の研究開発部門における人件費・経費の予想を記載しています。中間実績で約4億60百万円、通期予想で約11億円を想定しており、このうち発電事業がかなりの割合を占めています。
先ほどご説明したように、いくつかの事象が発生して進捗が遅れることもあり、この予算どおりに全額を今期中に使用できるかは不明です。しかし、この規模の人件費・経費については、今期においても引き続き投資を行う予定です。
来期以降については、現在取りまとめ作業を行っている状況のため、明確なことはお伝えできません。ただし、研究開発の進捗状況を踏まえると、少なくとも今年度と同程度の費用が必要になるのではないかと考えています。しかし、国との間でさまざまな相談を行う中で、今後どのような事象が発生するかは予測が難しい部分もあります。
来年の春には、次期中期計画として研究開発部門以外も含めたグループ全体の3年間の中期計画を定め、対外的に発表する必要があります。その中で、特に発電事業が大きな影響を与えると考えています。現時点でこれ以上具体的なことをお伝えすることは難しいですが、鋭意検討を進めている状況とご理解ください。
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