2025年後半のS&P500はどうなる?

岡元兵八郎氏:こんにちは。マネックス証券のハッチこと岡元兵八郎です。市場最高値を更新したS&P500について、ここから投資家としてどう行動すべきか、その考え方を分かりやすくお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

さて、米国株に投資をされているみなさまにとって、今年の上半期はかなり厳しい半年間だったのではないでしょうか。米国株の長い歴史を振り返ってみても、ここまで激しく揺れ動いた半年間はそうそうありません。しかし、そんな中でもアメリカのS&P500は2025年6月27日に、同年2月に記録した市場最高値を上回る水準にまで回復したのです。

S&P500の推移

では、チャートを見ながら過去の動きを確認していきます。まず、2025年2月にS&P500が最高値を更新した後、およそ10パーセントの下落がありました。これは、僕がいつも話しているとおりで、1928年以降、S&P500は平均で年に1回は10パーセント前後の調整をします。つまり、この程度の下落は過去のパターンに照らしてみても想定内で、言い換えるといつものことだったわけです。

しかし問題は、この後に起きた追加の下落です。これは本来であれば起きるはずのなかった、起きる必要のない動きでした。追加の下落とは、トランプ大統領によるサプライズの関税発動が引き金となって、市場が再び下がり始めたことです。その結果、S&P500は2025年2月半ばの市場最高値から今回の最安値まで、累計で約21パーセント下落することになりました。

この局面では恐怖指数と呼ばれるVIX指数も急騰し、ブルベアレシオをはじめとした、センチメント指数も軒並み弱気に傾きました。さらに、多くのストラテジストたちも相次いで年末の目標株価を引き下げ、強気のスタンスから後退する動きが見られました。

ところがその後、2025年4月9日には突如、トランプ大統領が報復関税を90日間停止すると発表しました。この発言が追い風となり、市場は勢いのある回復を見せました。そして同年6月27日には、S&P500が再び市場最高値を突破することになったのです。

どうなる今後の米国株? 2025年後半の米国株動向を予測

僕は、2024年12月から2025年1月の時点で、2025年末のS&P500は7,000ポイントに達するという予想を出しました。その後、トランプ大統領による関税の影響で多くのストラテジストが弱気に転じる中にあっても、この見通しを変更しませんでした。

もちろん現在のマーケットのバリュエーションを見ると決して割安とは言えません。歴史的に見ても水準は高く、短期的には上がりすぎの状態にあります。よって、一時的な下げが起こっても、それは普通のことだと言えます。

しかし、ここから米国株が、トレンドとして下落に転じるとは考えていません。むしろAI関連銘柄が引き続きマーケットを牽引し、AIの恩恵を受ける企業の株価も上昇していくと見ています。そして年末に向け、S&P500は上昇基調を維持するというのが僕の基本シナリオです。

もちろん株価が一直線に上がるとは思っていません。米国株はいつものように途中で調整を挟みながら、それでも上昇を続けていくと考えています。その最大の理由は、企業業績が堅調であるということです。企業の業績は株価を下支えする最も基本的で重要な要素の1つです。ここからは、その企業業績の見通しについて詳しく確認していきます。

米国企業業績の見通し

こちらのグラフはS&P500の、2021年第4四半期からの四半期ごとの業績の推移と、今後の予想を示したものです。まずは、2025年第1四半期について見てみます。

決算発表前の事前予想では前年比プラス6.7パーセントの増益が見込まれていました。ところが実際に発表された結果は、前年比プラス13.6パーセントと、予想のおよそ倍に相当する非常に強い数字となりました。

注目すべきは、そもそもこの前年比プラス6.7パーセントという予想も、今年1月の時点ではプラス11パーセントとされていたという点です。つまり、当初はプラス11パーセントの増益が期待されていたところ、トランプ大統領による関税措置への懸念から、予想は前年比プラス6.7パーセントまで引き下げられたにもかかわらず、結果としてその悲観的な予想を大きく上回ったということです。

そして、今回の2025年第2四半期についても同じ構図が見られます。今年1月11日時点の予想では前年比プラス9.4パーセントの増益が見込まれていましたが、その後、再び関税リスクが意識され、現時点では前年比プラス2.8パーセントまで大きく下方修正されています。

ここで言えるのは、悪材料はすでにマーケットに織り込まれているのではないかということです。もし実際の決算がこの事前予想を上回るようであれば、株価は上昇する可能性が高いと考えられます。

今度はこれを通年で見てみます。ご覧のとおり、今年は前年比プラス7.2パーセントの増益が見込まれていますが、来年2026年には前年比プラス13.5パーセント、さらに2027年も前年比プラス12.4パーセントといずれも2桁成長の予想が出ています。仮にこのような業績の伸びが来年、再来年と続くのであれば、今後も株価の上昇が続くということはなんら不自然ではないと考えています。

併せて、アメリカ経済全体にとっても明るい材料がいくつか見られ始めています。アメリカでは、トランプ大統領が「One Big Beautiful Bill(一つの大きくて美しい法案)」と呼ぶ大規模な減税歳出削減法案が可決され、2025年7月4日に正式に署名成立しました。これは2025年後半のマーケットにとって、重要な支援材料の1つとなっています。

さらにもう1つのポジティブ要因が、規制の緩和です。例えば、金融業界では今年7月に入ってから大手銀行が相次いで自社株買いや増配を発表していますが、その背景にはFRB(連邦準備制度理事会)のストレステストに合格したことに加え、今年度に実施された規制緩和措置があります。

具体的には、銀行に対する資本規制のテスト基準が引き下げられたことにより、金融機関の資本政策に余裕が生まれたのです。こうした流れから、金融セクターも今後のマーケット上昇を下支えする存在になると見ています。

ドル安の進行

政治の世界では、トランプ関税を巡って複雑な展開が続いています。一方で、S&P500にとってむしろ理想的とも言える状況が進行しています。それがドル安の進行です。

こちらは、ドル指数のチャートになります。今回の第2四半期決算が対象となる期間は2025年3月末から同年5月末までの3ヶ月間となりますが、この間にドル指数は4.7パーセント下落しています。S&P500構成企業の売上の約4割は、海外市場からのものだと言われています。

したがってドル安は、企業の外貨建ての売上をドル換算で押し上げる効果を持ち、業績全体にとってプラスに働くと考えられます。

利下げ期待について

最後に、利下げ期待についてお話しします。利下げについては、当初想定されていた7月ではなく、9月または11月の実施が有力視されています。雇用市場が依然として堅調であることが、利下げ判断を先送りする要因となっているものの、利下げは株式市場にとって極めて明確な追い風となります。

トランプ大統領はパウエルFRB議長に対して利下げ圧力を強めており、来年5月に控える議長任期の終了を睨み、自らの政策に歩調を合わせる人物への交代を示唆しています。

もう1つ、マーケットにとってポジティブな要因があります。2025年4月から7月にかけての急激な上昇相場は、「Most Hated Rally(最も嫌われた上昇相場)」と呼ばれています。この言葉が示すように、実はアメリカの機関投資家の中には、今回の上昇局面に乗り遅れたプレイヤーが非常に多いと言われています。つまり、ポジションを持たずに様子を見ていたファンドや年金基金が、相場の強さを確認しながらも買いに入れなかったという状況があります。

したがって、もしここからさらに株価が上昇するようであれば、そのような投資家たちは買わざるを得ない状況に追い込まれる可能性が高いということです。この後、追いの買いが加わることで、マーケットの上昇に厚みが加わると考えられます。

では、仮に僕の「2025年末にS&P500が7,000ポイントに達する」という予想が外れるとしたら、その理由は何でしょうか? それは、今年に入ってからのトランプ関税による時間的なロスが影響し、7,000ポイント到達が年内ではなく来年前半にずれ込む可能性があるということです。

いずれにしても僕は、S&P500の上昇がここで止まるとは考えていません。今の米国株は、2013年4月に始まった長期的なブルマーケットの真っただ中にあり、この構造的な上昇トレンドが一時的なノイズで終わるとは思っていません。

成績公開!ハッチの米国つみたて投資

それでは、今回も恒例の、ハッチの積立投資の運用成績を公開していきたいと思います。

2025年に入ってからは、トランプ大統領による関税の影響でマーケットが大きく下落する局面もありましたが、積立投資についてはこれまでと変わらずコツコツと継続しています。

僕がこの積立を始めたのは2020年12月で、それ以来の投資元本は324万8,414円、現在の評価額は537万23円となっています。含み益は212万1,609円になり、トータルで65.31パーセントのプラスとなっています。

質疑応答:半導体関連企業への投資について

「半導体関連企業への投資に興味があります。おすすめの投資信託や今後の成長見込みなど、ハッチさんのご意見を教えてください」というご質問です。

アメリカの半導体メーカーといえばNVIDIAを思い浮かべる方が多いと思いますが、AIの発展と普及を受け、半導体に対するニーズはこれからも高まっていくと思います。

僕も積み立てているiFreeNext FANG+Indexは、NVIDIAだけではなく、同じ半導体関連のブロードコムやAI関連銘柄のMeta、Microsoft、Google、また、AIの進化の恩恵を受けるServiceNowなども採用されています。アメリカの市場全体をこれからも牽引していくのは、このような大企業だと考えています。

そのため、この世界が注目するアメリカのビッグテック10銘柄で構成された株価指数に連動する運用成果を目指す投資信託、iFreeNext FANG+Indexを検討されてはいかがでしょうか。

リスナーのみなさまからのご意見・ご感想

この動画をご覧いただいているみなさまからのご意見とご感想です。

「おもしろいから続けて欲しい」「わかりやすい」「楽しく見させてもらっています。これからも続けて欲しいです」「ハッチさんの投資成績公開がいつも楽しみです」「いつも拝見しております。夫が毎朝、ハッチさんのマグカップを使っています。お気に入りのようです」という感想をいただいています。楽しいご意見、ご感想ありがとうございます。

資産形成 成功の秘訣

毎回恒例の資産形成成功の秘訣は、できるだけ長期で投資を行うということです。長期的な視点を持ってください。そして、定時定額で投資を行うということです。また、マーケットが上がっても下がってもやめないということです。

マーケットが上がっても下がってもやめないことの正しさは、今回のトランプ関税で大きく下がった時に証明されました。今回、積立投資をずっと継続してきた方は「あの時やっておいて良かったな」と思っていると思います。市場最高値も更新しているわけですから、今回の下げでやめなくて正解だったはずです。米国株のインデックス投資であなたも資産形成をしてみませんか? というのがこの番組です。

ということで、今回は以上で終了します。ぜひともみなさまのご意見を聞かせてください。