2025年3月期決算および会社説明会

李太煥氏(以下、李):株式会社NITTAN代表取締役社長の李です。本日は大変お忙しい中、当社説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

本年度はこれまでと趣向を変えまして、機関投資家のみなさまと個人投資家のみなさまの両方に向けて説明会を開催したいと思います。本日もよろしくお願いします。

当社は、内燃機関の最重要部品であるエンジンバルブとその周辺部品、精密鍛造歯車を主力製品として製造販売している会社です。多くの自動車部品がそうですが、当社の製品も車の奥深いところに隠れており、一般のユーザーが目にすることはほとんどありません。

ゆえに、世の中にはあまり知られていない製品、会社とも言われています。

そこで、本日はみなさまに当社の決算説明だけではなく、当社がグローバル企業であることをアピールしたいと思いますので、よろしくお願いします。

0. 本日お伝えしたいこと

本日みなさまにお伝えしたいのは、NITTANはみなさまが思っているよりもグローバル企業であるということです。実は当社は1980年代から本格的に海外進出を進めており、その結果として、アメリカを含む10ヶ国に18拠点を構えています。

これにより地産地消の供給体制が整い、最近世界を騒がせているトランプ関税のような、国際的な貿易障壁の影響を受けにくい企業体質となっています。

そしてグローバル企業として成長し続けるために、中長期経営ビジョン「NITTAN Challenge 10」、略して「NC10」を積極的に進めています。スライド左側のグラフは、連結売上高推移と今後の目標を示していますが、2024年度はNITTANグループとして初めて、連結売上高500億円を突破しました。

これはグローバル企業として、成長してきたからにほかなりません。今後もNITTANが持つグローバルな強みを活かし、中期経営計画の達成、そしてさらなる成長を目指しているところです。

コロナ禍以降の自動車市場の平均成長率を見ると、グローバルで6.4パーセント、日本ではマイナス1.2パーセントというデータがあります。

一方で、NITTANの成長率は、今期の事業計画に用いた保守的な為替レートである1ドル135円の場合は4.5パーセント、円安のまま推移した1ドル158円を適用した場合は6.0パーセントとなっています。国内の成長率よりも遥かに高く、グローバル成長率と同等と言えます。

また、NITTANグループの連結売上高の海外比率は64パーセントとなっており、日本国内に対して1.8倍の売上です。まさに、先ほどからお話ししているグローバル化と地産地消の供給体制が実を結んだ結果です。

0. 本日お伝えしたいこと

NITTANグループは、日本に3拠点、海外ではASEANおよびアジアに13拠点、アメリカ、ヨーロッパに各1拠点、合計18拠点を構えています。当然ながら海外拠点の仲間も多く、とても大切なチーム、家族とも言える存在です。

神奈川県秦野市に本社を構えるNITTANは、これまでに海外進出を果たし成長したことを誇りに、中長期経営ビジョン「NC10」の達成に向けて挑戦を続けていく所存です。

目次

本日のスライドは、このように4部構成となっています。1部および3部は、執行役員経営企画部担当の村山から、2部および3部の途中から4部までは私から報告します。

1-1. 会社概要

村山誠治氏(以下、村山):執行役員経営企画部担当の村山です。第1部「NITTANってどんな会社?」についてご説明します。

まずは会社概要です。設立は1948年で、今年で創業77周年を迎えています。前身を含めると、101年の老舗企業です。

従業員はグローバルで2,549名、製造拠点はグローバルで18拠点あります。売上高は、2025年3月期で514億円です。前年比4パーセント増となり、過去最高の売上高となりました。

肝心なことですが、当社は日本で初めてエンジンバルブの量産化に成功した会社です。スライドの右下にあるように、今も国内トップシェアを維持しています。

1-2. 会社概要–Global–

本日は、NITTANのグローバルを軸に、世界18拠点での展開、成長の実績、そして今後の挑戦についてご紹介します。

NITTANのグローバル展開を支えているのは、NITTANグループで働いている世界中の仲間たちです。それぞれの国籍、文化、働き方、価値観など、私たちの現場にはたくさんの「違い」があります。

しかし、その違いこそが私たちの強みです。NITTANは、それを多様性として受け入れ、尊重し、力に変えてきました。

世界中の仲間が互いの違いを認め合いながら、同じ目標に向かって進んでいます。それがNITTANのグローバル、そしてダイバーシティのかたちです。

1-3. 会社概要–Globalの歩み–

当社のGlobalの歩みについてご説明します。当社の前身である恩加島鉄工所は、1924年に大阪で設立されました。

それから、1948年に日鍛バルブ製造として当社の歴史が始まり、20年後の1968年には台湾日鍛が設立されました。その後、1988年にアメリカにU.S.エンジンバルブを設立し、1995年にはインドネシアと韓国に進出しました。

ちなみに図表の真ん中にある、1995年の韓国の親和精密設立に尽力したのが李です。そこからヒョンデグループとのお取引が始まり、現在も拡大しています。

その後も、タイ、中国、ポーランド、インド、ベトナムなどに拠点を設け、グローバルな成長フィールドを築いています。2022年には社名を株式会社NITTANへ変更し、昨年はM&Aも成功させ、さらなる飛躍を目指しています。

1-4. NITTANのコア技術

NITTANのコア技術についてです。当社の社名の由来にもあるように、「鍛造技術」が1番目のコア技術です。主に熱間鍛造技術ですが、複雑な形状を精密に鍛造成形する技術が自慢のポイントです。

2番目のコア技術は、過酷な使用環境で要求される材料特性を持つ金属を溶かして、必要な部位に溶着させる「盛金技術」です。これは当社が最も得意としている分野とも言えます。

3番目のコア技術は、コストや機能を満足させるために異なる性質を持つ金属を接合し一体化させる「接合技術」です。

4番目のコア技術は、製品を規格寸法に正確に仕上げる「加工技術」です。

この4つのコア技術を駆使し、NITTAN特有の製品を世に送り出しています。また、この4つのコア技術にNITTAN恵那金属の切削加工技術と表面処理技術が加わることになり、より強みを発揮できるものと判断しています。

1-5. 売上高及び事業セグメント別比率

連結売上高及び事業セグメント別比率です。2025年3月期の連結売上高は514億円となりました。

その中で小型エンジンバルブ事業の割合は、昨年度比プラス3パーセントの87パーセントと高い状況です。これはエンジンバルブの中でも高付加価値の軸中空バルブ、傘中空バルブ、盛金バルブなどの売上が伸びていることが要因です。

後ほどご説明しますが、当社の中長期経営ビジョン「NC10」を着実に進めることで、事業の多角化を目指していきます。

1-6. 売上高及び所在地別比率

地域別では、海外売上高が全体の64パーセントを占めています。アジア、北米、欧州のグローバル拠点の強みを活かし、地産地消の体制を整えています。

特に北米市場では現地生産体制を強化しており、トランプ関税の影響も先ほど李がお話ししたように限定的と見ています。

1-7. 国内・海外 主要お取引先様比率(連結売上高)

こちらのスライドは、国内と海外の主な取引先別のシェアを表したものです。国内では、系列に属さない強みが表れています。主要顧客との取引基盤があることを示しています。

海外では特定顧客の比率が高い面もありますが、すべてのお客さまの地産地消のニーズに応えています。

1-8. 当社主要製品の搭載箇所

こちらのスライドは、当社製品がどこに使われているのか、その搭載場所を表した資料です。①エンジンバルブ、②バルブリフターはシリンダヘッドというエンジンの上部に組み込まれています。

③精密鍛造歯車は、自動車後輪の間にあるリヤーデフケースの中や、オートマチックトランスミッションの中に組み込まれています。

ちなみに連結対象会社に入っていませんが、先ほどお話ししたバルブリフターは、新和精密グループで生産・出荷し、韓国の自動車メーカー・ヒョンデのグローバルシェア約5割に搭載している製品です。

いずれも一般のユーザーが目にすることはほとんどない部分に潜んでいます。しかし、これらの部品は、1つでも欠ければ車は一切動くことができない最重要機能部品です。

1-9. Globalシェア ~エンジンバルブ当社推定シェア~

当社のグローバルシェアについてです。各事業領域においてトップシェアのお客さまと取引できており、その結果が表れていると言えます。

また、競争が激しい四輪バルブにおいては、国内メーカー3社の中でトップシェアを維持しています。

1-10. カーボンニュートラルに向けての活動状況について

当社のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みについてです。「NITTANカーボンニュートラル(NCN)」というグローバル方針を制定し、海外子会社も含めて愚直に展開しています。

主な取り組み内容は、再エネ活用と省エネ活動の展開です。年度ごとのCO2排出量削減目標値は、スライド左側のグラフのとおり定めています。

2024年度の削減実績は35.4パーセントであり、目標をクリアしています。また、当社の省エネの取り組みが経済産業省から評価され、「Sクラス優良事業者」に認定されました。

1-11. カーボンニュートラル達成に向けた取り組み

主な取り組み内容である再エネ活用では、太陽光発電を積極的に推進しています。気候的にも恵まれているタイでは、使用電力の約3割を太陽光発電で補っています。

少々遅れ気味の日本でも、夏頃には太陽光発電の運用を開始します。

1-12. NITTANの健康経営推進取組

当社の健康経営に対する取り組みについてご紹介します。NITTANでは「人間性を尊重し、夢と活力のある職場を創造する」を経営理念として掲げています。この理念のもと、従業員一人ひとりが心身ともに健やかに働ける環境作りを進めてきました。

昨年度まで継続して取り組んできた産学官連携による食環境改善の取り組みは、神奈川県のホームページでも成功事例として紹介されています。

この取り組みでは、神奈川県立保健福祉大学、地元である秦野市役所のこども健康部健康づくり課を含む行政と連携し、働く世代の健康保持や生活習慣病の予防に取り組んできました。

企業としての安全衛生対策はもちろん、地域住民のみなさまの健康増進にも貢献できるよう、今後も実践活動や人材育成を強化していきます。

1-13. NITTANグループのCSR、SDGs活動状況について

当社グループのCSRおよびSDGsへの取り組みについてご紹介します。NITTANグループでは、SDGsの中でも特に「貧困をなくそう」「質の高い教育を皆に」「陸の豊かさを守ろう」の3つの目標を重点に置いて活動を進めています。

具体的な活動としては、インドネシアでは、海岸浸食防止のための植林活動を行っています。タイでは、小学生への奨学金の寄付を通じて教育支援を行っています。ベトナムでは、カーボンニュートラル活動のキックオフイベントを開催し、環境意識の向上に努めています。

日本では地域貢献の一環として、秦野市の「NITTANパークおおね」にて、少年サッカー大会「NITTANピーナッツカップ」を開催しました。ちなみになぜ「NITTANピーナッツカップ」なのかというと、秦野がピーナッツの名産地でもあることから、郷土愛から決めた大会名にしています。

これらの活動を通じて、私たちは各国での企業市民としての責任を果たし、地域社会とともに歩む企業であり続けたいと考えています。

2-1. 当社グループのパーパスについて

:第2部「中長期経営ビジョン」についてご説明する前に、当社グループのパーパスについてご説明します。

私たちは「多様な技術を駆使し、脱炭素化社会の実現に貢献する」をパーパスに掲げています。このように決めた理由は、内燃機関部品メーカーであっても、さまざまな持ち前の技術を駆使することで、モビリティ業界のカーボンニュートラル実現に貢献できると確信しているためです。

2-2. “NITTAN Challenge 10”

当社の中長期経営ビジョン「NC10」についてです。スライドに記載の4つの柱をもって進めています。

VISION Ⅰは、既存の内燃機関部品の付加価値をより高め、事業の拡大を目指すものです。VISION Ⅱは、電動化領域および異業種への積極的なアプローチで、新たな事業を開拓することです。

そしてVISION Xは、「愉快な開発」をテーマに、従業員の自由な発想からユニークな製品の開発を目指すものです。現在はゴルフ好きな仲間がゴルフパターの開発を進めています。

「NC10」ではスライド上段に示したように明確な数値目標を掲げています。売上高1,000億円以上、営業利益100億円以上、営業利益率10パーセント以上と、すべて10の倍数であることと、10年間で達成するということから「NC10」と呼んでいます。

なお、今回のM&Aにより完全子会社化したNITTAN恵那金属は、VISION Ⅱ領域の成長事業と位置付けています。

2-3. 乗用車&自動2輪 パワートレイン予測 -2020~2040-

モビリティごとのパワートレインの長期予測を示しています。スライドの右上に記載のとおり、FCEVは燃料電池車、HEVはハイブリッド車、BEVはバッテリー電気自動車、PHEVはプラグインハイブリッド車、ICEは内燃機関を意味しています。

左のグラフは乗用車向けパワートレインの長期予測ですが、変動が激しく、現時点で正確に予測することは困難な状況とも言えます。

将来的にBEVが主流になることに変わりはないと思いますが、当面はICEの割合が維持される見込みです。現状では、BEVの販売の一服感は否めません。先日、ホンダ社もBEVへの投資を減らしハイブリッド車の投入を発表したように、しばらくは内燃機関が維持継続される見込みです。

右側のグラフは、自動二輪車向けパワートレインの長期予測です。スクーター系は街乗りメインですので電動化が進むと予測されていますが、趣味の世界であるスポーツ系バイクは、ICEが一定量残るものと予測されています。

2-4. 商用車&舶用 パワートレイン予測 -2020~2040-

左側のグラフは、商用車向けパワートレインの長期予測です。大型商用車はICEが主流であり、小型商用車で電動化が進む見込みです。

右側のグラフは、船舶向けパワートレインの長期予測です。電動化の動きよりは、GHG(温室効果ガス)フリーの対応技術がメインになると予測されています。

2-5. パワートレイン動向予測まとめ

このような市場の動向予測を包括的にまとめてみると、スライドのグラフのようになります。一番右側の棒グラフにあるモビリティ全体の2040年予測を見ても、ICEの比率は68パーセントであり、2020年比で見てもICEは91パーセントの数量維持が予測されています。

電動化も徐々に進みますが、内燃機関も一定量残る予測と言えます。そこで当社は、中長期経営ビジョン「NC10」達成のための開発を通じて、ICEとBEV両方のニーズにしっかりと応えていきます。

2-6. NC10開発のターゲットアイテム

「NC10」開発のターゲットアイテムは、スライドのとおりです。VISIONⅠでは、底面鏡面化バルブやハイパー中空バルブを開発していきます。これらはICEの燃費改善に役立つアイテムです。また、舶用中空バルブやGHG削減対応バルブなどは、ICEが最も長く残ると言われている舶用業界のアイテムですので、開発を積極的に進めています。

VISIONⅡでは、電動化に向けたヘリカルギアや減速機、FCEV用モーターローター、そしてまったくの異業種である設備用精密空圧部品などの開発を進めています。

2-7. VISION I(ICE有効活用領域)の開発状況

VISIONⅠアイテムの開発状況です。ハイパー中空バルブは温度低減効果が認められ、北米での排気ガス規制であるTier4に対応するために必要不可欠なものとなっています。そのため、多くのお客さまから引き合いをいただいています。

舶用中空バルブおよびGHG削減対応バルブは本年度からの量産化を目指し、お客さまと開発を進めています。

2-8. VISION II(xEV・異業種領域)の開発状況

VISIONⅡアイテムの開発状況です。設備部品は昨年から量産を開始しており、海外子会社への生産シフトを進めています。

FCEV用モーターローターは新規顧客から受注を獲得しましたので、2026年後半の量産立ち上げに向けてしっかりと準備を進めていきます。

2-9. 水素社会の実現に向けて

脱炭素化社会の実現に向けた新たな取り組みについてご紹介します。

近い将来到来すると言われる水素社会に対する備えです。スライド左側の図のような協力メーカーとともに、お互いの得意分野を活かして、「つくる」「はこぶ・ためる」「つかう」の水素のサプライチェーンを構築していきます。

その詳細な中身は、水素エンジン、燃料電池、水素供給設備や装置の開発です。当社が担う部分は、水素の保管装置や供給装置の部品を特殊な材料を使って精密に加工し、製品化する領域です。

この挑戦は始まったばかりですが、今後も進展がありましたらお知らせします。

2-10. 電動自転車向け減速機(Nixtroid)について

電動アシスト自転車向け減速機「Nixtroid」についてです。これは、VISIONⅡアイテムの中でも目玉商品と言える製品です。

トロコイドタイプの減速機を、NITTAN独自のアイデアを持って改良した製品で、その由来から「Nixtroid」と名付けています。コンパクトで高トルク仕様の開発を目指しています。

現在はモーターとの組み合わせによるドライブユニットの開発段階まで進んでいます。1日でも早く量産化できるように、開発のスピードを上げていきます。

2-11. ハイパー中空バルブについて

ハイパー中空バルブについてです。ハイパー中空バルブは冷却効果が認められ、アメリカの排気ガス規制Tier4に対する改善アイテムとして注目を集め、多くのお客さまから引き合いをいただいています。

マツダ社には、「スーパー耐久シリーズ」でカーボンニュートラル燃料車両にこのハイパー中空バルブを採用いただき、既存の軸中空バルブに対して約140度のさらなる冷却効果があることを開示しています。

このような冷却効果は、内燃機関の燃費改善や、GHGフリー燃料採用に大きく役立つものですので、今後の内燃機関のさらなる脱炭素化に貢献できる高付加価値製品と言えます。

2-12. 異材を圧接したボールねじ+スプラインについて

日本トムソン社とコラボ開発しているアイテムのご紹介です。我々のコア技術の1つである接合技術と、日本トムソン社のコア技術であるベアリング技術を融合した製品を開発し、名古屋の展示会に出展しました。

特許の共同出願も済ませています。出展した開発品は半導体設備などでニーズがあり、今後、製品化が期待されています。

今までも日本トムソン社とはAGVの開発をコラボしており、今後もお互いのコア技術を活かした開発を継続していきたいと思っています。

2-13. インド戦略について

インド拠点戦略についてご説明します。インドの人口は、中国を抜いて世界一になっています。そして、インドのパワートレイン動向を見ると、内燃機関が世界で最も長く、多く残る国と言われています。

現地のHMI(Hyundai Motor India)社から新たな引き合いもいただいていますし、インドローカルのお客さまであるマヒンドラ&マヒンドラ社、Hero社からも多くの引き合いをいただいています。そこで、現在の生産能力は年間1,200万本体制ですが、これを倍増させた2,400万本体制を目標に、設備投資と建屋の増築を行っています。

2-14. NC10海外拠点の活動

海外拠点の「NC10」活動についてご紹介します。これまでは開発機能を持つ日本を中心に「NC10」活動を繰り広げてきました。しかし、海外拠点でも独自に新たな製品の開発、拡販活動を実施しています。

実際に、韓国の親和精密社は新たなHLAの受注を獲得しました。そして、ニッタンベトナムは設備用空圧部品の生産を開始しました。また、インドネシアのFNI社では2輪向けサスペンション部品の引き合いもいただいている状況であり、「NC10」達成のためにグローバルで取り組んでいます。

2-15. NC10目標の現在値 (25年4月基準)

「NC10」の目標値に対する、現在の実績値についてご説明します。今のところ、単純積み上げでは目標の1,000億円に届かず、スライドに示したM&A①のNITTAN恵那金属を含めても、650億円弱のレベルと予想されています。

そこで、引き続き新規製品の開発に力を注ぐとともに、M&A②やM&A③の準備も進めていきます。現在も金融機関や専門会社からの協力を得ながら、国内外を問わずシナジー効果が期待できる対象企業の調査を続けています。

また、「NC10」のVISIONⅠやVISIONⅡの目玉商品であるハイパー中空バルブや舶用中空バルブ、そして「Nixtroid」を確実に量産することで、目標の1,000億円の必達を目指していきます。

3-1. 2025年3月期業績総括

村山:2025年3月期の業績総括です。コロナ禍前の業績水準を回復し、売上高は前期比4パーセント増の514億4,600万円となりました。一方で、営業利益および経常利益は、費用の増加などにより減益となりましたが、受取保険金などもあり、親会社株主に帰属する当期純利益は4.9パーセント増となりました。

3-2. 事業セグメント別業績

事業セグメント別業績です。

一番影響度の高い小型エンジンバルブ事業は、四輪車用製品の販売が堅調に推移し増収となりました。北米子会社の改革や円安効果も寄与し、損益面でも改善が見られています。

3-3. 所在地別業績

所在地別業績です。国内市場は、全体として低調に推移しました。

アジア市場も汎用製品の販売調整や需要減により、全体として減収増益でしたが、北米市場については生産性改善と円安効果により増収、損失幅の減少となりました。今期の黒字化への道筋が見えていると思っています。

欧州市場はグローバルでの輸入になりますが、中空バルブの受注が堅調に推移しており、増収となっています。

3-4. 連結営業利益増減要因

連結営業利益の増減要因についてです。連結営業利益は前年同期比で5億1,600万円減少しています。その主な要因について、為替影響額を除いて分析してみると、なによりも11億3,500万円の売上減少が大きいと言えます。他には、北米での労務費の増加と、中国からアメリカへの支援品供給により管理費が増加していることが要因です。

これからも北米の安定生産化を図るとともに、すべての拠点の原価改善活動を続け、利益拡大に努めていきます。

3-5. 連結貸借対照表

2025年3月期末の総資産は666億円と、前年から36億円増加しました。主な増加要因は、新たにM&AをしたNITTAN恵那金属の影響により固定資産が増加していることです。

負債は286億円と、前年より約26億円増加していますが、これもNITTAN恵那金属によるものです。自己資本比率は43.6パーセントと、前年の45.2パーセントからやや低下しましたが、引き続き健全な財務体質を維持しています。

3-6. 連結キャッシュ・フロー

連結キャッシュ・フローです。スライドの吹き出しには、キャッシュ・フロー計算書における主要な科目ごとの金額を記載しています。ご覧のとおり、連結キャッシュ・フローは2億300万円増加して92億7,200万円となりました。

3-7. 2026年3月期通期業績見通し総括

:2026年3月期の通期業績見通しです。

当社は地産地消の体制を整えているため、トランプ関税の影響は限定的ですが、為替については業績に与える影響が大きい分、業界の動向も踏まえて保守的に1ドル135円と設定しました。

また、前期に発生した舶用部品工場の火災から復旧が進んでいることや、全海外拠点の黒字化が見込まれることから、大幅な増益を見込んでいます。

3-8. 2026年3月期通期事業セグメント別業績見通し

事業セグメント別業績見通しです。小型エンジンバルブの売上は、為替の影響を大きく受けて減少したように見えますが、実際の生産数量などは増加傾向にあります。

まだ北米では受注減により減収を見込んでいますが、利益面では生産安定化や継続的な改善活動の効果により、黒字に回復する見込みです。

舶用部品については、火災からの復旧が進んだことで生産を本格的に開始し、受注残の解消に取り組んでいきます。

歯車事業においては販売の減少が続く見込みですが、引き続き、改善活動と新規顧客開拓を継続していきます。

3-9. 設備投資・減価償却費

今期の投資額は約53億円を予定しています。国内では山陽工場の鏡面バルブ投資と基幹システム投資がメインとなっていますが、山陽工場の鏡面バルブ投資は北米向け輸出品に対する投資であり、この輸出品で予想される関税等は価格に反映することをお客さまと合意しています。

海外ではインドにおいて、HMI社からの新規受注を受け、建屋の増築や生産ラインの増設に向けた投資を進めています。この投資は1段階目の投資であり、2027年度までにさらなる2段階目の投資も準備しています。

3-10. 中期経営計画

中期経営計画についてです。2026年3月期以降は、NITTAN恵那金属のM&Aによる効果を踏まえ、目標値の更新を行っています。

為替については1ドル135円と非常に保守的に設定しているため、売上が伸び悩んでいるようにも見えます。しかし、生産数量は堅調に推移しており、為替を前年同期の1ドル158円に設定した場合は、この3ヶ年の売上に対する年間平均成長率は2.2パーセントです。

また、既存事業の安定的な営業利益を「NC10」への投資に回し、収益性および投資効率を高めることでROE8パーセント以上を目指し、PBRの改善にも努めていきます。

中期経営計画における「NC10」アイテムの占める割合は24パーセントですが、さらなる新規製品の開発と新たなM&Aを進め、その割合を高めていきます。

3-11. 連結売上高および連結営業利益の推移

スライドのグラフは、2021年度からの連結売上高および連結営業利益の推移を表したものです。自動車関連設備投資の増加、成長著しいインド市場における受注拡大といった明るい兆しも見られますが、中国経済の停滞や急激な円安による資源エネルギー、原材料価格の高騰といった要因から、引き続き厳しい受注環境が続くものと予想されるため、2026年以降は保守的な計画としています。

一方で、利益面では自動化が進んだことによる生産性向上や改善活動の効果、そして今進めている全拠点、全事業黒字化活動の効果も期待でき、大幅な増益を見込んでいます。

3-12. 今後の経営改革について

今後の経営改革についてです。ROEやROICの改善、政策保有株式の縮減、また配当性向からDOE(株主資本配当率)への転換については、今後の事業環境や業績見通しを踏まえて慎重に検討していきます。なお、これらに関しては、改善すべき内容があれば、決まり次第速やかにご案内します。

4-1. 配当金の推移

株主還元についてご説明します。当期の配当はすでに発表しているとおり、前期実績より2円増額の中間配当7円、期末配当7円の年間14円を予定しています。

4-2.株主優待制度について

株主優待制度についてです。これは日頃のご愛顧に感謝の気持ちを込めて、より多くの株主のみなさまに当社の株式を保有していただけるよう制度設計を行い、保有株式に応じてクオカードを支給する制度です。

継続保有期間1年以上などの条件を設けていますが、スライド右下のとおり、6月9日時点の当社の株価を反映した配当と今回の優待を合わせた利回りは5.19パーセントとなっています。このように、配当とあわせてより充実した株主還元を実現しました。

今後もさらに充実した株主優待制度の検討を進めていきますので、株主のみなさまには持続的なご支援をお願いします。

今後も企業価値向上に努め、より多くの方に株主としてご参加いただけるよう、必要に応じて制度の見直しも行っていきますので、よろしくお願いします。

以上で本日のご説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。