INDEX

閔弘圭氏:本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。株式会社Liberaware2025年7月期第3四半期決算説明会を開始します。私は代表取締役の閔弘圭です。本日はよろしくお願いします。

それでは、詳細説明に移ります。スライドが本日の発表の流れになります。まずは、本発表のエグゼクティブサマリーをご説明したのち、当社のことをまだ知らない方もいらっしゃると思いますので、あらためて事業概要、そして決算概要、最後に将来の展望についてお伝えします。

決算サマリー:売上規模拡大とSBIRの影響を除く経常損失減少

エグゼクティブサマリーをご説明します。まずは第3四半期の決算数値サマリーになります。当四半期も売上高、各損益ともに順調に推移しています。

売上高は2024年7月期に比べて大きく成長しており、前年同期比で1.6倍の売上高を獲得しています。これは、下水道や天井裏などの屋内ドローン点検の活用が認知されてきており、市場が確立されてきたことが背景と考えています。また、売上高増加により売上総利益率は前年同期比2ポイント上昇しています。

経常損益に関しては、2025年7月期から本格的に開始したSBIR制度に伴うプロダクト開発の研究開発費が13億円発生したことにより、前年同期よりも損失が大きくなっていますが、SBIRの研究開発費は全額補助金対象であり、のちに補助金にて補填されます。

当該研究開発費を除いてノーマライズした場合、経常損益はマイナス6,200万円となり、損失は大きく縮小しています。

決算サマリー:SBIR制度に関する主な補助金の状況

スライドは、SBIR制度に関する主な補助金の状況となります。申請は2件で、合計額は13億4,400万円となります。いずれも現在審査中ではありますが、第4四半期中の補助金収入の計上を見込んで進めています。

すでに2度、補助金の申請は実施しており、問題なく受領していることから、今回の申請についても予定どおり進むと考えています。

決算サマリー:事業構築フェーズから拡大フェーズへ

第3四半期の全体サマリーとなります。第3四半期実績についても、業績は順調に推移しており、前年から引き続き事業構築フェーズから拡大フェーズに移行したことを示していると考えています。この拡大フェーズを示す例として下水道調査が挙げられます。

今までも当社では下水道の調査を「IBIS」にて実施してきましたが、実証実験の要素が大きかったところ、八潮市の活用実績により、下水道調査においてドローンが有効であることが示されたことで、今後下水道調査の実現場において活用されてくると考えています。今後もこのようなユースケースが確立されていくことで市場も拡大していくと考えています。

足元では「下水道管路の全国特別重点調査」により、自治体との連携を推進中であり、実現場での実績を積み重ねることで、「IBIS」の標準利用を進め、自治体や周辺業者に機体の導入を促す、というかたちで考えています。

2025年7月期の業績予想については、進捗率75パーセントとなりました。前年同期の進捗率75パーセントと比較して同推移ですが、第3四半期で3/4を超えており、想定どおりの進捗となっています。

足元の数字だけでなく、将来のさらなる成長に向けて、各種成長戦略も予定どおり進捗しており、国家プロジェクト(SBIR)3件、補助金総額約57億円のプロダクト開発のうち、1件は開発完了し、2件は順調に進んでいます。

海外展開については、韓国市場は官民連携を進めており、ユースケース創出と認知拡大を推進中です。

主要都市自治体と下水道管路等の調査活動を実施

スライドは、当社が八潮市での取り組み以降、重点的に実施している下水道などの調査の事例です。

直近では北九州市・神戸市・千葉市において調査を実施し、「IBIS」を活用して、鮮明な画像の取得や従来調査が困難であった箇所への対応といった成果が得られました。今後も、このような実績を積み上げ、下水道分野における「IBIS」の活用範囲をさらに広げていきます。

MISSION

あらためて当社事業概要をご説明します。

当社のミッションは、誰もが安全な社会を作ることです。

VISION

そのために、現在進行しているインフラの老朽化における、見えないリスクを可視化することをビジョンとし、事業を行っています。

ビジネスモデル

ビジネスモデルをご説明します。当社は、ハードウェアとして、狭くて、暗くて、危険な環境を点検できる、自社で開発した産業用小型ドローンと、ソフトウェアとして、ドローンなどで撮影した映像データを定量的に解析できる「LAPIS」という技術を用いて事業を行っています。

ビジネスモデル

当社のビジネスモデルは大きく、ハードウェアを基盤とするものと、ソフトウェアを基盤とするものに分かれています。

ハードウェアを使ったサービスとしては、2つの柱があります。1つ目は、当社のパイロットがドローンを活用して点検を行う点検ソリューションです。2つ目は、ドローンの販売やレンタルを行う「プロダクト提供サービス」になります。

ソフトウェアを基盤とするサービスとしては、取得したデータを3次元化・解析するサービスと、デジタルツインプラットフォーム「TRANCITY」の提供があります。「TRANCITY」は、JR東日本との合弁会社CalTaを通じて展開しています。

また、当社の特徴的な事業として「ソリューション開発事業」があります。ソリューション開発事業は、大企業等からの案件を受け、受託開発を実施するもので、この事業における開発案件から、「IBIS」や「LAPIS」といったプロダクトが生まれました。今後も本事業を通じて新たなプロダクトを生み出していきます。

事業構成

スライドは事業構成図になります。全体の約6割が「ドローン事業」であり、残りが「ソリューション開発事業」と「デジタルツイン事業」に分かれています。

ドローン事業は、「プロダクト提供サービス」と「点検ソリューション」が、スライドのとおりの割合となっています。

次に割合の大きいソリューション開発事業では、原発内の調査や測量アプリの開発などを行っています。

デジタルツイン事業には、3D化などの画像処理や、建物・施設のデジタル化やBIM化、「TRANCITY」のライセンスフィーなどが含まれています。

当社は、ドローン技術とデジタルツインを活用し、インフラの点検・調査からデータ解析・管理までを一貫して支援しています。

ハードウェア:屋内狭小空間点検ドローン「IBIS2」について

当社の強みとなるプロダクト、自社開発の産業用小型ドローン「IBIS2」を紹介します。「IBIS2」は国産ドローンであり、狭く、暗く、危険な環境での点検に特化しています。

特に注目すべきは、世界でもまだ類を見ない小型防塵モーターを搭載している点です。また、飛行制御アルゴリズムから機構・筐体まで、すべてを自社で開発し、狭い空間でも安定した飛行が可能で、過酷な環境に耐えうる高い性能を実現しました。

ソフトウェア:3次元解析クラウド「LAPIS」について

続いての強みのプロダクトである、3次元解析クラウド「LAPIS」についてご説明します。「LAPIS」は、狭く、暗く、危険な環境でも高精度な3次元解析を実現するソフトウェアです。

さまざまな画像処理やAI解析、BIM図面化などと連携し、異常検知や差分検知、体積計測モデルの作成まで、多彩なニーズに対応可能です。

デジタルツインプラットフォーム「TRANCITY」の説明

デジタルツインプラットフォーム「TRANCITY」についてご説明します。こちらは、ドローンやスマートフォンで撮影した映像を3次元化し、点群データとして管理するプラットフォームです。

「LAPIS」の画像処理技術を基に、JR東日本と当社の合弁会社であるCalTaと共同開発しました。さまざまな端末で閲覧可能で、すでにJR東日本を含む、1万1,900名以上のユーザーに利用いただいています。

強み・優位性

このように、当社の強みは、劣悪環境や狭小空間など入手困難なデータを獲得できるハードの優位性となります。そして、劣悪な環境を定量化できるデータの優位性があり、それを評価いただいているからこそ、大手企業との取引を含め累計で330社以上と取引させていただいています。

強み・優位性(ハード):国産の産業用小型ドローンの展開

当社のハードウェアの強みについてご説明します。ドローン業界は屋外・屋内、サイズで分類され、主流は屋外用の大型ドローンです。これは、空撮や配達用途がドローン業界の起点だったためです。

一方、当社は狭く暗く危険な環境で飛べるドローンの開発に注力してきました。この分野では他社を凌駕する技術力を持っていると自負しています。また、小型産業用ドローンの開発は技術的に非常に難しく、当社はこの分野で独自の地位を築いています。さらに、「小型・屋内狭所」という領域でソフトからハードまで網羅的に特許を構築しています。

強み・優位性(ソフト):劣悪な空間の3次元化技術

当社ソフトウェアの強みについてご説明します。狭く暗い環境はノイズが多くデータ処理が困難ですが、当社のソフトウェアはこれらを克服し、3次元化と環境の定量化を実現しています。

この技術により、図面が存在しない環境でも、ドローンで撮影したデータを3次元化し、独自のサービスを提供しています。図面がない建物において、天井などの狭く暗い空間は当社の技術を、広い空間は既存の測量機器を活用し、建物全体を3次元データ化することで BIM化を実現します。

BIMは政府が推奨する分野であり、当社の技術は、さらなる成長に向けて重要な役割を果たすと考えています。

第3四半期業績ハイライト

2025年7月期第3四半期の詳細な業績報告をします。第3四半期の業績ハイライトになります。第3四半期は売上高・粗利率ともに順調に推移しており、通期業績予想に対しては想定どおり進捗しています。

SBIR研究開発費が第3四半期に大きく増加していますが、関連するシステムの外注費の影響であり、想定どおりの予算消化となっています。この研究開発費は冒頭お伝えしたとおり、補助金収入で補填されるもので、経常黒字化に向け順調に進捗しています。

第3四半期事業ハイライト

事業ハイライトになります。「IBIS」の実績が評価され、上下水道のDX推進や九電ドローンサービスとのインフラ維持管理モデルの構築のための提携など、市場を広げる活動を進めてきました。

下水道調査については、自治体との連携を進めながら、将来に向けた下水道調査のデジタル化を目的とした補助金にも採択され、研究を進めています。

ホバリング機能を搭載した新製品「IBIS2-A」を3月に予定どおりリリースし、足元で後ろ倒しとなっていた機体販売の強化を進めています。

国家プロジェクトでは鉄道や建設現場、災害対応領域でのドローン・DX技術の開発と実証を進めています。さらに、韓国だけでなく、マレーシアでの市場調査をさらに進めるために補助金を獲得しており、国内外での成長戦略が着実に前進しています。

業績概要

第3四半期の詳細説明に移ります。初めに、数値報告となります。

業績概要をご説明します。売上、売上総利益はお伝えしたとおりですが、経常損益は13億2,100万円の赤字となりました。後ほど詳しくお伝えしますが、こちらはSBIR研究開発活動の本格化に伴う開発費13億9,500万の計上によるものであり、SBIRの影響を除けば、経常損失は大幅に改善しています。

機体販売と機体販売以外売上高の前年同期比較

各指標を詳細に見ていきます。こちらのスライドは、売上高実績について、機体販売と機体販売以外に分けて、前年同期と比較したものです。

機体販売について、第3四半期は14.5セットの販売となり前年同期比で減少となりましたが、機体販売は2024年7月期に開始したばかりであり、また、「IBIS2-A」のリリースにより、今後リカバリーが出来るものと考えています。

機体販売以外の売上高のうち、リカーリング収益について、前年同期の2億7,000万円から約2倍の5億5,000万円へと大幅に増加しました。機体販売以外の売上高に占めるリカーリング収益の比率も72パーセントと高水準を維持しており、当社のビジネスの安定性を示しています。

リカーリング収益に係る各種KPI推移(四半期)

リカーリング収益について、各種KPIの推移をご説明します。まず、点検・データ処理サービスの継続顧客の売上高割合は71パーセントとなり、これは、引き続き点検ソリューションに関する継続顧客からのリピート発注が多かったことによります。

月額収入のサービスであるレンタルセット数について、第2四半期と比較すると、特段の増加は見られませんが、想定内の進捗と考えています。

ソリューション開発における前年から継続して実施している案件数は、前年同期の4件から10件へと増加しました。これは、スポット案件でなく、継続的に開発の依頼がなされる案件が増えてきていることを示しています。

全体的に、リカーリング収益に関する各KPIは順調に成長しており、安定した収益基盤が確立されつつあります。

利益に関する各種指標

利益に関する各種指標についてご説明します。まず、売上総利益率は前年同期の44パーセントから46パーセントへと上昇しました。次に、研究開発費以外の販管費ですが、売上の大幅増加に対して若干の増加にとどまっています。

最後に、研究開発費についてですが、第3四半期の累計額は約15億円になります。ただし、補助金対象費用を除いた実質的な研究開発費は6,000万円となっており、SBIRを含む補助金を活用することで、成長戦略に必要な投資を継続しながら、キャッシュアウトフローの抑制も両立しています。

このように、当社は売上・利益の成長を維持しつつ、コスト管理と資金活用のバランスを取りながら、持続的な成長を目指しています。

売上高に係る事業別/サービス別推移(前年同期比)

売上高の事業別/サービス別の前年同期との比較になります。グラフを見ていただければご理解いただけますが、当四半期においてもすべての事業領域で売上増加を達成しており、 今後のさらなる成長に向けて良い流れを作ることができています。

売上高と営業損益の実績推移(四半期)

売上高と営業損益の四半期推移になります。営業損益は第2四半期に黒字転換し、第3四半期も小幅な赤字にとどまるなど、改善が継続しています。

売上高は第2四半期の好業績と「IBIS2-A」の受注後ろ倒しが影響し、第2四半期より減少したものの、想定内の進捗と考えています。

売上総利益率と売上総利益額の実績推移(四半期)

売上総利益率と、売上総利益額の四半期ごとの推移を示しています。売上総利益率は24年7月期第2四半期以降40パーセント以上で推移しており、安定した収益構造が確立されつつあります。

販管費(研究開発費以外)実績推移(四半期)

研究開発費以外の販管費の実績推移についてご説明します。人件費は、足元のニーズ拡大を鑑み、事業領域拡大を進めるため、営業等ビジネスサイドの人員増を進めています。過年度より人件費は増加しますが、一定水準をベースにコントロールしていきます。

経費は、当四半期スポットにより増加しているものの、人員増や売上高増を実現しながら、比例して伸びないようコントロールしています。

研究開発費実績推移(四半期)

四半期ごとの研究開発費実績推移です。グラフを見ていただきますと、2024年7月期の下期からSBIRプロジェクトが開始され、研究開発費の総額が大きく増加しています。

特に第3四半期はKDDIスマートドローンへ外注している通信システム関連費など、システムの納品が重なり大きく増加しています。今後も、プロジェクトが続いている間は同じような推移になる見込みです。

SBIR以外の研究開発費は、低減傾向にあるものの、開発自体は順調に進捗しています。これは、既存事業の研究開発に企画・設計段階のものが多く、人件費が主なコストとなっているためです。

経常損益の増減分析(前年同期比)

こちらは、SBIRの研究開発費と補助金収入が、経常損益にどのように影響を与えているかを知っていただきたいスライドとなります。前年同期の経常損益と当四半期の経常損益を比較して分析しています。

PLに大きな影響を与えるSBIR研究開発費を除いたご説明として、黒色の縦の点線より左側をご覧ください。前年同期と比較して売上高が3.7億円増加し、原価もその分1.8億円増加したことにより、SBIR研究開発費と補助金を除いた経常損益はマイナス6,200万円に改善しています。

そこに、SBIR研究開発費と受領済みの補助金収入が入り、最終的なP/Lの経常損益はマイナス13億2,100万円となりました。こちらの分析により、補助金収入が予定どおり今期中に入った場合の当社の経常収益力が、ご理解いただけると思います。

顧客数推移と業界大手顧客数

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顧客数推移と業界大手顧客数についてご説明します。まず、累計の顧客企業数は2025年4月末時点で330社となり、新規顧客が順調に増加するとともに、既存顧客の継続利用も多い状況です。

業界大手企業との取引も進んでおり、今後も大手企業の活用を広げながら、業界標準のポジショニングを狙います。

貸借対照表(前期末比較)

貸借対照表になります。純資産がマイナスとなり一時的な債務超過となっていますが、申請中のSBIR補助金請求額13億円の収入により、債務超過は解消する見込みです。また、補助金が入金されることで、現金及び預金残高も適正な水準となる見込みです。

(半期別)役職員数推移(第2四半期末)

役職員数の推移です。半期ごとの開示としているため数値は変わっていませんが、事業規模の拡大に応じて着実に採用を進めています。

活動報告サマリ:成長戦略に沿った各種活動を実施

活動報告となります。まず活動報告のサマリをご説明します。当社は、成長戦略の実現のため、戦略に沿った活動を行いました。第3四半期には、既存サービスの適用範囲の拡充につながる活動を多数実施し、また、「IBIS2-A」のリリースやオプション開発も実施しました。

「下水道管路の全国特別重点調査」に予備費より99億円支出

個別の活動報告に移ります。下水道のドローン調査に関してのご報告となります。前回の決算説明では、埼玉県八潮市の道路陥没事故の下水管調査において当社の「IBIS2」が調査に利用され、運転席の発見に至ったことをお伝えしました。

こちらの埼玉県八潮市の道路陥没事故を受けて、「下水道管路の全国特別重点調査」が始まっています。具体的には、2024年度予算予備費より99億円が割り当てられ、2026年夏までの約1年の間に約5,000キロの下水道管路の点検が求められることとなりました。

調査の概要説明において、「調査方法の高度化」としてデジタル技術の活用がうながされ、管路内調査に「ドローン」が示されており、下水道の調査にドローンの活用が推奨されています。

八潮市の下水道調査における実績によりIBIS2の活用周知が進む

そのような環境の中、この八潮市の下水道調査における実績から、「IBIS2」の下水道調査における活用周知は、着実に進んでいると考えています。一例として、国土交通省のカタログや対策検討委員会資料にドローンの例示として「IBIS2」が紹介されています。

(再掲)主要都市自治体と下水道管路等の調査活動を実施

このような中で、冒頭でもお伝えしましたが、先行して主要都市の自治体において下水道管路などの調査活動を実施しています。その中で北九州市では、先んじて「全国特別重点調査」として「IBIS2」を利用した調査を実施し、調査に成功しています。

下水道維持管理の市場規模は1.1兆円にものぼる

当社がターゲットとしている市場規模についてお伝えします。ここまで全国特別重点調査などを背景とした足元の下水道調査に関する実績についてお伝えしましたが、その実績を積み上げて、当社がまず目指しているSOMは121億円の市場と推計しています。これは自治体や下水道関連事業者が「IBIS」を1セットずつ保有したと仮定して計算をしたものです。

TAM、SAMについては、中長期で下水道維持管理市場の深耕を進めることで、例えば下水道管路を3次元クラウドで管理するデジタルツインプラットフォームの展開や、下水処理場などのBIM化、AIによる画像診断などを進めていきたいと考えています。

下水道関連の業務は特に厳しい環境が多く、範囲も非常に広いため、人に代える手段が必要で、DX化も必須と考えています。

それでは、次ページにて短期から中期で目指すところとして、全国特別重点調査からSOMの獲得に焦点を当ててお伝えします。

短中期:事例蓄積によりインフラ点検標準機材としての地位確立へ

下水道の領域でドローンの利便性がようやく認知され、いくつかの実績で有効性は確認されたため、いずれは下水道調査においてドローンが標準的に利用されると考えています。

一方、ドローンといった新規性の高いツールの導入は、長年行われてきた、既存のオペレーションを抜本的に変えることから容易ではなく、実証実験などで着実に事例を積み重ねることで浸透し、標準的なツールとなっていきます。当社は他の業界でも同じように「IBIS」による点検手法を浸透させてきました。

この点、自治体との連携は入口も容易でなく、非常に時間を要するものとみなさまもご理解いただいているかと思いますが、緊急性が高く、どのように実施すればよいかわからないことも多いこの全国特別重点調査によって、事例を積み重ねる機会を得られたことで、より早く標準利用に向けた動きとなると考えています。

したがって、足元の全国特別重点調査における調査は事例蓄積を主眼とし、その先の標準機材としての地位を狙うことで大きな市場を獲得していこうと考えています。

短中期:調査事例蓄積に向け商談数は増加、IBIS2導入済先もあり

このように、まずは事例の蓄積を重ねるため、主に全国特別重点調査対象の自治体や関連事業者を中心に商談を進め、直近の活動実績としては、104の商談を実施し、順調に進行しています。

以前は下水道関連の自治体・事業者における機体販売・レンタル導入実績はゼロでしたが、第4四半期には決算発表日時点で導入済みが7セットに達しています。これにより、さらに多くの事例を積み重ね、導入数の増加を目指しています。

中長期:国土交通省との取り組みを活用しデジタル化研究を推進

中長期に向けた取り組みの一環として、直近で採択された国土交通省が募集した応用研究テーマ「下水道におけるデータやデジタル技術の活用に資する技術の開発」を活用し、将来的にデジタルツインプラットフォームや調査に必要なデータ解析などにつながるようなハード、ソフトの研究開発を進めていきます。

下水道内での点検利用促進のため距離測定機器開発と実証に成功

ハードウェアの開発として、下水道内の閉鎖空間においてGPSが届かない環境でも高精度な距離測定が可能な小型ドローンに搭載できる測定機器の開発に成功しました。今後、この技術をプロダクトに実装し、下水道調査の効率化と安全性向上に寄与することを目指しています。

九電ドローンサービスと業務提携開始、ドローン社会実装に向け協業

既存サービス適用範囲の拡充として、当社は九電ドローンサービスと業務提携を開始しました。九電ドローンサービスは豊富な人材や設備、九州における幅広いネットワークを有しているため、両社の強みを活かし、サービス展開やソリューション開発に期待をしています。

北九州市にて港湾桟橋点検を革新的に変える取り組みを実施

これまでの北九州市での実績を踏まえ、港湾桟橋点検における「IBIS2」の活用を本格的に開始しました。今後はこれを標準化し、全国展開を目指した先進的な取り組みとして進めていきます。

「JR東日本グループ ドローン DX CHAMPIONSHIP」が開催

活動報告の最後に、先日、高輪ゲートウェイ駅直結の「TAKANAWA GATEWAY CITY」 で開催された、JR東日本主催の「JR東日本グループ ドローンDX CHAMPIONSHIP」 についてお伝えします。

このイベントでは、業務でドローンを活用している企業や部署が集まり、ドローンレースや操縦体験、職業体験プログラムなど、さまざまなコンテンツが展開されました。

使用されたドローンは、当社の「IBIS2 Assist」になります。JR東日本をはじめ、ソフトバンク、KDDI、東京電力など、「IBIS」を導入している企業のみなさまが参加され、新しい技術や可能性を体験する貴重な機会となりました。

2025年7月期通期業績予想(25年1月30日上方修正)

2025年7月期通期の業績予想の展望になります。期初の業績予想について、1月30日に上方修正を行いましたが、当四半期は足元の状況を鑑みて、据え置きとしています。

業績予想数値は売上高13億円、当期純利益5,000万円ですが、研究開発費は約17億円の投資を見込んでいます。

通期業績予想に対する四半期ごとの売上高進捗率

業績予想に対する当四半期の売上高進捗率になります。第3四半期までの売上高は、修正後の通期業績予想に対して75パーセントの進捗率となり、業績予想に対して順調に推移しています。

売上高予想に関する説明

スライドは売上高予測に関するデータです。機体販売以外の売上は引き続き好調で、第3四半期の実績と受注残を合わせて計画比104パーセントに達成しています。

機体販売については、第3四半期の時点で28.5セットと計画の36セットには届いていないものの、下水道領域におけるニーズの高まりや、IBIS2-Aへの関心が着実に広がっていることから、計画値を達成できるようパイプラインの拡充に努めています。

全体として、収益基盤は安定的に拡大しており、事業は着実に成長を続けています。

売上高に係る事業別/サービス別年度推移

スライドは事業別の予想値になります。足元では機体販売の未達があるものの、業績予想達成に向けた事業別のトレンドに大きな変更はありません。

共創を軸に事業領域の拡大と既存サービスの付加価値向上を進め継続的な成長を加速

当社の成長戦略として、2025年7月期に関係するものについてご説明します。当社の成長戦略は、コアプロダクトの進化、成長エンジンの獲得、海外展開の3つになります。こちらは予定どおり進行しています。

2025年7月期に関係する項目として、既存サービスの適用範囲の拡充、既存サービスの付加価値向上、次世代ソフトウェア開発、鉄道環境特化型ドローン、海外展開についてご説明します。

主要業界の深掘りによる業界拡張と新規領域への拡大

引き続き各業界リーダーと共創してニーズを把握することでユースケースを拡大し、各社ごとの深堀と横展開を狙います。また、獲得したユースケースやノウハウをもとに新規業界、新規領域を開拓していきます。

自治体保有のインフラ点検実績を増やしサービス領域を拡大

こちらも同様に、各自治体のインフラ点検実績を積み重ねることで、サービスの提供範囲をさらに広げています。

自治体ごとのニーズを把握し、新たなユースケースを開拓することで、下水道施設やオフィスビル、駅舎、港湾桟橋といった多様なインフラへの展開を進めています。

国家PJ参画①災害時生存者捜索に係るドローン技術開発

国家プロジェクト3件の進捗状況をご説明します。

災害時生存者捜索に係るドローン技術開発は、開発と実証実験が完了しています。災害時の生存者探索において当社ドローンの有効性が確認できたことから、今後は実機への実装に向けた開発と、現場導入のための関係各所との意見交換を行っていきます。

国家PJ参画②建設現場業務効率化に係るソリューション開発

建設現場の業務効率化を図るため、ドローンと3次元化技術を用いて施工管理のデジタル化、遠隔化に関するソリューション開発プロジェクトとなります。

こちらは、4.7億円の補助金を基にした3年間のプロジェクトですが、当社のソフトウェアである「LAPIS」をベースに開発するものになります。プロジェクトの進捗としては、ユースケースの検討が完了し、事業モデルの検証に着手しています。

ユースケース検討から得られた知見を反映し、ソリューション開発を進めています。

国家PJ参画③鉄道業点検に係るドローンソリューション開発

国家プロジェクトで最大の予算規模を誇る、鉄道事業の点検向けドローンソリューション開発についてご報告します。このプロジェクトでは、鉄道現場の保全業務を、より安全かつ効率的に行うため、ドローンを活用した点検ソリューションを開発しています。

これまで作業員が実施していた線路沿線の総合的な保守点検、例えば建築限界内の障害物や環境変化の確認といった業務を、ドローンで代替することを目指しています。

JR東日本をはじめとする鉄道事業者の協力のもと、原理試作機の開発を終え、2025年夏の各システムの連携試験に向け、検証を進めています。実運用は2028年春を予定しています。

ソリューションイメージ

スライドは開発中のドローンをイメージしたものです。鉄道環境に特化した仕様となっており、日常的な保全業務を支援することで、作業の負担軽減と安全性の向上に貢献します。

鉄道業点検に係るドローンソリューションの市場性

鉄道業点検に係るドローンソリューションの市場性です。国内の鉄道事業者に対象を限定した場合でも、本サービスにおけるSOMは約2,000億円と推定され、全世界の鉄道事業者に対して設備インフラ点検の業務全体を代替した場合、市場規模は13兆円にのぼります。

複数の鉄道事業者が参画

今回のプロジェクトには、JR東日本に加え、JR東海、JR西日本、JR九州、西武鉄道の計5社が参画しています。

JRグループ6社のうち、本州及び九州の4社が参加しており、鉄道業界全体での関心の高さがうかがえます。特に、既存の点検手法の効率化や安全性向上に向けた技術導入への期待が高まっており、各社が積極的に連携を進めています。

大阪・関西万博に出展(25年4月15日~21日)

ドローン技術の社会的な認知度向上と受容性の強化を目的とし、大阪・関西万博へ期間限定で出展しました。

試験場に線路を敷設

鉄道ドローンソリューションの実験場所をご紹介します。スライドは、鉄道関連企業の協力のもと、実際の線路を再現しています。ドローン会社の中で、当社だけがこのような設備を保有しており、鉄道ドローンソリューションの開発において競争力を発揮し、これにより、実現場に適したプロダクトの開発を進めていきます。

東アジア・東南アジアを中心に海外展開を推進中

海外展開です。韓国では日本の屋内ドローン市場モデルを応用し、ユースケースの創出と認知度向上に努めています。

香港ではAI・ドローン分野での提携を通じて新規事業の機会を創出し、アジア全体への展開基盤を強化しています。

マレーシアでは、グローバルサウス補助金を活用し、現地市場の調査準備を進めています。

各地域に最適化した戦略的な展開を進めていきます。

韓国:日本で築いた事業モデルを基に市場形成を図る

韓国における事業モデルの詳細になります。日本で築いた屋内ドローン点検の事業モデルを韓国市場へ展開する戦略を示しています。日本では、立ち上げフェーズ、市場拡張フェーズ、社会実装・ソリューション化フェーズと進めています。

韓国では立ち上げフェーズとして、自治体や企業との連携によってユースケース創出と認知を広げていきます。

韓国:官民連携によりユースケース創出と認知拡大を推進中

韓国では、官民連携によってインフラ関連分野でのドローンやデジタルツイン活用が急速に進んでいます。先進的な企業4社と連携し、ソフトウェアや3Dデータの活用によるDXソリューションを展開しています。

4つの自治体とも連携し、スマートシティ推進や老朽インフラの改善支援を行っています。これにより、韓国国内での技術認知とサービス拡大に大きく貢献しています。

以上で、株式会社Liberaware2025年7月期第3四半期決算説明会は終了とします。