前期(2025年3月期)の振り返り

項大雨氏(以下、項):こんにちは、Kudan代表取締役の項です​。2025年3月期通期の決算説明を始めます。

はじめに、前期の振り返りのサマリーです​。これまで顧客製品化の達成と拡大を目指してきましたが、技術力の評価が市場で進み、顧客製品化は8件と前年比で倍増し、当社技術の実用化の実績も加速して積み上げることができました​。

一方で、当社の次世代技術を採用した先進的な顧客製品は、市場に対して先行をしすぎた側面も現れ、期待に反しそれらの顧客製品の普及速度は想定を下回るものとなりました​。要因として、補完技術やエコシステムの成熟不足が阻害要因となり、ロボティクスは製品化案件の製品ライセンスが伸び悩み、デジタルツインでも欧州公共案件で遅延が発生しています​。

結果として、売上は計画7億円に対して、実績が5.1億円と未達となりました​。

そして、このような市場の発展速度に合わせるかたちで対応し、収益性と成長力を改善するため、よりソリューション志向で新技術・補完技術に拡大する成長戦略に切り替え、一過性の費用増加と損失悪化が発生しました​。

具体的には、組織体制の修正と新規開発の発生により、コスト計画11.3億円に対して実績13.1億円となり、売上減少と合わせて、調整後利益ベースの利益は計画マイナス3.5億円に対して、実績マイナス7.5億円と悪化しました​。

なお、3月に開示しました修正予想に対しては売上・利益ともに想定どおりに着地しています​。

今期(2026年3月期)に向けて

このような現状をふまえ、今期に向けてのサマリーですが、​新しい成長戦略を強化し、収益性・成長性の抜本的な改善を目指します​。

具体的には、これまで注力してきた人工知覚に、人工知能を融合することで、技術領域を拡大し、空間知覚として進化する方向に事業を加速させます​。空間知覚は、ロボティクスとデジタルツイン向けのコア技術群に拡大して付加価値を高め、さらには社会実装の加速の後押しをも狙うものであり、加えて、これまでのSW事業をコアとしながらSW/HWパッケージにも拡張をすすめ、事業の多層化に取り組みます​。

このような方針のもとで、開発案件の売上・収益を強化しながら顧客製品の普及への依存を短期的には低減し、今期中から大型案件の立ち上がりを予定しています​。

今期は、売上7億円と前年比35パーセントの成長を見込んでおり、加えて期末までに調整後営業赤字をマイナス8.8億円からマイナス5.9億円まで圧縮し、来期以降さらに赤字縮小・黒字化を目指します​。

その主な内訳としては、一過性の費用の解消として、固定費低減が1.5億円、コア技術以外の開発費低減が0.5億円、新たな成長戦略による売上増で利益改善が0.8億円となります​。

空間知覚に注力する成長戦略のもと、短期的には開発案件による売上・収益性をより強化しながら、中期的には市場の加速に合わせて顧客製品化と製品ライセンスの拡大で飛躍的な成長を目指します​。

前期(2025年3月期)通期業績(1/2)

中山紘平氏(以下、中山):前期2025年3月期の業績に関して、CFOの中山よりご説明します。​

冒頭でご説明しました通り、売上・利益ともに期首予想を大幅に下回る結果となりましたが、修正後の予想に対しては、売上・利益ともに達成しています。​また、前年比では、売上は5パーセントの増加、利益は赤字拡大となっています。​

売上・営業利益の要因については冒頭でご説明しているため、ここでは経常利益以下の要因についてご説明します。​

営業外収益として、例年通り海外政府からの開発補助金を4,600万円計上していますが、イギリスの制度変更による支給率の低下や、ドイツの補助金承認の手続きに時間を要し前期中の計上ができなかったことから、対前年比および予算比で減額となっています。​

また、グループ内の債権・債務からの為替差損益は、期首から期末にかけて円安が進むと為替差益が出て、円高が進むと為替差損が出るものとなりますが、2024年3月期は大幅な円安により3.8億円の為替差益を計上したのに対し、前期は円安が限定的であり、為替差益が0.2億円に留まっています。なお、この為替差損益は、会計上出てくる数値ですが、実際の事業やキャッシュフローには影響を与えない点はご留意ください。​

以上の結果、営業外収益が前年比で大きく減少し、経常利益以下の大幅な減少となっています。​

純利益に関しては、開発投資の拡大により減損損失5,700万円を計上し、これが経常利益からの主な差異となっています。

前期(2025年3月期)通期業績(2/2)

こちらのスライドでは、前期期中に戦略を転換し、注力案件のリバランスを行った点について、数値でのご説明をしています。​

主にロボティクスでの顧客製品の普及遅れや、欧州の公共案件の進捗の遅れによる、売上および利益の下振れが見えたため、よりソリューション志向の事業の強化や、ロボティクス事業の収益性の高い案件などへの絞り込みを行いました。​

これにより、売上の減少部分を一定程度はカバーできましたが、本格的なリバランスの効果の拡大やそれに伴う大型案件の展開は今期以降になることもあり、売上の着地としては、当初予算比で大幅なマイナスとなっています。​

コスト面では、これらの施策により、売上に先行した投資コストとして、人員や開発のコストが一時的に大きく発生し、予算比で大幅な増加となっています。​

今期(2026年3月期)通期業績予想

当期2026年3月期の業績予想をご説明します。​

前期の戦略修正により、我々の提供する技術の空間知覚技術への拡大や、SW/HWパッケージの拡大などがそれぞれ売上に貢献し、売上高は7億円への拡大を見込んでいます。​

また、前期に拡大した人員・開発コストの最適化を今期は進めるため、当期末にかけて大きくコスト水準の低下と収益性の改善を達成する見込みですが、当期通期では、上期の膨らんだコスト状況の影響もあり、収益性の改善は限定的となる見込みです。

具体的には、当期末時点での調整後営業利益はマイナス5.9億円水準となり、この金額が来期に向けてのスタートとなる想定ですが、今期通期では、調整後営業利益はマイナス7.2​億円を見込んでいます。詳細については、後程改めてご説明します。​

なお、調整後営業利益とは、営業利益に、毎期経常的に発生する海外政府からの研究開発補助金収入を加えた数値であり、当社事業の収益性をより適切に表す指標としています。

前期ハイライト(1/5):顧客製品化の達成案件一覧

:事業内容についても、前期のハイライト案件を中心にご説明します​。

前期は、顧客の製品開発が進捗し、前年比で倍増となる8件の顧客製品化を達成しました​。特にグローバルでロボティクス向けの顧客製品化が拡大し、配送ロボット、産業用の自動搬送ロボット、清掃ロボット、放送用カメラロボットなど多岐にわたりました​。

このような顧客製品化の前進は、多くの案件の検証や開発を経て、実績の積み上がりと市場での技術的な評価を確立するものとなります​。

一方、補完技術やエコシステムの成熟不足もあり、ロボット向けは製品化案件の製品ライセンスが伸び悩む結果となり、顧客製品化の大幅な伸びに対して、製品関連売上の伸びはわずかと、大きな鈍化がみられています​。

前期ハイライト(2/5):高精度3D地図生成(NTTインフラネット社)

個別案件ですが、NTTインフラネット社と取り組む高精度3D地図生成についてです。

GPSのような衛星測位システムの信号が不安定となる都心部では、とくに高層ビルが乱立するエリアにおいては、これまで3D地図生成の高精度化が困難となっていましたが、​当社SLAM技術とNTTインフラネットが保有する地物情報であるマンホール位置などを組み合わせることで技術的な解決に成功しました​。

両社の協業による効率的で高精度な3D地図の生成手法には、さまざまなソリューション応用の方向性があり、スマートシティ、都市インフラ管理、防災・災害対策強化、環境負荷低減などの社会課題解決への展開を目指していきます​。

前期ハイライト(3/5):欧州産業向けアセットマネジメント

欧州産業向けアセットマネジメントについてです​。

本案件では、産業・物流設備向けへの需要を取り込み、多産業サービスプロバイダの世界大手と戦略的業務提携を締結しています​。具体的には、次世代デジタルツイン技術によるデジタルアセットマネジメントソリューションにより、迅速な空間データ取得、管理対象のAI自動認識と登録、データベース化と効率的な管理ツールを実現し、​提携先が管理する施設のデジタルトランスフォーメーションを目指します​。

提携先の多産業プロバイダーは世界大手としてグローバル展開し、5,000社以上の施設・不動産を管理しており、最新技術を活用したソリューションによって資産管理の自動化を計画しています​。すでに実証済みの検証では、資産データの精度、業務効率、データ信頼性の大幅向上を示す成果を達成しており、AIとフォトリアルな3Dデジタルツインで革新的な施設管理によって提携先のDXを飛躍的に加速させます​。

前期ハイライト(4/5):AR向けロボカメラ(FOX Sports社)

Fox Sports社と取り組んでいますAR向けロボットカメラの案件についてです​。

こちらの案件では、スポーツ放送向けのロボットカメラの位置認識に当社技術が採用され、革新的なAR映像による視聴体験を実現しました​。高速カメラワークに追従可能な随一の技術を認められ、従来では実現できなかった高速・広域・ダイナミックなカメラワークで、高精度な認識が可能になりました​。

これにより、迫力のあるAR映像を緻密でスムーズに生成することができ、1.4億人が視聴した世界最大規模のイベントである「Super Bowl」にて実用化がなされ、オープニングから試合解説まで多くの場面で活用された成功をもって、今後も大規模イベントでの実用化拡大を目指します​。

前期ハイライト(5/5):自律走行ロボット(Nvidia/ NexAIoT)

Nvidia社などとの自律走行ロボットの案件についてです​。

この案件では、当社SLAMとNvidia社ロボット向けAIプラットフォームを統合し、3Dセンサを使用しない低コスト仕様でありながら、非常に難易度の高い環境での自律走行を可能にする位置推定と障害物検知などの空間知覚を実現しています​。

Nvidia社の次世代AIとの相乗的な進化により、現在研究が活発化している人間協調型ロボットへの発展も目指す長期的な取り組みとなっている一方、協業によって統合技術はすでにロボット開発企業へ提供が開始され、台湾NexAIoT社などでは一部商用化も達成し、最終顧客である工場現場で実用化済みとなっており、今後の拡大が期待されます​。

今期の取り組み

今期の取り組みについてご説明します​。

今期は、成長戦略として、新たに新技術や補完技術を拡大し、より幅広い技術群としての空間知覚の提供を開始します​。これにより、先進的な顧客製品の普及速度をより戦略的に反映したかたちで、短期では開発案件の売上・収益の強化を目指し、​加えて、市場加速の後押しと、案件ごとの売上拡大を見込んでいます​。

空間知覚への拡張としてコアSWの拡大と、SW/HWパッケージの拡張に取り組んでおり、前期は組織体制の構築と先行開発の着手をしたところから、今期は開発の継続・強化、そして案件のマネタイズまで大きく加速します​。 ​ さらに、事業リバランスとして行った組織・開発ポートフォリオの修正は、前期に完了しているため、それらの一過性の費用の解消として空間知覚への選択と集中によるコスト最適化と売上拡大に注力し、営業損益・キャッシュフローの大幅改善を見込んでいます​。

では、これより、それぞれの取り組みの詳細についてご説明します​。

成長戦略アップデート(1/2):空間知覚への技術拡張

​​空間知覚への技術拡張ですが、​コア技術のSWとして、これまで注力してきた「機械の眼」である人工知覚に加えて、「機械の脳」である人工知能と技術シナジーを創出するかたちで融合し、より高度な3D空間認識向けの技術群に領域を拡大する空間知覚へと進化・発展していきます。

空間知覚は、これまでの独自技術であったSLAMに関連するLocalization and mappingに加えて、3Dデータの物体認識・セグメンテーション・意味合い抽出を行うSemantic 3D recognition、空間内のルート計画・障害物回避などの自律移動ナビゲーションを行うRobotic navigation、Novel View Synthesisなどによる3Dデータの実写表示を行うPhoto-real 3D representationなど、さまざまな空間に関連する直感的・パターン認識的技術を組み合わせた技術集合となり、​さらにこれらがロボティクスとデジタルツイン向けといったソリューションごとに連携し、機能を相互効率化するかたちで提供を行なっていきます​。

拡大した技術領域による高い付加価値の提供で、短期的には開発案件の売上・収益を強化し​、さらには、ソリューション向けの技術応用を効果的に支援することで市場加速を後押しするとともに、案件毎の売上拡大を見込んでいます​。

すでに前期から組織体制の構築や先行開発には着手してきており、今期は案件大型化を予定しています​。

成長戦略アップデート(2/2):SW/HWパッケージの拡大

SW/HWパッケージの拡大です​。今期は、SW事業をコアとし、技術面・販売面でシナジーが高い組込みSW/HWパッケージや補完SW/HWパッケージの提供を拡大していきます​。

HW要素は社外技術を活用し、より多層的な事業を構成することで、売上・利益の最大化を目指します​。

​組込みSW/HWパッケージは、HWをSWに統合して最適化したもので、これまでの開発者向けのパッケージに加えて、商用向けにも提供を拡大します​。補完SW/HWパッケージは、独立したSWとHWが相互補完するものであり、独自SW技術との互換性が確保された社外HWパッケージを併せて提供します​。

こうした取り組みを通して、SW/HW最適化による技術的競争力の向上や、関連HWの需要捕捉で案件の売上・収益を強化し、​社外調達するHW要素とあわせて十分な利益率も確保していきます。​

各種案件の見通しも高まっており、今期はデジタルツイン向けを中心に伸長する予定です​。

案件一覧(一部抜粋)

これらの成長戦略を反映し、空間知覚とSW/HWパッケージは今期から拡大を計画しています。

ロボティクスにおいては、四足作業ロボットや警備ロボット、汎用ロボット向けに、空間知覚に拡張した案件を計画しており、デジタルツイン向けにはインフラ設備管理DX、製造工程DX、車載マッピングシステムなどにおいては、空間知覚に拡張するとともに、SW/HWパッケージへの拡大も見込んでいます​。

抜粋した案件の一覧はスライドに記載のとおりです​。

収益構造の改善

中山:今期に行う収益構造の改善についても、改めてご説明します。​

前期通年の調整後営業赤字は7.5億円となっていますが、下期にコストを増やしてきている結果、前期末時点では8.8億円の水準となっています。​

これに対し、人員などの組織の最適化による固定費の削減1.5​億円、コア技術の絞り込みによる、コア技術以外の開発の凍結・外注等による0.5億円、売上拡大による利益貢献0.8億円、開発補助金の増額0.1​億円を見込んでいて、これにより、今期末時点で5.9億円の赤字水準までの改善を目指しています。​

当施策を年間を通して行うため、コストが重い上期の影響もあり、通期の調整後営業赤字としては7.2億円と、対前期比で小幅の改善に留まっています。​

ただし、期末時点の収益性は大きく改善し、これが来期に向けてのスタートとなるため、来期は継続的な売上拡大を進め、さらなる赤字幅の縮小を目指していきます。

中長期の成長イメージ

:最後に、中長期の成長イメージですが、​新たに技術領域を拡大する成長戦略のもと、短期的には開発案件による売上・収益性をより強化しながら、中長期的には市場の加速に合わせ、これまで通り顧客製品化の拡大と製品関連売上の拡大で飛躍的な成長を目指していきます​。

具体的には、これまでの顧客製品化の達成と積み上げに続けて、ソリューション志向での空間知覚への注力により、開発支援による顧客製品の成熟化と市場加速を後押しし、SW/HW含めて開発案件の売上・収益強化を推し進めていきます​。

そして、市場拡大に伴う顧客製品の進捗が数年後からより加速していくことで、SWライセンスなどの製品関連売上を中心とした、高収益な成長を目指していきます。

以上で決算発表説明を終わります。

質疑応答(要旨)①

Q:他社の商業利用されているロボットは増えてきていると感じますが、Kudanのターゲットとしている市場とは異なるのでしょうか?

ここから先は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

※本登録案内のメールが確認できない場合、迷惑メールフォルダやゴミ箱に自動的に振り分けられている可能性がありますので、今一度ご確認いただきますようお願いいたします。