目次

田中利一氏:三菱化工機株式会社、取締役社長の田中です。本日は、当社の2025年3月期の決算説明にご出席いただき、誠にありがとうございます。この説明会が、多くのみなさまにとって当社ビジネスへの理解が深まるきっかけとなれば幸いです。

目次のとおり、本編にサマリー・事業概況、決算実績、業績予想などを記載しています。また先日、2025年度から2027年度の3ヶ年にかかる新たな中期経営計画を発表しましたので、その概要についてもご説明します。

Appendixには、業績推移のほか、ビジネスモデルや、投資家のみなさまからご質問いただくことの多い受注と売上の計上時期などに関する資料を掲載しています。それでは、本編を目次に沿ってご説明します。

サマリー

2025年3月期のサマリーです。

2025年3月期の業績は、前期比で大きくプラスとなったことに加え、2026年3月期もさらなる業績拡大を見込んでいます。株主還元を大幅に強化し、2025年3月期の年間配当金額は前期より倍増、今期もさらに増額を予定しています。

非財務面においても、2025年3月期は当社初のM&Aや、当社の主力工場である川崎製作所の再編・再整備を決定するなど、かつてないチャレンジを進めてきました。

事業概況・売上構成

当社グループの事業について簡単にご説明します。

エンジニアリング事業においては、水素製造装置「HyGeia(ハイジェイア)」シリーズが、単体機械事業においては油清浄機「三菱セルフジェクター」シリーズが、それぞれトップシェアを確立しています。エンジニアリング事業と単体機械事業の売上高構成比は、およそ7対3となります。

地域別に見ると、国内の売上高が85パーセントと高くなっています。海外展開については、1970年代以降、顧客企業の海外進出に伴い、東南アジアを中心に実績を重ねてきました。近年は、海外大型工事の受注金額に応じて、海外の売上比率は10パーセントから30パーセント前後で推移しています。

連結損益計算書

決算実績についてご説明します。

連結損益計算書の概要です。

業績としては、売上高592億200万円、営業利益56億9,400万円、親会社株主に帰属する当期純利益48億7,900万円となりました。

売上高は、前期までの受注が寄与し、前期比で23.9パーセントの増加となっています。営業利益は、販売費及び一般管理費が増加しましたが、売上高の増加により売上総利益は前期比で29.1パーセントの増加となりました。当期純利益は、特別利益が減少し、前期比で9.6パーセントの減少となっています。

セグメント別の状況① エンジニアリング事業

セグメント別の業績についてご説明します。

エンジニアリング事業では、受注高444億6,400万円、売上高411億7,100万円、セグメント利益19億2,400万円、受注残高933億3,100万円となりました。

受注高の大幅な減少は、前年度は特に大型案件の受注があったためでありますが、一昨年度以前と比較しても、高水準の受注高を確保することができました。売上高、セグメント利益ともに、前期比で大きな増加を実現することができています。

セグメント別の状況② 単体機械事業

単体機械事業では、受注高204億6,300万円、売上高180億3,100万円、セグメント利益37億7,000万円、受注残高104億1,900万円となりました。

受注高、売上高とも好調な海運市況に支えられ、油清浄機の本体と部品、船舶環境規制対応機器が寄与し、前期に引き続き大幅に増加しています。セグメント利益は、売上高の増加による売上総利益の増加に加え、利益率の高いアフターサービス関連の売上高が増加し、前期比で大幅に増加しました。

主な販売管理費

主な販売管理費は、金額ベースでは前期比8.1パーセントの増加となりました。

これは、見積設計費や研究開発費等が減少した一方、人件費のほか、業務委託費用、販売手数料及び広告宣伝費などの「その他」が増加したことによるものです。売上高に対する販管費の比率は、前期比で低下しています。

連結貸借対照表

連結貸借対照表の概要です。

総資産は現金及び預金等が減少しましたが、売掛債権等の増加により増加しました。買掛債務等の減少により負債はわずかな減少となりましたが、当期純利益の計上等により純資産が増加した結果、自己資本比率は前期末より上昇し57.8パーセントとなりました。

連結キャッシュ・フロー計算書

連結キャッシュ・フロー計算書の概要です。

前期と比べ、売上高の増加を背景とした売上債権や、前渡金の増加及び支払いサイトの短縮により買掛債務が減少し、営業キャッシュフローはマイナスとなりました。

一方、株式会社東総のM&Aや固定資産の取得等の支出はありましたが、投資有価証券等の売却により、投資キャッシュフローは差し引きでプラスとなりました。以上のことから、フリーキャッシュフローは、スライドの線グラフで示したように、約32億6,800万円のマイナスとなっています。

以上、2025年3月期の決算報告となります。

政策保有株式の縮減 / 株式分割の実施

政策保有株式の縮減状況ならびに本年4月に実施した株式分割についてご説明します。

当社の政策保有株式の保有方針は、取引関係の維持・強化等、事業活動上の必要性や経済合理性を総合的に判断して保有することとしています。この方針に照らし、保有する便益やリスクが資本コストや保有目的に見合っているか検証し、妥当性が見出せなかった株式は売却を実施しています。これにより、政策保有株式は2015年度以降、着実に縮減が進んでいます。

当社は、本年4月1日を効力発生日とする株式分割を実施しました。当社株式の購入に必要な最低金額を引き下げ、当社への投資を検討するより多くの方に当社株式を購入しやすい環境を整えることで、今まで課題と認識していた株式流動性の向上を図っています。

前中期経営計画の振り返り①(業績推移)

先月発表した中期経営計画の概要をご説明します。

まずは前中期経営計画の振り返りです。スライドは、業績推移に関するものです。結果としては、受注高、売上高、営業利益率、ROE、配当性向など、すべての財務指標において、数値目標を達成することができました。

特に受注高は、2024年3月期において水素関連の大型案件の受注が寄与し、過去最高金額の受注高を実現することができています。

前中期経営計画の振り返り②(骨子)

次に、前中期経営計画で掲げた骨子の振り返りです。

前中期経営計画では「新たな事業ポートフォリオの確立」と「経営基盤の確立」の2つを骨子として掲げました。

1つ目の骨子である「新たな事業ポートフォリオの確立」については、新規事業の創出に向けて、これまでの技術を活かし、カーボンニュートラル向けに用途開発した大型水素案件の受注をはじめとして、一定の成果を得ることができました。

詳細な取り組み状況は、スライド17ページに記載したとおりです。ただし、新規開発や既存製品の改善・改良による新たな製品の市場投入とその事業化については、工程どおりには進捗せず、引き続き重要な継続課題だと認識しています。

新規事業の創出以外にも、ROICを採用した経営へのシフトや、当社の90年という長い歴史で初めてとなるM&Aの実行など、必要な施策を着実に前進させることができています。

2つ目の骨子である「経営基盤の確立」については、当社の歴史そのものである川崎製作所再編への着手、グループ全体のシェアードサービスを担う会社の設立、非財務情報の開示強化など、経営基盤の確立に必要な歩みを一つずつ着実に進めることができたと考えています。

以上、簡単ですが前中期経営計画の振り返りとなります。

外部環境認識

本中期経営計画のご説明に進みます。

まずは、本中期経営計画の前提となる、外部環境に関する当社認識についてご説明します。

今後も脱炭素化の流れが継続すること、半導体関連や新造船の需要増加が見込まれることなど、当社の追い風となる外部環境を見込んでいます。このような外部環境認識をベースに、中期経営計画を策定しました。

本中計の位置づけ

前中期経営計画は「足固め期」として、新規事業の種まきや組織改革に取り組んできました。本中期経営計画はその取り組みをベースとした「成長期」にあたります。最終年度には、顧客の脱炭素化のパートナーを担う企業となるべく、GX事業の製品・サービスを拡大していきます。

外部環境の潮流を確実に捉えながら、過去最大規模の売上高目標の達成を目指すことから、経営ビジョン実現に向けた「飛躍の3年間」と位置づけています。

本中計の骨子・主要施策

ご説明した「飛躍の3年間」を実現するための骨子と具体的な施策の一覧です。本中期経営計画の骨子は4つあり、「事業ポートフォリオの進化」「資本コスト・株価を意識した経営の確立」「人的資本・技術資本の強化」「経営ガバナンスの透明性向上」です。

1つ目の骨子である「事業ポートフォリオの進化」については、本年4月に新設したGX事業の確立と基盤事業の競争力強化を、事業の垣根を越えた全社的な事業拡大戦略のもと、推進しています。

2つ目の骨子である「資本コスト・株価を意識した経営の確立」については、経営ビジョン実現に向けて成長投資を最優先に資本配分しつつ、ROICの活用により資本効率の向上を図ります。また、PBRのさらなる向上を目指し、株主還元の強化、成長期待を高める情報発信の強化に取り組んでいきます。

骨子1、骨子2の実現に向け、それを支える「人的資本・技術資本の強化」「経営ガバナンスの透明性向上」に取り組んでいきます。

本中計の数値計画

本中期経営計画の数値計画です。

中期経営計画最終年度である2028年3月期には、売上高900億円、営業利益率9パーセント以上、ROE12パーセント以上を目標と設定しました。

売上高900億円は、過去最高水準の数値計画となります。チャレンジングな目標ですが、本中期経営計画最終期の受注残高をもとに、GX事業の確立を柱として事業ポートフォリオを進化させ、外部環境の追い風にも乗り、達成を目指していきます。

本中計における財務数値目標

当社が設定した財務数値の目標を一覧化しています。

PBRのさらなる向上を目指し、売上高の成長、収益性と効率性の向上、株主還元の強化を図ります。

キャッシュアロケーション

本中期経営計画3年間におけるキャッシュアロケーションを示しています。

新工場建設に150億円、M&Aに50億円、R&Dに30億円を投資し、GX事業の強化を図るとともに、株主還元を充実させていきます。

株主還元方針

株主還元方針です。

本中期経営計画最終年度の目標として配当性向40パーセントを設定するとともに、安定的な配当を実現するために、本中期経営計画期間中の配当下限としてDOE 3.5パーセントを設定しました。

PBRのさらなる向上を目指し、成長投資や財務の健全性とのバランスを取りながら、株主還元を強化し、企業価値向上を図っていきます。

報告セグメントの見直し

本年4月のセグメント変更の概要です。

経営ビジョンの実現に向けて、戦略的事業領域のさらなる推進・拡大が必要だと認識し、これらをGX事業として、全社の注力領域に再定義しました。GX事業の新設は、この3年間でGX事業を何としても拡大していくのだ、という当社グループの覚悟と決意を表明するものです。

これにより、GX事業の拡大に向けた取り組みの加速や、投資家のみなさまが、当社のGX事業の規模や成長性をご理解いただくことにもつながると考えています。実現に向け、2025年4月よりGX事業推進室を立ち上げ、推進体制を整備しました。

GX事業の概要

GX事業について、本中期経営計画期間は特に「持続可能な循環型社会推進事業」と「水素を核としたクリーンエネルギー事業」をQuick-Win分野として注力します。これら2つの領域における売上高を中心に、本中期経営計画期間の最終期までに230億円に伸ばすことで、当社の新たな中核事業としての確立を図っていきます。

GX事業の製品・サービス

GX事業における製品・サービスです。

GX事業の内訳は、これまでエンジニアリング事業と単体機械事業に含まれていた、経営ビジョンで掲げる4つの事業領域である、循環型社会推進事業、クリーンエネルギー事業、省力・省エネ事業、次世代技術開発事業に該当する製品・サービスです。

先ほどご説明したとおり、特にこの3年間での成長が見込まれる、循環型社会推進事業、クリーンエネルギー事業は、本中期経営計画期間の注力領域に設定しています。そのため、この3年間は、研究開発に累計30億円を投資する計画です。GX事業領域の技術開発・実証を完了させ、タイムリーな市場投入を進めることで、事業拡大を実現していきます。

以上、中期経営計画の概要説明となります。

連結業績予想

2026年3月期通期業績予想についてご説明します。

連結業績予想として、売上高845億円、営業利益75億円、経常利益75億円、親会社株主に帰属する当期純利益53億6,000万円を見込んでいます。

売上高については、高水準の受注残高が売上高の増加に寄与し、前期比42.7パーセントの増加を予想しています。親会社株主に帰属する当期純利益については、前期に計上した投資有価証券の売却分など、特別利益が大幅に減少することにより、売上高や営業利益の伸びに対し、当期純利益の伸びは前期比9.8パーセントの増加にとどまると予想しています。

セグメント別業績予想① GX事業

セグメント別の状況です。

今年度に新設したGX事業については、受注高120億円、売上高190億円、セグメント利益6億円、受注残高328億5,200万円を見込んでいます。

受注高については、脱炭素化の動きが継続する中、水素利活用やバイオガス関連プラントの受注獲得により、大幅な増加を見込んでいます。売上高は、前期までの受注残高が寄与し、こちらも大幅に増加する見込みです。セグメント利益については、売上高の増加により売上総利益が増加し、黒字化を実現できる見通しです。

セグメント別業績予想② エンジニアリング事業

エンジニアリング事業では、受注高380億円、売上高455億円、セグメント利益23億円、受注残高462億4,600万円を見込んでいます。

受注高は前期に続き、国内のケミカル分野を中心に高水準の受注高を維持できる見込みです。売上高については、前期までの受注残高が寄与し、前期比で増加を予想しています。セグメント利益については、売上高の増加により売上総利益が増加し、大幅に増加する見込みです。

セグメント別業績予想③ 単体機械事業

単体機械事業については、受注高195億円、売上高200億円、セグメント利益46億円、受注残高96億5,200万円を見込んでいます。

好調な海運市況に支えられ、油清浄機本体のほか、油清浄機部品、船舶環境規制対応機器の販売が牽引し、高水準の受注高を維持し、売上高は前期比で増加する予想です。セグメント利益は、売上高の増加による売上総利益の増加により、増益を見込んでいます。

以上、業績予想についてのご説明となります。

事業トピックス①

当社の事業や企業価値向上に向けた取り組みに関して、直近のトピックスをご説明します。

事業トピックスです。水素製造装置については、オンサイト水素製造装置「HyGeia」シリーズの出荷実績が堅調に推移しました。油清浄機も、堅調な新造船需要により受注は好調です。船舶に係る燃料転換が見込まれるものの、当面は燃料油処理用途の油清浄機の需要は継続するものと想定しています。

事業トピックス②

下水分野においては、下水の処理に伴い発生する夾雑物、つまり流入汚水中に含まれるゴミ等の異物を処理する装置について、用途拡大を推進しています。

前年度に連結子会社としたMKK東北については、主力事業であるFRPの製造を担う新工場が、この4月から稼働しています。急速な需要変化への対応が可能である利点を活かし、グループ内の各工場と製造機能を連携させて事業拡大を実現するなど、シナジーの創出を開始しています。

企業価値の向上に向けた取り組み

企業価値の向上に向けた取り組みです。

直近では、水素サプライチェーン構築を支援するため、水素関連分野への投資に特化したファンドへの出資を行いました。また、調達ガイドラインを策定し、「責任ある調達」の取り組みを強化しています。

大相撲川崎場所において、水素エネルギーを活用した「水素ちゃんこ」のイベントを開催し、水素エネルギーの可能性・親近感を地域社会にアピールしました。今後も引き続き、企業価値の向上に向けた取り組みを進めていきます。

田中氏からのご挨拶

社会の課題を見つめ、その課題に技術とビジネスで応えることこそが、これからの時代に求められる企業の姿であり、私たちの目指す方向です。

環境と経済の両立、地域と地球の未来をつなぐソリューション、それらを着実にカタチにしていくことで、持続可能で快適な社会の発展を実現し、それが当社の持続的な発展にもつながっていきます。これこそが、経営ビジョンで当社が目指す姿です。

今回ご説明した中期経営計画は、その目指す姿を実現するためのロードマップの第2ステージです。私たちはこの計画を通じて、「2050年の社会課題を解決する会社になる」というビジョンの実現へ、大きく踏み出していきます。

三菱化工機にぜひご期待ください。ご清聴ありがとうございました。