決算ハイライト 2025年3月期のサマリー①

谷郷元昭氏(以下、谷郷):みなさま、本日は弊社決算説明会のためにお時間をいただきありがとうございます。カバー株式会社CEOの谷郷です。

本日は、私から決算ハイライトについてご説明し、続いてCFOの金子から詳細な決算内容をご説明します。最後に、私から2026年3月期事業計画および中長期の方針についてご説明します。

2025年3月期通期の業績概況としては、売上高は434億100万円、売上総利益は218億500万円、限界利益は187億1,100万円、営業利益は80億100万円、純利益は55億5,900万円となりました。

通期では、TCGおよびMD小売の拡大により、セールスミックスにおけるMDの売上構成比が拡大し、前年比で粗利率が大きく改善しています。

2025年3月期通期のサービス別売上の概況は、スライドに記載のとおりです。配信/コンテンツは、通期売上高が前年同期比プラス21.9パーセントの93億2,300万円となりました。所属タレントによる大型配信企画のヒットが継続しており、2023年以降にデビューした国内外の新規タレントの人気獲得によるファン層の拡大も進行しています。

ライブ/イベントは、通期売上高が前年同期比プラス39.1パーセントの77億9,300万円となりました。「ホロライブEnglish」による北米地域での2ndライブコンサートや、ホロライブプロダクション初のワールドツアーを実施するなど、海外市場における実績を着実に積み上げました。

それに加え、国内外の人気タレントによる大型会場でのソロライブも多数成功し、リアルイベントを通じたファンエンゲージメントの強化とコンテンツのモメンタム創出に貢献しました。

マーチャンダイジングは、通期売上高が前年同期比プラス64.6パーセントの205億3,900万円となりました。2024年9月に販売を開始したトレーディングカードゲーム「hololive OFFICIAL CARD GAME」が想定を大きく上回る販売実績を記録したほか、小売店販路の拡充やグッズ展開の多様化といった取り組みにより、広範なユーザー層へのリーチが拡大しました。

ライセンス/タイアップは、通期売上高が前年同期比プラス29.4パーセントの57億4,400万円となりました。こちらは営業体制の強化により、国内外の取引代理店数および案件数が着実に拡大しています。

2024年度年央から北米拠点の稼働を開始し、現地クライアントとの取引パイプラインの拡充を図っています。今後は海外の大型ライセンシーの獲得などにより、さらにスピード感を持って同サービス分野の拡大を目指したいと考えています。

決算ハイライト 2025年3月期のサマリー② - 通期業績

サービス分野別の売上高成長率です。配信/コンテンツ、ライブ/イベントの順調な売上高成長と並行して、マーチャンダイジングが大きな成長を記録していることがわかります。

今後は、グローバルに拡大しているファン層に対してしっかりと商品やサービスを供給できるように、海外事業の開発やゲーム等の多面的な商品・サービスの供給強化が重要になってくると考えています。

決算ハイライト 2025年3月期のサマリー③ - Q4 業績

第4四半期の売上高成長率は、前年同期比プラス32.9パーセントです。

ライブ/イベントにおいては、2025年2月に実施した「星街すいせい」の日本武道館におけるライブ、「白上フブキ」のぴあアリーナMMにおけるライブ、および「Mori Calliope(森カリオペ)」のLA Hollywood palladiumにおけるライブに加え、3月に実施した「hololive SUPER EXPO 2025 & hololive 6th fes.」が寄与し、前年同期比プラス33.0パーセントの大きな成長を記録しました。

マーチャンダイジングにおいては、TCG事業の成長がプレイヤー数の拡大とともに続いており、大きな成長を記録しています。

通期業績推移

通期では、前年同期比で大幅な増収増益の決算内容となりました。昨年9月から開始したTCG事業の収益貢献などを背景として、通期では売上総利益率の改善も見られました。

一方で、コンテンツの増加と制作の高度化に伴うコスト増なども顕在化しており、今後は事業開発による収益性改善とオペレーション高度化による経営の均質化を並行して進めることが重要と考えています。

分野別の売上ドライバーと利益貢献度

金子陽亮氏(以下、金子):ここからは詳細についてご説明します。スライドは、分野別の売上ドライバーと利益貢献度およびKPIを示している表になります。過年度は、当社のVTuberの認知拡大およびコンテンツ供給層の増加に伴い、配信/コンテンツやライブ/イベントといったコスト先行の分野のKPIが大きく伸長しました。

それらによる変動費の増加を背景として、第4四半期にかけて限界利益率は調整しています。今後はこのようなサービス分野の成長とともに、拡大した新規のファン層に対して商品・サービスの提供を行っていくことで、持続的な成長を実現したいと考えています。

マーチャンダイジング分野の商品出荷数が着実に増加している一方で、生産技術に関わるSCMの最適化、在庫管理の合理化などの改善点にも注力していく必要があります。

ライセンス/タイアップ領域については、取引パイプライン数が着実に拡大しています。一方で、海外案件の増加には、現地生産体制の確立やライセンス取引に向けた監修体制の整備など、さらなる成長のための事業開発上の課題も見えてきました。後半でご説明する施策により、しっかり対策していきたいと考えています。

売上高の推移

売上高の推移です。第4四半期の売上高は、受注生産商品の出荷進捗、TCG売上の拡大、および年度末の中大型イベントの好調などにより、前年同期比プラス32.9パーセントに拡大しています。

前受金残高は、年央に積み上がった商品受注の出荷進捗により、売上高に転化することで減少しています。また、トレーディングカードゲームプレイヤー数の増加に伴った市場シェアの拡大によって、四半期ベースで過去最大の売上を記録しました。

ライブ/イベント分野では、第4四半期に実施した複数の大型ソロライブが好調だったことに加え、毎年実施している「hololive SUPER EXPO & hololive fes.」においても過去最大の集客を記録したことにより、前年同期比で大きな成長を達成しました。

コスト推移(売上原価)

売上原価です。第4四半期の売上原価は、国内外の中大型ライブコンサートおよび「hololive SUPER EXPO & hololive fes.」の実施により、イベント費が大きく増加しました。特に第4四半期に実施した海外ライブコンサートは、当社にとって北米地域で初の大型ソロライブコンサートであり、オペレーションやコストコントロールの改善が今後の課題となりました。

加えて、製造原価費目の中では、EC/小売取扱SKU数が増加していることに伴い、過去商品在庫の一部評価減を2億円程度計上しています。

売上総利益及び売上総利益率の推移

前述のとおり、国内外イベントの件数や規模の増大、およびイベントリ調整コストの増加を受け、第4四半期の粗利率は前四半期比で調整しています。一方で、国内外における多面的な商品・サービス展開の進捗により、粗利水準は前年同期比でプラス41パーセントと大きく改善しています。

コスト推移(販管費および販管費率)

販管費です。年度末の業績連動賞与引当、国内外MD取引の増加を背景とした倉庫販管費増、下半期以降の「hololive SUPER EXPO & hololive fes.」やトレーディングカードゲーム大会運営などに紐づいた広告宣伝費、加えてソフトウェア資産償却費の計上、海外拠点費などにより、第4四半期の販管費水準は増加しました。売上高に対する販管費率は横ばいです。

限界利益及び限界利益率の推移

限界利益です。ライブ/イベント分野の収益比率の高まりや、年度末の商品在庫調整および広告宣伝費の計上などを受けて、限界利益率は前四半期比で調整しています。第4四半期の限界利益水準は、前年同期比プラス37.1パーセントまで拡大しました。

営業利益及び営業利益率の推移

営業利益および営業利益率です。イベント費の増加、インベントリ調整の実施、および国内外事業開発支出の拡大などにより、営業利益率は前四半期比で調整しています。第4四半期の営業利益水準は、前年同期比でプラス20.1パーセントまで拡大しました。

サービスミックス及びプロダクトミックスの概観

サービスミックスおよびプロダクトミックスの概観です。トレーディングカードゲームおよび小売の拡大により、セールスミックスにおけるマーチャンダイジング分野の売上構成比は、通期で47.3パーセントまで拡大しています。

今後は、事業開発の進展に伴い、海外ライセンス/タイアップおよびゲーム分野の拡大により、収益性の拡大および改善を推進していきます。

2026年3月期Q1に向けたサービス分野別の事業展開

2026年3月期第1四半期に向けたサービス分野別の事業展開です。第1四半期は当社の季節性として、例年、前四半期末の巨大イベント実施を受けた売上の反動減を見込んでいます。一方で、認知拡大やマーチャンダイジングの商品・販路拡大を背景として、前年同期比では拡大基調の業績推移を想定しています。

トレーディングカードゲームは、マーチャンダイジング内で相当の収益規模を占めるようになっています。季節性なく、平均的な収益を大きく上げられる状況になっているため、前年同期比での収益差に寄与すると見込んでいます。

VTuber市場の急速な拡大

谷郷:2026年3月期事業計画および中長期の方針についてご説明します。2023年の日本アニメ市場は、海外展開の好調を背景に、過去最高となる3兆3,000億円規模にまで拡大しました。

また、日本国内ではコンテンツ産業が主要な輸出産業の1つと位置づけられており、新たなクールジャパン戦略においては、日本発のコンテンツの海外市場規模を2033年までに20兆円規模にする目標が設定されています。

国策的な後押しもあり、今後、周辺産業がグローバルに大きく拡大していくことが期待される中で、VTuber市場も継続して大きく成長しています。VTuber市場は、アニメ市場とよく似た市場構造を持ちながらも、従来のアニメでは見られなかった圧倒的なコンテンツ供給量と双方向性によって、熱量の高いファン層を獲得しつつ急拡大し続けています。

クリエイター支援と共創を基盤としたブランド拡大

過年度は、所属タレントの多面的な活躍によりマス層への認知拡大が進み、YouTubeにおける月間のユニーク視聴者数も成長角度を変えて大きく伸長しました。

この1年、当社所属タレントたちは多様な領域で飛躍的な活躍を遂げ、国内外での存在感を一層高めています。これらの実績は、タレントの創造力、ファンのみなさまの熱い支持、そしてそれを支える運営体制が一体となって生み出した成果であり、次なる成長フェーズに向けた確かな礎となっています。

海外展開を通じた拡大ポテンシャル

海外事業は、新規タレントの立ち上がりや事業開発の進展を背景に、全体として拡大基調で推移しています。海外所属タレントによるコンテンツ供給数が着実に増加し、それに伴い動画再生数も伸長しました。

海外でのライブコンサートの開催本数も増加傾向にあり、リアルとデジタルの両面でファンとの接点が広がっています。また海外向けMD出荷数も大きく伸びており、現地ファンのエンゲージメントの高まりが数字としても表れ始めています。

関税や物価、為替の影響により、短期的には出荷数に影響が出る可能性もありますが、事業開発の進展によって対策を進めたいと考えています。加えて、ライセンスやタイアップといったBtoB取引も海外案件の数が増加しており、グローバル市場における当社IPのプレゼンスが一段と強化されつつあります。

当社のゲーム関連プロジェクトの展望

中期的に大きな収益源となり得るゲーム関連分野については、開発期間も長くかかるため、類型ごとに財務リスクを分散化して管理しています。

当社IPを用いた2次創作ゲームのブランド「holo indie」や、当社IPのゲームデベロッパー向けライセンスアウトプロジェクトにおいては、外部クリエイターやゲーム企業が開発の裁量を持つ一方で、当社は開発費に関する大きなリスクは負いません。収益モデルはレベニューシェアの形式をとっています。

体験型3D空間プロジェクト「ホロアース」については、当社の他サービスとの連携も視野に入れて、開発柔軟性の観点で内製による開発を行っており、当該プロジェクトからの収益は当社が享受するかたちとなります。

2023年末から取り組みを始めた「holo Indie」では、すでに22本のタイトルがリリース済みであり、ゲームコミュニティでの当社ブランドの認知拡大に寄与しています。

他社ゲームデベロッパーが開発したタイトルについても複数の実績が出てきており、まとまった売上が立つようになりました。また、大型のモバイルゲームタイトルの開発について、直近3月に公表しています。

「ホロアース」

2025年4月に「ホロアース」は「バージョン1.0.0」を正式公開し、新機能としてマーケット・プレイス機能をリリースしました。

これにより、ユーザー自身がファッションアイテムやスタンプを制作・販売できる新たな経済活動の場が生まれました。また、ファッション機能やアイテムの拡充も行い、ユーザー体験の深化を図っています。

今後は、ホロライブタレントがふだんの姿で参加できる仕組みを整備するとともに、バーチャルライブやミート&グリート機能の導入、Webカメラによるモーショントラッキング機能の開発についても進めています。

財務面では、2024年10月より開発費の償却を開始しています。2025年3月期には約5億円の費用計上があったのに対し、2026年3月期には約10億円の開発関連費用の計上を見込んでいます。

今後も開発の進捗に応じて資産計上と償却を適切に行いながら、中期的な価値創出に向けた展開を行っていきます。

2026年3月期業績予想

期初時点での2026年3月期の業績予想は、売上高525億円、営業利益82億円、純利益57億円を想定しています。今年度の業績予想については、前年同期比プラス20パーセント程度と、引き続き高い売上高成長を見込んでいます。一方で、事業拡大に伴う先行投資の影響を踏まえ、現時点では通期での微増益を想定しています。

特に上期については、将来の事業成長を見据えた固定費の増加に加え、売上高が下期に偏重する季節性の影響もあり、利益水準は前年同期を一時的に下回る見通しです。ただし、新経営体制のもと、人員再配置や業務プロセスの見直し、販管費の最適化といった構造改革を進めており、中長期的には財務体質の強化につなげていきます。

今期における先行投資は多岐にわたり、表現技術に関わる研究開発、コンテンツ供給体制の拡充、サプライチェーン効率化に向けた体制整備、海外拠点の運営やマーケティング、ゲームや「ホロアース」などのデジタルコンテンツサービスの開発、さらには経営基盤強化のための管理部門の体制整備を含みます。

このような投資を含む事業開発の成果次第では、業績予想に対して上振れとなる収益貢献が生じる可能性もあると捉えています。

具体的には、英語版の展開を予定しているTCG事業の国内外での収益拡大、年央に予定している物流倉庫の移管による下半期以降のSCM合理化、海外の大型タイアップ企業やライセンシーとの取引拡大、そして音楽やゲーム分野におけるブランド認知拡大を通じた関連ビジネスの拡張などが挙げられます。

先行投資的支出の営業利益予想への影響

2026年3月期においては、持続的な成長を見据えた体制拡充や研究開発への先行投資が、営業利益を一時的に下押しする見通しです。通期の営業利益は82億円、営業利益率は15パーセントを予想しています。

これは、各種成長投資を計画的に実行していることに伴うものであり、主な費用項目としては、制作能力の強化や表現技術に関する研究開発費、SCMの効率化に向けた体制整備、海外拠点の運営やマーケティング費用、経営基盤の強化などに関わる費用が含まれています。

これらの費用を先行投資的支出と整理し、仮にこれらを差戻した営業利益の参考値は約112億円、営業利益率では21パーセント相当と試算されます。

当社としては、このような投資を通じて将来の収益機会を的確に捉えるとともに、基本プロセスの最適化や組織効率の向上も併せて推進し、中長期では収益性の改善と持続的な利益成長を実現していきます。

中期目標 (2026年3月期~2030年3月期 )

当社は、2030年3月期に売上高1,000億円、営業利益250億円以上を達成することを中期経営目標として掲げます。

売上および売上総利益については、タレントへの適切な収益分配を確保しながら、コンテンツやプロダクトの多面展開とセールスミックスの進化を通じて収益性を改善し、事業規模の着実な拡大を目指していきます。

営業利益については、制作能力の強化、海外事業開発、ゲームや「ホロアース」などのデジタルコンテンツ関連事業開発など、広範な成長分野に戦略的にリソースを投下していきます。

このような成長投資と収益機会の多様化を推進する過程においては、期中におけるセールスミックスの変動が想定されるため、中期的には営業利益率よりも絶対的な営業利益の水準を重視した目標設定としています。

また、新経営体制のもと、人員の再配置や業務プロセスの見直し、販管費の最適化といった構造改革を並行して進めており、収益体質の強化にも継続的に取り組んでいきます。事業基盤の拡張フェーズが一巡したあとは、コストの最適化やスケールメリットの発揮により、収益性のさらなる改善余地も見込んでいます。

中期目標はオーガニック成長で到達可能と想定していますが、成長の選択肢として戦略的な提携や外部資源の活用も視野に入れています。中期的な成長と収益創出の両立を目指し、持続的に企業価値を高めていきます。

目標達成に向けた事業拡大のドライバー

当社は、2030年3月期に向けた中期経営目標の達成に向けて、複数の成長ドライバーを軸に事業拡大を段階的に推進していきます。特に、「グローバル収益基盤の確立」および「新規事業領域の収益拡大」については、中期目標期間の2年目から3年目以降に本格的な収益寄与を見込んでおり、今後の成長フェーズにおいて重要な柱となる見通しです。

第1のドライバーは、「共創によるコンテンツ供給の強化」です。ライブ配信、音楽、ゲーム、アートなど多様な表現領域において、トップタレントを再現性高く輩出することを目指します。これに加えて、コンテンツ制作体制の高度化と効率化を推進し、他社の大型コンテンツやメディアとのコラボレーションを通じて、ブランド認知の拡大を図ります。

これらを支える投資として、トップタレントの創出に向けた体制整備や、ライブ演出および配信技術に関わる研究開発を行っています。さらには、アニメなどの制作リードタイムの長いコンテンツの共同制作への取り組みを進めています。

第2のドライバーは、「グローバル収益基盤の確立」です。北米やアジアといった大消費地において、グッズの生産流通体制を確立するとともに、グローバルなライセンス取引の拡大を進めます。

具体的な投資内容としては、海外拠点の運営体制の整備、サプライチェーンマネジメントを支えるデータ基盤の構築、海外マーケティング、そして将来的な資本業務提携やM&Aの検討を通じて、国際展開を加速できる体制作りを推進していきます。

第3のドライバーは、「新規事業領域の収益拡大」です。トレーディングカードゲームのグローバル展開や、ゲームおよび「ホロアース」といったデジタルコンテンツ領域における収益力の強化に注力していきます。

これに伴い、外部のデベロッパー企業との共同開発体制を拡充し、自社IPのデジタル展開を推進するほか、自社開発している「ホロアース」についても、ユーザーの体験を拡張するインフラとして展開を進めていきます。

最後に、「人的資本の高度活用」です。人材の最適配置と育成により、組織全体のパフォーマンスを最大化し、持続的な成長を支える経営基盤を強化していきます。これには、管理部門の体制整備による全社オペレーションの高度化も含まれており、成長を下支えする組織的対応力の向上に取り組みます。

当社は、これら4つの事業拡大ドライバーを通じて、中期的な事業規模の拡大と収益性の向上を両立し、企業価値の継続的な向上を目指していきます。

キャピタルアロケーションに関する方針

キャピタルアロケーションに関する方針として、2030年3月期までの5年間で累計500億円程度を上限とする成長投資およびM&Aの実施枠を想定しています。

投資対象は、海外事業開発や制作・プロデュース機能の強化、生産・物流の最適化、収益の多面化、経営基盤の強化など、中期的な業績貢献を見据えた戦略的領域です。M&Aについても必要に応じて機動的に検討し、案件ごとに投資効果を慎重に精査していきます。

手元資金については、事業リスクや市場環境の変動に備えた適切なバッファを確保しつつ、財務健全性やキャッシュ創出力の向上に応じて、資本効率の観点から株主還元を検討するステージへ移行する可能性も視野に入れています。

2026年3月期以降の業務執行体制について

当社は2025年4月より経営体制を強化し、2026年3月期以降の経営目標の実現に向けた新たな業務執行体制をスタートしました。創業以来、当社は「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」というミッションのもと、着実に事業を拡大してきましたが、近年の急速な成長により、事業領域の多様化やビジネスラインの複雑化が進んでいました。

このような環境変化への対応と今後のさらなる成長を見据え、2025年4月に始まる第10期を機に組織改革に踏み切ることとしました。

経営体制としては、これまで社外取締役を務めていた植田修平氏が、4月1日付で常勤の取締役兼執行役員に就任します。今後は、植田氏がメディアミックスおよびライセンス/タイアップ分野を担当し、成長領域のさらなる推進に貢献していきます。

また、クリエイティブ部門を統括してきた林茂樹本部長をVTuberプロダクション領域全体の執行役員に登用し、クリエイティブおよびコンテンツ制作体制全般を垂直的に統合します。

これにより領域ごとの執行責任が明確化され、事業ラインをまたいだシナジーの創出と全社的なバックオフィス機能の統合により、より機動的で効率的な業務執行体制を目指します。

ご説明は以上です。

質疑応答:今期の利益計画の前提について

質問者:今期の利益計画の前提について教えてください。かなり保守的な数字だと感じました。特に上期の営業利益は減益の見通しですが、昨年9月から開始しているカードゲームの販売が上期の利益成長にも寄与するのではないかと考えています。

先ほど「第1四半期から経費増加を考慮している」といったお話がありましたが、例えばスライド24ページで挙げている先行投資の中では、どのコストが重くなると考えていますか?

金子:例年、上半期については季節性も踏まえると売上が相対的に低くなるため、固定費の比率が高くなり、利益水準は低くなる傾向にあります。スライドに記載しているとおり、固定費のうち体制拡充に関わる費目が多様化していることによって、例年よりも少し厚くなっているというのが今年度上半期の状況です。

具体的には、例えば海外事業開発費は海外拠点費の外注費として数億円台前半を見込んでいます。また、通年で8億円程度のメタバースの償却費のうち、約半分を上半期に計上する予定です。さらに、全体的な事業拡大に伴う制作人員の人件費増が上半期の短期的な利益を下押ししています。

一方で、中期目標にあるような大きな成長をグローバルに描いていくには、将来の成長に繋がる事業基盤を作っていく上で必要な過程だと考えており、今後、計画的に進捗をご説明しながら状況をお伝えしていきたいと考えています。

質疑応答:中期経営目標達成に向けたイメージについて

質問者:中期目標である2030年3月期の営業利益250億円以上についてお聞きします。これまでの利益成長が続いていくのであれば、視野に入ってくる数字だと思っています。

利益の拡大が加速するのは、どのくらいのタイミングでしょうか? 先ほど「中期目標期間の2年目から3年目以降に本格的な収益寄与を見込む」とお話がありましたが、早ければ2027年3月期にも先行投資の効果が出て、利益が急激に大きくなる可能性もあるのでしょうか?

あるいは、2027年3月期はまだ先行投資が続いていくフェーズであり、もう少し時間を要するのでしょうか? 営業利益の目標達成に向けて想定しているイメージについて教えてください。

金子:攻めと守りの面からお話しします。まず、攻めの面の事業開発については、事業拡大のドライバーが重要だと考えています。スライド上部に記載のとおり、「グローバル収益基盤の確立」と「新規事業領域の収益拡大」については、中期目標期間の2年目から3年目以降に顕在化する見通しです。

例えば、利益を非連続に押し上げるものとして、ライセンス方式で大型の収益を見込めるモバイルゲームの開発はすでに一般にも公表していますが、これが来年度上期から本格的に利益貢献してくると考えています。

「グローバル収益基盤の確立」については、例えば現地生産や現地物流といったグローバルサプライチェーンマネジメントの確立は難易度が高い課題であるものの、現状の海外での人気を鑑みると、最近の米国通商関税問題もある中で、我々が今から取り組んでいく妙味が大きい領域だと考えています。ここには少し時間を要するため、海外のコミュニティファン層にしっかり商品やサービスをお届けできるのは中期目標期間の2年目から3年目以降になる可能性があると考えています。

次に守りという意味では、現在社員数が多くなっておりますが、組織が肥大化して非効率にならないように、新経営体制によって生産や業務プロセスを再編している状況です。より効率的な体制に向けて人員の再配置を試行していくにつれて、人的投資の減速が徐々に始まると思います。対して、先述の攻めの施策によって売上が力強く成長し続けることで、利益をしっかり顕在化させられると考えています。

質問者:今の人員のお話は、今期2026年3月期で予定している人員拡大の規模感である程度達成し、2027年3月期以降はそれほど増えないと考えてよいでしょうか? 

金子:今年度は過年度よりも人員採用のペースを減速させる予定です。まずは人員の再配置や既存人員の育成強化により、組織全体の専門性をさらに高めていく方向性で考えています。

増員を考えているのは、例えば音楽ライブコンサート領域や海外事業領域、ゲーム領域といった、収益性やマーケティング効果が大きく見込めるものの、より専門的な人材を外部から入れる必要がある領域です。

この領域においてはメンバークラスではなく、専門性がある人材を中心に採用していくことになり、その可能性があるのは今年度だと考えています。ただし、このような領域においても、5年間ある中期目標期間の後半になるにつれて、人件費の伸びのペースは減速し利益拡大に貢献していく形に動いていくと想定しています。

質疑応答:タレントのリテンションに向けた取り組みおよび採用活動の考え方について

質問者:タレントの方々の卒業にあたり、今後のリテンションに向けた取り組みなど、これまでと比べて何か変化はありますか? また、新しいタレントの採用活動でも考え方の変化はあったのかを教えてください。

谷郷:2017年からホロライブプロダクションを開始して、5年、6年と経過してきています。その中で、ライフプランなどタレント個々人の事情も影響して一定の入れ替わり、つまり卒業があるのはやむを得ないことだと考えています。

一方で、タレントが活躍できる舞台を整えるため、音楽やライセンスなど、さまざまな事業の拡大や基盤を整えることに、金子や私もリソースを割いてきました。その結果として、タレントとコミュニケーションを図る機会がなくなってきていたというのが直近の状況だと思っています。

このような状況を踏まえて、今年4月から新たな体制への移行を始めています。私自身は事業に干渉しないかたちになり、金子もビジネスサイドの干渉から外れて、コーポレートに特化する体制となりました。新体制への移行により、伸びているタレントをより伸ばすようなコミュニケーションをとりやすくなってきている状況かと思います。

我々の考えとしては、「タレントが卒業しているから抜けた分を入れよう」といった安直な発想はありません。むしろ、既存タレント一人ひとりの影響力を伸ばして、やりたいことを実現できることを考えています。

「宝鐘マリン」がYouTubeチャンネル登録者数400万人を達成したように、スターの人たちをより伸ばすことにフォーカスしたほうが、タレントにも収益性という面においても、Win-Winの関係になりやすいと考えています。

よって現在は、いたずらにタレントを投入するよりも、現在所属している中でも成長しているタレントをより公平にサポートする体制に移行しています。その上で、新規のタレントの育成も常に行っていく必要がありますので、中長期的な考えとして取り組んでいこうと考えています。

質疑応答:関税の影響について

質問者:関税の影響について、計画ではダウンサイドとしてスライドに記載されていますが、考え方についてあらためて教えてください。中国産の製品などにもそれなりの影響が出ると思いますので、実需等に影響が出ていないかについてもお願いします。

金子:関税の問題が著しく顕在化し始めてから日が浅いため、長期的なトレンドを読みづらい状況ではあります。ただし、北米消費者の短期的な消費マインドには影響を与えていると思っています。そのような声の一部を、SNS上などを通して弊社でも確認しています。

我々としては、複数のリスクシナリオをシミュレーションしながら、それらに備えるような対策を取っていく考えです。

実態としては、EC売上の3割程度が海外で、その中のさらに3割から半分ほどが北米での売上です。したがって、EC売上の10パーセントから15パーセント程度が今回の関税の影響を強く受ける可能性があると見ています。よって、経済面とファンに対するサービス提供の両面において対策すべきだと考えています。

今、EC上で売っているものの中で無視できない比率は中国産です。生産流通の現地化の推進や、中国で作っているもののうちロットが小さいものは一部日本に生産地を移したり、関税の消費者負担と会社負担のあり方などを最適化したり、消費者負担額と会社コスト額がWin-Winになるような設計を行うなど、さまざまな施策を短期および長期に行っていく考えです。

関税の問題により、マーチャンダイジング分野の売上が短期的かつ致命的に減退してしまうかというと、海外のマーチャンダイジング分野の売上は地域が分散していますので、絶対に致命的だとも言い切れない状況だと思います。ただし、予断を許さない状況だとは認識しており、状況を見極めています。

質問者:全社の業績計画に対しては、そこまでインパクトが出ないように運営していくということでしょうか?

金子:四半期ごとという意味では、特に上半期についてはコントロールが難しい部分もあるかもしれません。その点が、上半期の予算計画を保守的にしている一因でもあります。しかし、通期の中では先ほどお話ししたようなさまざまな対策の中で受身を取っていきたいと思っています。

質疑応答:トレーディングカードゲームの状況について

質問者:トレーディングカードゲームについて教えてください。今回再販も行っていたため、第4四半期は売上にある程度貢献したのではないかと思っています。売上金額の規模感とその他会社企画グッズにおける内訳について教えてください。

金子:トレーディングカードゲームについては、過年度の第4四半期は当社の収益として10数億円の金額が計上されています。通期では30数億円前半という額が計上されており、最終市場価格ベースでは、50億円超程度の規模で流通している状況です。

サードパーティのカードゲームの流通規模調査によると、ポケモンカードといったファーストクラスのカードゲーム群があるとすれば、それらに次ぐセカンドクラス群のカードゲームの中でも比較的高いプレゼンスがある市場規模まで達していることになります。

スライド15ページの右側のグラフで、マーチャンダイジング収益に占めるその他会社企画グッズの内訳を示しています。トレーディングカードゲームについては、依然として約7割が小売で流通している状況です。第4四半期の10数億円の7割がトレーディングカードゲームだとすると、3億円から5億円程度がその他会社企画グッズに入っていると考えています。

質疑応答:今後のトレーディングカードゲームの売上規模について

質問者:トレーディングカードゲームの売上実績について先ほどご説明がありましたが、新しい期ではどの程度の売上規模を見込んでいますか? 海外での販売分も上乗せされると思いますが、国内と海外に分けた見通しがありましたらイメージを教えてください。

金子:予算上は40億円から50億円というイメージですが、過年度でも30数億円の売上を計上しており、今期の海外版の新規タイトルの販売などもある中で、上振れの余地はあると思っています。なお、過年度は第2四半期から四半期ごとのカードパックの販売を始めました。今年度は4四半期でカードの新規パックのリリースが進むことに加え、購買者ベースも順調に拡大していると思います。

海外については、北米やその他アジア地域など、複数地域での英語版ないし日本語版の展開の可能性があります。プレイヤー数を増加させつつ、適切な供給量で販売しマーケティングしていくためには、適切なスピード感で慎重に進めていく必要がありますので、期初時点での海外カード売上の貢献はやや保守的に読んでいます。

しかし、海外のカード流通のホールセラーは、かなり積極的な需要を我々に提示しています。最終消費者はしっかりついてきているという認識がホールセラーと我々の間で共通になってくると、予算を上振れるような拡大もあり得ると思っています。

質問者:40億円から50億円という売上高のうちの1割程度を海外での売上と見込んでいますか? また、今後の需要動向を考えると、もしもこの倍の100億円規模となった時には、フレキシブルに増産に対応できるのでしょうか?

金子:海外のカード売上については、予算上は10億円も見込んでいない状況です。また、「明日急に生産量を5倍にします」といった生産増は現実的に難しいです。しかし、四半期ごとや月間ごとといった期間であれば、生産量の調整余地を十分に行えるコミュニケーションが生産者と行えると思います。

なお、カードの生産は日本で行っています。市場の拡大にプレイヤー数がついてきているかをホールセラーと確認しつつ、供給量・供給スピードを規定しています。したがって、「輪転機の印刷スピードが間に合わないため積み増せない」ということはありません。

「100億円分を生産できるか?」という問いに期初で「できます」と答えるのはけっこうアグレッシブになってしまいますが、理論上は生産可能であり、実際の販売体制は需要と供給のバランスを見ながら段階的に実施していく想定です。

質疑応答:トレーディングカードゲームの需要と供給のバランスについて

質問者:トレーディングカードゲームのプレイヤー数の増え方は緩やかなのでしょうか? プレイヤー数に対して供給が足りていないように捉えていますが、コアユーザーを育てることを重視しているため、むやみに拡大させたくないという方針からでしょうか? 

金子:需要と供給は将来を見据えながら決めていく必要があります。例えば、市場を犠牲にしながら供給すれば、仮に倍の数を供給したとしても売ることはできると思います。現在は、「需要がしっかり実需を伴って拡大していますよね」という確認と、「生産を四半期後に向けて行います」という時間軸的なすり合わせが行われているような状況です。

実需というのは、単に小売店からモノがはけているということだけではありません。大会に来ている人や全国でカードゲームキャンペーンを行っているお店に訪れている人の数がどの程度伸びているのか、中古市場で我々のカードの価格がどのくらい上下しているかなどを見ながら供給量を調整しています。したがって、まだ市場投入から1年経っていない中で供給量はやや慎重に伸ばしている状況です。

質疑応答:2026年3月期の売上高成長率について

質問者:期初時点では、2026年3月期の売上高は前年同期比20パーセントの成長を予想しています。前期はトレーディングカードゲームの売上が乗ってきた部分も手伝って、プラス43.9パーセントと結果的に伸びています。

市場規模については3割、4割の成長がまだまだ続くと見ることも可能だと思いますが、売上高成長率を20パーセントにとどめた理由について教えてください。

金子:マーケットの拡大は我々としても強い確信を持っています。これまでのマーケットイメージに加えて国策的な後押しもあり、さらに海外の各市場でもVTuber市場が育ってきているなど、前向きな材料もどんどん出てきており、決してVTuber市場が停滞しているとは考えていません。

その中において、「市場の成長がこのくらいだから、もっと高めのマクロの推定を立てましょう」ということは可能です。

しかし、先ほどお話ししたトレーディングカードゲーム市場のアナロジーのように、コンテンツや商品サービスの供給とお客さまの需要が温まっていくスピードを適切にコントロールしなければ、短期的な市場クラッシュのようなものが起きかねません。特に、単にモノを売るビジネスと違い、コンテンツの人気が先行して、遅効的にビジネス的な効果が出てくる部分もあるため、この需要供給を期初に織り込むことは難しいと考えています。

あるいは、我々の会社組織の育成よりも早く事業拡大や商品サービスの供給を進めてしまうと、オペレーションエラーが甚大なコスト拡大につながってしまうことも考えられます。

また、我々は年間を通して既存ビジネスと新規ビジネスを織り交ぜながら事業展開を行っている中で、新規ビジネスについては既存ビジネスの関数をそのまま適用することはできず、どうしても上振れ下振れが起きやすいのが実情です。過年度でいえばカードゲームがこれに当てはまります。

そのあたりを多面的に考慮し、このくらいは十分できるだろうという水準が、期初の20パーセントの成長だと思っています。過年度の期初予算も「保守的過ぎるのではないか」と言われていましたが、引き続き同様の考え方で予算を組み上げており、期中の変動については計画の修正とともに、決算など進捗をお知らせいたします。

質疑応答:受注生産グッズの売上の立ち方について

質問者:マーチャンダイジングの第4四半期の売上についてです。スライド9ページに、受注商品は前受金を受けて3ヶ月から6ヶ月程度の期間をもって発送される旨が記載されていますが、直近第4四半期および第3四半期を見ると、状況が少し変わっているようにも思います。受注生産グッズの売上の立ち方について、考え方をあらためて教えてください。

金子:3ヶ月というよりも、6ヶ月寄りの発送スパンになっているのが実態かと思います。サプライチェーンマネジメントの合理化により、生産からお客さまの手に届くまでのスピードは、中期的に短くなっていく見通しです。

受注残が売上に転嫁していくスピードが遅くなっているように見えるのは、特定のタレントの記念日グッズにおいて受注数があまりにも多く、はけるスピードが遅滞しているSKUが一部で発生しているといったことも影響しています。

質疑応答:先行投資的支出について

質問者:先行投資的支出について、実際に挙げられている内容が販管費の中で書かれている項目と似通っていると思います。先行投資的支出の30億9,200万円については、どのような分け方でしょうか? また、この30億9,200万円について、各費用を使うプロジェクトはすでに立案されており、使う可能性が高いと考えてよろしいのでしょうか? 

また、組織の成長に応じて売上も成長していくべきだという考えに基づくと、もしこれからガイダンスの売上が上振れるようなトレンドになっていけば、先行投資的支出も合わせて増やしていく必要があると考えてもよいかを教えてください。

金子:先行投資的支出は、スライド24ページに記載している人件費等内訳の制作能力拡充、研究開発費、SCM効率化に係る体制拡充、海外事業開発費、経営基盤強化のイメージに近いと思っています。これらに加え、研究開発に近いものかもしれませんが、メタバースの償却運用費も入っています。

今期に関しては収益貢献があまりない一方、中長期の成長を描いていく上で非常に重要な体制拡充のための費用となるものが、先行投資的支出の内訳になっています。

また、中期目標はスライド26ページに記載の4つのドライバーで進めていきます。

「グローバル収益基盤の確立」や、ゲームなどデジタルコンテンツ収益の拡大といった「新規事業領域の収益拡大」において、我々がバーチャルタレント市場の中で商品やサービスの提供をグローバルに多極化し、市場でのプレゼンスを盤石なものにすることが、この中期目標の中で非常に重要性が高い戦略です。

先行投資的支出はこのための支出分というイメージであり、スライド右側に記載している「主な投資内容」に投資しています。

また、今年度内に利益が上振れたら、どんどん投資を増やすということではありません。筋肉質化を進めつつ、中長期においてはスライド26ページに描いているような成長カタリストに沿った組織改革を実現していくことが重要だと思っています。したがって、無尽蔵に投資費目を積み増していくことは考えていません。

質問者:スライド24ページのウォーターフォールチャートで示されている販管費約179億円の増加による営業利益の押し下げという内容と、費用項目上は大きく変わらないと理解しました。

以前挙げていた長期目標のOPマージン30パーセントというお話と、先ほどの「利益率よりは絶対的な利益額のほうを重要視していきたい」というお話から考えると、今後このような中長期的な成長に資する施策への投資は、ある程度御社内でコントロールできることだと思います。

マージンの見通し、経営の舵取りとしては30パーセントというより、先ほどの中期目標の25パーセントに目線を合わせて費用を使っていくと考えたほうがよいでしょうか?

戦略としては、より収益性の高いライセンスやタイアップ、マーチャンダイジングなどを増やし、中期目標の25パーセント以上のところも見ながら、費用項目をある程度コントロールしていくと捉えたほうがよいのかを教えてください。

金子:30パーセントの長期目標は、本当の長期の目標という意味では依然として意識しています。

一方で、本質的に行わなければいけないのは、「グローバル収益基盤の確立」および「新規事業領域の収益拡大」による事業基盤の強化です。この2つが達成できると、競争優位性、参入障壁がより盤石になり、グローバルにプレゼンスを発揮できると考えています。

この2つを実現する過程においては、先ほどのウォーターフォールチャートでお伝えしたように、短期的には収益性が低い費目をどうしても立てなければいけないことが中期目標期間のポイントだと思っています。それにより、まさに今期のガイダンスのように、OPマージンが過年度比でそこまで改善していないように見える期が出てきてしまうと思っています。

ここが、事業開発の4軸の進度によってコントロールが立体的になってきます。例えば、ゲームが大幅に利益貢献するのか、どの時間軸で北米の事業開発を進めるか、どの時間軸でライセンスの利益率が高い売上が拡大するのか、あるいはそれらを着実に拡大しながらも、さらに上回るスピードでライブコンサートなどが拡大して費用が伸びていくのかといったことです。

特にこの中期目標期間においては、マージンよりも水準で利益の成長をご説明していったほうが、一貫性のあるご説明ができるのではないかと考えています。最終的な収益性として、30パーセントも捨てているわけではないというところでは、先ほどのご質問に対する回答と共通しています。

事業開発が盤石になってくるフェーズにおいては、人件費や開発支出のスピードが減速していくことが予想されます。また、開発の結果としてライツ型のゲームのような、利回りが高い分野が出てくる可能性も十分あります。

2030年3月期の売上高1,000億円は年平均で18パーセントから20パーセントほどの売上成長が前提になると思いますが、それを上回るような非連続的な成長が生まれるということもあり得ます。

この難しい投資フェーズにおいて、あくまで長期的な成長過程のイメージを市場のみなさまと共有したいという趣旨において、2030年3月期の売上高1,000億円、営業利益250億円で出しています。根本的な考え方は従前と大きく変わっていないと考えています。