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野崎正博氏(以下、野崎):みなさま、おはようございます。一正蒲鉾株式会社代表取締役社長執行役員の野崎です。本日はご多用のところ、当社説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。
ただ今から、2025年6月期第2四半期の業績、ならびに今後の取組みについてご説明します。本日ご説明する内容はスライドに記載のとおりです。
(1)サマリ
スライドは第2四半期決算のサマリです。今年度は昨年同様、増収増益で着地しました。要因としては、売上高はサラダスティックなどの主力商品の販売数量が増加したこと、利益面は原材料価格上昇の一服と売上伸長に伴う工場の稼働率向上などが挙げられます。詳細はセグメント別のパートでご説明します。
当期純利益は、インドネシアの合弁会社であるPT. KML ICHIMASA FOODS(以下、KIF)の連結子会社化による差益が生じ9億5,000万円となり、前年同期、計画値ともに上回りました。これにより、ROEも昨年の5.1パーセントから6.4パーセントに改善しました。
(2)損益状況
ここから損益状況のご説明に移ります。まず営業利益の増減分析です。スライドのウォーターフォールチャートをご覧ください。
第2四半期決算の利益増加の要因で最も大きいのが、増収効果で約2億円です。「サラダスティック」などの主力商品の販売数量が伸長したこと、利益率の高い商品の販売構成比が高まったことが主な要因です。
次に、製造コストの減少、1億1,000万円についてです。主力原料であるすり身価格が落ち着いたことが影響しています。合理化、生産性向上によるコストダウン効果は約1億8,000万円となりました。
第2次中期経営計画にも掲げている省人化への取組みが着実に進み、人件費増加を吸収して効果を上げています。また、歩留まり改善などの生産性向上の取組みも利益増加に寄与しました。
一方の利益減少要因としては、電力や燃料価格上昇によるエネルギーコストの増加で約9,000万円、設備投資による減価償却費の増加およびその他製造経費の増加で約5,000万円、販売数量の増加に伴うロジスティック関連費用やカニかま50周年販促費用などの販管費の増加で約2億5,000万円の減益影響がありました。
これらの結果、昨年度9億2,000万円であった営業利益は10億2,000万円となり、増益の着地となりました。
(3)財務状況
財務の状況です。前年と比較して固定資産の増加は、水産練製品事業の設備投資およびKIFの連結子会社化により土地・建物を資産に計上したものです。自己資本比率は前期より1.6ポイント改善し、44.4パーセントとなりました。本社第二工場建設に伴い、自己資本比率は低下していましたが、借入金の返済が進み、改善しています。
キャッシュ・フローについては、営業キャッシュ・フローが支出となっていますが、これはすり身価格上昇に伴い棚卸資産が増加したことが主な要因です。また投資キャッシュ・フローの支出は設備投資によるものです。
(4)セグメント別業績-①水産練製品・惣菜事業-
続いて事業セグメント別の説明です。まずは水産練製品・惣菜事業です。2024年も昨年同様猛暑となり、特に9月から11月の日本の平均気温は過去最高を記録し、消費者の購買行動に大きな影響を与えました。
練製品業界では、例年は秋口からおでん種などの揚物商品の販売構成が増えますが、近年では残暑が長引き、おでんや揚物の販売期間が年々短くなってきています。
そのような状況の中、当社は残暑をテーマにした販促企画や、生食に適した揚物の提案など、気温やお客さまのニーズに合わせた販促を強化することで、数量、売上ともに前年を上回る結果となりました。
当社の主力商品である「サラダスティック」の売上は、猛暑や残暑の時期にもサラダや調理が不要な時短商品として好調であり、カニかま50周年販促企画の効果もあり、計画を上回る販売数量となりました。
また、多くの食品の値上げが続く中、2023年に発売した「小判てんぷら」が冷凍保存可能な、お徳用商品として、コスパやタイパを重視するお客さまのニーズに合致し、売上を大きく伸ばしました。
営業利益は、売上伸長による増益効果が大きく寄与しました。合理化投資については、労働生産人口の減少を見据え、ローコストオペレーションに向けた体質強化として、2023年から3年にわたって計画しています。この設備投資を進めてきた結果、省人化やコストダウンの効果が営業利益の増加に寄与しました。今後もさらなる効率的な生産体制の構築を図って、骨太な事業体質を目指します。
(4)セグメント別業績-2024年12月 おせち商戦-
年末のおせち商戦についてご説明します。当社は12月の販売構成比がおせち事業により平常月の2倍となるため、おせちの売上が年間の業績に大きな影響を与えます。
2024年12月の全国のおせち市場の動向は、KSP-POSデータによると、金額、販売数量ともに前年比97パーセントとなりました。この要因としては、物価高における節約志向がハレの日であるおせち商戦にも影響し購入点数が落ちたことや、値ごろ感のある商品やセット品の購入が多かったことが挙げられます。
また、流通各社は食品廃棄ロス削減の取組みを推進しているため、おせちの売り場作りにおいても、売れ残りが出ることを避け、店頭在庫を抑えぎみにする店舗が多く見受けられたことも要因の1つと考えています。
このような状況の中、当社の2024年のおせちは過去最高の売上高を達成しました。
当社の差別化戦略として、以前からお得意先さまとおせちの店頭展開時期の早期化、早出しに取組んできました。
一昨年からインフルエンザなど感染症予防のため、混雑する年末の買い物を控え、12月の早い時期に必要な量を購入し、年末は支出を調整する傾向が見受けられます。
昨年末も、例年であれば最も客足が増える29日から31日の販売が伸びず、代わりにクリスマス前の21日、22日の土日に販売が大きく伸長し、お客さまの購買行動の変化にも対応した早出し戦略が功を奏しています。
また、商品面では、2022年に発売した「国産甘鯛入り御蒲鉾 京禄(けいろく)」が昨年、全国蒲鉾品評会において農林水産大臣賞を受賞しました。当社の板蒲鉾での受賞は初めてです。この受賞によって京禄のおいしさや品質の良さをあらためて多くの方々にお伝えすることができたと思います。
その結果、前年の6倍以上の売上を達成することができました。「『純』シリーズ」に続いたおせちブランドとして、今後も育成していきます。
(4)セグメント別業績-②きのこ事業-
きのこ事業についてご説明します。野菜相場は猛暑や雨不足による生育不良が重なり大幅な高騰となったため、まいたけを含めたきのこ市場も全体的に販売価格が上昇しました。当社も価格戦略を強化し単価上昇に努めたため、販売価格は前年を上回りました。
一方、数量面ではきのこの需要が高まる秋口以降も平年より気温が高い日が続き、販売数量が減少しました。
また栽培面では、夏場の高温と残暑の影響を受け、秋口に1株重量が低下したことにより需要期の販促を強化できず、チャンスロスが発生したこともあり、数量は前年を下回りました。以上のことから減収の結果となりました。
利益面では、合理化、省人化による原価低減、生産性向上に努めましたが、原材料価格やエネルギー価格、人件費のコストアップ分を吸収できず、減益の着地となりました。
きのこ事業は上半期期が一番の稼ぎ時ですが、減収減益の結果となり、大変厳しい状況となりました。対策については、後ほどご説明します。
2025年6月期業績予想
以上、上半期の結果を踏まえ、2025年6月期通期業績予想はスライドに記載のとおり、公表値どおりとしています。
(1)原材料価格・エネルギー価格等の見通し
ここからは、業績予想を実現するための取組みについてご説明します。まず事業に大きな影響を与える原材料価格およびエネルギー価格についての当社見通しです。
すり身価格については、2023年に漁獲枠の減少や地政学的リスクの高まりから30年ぶりの高値となり、その後急騰からは落ち着くものの価格は高止まりしていました。
当社は価格を先読みしながら在庫量を調整することで原料高騰に対応してきました。しかしながら、すり身の生産コストの上昇や円安の影響で2024年前半から再び価格上昇傾向となり、2025年前半も3季連続値上げの見通しであることが発表されています。
米国スケソウダラの2025年度漁獲枠が前年比4パーセントの増枠となったことや、現在のAシーズンの漁獲が好調であることは安心材料ですが、世界的に魚肉たんぱくの需要が高まっていることや、魚の加工をすり身生産から利益率が相対的に高いフィレ生産にシフトするリスクも考えられ、今後さらにすり身価格は上昇するとの見通しです。
また、鶏卵は1月から感染が急拡大している鳥インフルエンザの影響で価格が上昇しています。
昆布は、昨年夏の猛暑により育成不良に陥り、生産量の減少が課題となっています。お取引先さまの協力を仰ぎ数量確保はできていますが、これまで以上に仕入れ相場の上昇や調達が難しくなることが考えられます。
エネルギー価格についても軟化傾向ではありますが、高止まりで推移することが予測されます。また、アメリカや中国の今後の経済動向による需要の変化や中東情勢など、不安定要素が多いと認識しています。
物流費や人件費は今後も上昇していくことを踏まえると、コストは増加すると考えています。
(2)水産練製品・惣菜事業-①価格改定-
下半期以降の当社の具体的な取組みをご説明します。水産練製品・惣菜事業では、2025年3月1日納品分より価格改定を実施します。この価格改定により原材料価格やエネルギーコスト等の増加分を吸収し、当社の利益構造の改善を図ります。
前回の価格改定では、買い控えによる販売数量の減少によりコスト吸収が不十分となったため、拡販対策を行い、販売数量の維持に努めていきます。
対策の1つとして、「サラダスティック」は価格改定後も販売数量が減少せず、利便性やフィッシュプロテインの健康機能が評価され、消費者のみなさまからも食卓に必要な商品として受け入れていただいたと思っています。今後も「サラダスティック」のさらなる拡販に向け販促を強化していきます。
次に、消費者ニーズを捉えた春夏商品の提供です。コスパ、タイパ、メリハリ消費といった消費者ニーズを捉えた商品を積極的に拡販することで販売数量アップを図ります。
3つ目はフィッシュプロテインの訴求です。近い将来たんぱく質の需給のバランスが崩れ、世界的にたんぱく質の供給不足となるプロテインクライシスが起こる可能性が示唆されています。練製品に含まれるフィッシュプロテインは、たんぱく質の中でも消化吸収率が高く、少量で効率よくたんぱく質を摂取できる食品として注目度が集まっています。
以上の取組みにより、お客さまに価格に見合った商品の魅力を感じていただけるよう、付加価値のある提案をしていきます。
(2)水産練製品・惣菜事業-②カニかま生産体制-
カニかまの生産体制の強化についてです。2023年4月に「サラダスティック」の専用工場として本社第二工場を新設し、生産能力が120パーセント向上しましたが、販売好調を受けて、すでにフル稼働の状態が続いています。
そこで、本社第二工場に生産能力を向上させた最新設備の入れ替えと、他工場へ生産ラインを移設し、カニかまの生産能力をさらに2割増強する設備投資を行います。これまでは生産拠点を集約し、高速大容量生産による効率化で収益向上を目指してきましたが、BCPの観点からも生産を分散し、複数拠点でカニかまを生産できる体制を整えます。
メーカーとして、お客さまにいつまでも商品をお届けできるサステナブルな生産体制で、収益の確保を目指していきます。
水産練製品・惣菜事業-③創業60周年キャンペーン-
当社は2025年1月22日に創業60周年を迎えました。これまで当社を支えてくださった多くのステークホルダーのみなさまのおかげと、あらためて実感しています。感謝の気持ちを込めて、さまざまな60周年キャンペーンを展開していきます。
(3)きのこ事業
きのこ事業の取組みです。上半期は販売価格の上昇に注力した成果が確実に出ています。しかし、まいたけが最も売れる秋口に、収量が不足したことによるチャンスロスが響いたため、下期以降は引き続き販売単価の上昇と安定栽培に注力していきます。
販売施策は、消費者ニーズを捉えた商品拡販と、水産練製品事業のノウハウを活かした販促提案を行っていきます。消費者ニーズを捉えた商品では、グラム当たりの価格で店頭販売を行う販売形態の拡大を目指していきます。
まいたけの販売は、これまでは100グラムや200グラムなど、決められた分量をパックして販売することがスタンダードな方法でした。しかし、計量工程が必要であり、人手と時間がかかるものでした。
そこで当社は新たな取組みとして、まいたけの量り売りを提案しており、お客さまにも、「ほしいときにほしい分だけ」、「簡単にできる食品ロス削減対策」として受け入れられてきたように思います。
また、売り場活性化のための販促提案は、水産練製品事業で行ってきたイベント企画等の販促のノウハウを活かして、青果のお取引先さまにもご提案していきます。
生産面については、合理化、省人化を引き続き進めていきます。具体的には、まいたけのカット工程の自動化により、人手不足の対応と生産性向上による原価低減に努めます。
栽培面については、まいたけは空調により栽培環境をコントロールしています。例年、夏の高温時には人間と同様に「夏疲れ」を起こし、株が大きくならない傾向にありました。
最高気温が毎年更新される中、昨年は「夏疲れ」が顕著に現れたと感じています。今後も猛暑や長引く残暑は常態化すると想定されるため、気候変動に影響されない安定栽培に努めていきます。
(4)連結子会社化
続いて、連結子会社化についての説明です。すでに開示しているとおり、当社は持分法適用関連会社であったPT. KML ICHIMASA FOODS(KIF)の株式を追加取得し、連結子会社化しました。
2045年のありたい姿である「ICHIMASA30ビジョン」の1つに、「世界中に日本の『食』で貢献するグローバル企業」を掲げています。今回の株式取得によって、KIFを海外拠点の中核に位置づけました。現地でのマーケティングと販路拡大を行い、海外展開のスピードアップを図ります。
3.サステナビリティ経営の推進
最後に、当社のサステナビリティ経営についてご説明します。当社は以前から環境への取組みを行ってきましたが、昨今の酷暑や大雪などの相次ぐ異常気象の発生により、気候変動への対策はより急務なものになっていると感じています。
このスライドは、当社が取組んでいる環境対策についてです。2024年4月より北海道工場で使用する電力を、再生可能エネルギー由来の電力へ100パーセント転換しました。
当社グループ全体では、全電力使用量の26パーセントが再生可能エネルギー由来となり、これによって全体で約5,700トン分のCO2排出量の削減を見込んでいます。
当社は、Scope1とScope2のCO2排出量を、2030年までに2013年度比50パーセントにする目標を設定しており、さらなる削減に向けて取組みを推進していきます。
商品における環境への取組みとしては、2023年7月から一部商品の包材を、回収したプラスチックトレーをリサイクルして製造されたECOトレーに変更しました。これにより、従来品と比べCO2排出量30パーセント削減となります。
また、主力商品である「サラダスティック」にもバイオマスフィルムを採用し、CO2排出量24パーセント削減を実現しています。食品メーカーとして、今後も環境に配慮した商品の提供に努めます。
そして、賞味期限延長への取組みです。賞味期限の延長は、食品ロス削減として以前から取組んできた課題であり、この春夏商材でも賞味期限延長を実現することができました。
今後はこれまで以上に企業のサステナビリティ課題への取組みが求められます。流通各社さま、消費者のみなさまとともに、持続可能な社会の実現に向けて、メーカーの社会的責任を果たしていきたいと思います。
質疑応答:値上げについて
司会者:「原材料費や物流費、人件費など、今後も高騰が継続する場合、さらに値上げをする考えはありますか?」というご質問です。
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