会社概要

名倉宏之氏:代表取締役社長の名倉です。今回は、当社の会社概要、2024年11月期の決算概要、2025年11月期の業績予想、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の進捗状況などについてご説明します。

まず、会社概要について、当社は1916年に紙を抄く際に使用する網を製造する国内唯一の会社として創業し、今年で109年目を迎えます。

抄紙用網の事業からスタートし、網の用途拡大や技術の応用により徐々に事業領域を広げ、現在では4つのセグメントを主要な事業として運営しています。

当社グループの事業

産業用機能フィルター・コンベア事業は、抄紙用網の製造・販売を行う「製紙製品分野」と、ふるい分け・ろ過・搬送用の工業用金網の製造・販売を行う「その他産業用フィルター・コンベア分野」で構成されています。

電子部材・フォトマスク事業は、金属材料・複合フィルム材料をエッチング加工した製品の製造・販売を行う「エッチング加工製品分野」と、半導体などの製造に用いられるパターニング原板であるフォトマスクの製造・販売を行う「フォトマスク製品分野」で構成されています。

環境・水処理関連事業は、プール並びにろ過装置の設計・販売、天然ガスパイプラインの腐食・ガス漏れを防ぐ絶縁継手の販売などを行っています。

不動産賃貸事業は、当社が保有する不動産を店舗・マンション・駐車場等として賃貸しています。

2024年11月期 連結業績

次に、2024年11月期の決算概要をご説明します。売上高は、産業用機能フィルター・コンベア事業が円安の恩恵もあり好調であったことにより、前期と比べ6億5,200万円増加し、286億3,900万円となりました。

営業利益は、売上高が増加したことにより、前期と比べ2億9,300万円増加し、9億2,400万円となりました。

経常利益は、営業利益が増加した一方で、当期は為替差損を計上したことにより、前期と比べ1億1,100万円増加し、11億3,000万円となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、当期に投資有価証券売却益を計上したものの、前期も投資有価証券売却益や退職給付信託返還益、固定資産売却益を計上していたことにより、前期と比べ6億4,700万円減少し、6億2,200万円となりました。

2024年11月期 業績増減要因

営業利益の増減要因について、売上高は前期と比べ6億5,200万円増加しました。売上原価は前期と比べ1億3,100万円増加しました。

売上の増加に比して売上原価の増加が抑えられていますが、売上原価率の増減で分析しますと、電子部材・フォトマスク事業では値上の効果により、売上原価率が低減しています。一方で、環境・水処理関連事業では、主に複数のプール大型案件の資材・工事費の高騰により大幅に原価率が悪化しています。

販売費及び一般管理費は前期と比べ2億2,800万円増加しました。主に旅費交通費などの経費や新製品開発のために要した研究費が増加したことによるものです。

セグメント別

セグメントごとの概要です。産業用機能フィルター・コンベア事業については、製紙製品分野では、国内の紙の需要は伸び悩み、海外においても特に欧州での景気後退による需要減少の状況は継続しています。このような状況下ではありますが、円安の影響もあり売上高は国内海外ともに前期と比べ増加しました。

その他産業用フィルター・コンベア分野では、食品業界向けコンベアベルトが増加したことにより売上高は前期と比べ増加しました。

電子部材・フォトマスク事業については、自動車向けやスマートフォン、PC、タブレットなどの市場がプラス成長を継続しており、通信デバイス業界や自動車業界の得意先の試作品・開発品の需要をとらえることができました。結果、エッチング加工製品分野およびフォトマスク製品分野の売上高は前期と比べ増加しました。

環境・水処理関連事業については、コロナ禍の影響で本来数年間にわたり分散して受注していた複数の大型案件の工期が前期と当期に集中しました。結果、売上高は前期と比べ減少しましたが、高い水準となりました。

これらのプール大型案件の資材は海外から輸入しており、円安の影響で材料費が増加したことや、建設業全体で工事費が急騰している影響が大きく、営業利益は大幅に減少しました。なお、これらの大型案件は当期でほぼ工事が完了しており、来期以降は同様の理由での損益の悪化は見込んでいません。

不動産賃貸事業は、既存物件が順調に稼働しています。

2025年11月期連結業績予想

次に、2025年11月期の業績予想をご説明します。

売上高は環境・水処理関連事業において大型案件の売上計上は見込んでいないことから、前期と比べ6億3,900万円減少し、280億円となる見込みです。営業利益は電子部材・フォトマスク事業のフォトマスク製品分野における大型の設備投資の結果、減価償却費負担が重くなるため前期と比べ3億2,400万円減少し、6億円となる見込みです。

フォトマスク製品分野の設備は6年の定率法で減価償却費を計上していますので、投資直後の数年間は減価償却負担が重いものの、その後収益は回復していくことを見込んでいます。

2024年11月期・2025年11月期配当

配当方針である配当性向30パーセント以上かつDOE2.4パーセント以上となる配当額を検討した結果、2024年11月期の期末1株当たり配当は14円から1円増配し、1株当たり15円としました。これにより、中間配当の1株当たり13円を合わせた年間配当金は、1株当たり28円となり、配当性向は88.5パーセント、DOEは2.4パーセントとなりました。

また、2025年11月期の配当予想は1株当たり28円としており、配当性向は100.1パーセントとなる見込みです。

現状分析

次に、2024年1月に開示した資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の進捗状況についてご説明します。

当社はPBRが過去5年間0.4倍から0.6倍の間で推移しています。これは、ROE水準が安定しておらず、当社の株主資本コストが4パーセントから6パーセント程度であることから、十分なエクイティ・スプレッドを実現できていないためであると分析しています。

2024年11月期については、資本政策および配当方針を見直したことにより株価は若干改善しているものの、収益力の回復が遅れていることから、PBR改善には至っていません。

改善に向けた方針

当社は「2023年度〜2025年度中期経営計画」において経営重点課題として挙げている「収益力の回復」に取り組むことが、PBR改善のために最も重要であると認識しています。しかし、特に産業用機能フィルター・コンベア事業の製紙製品分野における国内市場の縮小は、当初の想定を上回る速度で進行しており、短期間で収益力を回復することは困難な状況です。

また、電子部材・フォトマスク事業や環境・水処理関連事業については、事業環境は好調ですが、生産設備の増強や営業力強化に取り組んでいる最中でもあり、一時的に収益力が低下しています。

このような状況下、短期的な施策だけでは収益力の回復に向けた本質的な取り組みとはならないことから、長期的視点に基づいたありたい姿を設定し、その実現に向けた課題の整理と取り組みを検討することとしました。

当社は、生活や社会に貢献する製品を生み出すメーカーとして、社員とステークホルダーを重視し、安定した業績を継続していくことを前提に、ありたい姿の実現を目指していきます。

長期的なありたい姿は、2034年度に営業利益23億円・ROE8%以上を達成していることです。

2025年11月期は、長期的なありたい姿の実現に向けた具体的な課題の整理と取り組みの検討を実施します。そのうえで、ありたい姿実現に向けた第1ステップとなる「2026年度〜2028年度中期経営計画」を立案していきます。

具体的な取り組み

具体的な取り組みの1点目は収益力の回復です。産業用機能フィルター・コンベア事業において、製紙製品分野は、長期的に成長性は高くないものの、安定した収益性を維持できる主軸事業と位置付けしています。

収益力の回復に向け、タイの子会社へ生産の主体を移管することで、原価低減を図っていきます。また、今後も需要増加が期待できる海外市場の開拓、とりわけ近年研究開発に取り組んできた不織布用製品の拡販に注力します。国内市場については、得意先の電力使用量削減に寄与する駆動負荷低減網など、ニーズに合った製品の開発を加速させ、シェアを伸ばしていきます。

その他産業用フィルター・コンベア分野は、長期的に幅広い業種からの需要を捉え、安定的に成長していく事業として位置付けしています。今後もニーズを捉え着実に成長していきます。

電子部材・フォトマスク事業は、長期的に活況が続く市場において、最大手に準ずるプレーヤーへ成長していく事業として位置付けしています。

エッチング加工製品分野は、得意先からのニーズである試作認定品の短納期対応とタイムリーな量産化体制の整備のために、数年前から積極的に設備投資を実施しています。従来対応できなかった得意先からの依頼に応えられる体制を構築し、受注獲得に邁進していきます。

フォトマスク製品分野は、現在得意先からの需要が旺盛な高周波デバイス、各種センサー、パワー半導体向けフォトマスクの販売活動を強化していきます。また、フォトマスク以外にも光学部品などの加工品について生産体制を整備し、拡販していきます。現在、生産設備の更新や増強を実施しており、この先数年間は減価償却費負担が重い状況ではありますが、着実に成長していきます。

環境・水処理関連事業は、長期的にプールシェアトップとして、ろ過装置と併せさらに成長していく事業として位置付けしています。

プール製品について、従来シェアトップであった会社が2027年までに最終工事を完了し事業撤退する予定となっており、当社グループのシェア・業績を2027年度以降に大きく伸ばすことに期待できる状況です。そのために人員増強と協力会社を含めた生産体制の強化、営業網の再構築が必要であり、現在取り組みを進めています。

不動産賃貸業は、長期的に現有資産の適切な修繕により収益を維持していく事業として位置付けしています。物件の老朽化対策としての大規模修繕を計画的に実施し、賃料維持に努めていきます。

2点目は資本政策です。当社は、2024年11月期に配当方針を見直し、連結配当性向30パーセント以上、かつDOE2.4パーセント以上としています。今後も自己株式取得など資本効率向上の取り組みについて検討を進めていきます。

3点目はIR活動の充実です。今後、統合報告書の作成やホームページのサステナビリティ活動の内容更新など、IR関連情報の発信に積極的に取り組んでいきます。

自己株式取得

当社は2025年1月14日に56万株、2億8,560万円を上限とした自己株式取得を、東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)により実施します。

なお、参考情報ですが、2024年11月期の自己株式取得を含めた総還元性向は141.0パーセント、2025年11月期予想の総還元性向は163.8パーセントと試算しており、株主還元強化に努めていきます。