事業内容: 産業用コンピュータの設計・製造
上村和人氏(以下、上村):エブレン株式会社取締役 経営企画部長の上村です。2025年3月期第1四半期の決算説明会を行います。
まず、当社の主な事業内容についてご説明します。通信・電力・鉄道・医療などの「社会インフラ系設備」と、および半導体製造装置や生産自動化機械などの「産業インフラ系設備」に、コントローラーとして使用される産業用コンピューターの受託設計と受託生産が中心で売上の80パーセント以上を占めます。つまり、設備のコンピューター部分を作っているということです。
鉄道・電力・通信などの公共性の高い事業の設備や開発調達は、大手の装置メーカーが主契約者となっています。我々のポジションはその下にあります。大手装置メーカーが我々のお客さまであり、その指示に従って製品を提供します。
主契約者である装置メーカーは設備やシステムの開発構想に基づいて、当社へ「このようなものを作ってほしい」と委託するコンピュータ製品の「要求仕様書」を提示します。我々は「要求仕様書」に基づいて製品を設計し試作・量産を行います。
試作から量産に入るまでは半年から1年くらいの期間を要することもありますが、一度量産に入ると我々に製品供給の義務が発生し、中長期的に供給することになります。
製品区分(1) ボードコンピュータ
製品区分についてご説明します。ボードコンピュータは、スライド左側のバックプレーンシステム用ボードコンピュータと、スライド右側のIoT・Edgeシステム用ワンボードコンピュータの2つに分かれます。
IoT・Edgeシステム用ワンボードコンピュータは、パソコンのようなものをイメージしていただければと思いますが、1枚で機能が完結しています。USBや無線を用いて通信を行うことはありますが、単体で動作することができます。
それに対して、バックプレーンシステム用ボードコンピュータは、1枚だけでは機能しません。何枚か機能をつなぎあわせ、後にご説明するバックプレーンにつなぎ、複数枚のボードコンピュータをつなぐことにより、1つの大きなコンピューターが作られます。
我々はIoT・Edgeシステム用ワンボードコンピュータを作っています。バックプレーンシステム用ボードコンピュータはお客さまが作ったり調達したりすることが多く、我々はそれらをつなぐバックプレーンを作っています。
製品区分(2) バックプレーン
バックプレーンについてご説明します。スライド左上の画像から見てとれるように、バックプレーンにはボードコンピュータを挿せる場所があります。バックプレーンは、脊髄や神経のようにボードコンピュータ間の通信を伝達する役割を担っています。
スライド右側の図に示すように、バックプレーンに複数枚のボードコンピュータを挿したものを1つの筐体(コンピュータシャーシ)に入れ、ファンや電源をつけ、最終的にコンピューターが出来上がります。我々はこのバックプレーンを中心に製造しており、また筐体にも対応しています。
製品区分(3) コンピューターシャーシ
コンピューターシャーシとは、バックプレーンにボードコンピュータを挿したものを収める箱です。こちらも我々は提供しています。バスラック(バックプレーン搭載型シャーシ)が、バックプレーンを収めるタイプのものです。
バスラックの写真の奥のほうの箱に、緑色の基板が見えます。実際に作動させる際には、この緑の基板のコネクタ部分に複数のボードコンピュータを挿して使用することになります。上部にファンをつけたり電源を設置したりして、コンピューターとして使えるように整えて出荷しています。
ワンボード型シャーシは、IoT・Edgeシステム用です。先ほどお伝えしたようにワンボードコンピュータは1枚で動作するため、バックプレーンは使用しません。そのため、1枚のボードをカバーするような筐体となっています。我々はこのようなコンピュータシャーシも作っています。
製品区分(4) 制御用コンピュータ
バックプレーンの実際の使用方法をご説明します。スライド左側の画像のように冷却ファンや電源がついているコンピュータシャーシを我々が提供し、この中にお客さまが準備した各種ボードコンピュータを挿します。
そのように組み立てたものが、スライド右側のような半導体製造装置の制御部として使われます。我々がハードウェアを提供し、お客さまがソフトウェアなどを用意するパターンが多いです。
バックプレーン方式が産業用に多用される理由
バックプレーン方式が産業用に多用される理由をご説明します。バックプレーンはボードコンピュータを何枚も自在に抜き差しすることが可能で、そこに大きなメリットがあります。バックプレーン方式の利点として、保守性、拡張性、汎用性が挙げられます。
1点目の保守性についてです。産業用として、例えば電車の中や、先ほどご説明した半導体製造装置などいろいろな機械の中で使われますが、どうしても故障することがあります。
装置全体を交換するとなるとコストと時間がかかりますが、バックプレーン方式はボードコンピュータがスロットインされているため、壊れたボードコンピュータを特定できれば、電源が入った状態で代わりのものに挿し替える(ホットスワップ)ことが可能です。保守体制、保守要員なども非常に軽減できます。
2点目の拡張性についてです。例えばパソコンのメモリを増やしたい場合には、拡張スロットがあればメモリを増設できます。同様にバックプレーン方式の場合、ある程度の余裕を持って設定しておけば、余ったスロットにボードを追加することにより拡張できます。
3点目の汎用性についてです。例えば通信ボードなど、市場に流通している標準的なボードコンピュータを採用することで、お客さまが開発する必要がなくなります。お客さま独自の機能についてはお客さまが作ることになりますが、このようにすべてを作らなくても、市販のものを流用できるところが強みだと考えています。
このような強みのもとに、多くの産業用コンピューターでバックプレーン方式が採用されています。
エブレン製品の用途(応用分野)
エブレン製品の用途についてご説明します。当社のセグメントは単一ですが、スライド右側円グラフのとおり、カテゴリを大きく5つに分類しています。
赤色が通信・放送です。放送局やインターネット通信、ケーブルテレビなどに使用されています。電力関係やダムで使われているものも、こちらに分類しています。
黄色は電子応用です。こちらはMRIやCTなど比較的高価な医療機器や、HPC(スーパーコンピュータ)にも使われています。
緑色の計測・制御は、売上高構成の大部分を占めるカテゴリです。先ほどご説明した半導体製造装置やFA(ファクトリーオートメーション)に使われています。
青色は交通関連です。鉄道や交通・ITSの部分です。鉄道は鉄道車両や信号、自動改札に、また、交通・ITSはETCに使われます。
水色は防衛・その他を示しています。
円グラフはこれらの連結売上高構成を表しています。スライド右上が前々期、右下が前期です。半導体制御装置関連である計測・制御が多くを占めていますが、若干その割合が小さくなってきており、それに代わって交通関連が若干伸びている傾向が見てとれます。
主要納入先 (直接納入、間接納入を含む)
主要納入先です。スライドに記載のとおり、各分野の主要メーカーへ納入しています。
生産拠点の分散
生産拠点の分散についてご説明します。国内に4拠点、中国に子会社として1拠点を持っています。
関東には本社・八王子事業所のほか、入間事業所、上野事業所があり、関西には大阪事業所があります。中国では上海の近くである蘇州市に、蘇州惠普聯電子有限公司を100パーセント子会社として持っています。
バックプレーンは特殊な機械を使って作ります。設計開発が主になる上野事業所を除くすべての拠点に、バックプレーンを作るための自社開発のプレスフィットマシンと、導通検査をするためのボードチェッカーを設置して対応しています。この設備はすべて同じ自社製のもののため、例えば八王子で受注している製品を大阪で作ることができ、その逆も可能です。
最近BCPということをよく言われるようになりましたが、例えば関東地方で大きい地震が起きた時には、大阪や蘇州で代わりに製造できるように生産拠点を分散しています。大きな災害が起きた時にも、拠点が集中してまったく動けなくなることはなく、分散することによってお客さまのニーズに応えることができるように備えています。
2025年3月期(第52期)第1四半期決算実績
2025年3月期第1四半期の業績です。スライドは連結の損益計算書です。売上高は10億2,000万円で、前年同期比100.7パーセントとほぼ前年並みです。
営業利益は1億1,100万円で前年同期比76.8パーセント、経常利益は1億1,000万円で前年同期比75.4パーセント、当期純利益は7,000万円で前年同期比76.8パーセントとなっています。
今期計画に対する進捗率としては、売上高41億円に対して24.8パーセントとなっています。営業利益と経常利益の計画値は5億3,000万円、当期純利益の計画値は3億5,000万円で、進捗率はスライドに示すとおりです。
当社では中間期と期末の着地予想を出しています。スライドの数値は期末の予想ですが、現在中間期に当たる第2四半期のおよそ半分を達成しており、ほぼ想定どおりとなっています。
2025年3月期 (第52期)第1四半期応用分野別概況-1
応用分野別の具体的な売上高についてご説明します。一番売上が多い計測・制御に関しては、天気予報になぞらえて「雨のち曇り」のマークで示しています。
その要因として、顧客の在庫の増加が挙げられます。コロナ禍が明けたものの、お客さまに我々が納入したものがなかなか出ていかないため、我々にも注文が入らないという状況です。このようにお客さまの在庫が減らないと、当社も販売できないというジレンマがあります。
以前は中国向けレガシー装置がかなり出ているという話もありましたが、当社の製品は中国向けレガシー装置向けにはあまり使われないため、良い影響はありませんでした。
また半導体製造装置に使用される高利益品の生産調整による生産減少もあり、計測・制御は前年同期比6.2パーセント減になっています。
利益が伸びていない要因も、このあたりに問題があります。計測・制御は量産効果も働き、高利益品もあるため、この生産減少が利益の落ちている原因の1つと考えています。
交通関連は「晴れ」マークです。鉄道信号関連で新規案件の量産が始まりました。交通関連は大きい案件よりも小さな案件が多く、多品種少量もしくは多品種中量というイメージです。新規案件もそれほど大きくはありませんが、このようなものの積み重ねで我々の売上は構成されています。
いろいろなところで新規案件の量産が出ると、少しではあるものの利益に貢献してくれる積み重ねになります。そのため、交通関連に関しては前年同期比41パーセント増となっています。
2025年3月期 (第51期)第1四半期応用分野別概況-2
通信・放送は「雨」です。ここは大変苦戦しているところです。通信分野に関しては、今までかなりの数を出荷したものの量産が終息したことが主原因です。
一方、電力関連に関しては堅調に推移しており、このセグメントの中では辛うじて気を吐いているところです。しかし残念ながら規模が大きくないため、前年同期比で3年連続のマイナスとなりました。
電子応用については、医療系で一時的な生産調整による生産減少があり、横ばいとなっています。売上は前年同期比6.2パーセント増と若干増えてはいるものの「曇り」マークとしています。
防衛・その他に関しては、前年同期比63.8パーセント増となっています。こちらは我々が営業をかけるというよりも、先方からの働きかけによるところが大きくなっています。注文がくれば上がるというところで、こちらは受身な売上となっています。
2025年3月期 (第51期)第1四半期応用分野別売上
応用分野別の売上同四半期推移です。スライドのグラフはここ3年の第1四半期を比較したものです。計測・制御がだんだんと小さくなっている一方で、交通関連が大きくなっています。また通信・放送が小さくなっている傾向も見てとれます。
2025年3月期(第52期) 第1四半期 - 財政状態
財政状態として、スライドに貸借対照表の抜粋を示しています。自己資本比率に関しては80パーセント弱を保っています。
2025年3月期 (第52期) 通期予想
先ほどご説明したとおり、今年5月に発表した通期予想に変更はありません。具体的には売上高が41億円、営業利益と経常利益が5億3,000万円、当期純利益が3億5,000万円です。中間での予想に関しても、現在は変更なしとしています。
1株当たりの配当に関しては、現在40円を予定しています。これは昨年度行った50周年記念配当を含めた38円を下回らない金額です。
2025年3月期 (第52期) 見通し
今後の見通しについてです。総論としては、主要顧客の生産調整が続きます。生産調整の度合いはお客さまによって異なり、比較的立ち上がってきているお客さまもあれば、もう少しかかるお客さまもあります。そのあたりをなかなか見通しづらい状況です。
分野別にご説明します。計測・制御に関しては、顧客の在庫増により生産調整が継続していますが、下期からは生産調整が解消すると見込んでいます。
解消の度合いは客先によります。我々が半導体製造装置向けに納入している会社は複数社、複数拠点あるため、同じ会社でも拠点によって状況が違います。在庫をあまり持たない方針の会社からは注文がきていますが、注文がまだ戻っていない会社もあります。
我々の見通しでは、半導体製造装置関連の状況は良好だと考えており、いずれは当社にも注文が戻ってくると考えています。ただし、それがいつになるかはなかなか難しいところではあります。
現状としては下期から解消を見込んでおり、予算的には下期が比較的大きくなっています。この見通しは今のところ変わっていません。
交通関連についてです。先ほどお話ししたとおり、鉄道信号系の新規案件が量産開始しています。また交通関連に関しては主に開発案件が増加傾向にあり、新規案件数は交通関連が一番多くなっています。
しかしながら案件がそのまま量産につながるわけではなく、試作の結果が良好であれば量産化という流れになります。そのため開発案件が発生しても売上に直結するわけではありませんが、有望ないくつかの案件が量産につながれば、将来的な利益に貢献すると考えています。
2025年3月期 (第52期) 見通し
通信・放送については苦しい戦いが続いています。放送局では景気が良いという話を聞きませんし、以前は5Gなどが好材料だった通信も景気が良い話を聞かなくなってきています。
一方で、電力分野の案件は堅調に推移しています。しかしながらマークは「雨」としています。
電子応用については、一時的な生産調整により生産量が減少しています。また医療器関連の生産が多い中国子会社は中国経済状況の悪影響を受ける可能性があり、このあたりを懸念して、現在「曇り」としています。
防衛・その他に関しては、例年並みと予想しています。
2025年3月期 (第52期) 応用分野別売上予想
2025年3月期の予想です。第1四半期では回復が見られなかった計測・制御の半導体製造装置関連に関しては、これからまた復活してくると考えています。割合としては前年並みとなることを想定しています。
これに伴い売上高も、前々期までは届かないものの前期を若干上回るぐらいで着地できるのではないかと予想しています。
直近10年間の業績推移
成長への取り組みについてです。スライドのグラフは直近10年間の業績推移です。多少の波があるものの、全体的に右肩上がりになっていることがおわかりいただけると思います。
当面の目標
当面の目標についてです。傾向としてどうしても波は生じるとは思いますが、年率10パーセントから15パーセントの成長を目標に、成長路線を堅持していきます。
3年後の2027年3月期には、売上高51億円、経常利益8億円を目指していきたいと考えています。
成長戦略
成長戦略です。スライドに記載のとおり、大きく4つ掲げています。次のスライドからそれぞれ詳細にご説明します。
(1)コア事業の強化
1つ目は、コア事業の強化です。当社のコア事業は、バックプレーンなど顧客メーカーの仕様に基づく受託設計・受託生産・長期安定供給のビジネスです。この事業をさらに拡大するため、それぞれの営業活動に注力していきます。
(2)受託範囲の拡大
2つ目に、受託範囲の拡大です。スライドに示した4つの図のうち、左から3つ目まではすでに我々が得意としている分野です。
そこに加えて、一番右側に示すコンピュータプラットフォーム、いわゆるボードコンピュータにも対応してソリューションを提供できれば、付加価値を上げることができます。またこれにより、お客さまの負担も軽減することができます。
そのような提案ができるよう、現在ボードコンピュータにも力を入れています。
(3)ボードコンピュータ事業強化
3つ目は、今ご説明したボードコンピュータ事業強化です。ここでもさまざまな取り組みを行っています。
スライドに記載のとおり、技術革新で小型化・低消費電力化が進み、エッジコンピューティング、IoT等、小型ワンボードコンピューターを使用して実現するDX(Digital Transformation)関連の開発が増加しています。
こちらについては、これまで上野事業所を中心に開発していましたが、案件増加に伴い、今年6月に設計・製造会社と業務提携を締結しました。パートナーシップを含む技術部門の増強を図り、今後は製品開発力の向上を目指します。
スライドに進行中の開発案件を抜粋しています。これらすべてが日の目を見るかはわかりませんが、このようにさまざまな開発案件に取り組んでいきます。
(4)中国子会社の活用強化
4つ目に、中国子会社の活用強化です。中国は我々の販売先でもあると同時に、技術力と価格競争力のある現地の部材調達先として、非常に有力な地域です。引き続き、安価な製品の提供を念頭に活用を強化していきます。
株主還元
株主還元についてです。現在、上場以来毎年22パーセントの増配を継続しています。前期は創立50周年の記念配当も実施しました。今期に関しては、安定した増配で22パーセントを継続していきたいと考えています。
将来的な還元に関してお約束するのは難しいですが、利益率の上昇により一時的に増配するのではなく、安定的に伸ばしていきたいと考えています。
質疑応答:在庫調整による影響や変化について
質問者:足元では計測・制御の在庫調整が続いているとのお話でした。その影響や、当初の想定と異なる変化などがあれば教えてください。
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