About “Tsunagu” 私たちについて
米田光宏氏(以下、米田):株式会社ツナググループ・ホールディングス代表取締役兼執行役員社長の米田光宏です。本日は会社・事業概要と、決算概要についてお伝えします。よろしくお願いします。
はじめに会社・事業概要です。我々は日本の大きな社会課題である、人口減少に伴う労働力不足の解決に向けた大きな力になりたいとの思いをビジョンに掲げ、いわゆる人材サービスセクターといわれる分野で日々営業を進めています。
会社概要
米田:当社は2007年に設立し、従業員数は2023年9月30日現在で690名です。
Corporate slogan
米田:メッセージは「できることは、まだある。」です。今後、危機的あるいは破滅的とも言える人材不足が予想されますが、きっと我々にできることはまだあると思っています。我々のサービスをはじめ、お客さまへのコンサルティングやソリューションを提供することで、この危機的な問題の解決につなげていきたいと考えています。
解決すべき社会課題について
米田:スライドには人材不足の状況を示しています。現在の仕事量を担保しようとすると、2030年にはおよそ644万人の労働需給GAP(人手不足)が明らかになると言われています。
新聞や各種マスコミ報道等でも「2024年問題」として取り上げられており、例えばこの2024年だけで、ドライバーがおよそ20万人足りなくなると言われています。
スライド右側に労働需給約7,000万人と記載していますが、こちらは延べ人数であり、フルタイムで働いている方を5,000万人強と考えると、644万人の人手不足が予想されています。
我々はいくつかの手法をソリューションとして提供することで、この644万人の労働需給GAPをゼロにしていきたいと考えています。
増井麻里子氏(以下、増井):この労働需給GAPについては、本当に埋めることは可能なのでしょうか? また、そのためにはどのような方法が一番有効なのかお聞かせください。
米田:スライドにいくつかの手法を示していますが、まずは、外国人労働者にいかに活躍してもらうかだと思います。コロナ禍により日本から外国人労働者がいなくなったことが1つの大きなトリガーとなり、国としても「技能実習制度」を「育成就労制度」という名前に変えて、より多くの外国人労働者に日本で働いてもらえるよう環境整備の取り組みを進めています。今後はいかに外国人労働力を活用できるかがポイントになってくると考えています。
もう1つはロボットやAIの活用です。例えば、従来はすべて人間が行っていた倉庫の作業を自動化するなど、テクノロジーを導入し、生産性を向上させるのも1つの方法です。
次に非労働力人口の労働化です。15歳から64歳が生産年齢人口と呼ばれていますが、現在では65歳以上の方も数多く働いています。ただ、週5日、1日8時間という働き方は難しいため、いわゆる非労働力人口といわれる、特にシニアの方が働きやすい環境をどのように作っていくのかが課題です。
最後に、追加就労希望者の労働化です。例えば、1日5時間働いている主婦の方が、本当は7時間働きたいけれどシフトに入れてもらえない場合、この2時間を積み上げていくと相当な労働力になります。
私は、1993年にリクルート社に新卒で入社しました。その前の1991年から1992年は多くのアルバイトをしていのですが、当時、アルバイトやパートなど非正規労働者の月間平均労働時間は100時間でした。それが直近の2021年には70時間と、どんどん減っています。
このままのペースでは2030年には50時間まで減ることになり、今のルールでは、アルバイトやパートで働く主婦の方が、子どもを認可保育園に預けられる就労下限時間を下回ってしまいます。
これは、最低賃金は年々上がっているにもかかわらず、106万円や130万円の壁により、就労時間を短くせざるを得ないためです。この問題を改善するだけで、644万人中、約7割の人手不足が解消されます。
「シフトを数時間足してほしい」「朝の3時間だけ働きたい」という短い時間を重ねて働ける追加就労希望者に仕事を積極的に提供することによって、644万人の労働需給GAPは解消されると考えています。
求人誌によく「コンビニスタッフ募集」と掲載されていますが、アメリカには「コンビニスタッフ」という仕事はありません。「レジ係」「清掃スタッフ」「品出しスタッフ」など職種ごとの募集で、品出しのみであれば朝の3時間だけでも働けます。そのようなところにシニアの方に入ってもらうような、仕事のポートフォリオと働く人のポートフォリオを作っていきたいと考えています。
事業概要(ビジネスモデル概要)
米田:スライドに記載のとおり、当社では業務ポートフォリオと雇用ポートフォリオをうまく組み合わせて労働力をカバーするコンサルティングとソリューションを行っています。エンタープライズといわれる従業員5,000名以上の企業が主なお客さまとなります。
増井:確かに、コンビニエンスストアでレジを気にしつつ品出ししている店員の方を見ると、こちらも「今レジに行ったら申し訳ないな」と思ってしまいます。
米田:OECD加盟国の労働生産性ランキングで、日本のランクが非常に低いことはさまざまなところで取り沙汰されています。それは日本人の「マルチフル」といわれる、空いている時間に他の仕事をするような、まさにコンビニスタッフと同じような働き方に原因があります。
マルチフルな働き方は給与に依存しており、また、接客は得意だけれど力仕事は無理な方や、力仕事はできるけれど接客は苦手な方は、マルチフルでは両方落とされてしまいます。
そこを業務ポートフォリオで分けることにより生産性を高め、人手不足も解消する打ち手を、世の中に提供していきたいと考えています。
事業沿革
米田:主に大手といわれる企業にコンサルティングとソリューションを提供してきた結果、2007年の創業以来、高い成長率を維持し続けています。
日本の人口のピークは2011年から2012年でした。つまり、労働力人口はその手前から減少しています。当社が創業した2007年も、有効求人倍率が1を超えるような人手不足の時代でした。リーマン・ショックやコロナ禍など、労働需給バランスが波を打つ時期があったものの、人手不足自体はずっと続いています。
このような状況の中、我々はソリューションやコンサルティングを提供することにより、CAGR33パーセントという高い成長率で、順調に業績を維持、拡大させてきました。
増井:「第二成長フェーズ」では、社会課題に対する御社の取り組みも変化しているのでしょうか?
米田:コロナ禍で大きく変化しています。我々は主に飲食業や観光・ホテル業などのサービス業や、小売業にソリューションを提供してきました。しかしコロナ禍で、お客さまがお店を開けられない状態となりました。
外的環境では、結果的にテクノロジーがどんどん進化しました。例えば、株主さまとのコミュニケーションで、昨今のようなウェビナー開催など、コロナ禍前では考えられませんでした。証券会社の会議室を借りて、みなさまにお越しいただき実施していたプレゼンテーションも、今ではWeb開催が一般的になりました。
これは採用面接においても同様です。新卒採用で、例えば福岡県の方が東京の企業に就職する場合、従来は面接のためだけに電車や飛行機に乗って往復しなければいけませんでしたが、現在はWeb面接が可能となりました。
日本だけでなく、東アジアでもそのようなかたちで採用活動ができるようになり、人材マーケットそのものが大きく変化しました。つまり我々自身も、提供するソリューションやコンサルティングも、大きく変容せざるを得なかったのです。
ただし、このリテラシーやテクノロジーの進化が、我々にとっては逆に大きなチャンスとなりました。これが大きな追い風となっており、我々も再成長のフェーズに入っています。
2024年9月期第1四半期連結業績(FY24 1Q)
米田:2024年9月期第1四半期の連結業績です。10月から12月の第1四半期売上高は38億7,500万円と、前年同期比で2桁成長を実現することができました。
コロナ禍で苦しんだ2020年、2021年に構造改革を行い、より収益力を高めようと戦略を進めてきました。その結果が出始めており、第1四半期としては過去最高の営業利益率3.2パーセントを出すことができました。
増井:売上高が2桁成長になった要因は何でしょうか?
米田:1つは、世の中の人手不足により我々のコンサルティングやソリューションをよりいっそうご利用いただけるようになったことです。もう1つは、コロナ禍以降に展開している新たな事業が少しずつ結実しつつあるということです。
2桁とはいえ現在10パーセントですが、先期は約30パーセントまで伸び、過去3年比では非常に大きく伸長しています。
増井:費用について、固定費と変動費ともに売上高に占める割合が低下しているようです。どのような改革をされたのですか?
米田:まず固定費に関しては、コロナ禍を機にシステム等を思い切って導入し、今まで人力で6時間かけていた仕事を10分以内で終わらせるような仕組み化に取り組みました。例えばテレワークも導入しましたが、テレワークで生産性が上がる部分もあれば、下がる部分もあります。しかしそうせざる得ない状況を踏まえ、思い切って仕組み化に取り組んだことが、固定費削減に大きく寄与しているのではないかと考えています。
変動費については、我々は新規事業として、お客さまの代わりに応募者を集めるソリューションの提供を開始しています。この新規事業がローンチしてから5年、本格的に稼働してからは3年ほどになり、データベースがどんどんたまってきています。
例えば100万円で100人を集めていたものが、知見がついてきたことにより、80万円で100人、75万円で100人を集めることが可能になってきました。
例えば、「運送業のドライバーで、6月、7月の夜9時に、Yahoo!ニュースのスポーツ記事で野球の結果を見ている人が、地域別に何人いる」ということが、情報としてわかるようになります。すると「このような人が欲しい場合は、このような広告を使えば良い」というソリューションにつながり、生産性がどんどん上がっていきます。
増井:求める人材の傾向に合わせて求人広告を出すというようなことですね。
米田:そのようなことからも変動費が少しずつ改善し、粗利が上がってくるという結果に結実してきたのではないかと考えています。
増井:DXの表れと考えてよろしいのですね?
米田:おっしゃるとおりです。
セグメント別業績
米田:各セグメントも順調に売上増となっています。多少誤解が生じそうな部分でいうと、ヒューマンキャピタル事業のセグメント利益がマイナス44パーセントになっています。先ほどお話しした仕組み化やシステム化では、顧客管理の再整理や販売管理システムの再構築等々にも取り組んでいます。そのため、ホールディングス費用と事業費用の切り分けルールを、監査法人とともに進めている最中のため、このような数値となっています。
ここを塗り替えてお示しすることも可能ですが、IRでは監査法人と取り決めたフォーマットで進めているため、いったんそのままの数字を出しています。今後は塗り替わった後になるため、もう少しわかりやすくセグメント別利益をお示しできるようになると考えています。
主要事業別業績
米田:セグメントの中でも注力している事業は、「RPO(採用代行)」、「Findin(WEBプロモーション)」、そして新規事業である「LeafNxT(派遣・紹介)」です。この3つの事業を中心に進めており、それぞれの売上も順調に成長しています。
特に「LeafNxT(派遣・紹介)」に関しては前年同期比プラス101パーセントとなっており、この新規事業の結実が、2桁成長を維持している1つの大きなポイントと考えています。
増井:「大規模企業集中」という言葉を用いていますが、どのようなことでしょうか?
米田:我々はコンサルティングし、ソリューションを提供することをビジネスとしています。良い悪いではなく、例えば町で10人雇っている居酒屋の採用より、総従業員数1,000人の大手企業をお手伝いするほうが、我々のフィー対効果からいえば効果があります。
労働需給GAP解消という意味では、我々がまず規模の大きいところからコンサルティングするほうが、世の中の社会課題解決にもつながる近道でもあります。そのため今はある程度営業先をセグメントし、大手企業に集中しています。
事業成長とともにお客さまの色分けも進んでくる中で、ARPU(1社当たり単価)も上がっている状況です。
増井:以前はそこまで大規模企業に集中している印象はありませんでした。いつ頃からこのように変わっていったのでしょうか?
米田:生産性を高める上で、我々もリソースの最適配置をしなければなりません。現在引き合いも多くなっているため、まずは大きいところにリソースを集中させています。しかしおっしゃるとおり、本来はもう少し幅広く配置していきたいと思っています。
しかしながら、我々自身の採用も進めなければソリューション提供できません。そこでこの夏にオフィスを移転します。これにより多くの人材を抱えられるようになれば、大規模企業だけではなく一定の中小規模企業にもソリューションを提供できる体制を整えることができるだろうと考えています。
連結売上高 四半期推移
米田:連結売上高の四半期推移です。先ほどもお話しした、2期連続で第1四半期の最高売上を更新しました。実は、我々にとって10月から12月となる第1四半期は、通期の中でも弱い四半期です。
1月から3月はアルバイトの入れ替えがあり、4月から6月は新社会人も含め学校がスタートします。そして7月から9月は、新卒採用の設計がスタートする時期です。そのため、10月から12月は例年非常に弱いのですが、ここで数字を順調に伸ばしたということは、今の取り組みが1つのかたちになっている状況だと考えています。
連結営業利益・率 四半期推移
米田:収益構造改革に関しては、これまでお話ししてきたいくつかの取り組みにより、営業利益率・営業利益額が第1四半期で過去最高をマークしています。
荒井沙織氏(以下、荒井):収益構造改革の効果は今後も持続していくのでしょうか?
米田:スライドの表のとおり、我々は2020年と2021年に、コロナ禍によって非常に大きなダメージを受けました。そこでレジリエンスプランとして、事業戦略に企業再生プランを置き、まずは固定費削減に取り組みました。それが2023年に一定の効果として出てきました。
続いて、今は限界利益率の改善、いわゆる労働生産性の改善と売価向上による粗利の向上に取り組み始めたところです。第1四半期でプラス1ポイントというところですが、我々のターゲットへの進捗率はまだ20パーセント程度です。今期から来期の途中ぐらいまではKPIを追いつつ、限界生産性ももう一段追い続けたいと考えています。
荒井:この結果が出てくるのが楽しみですね。
米田:そこは何とか実現したいです。第1四半期にプラス1ポイントが出てきたので、継続して進めたいと考えています。
ROIC 四半期推移
米田:コロナ禍によるダメージを受け、企業再生していく中で、我々が大きな目標の1つとして置いたものがROICです。ROICを財務指標として財務戦略を組みました。
1桁前半だったところから一つひとつの取り組みを経て、直近期のROICは2桁、第1四半期には16.4パーセントとなりました。最初に目指していた2桁のROICを、安定的に出すことができました。
成長戦略において、投資は大きな鍵だと考えています。投資回収性を含め、引き続きROICを高いポジションに持っていきたいと考えています。そのため、株主のみなさまにも随時共有したいと考えています。
増井:ROICは将来的に20パーセントあたりを目指されているのでしょうか?
米田:中期経営計画では20パーセントを目標に置きつつ、財務戦略を組んでいます。
賃借対照表と自己資本比率
米田:自己資本比率に関しても、コロナ禍明けから、安定して30パーセントを超えるようになってきました。我々はROICでは20パーセント、自己資本率では40パーセントをターゲットに置いていますが、中期経営計画の途中進捗としては順調に進んでいると考えています。
2024年9月期 通期業績予想
米田:通期業績予想です。第1四半期を終えて、通期業績予想は据え置きにしています。ただし、通期業績予想の修正が必要な場合は速やかに修正開示を実施します。
通期業績予想において、売上高は166億5,000万円で前年比プラス10.1パーセント、営業利益は6億6,200万円で前年比プラス49.3パーセントです。そして営業利益率を4パーセントまでもっていくことが、今期の業績予想開示になっています。
通期売上高・利益予想に対する進捗
米田:通期売上高・利益予想に対する進捗です。売上高に関してはほぼ例年どおりの売上高となっています。営業利益と経常利益に関しては、先ほど話題にあがった固定費と変動費の構造改革のうち、今期から変動費構造改革がスタートしました。構造改革の効果はもう少し後に出るだろうと考えていましたが、比較的早く効果が出始めており、予想より少し先に進んだ18.8パーセントの進捗率となっています。
成長戦略と重点施策の進捗状況
米田:我々は現在、売上成長と構造改革を進めています。重点施策に営業構造の改革があります。前年比で30パーセントも上げたところをさらに2桁ずつ上げ続けることは非常にハードルが高いものの、一番のポイントは営業基盤にあると考えています。
「営業基盤整備」としてSFA(業務支援システム)や、販売管理から顧客データを統合する仕組みを導入しています。「人材育成・採用」では人材開発投資を積極的に進め、研修予算をおよそ倍増させています。さらに「事業開発」として新規事業開発があります。営業の人というよりは行き先に近いですが、事業開発を進めています。
それぞれに取り組み事項が10項目ずつあり、今期の解消率としては、「営業基盤整備」が7、「人材育成・採用」が4、「事業開発」が5と、比較的順調に進んでいます。四半期ごとの解消率のアベレージを3と置くと、この第1四半期は思い切って前に進めることができたのではないかと考えています。
荒井:この中で特に優先して取り組んでいる産業や業種はどちらでしょうか?
米田:冒頭に申し上げたビジョンとして、我々は「2030年労働需給GAP解消」という、非常に大きな日本の社会課題を解決するため、そこから積み下ろして営業戦略を組んでいます。
つまり、2030年時点でもっとも人手不足になるところに取り組むことが課題解決につながるだろうと考えています。2030年の644万人の労働需給GAPをインダストリで分けると、医療・介護、そして物流・倉庫の2つが、シェアとしてもっとも人手不足になるだろうと試算されています。
一方、シェアではなく労働人口の減少量の大きさでは、サービス業です。今、直接飲食店に従事されている方は、およそ400万人といわれています。それに伴った従事者、例えば食材を運ぶ方やおしぼりを納入されるような方も含めると、飲食店従事者はだいたい550万人ぐらいになるといわれています。
全労働人口がおよそ6,000万人弱とすると、10人に1人は飲食業に近いところで働いていることになります。労働人口が減ると一番インパクトが大きいという意味では、飲食業を中心としたサービス業だと考えています。
当然、我々としては人材供給に関して、幅広くソリューションを提供していきたいと考えていますが、これから医療・介護、物流・倉庫、サービス業を中心に着実に積み上げ、「2030年労働需給GAP解消」の大きな力になりたいと考えています。
荒井:サービス業は労働人口が減ってしまうインパクトが特に大きいということでしたが、医療・介護などと比べるとAIに取って代わられることも多い分野という印象があります。そのあたりはどのようにお考えでしょうか?
米田:我々では労働を3つの区分に置いています。1つ目は「頭脳労働」です。例えばコンビニエンスストアなどの販売店では、「何を発注したら売れるのか」を考えます。「去年、この日は雨だった。今年も雨の確率が60パーセントということは、雨の日に売れるものは何か?」といったようなことが、いわゆる「頭脳労働」です。
2つ目が「肉体労働」です。物をピッキングで運んだり品物を出したりすることは、ある種「肉体労働」と言えます。
3つ目が「感情労働」といわれるものです。例えば、コンビニエンスストアでもう1点買ってもらいたい時に「昨日もこのおにぎりを買っていらっしゃいましたね。おいしかったですか?」と声を掛けることで、お客さまに「昨日これを買ったから、もう1個つけようかな」と思わせることができます。つまり「いつもいらっしゃって、ありがとうございます」という声かけからロイヤリティを高めることが「感情労働」になります。
例えば、AIに適しているのは、おそらく感情労働よりは頭脳労働だと思います。またロボットが担うのは、どちらかというと肉体労働です。人口が減少している中、この感情労働は人が行わざるを得ない部分であるということは、より明確になってくるのではないかと考えています。
例えば、「無人のコンビニエンスストアだから行こう」ということにはならないと思います。お店の利益は上がるかもしれませんが、やはり売上を上げにいくとなるとこの感情労働が非常に必要になってきます。顧客を覚えて「この人はこのようなものが大切なのだな」というようなホスピタリティです。
今後の労働力不足というのは過程であり、それに伴う例えばGDPの低下や日本そのものの幸せ度が低くなっていくことが本当の大きな問題だとすれば、やはり経営としては、売上を上げて、確実に世の中に物を提供していく際の「感情労働」が非常に必要になってくると思っています。
我々のソリューションの中には、コンビニエンスストアでもいくつかの仕事があります。「コンビニスタッフ」ではなく、「レジスタッフ」「清掃スタッフ」と分けるというのは、まさにそこです。仕事を切り分けて、人が人としてできるところに注力してもらう仕組み作りとマッチングを実現することによって、企業の成長に寄与したいと考えています。
荒井:大変よくイメージができました。
増井:感情という分類は、本当に新鮮ですね。
米田:このようなことをどんどんコンサルティングして、日本自体がそのまま元気になるような、その一助になるような企業にしていきたいと考えています。
増井:提供範囲拡大について、御社は確か面接につなげるまでが事業領域だったと思うのですが、これを今後もっと広げていくという方針でしょうか?
米田:サービス提供範囲としてはそこまでです。我々は、面接からがその人の動機づけとなっていると考えています。先ほど640万人の労働需給GAPがあるとお伝えしました。スライド7ページで「このようなことをすれば、ギャップが埋まります」と示しましたが、これは人が辞めないことを前提としています。人が辞めてしまうと、ギャップはもっと広がってしまいます。
その企業でしっかり働いてもらうということを前提に考えると、面接とは人を選ぶ場所ではなく、企業側が選ばれる時間なのです。人口増加時代においては、面接とは人を弾く過程でしたが、今では「我々の職場はこんなにいい職場ですよ」「あなたに、このようなことができますよ」というプレゼンテーションの場所となっていて、もう逆転しているのです。
我々のコンサルティングの中では「面接は必ず実施してください。なぜかというと選ぶ場所ではなくて選ばれる場所だからです」とお伝えしています。そう考えると、選ばれる場所に我々が行くのはおかしいという話になります。
増井:なるほど。
米田:今はテクノロジーの進化によって、「ワンクリックで仕事、あるいは人が見つかります」と言われています。しかし我々自身は、そのような時代には逆行していると思っています。
アルバイトでも社員でも、企業側はしっかりと人を選んで、しっかりと人に選んでもらうものだと思います。そうすると、ワンクリックでは無理です。そのことそのものが、今後のいわゆる労働需給ギャップの下支えになると考えていますので、ご質問の答えとしては、今後そこから先を行うことはおそらくないと思います。
増井:どちらかというと、人が入った後のリテンションマネジメントの部分をコンサルされるということですね。
米田:おっしゃるとおりです。
成長投資の進捗状況
米田:株主のみなさまからすると、この成長率でいくと、今期はおそらくもう一段、結果を出してくれるのではないかというお話が、我々のIRにも数多く来ています。しかし我々自身は、今この時点での追い風でそのまま結果を出すのではなく、さらなる成長を目指したいと考えています。
また、この時期だからこそ成長投資ができるということもあり、当期においても、いわゆる通常運転予算以外に、大きく成長投資を図りたいと考えています。
その一番大きな投資としては、オフィスを増床することによって我々自身のリソースを大きくし、提供する先も広げていき、結果として我々自身の成長にもつなげていきたいと考えています。
システム投資と営業基盤構築
米田:特に営業基盤構築について、我々は1つの会社からここまで大きくなったわけではなく、さまざまなM&A等々含めて大きくなってきたところもあります。いろいろな基幹システム、営業支援システムがあったところも1つに統合することによって、お客さまによりスピード感を持って、我々のコンサルティングやソリューションを提供できるような営業基盤に拡充していきたいと考えています。
株主還元
米田:最後に、株主還元についてみなさまにお伝えしたいと思います。当社は社会課題解決とともに、持続的な事業成長を実現した結果として、成長投資と株主還元のバランスを考えています。特にこの配当に関しては、優先順位が高く、株主還元施策としてとらえています。
今期も1株当たりの配当を10円と増配します。我々のチームは2030年をターゲットにビジョンを抱えていますので、長い目線で、この社会課題解決企業にぜひご支援のほど、お願いしたいと考えています。
質疑応答:外的要因への対策について
増井:「コロナ禍の際に大きな影響を受けたと思いますが、その経験を受けて、今後に備えた点は何でしょうか?」というご質問です。
米田:コロナ禍中、我々自身の営業利益、収益性が大幅に減ってしまったのは、労働集約型のビジネスモデルであったということが一番大きかったと考えています。
したがって、我々自身は、成長に比べて増員は少し低めに置きながら、仕組み化、システム化することによって、景気変動や外的要因に対するボラティリティに関しては波を受けづらくするということを今進めています。それがある種、システム投資の結果だと考えています。
それでも売上が伸びに間に合わないため、やはり増床することで人も増やしていきますが、売上の伸びと同じような伸び率ではなくて、そこは仕組み化と集約型の部分のバランスをとりながら、進めていきたいと考えています。
増井:御社は営業拠点をかなりたくさんお持ちだと思うのですが、これはそのまま維持していくのでしょうか?
米田:東北や大阪については、地場の従業員や、地場でのサービスという事情もありますので、これは維持していきます。首都圏における拠点に関しては、リモートの環境であってもコミュニケーションがとれるようなシステムを導入することによって、統合していきたいと考えています。
質疑応答:大阪・関西万博による需要について
荒井:「2025年の大阪・関西万博(日本国際博覧会)による需要の見込みと業績に与える影響について、現状を踏まえて説明いただきたいです」というご質問です。
米田:大阪・関西万博で、今回我々がプロジェクトを組むことになり、それについて開示しました。例えば東京2020オリンピックもそうなのですが、期間限定でたくさんの人がボランティア、もしくは雇用されるイベントの一番大きな課題は、ある職場を抜けてボランティアに行った人が、また帰ってくるということなのです。
万博でボランティアをするような方は、特にホスピタリティが高い方なので、例えば飲食店でアルバイトをしているような方がボランティアで入ると、そこのシフトの穴が開いてしまいます。では、代わりの人を採用したら良いと思っても、そのような優秀な人は万博が終わったら帰ってきますので、シフトを空けておかなければなりません。ここが非常に難しいところです。
我々の試算では、大阪・関西万博だけで、大阪を中心に、近畿地方のおおよそ40万人の方が移動され、さらにそれを埋めるために、だいたい300万人ほどの短中期的な需要が生まれると考えています。
その中で考えられているのが、いわゆる労働力のシェアリングです。とはいえ、まだシフトに入れていない人も確かにいるはずですので、このプロジェクトにご参画いただく企業の中で、労働法制基準を守ったままシェアリングすることを考えています。
例えばコロナ禍の中でも、航空会社の方など仕事がなかった時に物販に行かれて、また戻るという、そのようなイメージですね。それを今回の大阪・関西万博の中で、企業とプロジェクトを組んで、その40万人から300万人の需給マッチングを実現していきたいと考えています。
荒井:万博のために人を用意するのではなくて、抜けたところをということなのですね。
米田:むしろ万博へは、我々が集めなくても集まると思います。その抜けたところが大変になりますので、そこに対して我々はソリューションを提供していきたいと考えています。
質疑応答:自己資本比率について
増井:「自己資本比率について、目標は40パーセントとおっしゃっていますが、現状は34パーセントぐらいです。業界としてはそれぐらいが普通なのでしょうか?」というご質問です。
米田:業界では一般的にだいたい40パーセントと言われていますが、業界での規模や業容によって、自己資本比率の考え方はおそらく違うと思いますので、そこはメリハリがあると考えています。
我々としては、対外的な自己資本比率をターゲットに置いているのではなくて、やはり投資と回収のバランスをとることが我々の成長戦略に必要だと考えています。例えば、貯めに貯めて何もしないというのもおかしいですし、継続的な事業成長のためには一定の財務基盤も必要です。
そのバランスを40パーセントといったん置いて、41パーセントまでいったら次は50パーセントというわけではなく、そのまま着実に投資をして成長につなげていきたいと考えています。
増井:例えばM&Aをされるにしても、そこは頭の中で考えている指標ということになるのですね。
米田:おっしゃるとおりです。
質疑応答:労働力不足問題の今後について
増井:「自動化がますます進んでくると、そのうち人手不足どころか過剰人員になるように感じ、労働需給GAPに貢献できる事業は10年後も必要とされるのか懐疑的です。何かお示しいただける根拠があればお願いします」というご質問です。
米田:OECDでいくつか調べると、例えばAIが導入されることによる労働力不足に対する貢献割合というのが出ているのですが、それがだいたい5パーセントから8パーセントです。
先ほど示したように、日本の労働力不足は実は2桁を超える労働力不足ですので、おそらくそこは間に合いません。日本では相当マルチフルに働いていますが、仕事が分解された先進国でさえ、AIやロボットが入ることによって上がる生産性が5パーセントから7パーセントです。
日本の場合、1回それを分けて、必要労働力を増やして総員で入れるというかたちになりますので、おそらく2030年どころか2040年ぐらいも足りないような状況だと思っています。むしろ、労働力がいらなくなるとすれば、日本の人口がさらに減って、お店の数がもっと減って、需要がなくなった時だと思います。だからこそ、社会課題だと考えています。
我々は採用だけではなく、お客さまの事業が成長する、売上成長することによって、日本自体が元気になる、そのような1つの力になりたいと思っています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:ヒューマンキャピタル事業のセグメント利益が前期比44パーセント減少の背景と今後の見通しを教えてください。
回答:ホールディングスからの役務提供が想定より多く発生したため、その他セグメントの費用が大きくなったことによりHCセグメント利益が減少していますが、実質的にはセグメントが生み出す収益自体は売上に比例して増加しています。
こちらにつきましては、グループ各社間の取引に影響するものであり、誤解を招くものだと考えていますので、セグメントの在り方から見直しています。
<質問2>
質問:通期業績について、売上高成長率がコロナ禍前は20パーセント以上成長していましたが、2022年から今期会社予想については10パーセント台と成長鈍化しているように見えます。その背景や今後の見通しを教えてください。
回答:事業沿革をご覧いただくとわかるとおり、コロナ禍前はM&Aを多く実施したため、成長率が20パーセント以上となっていました。コロナ禍で業績が悪化し、業績回復に向けたコスト構造改革は急務でありましたため、2022年より収益性改善に努めていました。現状はコスト構造改革も順調に進んでいますため、既存ビジネスの磨きこみ実施に投資をしていく予定で、全体を鑑みて売上高成長率予想は10パーセント台とさせていただいています。今後はさらなる売上高成長のため、あらゆる施策を検討中です。
<質問3>
質問:P.22重要施策の進捗率はどのような評価方法なのでしょうか? 数値化するなら根拠が欲しいです。
回答:進捗率は全体タスクを「100パーセント=10」と見立て、そのタスクの完了率になります。