本日のご説明内容
三浦康英氏(以下、三浦):みなさま、本日は当社の決算説明会に足をお運びいただきまして誠にありがとうございます。
今日の内容はスライドのとおりです。まず2023年3月期の決算概要です。次に中期経営計画について、対象期間の2年が終わったため総括と今後の取り組みをご説明し、続いて2024年3月期の業績予想、最後にトピックスをご説明します。
1-1. 2023年3月期 決算概要
2023年3月期の決算概要です。売上高は前期比9.8パーセント増の203億3,500万円でした。通期予想については、第2四半期終了時点で為替の差益を含んで190億円に上方修正しましたが、それに対しても増収の結果となりました。売上高が200億円を超えたのは、創業来75年間で今回が初めてです。
売上総利益は41億4,200万円です。2023年3月期は原価における材料費が大きく上がりました。原油高の高騰に伴い、当社が木箱梱包で取り扱う材木、合板、その他副資材が軒並み高騰したため、材料費比率は2.6ポイントほど上昇し、およそ1億1,600万円の影響があった認識です。
販管費は前年比12.3パーセント増でした。2023年3月期は人材の補強を推進し、新卒社員を13名採用しました。こちらの人件費は今後3年間販管費に入り、1億2,000万円ほど増える見込みです。また、新基幹システムの稼働に伴うソフトウェアの償却および保守費で5,000万円ほど増加しました。
営業利益は前期比4,100万円減の10億1,900万円となりました。売上高は大きく伸びましたが、利益面では先ほどお話しした原価構成の影響があり、営業利益率は前年比0.7ポイント減の5パーセントになっています。
経常利益は前年比9,600万円増の12億300万円です。アメリカの子会社に対する長期貸付金の為替差益で2億2,200万円を計上し、これが営業外収益となりました。
当期純利益は前年比2億2,100万円増の9億8,000万円です。こちらは投資有価証券の売却益3,900万円と、経営資源の集中化策に伴う岩手県一関市の倉庫売却益1億3,100万円が入った結果です。
さらに、増益の結果を従業員に還元することとし、賞与の業績連動の部分で2億円ほど追加計上しています。
1-2. 2023年3月期 取扱製品群別 決算概要
スライドは、取扱製品群別の売上高について前年比の増減および構成を示したグラフです。工作機械の分野が前年比17億円増と大幅に増収しました。
工作機械の業況は2022年より大変好調で、引き続き堅調に推移しました。海上運賃の高騰により、当社のNVOCCの売上が大きく伸びたことも追い風となっています。さらに、2022年にできた富士宮の新拠点が通期に渡って売上に貢献し、売上を2億円ほど押し上げました。
小型精密機器は前年比で1億9,000万円減でした。主な要因は、航空貨物の取扱量の減少です。下期からどんどん減り、第4四半期に前年比40パーセント減の水準まで減少したことが結果に響きました。
大型精密機器は、半導体の製造装置の取扱いが堅調に伸びたことで、前年比1億3,800万円の増収という結果です。医療機器は堅調に動き、新規取引先が2社確保できたことで、前年比9,100万円の増収となりました。
1-3. 2023年3月期 セグメント別 決算概要
開示セグメント別の売上高とセグメント利益です。梱包分野は増収減益となりました。減益要因は材料費比率の上昇です。お客さまへの価格転嫁に加え、当社の自助努力として包装材を海外の輸入材から国産材に変えるなどの対策を行いましたが、材料費の上昇をカバーできませんでした。
運輸部門は減収減益です。こちらは医療機器や小型精密機器の取扱いが減少した結果です。
倉庫部門は、半導体の製造装置の取扱いが増えたことから増収増益になっています。2022年6月に成田拠点で、10月からは八王子拠点で、外部賃貸倉庫契約が新たにスタートしており、こちらが稼働していることが寄与しています。
1-4. 2023年3月期 地域別売上高 決算概要
地域別売上高です。中国では、2022年4月から5月にかけて起きたロックダウンをはじめとするコロナ禍の影響で、売上高が大幅に減り減収となりました。
アメリカについては西海岸・東海岸に拠点がありますが、西海岸は部品不足の影響等があり、売上高はほぼ横ばいで多少減収となっています。
東海岸の拠点は稼働して3年目で、通期にわたって本稼働に近い稼働ができ、お客さまの生産の取扱いに取り組むことができたため増収となりました。アメリカ全体では前年比3億円増に近い増収になっています。
2-1.中期経営計画の概要
中期経営計画の概要です。本中期経営計画は2021年4月から2023年3月までの2年間が対象でした。「オペレーションからソリューションへ」のビジョンを中長期的に掲げ、経営目標は売上高166億円、営業利益11億円、営業利益率6.6パーセントです。
2-2. 中期経営計画の結果
中期経営計画の結果です。売上高については、1年目、2年目、3年目と徐々に増加し、最終的には当初計画に対し40億円近く増えました。
一方で営業利益に関しては、当社は営業利益率をKPIとしていますが、当初計画の6.6パーセントに対して5.0パーセントでした。背景としては、物流業界に全般的に原材料価格高騰の影響が出ていること、また人材不足の中で人材確保に動くため人件費の上昇が生じている状況があります。このような環境下で業界全体として営業利益率は平均5パーセントを切り、4.5パーセントとなっています。
2-3-1.中期経営計画の総括及び今後の取組み
中期経営計画の総括ならびに今後の取り組みについてご説明します。まず国内事業です。精密機器と医療機器の施策では、メディカル推進チームを組成し、新規顧客2社を獲得しました。
また、成田地区・多摩地区の2地区で既存拠点を再構築する取り組みについて検討を開始しました。多摩地区においては、3事業所の集約を検討してきましたが、お客さまに対する物流サービスの低下につながるため、集約ではなく今後さらに1拠点を増やしていこうという計画にしています。
今後のサンリツの成長に大きくつながると考えている成田地区での事業所拡大プロジェクトは、発足して1年が経ちました。こちらは現在進行中で、2026年には稼働させ、次の成長の基盤にしていきたいと考えています。
工作機械の施策では、アメリカの子会社を主体とする新規取扱いを視野に動いています。国内と海外、日本とアメリカのパイプをより強くしながら、シームレスな国際一貫物流サービスの提供を目指していきます。
2-3-2.中期経営計画の総括及び今後の取組み
海外事業についてです。アメリカ西海岸の新倉庫建設は、コロナ禍の影響で当初の計画から1年遅れています。鋼材価格の上昇により建設コストが増えている状況ですが、2023年6月末の竣工予定で動いています。完成予想図と倉庫の概要はスライド下に記載のとおりです。
海外事業における今後の取り組みとしては、アメリカ西海岸の新倉庫の安定稼働を図りながら、さらにグローバルに視野を広げるかたちで、現状拠点のある中国とアメリカだけでなく欧州や東南アジアへの業容拡大も検討していきたいと考えています。
2-3-3.中期経営計画の総括及び今後の取組み
事業運営の基盤強化の取り組みです。DXの推進を手がける事業戦略部を設置し、物流倉庫3Dソフトの導入、自動フォークリフトの実証実験などを実施しています。
設備投資の金額は2年間で総額25億円です。1年目の実績は10億円で、新基幹システムの導入に9,000万円ほど、アメリカ子会社の土地購入に4億6,000万円かけています。2年目は約14億4,000万円で、本体の設備関係の更新および基幹システムのリニューアルを投資対象としています。また、アメリカの新倉庫の建設費用として8億8,000万円ほどを投資計上します。
今後は、当社が掲げるソリューションを実現するため人材の育成を強化していきます。
2-4.次期中期経営計画に向けて
次期中期経営計画についてご説明します。2年の中期経営計画が終わり、新たな期に入りました。2022年7月から月1回の経営幹部の会議にて振り返りを行い、次のステップへ向けて、新しい3年間の中期経営計画を策定中です。策定次第、速やかに開示します。
次期中期経営計画は、当社の80周年にあたる2028年3月期まで残り5年ある中での3年間の計画です。2028年は通過点という位置付けで、2023年3月期からの5年間で50億円ほど売上を伸ばしていこうと思っています。
また、現在の営業利益率は5パーセントですが、DXの推進や作業の効率化に取り組むことで、6パーセントを目指していきたい考えです。そのような中で、収益性の向上へ向けた各種施策を手がけていきます。
DXにおいては、以前ご説明した3つのステップのうち、現在はデジタル化の推進・デジタルパッチという第1段階です。次のインテグレーションにおいては、現在無人フォークリフトなどの実証実験をしており、さらなるAIの活用を施したいと考えています。
3-1. 2024年3月期 業績予想
2024年3月期の業績予想です。売上高は前年比1億6,400万円の増収計画ですが、営業利益は前年比で減益の予想としています。現在、堅調であった当社の工作機械および半導体製造装置の取扱いが一服しています。これらが回復する時期が2023年下期といわれていましたが、多少遅れており、2024年になる見込みです。
そのような中で、新規顧客を取ることにより増収を図る計画です。原価面では、人材の投入をさらに強化します。2023年3月期は人材確保が十分にできておらず、年間計画比で50名ほど不足して推移しました。今期は中途採用の窓口をさらに広げ、人材の確保を行います。そのため、今期の人件費の原価として前年比で3億5,000万円ほど増える計画です。人数としては58名の増員をかけていきます。
材料費は高止まりしており、現在も下がる要素が見えていない状況です。材料費のインパクトにおいても、通期にわたって前年比で原価増と捉えています。ただし、主要材料の見直し等を含めて、前年と同等の材料費率にはしたいと考えています。
また、今後は水道光熱費が大きく増える予想です。テナントに対し水道光熱費をそのまま請求できるところもありますが、賃借料に含まれているところへは値上げ交渉を随時進めたいと考えています。
3-2. 2024年3月期 取扱製品群別 業績予想
取扱製品群別の業績予想です。工作機械の売上が前年比で2億円ほど下がると予想しています。アメリカの新倉庫において新規顧客が見込めますが、日本国内では前年比で取扱いが減少する見込みです。
小型精密機器は、航空貨物の取扱いがいまだ底を打っていますが、新規顧客の獲得を図ることで増収を計画しています。大型精密機器については、半導体製造装置が前年比で大きく減収の予想ですが、今期に中国の子会社でEV車のバッテリー製造ライン移設のスポット受注があるため、2億円ほどの増収予想です。
3-3. 2024年3月期 地域別売上高 業績予想
地域別の売上高予想です。中国はスポット受注によって2億円ほど増収の計画です。アメリカは新倉庫が稼働して新規顧客の獲得が見込めます。2023年6月末の竣工で7月から売上に寄与し、前年比1億4,300万円の増収を計画しています。
3-4.配当について
2023年3月期の配当は、過去最高の1株当たり50円の予想です。2024年3月期は、配当性向30パーセントを基本方針とし、29円の配当を予定しています。
【参考】トピックス
トピックスです。当社の包装技術部隊が、世界包装機構主催の大変名誉ある「ワールドスター賞」を、2023年も受賞しました。スライドの過去の受賞履歴に記載のとおり、「ワールドスター賞」は4回目の受賞です。2023年秋にドイツで授賞式があります。
今回の受賞作品は、地球温暖化・CO2の削減に大きく寄与する改善です。緩衝材のごみをゼロにし、梱包時間の短縮、さらにはリターナブルな設計という点で評価をいただきました。
【参考】トピックス
当社の女子卓球部が「内閣総理大臣杯 日本卓球リーグプレーオフ JTTLファイナル4」において、見事日本一となりました。ファイナル4とは、前期と後期の上位4チームが最終戦を行う、社会人としては最高峰の卓球リーグです。前期も後期も優勝したことで、完全制覇の初優勝となりました。
卓球部も若返っており、今年も高卒者2名を獲得して活動中です。将来的にはオリンピックに出場できる選手の育成を図っていきたいと考えています。
【参考】トピックス
卓球での地域貢献です。2023年2月11日に当社の京浜の卓球場を開放し、東京・神奈川・千葉・埼玉の県代表レベルの小学生32名を集めて大会を開きました。小学生の今後の卓球、ならびに、スポーツ精神といった心身の成長を促したいと考えています。
今期の地域貢献の活動においては、夏に長野県で地域交流を、2024年2月には第2回目の小学生大会の開催を予定しています。
質疑応答:新中期経営計画の策定について
質問者:新中期経営計画の策定について、何が課題で時間がかかっているのかを教えていただけますか?
三浦:3年の中期経営計画を策定する考えですが、スタートとなる今期について不透明さがまだあります。
新型コロナウイルス感染症やロシア・ウクライナ情勢等の地政学リスクをどのように捉えるか、また人材確保の基盤を強化する中で、ただ単純に人件費が増えていく構造ではなく、将来的に収益の高い成長を目指したいと考えており、今そちらを議論しています。
もう少しでまとめられると考えていますので、すみやかに開示していきたいと思います。
質疑応答:精密機器の搬送DXについて
質問者:DXについて、無人フォークリフトのお話がありましたが、御社の強みである精密の部分での無人化は非常にリスクが高い気がします。十分にできるものなのでしょうか?
三浦:AIや無人フォークリフトについて検証中ですが、第一の前提はお客さまに安定した品質のサービスを提供することです。
精密機器における自動搬送機などは、メーカーの工場内でも動かれている状況です。今は十分に実証実験を重ねながら、裸の製品ではなく実際に梱包されている製品の取扱いにおけるDXを推進していきたいと考えています。
質疑応答:今期の減益の内訳について
質問者:今期は減益予想ですが、営業利益について、セグメントや地域別で前期とどのような違いがありますか?
三浦:まず人件費において、新たに新卒採用を9名、契約社員からの社員登用を13名増やしています。減益予想は各セグメントにもつながる部分ですが、もっとも影響があるのは梱包の分野での原価増です。
地域別では、アメリカの収益、特に利益率は今後上げていきたいと考えています。今回の減益予想は、中国・アメリカではなく、日本国内における今一度の事業基盤の強化のための原価増によるものです。
質問者:梱包のところで採用を増やした結果、利益が減るということですか?
三浦:原価増の内訳は人件費と材料費の増加です。セグメント別では、梱包セグメントに一番人を要するため、そちらが減益予想となっています。
質問者:人のインパクトは何億円ぐらいですか?
回答者:セグメント別には分けていませんが、前年比3億5,200万円増と捉えています。
質疑応答:現在の強みと中期経営計画での取り組みについて
質問者:収益構造が安定してきており、以前より景気の影響を受けにくくなっているという印象を持っています。社長の実感として、5年ぐらい前と比べてどのようなところが良くなってきたと感じますか? また、中期経営計画でどのあたりをさらに強くする余地があると感じていますか?
三浦:ここ数年で一番の課題と捉えてきたのが、やはり人材の確保です。2023年3月期の2年ほど前から、計画よりも少ない人数で推移していました。そのような中でも利益は出ましたが、私としては従業員に大変苦労をかけたと考えています。
人材の確保において、従来、従業員が働きやすくやりがいのある職場作りのために、投資も含めて職場環境を整えました。やめない構想作り、サンリツを選んでいただける職場の環境作りは、5年前と比べて大きく改善したと思っています。
今後は2028年3月期を1つのターゲットにし、売上を50億円増やしていこうと思っています。また、人材確保の強化は今期で終わりだと考えており、今後はできる限り人材の部分で作業効率を上げて利益体質に持っていこうと考えています。営業利益率を1パーセント上げるため、無人化・省人化・省力化のDX推進を含めて検討しているところです。
質問者:連結ベースで、利益率は以前よりどの程度上がりましたか? すでに目標に近いところまできているのでしょうか?
三浦:物流業界における利益率の1パーセントは非常に大きいものです。大手物流会社の利益率を見るとわかるように、業界平均の利益率は5パーセントを切り、4パーセント近い推移となっています。
そのような中で、利益率を6パーセントにしていくことは、私自身は非常に高い位置付けだと捉えています。同時に、売上を増やした上で増益にしていきたい考えです。
質疑応答:景況感について
質問者:社長の感覚で、去年と今年で景況感はどのように変わったとお考えでしょうか?
三浦:当社の業績は、当社のお客さまであるメーカーの動向に一番左右されます。メーカーとしては、この1年から2年の間、部品不足に大変苦慮されてきました。
そのような中で物流として何ができるのかについてです。まず当社の事業領域として、調達物流はほとんどなく、お客さまの生産から出荷・販売までの物流が主体です。この1年間で、半製品や部品が揃わない状態で、外部倉庫への保管が増えるもののなかなか中の稼働が上がっていかない、物が出ていかないという構造は変わってきています。
今後は、TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)をはじめ、半導体関連の工場が日本に投資して稼働を目指しています。今まで半導体製造装置は輸出しか考えられませんでしたが、逆に、入ってくる装置を成田の新しい倉庫で手がけていきたいと思っています。
質疑応答:人材確保の進捗と北米西海岸の新倉庫について
質問者:今期計画における人件費について、足元での人材調達の状況について教えてください。前期のように人材調達が達成できなかった時は、おそらくもう少し利益率が上がってくるかと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?
また、アメリカ西海岸の新しい倉庫がまもなく稼働するということですが、取引先の確保の状況はいかがでしょうか? 6月以降にフル稼働していけるのか、また、現在何割ぐらい稼働できる見込みなのか教えてください。
三浦:人材確保の足元の進捗については、2023年1月から当社の人事部で動き始めており、中途採用の確保が順調に進んでいます。現在の第1四半期に20人を確保できている状況です。
アメリカの新倉庫については、コロナ禍で私もなかなかアメリカへ行くことができていない状況ですが、新倉庫の竣工と同時に出張として行きたいと考えています。現在、日本の既存のお客さまのアメリカでの受け入れ倉庫として、新しいお客さまの製品が確保できています。現状の倉庫の集約も行い、新倉庫はフル稼働でスタートしたい考えです。
三浦氏からのご挨拶
次の新中期経営計画の中で、本日ご説明できない部分がありました。将来的には、2028年に向けて大きく売上を伸ばしていきます。そのために、今期は人材の確保を重ね、基盤を強化します。また、人材育成・情報収集を今期の大きな課題と捉え、積極的に推進していく所存です。
お客さまにとってなくてなはならない存在、また、ステークホルダーのみなさまに選ばれる存在となり、将来の成長に結びつけていきたいと考えています。