当社の概要
神田進氏:みなさま、おはようございます。大倉工業株式会社代表取締役社長執行役員の神田でございます。本日は、当社の2022年12月期決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。
まず、当社の概要について簡単にご説明します。当社は1947年に設立された、合成樹脂事業、新規材料事業、建材事業の3事業を中心とした製造メーカーです。資本金は86.19億円、2022年12月末時点の連結の従業員数は1,935名、2022年12月期の売上高は連結で772億円です。事業所は営業拠点が5ヶ所、製造拠点が5ヶ所、連結子会社は国内11社、海外1社です。
当期間のセグメント別 需要増減
2022年12月期の決算概要をご説明します。はじめに、当期間における当社事業の需要動向についてです。農業用フィルム、車載用途の機能性材料、住宅設備関連の用途で需要が増加しています。また、環境貢献製品は堅調に推移しました。
一方、半導体不足による影響が工業用途中心に続いており、需要が低迷しています。また、光学フィルムは、中国ディスプレイ市場の減速の影響を受け、需要が減少しました。
連結売上高 連結営業利益
2022年12月期の決算業績をご説明します。なお、本年より収益認識会計基準を適用しており、前年度実績は適用前の数字で表記しています。売上高は772.6億円となりました。収益認識会計基準変更に伴う売上高の減少額は195.3億円です。
一方、営業利益は、前年比26パーセント減の37.7億円となりました。原材料・エネルギーコストの急上昇に対して販売価格の転嫁が遅れたことや、ディスプレイ市場で在庫調整局面に入り受注が減少したことが要因です。
セグメント別売上高、営業利益増減
セグメント別売上高・営業利益の増減内容です。売上高は、収益認識会計基準適用前で全セグメントにおいて増収となりました。営業利益は、合成樹脂事業のコスト上昇分の価格転嫁の遅れや、新規材料事業の光学フィルムの販売数量の減少が大きく影響しました。なお、建材事業でも接着剤や木材のコスト上昇はありましたが、増販と価格転嫁によりカバーすることができました。
連結営業利益増減
営業利益の要因別増減内容です。コスト上昇分の製品価格への転嫁は進んだものの、原材料やエネルギー、物流コストの上昇分すべてをカバーするには至りませんでした。
合成樹脂事業
セグメントごとの概要をご説明します。合成樹脂事業の売上高は、製品価格の修正およびアグリ製品・プロセス機能材製品の増販により、前年比8パーセント増の516.1億円となりました。アグリマテリアルBUは、農業用フィルムの拡販と直需活動の効果もあり、前年比13.8パーセント増となりました。
プロセスマテリアルBUでは、リチウムイオン電池用のタブフィルムや住設用フィルム等の販売が増加しました。一方、半導体不足の影響で、電子材料用途のフィルムが減少しました。ライフ&パッケージングBUは、巣ごもり需要の反動により、食品等用途の軟包材製品で苦戦しました。
合成樹脂事業
合成樹脂事業の営業利益の増減内容です。製品価格修正および拡販活動により約50億円分の増益効果がありましたが、原材料価格、電力料、物流コストの上昇による変動費が約62億円の大幅増となり、固定費の削減に取り組んだものの、通期営業利益は7.9億円減の34.7億円となりました。
スライド右のグラフは、原材料価格の上昇に対する製品価格転嫁の推移です。2022年12月末時点で、原材料価格上昇分はほぼ価格転嫁できましたが、ユーティリティコストや物流コストの上昇分は転嫁できておらず、現在も電力料等の上昇分の価格転嫁を進めています。
新規材料事業
新規材料事業です。売上高は、前年比8.1パーセント減の108.5億円となりました。機能材料BUは、車載用途の機能性材料の販売が堅調で、前年比9.9パーセント増となりました。電子材料BUは、車載用途を中心に精密塗工の新規受注で加工量が増加し、前年比12パーセント増となりました。光学材料BUは、液晶パネル市場の急激な悪化に伴う在庫調整の影響を受け、前年比21.1パーセント減となりました。
営業利益は、光学材料BUの販売減が影響し、前年比43.4パーセント減の13.4億円となりました。
建材事業
建材事業です。売上高は、前年比26.9パーセント増の133.4億円となりました。水廻り・内装用の需要取り込みや、環境貢献型枠「木守」を中心に、環境資材製品や住宅部材製品も増加しました。また、プレカット事業においても、材料の確保、手取価格のアップ、非住宅物件の獲得などで売上が大きく伸びました。
営業利益は、前年比45.7パーセント増の8.6億円となりました。拡販活動による増販に加え、接着剤等のコスト上昇分を販売価格に転嫁できていることが、増益に寄与したものです。
その他関連事業
その他関連事業です。ホテル事業は昨年から宿泊が回復傾向にありますが、宴会等のイベントの売上は戻らず、苦戦が続いています。一方、情報処理事業は、独自開発の調剤薬局向け鑑査システムの販売が引き続き堅調であり、前年比で8.5パーセント増加しました。
連結損益計算書
連結損益計算書の営業外収支、特別利益、法人税等についてです。当会計期間は、固定資産売却による特別利益を15.4億円、固定資産の減損による特別損失を4.2億円計上しています。これらにより、当期純利益は前年比10.9パーセント増の37.8億円となりました。
連結貸借対照表
連結貸借対照表についてです。総資産は売上債権や棚卸資産の増加などにより、前期末から43.6億円増加し、902.3億円となりました。純資産は前期末から30.6億円増加し、555.9億円となりました。
連結キャッシュ・フロー計算書
連結キャッシュ・フロー計算書についてです。営業活動により増加した資金は37億円、投資活動により減少した資金は33.1億円、財務活動により減少した資金は17.7億円となっています。それぞれの内訳は、スライド下段に記載のとおりです。以上が2022年12月期の決算概要です。
経営ビジョンNext10(2030)で目指す事業ポートフォリオの深化
続いて、2023年12月期の業績予想についてご説明します。当社グループは、10年後のありたい姿として「要素技術を通じて、新たな価値を創造し、お客さまから選ばれるソリューションパートナー」を目指し、経営ビジョン「Next10(2030)」を定め、長期的な成長と企業価値向上に向けて取り組んでいます。
事業ポートフォリオの深化に向け、成長市場だと考えている情報電子、プロセス機能材料、環境・エネルギー、ライフサイエンス分野に重点的に投資します。また、基盤事業である生活サポート関連は、環境貢献を切り口とした製品への転換と拡充で成長を目指していきます。
中期経営計画(2024)の位置づけ
2023年12月期は、中期経営計画(2024)の2年目にあたります。基本方針として、既存事業の質的向上、戦略・成長投資の拡大、サステナビリティ・ESG推進を掲げ、経営基盤と収益力の強化を目指しています。
国産ナフサ価格、ドバイ原油価格及び為替の動向
当社に影響の大きい国産ナフサとドバイ原油の価格動向および想定について説明します。国産ナフサ価格は、ロシアのウクライナ侵攻による資源価格の急上昇やアメリカの金利上昇に伴う円安等により、昨年の第2四半期でキロリットルあたり8万6,100円まで急上昇しました。
その後、中国経済の低迷などもあり、第4四半期にはキロリットルあたり7万2,500円となりました。今期は第1四半期以降、経済の回復に伴うエネルギー需要の増加が想定されるため、価格は再び上昇していくと予想しています。
また、4月には電力料金の値上げが予定されており、これらのコストアップに対しても価格転嫁への取組みを進めていきます。
業績予想 セグメント別売上高、営業利益
このような環境のもと、2023年度の通期連結業績予想について、売上高は810億円と予想しています。また、営業利益は45億円、経常利益は48億円と増益の予想です。当期純利益は35億円の予想で、固定資産売却益があった前期からは減益を見込んでいます。
設備投資(工事ベース)及び減価償却費
設備投資の状況です。今期は新規材料事業における仲南地区の新工場建設等を中心に、100億円の設備投資を計画しています。減価償却費は41億円の見込みです。
2023年業績予想 セグメント別
今期のセグメント別の業績予想をスライドの表で示しています。合成樹脂事業は、引き続きユーティリティコストアップ分の転嫁による価格アップとともに、プロセス機能材料の拡大、アグリマテリアルBUやベーシックマテリアルBUでの環境貢献製品の拡販を見込んでいます。
新規材料事業は、中小型パネル用の需要回復時期が不透明な中、大型用途では広幅偏光板ラインの増設が進んでおり、今期中盤以降の回復を想定しています。
建材事業は、昨年は競合他社で設備トラブルが起こりました。しかし、今期は新規増設した企業の供給も増え、素板ボードでの苦戦が予想されることから、加工ボードや環境貢献型枠、非住宅向けの拡販を計画しています。
合成樹脂事業 今期の取組み
各セグメントの取組みについてご説明します。合成樹脂事業は、半導体搬送パッケージ用の導電性フィルムやプロテクトフィルム、リサイクルPPを使用した化粧フィルムなど、プロセス機能材料での増販に取り組みます。
既存製品の生活サポート関連製品は、サステナブル製品の開発・拡大に注力します。減容化パウチの製品や、リサイクルフィルムをはじめとした環境貢献製品の拡販に取り組んでいきます。本年は新たに7種7層製造装置を導入し、バリアモノマテリアルフィルムの開発に新たに取り組んでいきます。また、電力料価格上昇分等の販売価格への転嫁も、引き続き進める考えです。
新規材料事業 今期の取組み
新規材料事業についてです。ディスプレイ市場の在庫調整局面が続く中、大型液晶パネル向けの光学フィルムは2,500ミリ幅の広幅需要が増加しており、受注が一部増加に転じています。これを受け、生産能力を2倍に増強するよう取り組んでいます。仲南地区で建設中の新工場は、計画どおり本年12月に量産開始予定です。
また、本年5月にベトナムに新子会社を設立する予定です。場所はベトナム中部のダナン近郊にあるトゥアティエン=フエ省の工業団地で、資本金は5億2,500万円です。自動車モーター向けの接着剤事業を第1期とし、将来的には合成樹脂事業を含めた全社的な事業での拡大を目指しています。
建材事業 今期の取組み
建材事業についてです。環境貢献型枠「木守」は、従来合板しか使用されなかった型枠に代わり、環境製品として大手のディベロッパーやゼネコンから推奨が取れ、増販につながっています。本年は月7万枚の販売を目指しています。
加工ボードは、ダイニングキッチンや洗面用途を中心として拡販を進めていきます。また、商業ビル、公共施設、小売店舗等の非住宅分野への拡販に取り組みます。
R&Dセンター 今期の取組み
R&Dセンターは、情報電子、環境・エネルギー、ライフサイエンスの3領域で新しい要素技術の獲得に取り組み、事業につながる新製品の開発を行っています。
情報電子分野は、5G用高周波低損失基板用フィルムや車載用フィルムを開発し、量産化に向けて取り組んでいます。
環境・エネルギー分野は、市場から回収した廃プラスチックのリサイクル技術の獲得を目指し、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルの両面から検討を行っています。
ライフサイエンス分野は、植物加工技術を活用して、有機溶媒を使用せずに、オリーブ葉から高濃度で機能性成分を抽出した「オリーブ葉エキス」を開発しました。現在はヘルスケア用とスキンケア用の実証を進めています。
株主還元
株主還元についてご説明します。当社は株主のみなさまに対する利益還元を、経営上の最重要課題の1つと位置付けています。継続的な安定配当を基本に、業績や財務健全性のバランス等も総合的に勘案しつつ、配当の引き上げに努めていきます。
株主還元の充実を図るため、2022年期末配当金については、1株当たり85円としました。2023年の期末配当金については、2022年同様の1株当たり85円を予定しています。
当社のサステナビリティ
サステナビリティ推進活動についてご説明します。当社グループは「社会から信頼される企業」であり続けることを基本方針として、サステナブル経営を実践しています。今後も、事業を通じて環境課題や社会課題の解決を積極的に展開し、社会から信頼される企業を目指していきます。
当社サステナビリティ取組みの評価
昨年、当社は初めてCDP質問書に回答しました。初年度ですので気候変動のみの回答とし、評価結果はBでした。プラスチック製造業界の平均スコアであるCよりも、やや高い評価ではありましたが、今後も気候変動に関わる取組みを積極的に実践し、さらに高い評価となるよう努めていきます。
サステナビリティの推進 E:環境
環境に関する取組みについてご説明します。当社グループの昨年度(2022年4月から2023年3月)のCO2排出量は、基準となる2013年度と比較して約25パーセント削減の見込みです。前年比では、約5パーセント削減で推移する見込みです。
前回の決算説明会で太陽光発電設備設置の推進をお伝えしたとおり、グループ会社である滋賀県のKSオークラで設置が完了し、運用を開始しました。本社への導入については、機械設備の調達遅れがあるため、本年4月の稼働を予定しています。
現在導入が決まっている4地区のCO2排出量の年間削減量は、約2,700トンの予定です。いずれの地区も順次導入を検討しており、さらなる省エネ活動とともに、CO2排出量削減へ積極的に取り組みます。
サステナビリティの推進 E:環境
当社の環境貢献製品には「Caerula(カエルラ)」という名称とマークを制定しています。2024年度の目標として、生活サポート関連製品における「Caerula」認定比率50パーセント以上を掲げて、進めています。2022年度の実績は昨年比で30億円ほど増加し、割合としては1ポイント増でした。
「Caerula」認定製品がお客さまの環境貢献の一助になるよう、積極的に提案し拡販に注力していきます。2023年度は45パーセント以上を目指しています。
サステナビリティの推進 E:環境
スライドでご紹介している製品は、当社グループの「Caerula」認定製品の一部です。合成樹脂事業と建材事業を中心とした生活サポート関連製品において、環境負荷の軽減や資源循環に寄与するサステナブル製品の開発・普及に取り組んでいきます。
サステナビリティの推進 E:環境
当社グループが注力している資源循環への取組みをご紹介します。スライドは一般的なプラスチック製品のリサイクルスキームですが、当社はマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの両面で検討を進めています。
サステナビリティの推進 E:環境
マテリアルリサイクルの一部をご紹介します。ユーザーであるブランドオーナーなどで使用されたプラスチックフィルムを回収し、リサイクル商品やリサイクルペレットの製造を行って、ブランドオーナーにリサイクル商品を提供するスキームです。
「エコカルマルチ」は使用済みの展張用の農業フィルム等を回収し、農業用マルチフィルムとして再利用したものです。2023年度は約1,000トンの販売を計画しています。
また、住宅設備用としてはリサイクルPPを使った化粧フィルムを開発し、昨年から納入を開始しています。2023年度は250トンの販売を予定しています。さらに、昨年10月に公表したANAホールディングスの使用済みフィルムの再利用においては、本年度上期に納入を開始する予定で進めています。
今後も、このようなブランドオーナーとの売り込みを積極的に進めるべく、同様のスキームで各ブランドオーナーにご提案しています。
サステナビリティの推進 E:環境
また、自治体が回収した資源ゴミの中でゴミ袋のみを回収し、リサイクルゴミ袋として再利用できるスキームを検討しています。
自治体のゴミ袋は印刷インキの脱墨が課題でしたが、当社グループでインキ脱墨の技術確立に目処が立ったため、現在は製品化に向けた開発を進めています。環境に優しいリサイクルゴミ袋の採用に向けて、多くの自治体にアプローチしているところです。
サステナビリティの推進 S:社会
社会関連のサステナビリティ推進状況です。昨年7月に社会関連テーマにおけるワーキンググループを設立し、サステナビリティ推進部、総務広報部、人事部が中心となり、ダイバーシティなどにおける課題解決に取り組んでいます。
当社は24時間稼働の製造ということもあり、どうしても製造現場には男性社員が多いため、女性社員の構成比は16パーセントと決して高くはありません。それに伴い、女性役職者構成比も10パーセント以下にとどまっています。
このような現状を踏まえて、女性活躍社会環境の構築を推進すべく、昨年10月にワーキンググループのもとに女性分科会を設置しました。各部門の女性社員を中心に、当社グループの女性活躍環境における問題点や解決策などを検討しています。
また、昨年「健康経営優良法人2022」の認定を受け、今年3月には「健康経営優良法人2023」に認定予定となっています。当社は製造メーカーとして「安全はすべてに優先する」「安全は経営の根幹である」という理念を掲げています。今後も従業員の安全と健康を最優先の課題として取り組みます。
サステナビリティの推進 S:社会
人材育成についての取組みです。当社グループは、人材育成プログラムを策定し、階層ごとに研修、教育、育成を進めています。特に次世代リーダーの養成やITリテラシーの向上、女性活躍社会構築における人材の育成、環境の醸成に注力していきます。
組織の根幹は人材です。当社グループで活躍してもらうためには、それぞれの年代や階層で人材を育成する必要があります。組織が強いことは、事業の拡大につながります。その根幹となる人材の育成に今後も注力をしていきます。
私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。