会社概要

田上正勝氏(以下、田上):株式会社プラネット 代表取締役社長の田上でございます。本日は、2022年7月期末決算のご報告と各種活動についてご説明します。今回は会場とライブ配信のハイブリッド開催となっています。感染対策を施しているため、マスクを外してお話しします。

当社は設立から37年目を迎え、現在38期目に入っています。事業内容は、日用品・化粧品業界の卸流通の商取引において使用される、データ交換のためのプラットフォーム運営です。

当社は、1985年の電気通信事業法の規制緩和をきっかけに、日用品・化粧品業界の流通システムを最適化する業界共通のネットワークインフラ、いわゆる業界VANの構築を目指し、業界の有力メーカー8社と独立系ITベンダーのインテックにより設立されました。

店頭では競争しているメーカーが共同で利用する仕組みで、メーカーの取引データの秘密を守るために、ネットワークの運用と監視業務はインテックにアウトソーシングをしています。

当社は、業界のメーカーや卸売業とともにEDIの標準仕様を作り、安全・中立で標準化されたサービスを継続的に安価に提供しています。この情報インフラサービスを普及・推進する「インフォメーション・オーガナイザー」すなわち「情報のまとめ役」として、今日まで機能しています。

当社の事業について①

スライドは、基幹EDIの概念図です。当社のサービスを利用すると、メーカーと卸売業の間で人手で行われている発注や仕入、請求などの取引業務をデータでやり取りできるようになります。まったく人手を介さないため処理スピードも高速で、ミスやトラブルもほとんど発生しません。

当社の事業について②

スライドの図は事業全体を俯瞰したものです。

当社の事業について③

EDIには、コンピュータ同士をつなぐ基幹EDIサービスがあります。

当社の事業について④

また、Webを活用する「Web発注」や「MITEOS」などのサービスがあります。

当社の事業について⑤

この他に当社の特徴として、EDIの関連業務を支援するデータベースや「バイヤーズネット」などのサービスがあります。

当社の事業について⑥

資材サプライヤーとメーカー間では「資材EDI」サービスを提供しています。

当社の事業について⑦

EDIのユーザー数は2022年7月末時点でメーカー817社、卸売業502社、資材サプライヤー166社で、合わせて1,485社となりました。ちなみに、当社の大半のサービスはWebで利用できるようになっているため、リモートワークでも有効に活用されています。

当社の事業について⑧

当社の事業範囲は、非食品の消費財になります。日用品・化粧品業界からスタートした事業は、ペットフード・ペット用品やOTC医薬品など、多くの業界で採用されています。コロナ禍で業務を自動化できるEDIの利用価値は高まっているため、今後もゆるやかに隣接業界に展開していきます。

当社の事業について⑨

当社のサービスは、多くのユーザー企業に長く利用されており、選ばれる理由は3つあります。1つ目は「徹底した標準化」、2つ目は「利用企業の多さ」、3つ目が「サービスの安全性と継続性」です。

当社の事業について 徹底した標準化①

標準化の必要性についてですが、電気・水道・ガス、スマートフォンなどは標準規格が決まっているため、対応する製品がたくさんあります。標準化することで、生活者は大変便利になります。

当社の事業について 徹底した標準化②

当社は、企業間取引のEDIというBtoBのデジタル部分を標準化しているため、その便利さは一般にはわかりにくいかと思います。EDIには仕様や手続きがあり、具体的には通信手順やフォーマット、コード、運用ルールを標準化していきます。これによりユーザーは、標準化された1つのシステムに対応するだけで、多くの取引先とEDIが行えるようになります。

この標準化が不十分だと、業務処理するコンピュータに間違ったデータを渡さないように、取引先のデータを受け取った後に自社でデータを変換しなければなりません。そのために、名称やコードを取引先に確認しなくてはならなくなり、大変手間がかかります。

我々は、すべてのユーザーの方々に標準仕様に合わせていただくことを徹底しています。 自社でデータを変換する必要はなくなり、そのままコンピュータで処理することができるため、業界全体で合理的なEDIが行えるようになります。この標準化によって、流通の効率性と多様性を支えていると考えています。

当社の事業について 利用企業の多さ

「利用企業の多さ」について、当社の存在意義を示す図を用いて説明します。スライドの左側をご覧ください。一般的に企業が個別にEDIを行うと、取引先の数だけ接続が必要になり、システムの開発・運用の負担が大きくなります。全体で見ると「m:n(m×nの掛け算)」の接続になるわけです。

一方、スライドの右側は当社のモデル図になります。当社が中間結節点になることで全体が「m:1:n(m+nの足し算)」の接続になり、ユーザーは当社と接続すればよくなります。接続の手間やコストの障壁がなくなり、どんどん接続先を増やせるようになりました。

実際にユーザーが新しい取引先とつなぐ場合、その相手がプラネットに参加していた場合は、当社に申し込みを行うだけですぐに接続できます。さらに、この便利さを感じたユーザーは、取引先にプラネットへの参加を働きかけてくれるため、接続できる企業もじわじわと増え続けています。現在の接続企業数1,485社は、その積み重ねの結果でもあります。

当社の事業について サービスの安全性と継続性①

このように、「徹底した標準化」によって接続する相手先が増えます。

当社の事業について サービスの安全性と継続性②

すると、オンライン化の比率が上がり、取引業務の自動化が進みます。

当社の事業について サービスの安全性と継続性③

人手がかからなくなる上に処理時間も短くなり、ミスも減るため、飛躍的に効率が上がります。

当社の事業について サービスの安全性と継続性④

「徹底した標準化」により、ユーザーは本業に専念できると考えています。

当社の事業について サービスの安全性と継続性⑤

事業の安全性・継続性について、当社のサービスの特徴からお伝えします。重視しているのは、ユーザーの立場で情報インフラ基盤を常に改善・改良することです。

ネットワークやシステムは、大規模な自然災害が発生しても止まらないように、処理を行うデータセンターを太平洋側と日本海側の2拠点に分散しています。2拠点のデータセンターは常時フル稼働していて、どちらかが停止しても、もう1拠点がカバーする仕組みになっており、高い安全性と継続性を維持しています。

当社の事業について サービスの安全性と継続性⑥

日常業務で利用していただくためには、使いやすさが求められます。すべてのサービスは24時間利用でき、問い合わせを受けるコールセンターも365日稼働しています。大切なデータを守るために、認証局をはじめとしたセキュリティ対策も徹底しています。

ユーザーの支援としては、先ほどお話しした業界共通のルールをご理解いただくために、手厚いサポートを行っています。また、EDIの関連業務で欠かすことのできない各種マスタのコード整備についても支援しています。

当社の事業について サービスの安全性と継続性⑦

将来にわたって継続してご利用いただけるように、次世代の技術の調査や研究、ユーザーニーズの調整・とりまとめを行っています。これらのすべての特徴が当社のサービスの品質となっており、ユーザーから高い評価を受けています。

当社の事業について

投資家のみなさまからよくご質問を受けるため、当社の売り上げの91.8パーセントを占めるEDI事業の料金体系について、簡単にご説明します。

大きく分けると、一時金、月次固定料金、月次従量料金からなっています。一時金と月次固定料金はこれまで何度も値下げを行い、当初より90パーセント以上引き下げています。サービス利用開始時期に初期費用としていただく一時金の構成比は、0.5パーセント以下になっています。

EDI事業の売上の80パーセント強を占める月次従量料金は、通信されたデータ量にかかる料金です。1件のデータは「1データ」もしくは「1レコード」と言いますが、取引伝票の1行に相当し、その1データごとに約1円をいただいています。料金はメーカーに課金しており、一部ですが卸売業の課金もあります。

接続先が少ないメーカーや取引量が少ないメーカーは、データ量が少ないため料金が安くなります。多くの接続先とたくさん取引のあるメーカーはデータ量が多くなり、料金も高くなります。データ量の少ない中小企業の利用が増えることは、卸売業にとって大きなメリットになるため、データ量の多いメーカー各社が業界のインフラを支えているかたちとなっています。ちなみに、データ量が多くなるとボリュームディスカウントが適用されます。

安定した売上成⻑性

このように、当社のEDIサービスは毎日一定量のデータが確実にやり取りされているため、安定した売上成長性を維持しています。ビジネスモデルとしては大変強固であり、設立以来、当社の経営は安定しています。

また、これまで、当社のネットワーク基盤を再構築するタイミングに合わせて料金を値下げするなどして、ユーザーに還元してきました。値下げによって新規ユーザーは参加しやすくなり、既存のユーザーも取引先との接続やデータの種類を拡大しやすくなるため、値下げした金額を上回る売上を達成できています。

今後も業界インフラとしての社会的責任を果たすため、ネットワークインフラ基盤の安全性を向上させた上で、料金改定を通じて業界全体のコスト削減を実施していきたいと考えています。このことは、ユーザーの裾野を広げることに加えて、中長期的にはEDIの売上増加につながっていくと考えています。

EDIサービス利用メーカー・卸売業社数の推移

EDIサービスの利用社数の推移です。こちらも順調に増加しており、資材EDIのユーザー数を除いて、2022年7月末時点でのユーザー数は1,319社となっています。

スライドのピンク色の棒グラフが、卸売業の社数です。合併や統廃合により卸売業の数は減る傾向にありますが、隣接業界の卸売業が参加したことで、利用社数はほぼ横ばいで推移しています。

青色の棒グラフはメーカーの数です。「MITEOS」サービスを開始してから小規模メーカーの参加が増えています。コロナ禍でさらなる業務効率化が求められていることや、今年からスタートした電子帳簿保存法にもEDIが有効であることから、今後も増加を見込んでいます。

コロナ禍における業界の状況と当社の対応について

決算概要についてご説明します。まず、コロナ禍における業界の状況と当社の対応についてお話しします。当社事業が関わる消費財流通業界では、コロナ禍で在宅時間が長くなっていることから、自宅で過ごす時間を少しでも豊かにしようと高機能な商品の購入が増えています。また、ワクチン接種後の副反応対策として解熱鎮痛薬の特需が見られました。

コロナ禍における需要減少の影響は残るものの、行動制限の緩和などにより、一部の化粧品やOTC医薬品の需要は徐々に回復しています。まだ先行きは不透明な状況ですが、当業界は盤石なメーカーの生産体制と卸売業の物流システムによって支えられ、安定した商品供給が行われています。

生活者は、長く続いたコロナ禍の行動制限が解除されたことで、旅行や外出する機会が増えています。インバウンド需要の復活を見据えて、コロナ収束に向けた準備が進むと思います。当社としては業界全体がさらに元気になるように、中小企業を含めた幅広い企業の業務の効率化につながるEDIの普及推進活動を継続しています。

2022年7月期 – 業績ハイライト

2022年7月期の業績ハイライトです。売上高は31億3,000万円で、前年同期比で2.1パーセント増でした。こちらは、EDI通信処理データ量が増加したことによるものです。営業利益・経常利益はともに微増益でした。研究開発費や業務委託費などの販管費が増加したものの、全体としては前期並みに費用を抑えることができたためです。

純利益については、投資有価証券売却益などを計上したため増益となりました。基幹EDIの利用社数はメーカー・卸売業ともに増加しました。

2022年7月期の業績概要

売上高は、基幹EDIと販売レポートサービスの売上増に支えられ、前年同期比で2.1パーセント増、対計画で1.3パーセント増と順調に増加しました。全体を通じて、計画を上回ることができました。

2022年7月期の業績概要

事業別の売上高についてです。EDI事業は28億7,400万円で、前年同期比2.4パーセント増となりました。基幹EDIサービスの普及活動を継続し、「MITEOS」や販売レポートサービスの利用拡大に注力しました。

データベース事業は2億5,100万円で、前年同期比0.4パーセント増です。ユーザーがTSVタイプのEDIフォーマットに切り替えると、取引先データベースの一部料金が無料になる施策の影響により、しばらく売上は減少していたのですが、それも下げ止まりました。

その他事業は400万円で、前年同期比53.3パーセント減となりました。これは、20年以上続いた「バイヤーズネット」の一部サービスである「バイヤーズルーム」などが、その役目を終えて終了したためです。

2023年7月期の通期予想

2023年7月期の通期予想についてです。2023年7月期の売上高は32億円と、前年同期比2.2パーセント増と予想しています。費用面では、物流領域におけるEDIなどの新規サービスの開発や、商品データベースなどの既存サービスのリニューアルを計画しているほか、将来を見据えた調査研究については、引き続き進めていく計画です。

また、コロナ禍でこれまで控えてきた対面での営業活動やイベントの再開を見込んでおり、その結果、営業利益は減益を計画しています。

当期純利益は、前期となる2022年7月期で投資有価証券売却益を計上しましたが、2023年7月期では計上する予定がないため、減益を計画しています。

株主への利益還元(配当金推移)

配当については、当期の予想どおり期末配当金を1株当たり21円とし、年間合計42円を予定しています。2023年7月期については、経済情勢、業界動向、業績の見通しなどを総合的に判断し、中間配当金を1株当たり21円、期末配当金を1株当たり21円50銭とし、年間合計42円50銭と、上場以来19期連続増配を予定しています。

東京証券取引所の新市場区分について

新市場区分への対応の進捗状況についてご説明します。当社はスタンダード市場を選択し、上場維持基準をクリアする予定ですが、1点、流通株式⽐率が上場維持基準の25パーセントを充たしていないため、「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を昨年10月26日に開示しました。

2022年1月末時点で流通株式比率は21.3パーセントまで改善しており、さらに計画を確実に進めるために、3月と6月の計2回、株式の立会外分売を実施しました。詳細については、当社のホームページをご覧ください。10月には計画書を更新する予定です。

当社株式の流動性の向上を図るとともに、幅広い投資を呼び込むため、企業価値の向上に努めていきます。

プラネットビジョン2025・コーポレートスローガン

事業報告に移ります。2015年に掲げた「プラネットビジョン2025」をご紹介した後、ビジョンに沿って事業報告を行います。

「プラネットは中立的な立場で、1. 企業間取引における業務効率の追求、2. 企業間におけるコミュニケーションの活性化、3. 流通における情報活用の推進、4. 社会に役立つ情報の収集と発信を行うことで業界を元気にし、社会に貢献する会社を目指します」というビジョンを掲げて活動しています。

コーポレートスローガンは「広く遍く 〜消費財流通の情報インフラであり続けます〜」であり、事業の継続性を大変重視しています。

1.企業間取引における業務効率の追求①

1つ目の「企業間取引における業務効率の追求」についてご報告します。先ほどからお伝えしていますが、基幹EDIを広く普及させることが、企業間の業務効率化につながると考えています。

活動の指標としている数字についてご説明します。基幹EDIでは、プラネットを利用するユーザー数と実際にデータを交換するメーカーと卸売業の組み合わせを1接続とカウントした、基本接続本数が重要になります。ユーザー数の増加は基本接続本数の増加につながり、基本接続本数の増加は通信処理データ量の増加につながります。

ユーザー数は、スライド左側の折れ線グラフのとおり、前期末から35社増えています。基本接続本数は右側の折れ線グラフのとおり、前期末から94本増加しています。通信処理データ量は右側の棒グラフのとおり、前年同期比で4,300万件増加しています。

1.企業間取引における業務効率の追求②

ここからは、データ種別のユーザー数と接続本数をご報告します。このスライドの発注データのグラフは、基幹EDIに加え、「Web発注」「MITEOS」の発注データの数値を合計したものになります。発注データは前期末から、ユーザー数は36社、接続本数は268本増えており、非常に順調です。

1.企業間取引における業務効率の追求③

仕入データです。このスライドの仕入データのグラフも、基幹EDIと「MITEOS」の仕入データの合計値です。ユーザー数は27社、接続本数は148本増加しており、こちらも順調です。

1.企業間取引における業務効率の追求④

請求照合データです。発注や仕入データと合わせて、利用拡大に力を入れているデータ種になります。ユーザー数の増加はありませんでしたが、接続本数は10本増えています。引き続き利用を推進していきます。

1.企業間取引における業務効率の追求⑤

「MITEOS」は、自社でEDIシステムの準備をしなくても、Webによって発注や仕入データが通信できるサービスです。発注データ、仕入データが伸びている要因は、この「MITEOS」を積極的に展開したことにあります。利用メーカー数は前期末から18社増え、卸売業も2社増えています。接続本数は138本増えました。

「MITEOS」は、主に中小メーカーと大手卸売業の間で利用されています。卸売業は「MITEOS」で接続するメーカーを積極的に拡大することで、自社のオンライン化比率をさらに高めることができます。

今回、卸売業が2社増えていますが、これは「MITEOS」による業務効率化についてご理解いただいた卸売業が2社増えたということになるため、接続するメーカーがさらに増えていくことが期待できます。

また、メーカーも「MITEOS」を利用し、EDIの便利さを実感することで、自社でシステムを準備して基幹EDIサービスへステップアップするケースも増えてきました。このようなEDIユーザーの裾野を広げる取り組みとして、引き続き「MITEOS」に力を入れていきます。

1.企業間取引における業務効率の追求⑥

EDIの中で一番データ量の多い、販売データについてご説明します。販売データは、卸売業が小売業に商品を販売した日々の実績を、メーカーに通知するデータになります。

販売データを使うと、メーカーは卸売業に納入した商品が、いつ・どこへ・何を・いくつ・いくらで販売されたかがわかるようになります。このように販売データは、ドラッグストアやスーパーなどへ納品された商品の実績をタイムリーに捉えることができるため、メーカーのマーケティング戦略を支える上でなくてはならないものと言えます。

1.企業間取引における業務効率の追求⑦

大手メーカーでは活用が進んでいる販売データですが、中小メーカーにもご活用いただけるように、自社でのシステム開発がなくても利用できるWebベースのデータ集計サービスとして、販売レポートサービスも合わせて展開しています。

もともとは販売データの入門編としての位置付けでしたが、ユーザーのご要望に応えて改良を重ねた結果、今では、販売データを自社システムで利用していたユーザーが、販売レポートサービスも利用する事例も出てきました。

販売データのユーザー数は前期末から2社増えましたが、接続本数は4本減少しました。これは、卸売業の統廃合の影響によるものです。販売データのデータ量自体は増加しており、売上も順調に伸びています。

新型コロナウイルス収束後の市場の活性化を見据え、販売データと販売レポートサービスの利用拡大に努めていきます。

1.企業間取引における業務効率の追求⑧

物流領域のEDIについてご報告します。メーカー、卸売業、物流事業者にEDIを導入するためには、物流業務の改革が必要です。そのためには、システム以外の標準化も必要になります。

今年1月に、流通経済研究所とともに『日用品における物流標準化ガイドライン』を取りまとめました。このガイドラインには、段ボールやパレットなどの荷姿に関する標準化情報や印刷されるバーコードに関する標準化情報が掲載されています。

今後も、トラックドライバー不足や待機車両問題など、物流危機に関する課題の解決に向けて、すでにリリースした出荷予定データや、現在関係者と検討を進めている入荷検収データをはじめ、物流関連のデータを順次リリースし、メーカー・卸売業・物流事業者間での具体的な業務を合理化・効率化する取り組みを、業界全体で推進していきたいと考えています。

1.企業間取引における業務効率の追求⑨

業界インフラとして、より一層安全性の向上を図るための当社の取り組みについてご説明します。前半でお話ししたとおり、当社はリスク回避のため、事業の運用拠点の分散をはかっています。分散しただけで安心せず、実際に大規模災害が起きた時には速やかに切り替えができなければなりません。当社ではそのようなことが起きないように、災害対応訓練を定期的に実施しています。

また、安心して継続的にサービスをご利用いただけるように、各種データベースや運用照会などのWebサービスのシステム基盤のリプレースも定期的に行っています。引き続き、「安全・中立・標準・継続・安価」を重視して情報インフラを提供することに努めていきます。

2.企業間コミュニケーションの活性化①

企業間コミュニケーションの活性化についてご報告します。今年の6月と8月にWebセミナーを開催しました。まず、6月に「プラネットEDIセミナー 〜インボイス制度への準備事項〜」を開催しました。

2023年10月1日からインボイス方式が導入されます。これまで月次で処理していた消費税の税額控除が、伝票単位で処理するインボイス方式に変更になります。すべての企業に影響があるため、本制度の概要と対応策を解説するセミナーの動画を作成し、配信しました。

8月には、販売データの活用法に関するセミナーを開催しました。DXの推進などにより、企業におけるデータ活用がより身近で当たり前のものとなりつつあり、多くのメーカーでも当社の販売データや小売業から取得するPOSデータをさらに有効活用するニーズが高まっています。

しかし、このような企業間(BtoB)のデータは、基本的な使い方や有効な活用方法を知る機会が少なく、導入に至らないケースが少なからずあるため、このセミナーでは具体的な例を挙げ、わかりやすく解説しました。

どちらのセミナーも200社を超えるユーザー企業にご視聴いただき、好評でした。引き続き、みなさまに必要とされる情報を積極的に発信していきたいと思います。

2.企業間コミュニケーションの活性化②

11月に開催予定の「プラネットユーザー会2022」についてご説明します。ここ2年間はコロナ禍における安全面を考えてリモート開催でしたが、ユーザー同士が直接会って話ができるリアルなユーザー会と比較すると、参加者はかなり少ない状況でした。

当社のサービスを利用している担当者が、他社の担当者や当社の社員と会って話す場の必要性を強く感じたため、今年はリアル会場とライブ配信のハイブリッドで開催する予定です。ユーザー同士が情報交換できる場を提供し、企業間コミュニケーションの活性化に貢献していきたいと思っています。

3.流通における情報活⽤の推進①

流通における情報活用の推進についてご報告します。新製品カタログを予定どおり発行しました。今回の秋冬号で、通算28冊目となります。新製品カタログは、小売業バイヤーのWebからの注文リクエストを受けて1万部発行しており、すでにバイヤーの必須アイテムになっています。

3.流通における情報活⽤の推進②

「THE PRODUCT TIMES(ザ プロダクト タイムズ)」についてご説明します。「THE PRODUCT TIMES」は、Webで新製品情報をバイヤーに訴求し、その後の電子商談を支援するサービスとして開発し、メーカーをはじめとしたユーザー獲得に向けて活動を行ってきました。しかし、十分なユーザー数を獲得することができませんでした。

したがって、今後は「THE PRODUCT TIMES」としてのサービス提供を続けることはせずに、開発した機能をデータベース事業に組み込み、有効活用することとしました。具体的には、新製品の訴求情報をWeb版の新製品カタログに掲載しやすくし、訴求情報の発信機能とバイヤーからの問い合わせ機能を利用しやすくするなど、Web版カタログの利便性の向上につなげていきます。

3.流通における情報活⽤の推進③

「POSデータクレンジングサービス」についてご説明します。背景からお伝えしますと、POSデータを利用するメーカーは年々増加しています。これは、多くの小売業がPOSデータを提供できるシステムに切り替えたためだと思われます。

しかし、小売業ごとに異なるフォーマットで提供されるPOSデータを利用するためには、データを修正し正規化(クレンジング)する必要があります。多くのメーカーはこのクレンジングに時間をかけており、人手や外注コストがかさんでいます。「このようなメーカー共通の課題を解決できるのはプラネットではないか」というお話をいただき、新しいサービスとして検討を開始しました。

しかし、当社は公平性の観点からデータの中身には関与しないため、当社の関連会社であり、小売業のID-POSデータの収集・分析のノウハウと経験を有するTrue Data社と業務提携し、「POSデータクレンジングサービス」を共同開発することにしました。

現在はまだ開発中ですが、流通サプライチェーン全体の可視化、効率化につながるサービスへと進化させ、メーカーのニーズに応えたいと思っています。

3.流通における情報活⽤の推進④

産業横断レジストリーについてご説明します。GS1 Japanと食品業界の商品情報データベースを手掛けるジャパン・インフォレックス社と共同で、業界横断的な商品情報レジストリー、いわゆる商品情報の登録簿にあたるものをスタートさせています。

日用品・化粧品や食品業界では、メーカーが業界商品データベースに商品情報を登録するため、卸売業へは合理的に情報が伝達されています。しかし、小売業にはこのようなデータベースがないため、業界別のデータベースそれぞれにアクセスする必要があり、少々不便です。

実際に、当社の商品データベースを利用する小売業も限定的で、小売業向けには合理的な情報伝達がなされているとは言えません。そこで、国際的な流通システム標準化機関であるGS1 Japanが業界横断的にレジストリーを持ち、小売業に商品情報をまとめて提供できるようになれば非常に合理的であると考えました。

ちなみに海外では、国をまたいで流通する商品が多いため、各国のGS1が行っているレジストリーサービスを多くの小売業が利用しています。このような取り組みを進めることで、業界内だけでなく国内全体の情報流通の効率化にも貢献したいと思います。

4.社会に役⽴つ情報の収集と発信①

社会に役立つ情報の収集と発信についてご報告します。4月に『インターネットは日用品流通をどう変えるか』を、6月に『中国の日常生活と日本製品購買に関する調査レポート』を発表しました。アフターコロナを見据え、データを基に捉えた事実を業界のみなさまと共有し、変化に対応するサービスや商品開発のヒントになればとの思いから調査を続けています。

4.社会に役⽴つ情報の収集と発信②

生活者の意識調査「From プラネット」も、月2回の発信を継続しています。全都道府県の生活者4,000人が調査対象です。

コロナ禍での生活の変化に伴い、生活者の意識にも変化が見られると考え、過去に調査したメガネやマスクなどについても追加調査を行いました。また、値上げや宅配便など世相を反映した生活者の意識も速やかに調査しています。

業界紙には頻繁に取り上げていただき、ユーザー企業やメディアからは記事引用の依頼も増えています。潜在ユーザーへの知名度向上にもつながるため、今後も情報発信を続けていきます。

以上、2022年7月期末の決算概要と事業報告についてご説明しました。2023年7月期も引き続き、変化に柔軟に対応できるリモートワークとお客さまの心をつかむリアルな活動をうまく使い分けて、どんなに環境が変化しても、業界貢献、社会貢献に努め、安心・安全な事業を継続していきます。最後までご清聴いただき、誠にありがとうございました。

質疑応答:発注データの最近の傾向について

質問者:発注データは御社のEDIで一番基本となるところで、順調に伸びていると思いますが、最近の傾向としてどのような業種が増えていますか?

田上:先ほどお伝えしたとおり、小規模な「MITEOS」の利用社が増えています。日用品や化粧品、ペット用品の分野のメーカーの利用が伸びており、今後も幅広い分野における利用が増えていくように思います。

質疑応答:「THE PRODUCT TIMES」について

質問者:今日、「THE PRODUCT TIMES」の進捗を聞けると楽しみにしていましたが、商品データベースに組み込まれるということで少し残念です。田上社長の見解を教えてください。

田上:「THE PRODUCT TIMES」は記者会見も行って、積極的に拡大しようと思っていた事業です。新規事業は成果が出れば継続、出なければ撤退と基準を決めていて、このサービスは電子商談が増えていく前提で進めていたのですが、なかなか利用する小売業が増えませんでした。

有償で使っていただくメーカーもすぐには増えないことがわかり、想定よりも普及に時間がかかるサービスだということがわかりました。無理に事業展開すると空回りしますので、残念ですがいったん抑えて、商品データベースや商品カタログのサービスの一部として進めていくことにしました。

質疑応答:物流EDIの進捗と今後の見通しについて

質問者:物流EDI関連のサービス提供を開始しているということですが、新データリリースと準備について、現時点での進捗と今後の見通しについて教えてください。

田上:物流のEDIに関しては、当社としては大変重要な事業と位置づけており、先ほどお伝えしたように物流の課題に関しては業界全体で解決していきたいと思っています。現時点で当社ができることはEDIのデータをつなぐところだけですが、それ以外の活動も行っていて、共通の課題を持つメーカーや卸売業と頻繁に話をしています。

また、食品業界でも同じような動きもありますので、他業界の動きも視野に入れながら、最終的には流通業界全体で少しでも物流の効率化や合理化につながるような取り組みにしていきたいと思っています。一部のご報告しかできなくて残念ですが、それ以外も取り組みは積極的に進めています。

質疑応答:インバウンド需要について

質問者:10月から外国人の入国規制もかなり緩和されてインバウンド需要がまた盛り上がると思いますが、インバウンド需要活性化によって復活させたいサービス等があれば教えてください。

田上:インバウンド需要の復活については、メーカーや卸売業の多くの方々が「早くインバウンドが復活しないか」と思っていますので、非常に期待されるところです。

当社はインバウンド研究会を長年開催しており、会員として参加しているジャパンショッピングツーリズム協会と協力しながら準備を進めています。具体的な取り組みとしては、久しぶりに来日する外国人の方々に、ウェルカムバックキャンペーンとして「よく戻ってきてもらえました」と空港でお出迎えする活動などに協賛しています。

インバウンド需要の復活は大歓迎なので、早く盛り上がるように努力していきたいと思っています。

質疑応答:社長交代について

質問者:先日、社長交代のリリースが出ましたが、このタイミングで交代される理由や背景に加えて、次の社長に託されることがあれば教えてください。

田上:このようなご質問があることを前提にこの場に臨んでいますのでお答えします。この10月の株主総会で、私が社長を務めてから丸10年になります。上場会社で10年もの間社長を続けられることは、みなさまにご支援いただいたおかげだと思っており、本当に感謝しています。

しかし、もともと長く続けることがあまりよいことではないと考えていたこともありますし、これまで、30周年記念のイベント開催をはじめ組織の変革、評価制度の見直しなど、行うべきことにはかなり取り組んだと思っています。

私が社長ではなくても、現在プラネットの進めている活動については十分進められると思っていますし、新しい社長については別途直接お話しする機会を設けようと思っています。新社長の坂田政一氏は、社外取締役を2年務めています。上場企業としてのあるべき姿を目指して、今回上場区分が変更になったことも含めて、我々のあまり手が回っていないところを坂田氏に強化していただければと思います。

また、私も10年間務めていて体制も安定しているので、「組織を変えよう」「新しくこのようなことをしよう」というのはなかなか言えません。さらなる盤石な体制構築のために「外部の風」を入れて、新しく行うべきことをスタートしていくタイミングになるのではないかと思っています。

ここの場ではあまり詳しくご説明できないのですが、株主総会が終わったあとにご説明の機会を作りたいと思います。

質疑応答:これからの事業について

質問者:事業をいろいろご報告いただきましたが、物流EDIの構築やPOSデータクレンジングサービスなど、これからの流通の「効率化の種」のようなものが非常に多くあるように思います。こちらのほうも引き続き行って、拡大していただきたいと思います。よろしくお願いします。

田上:ご認識のとおりです。積極的に進めていきたいと思っております。ありがとうございます。

質疑応答:プラネットの業界貢献と、他業界との比較について

質問者:田上社長が10年務めて、業界の効率化にかなり貢献されて、バトンを託されるということかと思います。

流通業界にはいろいろな分野があり、プラットフォーマーを自称する事業者がプラットフォーム同士で闘っている状況はあれど、日用品の流通における業界の効率化を行うプラネットのような存在はなかなか見られません。

業界の基盤として、御社のような立ち位置で効率化に貢献するのはなかなか見られないということで、非常にユニークだと思います。田上社長が務めていた10年においては、ほかの業界では同じような存在は現れなかったと私は考えます。

田上社長の視点で、「なぜ、プラネットがプラネットたらしめたのか」「日用品業界でなぜプラネットのような存在が生まれたのか」を教えてください。他の分野において同様の存在が生まれるとしたら、何が条件になると考えていますでしょうか?

他業界に「喝」を入れるようなかたちになってしまいますが、他業界との比較の観点でコメントをいただければと思います。

田上:たくさんお褒めいただき、誠に恐縮です。日用品・化粧品業界にとってのプラネットは、先にお話ししたように、卸売業とメーカーから非常に信頼されています。

「新しい課題はプラネットに頼めば解決してくれる」「短期的にではなく、継続的に解決し続けてくれる」と頼りにされる会社の確立は、設立当初に当社会長の玉生弘昌が思い描いたものです。当時はまだ卸売業者の力が今ほど強くなく、「卸売業をメーカー全体で支援していこう」という思いを、今でも継続していると思います。

現在、卸売業は大手2社に集約されていますが、それでも卸売業が個別でできないことが多々ありますし、反対に、メーカーとしてそれぞれの卸売業のやり方に合わせると個別対応になってしまうという面もあります。プラネットが間に入ることで「個別対応がよい」という発想がなくなり、「まず、プラネットで解決できないか」とみなさまに思っていただいてるところが、ほかのプラットフォーマーとの違いだと思います。

ユーザーの方々の期待値が非常に高く、それに応えて粘り強く改善・改良を重ねながらサービスを継続していますので、「これからも継続してくれる」と思っていただいています。その思いを絶やさないように期待に応える、または新しい変化を敏感に捉えて対応する必要があります。

隣接業界で言うと食品業界にファイネットというEDIに特化した会社があります。メーカー、卸売業のサービスに関してはプラネットと同じくらい、もしくはそれ以上に貢献されている事業者ですが、EDI以外のことにはあまり積極的ではなく専門特化されています。

プラネットが、物流やデータベースなどに注力しているのは、これまでEDI以外の部分にも積極的に取り組んで、ビジネスになるかどうかわからない難しい課題にもチャレンジして、なんとかかたちにしているためです。そのためユーザーから非常に期待をいただいていますし、「新しい取り組みを一緒に行わないか」とお声がけいただく機会も増えているのではないかと思います。

専門特化し過ぎない、ビジネスライクにならないというスタンスで、業界全体で卸売業やメーカーの効率化を図っていくという思いがある限り、当社のこの立ち位置は継続していけると思っています。

質疑応答:新規事業について

質問者:既存事業の構造は堅牢で安定成長しています。これに加えて、もう一段上の成長加速を期待させる事業を、今後のタイムスケジュールや事業規模を踏まえてご教示ください。

田上:当社はもともと緩やかな成長を目指しているので、急に成長はしません。しかし、今回の物流EDIに関連しては、単なるデータ交換だけでは解決しません。プラットフォームのようなサービスが必要で、そちらに関しては、今までのEDIにない仕組みを用意しようと検討を進めています。

それが利用されはじめると、今まで以上にお役に立てるサービスの領域が増えていくと考えています。このようなEDIやデータベース以外のプラットフォーム構築についても積極的に進めていきたいと思っています。