会社概要

広木太氏(以下、広木):みなさま、こんにちは。株式会社BeeX代表の広木と申します。今日は私が最後の登壇者ですね。朝から聞いている方はお疲れかと思いますが、少しでも弊社を知っていただければと思いますので、最後までお付き合いいただければ大変ありがたく思います。よろしくお願いいたします。

さて、我々はまだ無名の会社ということで、事業概要からご説明します。創業は2016年で、歴史が浅い会社です。従業員は129名で、クラウド専業の会社です。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):創業のきっかけはどのようなかたちだったのですか?

広木:スライドの「主要株主」に記載しているテラスカイの佐藤秀哉さんと、サーバーワークスの大石良さんに「一緒にクラウドの事業を始めないか」と声をかけられたことがきっかけです。クラウドがちょうど企業の中に浸透し始めた時で、私もこの分野でいろいろと手掛けていきたいと思っていたところでした。

坂本:もともと技術者だったのですか?

広木:そうですね。もともとはエンジニアとして、クラウドやこの後ご紹介する「SAP」のコンサルタントを行っていましたが、「創業して、ぜひ一緒になにかしよう」と声がかかり、おもしろそうということでスタートしました。

パブリッククラウド

クラウドのお話をしましたが、ITに詳しい方はご存じかと思います。企業が持っているシステムは、自社でサーバーなどを調達して運用していく従来型の「オンプレミス」と呼ばれている方法と、AmazonやMicrosoft、Googleが提供している「パブリッククラウド」を利用するかたちの2つがあります。

どちらかと言いますと、今は従来型からクラウドにシフトしています。我々は、このクラウドを専業としていることが特徴です。大手企業は総合力で両方できるようにしようとしていますが、我々はクラウドのスペシャリストとして、しっかりできることを特徴としています。

坂本:やはり需要が高まっていますね。働く場所がいろいろなところになって、アクセスする場所も増えますし、サーバーの負荷も分散できますのでよいと思います。

広木:おっしゃるとおり、オンプレミスは調達するまでに時間がかかりますので、スピードを上げるという意味で、いつでもスタートできるクラウドの需要が高まっています。

BeeXビジネス領域

広木:クラウドは大きく分けて3つあります。みなさまが一番よくイメージするのはSaaSと呼ばれているもので、すでに利用できる形態になっており、インターネット経由で契約すると利用できるものです。TVCMなどで「○○クラウド」と宣伝しているのはだいたいSaaSです。

我々のビジネスはSaaSではなく、IaaSやPaaSと呼ばれているものです。IaaSは、スライド下部に記載のとおり、サーバーやストレージ、ネットワークなどの、システムを動かすためのものをサービスとして提供するものです。IT用語を使ってしまいますが、データベースや、アプリケーションを動かすためのミドルウェアと呼ばれるプラットフォームなどを提供しているのがPaaSです。

我々はできたものをSaaSとして提供しているのではなく、お客さまが「このクラウドを使って新しいことをしたい」「既存のシステムをクラウドに移行したい」という時に、IaaSやPaaSで材料を使って提供していくことをビジネスのメインターゲットとしています。

BeeXのマルチクラウド対応力

広木:IaaS、PaaSの提供会社は世界中にたくさんありますが、大きくはAmazonの「AWS」、Microsoftの「Azure」、Googleの「Google Cloud」の3つが挙げられます。世界的なシェアは「AWS」が一番大きかったのですが、そのあとに「Azure」が伸びてきて、最近は「Google Cloud」も伸びてきています。

我々はこの3つを提供しているのが特徴です。「AWS」のスペシャリストなど、どれか1つに特化している会社も多く、それはそれで方法としてはよいと思います。

しかし、クラウドがだんだん浸透するにつれて、「『AWS』を使っていたが、次は『Google Cloud』を使ってみたい」「そもそもこのシステムはどれが向いているのか」など、お客さまの中でも使い分けが始まってきています。

そのため、我々は偏るのではなく、お客さまときちんとコンサルしながらこの3つをしっかりと提供できるように取り組んでいますので、クラウドインテグレーターの中ではユニークなポジションかと思っています。

坂本:得意・不得意はあるのでしょうか? 後発は値段が重要だと思っています。

広木:そうですね。あとは好き嫌いと言いますか、向いている・向いていないというのもあります。

坂本:系列みたいなイメージですね。

広木:「AWS」はかなり昔からあり、エンジニアがガシガシ作っていくようなイメージです。「Azure」については、Microsoftがユーザーにとって使いやすくすることをけっこう意識しているという特徴があります。「Google Cloud」は、もともとGoogleが検索に強いため、データを収めたり分析したりする部分などが非常に強いです。

それぞれに特徴があるため目的に応じて使い分けたり、運用する時に自分たちに向いているものを選択していたりします。

坂本:エンジニアはマルチでできるのですか? 各サービスにおける認定資格があると思いますが、選択できるのでしょうか? それともすべてのサービスを扱える方がいるのでしょうか?

広木:我々の会社では、それぞれがだいたい2つはできるようにしようと考えています。3つともできる人間もいますが、3つを追いかけるのはけっこう大変です。

坂本:3つ追いかけるのは非常にコストが高そうな気がします。スーパーエンジニアみたいですね。

広木:そのようなスーパーエンジニアも何人かいるのですが、基本は1つのサービスをメインとして据えて、サブとして2つ目のサービスを置いています。きちんと比較しながら仕事するために、少なくとも2つ扱えるようにすることが我々の基本的な攻め方です。

また、この後ご説明しますが、ドイツのERPパッケージベンダーのSAP関連の業務も提供しています。SAPは日本の大企業を中心に、基幹システムとして導入されているものです。

事業内容

広木:我々がクラウドで取り組んでいることをご説明します。1つはクラウドインテグレーションで、いわゆるシステムの構築になります。始めるところのコンサルティングから構築、アプリ開発などを行っています。

次にクラウドライセンスのリセールで、先ほどの「AWS」「Azure」「Google Cloud」の再販を行っています。

最後はマネージドサービスプロバイダー(MSP)で、運用保守です。クラウドインテグレーションで導入したお客さまのシステムを24時間365日監視しています。また、クラウドは日進月歩でどんどん新しくなっていきますので、「新機能を入れてみますせんか?」「お客さまはこのような課題があるため、このようにで改善しましょう」などと提案しています。

坂本:売上高が一番大きいクラウドライセンスリセールは再販というお話でしたが、契約を御社が行い、ドル払いを円に換えて請求する、クラウドの代理店のようなイメージでしょうか?

広木:おっしゃるとおりです。クラウドベンダーとの契約はどうしてもドル払いになってしまいますので、我々が再販することにより円に変換して請求書を出しています。

坂本:売上が膨らむということですね。

広木:そうですね。基本的には電気代などと同じように、使った分だけ毎月課金していくかたちですので、一度契約するとどんどん増えていきます。

お客様の基幹システムクラウド移行支援

クラウドインテグレーターがたくさんいる中で、我々は企業の基幹システムのクラウド化を得意としているところが特徴です。エンタメ系やゲーム系ではなく、かなりの大企業のコアとなる重要なシステムのクラウド化やその後の運用などを行っています。

そもそもクラウド上でシステムを構築するところが非常に大きいため、先ほどお伝えしたとおり我々は7年目の会社ではありますが、中堅企業以上の大企業と直接付き合ったり、大企業の非常に重要なシステムを預かっているところが特徴的で、強みになっていると思っています。

マルチクラウド対応マネージドサービス

広木:もう1つの特徴はフロー型とストック型を組み合わせてビジネスを行っているところです。今お伝えしたのはフロー型のシステムインテグレーションというかたちですが、クラウドライセンスリセールと運用保守は毎月お金をいただくストック型です。

坂本:スライドに記載の「BeeXPlus」というのはクラウドの運用と監視ができるシステムでしょうか?

広木:そうですね。サービス名が「BeeXPlus」です。サービスのブランディング名として出しています。

坂本:システムによって方法がいろいろ違うということですね。

広木:おっしゃるとおりです。

豊富な導入実績(基幹システム SAP)

広木:先ほど少しお話ししましたが、我々は大企業を中心に直接パスがあるところが強みです。人貸しという言葉は好きではありませんが、我々くらいの規模のシステムインテグレーターは大手SIerの下で人貸しだけ行っている会社もかなり多いかと思います。しかし、我々は120人ほどの会社ですが、お客さまと直接コミュニケーションをとっています。

坂本:それはけっこう高度な技術が必要だからということですよね?

広木:はい、基幹システムをクラウド化するということで、高い技術が必要ですね。特に創業時はクラウド専業で行っているのは我々くらいしかいませんでした。私がライフワークとしてずっと行っていたということもありますが、「SAPのクラウド化はBeeXがよいのではないか」とかなり評価していただき、AWSにも紹介していただきました。

坂本:スライドの事例ではスピード感について「短期間」と記載がありますが、これは相当早いのでしょうか?

広木:私は大手企業にいたことがあるのですが、そのようなところは慎重に、確実に進めていくために要件定義などをしっかりと行います。しかし、「その前にまず作って見せようよ」というところもあるため、我々はスピード感を持って行っているところが非常に特徴的だと思っています。

坂本:確かにクラウド移行したいところがかなり多そうですね。

広木:そうですね。我々が事業を始めた頃は「こんなものをクラウドで動かすのか」という否定的な意見も非常に多かったのですが、今はむしろ「なぜまだオンプレミスを残しているのか」と言われることが多くなっています。

坂本:カスタマイズして、つぎはぎするのが仕事でしたからね。後ほどご説明があるかもしれませんが、「2027年問題」についてです。2027年には全部クラウドになるのでしょうか?

広木:オンプレミスも残ります。「SAP S/4HANA」という新しいバージョンもオンプレミスで動いているお客さまがけっこういます。正直、オンプレミス対クラウドでお客さまがオンプレミスを選ぶケースもまだあり、我々が負けることもあります。

坂本:基幹システムだからでしょうか?

広木:はい、そのとおりです。

坂本:ここは僕の個人的興味でもあるのですが、2027年は今まで日本の伝統だったつぎはぎができなくなるというお話もあります。そのあたりはどのように変わるのでしょうか?

広木:2つのアプローチがあります。SAPは2000年代初頭くらいに導入したものはそのユーザーのニーズで作り込み過ぎて身動きができないため、「Fit to Standard」ということでパッケージに合わせて直していこうという動きがあります。

ただし、これには体力がかなり必要です。お客さまの業務をパッケージに合わせるため、工数もお金もかかります。今のシステムで満足しているため、今のシステムをベースに新しいバージョンに上げて、その上で改善していこうというお客さまもいます。このように、現在のシステムだと課題が多いため捨ててやり直すお客さまと、現行システムを最小工数で最新バージョンにするという2つのアプローチがとられています。

坂本:その中で、御社にビジネスチャンスはかなりあるのでしょうか?

広木:はい。今メインで使っているお客さまのシステムの保守が2027年で切れるため、それに対して新しいバージョンに上げていますが、正直に言いますと2027年までに終わらないです。

坂本:どちらかと言いますと、スタートというイメージですね。

広木:我々だけではなく、同様の業務にあたる大手企業の人数を考えても絶対に終わらないため、長く行っていくことになるかと思います。

業績推移

業績についてご説明します。スライドのグラフは、2022年2月期までの業績推移です。売上高に関してはアグレッシブに伸びてきたと思っています。

経常利益も基本的には同様の傾向だと考えています。2021年2月期は、売上高40億円に対して1プロジェクトで6億円という大規模クラウドインテグレーション案件の取り扱いがあり、そこの利益水準が非常に高かったため利益率が落ちているように見えますが、我々としては順当に伸びてきていると思っています。

2023年2月期 業績予想

今期の業績に関しては売上高が伸び、経常利益も伸びると計画しています。これは十分に実現可能だと考えています。

2023年2月期 業績予想

2023年2月期の業績予想です。お伝えしたとおり、売上高は前年比20.4パーセント増と計画しています。営業利益と経常利益の伸びはややおとなしめになっていますが、クラウドインテグレーションは人の採用がポイントになりますので、そこにしっかり投資していきたいと考えています。

また、我々はこれまでマーケティングはそれほど行ってきませんでした。もともと営業は1人か2人で担当しており、一番営業したのは私ではないかという時代が長かったのですが、クラウドライセンスリセールやMSPなど特にストック型のビジネスは、もう少ししっかりと我々の会社を知っていただいて買っていただくことでマーケティングの施策を行いたいと考えています。

人の採用とマーケティングを来期以降のための投資としてしっかり進めていくため、売上高に対して経常利益の伸びがややおとなしくなっているということです。

増井麻里子氏(以下、増井):御社は開発資産をバランスシートにも計上しているということですよね? そうすると、減価償却費はけっこう入っているのでしょうか?

広木:減価償却費は年間3,500万円くらいで、それほど大きくありません。先ほどお伝えしたように、我々はSaaSで物を作っているわけではなく、どちらかというと運用保守やMSPです。そのため、どうしてもいろいろな基盤が必要になりますが、それを自分たちで作っているくらいで、それがないと売れないというものでもありません。

KPIハイライト

広木:直近の5月に第1四半期が締まったため、そちらについてお話ししたいと思います。売上高は12億5,000万円であり、前年同期比28パーセント増と順調に伸びています。先ほど、営業利益もおとなしめであるとお話ししましたが、第1四半期だけで見ますと全体営業利益も56.1パーセント増と非常に好調に推移しています。

坂本:クラウドライセンスリセールのアカウント数が伸びていますが、これは大企業中心でしょうか?

広木:おっしゃるとおりで、大企業が多いです。ただし今まではシステムインテグレーションを実施しライセンスが売れるモデルだったため、どちらかというと大企業が中心でしたが、去年くらいからマーケティングで施策を行った結果として、中小企業のライセンスもだんだんと増えてきてます。

坂本:中小企業のクラウド移行はまだ始めていないのでしょうか?

広木:そのとおりで、まだまだ進んでいないです。

坂本:地方公共団体は受けないのでしょうか?

広木:最後にお話ししますが、地方のお客さまに関してはローカルのパートナーと連携して、「なにかできないだろうか?」と模索中、あるいはチャレンジ中です。

坂本:他社も「まずは企業から」とお話ししていたため、基本はそのような流れなのだろうと思います。地方のクラウド化は仕様が大変なのでしょうか?

広木:セキュリティなど制約が多い場合は、クラウド化したとしてもクラウドらしく使っていなかったりする場合もあります。

坂本:逆に言うと、それだけ仕事のパイもまだあるということでしょうか?

広木:おっしゃるとおりです。これだけ「クラウド、クラウド」とも言われていますが、まだまだオンプレミス中心です。

坂本:「どちらも多いですよ」と言っていましたからね。

広木:まだまだですね。

業績サマリ

広木:業績サマリは重複しているため割愛します。

サービス別売上高

広木:サービス別の売上高でお伝えしたいのは、先ほどのクラウドライセンスリセールおよびMSPの、毎月入るストック型のビジネスについてです。我々は安定的に伸びていることを非常に強調したいです。毎月収益が入ってくるというのは、つまり、新しいお客さまが入ってクラウドライセンスリセールが伸びていく、保守運用も伸びてくるということです。ここの売上高がしっかりとある状態です。

全体の7割くらいがストック型で見えているところに、システムインテグレーションを進めていくという点が我々の強みです。どうしてもクラウドインテグレーションやシステムインテグレーションは人材がいないと売上が伸びないため、ストック型の事業で人材がいなくとも売上を伸ばすことと、バリューを提供する点において、優秀な人間を採用して売上を伸ばすことの2つにしっかりと取り組もうとしています。

坂本:クラウドライセンスリセールについてお聞きしたいのですが、御社で開発された方はこれを利用しなければならないのでしょうか? それとも「自分でAmazonなどとお金のやり取りをするよ」ということでもよいのでしょうか?

広木:そのかたちでも問題ありません。システムインテグレーションやコンサルティングだけを提供しているお客さまもけっこう多いです。

クラウドライセンス売上の推移

広木:ここからは内訳です。手短にご説明しますが、クラウドライセンスリセールはしっかりと好調に伸びています。

クラウドライセンスビジネスアカウント数推移

広木:ライセンスの契約数とアカウント数の推移です。アカウントと言うとわかりづらいですが、お客さまによって事業部や課ごとに入っている場合もあるため、契約数だと思ってください。

坂本:「AWS」が基本なのですね。

広木:もう少し「Azure」と「Google Cloud」を伸ばしたいと思っていますが、まだまだ「AWS」が中心です。「AWS」を導入してから別のクラウドを導入の検討するということも多いです。特に弊社のクラウドライセンスリセールに関してはこのような方が多いイメージです。

マネージドサービスプロバイダー売上、ユーザー数の推移

広木:マネージドサービスプロバイダーです。クラウドライセンスリセールほど過激には伸びていませんが、お客さま数も増えて確実に伸びており、ストックもしっかりと伸びている点を強調したいです。

クラウドインテグレーションビジネス推移

広木:クラウドインテグレーションのプロジェクト数ですが、こちらもしっかりと伸びています。1期あたりでは大小のデコボコがありますが、指標としては伸びていると言えるだろうと思います。

坂本:先ほどもうかがいましたが、おそらくニーズはとてもあると思います。案件の取りこぼしというか、「取れるものだけ取っている」というイメージで合っているのでしょうか? また、人的リソースを増やせばもっと取れて、利益がマイナスになることはないと思うのですが、人材難というのはとても難しい問題でしょうか?

広木:おっしゃるとおりです。「人の採用がバッチリできています」と言いたいところですが、一番苦労している部分です。優秀な人材は取り合いになりますが、人がいればもっと売上を伸ばすことができるため、そのような意味でしっかりと採用を伸ばしていきたいです。

坂本:アナログというか、人が一つひとつの案件をこなさないといけないため、エンジニアがきちんと必要ということですね。

広木:そのとおりです。ここはどうしても人数が必要な部分になります。もちろん、いろいろなことを自動化するなどして少しでも早く終わるようにしよう、他社であれば3人かけるところを、1人でできるようにしようといったチャレンジはしています。

坂本:それでも「需要がありすぎる」ということでしょうか?

広木:そうですね。特に我々は企業の基幹システムを扱っているため、どうしても人とのコミュニケーションが必要だと思います。

坂本:エンジニアはコミュニケーション能力が高いのでしょうか?

広木:もちろん、できている人間とできてない人間がいますが、「エンジニアだとしても機械相手に仕事するのではない」ということを意識しているため、お客さまとのコミュニケーションはきちんととれているだろうと思います。

貸借対照表の推移

広木:BSです。基本的に健全な推移ができていると思っています。

SAPシステムのクラウド化・S/4HANA化支援

広木:成長戦略についてご説明します。3つ掲げており、1つ目は「基幹システムのクラウド化とモダナイズ化」です。先ほどもお話ししたのですが、お客さまがメインで使われているSAPの保守が2027年に切れます。「2027年なんて、あと5年あるじゃん」と感じますが、移行するだけでも1年かかりますし、再構築だと3年くらいかかります。

坂本:20年、30年かけて作り上げるシステムですからね。

広木:お客さまにとって「まだまだ先のこと」というよりは、「そろそろ考えなければならないこと」というところで、オンプレミスをクラウド化することや新しいバージョンに移行する作業に取り組んでいます。

坂本:「ここの期間はうちが移行する」といった予約は入っているのでしょうか?

広木:「来年、ここで移行したいんだけど」というお話はあり、「コミットしてくれれば人を抑えます」という状況です。

坂本:そうしないとできないですよね。

広木:特にSAPはどこも人が足りない状況です。また、よく聞かれるのが、「保守が切れてアップデートした後はどうなるのか?」ということです。スライドに記載した「SAP S/4HANA」という新しいバージョンは、実は「SAP S/4HANA 2021」というように毎年アップデートされていますが、5年で保守が切れてしまいます。そのため、定期的にアップデートする必要があります。

我々としては継続的に仕事をする必要があり、1度契約が取れると継続的に仕事をいただけるため、人さえしっかり採用して伸ばしていくことがポイントになります。ここは我々だけでなく業界全体、つまり大手企業で社会課題として考える必要があると思います。

坂本:何年か伸びるかもしれないとも言えませんよね。

広木:おっしゃるとおりです。ここはしっかりと社会課題解決に向けて、我々としてもリードしていきたいと思っています。

デジタルトランスフォーメーション市場

広木:2つ目がデジタルトランスフォーメーション(DX)です。よく「DX市場が非常に伸びている」といろいろなところで言われます。

デジタルトランスフォーメーションとは?

広木:「DXってそもそも何だろう?」ということですが、スライドに記載した説明はさらに難しくてわかりにくいと思います。スライドの文章を声に出して読むと噛みそうですが、ポイントだけお話しすると、「データとデジタル技術を活用して企業を変革していく」ということです。

DXは便利な言葉であるため、「ITツールを導入すればDX」と取りがちですが、本質は「データの活用」であると思っています。今まで人間が勘で取り組んできたことを、業界ではデータ駆動型やデータドリブンという言い方がされますが、データに基づいて判断する文化に企業を変えていくこと、またそのためのプラットフォームを整備することがDXの第1歩として重要です。

DXを実現するプラットフォーム構築提供

広木:スライドに記載したように、SAPといった基幹システムをクラウドに上げ、それらのデータをクラウド上に集め、さらにデータを活用するプラットフォームを作っています。これは今も行っていることですが、今後も非常に重要なポイントになるだろうと考えています。これらの仕組みを整え、文化を変えることにより、ようやくいろいろな改善を進められます。

坂本:普通、DXは統合的なものと感じ、大々的になる前に一番使われていたのは、「基幹的に、統合的にデジタルを推進していきます」というお話だったと思います。やはりそうなのでしょうか?

広木:はい、おっしゃるとおりです。

SAPサラウンドソリューション

広木:我々はスライドにあるような、SAPという企業の基幹システムのデータを扱っています。さらにSAPのデータだけではなく、例えば製造業の工場にあるデータといった、クラウド上のいろいろなものを集めて分析し、新しいインサイトが得られるように変革していくというニーズが高まっています。このように単純にクラウドに上げるだけではなく、今後、新しい部分というのが非常に必要であるため注力して取り組んでいます。特に我々はSAPというデータを強みとして持っているため、それを活かしながら伸ばしていきたいと考えています。

クラウドベンダー市場動向

広木:今までの2つはフロー型でしたが、3つ目がストック型のビジネスについてです。スライドに記載のとおり、「AWS」「Azure」「Google Cloud」という3つのクラウドベンダーに取り組んでいます。市場自体はAmazonとMicrosoft、Googleが非常に強く、中国市場ではアリババもありますが、これを外すと先ほどの3つになります。成長に関してはAmazonが少し下がっているように見えますが、そもそもパイが大きく、圧倒的リードがあります。成長しているのはこの3つで、それ以外はニッチプレイヤーとして消えてしまっている状態です。我々はこれらを3つをしっかりと伸ばしていきたいと考えています。

マルチクラウド対応マネージドサービス

スライドは先ほど出したものですが、クラウドライセンスリセール、マネージドサービスプロバイダー(MSP)、マルチクラウドリセールの3つです。「AWS」しか保守できないのではなく、「我々はきちんと3つとも保守できます」という点を強みとして売っていくことが1つの大きなポイントだと思っています。

セキュリティソリューションの提供

セキュリティについてです。今までは「オンプレミスではお客さまのデータはセンターで守られていた。入口さえ閉めれば何とかなった」ということで、外から入ってきたコンピューターウイルスに攻撃されることもありますが、基本的に外にさらされているものではありませんでした。

クラウドはインターネット上にあるシステムです。システムを導入した時はしっかりと守っていますが、誰かがなにかを間違うとインターネット上に穴が空くこともあり得るということです。

坂本:それが危なかったということですね。

広木:そのとおりです。特に危険なのが「1回テストのために変更しました。しかし戻すのを忘れていました」という、つまり人間がカギを閉め忘れた場合です。例えば実際の玄関であれば、よく出入りするため、カギが開いていることに気付くことができるのですが、クラウドではそもそも分かりません。そうなると、そこから攻撃を食らう可能性があるため、いち早く見つけてあげる必要があると思い、我々はそのようなセキュリティソリューションを提供しています。

出入口を守り、「中で変なことや間違ったことをしていないか」というチェックをするものです。先ほどの、クラウドに基幹システムを上げることと、DXを行う点において重要と思っているため、我々としてはここを新たな成長分野として、また安心してクラウドを使っていくためにしっかり伸ばしていきたいです。

クラウドセキュリティポスチャ管理(CSPM)による セキュリティ診断及びSOCサービスの提供を開始

広木:「CSPM」という難しい言葉ですが、「なにが正しいのか」と言われても、人間が、一つひとつ見てチェックするのは無理です。そこでツールを使い、ベストプラクティスに則って診断します。例えば「ここのシステムは赤信号です。ここは黄色信号です」と判断し「では赤信号のところは、どうしなければならないでしょうか?」というのを自動的にツールで診断して提供します。今期から始めたのですが、いくつかのお客さまでパイロット的に入れている状態です。

坂本:赤や黄色の部分は、御社に直すようにお願いするのでしょうか?

広木:おっしゃるとおりです。先ほどのMSPという運用保守のサービスの中で、スポットで直す部分と、「長期的に運用する中で、特に赤はすぐ直すけれど、黄色の部分は、徐々に一緒に直していきましょう」といったことをさせていただいています。

坂本:これは、クラウドを安全に使うためということでしょうか?

広木:そのとおりです。どんどんクラウド化が進んでクラウドを使うものが増えていき、今までは10台くらいで済んでいたため人間が見られていたのですが、100台になり、1000台になるともう見られません。無理です」という状況になるため、横断的に見ることができる仕組みということです。

中小企業のクラウド化支援パートナー施策

広木:最後は営業戦略的なお話になりますが、中小企業や地方のお客さまに、我々はなかなか手が出ないということがあります。残念ながら我々のリソースは限られており、地方のお客さまとリモートしても全部を攻められません。この点を何とかできないだろうかと思っていました。

地方といえどもいろいろなローカルパートナーがあり、例えば地場に強いパートナーから、「自分のところのデータセンターで預かって面倒を見ています。クラウド化をしたいけど、このビジネスしかしてこなかったから、クラウドと言われてもどのようにしたらよいかわからない」ということもあります。

坂本:技術者がいないのですね。

広木:そのとおりです。「お客さまからクラウド化の相談を受けたけれど自社ではできず、東京の大手会社に顧客持っていかれてしまう」ということがあります。

坂本:しかし、地方の方がそれを御社にお願いしたとしたら、要望だから仕方がないのでしょうが、どう考えても利益が減りますよね。

広木:おっしゃるとおりです。我々としてはデータセンターから出てしまうかもしれませんが、すべてお客さまを失うのとはまた異なると思います。

坂本:一定のフィーは払えますものね。

広木:そのような意味で、現在はパートナーに対して我々のクラウドの知見を広めているところです。例えば、営業担当者に「そもそもクラウドとはどのようなものか」をご提案したり、エンジニアに向けてのトレーニングを行ったりしています。これらを組み合わせることで、うまく連携ができないかを考えています。

地方だけではなく、まだクラウド化が進んでいない東京の中小企業もターゲットと考え、先ほどお話ししたようなライセンスセールスやMSPなどを進めたり、SIはトレーニング担当者が行い、利用者の監修はパートナーが行ったりするなど、いろいろな座組にチャレンジしているところです。

現在の我々のお客さまは大手企業が中心ですが、日本は中小企業が多く、1人ですべてのシステムを管理するという体質の企業も多い国ですので、今後はさらにそのあたりにも力を入れていきたいと考えています。

坂本:システムの雑多なことを、すべて1人で行うということですね。

広木:そのとおりです。パソコンからサーバーの管理まで、すべて1人で行っている企業に対して、それらをクラウド化するご提案をしようと考えています。

坂本:その方にクラウドでの管理方法を教えると、大変ではありませんか?

広木:おっしゃるとおりです。そのあたりをお手伝いできないかと、現在、チャレンジしているところです。また、クラウド化をうまく進めることで、地方活性化や中小企業活性化にもつなげられないかについても考えています。

ここまでは3つの成長戦略についてお話ししました。1つ目は、基幹システムの「SAP S/4HANA」への移行やアップグレード、またモダナイズ化の支援について、2つ目のデジタルトランスフォーメーションについては、重要なデータを活用するという部分において、SAP等のさまざまなデータを活用するということをお伝えしました。

さらに3つ目として、クラウドライセンスリセールやMSPにおいて、いかに安心安全にクラウドを使っていただけるかということについて、ストック型というかたちで安定した売上を伸ばしているところです。我々は、この3つを屋台骨としてしっかり強化し、成長していきたいと考えています。

Our Vision

広木:スライドに記載のとおり、我々のビジョンは「企業の経済活動を活性化し、世の中にポジティブなエネルギーを与え、実りをもたらす存在であり続けることで社会に貢献する」というものです。

少し格好つけた文章になっていますが、我々としてはスライド下部の「お客様の変革をテクノロジーから支援し、“インテリジェントエンタープライズ”実現への旅路(Journey)を共に歩むパートナーになる」という部分が、より重要だと考えています。

クラウドのテクノロジースペシャリストとしてお客さまを支援していきながら、SAPが以前より唱えている言葉になりますが、「インテリジェントエンタープライズ」と呼ばれる、AIやマシンラーニング、IoTおよびさまざまなデータを使いこなしていくという試みに貢献していきたいと考えています。

こちらは一昼夜で実現できるものではありませんので、実現への道のりを共に歩むパートナーになりたいと思っています。

私自身、大手のSIerやコンサル会社に勤めていたことがありますが、今まではどちらかというと、お客さまが要件定義書を書いて依頼し、それに沿って制作し、納品することの多い世界でした。

しかしクラウドというのは、お客さま自身が手を動かすことが大切で、さらに自分たちでよくすることができる世界です。日本とアメリカの違いでよく言われることは、アメリカは内製化、すなわち自社でエンジニアを雇用ししっかりとシステムを作っていくのに対し、日本はどちらかというとSIerに頼むことが多いということです。

それゆえにSIerの売上が伸びるということはありますが、そのような状況が続けば日本は変わらないと思います。このような意味でも、我々の得意分野は提供しながら、お客さまによって違う分野についてはテクノロジーを使いながら、お客さまと共に進めていきたいと考えています。我々は百数十人規模の会社ではありますが、少しでも企業の活性化に貢献できればと考えています。

質疑応答:クラウドインテグレーション事業の今後の成長について

坂本:「馴染みのない業界ですので、初歩的なことを中心に細かく進めていただきたいです」とご意見をいただいています。僕も噛みくだきながらお話をうかがったつもりですが、その都度ご質問をもらえれば、追加で説明していただけると思います。

「クラウドインテグレーション事業について、特に大企業においては事業部門ごと、ディビジョンごとでサイロ化されたシステムを整理するニーズが高まると思いますが、どのくらい今後の成長を評価していますか?」とのご質問です。この方はおそらく業界の方でしょうか?

広木:おっしゃるとおり、おそらく業界の方ですね。

坂本:用語を解説していただきながら、お答えいただけると嬉しいです。

広木:わかりました。私もベンダーにいましたが、今までのオンプレミスは、「ここのシステムはF社」「この事務所は大手M社」というように、事務所あるいはシステムごとに分割してサイロ化されていることがけっこうありました。

坂本:サイロ化というのは、システムごとにサーバーが立てられているということですね。

広木:よく、縦軸で分割されています。

坂本:サイロのように見えるということですね。なるほど。

広木:そのような状態ですと、他社はまったく触れません。実は、私自身のキーワードとして「サイロ破壊」というものがあります。以前のコンサル会社のときから「テクノロジーでサイロ破壊しよう」と言っていました。

縦に分かれてサイロ化しているところにクラウドを入れる際、またサイロ化したシステムを入れていたら意味がないということです。しっかりとクラウド化の標準化などを行い、お客さまが自分たちで判断して、さまざまなことができるようにしていこうと考えています。我々がシステムを作って納品するという単純なお話ではなく、そのようなものを変革していくということを大切にしています。

先ほどAGCさまの事例をお話ししましたが、まさにAGCさまは今、千数百台がクラウド上で動いていますが、はじめにお伝えしたように、以前はサイロ化されていたところを、一番下のレイヤーはサイロ化せずに標準化しました。もちろん、自分たちでできない部分は我々が手伝いますが、しっかりと運用されています。

クラウドというテクノロジーを使ってサイロを破壊していくことは、どの企業にも必要なことだと思っています。これを行わなければ、せっかくクラウド化しても失敗に終わる可能性すらあります。

坂本:もともと、その事業部ごとにシステムの予算が決まっているためにサイロ化されているのですよね。そのため、事業部がそれぞれの会社に発注を行い、このような事態が引き起こされてしまうのだと思います。その問題に対して、クラウドの技術を使うことにより、AGCさまのように標準化することが可能だということでしょうか?

広木:おっしゃるとおりです。クラウドでは使った分だけの課金になるため、経費の面でも透明化が行えるのが非常に大きなポイントです。

坂本:クラウド化を進めるにあたって、社内の抵抗勢力から「面倒くさい」のような意見が出てくると大変だと思います。意外といるのではないでしょうか?

広木:そのようなお話は常に起こっています。単純にクラウドを入れるだけではなく、その意識を変えていかなければならないということを啓蒙するのも我々の役目だと考えています。

坂本:サイロを作った会社から「我々の仕事はどうなるんだ」という声はありませんか?

広木:その声との戦いとなることは多いです。

坂本:やはりそうなのですね。結局そのような会社の方々が「クラウド化はまだ早い」ということを吹き込んでいるのではないかと思いました。

広木:クラウドを行っている大手企業さまも、一方では既存のお客さまからの収益を守ろうとしますので、クラウド化をするにあたっては戦いになります。

坂本:そうですよね。クラウド化をしてしまうと少なくとも売上利益には反映されないのでしょうね。

広木:このようなことは常日頃起こっていて、大手のSIerさまや、データセンターを行っているところとは、けっこうぶつかることが多いです。

坂本:そのあたりの常識が変わってくればさらに商機が訪れると思いますので、今後が楽しみですね。

広木:おっしゃるとおりです。ビジネスを進める中で、もちろん負けることもありますが、そこは非常に楽しい部分です。今後、お客さまが我々のほうを向いて、正しいクラウドの入れかたを考えていただければ、非常に面白いと思ってます。

質疑応答:クラウドの導入率について

増井:導入率についてご質問が来ています。先ほど、第3部に登壇したHENGEの小椋社長によると、クラウド導入率は約22パーセントとのことです。

坂本:いろいろなクラウドがありますので、なかなか難しいお話だと思います。

広木:すごく感覚的ではありますが、20パーセントから30パーセントという言い方は、けっこう合っている気がします。

増井:100パーセントまでいくかは、まだわからないですか?

広木:例えば、工場の外に出せない、出しても意味がないシステムがありますので、今後、100パーセントまではいくことはないと思います。

坂本:そのためだけのシステムですね。

広木:おっしゃるとおりです。何でもクラウドがよいかというと、そのようなことはありませんので、ハイブリッドで残っているものは必ずあると思います。昔はクラウドでは動かないものがあったり、機動性が悪かったりしたものも多くありましたが、最近はそのようなことは減っているため、ほぼすべてクラウド化することは可能です。しかし無理にクラウド化しても仕方ないというシステムも一部あります。

坂本:ということは、未来の絵として、このようなクラウドのエンジニアはどんどん増えてくると思いますが、新たにサーバーを立てる際に、いきなりクラウドから始めるという世の中になるのでしょうか?

広木:クラウドを一度経験すれば、そうなると思います。業務システムのようなものははじめからクラウドで構築し、特別な理由がない限りはオンプレミスを選ばないという企業が増えてきています。

坂本:なるほど、そのような状況になってきているのですね。では、クラウドにあげる手前まではほかの会社が作り、その後を御社に頼むということもあるのでしょうか? 結局、新しいシステムを作るときにクラウドの直結ができないため、その部分を御社に頼むというケースもありますか?

広木:あります。

坂本:どっちかと言えば、現状では移管が多いのでしょうか?

広木:半々くらいです。

坂本:新規もあるのですね。

広木:新規で作る場合も多いです。

坂本:御社が移管するシステムの中で、SAPが占めている割合はどのくらいですか?

広木:売上規模で言うと半分くらいです。残り半分はSAP以外になります。

坂本:他の部分もけっこうあるのでしょうか?

広木:はい、他の部分もけっこう手掛けています。

質疑応答:SAP導入に至らないケースについて

坂本:「SAPを入れるような大企業ならば、セキュリティ意識が高いと思いますが、MSP導入に至らないケースには、例えばどのようなものがありますか?」というご質問です。

広木:「SAPを入れている企業はセキュリティ意識が高い」ということは言えると思います。自社で運用しているため、我々の運用保守サービスまでは必要ないというものがあります。

また、SAPに多いケースとしては、アプリケーション開発、いわゆる会計や生産管理の部分についてはすでに運用保守会社が付いているというものもあります。クラウドに正しく上げるところまでを我々に進めてほしいと考えている場合ですね。クラウドまで持っていってくれれば、その後はまた自分が現在契約している運用会社で進めるというところもあります。我々は最適化するところまでお手伝いをして、その後の運用は今のパートナーさまと自社で進めていくというケースです。

さらに、小さいシステムなどになると、今まではオンプレミスだとデータセンターに出向いて部品を直さなくてはなりませんでしたが、その必要がなくなり人員も削減できるため、自分たちで何とかしてみますという場合もけっこうあります。

坂本:今までにお話しいただいた「正しいクラウドの使い方」というのは、サイロを破壊して全社で使えるようにするというようなお話だったかと思います。また、こちらに関してはエンジニアのスキルもかなり必要だとうかがいました。今後、需要がどんどん増えてくる業界だと思いますし、御社以外にも同じような会社や、独立している人がいるかもしれません。

クラウド化を進めるためには、やはり現在のような「大手企業が下請け企業に業務を委託する」という業態の会社で、技術者をたくさん抱えるかたちではないと厳しいのではないでしょうか? これに関して、未来の速度についてはどのように考えていますか?

高給を目当てにフリーのエンジニアがどんどん集まってクラウド化がさらに進んでいくのか、それとも、現状のまま受けられるところだけが受けるかたちになるのかが、御社の競争力の参入障壁の高さにつながるのではないかと考えますが、いかがでしょうか?

広木:お客さまの中にも、人海戦術がある大手にしっかり頼みたいという方と、自分たちでなるべく運用を行っていきたいという方がいらっしゃいます。システムによって違うと思いますが、自分たちで運用していこうとなると、やはりパートナーにはスピード感やスペシャリスト性を求める方が多いです。

「自分たちでしっかりと運用していくので、それを助けてほしい」という企業さまには、サーバーワークスさまもそうですが我々のような会社などの、小回りがきくスペシャリストが最適なのではないかと思います。

「自分たちでの運用は無理だから、クラウドにはするけれども、しっかりと責任を持って運用してほしい」という企業さまには、やはり大手企業さまが合っていると思います。したがってこの点については、特に日本ではどちらか一方だけになるということはないと考えています。お客さまとシステムごとに住み分けを行って、両方の形態が残っていくのではないかと思っています。

坂本:なるほど。だから大手企業さまも自前で抱えている顧客数を増やそうとするわけですね。

広木:NTTデータさまにも出資していただき、仕事を受けていますが、その点に関してはやはり両方の世界があると思っていますし、それはそれで正しいと思っています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:2027年にサポートが切れるSAPシステムは広く使われているのでしょうか?

回答:具体的な数値は公開されていませんが、2027年にサポートが切れるSAPのバージョンを利用しているお客さまが、まだ大多数いる状況です。

<質問2>

質問:エンジニアは、SAPとクラウドの両方を理解している方が多いのでしょうか? それとも、どちらかに強みを持つ方が多いのでしょうか?

回答:SAPのエンジニアはクラウドの知見を持っており、両方の知見を持っていることが弊社の強みとなっています。

<質問3>

質問:中小企業向けのクラウド支援を目的とした、パイロットパートナー6社との連携業務について、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか?

回答:クラウドの知見があまりないパートナーさまに対してクラウドのトレーニングや提案時の支援などを行い、まずはクラウド提案ができる推進体制の構築を支援しています。その後の構築や運用体制は、パートナーさまにより要望が異なりますが、構築作業時のクラウド知見の提供やライセンス再々販のスキーム構築、クラウドの運用サービスの後方支援などを行っています。