目次

奥村晋一氏(以下、奥村):株式会社オーケーエム代表取締役社長の奥村晋一です。どうぞよろしくお願いいたします。本セミナーを通じて、当社の事業をご理解いただけると幸いでございます。

スライドに記載しているのは本日の内容です。ご覧のとおり、6章に分けてご説明します。

オーケーエムとは

奥村:オーケーエムについて、スライドに記載している3行でご説明します。

1つ目に、創業は1902年です。明治35年から続く100年企業です。

2つ目に、船舶排ガス用バルブは大洋を走る船のエンジンに使われるバルブで、少しニッチですが、この分野で世界シェアナンバーワンです。

3つ目のカスタマイズについては、お客さまの個別の流体制御のニーズに合わせた製品を設計開発して提供するということです。

代表取締役社長 社長執行役員 奥村晋一 略歴

奥村:私の略歴はご覧のとおりです。昨年6月に社長に就任しました。後ほどご紹介しますが、社是の1つである「独創的な技術」を発揮して、社員や株主さま、社会への持続的な貢献に尽力していきたいと考えています。

会社概要

奥村:会社の概要です。化学プラントなどの配管設備に使われる工業用バルブの設計開発、製造販売を行っています。本社は滋賀県野洲市に拠点があります。

会社名の由来

奥村:会社名の由来です。設立当初は奥村製作所という名前で、1993年にオーケーエムに社名変更しています。奥村製作所の「奥村」の英語表記である「OKUMURA」のO、K、Mをとってオーケーエムとしました。

会社ロゴの「OKM」の「M」には5つの線があり、これには「5つのMをOKにする」という意味が込められています。「5つのM」の詳細については、スライドの下段に記載のとおりです。

バルブとは

奥村:先ほど、バルブを作っているとご説明しました。「バルブって一体何だろう?」と考えられると思いますが、一番身近にあるのは水道の蛇口です。

水を止めたり流したりする他に、少し流したり、たくさん流したりという調節の機能があります。止める、流す、絞るという機能を持ったものがバルブになります。

また、バルブの起源は3000年以上前で、紀元前1000年頃から存在しています。

社会と暮らしを支えるオーケーエム

奥村:バルブがどこで使われているのかについてご説明します。先ほど水道の蛇口とお伝えしましたが、その他にも私たちの生活や産業のインフラを支える配管には、必ずバルブが付いています。

スライド右側の写真は、大阪のあべのハルカスです。このようなところにもバルブはたくさん使われています。

社会と暮らしを支えるオーケーエム

奥村:ビルの中で、バルブがどのようなかたちで使われているのかについてです。水道以外にも、ビルの中ではさまざまなバルブが使われています。

例えば、空調設備です。ここでは冷たい水、温かい水をうまくミックスすることによって、冷房、暖房などを実現しており、それをバルブが制御しています。さらに、バルブはスプリンクラーのような火事の消火設備にも使われますし、大規模なビルには地下に雨水を貯める貯水タンクがありますので、そこにつながる配管のラインにもバルブが使われています。

社会と暮らしを支えるオーケーエム(船舶)

奥村:大きなタンカーや、自動車を運搬するような船舶などにもバルブはたくさん使われています。例えばタンカーは、液体の荷物を揚げ降ろししたり、船の姿勢制御を行ったりする必要があります。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):船体が揺れるということですね。

奥村:そのとおりです。荷物を積むときに片側に傾くため、海水の出し入れをうまく行うことにより姿勢を保つバラスト水処理という技術があり、そのようなところにもたくさん使われています。このようなかたちで、ありとあらゆる産業にバルブというものは使われています。

事業の変遷

奥村:当社の事業の変遷をお示ししています。先ほどお伝えしたように、明治35年から続く100年企業で、今年は創業120周年を迎えます。創業当時は丸太から木材を切り出すための鋸切を作っていたのですが、60年ほど経過した第2次世界大戦が終わった頃から自動化が進んできました。

坂本:チェーンソーなどが出てきたのでしょうか?

奥村:おっしゃるとおりです。そのため「手で引く鋸切は廃れていくだろう」といった存亡の危機があり、その時にバルブへの転換を図りました。

坂本:どのような経緯でバルブに転換されることになったのでしょうか? 鋸切とバルブとはあまり関係性がないように見えますので、そのあたりのエピソードがあればお願いします。

奥村:当時は滋賀県彦根市にバルブのメーカーが集積していました。バルブの産地、いわゆる地場産業です。戦争が終わり、今後は産業がどんどん発展して、さまざまなものが作られるだろうという中で、配管やプラントが増えるとバルブも必要になってくるだろうと考えました。

また、鋸切を作っていたため、鉄を扱うという共通点もありました。鉄の扱いには慣れていましたので、そのような社会情勢や地元の産業情勢があり、バルブに転換したということです。

バルブ事業の創業者には、当時まったく技術がありませんでしたので、彦根のバルブメーカーに丁稚奉公して、そこでバルブの作り方を覚えて作り始めたということです。

坂本:最初はどのようなバルブを作っていたのでしょうか。小さいものですか?

奥村:10センチメートルから20センチメートルくらいのものを、下請けで作っていました。

坂本:そこでノウハウを貯めてから、幅広い用途のバルブを作っていったということですね。

奥村:そのとおりです。その後は2020年に上場し、そのタイミングの近辺を「第三の創業」と位置付け、次の成長に向けて邁進しているところです。

Purpose

奥村:今回の中期経営計画を策定するにあたって、Purpose(存在意義)を設定しました。スライドに記載していますが、「いい流れをつくる。」です。

さらに、「目に見えるもの、見えないもの」とあります。世の中を流れるものとして、水や空気などいろいろなものがありますが、私たちはそのような世の中の流体、あるいはステークホルダーの思いといったものをつないで、社会の課題を見つけ、環境を考えて、暮らしやすい世の中へ導いていきます。次のページでご説明しますが、社是にある「独創的な技術」を使って、会社やお客さま、社会にとってよい流れを作っていきます。

社是

奥村:Purposeを実践するにあたり、4つの社是を掲げています。この社是は昭和48年に制定しています。

1つ目は「独創的な技術」です。製品開発だけではなく、製造、営業、販売、管理など、すべてのプロセスに「独創的な技術」をしっかりと織り込み、「こだわり・工夫・改善」をとにかく積み重ねていくということです。

2つ目の「最高の品質最低の資源消費」は、1つ目の「独創的な技術」を使って、お客さまに喜ばれる商品を作るということです。

3つ目は「余裕ある生活と豊かな心」です。これは従業員の満足度を高めるということです。

4つ目は「地域社会に貢献する」です。これは社会の発展に加え、株主さまの満足度を向上させるということです。

事業の概要 ① ― 国内拠点 ―

奥村:国内の事業拠点です。ものづくりの拠点は、日野工場と東近江工場、加えて滋賀県に集積している本社・研究開発センターになります。販売拠点は東京、名古屋、大阪、広島、福岡に展開しています。

事業の概要 ② ― 海外拠点 ―

奥村:海外拠点です。スライド左側に記載しているのはマレーシアの海外法人についてです。右側は中国の海外法人で、江蘇省常熟市に拠点を設けています。

マレーシアの拠点は32年前に開設しています。中国のほうは19年前に開設して、当初は蘇州市に工場を置いていましたが、2021年に蘇州市の隣にある常熟市に移転しました。

販売あるいはサポート拠点としては、韓国と、ベトナムのホーチミンに駐在事務所を置いています。

坂本:日本国内の拠点の中で、工場が滋賀県に集中しているということですが、海外の生産拠点でも代替生産は可能なのでしょうか? BCPの観点から教えていただきたいと思います。

奥村:バタフライバルブ、ナイフゲートバルブは基本的に海外でも製造は可能です。滋賀県に工場が集積している理由は、日本の中でも非常に災害が少ない地域であるためです。また、物流面でも優れています。

坂本:日本の中央にあるということですね。

奥村:おっしゃるとおりです。大阪方面にも、名古屋などの中京方面にも流通しやすく、位置的にも非常にメリットがあります。

事業の概要 ③ ― 主要製品 ―

奥村:当社グループが作っているバルブの代表的なものをご説明します。最初はバタフライバルブについてです。スライド左側の写真のように、輪っかの中にディスクを配置しており、これが90度回転することによって、流体を流す、止める、絞るといったことができるバルブです。

坂本:こちらは電子制御ですか? それともコックのような部分を手動で回すのでしょうか?

奥村:こちらは手動式で、図にあるような持ち手を回すと開いたり閉まったりします。あるいは、モーターで動かすものもあります。

坂本:あまりに大きいと、人の手では動かすのが難しいですからね。

奥村:そのとおりです。他にも空気圧を利用するなど、さまざまなものがあります。

続いて、スライド右から2つ目のナイフゲートバルブと呼ばれるものは、輪っかの中に挟み込まれたプレートを出し入れすることによって、流体を流したり止めたりするバルブです。

右端のピンチバルブというものは、ゴムチューブを押し潰すことで流体を止め、開放することで流すといった方法で制御を行うバルブです。主にこのバタフライバルブ、ナイフゲートバルブ、ピンチバルブを作っています。

増井麻里子氏(以下、増井):圧力の掛け方などにも、細かく段階があるのでしょうか?

奥村:おっしゃるとおりです。ほとんど圧力の掛からないものもありますし、10気圧や20気圧、あるいは100気圧のように非常に高圧が掛かるようなバルブもあります。これは、さまざまなお客さまのニーズによってバルブを変えているためです。

流れているものでも、きれいなものがあれば、泥のような混ざりものがあるものなど非常にややこしい流体もあります。

増井:お客さまの要望に応じてカスタマイズしていくということですね。

奥村:そのとおりです。次のスライドでご説明します。

カスタマイズバルブの一例

坂本:各種のバルブがどのようなものに使われているのか、教えてください。

奥村:用途としては、きれいな水や、酸やアルカリが混ざったもの、下水道のように少し泥が混ざっているもの、紙パルプが溶けたもの、粉や木材のチップが混ざるもの、石や鉱石などが混ざっているものなど、さまざまな流体に対応しています。

先ほどご紹介したのは本当に標準的なバルブですが、こちらのスライドに示しているのは、お客さまのご要望に合わせてカスタマイズしたバルブです。例えば、左上の写真は船の中についているバルブになります。配管を船中に張り巡らせており、甲板から操作する部分まで伸ばしています。そのため、中央にも穴が開いています。

坂本:確かに、壁に穴が開いていますね。

奥村:上段の中央にお示しした黒と赤のバルブも同様になります。

坂本:これは何でしょうか?

奥村:丸い部分がバルブになっており、左側のバルブと同様に首を伸ばしていますが、こちらは配管とバルブが地面の下にあり、操作する部分は地上にあるといったものになります。他にも、お客さまにあわせたさまざまなカスタマイズバルブとなっています。

坂本:スライドを見る限り、大きいバルブもあるのですね。特に、下段の右側にあるバルブは大型に見えます。

奥村:お気づきのとおり、下段の右にお示ししたバルブは直径1.5メートルほどあります。小さいものは4センチぐらいからありますので、さまざまなサイズをご用意しています。

坂本:下段左側の、布がかかっているバルブはどのようなものでしょうか? 

奥村:これは半導体向けと言いますか、非常にクリーンなプラントに使われるバルブになります。こちらについては「バルブと配管をセットにしてほしい」という要望がありました。

坂本:継ぎ目などがある部分ですね。

奥村:そのため、当社の工場でアセンブリを行い、このようになっています。

坂本:そのまま納入するかたちになっているのですね。

奥村:はい、そのとおりです。

坂本:ここで、御社の扱うバルブのシェアについてお聞きします。16ページに社内の売上構成比が示されていますが、社内の84パーセントはバタフライバルブ、それ以外の2つが16パーセントとありました。御社のシェアは、国内も含め世界的にどのくらいの位置なのでしょうか? イメージで結構ですので教えていただければと思います。

奥村:シェアについてお伝えすると、バタフライバルブのシェアに関してはトップクラスに入っています。統計データがなく、申し訳ありません。

坂本:御社から出されている数字からも、そうだろうと思っていました。

奥村:国内トップシェアのグループに入っている、といったところです。

坂本:それでは、世界ではいかがでしょうか?

奥村:世界に関しては、それぞれの国にバルブメーカーがありますので、一概に言いきれないと思います。

坂本:なるほど、規格もさまざまですからね。

また、メンテナンス需要はあるのでしょうか?  バルブは一度納入すると終わりなのか、それともメンテナンスしなくてはならないものがあるのか教えてください。

奥村:メンテナンス需要もありますが、微々たるものとなっています。製品の保ちが非常によいため、配管設備システム自体が交換となる時の需要のほうが大きいです。

坂本:つまり、リペアされたときに需要があるのですね。

奥村:はい、そうです。

会社業績

奥村:会社業績の推移についてお話しします。スライド左側の棒グラフは、近年における単体の売上推移を表しています。ご覧いただくと、2018年から2019年に不連続点がありますが、上部の文章に記載のとおり、確実に船舶排ガス用バルブが業績に寄与しはじめた年となっています。

スライド右側のグラフは連結の売上高、営業利益の推移を表しています。営業利益が若干下がっているように見えますが、中期経営計画での変革を見越して設備投資を先行させた影響を受けています。

坂本:船舶排ガス用バルブの好影響が売上にも表れており、今は若干少なくなってきていると思いますが、まだ好影響に乗っている状態でしょうか?

奥村:引き続き好影響の状態に乗っており、今後もまだ伸びるところです。

坂本:このバルブは環境対策として販売されたのでしょうか? もしくは単に御社の新製品として販売したのでしょうか?

奥村:環境対策になります。

坂本:つまり、そのために義務付けられ、このバルブを使わなければいけないということでしょうか?

奥村:おっしゃるとおりです。船舶における世界的な条約で設定されています。

坂本:確かに、いろいろな面において規制が厳しくなっています。タンカーを2層にするところから始まり、バラスト水の話もあったかと思います。さらに排ガスといったこともありますが、そのあたりは流れがあるのでしょうか?

奥村:おっしゃるとおりです。バラスト水も制限がかかり、クリーンにしなくてはならない状況になりました。そこにバルブが使われているため、その需要も入っています。さらに、エンジンの排ガス規制です。特にNOxという、いわゆる窒素酸化物を除去するための装置に使われるバルブが非常に大きく、1メートルクラスのバルブが使われています。

坂本:新造船には当然そのような装置を付けることになりますが、既存の船にも付けなくてはならないのでしょうか? 

奥村:NOxに関しては新しい船向けとなります。

坂本:新しい船に対して売れ続けるということですね。

奥村:おっしゃるとおりです。

2023年3月期 業績予想サマリー

奥村:業績予想サマリーについては、スライドをご覧のとおりです。今期にあたる2023年3月期は、売上高95億円、純利益4億3,000万円を見込んでいます。前期に比べると、増収する一方で、減益になるだろうと予想しています。

要因としては、足元の原料高があります。鉄、ステンレスといったすべての仕入れが高くなっています。さらに円安の影響を織り込み、予想した数字となっています。社内においてもできる限りコストダウンを実施し、生産性を上げていく活動を続けていきたいと考えています。

国内市場規模推移

奥村:2つ目の章である事業環境分析について話題を移します。本スライドでは棒グラフで国内のバルブ市場規模を表しています。ご覧のとおり、4,500億円近辺を推移しています。

長いスパンで見ると、市場規模は少しずつ拡大しており、今後においても堅調に推移していく見通しです。先ほどもお伝えしましたが、バルブは3000年前からある製品ですので、なくなることはありません。これから先もバルブの需要自体は存在しますし、さまざまなニーズによってバルブの変遷が進んでいきますので、これにしっかり順応していけば、需要は広がってくると考えています。以上のことから、非常にサステナブルな業界と言えると思います。

脱炭素社会に向けた世界の動き

奥村:また、バルブを取り巻く環境として、脱炭素社会に向けた動きに注目しています。現在、脱炭素として新エネルギーに置き換えようとする動きが加速しています。ウクライナ情勢により若干不透明なところがあるものの、長いスパンでみると脱炭素、新エネルギーへシフトする動きは加速していくだろうと考えています。

エネルギーのように、何かが世の中において変わるとき、バルブや流体制御の分野にも今あるものの代わりとなる「新しいニーズ」が生まれます。そこで、脱炭素のトレンドにもしっかりと乗って行きたいと考えています。

海運業界を取巻く主要な環境規制と造船ユーザーの動き

奥村:海洋面として、海運業界や船においても同様の動きが起きています。先ほど、排ガスやNOx、バラスト水の処理に関する話題が出ました。海運業界にも今までにさまざまな環境規制が発効されており、新しいバルブの需要が生まれてきています。それに対し、当社も業績を上げられるような開発に成功したところです。現在の主な燃料は重油です。船を動かすエンジンは重油を焚くことで動いています。

脱炭素の流れの中から天然ガスを燃料とした船、その先のアンモニアを燃料としたエンジンで走る船、さらにその先の燃料として水素も視野に入っています。このように、重油からクリーンなエネルギーへ大きくシフトしていく動きが、海運業界でも生まれています。

世界の新造船受注量の推移

奥村:造船分野における新規受注量の推移を表した棒グラフになります。2020年までは建造数、受注量ともに減ってきていましたが、2021年に増加へ転じ、2020年と2021年を比べると、およそ倍の新規造船の発注がありました。

坂本:新たに船を造るとき、バルブ発注も生じるかと思います。発注のタイミングについてお聞きしますが、御社には新たに船を造り始める1年、2年前から発注がかかるのでしょうか?  もしくは、造船を進めている途中に発注されるかたちになるのかというところを教えてください。

奥村:多少のタイムラグが生じます。船の建造から竣工するまでは大体1年半から2年以上かかり、竣工する1年くらい前にバルブの需要が出てきます。

坂本:そこで注文が入り、納品するということでしょうか?

奥村:お察しのとおりです。ですので、各造船メーカーの受注量が増えた時点では、まだバルブの需要は生じません。

坂本:需要が1年後くらいからリンクしてくるということですね。業界の流れがよくわかりました。

コスト面についてもお聞きします。原材料費が上がっていると思いますが、価格転嫁はできているのでしょうか?

奥村:おっしゃるとおり、すべての原材料費が上がっていますので、お客さまに価格アップをお願いしています。先日6月3日にもアナウンスしたところです。ただ、値上げをすぐ実施、実現するのではなく、半年から1年ほど時間をかけて、徐々に値上げの浸透を進めます。今はお願いをしている段階ですので、値上げが実現するのは下期から来期にかけてくらいになる見通しです。

坂本:ありがとうございます。ちなみに、御社は基本的に円安と円高のどちらの状況において儲かる業種なのでしょうか?

奥村:円安になります。

坂本:海外への売りがよいからですね。非常によくわかりました。

増井:現在の状況は、「悪い円安」にあたるのでしょうか?

坂本:それはよい質問ですね。

奥村:今の円安状況でいいますと、私どもの会社にとっては「悪い円安」です。

坂本:とはいえ、レート的には円安のほうがよいということでしょうか?

奥村:いや、円安のほうがよくないのです。ただ、全体的に当社が納品したお客さまが海外へ輸出することを考えると、お客さまの収益が上がればこちらに返ってきます。そのため、多少のタイムラグはあるものの、全体がうまく回っていくことが考えられますので、一概に「円安がすべてダメ」というわけではありません。

坂本:これほど円安が進むと、海外との価格競争力が出てくるのでしょうか?

奥村:お考えのとおりかと思います。

坂本:なるほど、そのあたりは頭に入れておきたいと思います。

オーケーエムの強み ①

奥村:続いて、事業戦略についてご説明します。まず、オーケーエムの強みについてお話しします。

先ほど、バルブはさまざまな産業に使われているとご説明しました。当社においても、ありとあらゆる産業に納めており、納品していない業界はないのではないかと考えています。

さまざまな業界のお客さまから「こうしたい」「ああしたい」「このようなものを流すのだけど」「このような制御をしたいのだけど」といった多様な要望を受け、バルブをカスタマイズし、使っていただいています。さまざまなお客さまの流体制御の要望に関する情報を入手、集積することができ、得た情報をさらに次の開発へ活かすことができるのです。

幅広い業界へ製品を納めることによりさまざまな情報が集まり、次の開発へ活かされていくことが、1つの強みとなっています。

オーケーエムの強み ②

奥村:お客さまが取り扱う流体をカスタマイズするために、可能な限りお客さまが扱う流体、あるいは環境を再現し、バルブの開発設計を進めています。さらに流体を確実に止められるかどうかについて検証を重ねます。あるいは、スライド右下にある低温流体試験のように、マイナス196度までバルブを冷やし、温度が下がっても正常に作動するかを検証しています。そのようにさまざまなテストを通して得たデータが、さらに次の開発に活かされています。

オーケーエムの強み ③

奥村:先ほどもお話ししたように、酸、アルカリ、あるいは油といった液体だけでなく、粉などの固体といった、さまざまなニーズに応じることのできる、さまざまなカスタマイズバルブを用意しなければなりません。

当社のバルブの型式、機種は20種類ほどしかありません。しかし、先ほどご紹介したように、大きさは4センチから1メートル、2メートルクラスまで、さまざまなサイズを用意しています。また、材質についてはさまざまなものが流れることを想定し、酸に強い、あるいは摩耗に強いといったさまざまな特性に対応できるよう、多様な材質を用意しています。

さらに、手で動かす、モーターで動かすといった制御方法に関する要素などを掛け合わせれば、10万種類以上になります。これに「一品もの」といわれる特殊設計まで含めれば、種類は無限大と言えるかと思います。

増井:部品や材質はある程度共通化できるもので、いろいろな種類を作ってしまうと利益率が圧迫されるのではないかと思うのですが、そのあたりはうまくコントロールできるのでしょうか?

奥村:1つは、カスタマイズするとお客さまの現在のニーズに非常にマッチしたかたちでご提供できるため、競合が入ってくることができません。そうするとその手間の分、利益率を高く取ることができます。

あるいは、うまく標準化できるところは行い、その組み合わせで特殊対応するなどしてカスタマイズを実現しています。

また、情報処理といった点で、製造するためのタイムリーな情報をカスタマイズし、うまく現場に流します。そのような仕組みも、当社独自のシステムを組んでいます。このようなところが、私どものビジネスモデルとなっています。

増井:それはなかなか真似できないところですね。

奥村:そうですね、おっしゃるとおりです。

オーケーエムの成長ドライバー

奥村:先ほどお伝えしたように、現在のオーケーエムの成長ドライバーは、船舶排ガス用バルブです。この船舶のエンジンに使われるバルブは大変ニッチなのですが、世界シェアは50パーセント以上獲得できています。

スライド下部に売上高の伸び率を示していますが、2018年3月期を100パーセントとすると、2022年3月期は3倍に増えています。この先、船の建造数が増えてくると、さらに需要が増加してくるということです。

環境規制強化により需要が急増

奥村:船舶排ガス用バルブとはどのようなものなのかについて、ご説明します。スライド右側のイラストをご覧のとおり、ディーゼルエンジンがあり、反応機があります。これは窒素酸化物を除去するための装置で、エンジンと反応機、処理装置の間に配管が張り巡らされています。黒いリボンのようなマークがありますが、その部分がバルブです。直径約1メートルの大きさのものが、複数台取り付けられています。スライド左側がバルブの写真になります。全体の高さは2.3メートル、重さは1.2トンと非常に大きなバルブです。

中期経営計画方針

奥村:中期経営計画方針についてご説明します。方針として、脱炭素化に向けた新しいエネルギーを含む成長市場に、しっかりと新商品開発、販売体制を確立していきます。

オーケーエムの10年後の姿

奥村:オーケーエムの10年後のイメージをお示ししています。中長期ビジョン「Create200」を策定しており、2031年3月期に売上規模200億円を目指して成長していきたいと考えています。

今回の中期経営計画については第1次中期経営計画と位置付け、1次、2次、3次で200億円まで持っていきたいと考えています。先ほど「第三の創業」とお伝えしましたが、スライド下部に記載のように、次のステップに移る変革期をこの第1次中期経営計画で確立したいと考えています。

目標とする経営指標

奥村:中期経営計画で目標とする経営指標になります。2025年3月期においては、連結売上高124億円、営業利益10億7,000万円を目指していきます。営業利益、ROEともにやや低く設定していますが、設備投資やヒトへの投資を先行させているためです。足元では原材料の高騰を織り込み、少し保守的に見ています。

投資戦略と株主還元方針

奥村:投資戦略と研究開発投資についてです。スライドにお示ししたとおり、新商品開発、既存製品の見直し、製造設備の見直し、研究開発にしっかりと投資していきたいと考えています。

また、株主還元方針もスライドに記載のとおりです。研究開発、設備投資の充実を図りつつ、配当性向30パーセントを目処に、継続的に配当していきたいと考えています。

基本経営戦略

奥村:基本経営戦略とアクションプランとして、経営戦略を4つ掲げています。1つ目が「成長市場に対応できる新商品開発と販売体制を確立する」、2つ目が「既存の商品力を強化する」、3つ目が「企業風土を変革し、サステナブルに成長・発展する」、4つ目が「社員満足度を向上させる」です。

戦略Ⅰ

奥村:戦略Ⅰについてご説明します。1つ目の施策は、成長市場に対応できる新商品開発として、燃料としてのアンモニアに向けたバルブの開発や、排出したCO2を回収して運び、貯蓄し、移動するためのバルブに今後需要が出てくるだろうということで、CO2用のバルブの開発も行っています。

また、その先にある水素そのものを利活用します。水素を大量に貯め、運ぶ需要が生まれてくるため、そこに使われる「液化水素用大口径バタフライバルブ」を、サポイン事業の経産省認定を受け、現在は産学官連携で開発を進めています。

2つ目の施策は脱炭素の前段階である、低炭素社会に向けた取り組みです。第1段階として、天然ガスを活用するところに向けたLNG用バルブの開発を完了し、現在受注を開始しています。特にLNG燃料とする船に使われるバルブの供給を進めていきたいと考えています。

戦略Ⅰ

奥村:2つ目の施策として、先ほどお伝えした船舶排ガス用バルブの製造・販売を強化します。現在は排ガス用バルブをモデルチェンジしたものを上市しています。以前より非常にコンパクトで、軽量化されました。「船をできるだけ軽量化したい」というニーズがありますので、それを実現するためにモデルチェンジ版のバルブを投入しています。

また、できるだけお客さまに近いところで作る最適地生産ということで、中国で販売するものであれば、中国の中で作ってお客さまに提供していくといったことを進めていきたいと考えています。

目標値としては、世界シェアNo.1の維持です。スライドにお示ししているように、売上高の伸び率を、2022年3月期を100パーセントとして、この中期経営計画では最終的に165パーセントまで伸ばしたいと考えています。

施策の4つ目については、新たな販売体制の構築です。現在はFace to Faceで販売活動を展開していますが、DXやITを使ってしっかりとシステム化し、お客さま側からアプローチをいただけるようにインフラを整備していきたいと考えています。

戦略Ⅱ

奥村:戦略Ⅱは生産体制の変革です。ご覧のとおり、カスタマイズ製品の開発、製造を進めていきます。さらに、それにしっかりと生産体制を追随させることで、DX化・自動化・省力化を進めていきたいと考えています。

戦略Ⅲ

奥村:戦略Ⅲの施策の1つ目はガバナンスの向上です。生産・販売をグループ全体で管理し、投資家のみなさまやお客さまに向けて情報発信とIR活動の充実を図っていきたいと考えています。また、2つ目にサステナビリティということで、SDGsを経営計画に織り込んで展開していきたいと考えています。

戦略Ⅳ

奥村:戦略Ⅳは「社員満足度を向上させる」です。会社の発展を担うのはヒト、つまり社員です。教育制度と人事考課制度の見直しを進め、福利厚生の充実も図っていきます。失敗を恐れずにチャレンジするような風土を作っていきたいと考えています。

SDGsへの取組み

奥村:サステナビリティ情報についてご説明します。SDGsへの取り組みとして、重点取り組み目標に「地球環境保全への取組」「グローバル社会への貢献」「社員満足度の向上」の3つを掲げています。

バルブを製造するところで、資源消費をしっかり削減していきます。また、グローバル社会への貢献においては、新商品開発を行い、製品を通じて環境や次のクリーンエネルギー社会に向けて貢献していきます。

サステナビリティに関する多様な取組み

奥村:サステナビリティに関するさまざまな取り組みを実施する中で、国と滋賀県から評価をいただいた結果をスライドにお示ししています。特にスライド左上の「グローバルニッチトップ企業100選」は、日本全国には大企業もあれば中小企業もありますが、その中の100企業に選ばれたということです。

ESGの取組み

奥村:ESGの取り組みについてのご紹介です。現在もESGに関していろいろと実施しており、これからも継続していきます。スライドに記載しているとおり、今後においても製品を通じて取り組むもの、社内の活動を通じて取り組むものを展開していきたいと考えています。

今年は創業120周年ということで、社内的にはさまざまな行事を計画しています。そのような中で、やりがいの持てる企業風土を醸成していきたいと考えています。また社内のガバナンス、企業活動のガバナンスをしっかり効かせていきます。さらに、取締役会の改善にも取り組んでいきたいと考えています。

最後に少し動画を見ていただきたいと思います。工場の様子や社員の様子を感じていただけると思いますので、ぜひご覧ください。

質疑応答:M&Aについて

坂本:会場からご質問をいただいています。「M&Aについてお考えですか?」ということですが、いかがでしょうか?

奥村:M&Aの予定は今のところありません。ただし、中期にいろいろな取り組みをする中で、新しい分野に出ていこうと考えています。その中の足りないピースとして、M&Aを考えています。

坂本:「バルブを中心として、足りないピースを」と考えているということですね。

奥村:そのとおりです。

当日寄せられたその他の質問と回答

当日寄せられた質問について、後日回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:海外で製造しないのは経営哲学的なもののためですか?

回答:海外での製造につきましては、弊社グループのマレーシアと中国の2法人にてバルブを製造しています。各法人では、弊社の外注生産を請け負いつつ、マレーシアは東南アジア地域に、中国では中国国内に向けてバルブの製造販売をしています。

<質問2>

質問:バルブ生産額の国内の市場規模推移について、今後も同水準を維持する見込みとしていますが、需要の拡大を見込む業界と、逆に需要の縮小を見込む業界をそれぞれ教えてください。

回答:需要の拡大を見込む業界は、脱炭素や低炭素に向けたクリーンエネルギーに関連する業界です。例えば、水素の需要が拡大する場合、大量製造・運搬・貯蔵が必要になり、既存の水素設備よりも配管サイズを大きくする必要があります。配管サイズが大きくなるとバルブの口径(サイズ)も大きくなるため、弊社のバタフライバルブに優位性が出てきます。その他、首都圏や都市部の再開発に関連する建築設備や建造量が増加する船舶向けにつきましては、拡大を見込んでいます。

逆に、紙パルプや石油に関連する業界は縮小すると見込んでいます。

<質問3>

質問:円安が急激に進んでいます。為替の影響が気になります。

回答:円安が当社の経営に与える一番大きな影響は海外からの仕入価格の高騰です。そのうち、人民元に対する円安に対して一番大きな影響を受けます。

物流費等の高騰も相まって、国内外の仕入価格が高騰しており、企業努力だけでは販売価格の維持が難しくなりました。そのため、昨年に続き本年にも価格改定をお願いする次第となりました。

<質問4>

質問:今期減益予想についておうかがいしたいです。製造コストや原材料価格の高騰なども一因かと思います。製品への価格転嫁の状況はいかがでしょうか? 

回答:製品への価格転嫁につきましては、昨年に続き本年にもお客さまへ値上げのお願いをしています。昨年は2021年7月1日受注分から最大10パーセント、本年も7月1日受注分から、15パーセントから30パーセントの値上げをお願いしました。

弊社の場合、値上げにはタイムラグが生じますので、本年の値上げ効果は今期の下期から数字に表れる見込みです。

<質問5>

質問:中計の売上増加の中で、M&Aはどれくらいを占めますか? 

回答:「Create200 第1次中期経営計画」にM&Aの売上は入っていません。現在具体的に検討しているM&A案件はございませんが、案件の出方次第で事業拡大のためのM&Aは視野に入れています。

<質問6>

質問:中計の開発・販売体制の確立に向け、人員はどれくらい増やしていきますか?

回答:現状、大幅に増員する予定はございません。開発につきましては、今後の製品開発や研究開発の案件増加を見込み、新卒・中途採用による一定程度の増員やジョブローテーションによって体制を強化してまいります。

販売体制では、増員よりもデータを活用したデジタルマーケティング等による販売効率の向上に注力し、売上拡大を図ります。

<質問7>

質問:「変革期」について、企業風土が主に該当すると思いますが、ここ数年で変革できたものについて教えてください。

回答:ガバナンスの向上、コンプライアンスの徹底による役職員の意識変革を行いました。具体的には、独立社外取締役の活用による取締役会の活性化や企業価値の向上、コンプライアンスを徹底するための取り組み強化、主体的な情報発信等を行いました。

今後も企業風土を変革するため、グループ経営の最適化やサステナビリティへの取り組み、人的資本への投資等を推進してまいります。

<質問8>

質問:社歴が長い割に上場は最近ですが、上場の経緯について教えてください。

回答:実は、今回の上場が3度目の挑戦でして、弊社にとって上場は「30年来の宿願」でした。初めは、約30年前に店頭公開を目指しましたがバブル崩壊により断念し、2度目はリーマンショックで見送ることになりました。今回も新型コロナウイルス感染拡大の影響により当初予定より3ヶ月延期をしましたが、2020年12月17日に無事に上場を果たすことができました。

<質問9>

質問:売上が伸びる予想になっておりますが、現在の生産キャパシティで対応可能でしょうか? 設備投資計画に工場新設などがございますか?

回答:生産キャパシティは十分あるため、工場新設の予定はございません。生産拠点としましては、2019年4月に船舶排ガス用バルブ専用工場として東近江工場を、2021年1月には中国常熟市の新工場を稼働させました。今後、工場新設の予定はございませんが、研究開発やITへの投資、工場設備の入替え等は行ってまいります。

<質問10>

質問:他のバルブと比べたときのバタフライバルブの強みや特徴を教えてください。

回答:他のバルブと比べて、バタフライバルブは軽量でコンパクトであり、小口径よりも中口径から大口径でのメリットが大きくなります。大口径の場合に、低コスト化はもちろんのこと、設置スペースが小さいため、省スペース化を図ることができます。

<質問11>

質問:他バルブメーカーとの違いや特徴を教えてください。

回答:例えば、標準品の大量生産に特化したバルブメーカー、特定の業界向けに強みを持つバルブメーカーなど、各メーカーによって特徴があります。また、得意なバルブの型式(ボールバルブ、グローブバルブ、バタフライバルブ等)の違いもあります。

その中で弊社はバルブのカスタマイズに強みを持ち、バタフライバルブだけでなく、ナイフゲートバルブやピンチバルブ等のニッチな製品の提供が可能です。

※「当日寄せられたその他の質問と回答」は、企業ご提供の内容となります。