2022年3月期決算説明会

米倉英一氏(以下、米倉):みなさま、こんにちは。米倉でございます。本日は、2021年度決算の概要をお伝えするとともに、スカパーJSATのこれからについてお話しします。

スカパーJSATは今、将来を見据えて変わらなければならない、大切な局面を迎えています。近年、メディア事業においては、競争環境が厳しい中、苦しい闘いを強いられてきました。宇宙事業においても、現状に満足しては成長できない局面に来ています。

1989年に民間衛星を初めて打ち上げた我々は、常にチャレンジしてきました。これから2030年に向けて、我々は基礎収益力を底上げすべく、新たなチャレンジを続けていくつもりです。

お金、人、時間をどこに投下していくのか? これらを明確にし、スカパーJSATホールディングスを筋肉質の体に作り変えるべく、さらなる投資を行いながら、一つひとつの打ち手をかたちにして積み上げていきたいと思います。

まずは冒頭で決算の概要についてご説明させていただき、当社が変わるための方向性についてお話しします。

連結業績概況

通期連結業績からご説明します。2021年度の連結営業収益は1,196億円となりました。期首から「収益認識に関する会計基準等」を適用しており、その影響で前年度比14パーセントの減収となりましたが、ほぼ計画どおりとなりました。

営業利益は189億円、当期純利益は146億円と、前年度比9パーセントの増益となり、計画を上回る結果になりました。この中には、連結子会社の清算に伴う税金費用減少分の9億円が寄与していますが、宇宙事業で順調に顧客を獲得できたこと、メディア事業では費用が抑制されたことも要因となっています。

四半期連結業績推移(FY2020/1Q – FY2021/4Q)

スライドは、四半期ごとの業績トレンドを示しています。営業収益は、今年度から「収益認識に関する会計基準等」を適用しており、昨年度から落ち込んで見えますが、利益にはほとんど影響を与えていません。また、例年、第4四半期の特に2月、3月は、メディア事業で大々的に広告宣伝・プロモーションを行うため、利益水準が低くなる傾向があります。

セグメント別業績概況:宇宙事業

宇宙事業の業績についてご説明します。営業収益は595億円となりました。「Horizons 3e」を中心とするグローバル事業の成長や、衛星画像販売など、新領域でのビジネス拡大、国内の顧客への機器販売収入などが、放送用のトランスポンダ収入の縮小を補い、増収の要因となっています。

営業利益は、前年同期比15パーセント増の159億円と、海外、新領域ビジネスの拡大などが利益に貢献しています。純利益ベースのセグメント利益は、30パーセント増の123億円となりました。

セグメント別業績概況:メディア事業

メディア事業の業績についてです。「収益認識に関する会計基準等」の影響によるマイナスが177億円あり、営業収益は704億円となりました。営業利益は37億円、セグメント利益は27億円です。

今年2月には有料動画配信サービス「SPOOX(スプークス)」にて、新商品の「バリュープラン」を発売し、本格的にサービス提供を開始するとともに、プロ野球の開幕に合わせた、積極的なプロモーションを行ってきました。今後も配信と放送の両面で、さらなる加入者の拡大を図っていきたいと考えています。

2022年度連結業績予想

2022年度の業績予想についてご説明します。2022年度は、2030年を見据えた足固めの期間として、新領域に積極的に費用を投入しつつ、2021年度を上回る利益を確保していく計画です。

営業収益は前年同水準の1,200億円、営業利益は11パーセント増の210億円、当期純利益は3パーセント増の150億円を計画しています。当期純利益について、昨年度は税金費用の減少9億円の効果がありましたが、今期はその一過性の要因はなく、基礎的な収益力をもって計画を達成していきます。

セグメント別業績予想

セグメント別の計画についてご説明します。宇宙事業においては、「JCSAT-1C」「Horizons 3e」の成長を見込んで、営業収益は前年度比15億円増の610億円、営業利益は26億円増の185億円、セグメント利益は7億円増の130億円と計画しました。

メディア事業は、営業収益を前年度比16億円減の688億円、営業利益を5億円減の32億円、セグメント利益を3億円減の24億円としています。

メディア事業では、今年3月の「WAKUWAKU JAPAN」終了に加えて、本日、グループサイトでお知らせしたとおり、今年10月に「BSスカパー」を終了します。既存事業については、メディア事業における構造改革の中で、採算性や将来性の観点から常に見直しを図っています。

一方、構造改革と同時に、2030年に向けた新たなチャレンジも始まっています。ヒト・モノ・金のリソースを新たな領域へ集中させ、メディア事業の成長プランを力強く推進していきます。

また、宇宙事業においても、2022年度は新領域への進出がさらに活発化しています。すでに、シリーズBラウンドで、当社がリードインベスターとして出資を行い、業務提携しているQPS研究所では、小型SAR衛星のコンステレーション構築に向けた準備が、順調に整っています。

現在、2機の衛星を運用中ですが、3号機・4号機の今後の打ち上げ計画としては、「イプシロンロケット」6号機での2022年の打ち上げに向けて、着実に前進しています。

今後もQPS研究所との業務提携により、衛星データサービスの市場を積極的に開拓していきます。また、4月26日に、NTTとの新会社設立についても発表しました。こちらについては後ほどご説明します。

2022年度 配当方針

年間配当は、2022年度も1株あたり年間18円の安定配当を継続して実施する予定です。

2030年に向けて

「2030年に向けた、スカパーJSATが目指す姿」についてご説明します。2030年、スカパーJSATは250億円を超える当期純利益を目指します。

グループミッションである「Space for your Smile」のもと、既存ビジネスの延長線上にとどまらない、宇宙事業・メディア事業双方の技術・サービスの開発を進め、「Society5.0」の実現にも貢献し、この目標を達成していきたいと考えています。

今後5年間のキャピタルアロケーション

今後5年間は、2030年に向けた足固めの期間と位置付け、2,000億円を超える規模の投資を行う覚悟です。その中でも特に成長投資として、新領域に1,200億円規模の投資を行うことにご注目ください。スカパーJSATは、これまでにないほど大胆に、新領域へ投資を行い、生まれ変わろうとしています。

加えて、既存の収益力の基盤となる静止衛星などへの投資も継続的に行うとともに、株主のみなさまに対しても、配当に加え、機動的に自己株式の取得も行っていくことで、還元します。

サステナブルな成長に向けた重点投資分野

2030年に向けて、既存事業で生産性を高めつつ、新領域へ大胆に投資を行っていきます。宇宙事業では1,500億円規模の投資として、具体的には、Universal NTN、宇宙データビジネス、そして光データ中継の分野を中心に行っていきます。

メディア事業では500億円規模で、コネクテッドTV、メディアソリューション、ファンコミュニティの分野に投資します。

『宇宙事業ビジョン』~ Society 5.0 実現に向けて ~

宇宙事業の成長のストーリーについてご説明します。スカパーJSATはこれまで30年以上、静止衛星オペレータとして通信サービスを拡張・発展させ、現代社会の重要通信インフラとして社会に貢献してきました。

さて、これから10年先の未来に目を向けるとどうでしょうか? 日本ではすでに「Society5.0」として、目指す社会が提言されています。この未来社会では、フィジカル空間とサイバー空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題を解決していくことが期待されています。

当社としても、このような大きな流れを成長機会と捉え、積極的に参入していくことが重要で、そして我々スカパーJSATは、この未来社会の実現に貢献できると考えています。

この社会を実現するためには、通信インフラに求められる要件も、大きく変化することが予想されます。我々も、従来型の静止衛星をベースとした通信インフラの提供のみならず、ニーズに応じた多様な通信インフラを提供できるよう、進化していく必要があります。

また、データを最大限活用する「Society5.0」の未来社会において、宇宙から収集できる地球規模のデータは、大きなポテンシャルを有しています。日々の生活での活用に加え、地球環境問題、エネルギー問題、安全保障問題など、社会課題の解決に大きく貢献できると考えています。

スカパーJSATは、30年以上にわたり培ってきた宇宙・衛星事業の経験を活かし、非地上系ネットワークであるUniversal NTNや、光データ中継、データインテリジェンスといった分野への積極的な投資とサービス提供によって、Society5.0の実現に貢献していきます。

そして、これを宇宙事業ビジョンとして、2030年には、セグメント利益210億円を目指したいと考えています。

新たな宇宙事業を担う新会社をNTTと共同設立

4月26日に、新たな宇宙事業を担う新会社、株式会社Space CompassをNTTとともに設立することで合意し、契約を締結しました。NTTとは昨年5月の業務提携以降、宇宙統合コンピューティング・ネットワーク事業の実現を目指し、ともに検討を進め、そしてこのたび、事業化に向けた第一歩を踏み出しました。

先ほどご紹介した宇宙事業ビジョンに含まれる、光データ中継、Universal NTNの実現に向けて、新会社では宇宙データセンタ事業、宇宙RAN事業の2つを柱として、新たなインフラの構築に挑戦し、持続可能な社会に貢献していきます。ぜひご期待ください。

メディア事業 成長のストーリー

メディア事業における成長のストーリーについてご説明します。「スカパー」ではこれまで長きにわたり、数多くのファンのみなさまに、映像を通じた体験をお届けしてきました。これからは、その映像体験のさらに先にある、ファンの体験を拡張していきます。そのために、新領域事業への投資を集中して行います。その新領域について、1つずつご紹介します。

まずは、コネクテッドTV事業についてです。「ドングル」という、さまざまな動画配信サービスを、大画面のテレビで視聴できるようになる端末を開発しています。

そして、この「ドングル」を使って幅広いサービスを視聴できるようにするため、現在、パートナーとの連携を図っています。例えば、サブスクリプション型で動画が見放題になる「SVOD」、見たい動画を都度購入できる形式の「TVOD」、広告型で無料で動画配信を視聴できる「AVOD」といった、さまざまな種類の動画配信サービスを搭載するべく、準備を進めています。

また、同じくコネクテッドTV事業として、広告プラットフォームの構築にも取り組んでいきます。フリークアウトとの業務提携を通じて、個人の嗜好や行動のデータを利活用した、新たな広告手法を用いた検討を進めています。

次に、メディアソリューション事業です。当社が保有する有形・無形のアセットを活用し、企業の課題解決となるソリューション事業を展開していきます。当社の放送センターの設備と技術を活用した「メディアHUBクラウド」は、すでに開始しており、動画配信をより手軽に、効率的に行っていただけるサービスを提供しています。

それに加え、映像コンテンツの管理に必要な情報を、体系的に管理する基盤となる、コンテンツデータベースの構築にも取り組んでいます。コンテンツ情報のデジタル化を図ることで、映像ビジネスの効率化と、普及促進を行いたいと考えています。

そして、リアル事業では、「スカパー」のファンのみなさまに、「スカパー」ならではの世界観をお楽しみいただくために、ファンミーティング、イベント、グッズ販売、ツアー施策といった、リアルの感動をお届けします。将来的には、フィジカル空間とサイバー空間を高度に融合させた、新たなリアル体験の構築も視野に入れて活動していきます。

これらの領域に対して積極的に投資を行い、2030年には50億円のセグメント利益を達成することを目指します。

群雄割拠する市場・業界の中で、メディア事業であれば、衛星放送のみならず動画配信という導線を持ち、メディア関連の各種サービスのインフラを保有しながら、同業他社あるいは異業種の各プレイヤーを、結び付けられる存在となることを我々は目指します。

また、宇宙事業領域であれば、ライフラインという社会インフラを支える放送衛星、通信衛星の保有運営のみならず、大きな方向をお示ししたとおり、宇宙空間をさらに利用したBtoB、BtoGのビジネスにとどまらず、BtoCのビジネスモデルの作り込みにも挑戦していきます。

2030年には「Society5.0」という新しい社会が実現します。その未来においても、スカパーJSATは宇宙とメディア事業の双方で、価値を提供し続ける会社でありたいと考えています。

2022年度は成長の足固めとして、既存事業の強化と新領域への進出に、積極的にチャレンジしていきます。私からの説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:宇宙事業における増収の内訳について

質問者:今期の事業計画について質問します。宇宙事業において、増収と償却の減少を挙げていますが、それぞれの分野別あるいは衛星別で、増収の中身をもう少し詳しく教えてください。海外を中心にした場合、「Horizons 3e」「JCSAT-1C」はどれくらいの増収効果を見ているのでしょうか?

また、新領域の画像などを含めた国内については、どのようなところを見ているのでしょうか? 15億円の増収の中身をおうかがいできればと思います。

福岡徹氏(以下、福岡):まず、海外の「Horizons 3e」の関係ですが、引き続き、航空宇宙関係や海外のインターネット接続などの増加が見込まれており、金額的には数億円くらいの増収を想定しています。

そして「JCSAT-1C」については、かねてからお伝えしていますが、「Horizons 3e」と同様、昨年度の後半にインドネシアでの利用を開始する予定でしたが、コロナ禍により少しずれ込んでいます。インドネシアでの利用は2022年度に開始予定です。

加えて、移動体向けの航空機Wi-Fiの需要についてです。既存の別の衛星から移るという部分を含め、「JCSAT-1C」はこれらで10億円に近い数億円の増加を見込んでいます。「JCSAT-1C」が本格的に収益を上げるスタートは2022年度であるとご理解ください。

また、国内は従来型のBCP需要はありますが、大きな増収までは見込めません。

今、お話があったように、大きな増収を見込んでいるのは、新領域の画像販売です。先ほどQPS研究所の出資の話もありましたが、昨今では外国の観測衛星画像オペレーターとの取引が非常に広がっています。

そのようなことを含め、安全保障系のクライアントへの衛星画像販売として数億円の増加を見込んでいます。

質疑応答:減価償却の状況について

質問者:減価償却費の減少について、おそらくのれん償却費も含まれると思います。こちらはどのような状況でしょうか?

福岡:ご指摘のようにのれん償却費がなくなる部分もあり、全体の減価償却額は3億円程度です。衛星の償却分が少しありますので、ここ1年くらいは数億円規模の減少が続く状況です。

質問者:のれん償却費はこれまで年間8億8,000万円でしたが、この程度なくなるということでしょうか?

松谷浩一(以下、松谷):償却はすべて終わっていません。今期ののれん償却費は、昨年比で8億円の減少となります。同時公表している決算短信のセグメント情報の中で、のれん償却と未償却残高の情報を開示しています。今お伝えした数字は、短信の17ページにある2021年度の償却額と残額です。

質問者:今年度の1年間では8億円減るという理解でよいでしょうか?

松谷:おっしゃるとおりです。昨年度比でマイナス8億円と見ていただければと思います。

質疑応答:メディア事業の構造改革について

質問者:メディア事業では構造改革の推進と、新領域への積極的な費用投下を挙げています。構造改革は先ほど社長がお話ししていた「BSスカパー」のことでしょうか? 構造改革の中身と、新領域の投資の中身を教えてください。

小川正人氏(以下、小川):基本的に、構造改革については費用の効率化を進めています。先ほど米倉がお伝えした「WAKUWAKU JAPAN」や「BSスカパー」の終了など、これまでは衛星放送だけで収益のほとんどを上げてきましたが、BtoCだけでなくBtoB事業へも展開し、これまでの構造から大きく変化させて収益の多角化を図ります。

質問者:通常、サービスが終了する時は費用がかかると思いますが、プラスで利益に貢献するか、マイナスとなるのか、どちらでしょうか?

小川:「WAKUWAKU JAPAN」は2021年度中に終了したため、2021年度に経費の計上を完了しており、2022年度は、2億円から3億円くらいのプラスとなります。「BSスカパー」は10月末まで継続するため、2022年度におけるプラスマイナスはほとんどありません。終了にあたり経費はかかりますが、影響は軽微です。

質疑応答:今後5年間のキャピタルアロケーションについて

質問者:5年くらいのキャピタルアロケーションを示してほしいと思っていたため、計画を出したことは非常に驚きでした。これは「本当に変わらなければいけない」という危機感の表れでしょうか?

また、計画の中身ですが、株主還元については今後5年間で400億円ということですが、そうすると、年間80億円となります。現在の年間配当は52億円ですので、かなり積極的に株主還元を行うということでしょうか?

また、設備投資の1,000億円を5年で割ると200億円ですが、衛星の打ち上げ計画のみでは200億円まではいかないと思います。こちらの背景を教えてください。

最後に、成長投資は5年間で1,200億円ということですが、これは今回のNTTのような事業投資を行うということでしょうか?

米倉:私が社長になって3年経ちましたが、今回、このようなプレゼンテーションをしたのは、「衛星放送が陳腐化しているのではないか?」といったスカパーJSATの将来に危機感があるためです。

我々の原点に立ち返り、あらためてスカパーJSATの強みについて考えました。1989年に民間衛星1号機を打ち上げたパイオニアとして、群雄割拠するプレイヤーの中で同じようなことを追っても、我々の強みやユニークさを出すことはできません。そのため、何を行うか明確に示すために、5年のキャピタルアロケーションを提示したということです。

キャピタルアロケーションの中には、一昨日発表したNTTとの提携を通した投資が内包されています。もちろん思いつきで始めたのではなく安全保障や静止衛星分野、スペースデブリ関係、Universal NTNや光データ中継などにより200億円から300億円、さらには1,000億円のイメージを積み上げた内容になっています。したがって、このキャピタルアロケーションは投資とイメージしていただければと思います。

もちろん真水の投資ではなく、借入によりレバレッジを効かせることになりますし、宇宙事業については、これまでの重厚長大型のビジネスとは違う側面があるため、親会社保証というエクスポージャーが積み上がることもあると考えています。

株主還元に関してはおっしゃるとおりです。経営者としても今の株価をいかがなものかと思っています。そのため、キャピタルアロケーションでは、既存の投資や成長投資、そして株主還元と併せてみなさまにお示ししたかったということです。

成長投資は実は宇宙新領域だけに偏らず、配信やコネクテッドTVの領域でもしっかり投資していきます。つまり、M&Aのようなものも当然あると思いますし、ドングル開発についても投資していきますが、10年後に「ドングル」というデバイスがあるとは思っていません。

しかしながら、衛星放送や動画配信という導線、さらに「ドングル」というインフラも持っているスカパーJSATと組みたい、コラボしようと思われる組織にならなくてはなりません。

スライド18ページのとおり、「SVOD」「TVOD」「AVOD」のプレイヤーから見て、衛星放送や動画配信、それ以外に広告データ関係のインフラを持つプレイヤーである「スカパーと組もうじゃないか」となるように、時間、資金、人材を投入することを、キャピタルアロケーションの眼目にしています。

質問者:既存の設備投資について、5年間で、年間200億円くらい投資するということでしょうか?

米倉:おそらく均等に200億円ではなく、ばらつきがあると思います。スライドに「顧客管理システム等」と記載しておりますが、5年間トータルのイメージとして1,000億円くらいとなります。

質疑応答:「BSスカパー」の終了について

質問者:「BSスカパー」の終了についてです。小川さまより構造改革は費用の効率化を図る、また、社長より衛星放送に対して危機感があるというお話がありました。

「BSスカパー」の終了と、社長の危機感が結びつくのであれば、あらためて理由を教えてください。

米倉:まず、衛星放送に対する危機感について、私自身は衛星放送は絶対になくならないと思っています。ヨーロッパで起きていることもそうなのですが、ご存じのとおり、世の中はさまざまな地政学的な変化が起こります。その中で光通信やケーブルはハイブリッドを採用していますが、何が起きるかわかりません。特に、自然災害がある日本のような島国では、衛星という導線を利用した通信や画像処理などは決してなくなりません。

私がお伝えしたかったのは「それでは成長できないぞ」ということです。それを基礎のコア収益力として、さらに成長しなければならないという意味での危機感ということです。

また、「BSスカパー」については、先ほど小川がお伝えしたとおり、「WAKUWAKU JAPAN」と同様に、一定のお客さまを取り込むためのツールとして「BSスカパー」の任務は終わったということです。2つのチャンネルを持っているため、経費的な要因もあります。

ほかの方からもこちらの終了において「プラスと出るのか、マイナスと出るのか?」という質問がありましたが、今年の10月まで「BSスカパー」は放送しているため、浮いた経費は相殺されます。

そして、来年度以降は費用を抑えるため、2021年度と比べるとプラスになります。そのため、こちらを利用し、2030年に向けてメディア事業では500億円規模の投資を考えています。

質問者:「BSスカパー」は顧客を取り込むツールとしての任務は終わったと考えているとのことですが、このチャンネルが近年は収益を生んでいないという現実があったということでしょうか?

小川:収益を生むというよりも、もともと「BSスカパー」は契約者の方々に無料で提供しており、「こんなにおもしろい番組をやっているよ」とチャンネルの紹介をしたり、特集を提供したりという機能を担ってきたチャンネルです。

質問者:今後において「BSスカパー」を使った新たな顧客獲得は、少し難しいということでしょうか?

小川:現在はさまざまなSNSが非常に発展しており、あらゆる手段で動画を見せてお客さまを誘引できるようになりました。また、SNSのほうがタイムリーに細かいマーケティングができるという利便性もあります。米倉が役割が終了したとお伝えしましたが、他の手段で十分代替できると考えています。

質問者:これまでの10年間で製作されたオリジナルドラマや、放送中の番組について、終了後の計画など、決まっているものがあれば教えてください。

小川:それぞれのコンテンツごとにファンの方がいるため、夏くらいにはダイレクトに通知し、番組をどのようにしていくかを伝えようと考えています。現時点において、番組ごとの詳細は決めていませんが、今後は検討してきちんとご案内していきます。

質問者:小川さまからSNSについてのご発言がありましたが、例えば公式サイトにおける動画配信サービスなども考えていますか?

小川:現在、我々が注力しているのが「番組配信」と呼んでいるものです。放送契約している方は放送チャンネルやコンテンツを視聴でき、すべてのコンテンツではないものの、同時配信もしています。

放送契約をすれば、放送でも配信でも視聴できるという提供機会の拡大により、これまでの「BSスカパー」に代替できると考えています。

質疑応答:今後5年間のキャピタルアロケーションと利益の関係性について

質問者:「今後5年間のキャピタルアロケーション」と「2030年に向けて」の関係性についておうかがいします。この5年間は投資期間ということですが、この間の利益のレベル感についてどのようなイメージを持たれていますか?

米倉:一昨日のNTTとの記者会見の時にもお話ししましたが、少しでも収益をキープしようというビジネスのイメージからすると、まずは2024年に400億円くらいの売上ベースで、税引後利益を20億円としています。

宇宙事業に関しては、日進月歩でいろいろなことが起こるため、時間軸や収益の出方が非常に見えにくいところもあります。イメージとしては、少なくとも2024年以降には20億円、最低でも2桁億円を積み上げていくということです。

コンステレーションになるのか、宇宙のプラットフォーム的なインフラになるのかはわかりませんが、4年後、5年後に担保価値がきちんとできあがってスケールメリットが出てくると、単年度で2桁億円以上になる可能性もあります。

ご存知のとおり、俗に言われる宇宙関係ビジネスは世界で40兆円くらいの市場規模があります。5年先、6年先に市場規模が3倍、4倍となると、120兆円になります。

この内訳としては、現在も打ち上げの仕事などいろいろありますが、実はそれはあまり大きくなく、3分の1以上は宇宙データや宇宙RANの関係など、プラットフォームを使ったようなサービスです。おそらくこの構図は、5年後、6年後、7年後に120兆円規模になっても変わらないだろうとイメージしています。

これは社内外に言っているのですが、やみくもに言っているわけではありません。そこに対する我々の資産の積み上げとして、宇宙事業で通信や衛星放送というサービスを行ってきました。

このような過去のパフォーマンスから、少なくともROAで3パーセントから4パーセントで回すことを頭に描きながら、今回の数字を作っているということです。

質問者:そうすると、5年くらいは10億円から20億円レベルの積み上げが続き、2027年以降にある程度回収期を迎えて、250億円になるイメージでしょうか?

米倉:そのとおりです。ざっくりですが、そのようになるイメージです。

質疑応答:今後の投資額について

質問者:1つ前の質問と絡んでいますが、考え方を教えてください。今回、5年間のキャピタルアロケーションを示していただいたのはありがたいのですが、特にメディア事業の5年はかなり長いと思います。

先ほど社長からもお話がありましたが、市場環境や技術の問題などがかなり変わっていく分野だと思います。今回メディア事業で500億円、宇宙事業で1,500億円など枠を決めていますが、投資は行っても回収できない可能性がないわけではないと思います。

この枠について、もう少し柔軟性と言いますか、状況を見るようなことは想定しているのか教えてください。

米倉:おっしゃるとおり、経営はよい意味でも悪い意味でも朝令暮改的な部分もありますし、柔軟に進めなくてはいけないと思います。

おそらく今までの5年、10年とは違い、今後の5年、10年はかなりの勢いで技術革新が進むと思います。例えば、「ドングル」に関しても開発投資を行いますが、3年後や5年後にはアプリケーションに変わっている可能性があります。

そうなった場合には、「ドングル」へのさらなる投資は行いません。ベストアベイラブルな技術を見て、投資の矛先を変えることはあると思いますし、時間軸を変えていくこともあると思います。

一方で、我々はHAPSを使ったUniversal NTNのような構想を考えています。今はエアバスをイメージしていますが、HAPSもいろいろな技術が出てくる可能性があるため、違うものが出てくればそれに変えることもあります。

それこそ、30機や40機の多くの小さなHAPSではなく、200億円、300億円規模の飛行船型のプラットフォームを置くということが5年後に出てくる可能性もあると思います。

誤解のないようにしたいのですが、1,000億円の枠、1,200億円の枠と決めたものを消化するのが目的ではありません。あくまでも経営として正しいところにお金と人を投資し、その結果をTime to Timeで見ながら、レビューをして判断していくということになりますので、私は枠という言葉は一切使うつもりもありません。

ただし、5年後への我々の覚悟や意志をクリアにしなければ、投資のイメージが湧かないと思います。また、資産の投下規模について「無謀なことをやみくもに行っているわけではない」とお伝えしています。

そのため、大きな部分ではNTTと一緒に事業を行うということで、エクスポージャーのリスクや技術的なマネジメントリスクを分散するとご説明しています。

質疑応答:今後のメディア事業のセグメント利益の割合について

質問者:スライド18ページに、メディア事業の成長のストーリーをイメージした図が掲載されています。右端に「2030年目標 セグメント利益50億円」とあり、左側にCTV事業から衛星放送事業までの6つの事業が並んでいます。

2030年時点のセグメント利益は50億円が目標ということですが、各事業の割合として、6つの事業のうちどちらが稼ぎ頭になっていくのか、イメージがあれば教えてください。

米倉:明確に50億円のイメージがあるわけではありません。例えば、先ほどお伝えしたとおり、ドングル開発や広告PFのなどのデバイス構築、パートナリングによる他社への資本投下、業務提携などの繰り返しになると思います。

それがどのようなタイミングで出てくるかによって、P/L上の取り込み利益が増えたり、償却が出てくるなど、組み合わせになると思います。

ですので、現在の動画配信事業やFTTH事業における数字はお伝えできるのですが、チャレンジとなるCTV事業、メディアソリューション事業、リアル事業の数字はお伝えしにくいところです。

ただし、今見えているところでは、コネクティッドTVやメディアソリューション事業はBtoBの仕事が増えると思いますので、収益が上がってくるとしたら少し大きくなると想定しています。

一方、リアル事業はファンサービスの部分が大きなウエートを占めます。今配信しているブンデスリーガのような試合を我々が興行権を持って行ったり、BtoCのビジネスですので、2桁億円云々という大きな話ではないイメージがあります。

小川:少し補足します。現在は衛星放送事業とFTTH事業でセグメント利益を出していますが、残念ながら衛星放送の契約者が少しずつ減少しています。その中で多角化を進め、BtoBのコネクティッドTVやメディアソリューション事業の部分を大きくしていくということです。

その間に、毎年10万件ほどの増加が続いているFTTH事業も大きな柱になっていくと認識しています。

質疑応答:2030年に向けた宇宙事業の投資の内訳について

質問者:今後の投資について、宇宙新領域は「2030年に向けて1,500億円規模」というお話がありましたが、内訳について教えてください。

福岡:1,500億円という数字は、もちろんやみくもに「これくらい」という想定で作ったものではありません。先ほどの投資の枠ではありませんが、今後の状況によって柔軟に対応していきたいと思っています。

また、宇宙事業の新領域の発展のために1,500億円を掲げていますが、大きく6つくらいの分野を想定しています。このうちの2つは、一昨日NTTと始めた協業に関わる部分です。

資料でもお伝えしたとおり、具体的にはいわゆるUniversal NTNと呼ばれるHAPSや、LEOと言われる低軌道衛星、また、従来型の静止衛星の航空機なども組み合わせた新たな多層的な宇宙のネットワークインフラを作っていこうという部分が非常に大きくなっています。

また、光データ中継では、観測衛星のデータをよりリアルタイムに行い、観測衛星ビジネスでは当社も衛星画像などを販売していますが、QPS研究所などをはじめとする事業者との協業の中で、競争上の優位を持つための投資があります。この2つで出資1,500億円の半分近くを想定しています。

それ以外に、グローバル事業をさらに推進させるための新たな静止衛星の打ち上げを念頭に置いた投資があります。

また、スペースインテリジェンスと呼んでいる我々のデータインテリジェンスビジネスをより拡大していくため、解析システムの高度化も考えています。現在も提携先を広げつつありますが、さらにこの分野を広げていくには、海外も含めた観測衛星事業者、あるいは解析オペレーターへの出資も念頭に置いています。

安全保障系では宇宙状況やデブリの監視など、今後新たに出てくるニーズに応えるための投資や、我々が運用面や技術面で培ってきたものを活用するため、地上拠点を利用したさまざまなサービスの拡充があります。

例えば、低軌道衛星にはゲートウェイが世界各地に必要ですので、そのようなものを提供したり、官公庁系の非常に専門的な地上局の設備を提供するなどを含んでいるということです。

そのような意味では、Universal NTNや光データ中継などNTTとの協業で進めていくものが半分、その他に今お伝えした4つの分野を半分として積み上げています。

質疑応答:NTTとの取り組みのメリットについて

質問者:御社がNTTと組むメリットについて、先ほどリスク分散などのお話があったかと思いますが、そのあたりをもう一度教えてください。

米倉:ご存じのとおり、NTTは我々と比べたらはるかに大きな組織で、地上に大きなインフラも有しています。AIを使ったコンピューティング技術やネットワーク系の技術もトップレベルです。

また、NTTにはIOWN構想があります。この取り組みの中で、「衛星システムや周波数管理、衛星の運用など、我々の知見があるところがうまくはまり込むよね」と以前からお話があり、昨年の提携につながっています。

グローバルで外国人投資家もいるため、我々が単独で行うと、当然ファイナンス面での強さを懸念する人もいます。そのような意味からもNTTと半々で事業を行うことは、資金調達面でも有効で、「スカパーJSATに技術的なバックグランドはあるのか?」と聞かれた時に、NTTの技術力がアピールできるようになります。

ただし、我々はNTTに包含されるわけではないとご理解いただきたいと思います。NTTは我々のことを当然リスペクトしていただけるということで、半々というかたちになっています。

我々が今回作った会社を通して行っていく一つひとつの事業が具現化していくことが重要ですが、説得力や資金調達時にも、この2つのコンビネーションは世の中にアピールできることをメリットとして考えています。

質疑応答:市場からの宇宙事業の評価について

質問者:市場からの評価についてです。宇宙事業は非常に将来性がありますが、他社と比べるとそれほど評価されていないように見受けられます。御社はメディア事業を持っており、そちらとのシナジー効果がうまく出せていないことも原因としてあるかと思いますが、そのあたりはどのようにお考えでしょうか?

米倉:そのようなご指摘は正しいと思います。投資家によっては、メディア事業が足を引っ張っていると考える方もいると思います。ただし、先ほどもお伝えしたとおり、夢を持っている会社でなければいけないと私は思っています。

「フィジカル空間とサイバー空間の融合」と言いましたが、確かに現在の宇宙ビジネスはほとんどBtoB、BtoGに近いです。

しかし、例えばスマートフォンを持っている人たちに対して、BtoCのビジネスで宇宙空間の画像を見せるなど、夢を持つことはできないかとも考えています。

メディア事業の存在があるため宇宙事業が評価されていないというのは、ご指摘としてはそのとおりです。そのため、一昨年以降は、「スカパーJSATは放送会社ではなく、あくまでメディア事業と宇宙事業のビジネスを行っているユニークな会社です」と、コーポレートとしてのアピール活動を続けています。

また、BtoB、BtoGのみならず、BtoCのビジネスを意識し、宇宙事業を抱えているスカパーJSATとして、「ほかの放送事業者とは違う存在だな」「コンテンツプロバイダではないぞ」ということを理解してもらうための、一連の打ち出しのご説明になっているということです。

質疑応答:総資産の増加要因について

質問者:総資産についてです。これまでは非常に増加傾向にあったと思いますが、どのような要因があったのでしょうか?

松谷:総資産の合計額ですが、2016年、2018年、2019年の3年間で、衛星の打ち上げ、あるいは直接我々が保有しないものも含めて9つくらい計上しています。

それらが資産化されることにより、総資産は昨年度がピークだったと思います。今後は多少減っていく中で、先ほど打ち出した成長投資などで資産が変化していくと理解しています。