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明田篤氏:こんにちは、トビラシステムズ株式会社代表取締役社長の明田篤でございます。まず当社の事業についてご説明させていただき、その後、2022年10月期第1四半期の決算概要、中期経営計画の進捗状況についてご説明いたします。それでは、事業概要について説明いたします。

企業理念と行動指針

当社は「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」を企業理念として掲げています。この企業理念に基づき、「誰かがやらなければならないが、誰もが実現できていない社会的課題の解決を革新的なテクノロジーで実現すること」を事業方針の軸としています。

私たちが社会の課題解決に挑戦する理由

当社では人々が「迷惑・不快」と感じ、「安心・安全」を脅かされる行為を『グレーゾーン犯罪』と呼んでおり、詐欺やグレーゾーン犯罪における被害額は全体で4兆円と言われています。

そのなかでも、振り込め詐欺や架空請求詐欺など、特殊詐欺は、2021年度に約1万4,500件の認知件数、約278億円の被害が発生しました。特殊詐欺の手口は多様化しており、被害総額としては年々減少傾向にある一方で、認知件数は増加しています。さらに、特殊詐欺の手段は電話が88.9パーセントであり、最後は人に直接働きかけていることがわかります。

ウイルス対策やファイアウォールなど、コンピューターを守るセキュリティは進歩を続けていますが、「人の行動が弱み」となってしまうことは多くあります。私たちは、「人を守る」という視点で事業を推進しており、今後も詐欺犯罪や「グレーゾーン犯罪」など迷惑行為に悩む人をなくし、誰もが安心して生活できる社会を実現することを目指しています。

会社概要と沿革

当社の事業は、私の祖父が詐欺の被害に遭ったことで「迷惑電話に悩んでいる祖父を助けたい」という思いから始まりました。2011年6月に「トビラフォン」の販売を開始したのち、警察庁と特殊詐欺電話防止に関する覚書を締結し、全国の特殊詐欺に関する電話番号などの情報提供を受ける体制を、日本で唯一構築することができました。​

そして大手通信キャリアに迷惑電話フィルタサービスをオプションパックとして導入いただき、今の主力事業へと成長していきました。

トビラシステムズの特徴

迷惑情報フィルタ事業は、当社が業界のトップです。類似のサービスは存在しますが、国内に競合と呼べる企業・サービスは現在のところ存在しておらず、当面、新規参入のリスクに晒される可能性は低いと考えています。参入障壁が高い理由として3つあります。

1つ目は、警察との連携です。当社が唯一、国内で警察との連携を行っており、詐欺に使われた電話番号を提供いただいています。これにより、他社にはまねできない、精度の高い情報を入手することが可能となっています。

2つ目は、ユーザー数が多いことです。当社サービスのユーザー数は1,400万人を超えており、同じ規模の利用者を新規参入し、獲得することは難しいと考えます。多くのユーザーから得られる統計情報を活用していることから、ユーザーが多いほどデータ精度が高まり、先行者である当社が有利な状況となります。

3つ目は、通信事業者への採用です。当社サービスは大手通信キャリアに採用されており、それが、ユーザー数の拡大へもつながり、参入障壁を強固にしています。

これらの3つの強みで構成されたデータベースが当社の基盤であり、このデータベースの価値を高め、現状の市場だけでなく、様々な市場へ展開していきたいと考えています。

事業セグメント

事業の売上は、2021年10月期において、迷惑情報フィルタ事業で売上全体の94.5パーセントを構成しています。​その中でも特に売上構成比が大きいのがモバイル向けフィルタサービスです。​売上構成比は約80パーセントとなっており、今後も安定的な収益を見込んでいます。​

次に固定電話向けフィルタサービスが、約10パーセントです。​固定電話向けサービスの成長は、モバイル向けよりも長くかかる可能性がありますが、モバイルよりも大きな成長可能性があると考えているサービスです。

ビジネスフォン向けフィルタサービスの​現状は約4パーセント程度ですが「将来の収益の柱に育てたい」という思いから、現在積極的に投資を行っているサービスです。​「その他事業」は積極的に展開しない方針ですので、説明は省略します。

サービス内容

​​展開している3つのサービスについて簡単にご説明します。1つ目はモバイル向けフィルタサービスです。大手通信キャリアと提携し、各キャリアが提供するオプションパックに含まれるサービスの1つとしてスマホアプリというかたちで、迷惑電話や迷惑SMSのフィルタリングサービスを提供しています。また、昨年M&Aを行い、広告ブロックアプリ「280blocker」の提供を開始し、迷惑電話・SMS対策に加え、迷惑Web広告対策までカバーできるようになりました。

2つ目は、固定電話向けフィルタサービスです。もともとは固定電話機に取り付けるアタッチメント型の端末を販売していましたが、現在の販売モデルの主力はホームゲートウェイです。ご自宅のIP電話を契約する際のオプションパックとして通信キャリアを通じて展開しています。

3つ目が、ビジネスフォン向けフィルタサービスです。現在「トビラフォン Biz」「トビラフォン Cloud」「Talk Book」の3つの製品を法人向けに提供しています。「トビラフォン Biz」は、通話情報の録音や不要な営業電話など迷惑電話の自動拒否により、業務の効率化を図ることができます。

「トビラフォンCloud」は通話アプリで、スマートフォンにアプリを入れるだけでオフィスの内線電話と同じように内線・外線の受電が個人のスマートフォン上でできる商品です。

そして、2022年1月12日より提供を開始した「Talk Book」はAI搭載型の営業ツールです。IP電話で架電できるほか、通話録音、通話内容の文字起こし、感情分析など、営業活動における通話内容の解析機能を搭載しており、主にインサイドセールスの営業担当者にご利用いただいています。

モバイル向けの成長戦略

迷惑情報フィルタ事業の成長戦略についてご説明します。まず、モバイル向けフィルタサービスです。モバイル向けは通信キャリアのオプションパックのスマホアプリと、自社アプリとして迷惑情報データベースを活用したフィルタリングサービスを提供しています。

迷惑電話ブロックサービスは大手通信キャリアすべてで導入いただいていますが、迷惑SMSブロックサービスはその一部のキャリアでの導入にとどまっています。当社サービスの利用者数は毎月順調に伸びていることから今後の契約の更改などを通じ、すべての通信キャリアに迷惑SMSブロックサービスを導入いただくことを目指し取り組んでいきます。

また、オプションパック契約者数は当社推定で約3,600万人いますが、月間利用者数から考えて追加で費用を払うことなく利用可能なユーザーは約2,235万人以上も存在しているため、潜在ユーザー層への働きかけも行っていきます。

自社アプリには、「ビラフォンモバイル」と「280blocker」があります。「ビラフォンモバイル」は迷惑電話とSMSをブロックするアプリであり、「280blocker」は迷惑広告をブロックするアプリです。主に、格安スマホに移行したユーザーやオプションパックに加入していないユーザーに向け、プロモーション活動を推進していきます。

固定電話向けの成長戦略

固定電話向けフィルタサービスの成長戦略についてご説明します。固定電話全体では、約5,237万件の契約が存在していますが、当社サービスの月間利用者数は約31万人にとどまっており、その成長余地は非常に多くなっています。

先月からは、KDDIとの共同により、国内で初めて固定電話への迷惑電話の着信を、専用機器不要で自動遮断する「迷惑電話自動ブロック」の提供を開始しました。

これにより、KDDIと連携しているケーブルテレビ会社を通じ、620万回線のユーザーへアプローチが可能となりました。成長のカギはアライアンスだと考えていますので、引き続き積極的に活動していきます。

ビジネスフォン向けの成長戦略

ビジネスフォン向けサービスの成長戦略についてご説明します。現在「トビラフォン Biz」「トビラフォン Cloud」「Talk Book」の3つのサービスを法人向けに提供しています。中でも、オフィスに設置するだけで、通話録音や迷惑電話を自動で遮断できる「トビラフォン Biz」は昨年NTT東日本、西日本の光セレクトショップに登録され、東西の代理店や特約店で急速に販売が加速しています。

また、「トビラフォン Biz」の料金形態は、端末料金と5年分のライセンス料がセットになった「バンドルパック」が主流で、販売時に一括で端末料金と5年分のライセンス料をお支払いいただきます。

P/Lでは、端末料金は一括計上、ライセンス料は5年分を按分して売上計上する一方、キャッシュは販売時に獲得できるため、キャッシュフローには非常によい販売方法をとっています。

「トビラフォン Cloud」や「Talk Book」は、オフィスのDXを進めるサービスとなっています。「トビラフォン Cloud」は、アプリを入れるだけで、自分のスマートフォンに、社用と私用の2つの機能を持たせることが可能となります。

また、AI搭載型営業ツール「Talk Book」は、通話内容の分析が可能なため、効果的な営業スキル向上に貢献します。今後、ユーザーのニーズを速やかに取り入れながら、さらなる機能拡充に取り組んでいきます。

当社と連携しているシンカ社の「カイクラ」も含め、ビジネスの電話に関するニーズを多方面から取り込んでいきます。

業績ハイライト

2022年10月期第1四半期の決算概要についてご説明します。売上高は前年同期比16.7パーセント増の3億9,000万円で着地しました。営業利益は前年同期比9.2パーセント増の1億3,000万円で、営業利益率は34.3パーセントです。前年同期比でプラスとなっていますが、通期では、合同会社280blockerの吸収合併によるのれん償却、「トビラフォン Biz」の出荷増に伴う売上原価の増加などにより一時的に減益の計画です。

主力のモバイル向けフィルタ事業は売上高前年同期比17.3パーセント増と順調に増加しています。特に、当社が積極的に投資している、ビジネスフォン向けフィルタ事業の売上高は、前年同期比2.6倍の成長となっています。

昨今のウクライナ情勢が与える、当社業績への影響については、軽微であると考えています。当社は国内市場でのサービス展開を行っており、為替の変動リスクは受けません。また「トビラフォン Biz」などの製造に関する部品についても在庫を適切に管理しています。

FY2022 1Q 対前四半期、対前年同期比

第1四半期の売上高は3億9,100万円と、四半期の業績において過去最高を達成しました。対前四半期では6.9パーセントの増加、前年同期比で16.7パーセントの増加であり、着実に成長を続けています。営業利益は1億3,400万円、対前四半期では4.0パーセントの増加、前年同期比で9.2パーセントの増加です。

FY2022 通期業績見通し

2022年10月期の業績計画に対する進捗状況についてご説明します。売上高の進捗率は24.0パーセントで、営業利益、経常利益については25パーセントを上回っていますが、通期の業績見通しに変更はありません。

期末にかけて徐々に売上高が高くなる傾向があり、通期計画に対して24.0パーセントという進捗状況は、ほぼ計画どおりと考えていただければと思います。

売上高四半期推移(ストック収益、フロー収益)

売上高の四半期推移についてです。グラフは、ストック収益と一過性のフロー収益の内訳を分けて記載しており、当社の基盤であるストック収益が着実に成長しています。

フロー収益が対前四半期で2.6倍の増加となっていますが、これは「280blocker」の販売や「トビラフォン Biz」の端末料金によるものです。

売上内訳

売上の内訳について説明します。主力の迷惑情報フィルタ事業は3億7,700万円、全体の売上構成比で約96パーセントの構成、前四半期比8.0パーセントの増加です。主力であるモバイル向けフィルタサービスの売上については3億1,100万円、前四半期比5.7パーセントの成長となりました。

固定電話向けの売上は3,400万円、前四半期比11.7パーセントの減少となりましたが、前年に一時的な切替需要で売上が伸長したことから減少となっています。KDDIとの共同により、2月16日から固定電話向けに、専用機器不要で自動遮断する「迷惑電話自動ブロック」サービスを開始しており、売上高などは今後の決算に計上されます。

ビジネスフォン向けの売上は3,100万円、前四半期比55.0パーセントの増加となりました。NTT東日本およびNTT西日本のセレクトアイテム登録により「トビラフォン Biz」の売上が拡大しており、前年同期比約2.6倍で着地しました。

モバイル向けフィルタの主な売上構成比

主力のモバイル向けフィルタの売上構成比です。各キャリアの格安プラン導入に伴い、ユーザーの移行とともにオプションパックから離脱する傾向が1年を通してみられ、「契約者数×単価」の契約モデルで減少が続きましたが、どの契約形態においても、月間利用者数は毎月順調に増加しています。

今後も格安スマホへの移行の流れが継続すると想定し、「契約者数×単価」の契約において計画でも減少傾向を見込んでいますが、利用者数の増加が売上の増加に連動する契約もあるため、今後も引き続き月間利用者数を増加できるようにキャリアとの連携もとりながら施策を打っていきます。

売上原価推移

第1四半期の売上原価は1億300万円です。一部予算の執行後ろ倒しにより、対前四半期の総額では減少していますが、概ね計画どおりです。また、他勘定振替率は、プロダクト運用稼働を増大させたことにより、減少しています。

販管費推移

第1四半期の販管費は、1億5,300万円で、対前四半期約25.3パーセント増加となりました。その他費用の増加は、「280blocker」の買収に伴うのれん費用、営業広告予算の追加や営業活動の増加による交通費などが主な要因です。

広告宣伝費については、第1四半期については前四半期から減少させる計画であり、「280blocker」のお年玉キャンペーンなど、効果的なキャンペーンを実施しています。

営業利益推移

第1四半期の営業利益は1億3,400万円で、営業利益率は34.3パーセントです。営業利益は、前年同期比で109.2パーセントの成長、前四半期比104.0パーセントです。通期の計画では合同会社280blockerの吸収合併によるのれんの償却や「トビラフォン Biz」のたな卸原価増加のため、減少の見込みです。

コスト推移

コスト推移です。先ほどと重複しますので説明は省略します。

BS推移

B/Sに関する状況です。​配当を行った影響から純資産が減少していますが、前受金の受領により現預金は増加しています。自己資本率は65.9パーセントであり、財務安全性は引き続き高く保持しています。

中期経営計画の目標

2021年12月10日に発表した、2024年を最終年度とする中期経営計画における今期の進捗状況についてご説明します。売上高は毎年約20パーセントの成長を維持し、2024年10月期では、売上高25億円を目指す計画です。

営業利益は、2022年10月期は合同会社280blockerの吸収合併によるのれんの償却などがあるため、一時的な減益となりますが、2023年10月期には回復し、年平均成長率52パーセントと高い成長率を目指していきます。

モバイル向け、固定電話向けフィルタサービス

それぞれの事業について進捗をご説明します。最初にモバイル向けと固定電話向けサービスの成果です。モバイル向けサービスついては、当社アプリ「トビラフォンモバイル」が迷惑電話対策アプリとして初の「優良防犯電話」に認定されました。「280blocker」については、複数のキャンペーンを行い、認知拡大に努めました。

固定電話向けサービスにおいては、2022年2月16日からKDDIのケーブルテレビの契約者を対象に、専用機器が不要で当社サービスが利用できるオプションパックの提供が開始されました。売上に計上されるのは第2四半期からですが、他の会社とも、当社サービスが利用できる環境の提供に向け、アライアンスを進めていきたいと考えています。

ビジネスフォン向けフィルタサービス

次にビジネスフォン向けサービスについてご説明します。こちらは「トビラフォン Biz」と「トビラフォン Cloud」に分けて説明します。まず「トビラフォン Biz」は、NTT東日本・西日本のセレクトアイテム化により、従来よりも受注数が加速しています。「トビラフォン Biz」は代理店販売での販売を行っていますので販売パートナーとの連携もとりながら今後のさらなる受注数拡大に向け進めていきます。

「トビラフォン Cloud」は、今年1月12日より新機能が追加され「03」などの市外局番(0ABJ番号)での通話が可能となりました。以前は、問い合わせがあっても0ABJ番号が使用できなかったために契約に至らなかったことが課題としてありましたが、徐々にではありますが、機能追加によりリード件数や受注も増えてきました。

同じく、1月12日より販売がスタートしたAI搭載型営業ツール「Talk Book」も、トライアルの申込だけでなく、販売も進んでいます。今後もユーザーからのご意見を聞きながら機能拡充を行っていきます。

FY2022の注力事項

中期経営計画の達成に向け、この2022年10月期に注力する事項については、2つのことを考えております。

1つ目は、モバイル向けで、すべての通信キャリアのオプションパックへの迷惑SMS機能導入を目指してまいります。昨今、SMSを使い宅配業者や金融機関、ネット通販事業者などを装って個人情報を盗み出すフィッシング詐欺は、近年被害が拡大しており、深刻な社会問題となっています。

フィッシング対策協議会によると、2021年12月に6万3,000件以上の被害が報告されており、SMSはメールと比較して本物と誤認されやすい傾向があるため注意が必要とされています。各キャリアにおいても対応を推進されており、当社のサービスを採用していただけるよう注力してまいります。

2つ目は、ビジネスフォン向けであり、なかでも新サービス「Talk Book」のプロダクトマーケットフィットを推進してまいります。

「Talk Book」は通話録音、文字起こし、感情分析など、営業活動における通話内容の解析機能をセットにした営業ツールです。今年1月にサービスを開始し、ユーザーからのフィードバックを分析しております。

今年度は、営業ツールとして必要な機能を拡充することを目指すとともに、「Talk Book」が効果を発揮する市場の探索と選択を行っていきたいと考えております。

ESGに向けた取り組み

最後にESGに向けた取り組みの進捗状況についてです。環境への取り組みについては、TCFDの開示に向けた分析検討を開始しました。社会への取り組みですが「トビラフォンモバイル」がアプリとして初めて「優良防犯電話」に認定されました。

また、経済産業省から「はばたく中小企業・小規模事業者300社」選定を受けました。ガバナンス体制としては2021年11月に外部取締役のみを委員とする指名・報酬委員会の設置を行いました。持続的な成長に向け、ESGやSDGsへの取り組みにも今後力を入れていきたいと考えています。

今年度は新しい経営陣で挑むはじめての1年です。中期経営計画においても最初の1年ですので、掲げた計画の前倒しでの達成を目指し、取り組んでまいります。

今後ともトビラシステムズをよろしくお願い申し上げます。