事業内容
中山博登氏(以下、中山):それでは、2022年10月期第1四半期の決算説明をさせていただきます。初めてアシロのご説明を聞かれる方もいらっしゃると思いますので、あらためて我々がどのような事業を行っているのかをご説明させていただければと思います。
事業内容ですが、1つ目が主要事業である「リーガルメディア」、2つ目がリーガルメディアから派生した「派生メディア」、3つ目が「リーガルHR事業」という、3つの事業を展開している会社です。
ビジネスモデル
中山:各事業の収益の上げ方について、スライドにビジネスモデルを記載しています。一番上のリーガルメディアは、みなさまが飲食店などを探す時に、インターネットを利用するのをご想像いただくのが一番わかりやすいと思います。我々の場合は、飲食店を探したい方ではなく、法律問題に悩んで弁護士を探したい方がユーザーとなって、完全無料で弊社のサイト内で弁護士を探していただいています。
日根野健氏(以下、日根野):例えば、どのような法律問題で悩んでいる方がいらっしゃるのでしょうか?
中山:いろいろあるのですが、弊社では民事が中心で、例えば離婚のことで悩んでいる方などです。
日根野:離婚しようか迷っている方ですか?
中山:離婚しようか迷っていたりする方もいますし、離婚することが決まっているのですが、親権でうまく折り合わなかったり、財産分与の額がうまく折り合わなかったりということに悩んでいて、詳しい弁護士を探したい方などです。
日根野:「離婚 親権」などと検索しそうですね。
中山:そういった方が「Google」などで検索してサイトを探していただいて、弊社のサイトは登録やお金を払うことはないため、無料で弁護士を探すことができ、弁護士事務所に直接お電話いただいてすぐに相談することができます。
日根野:検索した人たちが、アシロのサイトに掲載されている弁護士を見て「こんな弁護士がいるんだ」と相談に行くということですね。
中山:そのとおりです。また、どのようにして収益を上げているのかですが、スライド左側の法律事務所から、毎月決まった定額の広告料を掲載料としていただいているのがリーガルメディアです。
そこから派生したのが派生メディアと呼んでいる事業で、派生メディアの中で大きいサイトとしては、転職エージェントや人材紹介会社を探せる「キャリズム」というサイトを運営しています。弊社では労働問題分野のサイトをリーガルメディアで運営しており、労働問題で雇用主と揉めた従業員の方は、その後そのまま居続けるより、転職することのほうが多いのではないかと考えています。ですので、労働問題から派生して作ったのが人材紹介会社を見つけられるサイトとして「キャリズム」を作っています。
日根野:それゆえ「派生」なのですね。
中山:そうです。リーガルメディアから派生したため、「派生メディア」と呼んでいます。こちらに関しても、ユーザーはサイト内で人材紹介会社や転職エージェントを無料で探すことができます。
我々の収益の上げ方としては、派生メディアでは顧客の人材紹介会社などから広告料をいただいています。リーガルメディアと違う点としては、リーガルメディアでは毎月決まった金額をいただいています。
日根野:弁護士事務所から「毎月何万円」というようなかたちでもらうということですね。
中山:はい、リーガルメディアに関しては「成果がいくら出た」「露出量が多かった・少なかった」というのは関係なく、固定額でいただいています。一方で、派生メディアに関しては「何人の転職希望者の登録があったか」というところで、送客数、登録のあった数に応じて成果報酬で広告収入をいただいています。
同じメディア事業ではあるのですが、リーガルメディアと派生メディアの収益形態が、定額か成果報酬かが一番違うポイントになっています。
スライド下部のリーガルHR事業では、転職希望の弁護士がユーザーとなります。
日根野:弁護士が転職を希望しているということですか?
中山:最近では転職する弁護士がさらに多くなってきていると思います。弊社のサービスはそのような弁護士の方に無料で登録いただけます。
こちらに関しては、どこかの人材紹介会社を紹介するのではなく、我々のコンサルタントがその方に合った転職先となる法律事務所や一般事業会社を探してご紹介し、転職するまで一緒にご支援します。
日根野:人材紹介業ですね?
中山:おっしゃるとおりです。人材紹介業のため、弁護士の転職が決定し入社したら、我々に一定の手数料が支払われるビジネスモデルになっています。これらがリーガルメディア・派生メディア・リーガルHR事業と、弊社の展開している3つの事業内容になります。
当社顧客基盤及び市場のポテンシャル
中山:主要のリーガルメディアのマーケットについてです。一般の方からすると、法律事務所が日本全国にどれくらいあるのか、あまりピンとこないと思うのですが、現在1万7,772事務所が存在しています。
一方で、弊社と取引しているのは627事務所です。全体から見ると、我々のシェアは3.5パーセントほどで、シェア拡大の余地がまだまだある、かなりポテンシャルの高い市場だと思っています。
日根野:かなり伸びしろがありそうですね。
中山:はい、開拓の余地はあります。「もっと早く開拓していくべきではないか」という声もよくいただくのですが、インターネットのメディア事業において重要なことは、我々の理念にも繋がる「関わってくださる方を幸せにしたい」という考え方だと思っています。
これは、相談したいと思っているユーザーもそうですし、広告掲載いただいた弁護士事務所にも収益を出していただいて、「広告を出してよかったな」と感じていただきたいと思っています。
そうなった時に、「先月の倍の顧客が取れた」「さらに倍取れた」といったように受注する金額や件数が一気に増えると、顧客が満足しているのか、満足していないのかを把握しきれません。
お客さまが一気に増えると、雑な支援になってしまう恐れがあります。そのため、我々としては顧客満足度を考えて、前期比20パーセント程度の成長がよいのではないかということで、あまり焦って取りきらないようにしている部分もあります。
そういった戦略で進めていますので、一気には広げていないのですが、十分なポテンシャルがある業界であり、伸ばしていけると考えています。
日根野:法律事務所といっても、1人の弁護士が小さなオフィスで運営している事務所もあれば、大きなオフィスで何十人の弁護士が働いている事務所もあると思います。御社の主なお客さまは、どのようなイメージで捉えたらよいですか?
中山:もちろん両者いらっしゃるのですが、顧客の数としては、少人数の事務所のほうが多くなっています。
大きなビルに入って、数十人、数百人規模という事務所は、そもそも国内ではそれほど多く存在しません。圧倒的に多いのは1人から3人くらいの事務所ですので、どうしてもそのような事務所が多くなっています。
一方で、我々のお客さまには、事務所自体を大きくしていきたいと思っている事務所もかなりいます。例えば、もともとは2人で事務所を始めたものの契約を開始して3年経ったら20人になったという事務所さまもいらっしゃいますし、最初は1人だったところ20人、30人になったというような事務所も多くあります。
以上が、弊社が主戦場として事業を展開しているリーガルメディアのマーケットの状況です。
22年10月期 1Q(21年11月-22年1月))決算サマリー
中山:2022年10月期第1四半期の決算概要をご説明します。前回、期末決算の時にもお伝えしましたが、我々はコロナ禍の影響も鑑みて、年次20パーセントほどの成長を業績予想としてお出ししています。
一方で社内では、最低でもCAGR 30パーセントをしっかり追っていくという考え方で取り組んでおり、第1四半期は比較的悪くない数字で着地できたと思っています。
日根野:これはかなりよい数字ではないですか? CAGRは売上高の成長率ですが、第1四半期の売上高の成長率は38.6パーセント増です。これはすごい数字ではないですか?
中山:比較的よかったとは思うのですが、一方で、事業課題も見えてきています。もっとしっかりした角度で成長し、株主価値を最大化に取り組んでいかなければいけないと思っています。
22年10月期 1Q予算進捗
中山:スライドは、通期の業績予想に対する進捗率で見たものです。売上収益は26パーセントほどの進捗ですが、リーガルメディアはストック事業となっていますので、第1四半期よりも第2四半期、第2四半期よりも第3四半期、第3四半期よりも第4四半期のほうが、顧客が増えていき、これまでの実績から見ると、年次で20パーセントずつ伸びていく形となります。
よって、リーガルメディア事業としては第1四半期が一番弱くなる時期です。その中で進捗率25パーセント以上に到達できているというのは、悪くはないところです。
しかし、先ほどお伝えしたとおり、CAGR30パーセントという目線では、もっとしっかり取り組んでいかなければいけない数字感であるとも考えています。
営業利益に関しても、進捗率としては悪くないのですが、もっと出来る部分があるとも考えています。
日根野:営業利益率もすごいですね。
中山:はい、もともと弊社は営業利益率が比較的高い事業を展開させていただいています。
日根野:今回は営業利益率30パーセント近くまで到達しているのですか?
中山:おっしゃるとおり、30パーセント近くとなっています。このような数字ではありますが、もっと高い成長の方にご期待いただいていると思っていますのでまだまだというところではあります。
事業別売上収益(四半期推移)
中山:事業別の売上収益ですが、リーガルメディアは年次で見てもしっかり伸びてきています。派生メディアは、前期の決算説明会でもご説明したとおり、コロナ禍の影響を受けて前期はかなり苦戦して、第4四半期にかけて戻ってきているとお話ししたのですが、お伝えしていたとおり戻ってきつつあります。
ただし、2020年10月期第2四半期を見るとおわかりいただけると思うのですが、本当に最盛期の頃にはまだまだ戻っていません。
日根野:派生メディアは、リーガルメディアから派生した分野の収益が元に戻ってきているという状況だと思います。先ほどの転職サイトなどへの送客の部分が非常に好調だったということですね。
中山:おっしゃるとおり、人材紹介会社への送客が非常に好調に推移しています。HR系の会社の決算の中で、「戻りつつある」「回復基調である」というリリースが多かったかと思いますが、求人自体は非常に活発に戻ってきていることを踏まえ、徐々にではありますが、戻ってきているという実感はあります。
しかしながら、コロナ禍前の好調だった状態まで戻ってきているかと言いますと、まだまだ戻る余地はある状況です。
今回の第1四半期の決算で言いますと、お伝えしたとおり、前期の第4四半期からコロナ禍前に戻りつつある状況をしっかり捉えていくことが出来たことと、リーガルメディアが引き続き安定的な成長を続けることによって、しっかり積み上がってきている状況です。
ストック収益/ストック収益比率(月次推移)
中山:派生メディアの調子が比較的戻ってきたことで、ストック収益の比率は若干下がってはいますが、まだまだ60パーセント程度のストック収益比率を保っていまして安定的に事業運営しているかたちになっています。
日根野:ストック収益比率と言いますと、全体の収益に対して、リーガルメディアで弁護士が毎月定額の掲載料を払ってくれている収益部分の比率のことですね?
中山:おっしゃるとおりです。
日根野:着実に積み上がっているということですね?
中山:そのとおりです。月額固定の収益が全体の60パーセント程度を占めています。毎月固定料金をいただいているため、大きく変動するといったことは起きづらい収益となっています。
日根野:安心な部分ですね。
中山:そうですね。安定できる収益があることで、積極的な投資も行いやすくなりますので、この比率は一定レベル意識しています。
ただし、攻める時は攻めなければいけませんので、ストックの比率にこだわりすぎて投資機会を失うことはないようにしたいとも考えていますが、安定さも失わずに事業展開していきたいと思っています。
日根野:スライドのグラフの赤色の部分に「ARR12億8,200万円」と記載があるのですが、この数字について教えていただけますか?
中山:リーガルメディアの月次の固定報酬を12ヶ月分積み上げた数字が12億8,200万円です。
表現が難しく、「何もしなくても」というのはおかしいのですが、基本的に伸びなかったとしても、年間で固定報酬が12億8,200万円は自然に入ってくるということになります。
日根野:1年間の売上として期待できる部分ですね。
中山:期待できているので、いろいろと攻めやすいかたちになっています。
コスト構造(四半期推移)
中山:コストは、そこまで大きな変動なくきています。前期の第4四半期は、上場関連のいろいろな外注費用が多くかかりました。それらのコストは圧縮しながら、事業投資側の外注関連費用に積極的に使っていったものの、第4四半期ほどは外注費用が出なかったため、コストもそこまで大きく変わらなかったかたちとなります。
ここから、人材採用を積極的に進めていきますので、人件費等のコストを追加していく部分はあると思うのですが、急に大きく変わってしまうようなことはないかと思っています。
日根野:コストの中で一番大きいのは広告費となっていますが、具体的にどのような広告を出すのですか?
中山:リーガルメディア、派生メディアともに、ユーザーに弊社サイトやサービスを知っていただくにあたり、我々でもインターネット広告を運用していまして、四半期単位で1億4,900万円のコストとなっています。
営業利益(四半期推移)
中山:営業利益を年次で比較すると、しっかり戻ってきていることが理解していただけると思います。ただし、我々事業サイドの人間は「まだまだできる、もっともっとできる」と思って取り組んでいるため、さらに上の数字を追っていきたいと考えています。
日根野:四半期ベースでは過去最高の利益となりますが、臨時的な要因があってこの営業利益になったのでしょうか?
中山:特段、臨時的な収益が出たというわけではなく、正常な事業運営をしていればこれくらいは出るという数字感です。リーガルメディアが今後積み上がっていけば、利益の絶対額も増やしていけると思っています。
1つ要因があるとすれば、全体の中では大きくない数字ですのであまり影響しませんが、リーガルHRで季節性要因があります。
転職時期として一番多くなるのが第2四半期の4月ですので、4月入社の方が比較的多くなって、少し固まった数字になる可能性はあると思います。
ただし、事業全体から見ると、リーガルHRはそれほど大きな数字ではなく、通期で見て大きく動くということはないと思っています。
事業別営業利益(四半期推移)
中山:事業別の営業利益のグラフです。リーガルメディアをしっかり成長させることができていることと、派生メディアの営業利益がしっかり戻ってきていることが特徴になるかと思います。
派生メディアで売上はコロナ禍前に戻ってきていないとお話ししましたが、利益面では過去最高水準となっており、これはコロナ禍でなかなかうまくいかない時に、筋肉質な体制になるよう、サイトやパフォーマンスの改善を行い続けた結果となります。
この筋肉質になった体制の上で、市場がさらに戻ってきてくれれば、もっと利益を出していけるだろうと思います。リーガルHRに関しても、前期までは事業単体で赤字でしたが、ようやく利益が出始めました。
22年10月期 1Q事業ハイライト
中山:1Q事業ハイライトはスライドに記載とおりです。
【リーガルメディア】 掲載枠数/顧客数
中山:リーガルメディアの掲載枠数と顧客数は、前年比20パーセントと順調に伸び続けています。特段、大口の顧客が入ったなどではなく、しっかり契約数を増やしているということです。
さらに、弊社にはカスタマーサクセスという部署があるのですが、契約したお客さまへのフォローに特化して、「どうしたらお客さまがうまくいくか」ということだけを考える部署となっています。
カスタマーサクセスがお客さまをしっかりご支援しているため、解約率を一定程度に抑えることができました。また、営業が着実に新規開拓を進めている点が重なり、顧客数や枠数を伸ばすことができています。
日根野:「カスタマー(お客さま)」が「サクセス(成功)」するようにサポートする、専門の部署があるわけですね。
中山:おっしゃるとおりです。我々の理念の「関わってくださる方を幸せにしたい」が一番の根っこになっていまして、そこをしっかり取り組めば事業は伸びていくと自分自身信じています。
お客さまが満足していないにもかかわらず、サービスが伸びるのは少し不自然ですので、なによりもお客さまを大事にすることが事業においても最も重要であり、かなり力を入れています。
日根野:リーガルメディアのKPIと言いますか、掲載枠数と顧客数はどのように違うのですか?
中山:現在、顧客数が627件で、掲載枠数が1,621枠です。顧客数がスライドの黄色の線グラフで、棒グラフが掲載枠数です。
顧客によって、何枠か複数の広告枠を出すケースがあります。
日根野:1つの弁護士事務所で、複数枠に広告を出すということですか?
中山:そのとおりです。これには2パターンあります。1つ目が事務所の拠点を東京、埼玉、千葉と複数持っている場合です。つまり東京、千葉、埼玉で1枠ずつの合計3枠になります。もう1つのパターンは東京にしか拠点がないものの、相続も離婚も行いたいというように、複数の分野にまたいで取り組まれるパターンです。そのため、おおよそ1事務所あたり2.5枠から3枠くらいを契約され、結果として627件の顧客数に対して、1,621枠の掲載枠数になります。
日根野:素朴な疑問なのですが、弁護士は一所懸命お客さまを集めるような人たちなのでしょうか? そのようなイメージがあまり弁護士にはありませんでした。
中山:マーケットの資料に戻しますね。
中山:現在、法律事務所は全国に1万7,772件、弁護士数は4万5,000人くらいいます。国の方向として、諸外国に比べて少ないため、もっと弁護士の数を増やしていこうとしています。
プレイヤーが増えて2倍になっているにもかかわらず、例えばマーケットのサイズが1.2倍程度に留まると、お客さまを集める工夫が必要になります。
例えば、地方の方はおそらく、ほとんどの地元の方が知っているような先生がいて、「あの先生に相談する」と決まっていると思います。他に探すとしてもタウンページを開いて見つけるといったかたちです。
例えば僕は京都生まれですが、都心部において法律相談をしたいと思った時に、通常は知り合いに弁護士がいるはずがありません。どのようにして探せばよいのかと困った時に、街を歩いていてたまたま見つけるというよりは、やはりインターネットで自分に合う人がいないかを探します。
この方法は都心部が主流でしたが、徐々に地方部でも行われつつあります。結果として、日本全国単位で見ても、弁護士も集客しなければ、見つけてもらうことができない状況になってきています。昔、弁護士は事務所に座っていれば相談者がお菓子を持って相談に来るようなイメージがありましたが、今はまったく違ってきています。
相談の仕方にしても、昔は相談料として1時間あたりの報酬を払って、話を聞いてもらうというのが普通でしたが、比較的新興系の事務所では「どのような事件でも相談料自体は無料でいいですよ」「相談は無料でしてください」という市況になりつつあります。「無料でご相談いただいて、実際に事件に取り組むとなったら初めて着手金を払ってくださいね」という流れに変わってきています。
このように、敷居が下がって競争も激化しています。いかに露出量を増やしてユーザーの方に知ってもらうかという企業努力、事務所努力が必要になってきています。そのため、我々のような業者を含めてさまざまなサイトに広告を出稿されています。
日根野:弁護士業界の競争が非常に激しくなってきていることが背景にあるのですね。
中山:おっしゃるとおりです。今後も日本国内では弁護士数を増やしていく流れがありますので、さらに1.5倍くらいまで増えていくと思います。
日根野:ますます競争が激しくなれば、アシロとしてはうれしいですね。
中山:競争が増えれば増えるほど、我々の存在意義が弁護士業界で高まっていきますので、ご支援させていただく機会が増えるという点では非常によいことだと思います。
(参考)リーガルメディアの収益モデル
中山:リーガルメディアの収益モデルをスライドに記載していますが、「顧客×枠数」の図式があり、この枠数に乗じた金額が売上収益になります。
日根野:この枠数が特に大事だということですね。
中山:おっしゃるとおりです。顧客数と枠数ともに大事ですが、枠数が非常に大事な数字となっています。
【派生メディア・リーガルHR】問い合わせ数及び新規登録者数
中山:リーガルHRおよび派生メディアは成果報酬のため、双方ともに問い合わせの数が増えていることが重要になります。スライド左側は派生メディアの問い合わせ件数について、2021年10月期第1四半期と2022年10月期第1四半期では、問い合わせ数が82.5パーセント増えており、大きく戻しつつあるとご理解いただけると思います。
リーガルHRに関しても、2021年10月期第1四半期から2022年10月期第1四半期に対して、46パーセントほど新規の登録者数が増えました。これは弁護士が違う法律事務所に転職したい、あるいは違う事業会社に転職したいと思って、弊社の人材紹介サービスに登録された数です。
日根野:派生メディアは問い合わせ数がKPIになり、リーガルHRは新規登録者数がKPIということですね。グラフ左側の2つは12ヶ月分の棒グラフで、3つ目と4つ目は第1四半期の3ヶ月だけのグラフということですね。
中山:おっしゃるとおりです。
(参考)派生メディアの収益モデル
中山:派生メディアのKPIは問い合わせ数です。例えば、人材紹介である「キャリズム」では、人材紹介会社さまに何件登録されたかという、1つの問い合わせ当たりいくらという成果報酬を決めているため、転職希望者の問い合わせ数が上がれば上がるほど、売上収益が上がっていきます。そのため、問い合わせ数がKPIとなっています。
リーガルメディアにおけるブランド名策定のお知らせ
中山:これまで弊社サイトは事件ごとに、「離婚弁護士ナビ」「相続弁護士ナビ」と、わかりやすいサイト名を使っていましたが、わかりやすいがゆえにどこにでもありそうな名前ということで、逆に覚えづらいという考え方もあるなと思いました。そこで、固有名詞を使ってブランドを作っていくべきと感じ、すべてのサイトを「ベンナビ」としてブランド統一いたしました。
日根野:弁護士の「ベン」とナビゲーションの「ナビ」ですね。
中山:はい。サイト名は「ベンナビ離婚」「ベンナビ相続」といったかたちで、先に「ベンナビ」を持ってくるようにして、「ベンナビ」をしっかり覚えていただけるサイト名にしようと考えています。
ロゴは、弁護士バッジとフクロウを融合させたもので、かわいらしいふくろうが特徴です。
サイト名は社内で80回転するくらい揉めたのですが、「ベンナビ」に何とか決まりました。「『ベンナビ』だったら5秒で思いつくのではないか」と言われるかもしれませんが、悩んで80回転した上での「ベンナビ」という名称のため、みなさまに覚えていただきたいと思っています。
また、本日は多くの投資家の方々にご覧いただいていると思いますので、もしよければというお願いが1つあります。弁護士と言えば「ベンナビ」ということを、「Twitter」や掲示板などのいろいろなところで露出していただけると「ベンナビ」の知名度が上がりますので、ネット上でつぶやいてもらえると非常にありがたいです。
日根野:サイト利用者としてもネット上にいろいろな記事があると思いますが、「ベンナビ」のロゴがあって、その記事なのだと安心してもらえるとよいですね。
中山:おっしゃるとおりです。いろいろなところで、「このフクロウ、よく見るね」と思っていただき、「よく見ているし、よく名前を聞いているし、ちゃんとしたサイトなんだろう。使いやすいんだろう」と初めて来たユーザーでも、安心感を得ていただきたいと思います。
そのため、さまざまなところでフクロウと「ベンナビ」を露出していくことが重要だと思っています。我々もいろいろと展開していきますが、一般の方にも投資家にも、いろいろなところで「ベンナビ」を呟いていただけると非常にありがたいです。
日根野:素朴な疑問ですが、そもそもテーマごとにサイトが分かれているからこそ1つの共通のブランド名として、「ベンナビ」ができましたが、なぜ9つにサイトが分かれている必要があるのですか?
中山:マーケティングの観点もあるのですが、一番はユーザーの利便性です。例えば飲食店を探す時には飲食店を探せるサイトを使うと思いますが、「今日はイタリアンが食べたいな」と探していて、途中で、「イタリアンもいいけど、和食もいいかも」と思い始めることがあると思います。
しかし、当社の場合、離婚で悩んでいる時に「やっぱり今日は相続のことを相談しようかな」とはなりません。離婚のことを相談したいということで、当社サイトを利用しているわけです。そのため、離婚に特化させて離婚のことを詳しく、より深く調べられるサイトのほうがユーザーの利便性が高いと思っています。
データベースが揃っていて、多くの選択肢の中から見つけられるというポータルサイトの利便性がありますが、深く掘ることによる利便性もありまして、法律領域は深く掘ったほうが利便性が高くなる可能性が高いと考えています。そのため、分割してバーティカルに作っていったという経緯になります。
ブランド・ステートメント
中山:ブランド・ステートメントで一番大事にしているのは、「ベンナビ」の上に記載している「法律を味方にしよう」ということです。前回の発表時にもご説明しましたが、我々が弁護士に相談することのハードルや垣根をもっと下げて、いろいろな困りごとが起こった時にもっと気軽に法律を味方にして、不安や不満なことを払拭していける世の中を実現していけるようにという思いを込めて、ブランド設計を行いました。
日根野:ユーザーも、知らず知らずのうちに「ベンナビ」を使っているんですよね。
中山:そのとおりです。我々は今後インターネットのメディアだけではなく、さまざまな領域でいろいろなプラットフォームを作っていきたいと思っています。プラットフォームとは、当たり前に存在し、特別に感じないレベルになって初めてプラットフォームと言えると思っています。
そのため、「弁護士を探すなら『ベンナビ』を使わないで何を使うの?」という認識が当たり前になることを最低限やり遂げなくてはなりません。未来には「ベンナビ」があって当然となるように、しっかりとチャレンジしていきたいと思っています。
日根野:これからが楽しみですね。
質疑応答:海外の類似ビジネスモデルとの比較について
日根野:海外に御社と同じようなビジネスモデルはありますか?
中山:アメリカにもありますが、少し違っています。アメリカのサービスの場合、事務所単位ではなく個人単位になっていて、レーティングのような評価が閲覧できるようになっているなど、若干の違いがあります。
アメリカの文化だと思うのですが、弁護士事務所を探すというよりは、個人の先生にサイト内で直接相談できるかたちになっています。そのため、CtoBよりはCtoCに近いサービスが存在しています。
質疑応答:リーガルメディアの特徴について
日根野:リーガルメディアに関する質問です。広告掲載している顧客に法人企業が多く、そこが特徴といえるのではないでしょうか?
中山:他社のサービスには法律事務所ではなく弁護士単位で契約するサービスもありますが、弊社のサービスでは基本的に、弁護士法人や法律事務所単位で契約しています。事務所単位で契約していることが我々の特徴であると思っています。
日根野:私の友人の弁護士事務所も御社のサイトを利用しています。
中山:ありがとうございます。
質疑応答:個人単位・事務所単位の契約の違いについて
日根野:個人単位ではなく事務所単位というところに特徴があるとすると、ARPU、つまり顧客単価が高くなる傾向があると思います。個人の弁護士をターゲットにする場合と比べて、それ以外にも何か違いはありますか?
中山:法律事務所の中に弁護士がいるため、ユーザーからすれば「弁護士は誰なのか」ということも重要かもしれませんが、そもそも法律事務所がどこにあって、どのような事務所かというのを知った上で、頼りになる先生を探したいのではないかと思います。
例えば、自分が相談しやすい場所から探したい方もいます。自分の勤務地から近い、家から近いといったデータを事務所単位で出したほうがわかりやすいです。
また、おっしゃっていただいたARPUのところがやはり一番重要です。弊社の場合、月額の利用料を平均すると、1事務所あたり17万円くらいいただいています。
日根野:月額ですごい額ですね。
中山:仮に個人で契約した場合に、個人の方が毎月17万円支払えるかと言いますと、少し状況が異なってくると思っています。競合に対して、お客さまのARPU、単価を高く設定していることは特徴的だと思います。
単価が高いという見方もありますが、弊社としてはまったく高いとは思っていません。先ほど競争が激しくなっているとお伝えしたとおり、ユーザーを獲得するための単価は年々上がり続けています。
日根野:競争が激化しているのですね。
中山:おっしゃるとおりです。「Google」「Yahoo!」といったポータルサイト内での競争も非常に激しくなっています。安く設定して何の効果も出ないものになってしまうよりも、高くてもしっかりと成果が出るものを提供したいと考えています。
安定と安心を追求して、毎月安定的に成果が出る単価はいくらだろうと考えた時に、「これくらいの金額感をいただいていないと、安定・安心して使ってもらえないのではないか」ということで、事務所単位である程度ARPUを高く設計している状況です。
日根野:弁護士にしてみたら、月額17万円をかけたとしても、1件受注できれば採算が合いますよね。
中山:そのとおりです。サイトを運営し始めて10年ほど経っているため、「どの事件であれば、どのくらいの単価で、どのような成果が出ればご満足いただけるのか」というのは、かなり細かく設計しています。
例えば、当社サイトの1つに労働問題のサイトがあります。事業者が少ない都道府県や地区町村があったとして、その地域の先生に我々の営業が、「労働問題のサイトをやりましょう、先生」というようなご提案をしても、成果は出ません。
そのような時に登場するのがカスタマーサクセスです。契約後にも支援するのですが、実は契約前の段階でも、成果が出ない地域、成果が出ない事件を販売しようとすると、カスタマーサクセスの権限によって販売できないようになっています。
日根野:「それをやってもあまり効果がないよ」とストップがかかるわけですね。
中山:おっしゃるとおりです。「これを販売しても意味ないよね」という在庫管理のようなことも行っているため、「これまでの実績上、成果が出るよね」と弊社の中での仮説が立たないと、販売してはいけないことになっています。
日根野:親切な会社ですね。
中山:もちろん、掲載いただいた後になかなか成果が出なかったこともありますが、成果が出る可能性が非常に低いと思われる場合、カスタマーサクセスが「売ってはいけません。」と言います。営業に対しての牽制が非常に強く効いている体制になっています。
日根野:関わる人みんなが幸せになるような感じですね。
中山:おっしゃるとおりです。
質疑応答:M&Aやオーガニックでの成長について
日根野:御社が今後どのように成長していくのか、5年後、10年後をどのようにイメージして見据えているのかを教えてください。オーガニックではなく、M&Aを駆使して拡大していくのでしょうか?
中山:毎年、どうなっていきたいかはアップデートし続けていますが、M&Aかオーガニックかについては、中長期的に育てることによって競争優位性が作られるという場合は、オーガニックにこだわる必要があると思います。そうではなく、先行優位性があまりにも高く、スピードを取りにいくほうがよい場合には、M&Aで時間を買ってしまったほうがよいと判断をすることもあると思います。
そのため、是々非々については事業ごとに検討していくことになりますので、M&Aもありえますし、オーガニックで事業を作っていくことも考えています。
日根野:成長していくための分野としては、法律事務所の経営統合や事業承継、保険会社の買収という手もあると思います。「ベンナビ」が成長した先の成長イメージはどのような分野で考えていますか?
中山:まず弁護士保険に関してはM&Aの契約は成立していますので、実行するだけの状態になっています。なぜ、弁護士保険のM&Aを行うのかと言いますと、1つは少額短期保険会社を作るのにすごく時間がかかるということがあります。
質疑応答:弁護士保険について
日根野:そもそも弁護士保険とはどのようなものなのですか?
中山:弁護士保険というのは、あまり聞かないようで実は入っているということがかなりあります。例えば、自動車保険に弁護士費用特約が付いていますよね。
レ点で入っていますが、あれは交通事故を起こし、加害者あるいは被害者になって弁護士に相談したい時に、特約に入っていると弁護士にかかるいろいろな費用を保険会社が負担してくれるというものです。
それを拡張させて、交通事故だけでなく、いろいろな事件が起こった時に弁護士に相談したり、実際に依頼した場合の費用の一部を「保険会社として負担させていただきますよ」というのが弁護士保険です。
補償できる金額が制限されている少額短期保険会社となっていますが、少額短期保険会社でも保険会社となるため、作るのに非常に時間がかかります。そこで今回は時間を買うということで、保険会社のM&Aを行いました。
このM&Aの理由は2つあります。1つは収益性の面で、売上・利益を十分に出していけると見込んでいます。もう1つは、弊社のリーガルメディアの広告宣伝費に関連するものです。弊社自体が「Google」「Yahoo!」に出稿してユーザーを獲得しているとご説明しました。弊社としてもユーザーを獲得し続けなくてはならないため、みなさまに我々のサイトを訪れていただくためにコストをかけています。
例えば保険に入った後に離婚の問題が起こってしまった場合に、通常は保険に入っていなければ「Google」「Yahoo!」を使って「ベンナビ」やそれ以外のいろいろなサービスを比較して、「どのサービスを使って弁護士を探そうかな」ということになります。しかし、保険に加入してもらっていれば、インターネットで検索することはなくなると思います。
日根野:そうですね。保険会社に電話しますよね。
中山:保険会社に電話して、保険会社から希望に合う弁護士を紹介します。例えば、保険の加入者が10万人になれば、弊社で10万人分のユーザーをすでに囲い込みができている状態になります。
日根野:すごいですね。
中山:収益上も貢献して、我々のマーケティング活動においても「ベンナビ」やリーガルメディアの補助をしてくれるようなサービスですので、非常にシナジーが強いという判断でM&Aを実施しました。
日根野:「ベンナビ」を利用している弁護士事務所からすると、この保険に入っている人たちは何かあれば相談に来る、広い意味での見込み客になるわけですね。
中山:おっしゃるとおりです。
日根野:おもしろいですね。
中山:少額短期保険に関しても、今後は新しい商品などをいろいろと開発していく予定ですが、大きな方向性としては、関わっていただいた株主、投資家の方も幸せになっていただきたいと思っています。
どのように幸せにしていくのかと言いますと、弊社としては事業規模、売上・利益の追求をしていくことはマストだと思っています。弁護士の市場は、法律事務所は全国に1万7,772件あり、市場規模全体では8,500億円くらいの収益が立っている市場になりますが、事業規模をより拡大していこうという時には、さらに大きなマーケットでいろいろなプロダクトを作っていく必要があると考えています。
ですので、法律事務所に対してのソリューションも行っていくものの、今後の大きな方向としては対事業会社、つまり法律事務所以外の領域に対して弊社が培ったノウハウ、リソースを提供していきます。また、M&Aによってまったく違う領域を獲得することで、さらなる規模の追求を行っていくことが、個人投資家さまも含めた株主価値の最大化により直結していくと思っています。より大きな規模を追求していくということだけは間違いないかと思っています。
日根野:さらに大きな会社になっていくということですね。