これまでのパンデミックと社会経済構造変化

中村篤弘氏(以下、中村):会社の紹介も兼ねて、事業の説明をさせていただければと思います。

まずは、簡単にパンデミックの歴史を振り返ります。これまでもパンデミックを契機に社会経済構造が変わっており、19世紀のコレラでは下水やトイレなどの公共施設の整備が進み、20世紀のスペイン風邪では設備投資が加速しました。

まさにコロナ禍においても変革期が来ており、それは、テレワークや巣ごもり消費によるECの拡大、DX投資の加速です。今もメディアで言われているように、医療の現場においての問題として、医療資源の不足、医療体制の脆弱性が明らかになりました。院内感染の拡大や来院、来局者の減少や情報の不透明性です。

当社は、ヘルスケア関連の商材に加え、デジタル技術で医療の新しいかたちを確立したいと考えています。

経営理念“人と社会を健康に美しく”

中村:「人と社会を健康に美しく」を経営理念に、人々の幸福な生活に欠かせない医療・ヘルスケア領域にフォーカスした事業を展開しています。

History 沿革

中村:沿革のご説明の前に、簡単に自己紹介します。私は、大学を卒業してからドラッグストアに勤務し、医薬品や化粧品の販売、薬剤師のマネジメントに従事しました。その後、インターネットの広告代理店で営業の責任者を経験し、マーケティングを学びました。その中で、どうしたらリアルあるいはバーチャルでモノは売れるのかということにずっと携わってきました。

そして、当社は2008年にインターネットの広告代理店からスタートし、2012年にメーカーとして自社でEコマースのD2Cを立ち上げました。2016年には医薬品の通販に参入し、2019年に調剤薬局を立ち上げていますが、これは調剤薬局を大きく展開するためではありません。簡単に言うと、港区赤坂で、「薬剤師の出前館」のようなことを行っており、今の「SOKUYAKU」のベータ版というか、サービスを展開していました。今回、コロナ禍においての規制緩和が進んだことにより、そのサービスをバージョンアップし、一気通貫でできる「SOKUYAKU」のプラットフォームを展開しています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):最初にモバイルフロンティアを設立し、広告代理店業から始まった経緯やきっかけがあれば教えてください。

中村:もともと広告代理店に勤めていた際に、今で言うD2Cのいろいろな事業者の立ち上げをお手伝いしていました。現在上場しているいくつかの会社との縁があり、本当に月商200万円、300万円くらいからスタートし、月商5億円、10億円に一緒に伸ばすようなことを経験してきた中で、モノが売れない理由は1つではなかったのです。

ECでも、プロモーションや媒体がよくてキャッチコピーが優れていても、もちろんプロダクトが悪いと売れません。また、フロントシステムの部分で、買い物かごの使い勝手が悪ければコンバージョンも下がってしまいます。

また、フルフィルメントの観点で言うと、物流費が高すぎると配送料が利益を圧迫して広告を打てないなど、D2Cを行う際は、いろいろな側面からソリューションを提供しなければ、なかなか売上が上がらないといった状況でした。

ここ十数年、いろいろな会社の立ち上げを行ってきた中で、毎年3つは、100万個以上売れるような商品に携わってきました。永続性という観点では、ある意味、小室哲哉氏や秋元康氏のようなヒットメーカーなのです。しかし、だんだん売上が上がってくると、クライアントがバイイングや媒体のコストにより代理店を変えたり卒業してしまうのです。

坂本:自分のところでも可能だという自信がついてしまうのでしょうね。

中村:それで、このビジネスの商流の一番風上に立たなくてはいけないなと考えて、自分でスタートしたのが最初のきっかけです。

坂本:その後、D2Cを行うという流れにもつながりますね。

事業・サービス概要

中村:事業としては、大きく3つにわかれます。1つ目がメディカルケアセールス事業で、医薬品の通販に加え、調剤薬局の運営、オンライン診療・服薬指導のプラットフォームを運営しています。2つ目はヘルスケアセールス事業で、化粧品や健康食品の販売、D2Cを行っています。3つ目はヘルスケアマーケティング事業で、ヘルスケア関連の商品を扱う企業向けに、自社で成功した販促やプロモーションをご提案しています。

当社グループの事業ポートフォリオ

中村:このような3領域で、事業を展開しています。

組織・人員体制

中村:人員体制です。2021年5月期の従業員1人当たりの売上高は1億4,900万円と、少数精鋭で筋肉質な組織です。連結子会社を含めたグループ全体では309名です。

SOKUYAKU事業概要

中村:医療プラットフォーム「SOKUYAKU」をご説明します。「SOKUYAKU」は、オンライン診療、服薬指導、薬の宅配などをワンストップで実施する、日本初、唯一のプラットフォームです。こちらはビジネス特許を取得しています。

他社のプラットフォームの現状として、オンライン診療では、クリニックや患者に処方箋を郵送で送ります。例えば、夕方にオンライン診療を受け、翌日にクリニックが処方箋を郵送で患者宅に送ると、届くまでに2日から3日経過してしまいます。処方箋自体の有効期限が、医師が発行してから4日間のため、患者は残り1日から2日で薬局に行って服薬指導を受けるか、オンライン服薬指導を予約しなくてはなりません。

「SOKUYAKU」は、オンライン診療の予約と同時に、オンライン服薬指導も予約します。薬も宅配か郵送かを患者が選択可能です。実際にどのようなサービスか、2分程度の動画を見ていただければと思います。

八木ひとみ氏(以下、八木):わかりやすいですね。

中村:ありがとうございます。インターフェース、UI/UXも患者から非常に利用しやすい作りになっています。

坂本:かなり考えて作っていると思いながら見ていました。

SOKUYAKU事業 KPI進捗

中村:「SOKUYAKU」事業の主要経営指標は、「提携病院数」「提携薬局数」、アプリの「会員数」です。先月時点で、病院と薬局を合わせて3,497件導入いただいており、もともと、今期までに3,220件の導入を目指していましたが、早期に達成した状態です。今期の着地予想としては、4,000件か5,000件くらいの導入が可能だと考えています。

坂本:まず、提携病院、薬局ともに伸びていますが、病院は診療科に関係なくまんべんなく伸びているのでしょうか? 日本では内科の開業が多いため、おそらく内科が多いとは思いますが、そのような傾向なども教えてください。

中村:まさに、さまざまな医療機関、診療科が増えており、現在非常に多いのは、もちろん発熱外来や内科、また皮膚科、眼科、そして慢性疾患の薬をここで取得したい患者が継続して使っているケースです。

そして、やはりお子さまがいるご家庭などで小児科を受診したり、そのようなところが増えています。我々は初診からの受付が可能なところが少ない診療科に対し、積極的にアプローチし、アクティブ率を上げています。

八木:病院側や薬局側の導入コストはどのようになっていますか?

中村:この後詳しくご説明しますが、実は無償で利用できるサービスになっており、医療機関側からすると導入しない理由がないサービスになっています。

八木:そのあたりが魅力ということですね。

坂本:薬局数の伸びについて、中小チェーンか個人のどちらが伸びているのか、または、大手で対応可能なところが少しずつ入ってきているのかを教えてください。

中村:全国に6万件の薬局があり、スタートは小さいところが中心だったのですが、今は中堅の100店舗、200店舗以上あるところも非常に増えており、そのようなところの開拓も行いたいと考えています。

坂本:個人ユーザーの会員はどのように開拓していくのでしょうか? 広告戦略などの取り組みを教えてください。

中村:発熱外来やPCR検査、薬の名前といった興味、関心から集客しているため、オンライン診療を受けたい、非常にリテラシーの高いユーザーがまずアプリをダウンロードし、そこから実際に診察となるケースが多いです。

また、宅配可能な地域に関しては、その地域でテレビCMを打つと、検索数もダウンロード数も大変増えるため、宅配可能エリアを拡大しつつ、地上波のCMなどにも力を入れたいと考えています。

SOKUYAKU事業を取り巻く市場環境(2)

中村:医療の実態の資料です。医療先進国の日本ですが、人口1,000人あたりの医師の数はまったく足りておらず、1,000人の患者を2.4人の医師で診ています。また、医師1人に対する65歳以上人口は112人と、世界で群を抜いて一番です。

近い将来である20年後の2040年には、医療・介護費が1.8倍になり、医療従事者は横ばいで増えないため、当社が推進しているデジタル化が現場の一助になればと考えています。

SOKUYAKU事業を取り巻く市場環境(3)

中村:先ほどの医療機関の料金の話にもつながりますが、医療機関の実態として、コロナ禍前から、全国18万件あるクリニックのうち45パーセントが実は赤字経営でした。コロナ禍になり、実際に7割弱が赤字となっています。それを、国が税金や自治体で補完している状況です。

昨年6月に閣議決定された「オンライン診療の恒久化」の発表を受け、オンライン診療への興味はより増えているものの、医療機関の一番の懸念事項は設備投資です。当社が無償でシステムを提供することにより、その懸念の解消が可能になります。

オンライン診療をめぐる課題

中村:実際に、昨年8月と9月の日経新聞の記事によると、35都道府県でオンライン診療が10万人に1人、東京都でも0.01パーセントということです。なぜ浸透しないのか、その理由について詳しくご説明していきます。

「SOKUYAKU」ではその課題を解消する活動をしています。オンライン診療は、今回報酬点数も上がり診療費も変わるのですが、当時は診療が割高で、これがオンライン診療を阻んでいるという記事がありました。

実際は、オンライン診療の点数は低く、患者にとって高いことはないはずなのですが、他社のプラットフォームでは月額利用料や従量課金というかたちで病院から料金を取っているため、病院側も診療の料金に乗せざるを得ない状況もありました。しかし、我々が無償で提供することにより、その解消が可能です。  

収益手段の拡大

中村:「SOKUYAKU」の差別化ポイントと収益についてです。To Cサービスは「会員数×オンライン診療の利用料×アクティブ率」で、どれだけ使われているかです。To Bサービスは、導入件数と月額でASPや端末の利用料で収益を作っています。

(1) SOKUYAKU ASPサービス(To Bサービス)

中村:「SOKUYAKU」はASPでも提供しています。例えば、大学病院や、100店舗、200店舗運営しているクリニックや薬局は、患者の囲い込みがしたいため、自分の名前でサービスを出したいところももちろんあります。そのようなところには専用のASPで、裏側が「SOKUYAKU」になっているというものもあります。

そのような医療機関は、自分で作っても結局集客できないのです。したがって、自分専用でシステムを入れて患者を囲い込みながら、「SOKUYAKU」に出店してもらう場合もあります。患者のデータベースは保持しながら、新規の患者が来る体制を作ることもできます。

坂本:新規が来ないと続かないですよね。

中村:おっしゃるとおりです。

(1) SOKUYAKU ASPサービス:導入事例 バリューHR社

中村:事例の紹介ですが、バリューHRさまには、オンラインドクターというシステムでASPを提供しています。

(2) SOKUYAKU 端末設置サービス(To Bサービス)

中村:「SOKUYAKU」の端末の導入も行っています。これを実装することで、地方の医療難民を救うことが可能です。簡単な端末の操作になりますので、アプリのダウンロード・スマホの操作・会員登録が難しい年配の方でも、利用できるようになっています。

年配の方はいつもどおり病院に行って、オンライン診療を受けて、窓口で会計して、近くの薬局で受け取って帰れますので、オペレーションは変わりません。北海道などでは片道100キロメートルかけて通院する方もいますので、そのような状況の解消も可能です。

(2) SOKUYAKU 端末設置サービス:導入事例 富山県<1>

中村:具体的な導入事例を紹介します。富山県入善町にある総合病院では、10年以上整形外科がありませんでした。市長や県知事がすごくがんばって誘致して「年収は数千万円出す」と言っても来てもらえず、診療科がなかったのです。そこで、千葉県の外科とつなぎました。

(2) SOKUYAKU 端末設置サービス:導入事例 富山県<2>

中村:スライドは実際の診察の様子です。専門医にレントゲンの写真や患部を見てもらって、年配の方はいつも行っている病院の窓口で会計して、薬局で受け取ります。オペレーション上は変わらず、今までなかった診療科を開設することができました。このような取り組みも行っています。

(3) SOKUYAKU 医療人材紹介サービス(To Bサービス)

中村:第2四半期に戦略的なM&Aを行い、AIGATEキャリア株式会社を子会社化し、医療人材を中心として人材紹介を行っています。「SOKUYAKU」の提携先や、薬局向けの人材の支援を行っています。

(4)オンライン服薬指導時の「ついで買い」(To Cサービス)

中村:ドラッグストアにおいて、処方箋だけではなく日用品やOTCなどを「ついで買い」するサービスもスタートしました。これにより、「ドラッグストアの出前館」のようなサービスが可能になっています。

坂本:一緒に他のものも届けてくれるわけですか?

中村:おっしゃるとおりです。ドラッグストアへ導入している中で、「調剤に来てくれた患者には、薬局で処方箋を預けて店内をウロウロして、他のOTCやトイレットペーパーなど、違う商品をついでに買ってほしい。客単価を上げたい」と要望がありました。

坂本:「食品で釣る」と言うと言い方が悪いですが、スーパーマーケットより安く食品を売って集客に使っていることもあります。

中村:これを行うと、ついで買いして、どちらにしても薬を取りに行きますので、違う商品も同梱して買うことも可能になっています。

国・地方自治体との取組み

中村:国・自治体で推進しているサービスでも「SOKUYAKU」を採用していただいて進めています。内閣府の「スーパーシティ構想」や大阪の「スマートシニアライフ」にも参画しています。高齢者向けの各家庭に端末を配布して、ネットスーパーやオンライン診療を提供する取り組みです。

当社商品のブランドラインナップ

中村:ヘルスケアセールス・メディカルのEC部門、D2Cの部門についてお話しします。

それぞれ扱っている商品はスライドに記載の商品です。ヘルスケアセールスでは健康食品を中心に、メディカルケアセールスでは第3類の医薬品・漢方薬などを取り扱っています。

D2C市場における当社のポジショニング

中村:当社のヘルスケアセールスのポジショニングです。オンラインで集客が得意なところは、オフラインが苦手です。逆も然りで、オフラインをしているところは、ECになかなか移行できていない現状があります。当社は半々くらいで、ターゲットニーズに合わせて集客を行っています。

当社の強み①:30~50代をターゲットにしたオンライン戦略

中村:30代から50代は、Web中心に取っています。

当社の強み②:40~60代をターゲットにしたオフライン戦略

中村:重複がありますが、40代から60代はオフラインです。インフォマーシャル番組やカタログの同梱などを使った集客を行っています。

当社の強み③:クロスメディア活用による「売る力」

中村:今後もD2Cを大きく成長させていきますが、ECの一番のポイントは、アクイジション、つまり新規の顧客がどれだけ効率よく取れるかです。Webで獲得している成果報酬型の顧客獲得単価は高騰しており、苦戦しているECの会社もあります。我々はオフラインでも集客していますので、そのような影響を受けずに好調に獲得ができています。

調剤最大手のアインファーマシーズから2019年11月に事業譲渡で買収した漢方薬のECサイトがあります。買収時の月商は4,000万円程度でしたが、買収から2年経った今では月商2億5,000万円くらいになっており、6倍くらいに成長しています。このようなことからも、我々の販売ノウハウがいかに優れているかご理解いただけると思います。

新商品パイプライン

中村:前期の後半も、スムージーなどの新商品を発売していて、商品の開発にも力を入れています。

大学教授との連携事例

中村:いろいろな大学や研究機関と連携して、論文を書いたり、ヒト臨床試験に取り組んだりしています。

製薬会社との連携事例(新商品開発企画案の討議を継続実施)

中村:スライドは開発をお願いしている製薬会社の一部です。基本的に当社はOEMで製品を開発していますが、製薬会社へ研究開発費を投資して独占販売、また、独自の配合での製品の提供を行っています。通常は医薬品などの許認可が下りると、同じ規格のものをいろいろな会社がパッケージの名前を変えて売ります。

例えば、弊社の「防風通聖散」の場合、満量処方といって我々でしか販売できない処方なのですが、小林製薬では同じような違う配合で「ナイシトール」という名前で売っています。

そのように、同じものをいろいろなところで売ったりします。我々は、粒数を減らしたり成分量を増やしたりと、独自に研究開発を行って、常に改良しています。

D2C商品の更なる拡大 ⇒「食品」~低糖質米~

中村:商品開発の一環として、2018年から東京農業大学と一緒に低糖質米の開発に着手しました。アミロースを増加させる研究をしていて、今は3割近く成功しています。これが5割になると、お米2杯食べても1杯分、おにぎり2個食べても1個分の糖質で済みます。来年には製品化できるようにがんばっています。

八木:早く開発してほしいです。楽しみにしています。

D2C事業の収益構造

中村:我々は基本的には、定期購入という売り方が中心です。最初は1,980円ですが、2回目以降は単価が上がります。

坂本:よくある方法ですね。

中村:おっしゃるとおり、サブスクリプションという方法で販売しています。また、第2四半期は獲得効率の進捗が非常に順調です。年間の計画では61パーセント取れています。我々は半年から8ヶ月回収で新規のお客さまを獲得していますので、よいかたちになっていくのではないかと思います。

坂本:進捗率がよいのは、ヒット商品が背景にあるのですか? それともコロナ禍の影響でしょうか?

中村:コロナ禍というよりは、新しい媒体での獲得や、クリエイティブを工夫しながらPDCAを速く回していますので、当たりのキャッチコピーが出てきたりしたことが一番大きいです。

坂本:どちらかといえばマーケティング効果ですね。

中村:おっしゃるとおりです。

ヘルスケアマーケティング事業の展開と強み

中村:B2B事業のご説明をします。主にキャスティング広告を取り扱っており、影響力のある著名人やインフルエンサーを活用した販促を提供しています。

また、ドラッグストアへの卸やテレビショッピングの導入のサポートなど、商品に合わせた流通先の開拓も行っています。

B2B事業のKPI進捗(2022年5月期第2四半期)

中村:B2B事業の主要指標は取引社数になります。今期は修正後の計画180社の目標に対して162社と、達成率90パーセントの進捗となっています。

新たなトピックとしては、テレビショッピングのバイヤーとヘルスケアメーカーをマッチングする便利なクラウドサービスをリリースしました。

2022年5月期 連結業績見通し 売上高

中村:財務ハイライトです。見通しとしては、計画どおり売上高105億円を目指しています。成長率24パーセントというかたちで進捗しています。

連結営業利益推移( 実績及び計画 )

中村:営業利益は8.5億円を目指して推移しています。

当社が目指す将来の事業モデル

中村:成長戦略についてご説明します。事業モデルは、「SOKUYAKU」の会員データや治療情報、D2Cのヘルスケアの商品を購入された会員データ、各種医療機関のシステムである電子カルテ、電子処方箋、電子お薬手帳のデータを活用し、患者一人ひとりに合った商品、医薬品、医療機会を提供していきたいと考えています。

未病の状態から病気の初期症状、中期、後期、治ったら再び未病に戻りますが、こちらのヘルスケアサイクルをすべてカバーすることができる「SOKUYAKU経済圏」を目指していきます。

“SOKUYAKUヘルスケア経済圏”のイメージ

中村:スライドに記載しているのは、「SOKUYAKU経済圏」のイメージです。パーソナルデータを活用して、疾病期間を効果的、効率的に短縮して未病期間を長期化することで、国民の健康寿命の伸長をサポートしていければと考えています。

中長期アクションプラン

中村:中期のアクションプランとして、売上高は2025年に300億円、2028年に1,000億円を目指します。目標を達成するための、3つの取り組みがあります。1つ目は、既存事業の成長によってまずは180億円を目指します。2つ目は、ヘルスケアサイクルを拡充するM&Aです。3つ目が、「SOKUYAKU」を軸としたヘルスケアインフラに基づく新サービスです。

坂本:M&Aはどのような企業に興味があるのかと、「SOKUYAKU」をどのように伸ばしていくのかを教えてください。

戦略的 M&Aの推進 M&Aマッピング

中村:スライドに記載しているのが、M&Aマッピングです。「SOKUYAKU経済圏」の確立に向けて、関連するサービスを拡充していきたいと考えています。黄色い部分がすでにM&Aを行った企業です。未病の事業領域では、製造OEM、ECなどの管理システム、倉庫などの物流、決済などの企業へ拡充することを考えています。

疾病領域は、バイタル情報、医療ナレッジ、病院・医師検索、オフライン診療、調剤薬局、宅配業者などへの拡充を検討しています。

中期(2025年5月期)の経営目標

中村:今後の成長について、わかりやすい部分で具体的に言いますと、先ほどお伝えした300億円を目指し、会員数は1,100万人、営業利益は25億円を目指していきたいと考えています。

中期(2025年5月期)の成長戦略

中村:スライドには目指す状態を記載しています。D2C事業とSOKUYAKU事業を連動させながら、売上高CAGR40パーセントの成長を目指したいと考えています。

【SOKUYAKU事業】3年後の収益戦略(To Cサービス)

中村:「SOKUYAKU」のマネタイズのイメージです。現在、処方箋は年間で8億枚くらい発行されています。仮に1パーセントの800万枚の部分で「SOKUYAKU」を利用いただいた場合、800万枚✕手数料150円で12億円となります。服薬指導は15パーセントくらい下がるため、85パーセントとして計算すると10億円となります。

このように、1パーセントを達成すると、22億円の売上高、つまり粗利益となります。5パーセントを達成したら、すごく大きな数字になります。

【SOKUYAKU事業】事業展開イメージ(To Cサービス)

中村:現在、医療機関や薬局の開拓に注力しています。面を取り、会員数を増やすことに取り組んでいきたいと考えています。

【SOKUYAKU事業】主要アクションプラン

中村:こちらのスライドには、具体的な3ヶ年のアクションプランを記載しています。2023年5月期には会員数を200万人、2024年には400万人、2025年には650万人を目指します。病院・薬局は、合わせて2万件の導入を目指します。

八木:私の父は医者なのですが、高齢のためオンライン診療に慣れるのか気になります。父親だけでなく、医師に対して、オンライン診療のノウハウなどは提供されていますか?

中村:すごくうまくいっている病院や、活用できている事例などを参考に、ナレッジとして勉強会をしたり、「SOKUYAKU」を入れていただいた病院などには、メールマガジンで成功事例を共有しています。

坂本:文字のほうがたくさん読まれると思います。

中村:実際に中目黒にある病院の内科医は、月に200件くらいオンラインで診察しています。またある薬局は、立地が都市部から離れたところにあるため、今までは年配の方だけが利用していました。しかしオンライン服薬指導を導入すると、若年層など新たな患者が1日約10件ずつ増え、月に200件くらい処方箋が増えました。

「SOKUYAKU」を入れていただいた所沢の医師は、新型コロナウイルスのデルタ株が流行した時に、保健所に頼まれて、患者の自宅に行って診察していました。自ら検温を行い酸素濃度を測り、処方箋を書いて、薬局で薬を受け取り患者に届けるという作業をすべて行っていたため、1日で3件か4件が限界だと言っていました。結局、自分のクリニックが開けられず、経営が厳しくなってしまいました。

しかし「SOKUYAKU」を入れたことにより、在宅で診察ができ、患者は薬を郵送などの宅配で受け取るため、1日40件も対応できるようになりました。

八木:医者も患者も「win-win」ですね。

中村:患者にとっても、よい活用方法があります。もちろん病気の内容によりますが、うまく活用して、患者、医者、薬剤師、地域医療、国にとって、プラスになるようなケースもあります。そのような事例を知っていただくために、ナレッジを共有化していきたいと思っています。

質疑応答:地方や僻地へのサポートについて

坂本:「SOKUYAKU」について、スライドの30ページで、地方や僻地での診療に非常に効果的だとおっしゃっていましたが、「病院じゃないとできないのか?」というところをお聞きしたいです。

例えばコンビニエンスストアや公民館の一室などに役所の担当者が来て、「このように診察を受けてください」などと説明することはできますか? 患者のITリテラシーが低く、スマートフォンを使えない場合もあると思います。

中村:我々は毎月、厚生労働省と勉強会を行っており、先日は、打診を受けてデジタル庁にも行きました。リレーションをとりながら、実はそのような部分も話しているのですが、原則として、自宅や職場は可能ですが、公民館などは診療所としての申請が必要です。

現在、国も規制緩和に力を入れようという雰囲気になっています。インターネットがない時代に作られた法律で運用されているため、地域医療、医師、患者のために改善できる部分は、民間企業として提案しています。また厚生労働省は山口県などで実証実験を行っており、そのようなケースを増やしていくのも重要だと思っています。

坂本:ログミーFinanceでIR活動を展開している別の会社では、「IR活動は寺などで行えばよいのではないか」みたいなことを冗談で言っていましたね。

八木:地域のみなさまが集まりやすいところですね。

中村:厳密に言いますと、療養できる場所やベッドがあるかなど、医師法で決められています。

坂本:受付があるかなど、いろいろありますね。

中村:清潔が保てるかなどもあります。しかし、「薬局だったらよいのではないか」などいろいろな意見があると思います。そのようなこともどんどん、医師、薬剤師、患者の声を聞きながら、国ともリレーションをとり、進めていきたいと思っています。

質疑応答:「SOKUYAKU」の重点地域について

八木:視聴者から「SOKUYAKU」について「重点地域があれば教えてください」との質問です。主要政令指定都市を中心に2年をめどに検討とありましたが、そこは変わりませんか?

中村:主要都市から中心に進めていきますが、並行していろいろな配送会社と打ち合わせをしています。大手企業もあれば、地域に密着した業者もあります。シルバー向けのお弁当を宅配している会社や、神戸にある牛乳瓶の配送業者には何百人も従業員がいる、という例もあります。

坂本:牛乳配達の量は減少してそうですしね。

中村:おっしゃるとおりです。配送業者の開拓と並行して、地域も拡大していきます。人口が多い地域はもちろん、地方にも非常に需要があると考えています。先ほどお伝えしたように、逆に病院に行きにくい場合もあります。人口が多い地域に重点を置きますが、地方もニーズがあるとわかったため、いろいろな地域と連携していきたいと思っています。

質疑応答:オンライン診療について

坂本:「オンライン診療について、医師会の反発が想定されますがいかがでしょうか?」という質問もきています。私も興味がある部分です。診療報酬については最近、改善が進んでいるという話を聞きました。

中村:先週の金曜日に「初診から診療報酬を上げる」「コロナ禍でオンライン診療を受けた場合には、通常の報酬の倍にする」と、厚生労働省が発表しました。まん延防止等重点措置が出ている地域は倍にするなどの案があり、どんどん変わっていくと思います。

医師会との連携で言いますと、確かにそこまで前向きではない地域もあります。しかし、逆に前向きな地域もあり、地域によって違います。しかし、医師会には医師全体で3割しか入っていません。

坂本:当番などがあって大変ですからね。

中村:もちろん医師会ともコミュニケーションをとり、意見を聞きながら連携していきますが、オンライン診療に積極的に取り組んでいこうという医師を増やしたいと考えています。患者が増えた時に、医師に受けていただけないと診察はできませんからね。逆に、患者が増えれば医師は診療せざるを得ないですからね。

坂本:さらに診療報酬が上がればよいということですね。知り合いのクリニックの人にオンライン診療を行わないのか聞くと、もう少し診療報酬が上がらないと厳しいという話でした。診療報酬が上がれば、飛躍的に増える可能性は考えられますね。

中村:変わっていくと思います。

坂本:新型コロナウイルスが収束した後は、オンライン診療と服薬の利用が増えてくるということですね。

中村:おっしゃるとおりですね。アメリカ、インド、中国は非常にオンライン診療が進んでいて、医療先進国の中で一番遅れているのが日本です。不幸にもパンデミックを契機に、DXに対する意識が変わってきているため、今後も変化があると思っています。新型コロナウイルスの流行がなかったら、規制緩和まで4年から5年はかかると思っていました。

坂本:そのような空気だったということですね。

中村:「薬剤師の出前館」のようなことを着実に増やしていこうと思っていましたが、一気に規制緩和になりました。

坂本:事業が早く成長する背景になりつつあるということですね。