アジェンダ

秋元洋平(以下、秋元):みなさま、こんばんは。これより、「ドラマ『半沢直樹』シナリオライターの養成スクール講師」がリライトする『投資家がときめく決算説明会資料』」を始めさせていただきます。

みなさまの会社の決算説明会資料は、成長ストーリーなどを正確に伝え、投資家の心を捉えていますか? 多くの場合、企業が出したい情報の羅列にとどまっており、投資家、とりわけ個人投資家が知りたい情報とのギャップが大きいことが多いです。

本セミナーでは、700人のプロを輩出してきたシナリオ・センターの新井さまに、実際のIR資料をシナリオ制作の視点で再構成するとどのようになるのかをご説明していただきます。その中で、資料が独り歩きしても、投資家が正しく理解するにはどのようなことが必要なのかお示しします。

〜QAタイムの参加方法〜

秋元:質疑応答の時間も設けていますので、ご質問のある方は、随時「Zoom」のQ&Aボタンからご投稿ください。よろしくお願いします。

ファシリテーター

秋元:あらためまして、私は秋元と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。まず、簡単に自己紹介をさせていただきます。2016年にログミー株式会社に入社し、営業部長などを経て、IR情報の書き起こしメディア「ログミーFinance」を立ち上げました。

今は「ログミーFinance」のグロースのために、金融・IR関連提携サービスとのアライアンスを進めたり、個人投資家と企業のIR担当者向けのリアルイベントを企画したりということに注力しています。

本日は、みなさまに少しでもためになる情報をお届けできたらと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【1】魅力的なシナリオの基本

秋元:それでは、さっそくですが、魅力的なシナリオの基本へと移ります。

【1】スピーカー

秋元:本日のスピーカーをご紹介します。シナリオ・センターの新井さまです。今日はよろしくお願いします。まずは簡単に自己紹介をしていただけますでしょうか?

新井一樹氏(以下、新井):シナリオ・センターの新井と申します。よろしくお願いいたします。シナリオ・センターには2010年に入り、それまでは企業研修のプランナーなどをしていました。

2015年より取締役副社長となっています。副社長というと偉そうな感じはしますが、シナリオ・センターは私の祖父が作った会社で、3代目ですので、実力があって副社長になったわけではないというところです。

この後、みなさまにいろいろとご説明していきたいと思いますが、「シナリオって、いろいろなところで使えるよ」「ドラマや映画だけじゃないんだよ」といった活動もしており、今日、ログミーさんでこのようなお話をすることになりました。よろしくお願いいたします。

秋元:みなさまは「なぜ、ログミーが急にシナリオ・センターとこのようなセミナーをしているんだ?」と、不思議に思うかもしれないのですが、実は、私と新井さまは高校の同級生で、1年生の時に同じクラスでした。

新井:そうですね。「秋元さん」って、すごく呼びづらいです。

秋元:いつも「洋ちゃん」「一樹」と呼びあっています。今日、このようにお話しするのは、すごく不思議な気持ちですが、本当に「新井さんが行っていることは、みなさまのためになるのではないか」と思って企画しました。私もいろいろとお話を聞けるのを楽しみにしていますので、よろしくお願いします。

【1】シナリオ・センターとは

秋元:さっそくですが、シナリオ制作の視点で「資料はどのように構築するべきなのか」ということについて教えていただけますでしょうか?

新井:今日は「シナリオの技術を使うと、IR資料はどのようによりよくなるか」というお話なのですが、「そもそもあなたは誰?」というところが若干あると思いますので、ご説明します。

先ほども『半沢直樹』とありましたが、シナリオ・センターは映画やテレビドラマの脚本家を養成する学校として、スライドに映っている私の祖父、新井一が作った学校です。

みなさまは、シナリオや創作はセンスの世界だと思うかもしれません。もちろんそれは大切なことですが、センスをしっかりと発揮するためには、表現する技術が必要になります。

その技術を私の祖父が体系化させ、今さまざまな分野のプロの人たちがそれを基礎として身につけて活躍しています。連続ドラマでは、現在は7割くらいを出身ライターの人たちが執筆しているかたちになります。

【1】企業向けコンテンツ実績

「日本中の人にシナリオを書いてもらいたい」と思い、ビジネスシナリオなどのいろいろなコンテンツを提供しています。

シナリオの発想は、これからみなさまが資料を作る上でも大切になってくると思いますが、書き手のイメージを明確にすることです。そして技術は、数千万人の心を動かします。

ドラマは視聴率10パーセントと言いましても、一応1,000万人は視聴しているという計算になります。それだけ多くの人の気持ちに届く作品を作るための技術が、シナリオには詰まっているということです。

私たちは、基本的にはプロのライターになりたい人たちにシナリオの技術をお渡ししているのですが、今日は、ビジネス向けに「ビジネスの現場でお客さまの気持ちを動かすためにどうすればよいのか?」ということをお伝えしていきます。

【1】ドラマの構造とは……

今日の本題です。「ドラマの構造って何だろう?」ということですが、実はここがとても大切な部分です。

今回はヴィスさんにご協力していただきました。また「ログミーFinance」のサイトで他のIR資料もいくつか読みました。

がんばって読んで、2つ感じたことがあります。1つは「これで投資家をしっかりと得ているのだったら、いいんじゃないの?」、もう1つは「これで現状、投資してもらえるなら、もっとうまく作ればかなりの伸びしろがあるのにな」ということです。

今日は、その伸びしろの部分をお話しできればと思っています。資料を作る時も一緒だと思うのですが、ドラマを作る上で大切なことは、クリエイティブな面とロジックな面を、分けて考えることです

よくあることとして、クリエイティブな面に頭を使いがちです。「どういう文章にしようか」「どんなグラフにしようか」など、目に見えるものに注意、意識がいきがちです。

しかし、そのクリエイティブを支える土台になるロジックの部分がズレていると、どんなにクリエイティブなところをいじっても、「なんとなくピンとこないな」「ちょっとよくわからないな」というシナリオになってしまうのです。

これは、資料もおそらく同じだと思います。そのため、「まずはロジックを押さえていきましょう」ということです。

「じゃあ、ロジックってなんなの?」というところですが、その答えはスライドにあります。山のかたちがあって、その下に矢印が引いてありますが、山がグーっと上がっていきます。

これがドラマの構造を視覚化したものです。一番大切なところはどこだと思いますか? 

秋元:「テーマ(伝えたいこと)」というところですか?

新井:そのとおり、さすがです。テーマがとても大切です。シナリオ・センターでは起承転結とお伝えしているのですが、テーマを伝えるところは「転」です。「転」の状態で、テーマが伝わってなければいけません。

よく間違えるのが、「テーマって一番最後のところの『結』じゃないの?」と思う方が多いのですが、それは「結」ではなくて、「転」です。「転」で、伝えたいことが伝わってなければいけません。「『結』って何なの?」と言いますと、「結」はスライドに書いてあるとおり、テーマの定着と余韻になります。

テーマの定着と余韻についてご説明します。例えば「転」のテーマが「友情の大切さ」というドラマだとします。まずは「友情の大切さ」を感じてもらうのが作り手です。そして、見た人が「友情って大切だよな」と思っている時間が「結」です。そのため、2時間の映画だとしたら、「結」というのは実はワンシーン、ツーシーンくらいですので、1分か2分くらいしかありません。

エンディングテーマのよい感じの音楽が流れ始めたら、「これ『結』だ」と思ってください。それくらい短いのです。しかし、そこで観客がじんわりと感動している時間が必要で、それがテーマが伝わっている状態です。

私がIR資料を読んでいて一番思ったのが、「『結』、みんなまったく作ってないな」ということです。「ぱつんと終わる」と言いますか、「テーマを言ったらもう終わり」というかたちになっています。

「その時にどのようなことを感じてもらいたいんだろうか」ということが、不明確なまま進んでいるような気がします。そこは、みなさまが資料を見直す時のポイントにもなると思います。

そして、「転」と「結」を目指して始まるのが、起承転結の「起」になります。「起」「承」「転」「結」はそれぞれ機能があり、「起」の機能として、1つはアンチテーゼというものがあります。アンチテーゼは、テーマに対する逆という意味です。

例えば「友情の大切さ」を伝えたいのであれば、主人公は「友情なんてくそくらえだ」と思っている高校1年生の秋元くん、もしくは、友だちが欲しいのに、友だちなんかまったくできないような環境に置かれた高校1年生の秋元くんです。

その秋元くんがいろいろな問題を乗り越えていく中で、友情の大切さを感じる場面で、視聴者は「友情って大切だよな」と思います。つまり、テーマの逆から始まるというのが、ドラマのセオリーです。

恋愛ドラマなどでも、最初から「好き好き好き」で始まりません。2人が常に対立しているところから、だんだんと惹かれ合っていくようになります。アンチテーゼから始まるのです。IR資料は、このアンチテーゼが「弱いな」と思っています。

「天」「地」「人」というのは、「天」が時代、「地」が舞台・場所、「人」が登場人物のキャラクターになります。ここがきちんと伝わっていないと、「このドラマは何なの?」「どういう状態なの?」となってしまうため、絶対に必要な情報になります。

「承」のところで、先ほども少しお伝えしましたが、主人公にいろいろな問題が起きて、その問題を解決する。するとまた次の問題が起きてというように、山がギザギザしています。問題が起きて解決、また問題が起きて解決していく、というようになります。『半沢直樹』などを見ると、まさにそのとおりではないかと思います。

今回、特にIR資料にとって大切ではないかと思うことの1つ目が、スライドに赤文字で記載した「魅力つけ」です。「起」のところで、機能としてはアンチテーゼ、天地人を伝えるというのがあるのですが、加えて「魅力的でなければならない」ということがあります。

これは後ほどご説明しますが、この「魅力つけ」をすることで、ドラマであれば「そのドラマはどこへ向かっているのか」が視聴者にわかるため、安心してそのドラマに入っていけます。

一番わかりやすいのは『ドラゴン桜』です。「バカとブスほど東大へ行け!」と言いますが、そうすると「これはこの不良たちが東大を目指すお話なんだな」と、見ている人はすぐにわかります。このように、「魅力つけ」と「このドラマはどこへ向かうのか」を先にしっかりと伝える必要があります。

2つ目が「貫通行動」です。これは「承」で、先ほどお伝えしたような問題がいろいろと起きるのですが、その問題が起きようが何があろうが、諦めないで行動していく主人公の行動を「貫通行動」と言います。

半沢直樹は何があっても自分の正義を貫きとおし、『キングダム』だったら大将軍になるために行動をやめないというように、主人公があきらめずに行動する原動力となるのが貫通行動です。

ここも企業はしっかりと伝えていったほうがよいのではないかと思っています。ここまでが、私からのドラマの構造の基本になります。

秋元:ありがとうございます。私も多くのIRの方とお話ししますが、おっしゃるとおり魅力つけのようなところは、なかなか上手くいかないという企業が多いため、肝心なところなのだと思います。

このあと、実際にヴィスさまにご協力いただき、資料を見ながら「こうしたほうがよいのではないか」というようなお話をいただきたいと思います。

【2】Before:株式会社ヴィスの説明会資料

秋元:続いて、今回IR資料をご提供いただいているヴィスの多田さまにご参加いただきます。今日はみなさまの前で資料をいろいろとご紹介いただきます。

新井さまから「こうしたほうがよいのではないかな」というご提案があり、少し勇気のいることでもあったのかなと思うのですが、ご参加いただきありがとうございます。では、簡単に自己紹介をお願いします。

【2】スピーカー

多田耕士氏(以下、多田):みなさま、はじめまして。ヴィスの多田と申します。現在は管理本部で部長と東京管理本部の責任者も含めて務めています。

私自身は2008年にヴィスに入社しました。スライドにデザイナーズオフィス事業本部と記載しているのがいわゆるセールス部門です。セールスで顧客を獲得し、オフィスをデザインしていくためのプロジェクトマネジメントを約12年しており、2019年から管理本部の部長に異動するかたちで就任しています。

就任し、2020年が明けた3月にちょうど弊社がマザーズに上場し、私自身が社歴も長く、現場の理解が比較的高かったこともあり、IRの担当と言いますか、代表の中村と一緒にいろいろと行っているところです。気象予報士は本業とはまったく関係ありませんが、記載しておくとみなさまに覚えていただけますので、余談です。

このあと見ていただくスライドについて、先に補足させていただきます。弊社はオフィスをデザインする会社でもあるのですが、社内にはグラフィックデザイナー、Webデザイナーもいる会社です。

そのため、私を中心に内容をいろいろと考え、デザインも弊社のグラフィックデザイナーが作り、できるだけ知名度を上げていく、また内容を濃くしていくことを模索しながら、上場以来IR活動をしているという前提をお知らせします。

新井さまの先ほどのトークを聞いているだけで「まずいな」と思いましたが、ダイレクトにアドバイスいただけるよい機会だと思い、前向きに参加していますので、よろしくお願いします。

秋元:まず、現在使用されている資料をもとに、資料で何を伝えたいのかを簡単にご説明をお願いします。

【2】INDEX

多田:こちらは11月23日のセミナーの資料です。まず、インデックスです。このような場で何を一番重要視したかと言いますと、「ヴィスが何者なのか」を投資家の方々にしっかりと認知していただくことが重要だということで、ビジネスストーリー、会社概要、当社の特徴と強みを冒頭に持ってきています。その後、業績などの数字関係の話があり、将来展望の成長戦略という構成にしました。

【2】ORIGIN 事業の始まり

まず、ビジネスストーリーです。弊社は代表の中村が創業者ですので、オフィスデザイン自体がそもそもなぜ必要だと思ったのかを、その契機を含めてお話しするほうが投資家に向けてキャッチーであり、わかりやすいだろうということで入れています。

このページでは、写真がかなりのトピックになります。もともとヴィスは商業空間のデザインを行っていた会社なのですが、ある方の紹介でたまたまオフィスをデザインする依頼を受けました。実際に東大阪の古びた町工場をリノベーションし、スライドのアフターの写真になるようにデザインしたところ、そこで働く方々の雰囲気やテンションがすごく変わりました。

そして、採用効率もすごく変わったという気付きを、創業者である中村が体験したことが、デザイナーズオフィスのスタートだということを説明しているページになっています。

【2】CREDO クレド

 

続いて、それを担っていく社員やメンバーがどのような思いで取り組んでいるのかというところです。成長曲線に乗せるための採用は行っていくのですが、クレド(信条、行動指針)によりみんなの意思統一、価値観を統一することが可能となります。

【2】PHILOSOPHY フィロソフィー(企業理念)

さらに重要視している弊社の存在意義と言いますか、理念が、スライドにあるフィロソフィーです。我々は「はたらく人々を幸せに。」という思いで現状ビジネス展開していることを冒頭にお話ししています。

【2】COMPANY PROFILE 会社概要

「もう少し具体的にどうなの?」というところは、会社概要より後にご説明しています。会社概要はそんなに工夫と言いますか、奇をてらったことはしていませんが、我々はビジュアルで訴求する仕事ですので、並べている写真はすべて弊社のオフィスや弊社が運営している「The Place」というビルの写真です。このようなものを添えながら、ビジュアルでどんどん伝えていきたいというのが、全体の思想です。

【2】HISTORY 沿革

カンパニープロフィールの次が、沿革です。1998年に設立しました。「デザイナーズオフィス累計受注件数」というのを何個か並べているのですが、順調にビジネスとして成長していることを伝えたいところになります。

【2】ONESTOP SOLUTION ワンストップソリューションの提供

「では、実際にどのような強みや特徴を持っているのか」というページです。弊社のデザイナーズオフィスは、ワンストップでソリューションできるものです。

何をワンストップで行うのかと言いますと、自己紹介の時にもお伝えしましたが、弊社はオフィスデザイン、Webデザイン、グラフィックデザインが可能です。いろいろな会社がありますが、これはビジネスを展開していく上でほぼマストに近いビジュアル戦略です。ここを我々は1社で行うことが可能です。

もう1つは、オフィスをデザインするタイミングとして、移転する時が一番機会として多いです。移転を考える時に、オフィス物件を探して設計デザインし、工事、最後の引越し、そしてアフターフォローまでがワンストップで行えるということを伝えたいページになっています。

【2】AWARDS & KNOWLEDGE 評価の高いデザイン力と案件の蓄積①

「世の中の方々からの評価も得ていますのでご安心ください」ということで、アワードをきちんといただいているということをお伝えするページです。

【2】AWARDS & KNOWLEDGE 評価の高いデザイン力と案件の蓄積②

同様に、信頼およびプロフェッショナルな部分ということで、我々が蓄積、積み上げてきた件数は、累計となるため絶対に右肩上がりになりますが、「今まで6,500件以上やってきました。ご安心ください。お任せください」ということを伝えています。それを担うメンバーも有資格者を並べていますので、コンプライアンス的な部分も問題ないということが、特徴、強みであることを言いたいページとなっています。

【2】CUSTOMER BASE 高成長企業中心の顧客基盤

世の中のビジネスに従事されている方にとって、オフィスは100パーセント日常的にあるものですが、「ヴィス」を聞いたことがないという方がほとんどです。例えばこの中ではスマートニュースやfreeeなど、自社のメディアやSNSでオフィス紹介などを行い、採用につなげているような会社が多いのですが、それをヴィスがデザインしたことはあまり知られていないです。

しかしながら、freeeのオフィスに行ったことがある人は、投資家も含めてかなりいるため、「あれがヴィスか」というように伝わればという思いを込めているページです。

そして、いわゆるスタートアップやベンチャーで、IPOを目指している企業から、左上のアース製薬やアサヒビールのようなエンタープライズ、大企業までのクライアント層があることを伝えています。

【2】HUMAN RESOURCES 人材力

私もページを送っている途中で、「なんだか唐突だな」と思ったのですが、人材を育成するための研修など、つまり支えていくのは人だという中で、「例えば、どのように人にフォーカスした社内の仕組みがあるの?」ということを紹介しています。

スライド下の写真もすべて弊社のメンバーの写真を並べており、明るい雰囲気、明るい会社だということも暗に伝えたいメッセージとなっています。

ここまでで弊社がどのような会社かを知っていただき、さらに投資家には、先ほどのクライアントのロゴマークのところで「なるほど。こういう会社がヴィスのオフィス作りと関係あるんだな」と思っていただいた後に、業績に持ってくかたちになっています。

【2】SUMMARY 業績サマリー①

業績については、よい数字だったところもあるのですが、売上高、営業利益のみでいったん1ページを作り、そこをまずキャッチーにしたいという思いで作っています。

また、「149.7パーセント」「419.5パーセント」という表記は、他の会社の資料で一般的によく見るのはプラス49.7パーセント、プラス319.5パーセントとなっていますが、149.7パーセントのほうがわかりやすく、インパクトが大きいだろうということで、あえて行っています。ルール違反かどうかはわからないのですが、大丈夫だと思っています。

【2】SUMMARY 業績サマリー②

先ほどの数字に対する3つのトピックスを並べました。ここに3つ並べることで、次のページにつながっていきます。

【2】COMPARED TO THE PREVIOUS TERM 前年同期比

先に大きなメッセージを出し、細かい数字はどちらかと言いますと、子細に説明するのではなく、あとから見ていただいてもよいというページ構成になっています。

【2】ORDER STATUS 受注状況①

こちらのページも同様ですが、受注高・受注残を少し入れています。弊社の場合は、新型コロナウイルスのインパクトを受けたというのはみなさまご承知のとおりのことです。

ここで表現したいことは、2021年3月期の上半期はグラフとしても一番の谷になっていますが、きちんと回復傾向にあるということと、回復傾向どころか過去最高だったということが言いたいページです。

【2】ORDER STATUS 受注状況②

大型案件もグラフにすると頭1つ出たということを示しています。

【2】FY2021 OUTLOOK 2022年3月期業績予想①

業績予想については、実際のところそこまで変更していないため、1ページで表現しています。

【2】FY2021 OUTLOOK 2022年3月期業績予想②

業績予想を細分化したものが、こちらのスライドです。

【2】社会の変化がもたらした、はたらき方の変化からのビジネス領域の拡大 これまでのワークプレイス

「では、これからどうなるのか」という成長戦略についてです。「そもそもオフィスのデザインって何ぞや?」という投資家が多い中で、そこから成長性の話になってもさらによくわからないだろうということで、少しオフィスの歴史を振り返るページにしています。

もともとオフィスは作業空間でしたが、それが協働空間になりつつあります。昨今のオフィスは、みなさまがデザインを取り入れるような時代が来ているということを表現したいページです。

【2】社会の変化がもたらした、はたらき方の変化からのビジネス領域の拡大 ワークプレイス4.0へ

我々が目指す成長領域は「ワークプレイス4.0」で、つまり、今まではオフィスをデザインすることを生業にしていましたが、オフィスをデザインするといった箱を用意する時代ではなく、人がどのように働くかといった、そのソフトの部分にさらにフォーカスしています。そして、働くことをデザインしていかなくてはならないということで、投資家のみなさまも実体験としてお持ちだということを表しています。

【2】社会の変化がもたらした、はたらき方の変化からのビジネス領域の拡大 DESIGNER’S OFFICEからWORK DESIGN COMPANYへ

「DESIGNER’S OFFICE」というハードの事業から、「WORK DESIGN COMPANY」という「はたらく」をデザインしていく会社に舵を切ったというのがこちらのページです。

【2】社会の変化がもたらした、はたらき方の変化からのビジネス領域の拡大 場所中心から、ひと中心に考える世の中に

ビジネス領域の拡大とはどのようなことなのかというのが、こちらのページ以降に記載されています。世の中は場所中心から人中心になってきました。

【2】社会の変化がもたらした、はたらき方の変化からのビジネス領域の拡大 WORK DESIGN PROCESS

そのような中で、弊社はこの3つのサイクルを作り、事業において、この3つのサイクルを回していく方向に舵を切りました。

「BRANDING」は今まで行ってきた、オフィスデザインやグラフィックをデザイン、Webデザインということですが、「CONSULTING」「WORKSTYLING」を新たに取り入れています。

【2】社会の変化がもたらした、はたらき方の変化からのビジネス領域の拡大 CONSULTING①

「CONSULTINGとは何か」について、これ以降のページで表現しています。つまり、データドリブンなことを行っていくというのがCONSULTINGです。

【2】社会の変化がもたらした、はたらき方の変化からのビジネス領域の拡大 WORKSTYLING

WORKSTYLINGは「The Place」を運営することにより、こちらにおいてもデータをどんどん分析していこうということです。

【2】社会の変化がもたらした、はたらき方の変化からのビジネス領域の拡大 BRANDING

そして、現在の主軸の事業であるBRANDINGをご紹介しています。

【2】社会の変化がもたらした、はたらき方の変化からのビジネス領域の拡大 CONSULTING②

もう1つ、CONSULTINGの「ココエル」をご紹介しています。CONSULTINGを冒頭に紹介し、もう一度CONSULTINGを出しているのは、輪が描かれているのを表現したかったためです。CONSULTINGから始まり、再度CONSULTINGに移っていくことを表現したかったのですが、うまく伝わっていないような実感があります。

【2】社会の変化がもたらした、はたらき方の変化からのビジネス領域の拡大 シナジーを生む業務提携を継続

さらに、投資家は「ビットキー」という名前にかなり惹かれることもあり、そこと業務提携により、ともに成長していくのだろうと想像していただくためのページです。

【2】2030年に向けて

最後に、このようなことを行いながら、2030年に売上高250億円を目指したいということで、「ここでテーマを言っちゃった」ということが、新井さまの話を聞いてよくわかったことです。新井さま、私の資料にご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします。

新井:ヴィスさんの資料らしいですし、最初の打ち合わせの時も私はすごくよい会社だなと思いました。だからこそ、すごく歯がゆいと思ってしまったところがあります。

多田さまもお気づきの点もいくつかあったと思いますが、私から申し送りしていきたいと思います。

【3】Brfore:ヴィス様 資料の構造

ヴィスさんの資料の構造として、「ドラマの構成で言うとどうか」というところですが、ビジネスストーリーがあり、会社概要があり、特徴と強みがあり、04・05が業績と業績予想、06が成長戦略となっています。まず、先ほどお話ししたロジックのところを整理していきたいと思います。

【3】ヴィス様 のテーマ(伝えたいこと)は?①

テーマとして「一番伝えたいことが大切」ということは、どの資料も一緒です。どちらの企業のIRも同じく、「うちに、投資してね」というのが実際に言いたいことだと思うのですが、それはテーマにはなりません。

なぜかと言いますと、テーマというのは具体的でなくてはいけないのです。例えば、「友情」はテーマにはならず、「友情の大切さ」「友情のはかなさ」というように、「友情」について作者がどのように見るかという視点が大切なのです。ですので、具体性が必要です。

【3】ヴィス様 のテーマ(伝えたいこと)は?②

ヴィスさんはどうかなということで、次のシートを見てみます。作る時に、まずロジックを考えると思いますが、これはざくっとでよいです。「うちのテーマ、ざっくり言うとこういうことだよね」というのを、みなさまで擦り合わせてもらいたいと思います。

その時は「『うちは〇〇です。だから、投資してね』と言えればいいよね」ということです。これは、多田さまにも少し確認させていただいたのですが、「ヴィスはビジュアルデザインだけでなく、『はたらき方』までデザインできるから成長します。だから、投資してね」ということが、最終的に伝わればよいと思うのです。ここは多田さま、大丈夫ですか? 

多田:そのとおりです。

新井:まずは、テーマとして具体性を持たせることです。これを伝えるために資料を作っていく、これが目指すところ、資料を作るうえでの旗印になります。

【3】After:ヴィス様 資料の構造(ロジックのみ)①

それでは、冒頭から見ていきます。今のテーマを伝えるためにどこから入ればよいのかということです。

まず私が思うには、IR資料に一番足りないものは、読み手の気持ちを慮りながら作っているのかということです。と言いますのも、多田さまは「投資家の方はこのように思うと思うので」とお話しされていますが、資料には意外とそこがないのです。それは他の資料を拝見しても同じで、「わかるでしょ?」というかたちで情報が出ています。それは先ほど最初に秋元さまが言った、資料を一人歩きさせるという意味では、読み手に負担を強いているのではないかなと思います。

まず、読み手が資料を手にした時に何を思うのかということです。投資家ですので「この会社、本当に伸びるのかな」ということだと思うのですが、その時にまずはアンチテーゼを考えてみます。例えば、もし私だったら「コロナ禍で働き方が変わった。オフィスデザインの需要は伸びるのだろうか」というような読み手の疑問を資料の頭にポンと入れてしまいます。

また魅力づけの部分ですが、「ヴィスはビジュアルデザインだけでなく『はたらき方』までデザインできるから成長します」というアンチテーゼの答えを、先に言ってしまいます。「うちはきちんと成長します。なぜならね」というかたちで、始めたいのです。

【3】After:ヴィス様 資料の構造(ロジックのみ)②

そして、資料にはビジネスストーリーがありました。天地人の、特に「人」の部分です。読み手としては、多田さまがお話ししていたように「そもそもどんな会社なの? ヴィスって」となります。

創業の中村さまの最初の体験による「あれ? 働き方で人を幸せにできるんだ」という気付きから今があるため、そこを最初に持ってくるのはとてもよいことです。それが、先ほどのドラマで言う貫通行動であり、「働き方を提案していけば人を幸せにできるんだ。それをやり続けていこう」というところが、ここで定まったのだと思うのです。

ここで定まり、そのあとクレドに移るのですが、そうではなく、私なら定まった上で「じゃあ自分たちは何のために、会社としてどこを目指すんだっけ」という理念の話のほうがよいのかなと思います。そこは、ドラマでは登場人物ですが、企業だったら会社のキャラクターです。

「私たちははたらく人々を幸せにする」というキャラクターの会社であり、そのような思いを持ち、創業者とともにみんなが一致団結するためにクレドがあり、そのクレドにプラスして、そこにきちんと一級建築士というスペシャリストがいるということです。しかも先ほど唐突だと言っていた人材研修のところも入れます「こうやって人を育てています。だから、企業の理念をちゃんと引き継いでいる集団です」となります。

それで、スライド右側にありますが、「ヴィスは、はたらく人々の幸せを作りだす集団です」ということをビジネスストーリーで伝えると、「このためにがんばっている会社なんだな」というのが読み手にはわかります。

【3】After:ヴィス様 資料の構造(ロジックのみ)③

次は会社概要で、「常に成長し続けている」というメッセージもここで伝えていくという天地人をわかりやすく説明していただいているので、これはこのままでよいのと思います。ですので、01と02の会社概要で、「ヴィスはきちんと成長している。それは思いを持った集団だから」ということが伝わっていくことが、前半の「起」の部分でとても大切です。

【3】After:ヴィス様 資料の構造(ロジックのみ)④

それでは「その集団で、どれだけの実績があるの?」というのが、読み手の心理です。「あなたたちに思いがあるのはわかった。では、どれだけやっているの?」となった時に、「360度デザインを一気通貫でできますよ」ということを伝えます。そして、「それをいろんな会社でやっていますよ。ナショナルクライアントでも、新規のところでもやっていますよ」という実績と、「ヴィスは理念を大切にしているから、リーディングカンパニーなんだよ」というヴィスの思いが離れないほうがよいと思います。

ですので、ここはくっつけて、「私たちはこういう集団だからこんな結果が出ているんです」というのを、特徴と強みのところに入れたいところです。私がもしシートを足すとしたら、右側のシートや文言を入れたいです。そこは、「理念を大切にしているメンバーとともにやっているからだよ」というところが軸になります。

【3】After:ヴィス様 資料の構造(ロジックのみ)⑤

次に、「それだけ結果を出しているんだ。実際、業績はどうなのよ?」と、ここはまさに「どうなのよ?」ということですので、業績が出てくるところです。「実際に右肩上がりで最高益を出していますよ」と、そして業績予想のところでも「コロナ禍では、どうなのよ?」という疑問に対して「こうなっている」となっています。

ここで1つ付け加えるのであれば、やはり「コロナ禍でオフィスってどうなの?」というアンチテーゼが、「承」の3の頭に入ってくると思います。ですので、そこは1回言ってしまってもよいと思います。「コロナ禍でオフィスに対する需要は、世間的にもこういう疑問が起きたよね。だけど、うちはきちんと結果を出しているぞ」というコロナ禍での結果も見せたほうがよいのかなと思います。

【3】After:ヴィス様 資料の構造(ロジックのみ)⑥

このあたりから問題が難しくなってきます。ドラマが進めば進むほど、『ドラゴンボール』で敵がインフレしだすのと一緒です。そうすると、今度は「コロナ禍も不透明だし、本当にこのままデザイナーオフィスが成長できるの?」という読み手の意識が生まれてくると思います。

ですので、私ならここはもうその気持ちを、「コロナ禍で働き方は変わった。ヴィスに何が求められるだろう」とシートに入れてしまいます。

成長戦略では「きちんとヴィスは気付いていますよ」というところが、伝わらない懸念があります。「自分たちだって、きちんと客観的に見ているよ」となれば、「オフィスがこれからはデザイナーオフィスではなくて、『WORK DESIGN COMPANY』になるんだ」というところにつながってきます。

【3】After:ヴィス様 資料の構造(ロジックのみ)⑦

最大の問題は、自らメスを入れた「『ワークプレイス4.0』です。オフィスデザインからはたらき方へ変わるのなら、デザイナーオフィスはダメじゃないの?」という投資家の素朴な疑問です。私なら、さらに一言「オフィスは不要か?」と言ってしまいます。これには、多田さまがおっしゃっていた「オフィスはカルチャープレイスだ」というのがとてもよいなと思ったため、使いたいところです。

「『ワークプレイス4.0』になって、場所ではなく人にフォーカスを当てていかなくてはいけない」となった時に、ヴィスは今まで人の幸せを作るためにオフィスを作ってきたため、それができるというのを、伏線としてここで回収したいのです。

ですので、ヴィスははたらく人々を幸せにでき、「ワークプレイス4.0」が成長の糧になるのは、先ほどの「CONSULTING」「BRANDING」「WORKSTYLING」の3つを回していくことがでできるからだよ、ということになります。

今日は細かいクリエイティブなところを行っていないため、先ほど多田さまがお話ししていた「『CONSULTING』がまた来ると変かな?」というのは、どこかの機会でお話しできればと思います。

最後に最大のテーマとして、「『はたらき方』までデザインできる」ヴィスは、顧客のタッチポイントが増えて、サービスの継続的な提供ができるようになるため、デザイン受注を含めた売上の安定と拡大を見込むことができる、というのが伝わっていけばよいということです。

そして、「なぜなら、私たちはこういう集団だからだ」という、最初の「人」の部分です。企業のキャラクターがありますので、ヴィスは「『はたらき方』までデザインできるんだ」というところに持っていけるのではないかと思います。

【3】After:ヴィス様 資料の構造(ロジックのみ)⑧

先ほど多田さまもお話ししていた、テーマを言ったまま投げっぱなしにしてしまった、次のシートです。最後は余韻が残るシートで締め、お問い合わせ先のようなものがあって、注意書きが最後にあるみたいなかたちかと思います。

ここで新しいことは絶対に言わなくてよいです。もうドラマは終わっているため、新しいことは「結」のところでは言いません。読み手が「そうか。ここは可能性が確かにあるかもね」とぼんやりと考えて、もう1回資料を見て「なるほどな」と思ってもらう時間を作るための1枚のシートです。

デザイン力があるため、明るい会社だという雰囲気のようなものを伝えていくシートがあれば、見事に着地するのではないかと思っています。ざっとお伝えしましたが、多田さま、ここまででいかがでしょうか? 

多田:「伏線の回収」という言葉を、この場で聞くとは思いませんでした。自分自身は読み物などがすごく好きなのですが、この資料にその発想をまったく持てなかったことをすごく反省しました。「読み手の気持ち」というのは目から鱗でした。

新井:よかったです。

多田:途中でお伝えしたとおり、その情報は人なのか、事業なのか、数字なのか、サービスなのかということで、散らかっている部分をきれいにすることが重要だというのは、今のですごくわかりました。

新井:そうですね。人の情報は人の情報で寄せてしまったほうが、「このような集団だからこそできるんだ」というのがわかりやすいかと思います。

【3】資料の作成ポイント

今日のまとめになります。みなさまがIR資料などを作る時に、ぜひとも参考にしてもらいたいと思います。

まず、ロジックとクリエイティブを分けて考えようということです。今回私が話したのは、基本的にロジックの部分です。ロジックを整理してからクリエイティブの部分に手を付けるのがセオリーです。

資料を作るとどうしても、目に見える言葉やグラフの並びなどに手を付けがちです。しかし、そこはロジックがずれていると第1ボタンがずれるため、それ以下を直したところで、気持ち悪さは残ります。

そこはロジックから整理してください。そのためには、まずロジックとクリエイティブを分けて考えるのです。ここでは、「何を伝えるべきか」から考えていくことです。

次が、テーマを明確にすることです。資料で伝えたいこと、伝えなければいけないことは何なのかを明確にし、その上で読み手のアンチテーゼをしっかりと想定しながら、一つひとつの話のまとまりを作っていきます。「起」には魅力つけ(何に向かう話か)を、しっかりと作っておきます。

そして、自社のキャラクター(理念)と事業継続の提示です。自分たちは、何のためにどうがんばっていける集団なのかを、しっかりと伝えます。さらに「自社だから、事業課題(承)の問題を乗り越えていけるんだ」というところを提示していきます。

テーマがこれで伝わったと思ったら、「結」の余韻を忘れずに作っておくということです。このようなかたちで考えていただけるとよいかと思います。

【3】おしまい

最後のシートです。みなさまには「シナリオで資料が変わるの?」というアンチテーゼがあったと思いますが、「シナリオの技術で資料が変わるかもな。さっそく試してみよう」と思ってもらえたら大成功だということで、これが「結」のシートです。ありがとうございました。

秋元:ありがとうございます。多田さま、先ほど伏線回収というお話もありましたが、他のところでも何かご感想があればいただけますか?

多田:グラフや写真、色なども、もちろん重要なのですが、気にしすぎていたと思いました。私たちの事業もそうなのですが、デザインの1つ前のコンセプトというか、ロジックのような部分が重要なのだと思います。

「おしまい」のページを新井さまが用意しているのが、「そういうことなのか」と言いますか、「まんまと術中にはまったな」と思いました。ダイレクトにご指摘を受けることができて本当によかったです。ありがとうございます。

秋元:IRなどにこのようなことに慣れていないため「ここだ」というのは難しいと思うのですが、企業で、ストーリーの出し方やメッセージの出し方がよく、人に伝わる資料を作れている例はありますか?

新井:難しいですね。ただし、私がすごく大切だと思うのは、資料を読んだ時に絵が浮かぶかどうかということです。

例えば、ヴィスさんの資料を読んだ時に「こんな感じの人が、これくらい一生懸命になって、自分たちの会社のデザインやオフィス、働き方について考えてくれるんだろうな」という、一緒に取り組んでいるイメージが浮かべば最高だと思います。そのような具体的な場面が浮かぶと、とてもよいのではないかと思います。

有名なものとして、Soup Stock Tokyoの資料は、たしか田中さんという女性を主人公に、スープのある日々をずっと追いかけているだけで、「それでいくらになります」というようなことはあまり入れていなかったというのがあったと思います。

「このサービスは、誰のどのようなところとつながっていくのだろうか」ということが見えてくると、投資家もイメージが湧きやすいのではないかと思いました。もしかすると、ヴィスさんの資料では「結」のシートなどが、そのようなところに入ってくるかと思います。

秋元:多田さまから「こういうことで困っているんだけど聞きたいな」「これどうしたらよいと思いますか」というようなことはありますか?

多田:一通りいただいたという気持ちになっているところもありつつ、やはり「読み手の気持ち」を一度見直してから、また新井さまにアドバイスをいただきたいと思います。

新井:ぜひよろしくお願いします。

【3】会場からの質問:冒頭のページで魅力を伝える方法について

秋元:「投資家は忙しく、資料を全部は見ないところがあるため、冒頭の数ページで魅力を伝えるテクニックはありますか?」という質問ですが、いかがでしょうか?

新井:例えばドラマの入り方には2パターンあって、「撫で型」と「張り手型」があります。「撫で型」というのは「撫でる」ということで、今回のヴィスさんの資料はどちらかと言いますと「撫で型」です。よくあるのはファミリードラマです。

朝、高校生の女の子が起きてきて、「お母さん私のお弁当まだ? 部活遅れちゃうよ」「もう少しで用意できるからちょっと待ってよ」「お兄ちゃん、早くトイレ出てくれない?」などと言っているところに、お父さんが来て「朝から騒がしいな」と、その家の登場人物が紹介されます。これが「撫で型」です。

『となりのトトロ』などはまさにそうで、「この人たちが主要人物です」と示します。ヴィスの資料は「私たちはこんな人たちです」というストーリーから入っているため、「撫で型」かと思います。

もう一方で「張り手型」というのは、映画『ミッション:インポッシブル』などでよくあるのですが、いきなりトムクルーズが飛行機にしがみついているところから始まります。「何それ?」というインパクトがあって、「実はこれは」という後説で始まるというものです。

例えば、いきなり「この数字が見えていますよ」というところからボンと入ってしまうかたちです。ヴィスさんであれば、「2030年に250億円いきます!」というようにボンと出してしまうのです。

「本当に?」と思わせて、「なぜならね」と、後説で入れていくこともできると思います。ロジックがしっかりとしていれば、順番は並べ替えができるため、そのようなインパクトを持たせる方法もあるかと思います。

当日に寄せられたその他の質問と回答

秋元:当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日新井さまに回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問1:華やかな印象、かつオフィスという比較的身近な企業のIR資料の事例でしたが、無機質な業界、無骨な業界など、未来を連想しにくい業界の資料の魅せ方はどのようにすればよいのでしょうか?

回答1:無機質な業界、無骨な業界、未来を連想しにくい業界と言いますと、どのような業界か、思いつくことが難しいのですが、明確にすべき点は、資料で伝えたい「テーマ」と、そのテーマの実現のため、どのような思いを持って取り組んでいるのか、がポイントになると思います。

そのため、企業理念に基づく「貫通行動」が、事業内容をしっかりと串刺ししているような資料を作るとよいと思います。

何を目指し、そのために何を行っているのか、ということが伝われば、魅力的な企業活動を伝える資料になり得ると思います。

<質問2>

質問2:「起」はアンチテーゼの内容がよいとのことでしたが、イメージとしてはテーマの逆説のような内容でしょうか?

回答2:簡単に言いますと、アンチテーゼとは「テーマの逆」という意味になります。逆説という表現が適切かどうか微妙ですが、テーマに対して逆の状態を考えていただければと思います。

<質問3>

質問3:「結」のページが難しいと感じました。すべての内容を要約したペラ1枚の資料などでもよいのでしょうか?

回答3:「結」は、テーマの余韻なので、要約した資料でも問題ないかと思いますが、私がベストだと考えるのは、読み手の頭ではなく、気持ちに寄り添ったシートがよいと思います。

「IR資料に気持ちが必要か?」と言われれば、確証はありませんが、人間は感情が動かなければ行動をしない生き物だと思います。ですので、頭イコール思考の方にメッセージを送ることが多いIR資料だからこそ、最後は気持ちに訴えるシートがあってもいいのかな、と思います。

もちろん企業のカラーなどにもよると思いますので、そこは試行錯誤になりますが「結」を意識しないよりは、断然よい資料になると思います。

【4】ログミーFinanceの特徴

秋元:最後にお時間をいただいて、数点お知らせをさせてください。ログミーFinanceのサービスのご紹介になります。

まずはIRイベントの書き起こし、拡散サービスについてです。今回のテーマも「すてきな資料を作っても、見てもらえなかったらしょうがないよね」ということですが、私たちは決算説明会やIR資料の内容を、このような提携サービスを通じて多くの投資家に届けることができます。

そのため、IRページに来る方だけではなく、まだまだ出会えていない投資家に出会えるサービスを提供しています。同じような文脈ですが、個人投資家向けのIRセミナーも開催しています。

【4】個人投資家向けIRセミナー

私たちの強みは、動画や書き起こし、アーカイブの配信のようなところをすべて兼ね備えているため、1回でおおよそ7,000人以上にリーチできます。投資家自体も非常に若く、企業理解などへの理解が深い方々がそろっているため、かなり効果的なものになっています。

【4】Zoom導入無料支援

「Zoom」導入無料支援についてです。「決算説明会がなかなかオンライン化できていないよ」という企業がいらっしゃいましたら、無料でしっかりとご支援します。

【4】YouTubeチャンネル

「決算説明会の動画を作っているけれど、再生数がぜんぜん伸びないんだよね」ということであれば、私たちの「YouTube」チャンネルがありますので、そこに動画をアップして、再生数を伸ばすお手伝いもしています。

以上がログミーFinanceのサービスの紹介で、次に新井さまから会社のご説明をお願いします。

シナリオ・センターからのお知らせ

新井:あまり興味がないかもしれませんが、シナリオライターになる講座を年間10回以上していますので、ぜひお越しいただければと思います。

一般企業の方でも、シナリオライターになりたいわけではなく、発信力を高めたいということで技術を学びに来る方がけっこういらっしゃいます。ぜひお越しください。

ビジネス向け、子ども向けなど、実はいろいろなことをしています。今回のIR資料のリライトやブラッシュアップのようなこともお受けしています。アンケートにも記載があるかと思いますので、ご希望の方がいらっしゃいましたら、お声かけいただければと思います。

他にも、シナリオの技術はいろいろなかたちで使えるため、「こういうことって何かできませんか?」といったことがあれば、お気軽にお問い合わせください。

秋元:今後もこのようなIRのご担当者を集めて、セミナーを実施させていただく予定ですので、ぜひまたご覧いただけたら幸いです。

これで本日のセミナーを終了させていただきますが、今後も情報収集して、よりみなさまのためになるようなことを提供できたらと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。